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多様化するサービスに向けたアクセスシステム技術

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Academic year: 2021

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アクセスサービスとシステム技術 の変遷

■商用初期のFTTH

FTTH(Fiber To The Home)は, インターネットアクセスの普及に伴い 拡大展開し,現在日本全体で2600万 ユーザ以上が利用する通信インフラと しての地位を築きました.日本におけ るFTTHは1997年に商用導入が開始 され,提供されるサービスやシステム 技術もこの約20年の間大きく変わっ たものもあります. 初期のFTTHは,アナログ ・ ISDN 電話系通信とアナログ多チャネル映像 配信サービスを提供していました.当 時のアクセスシステムは,電話系サー ビスのためのシステム(STM-PON: Synchronous Transfer Mode-Passive Optical Network)と映像配信サービ ス の た め の シ ス テ ム(SCM-PON: Sub-Carrier Multiplexing-PON)によ り構成され,波長多重技術(WDM: Wavelength Division Multiplexing) を用い同一の光ファイバ上で 2 つの サービスを提供していました(1).アク セスネットワークは,光スプリッタを 用いた32分岐のPON構成です.当時 の通信系サービスは,電話系に限られ ていたためFTTHシステムも16 Mbit/s 程度の低速なものでした.しかし, WDMによる光信号の多重とPON構成 によるアクセスサービスの提供は,現 在のFTTHでも用いられている技術で す(図 1 ). ■ブロードバンドアクセスとして のFTTH 2000年を境にアクセスサービスに 大きな変化が起きました.従来の電話 系のサービスからインターネットアク セスへの変化です.2000年初頭,前 述のSTM-PONを用い最大10 Mbit/s の帯域を利用できるシステムの開発 ・ 導入も行いましたが,ADSLに代表さ れる高速メタリック通信との速度的差 別化を図るためにもFTTHシステムの 高速化が求められました.そこで, 2002年にATM-PONをベースにデー タ 通 信 の み に 特 化 さ せ 開 発 し た B-PON(Broadband-PON)(2),さら に,2004年にイーサネット技術をベー ス に 開 発 さ れ たGE-PON(Gigabit Ethernet-PON)(3)の導入を行いまし た.この間,アクセスシステムは, 2000年初頭の10数Mbit/sの速度から 数年で 1 Gbit/sの速度をサポートする までになりました.この大きな理由は, LANにおける高速化技術が市中技術 として安価に利用可能となり,また, それまで比較的独自仕様であったイン タフェース条件がIEEE802やITU-T (International Telecommunication U n i o n - T e l e c o m m u n i c a t i o n Standardization Sector)の標準化規 格により規定され,数多くのデバイス 等が利用可能になったことも挙げられ ます(4).さらに,サービスをインター ネットアクセスと限定することで,複 雑な電話系インタフェースの装置への 実装を省くことにより大幅なシステム の簡略化もでき,システムコストの大 幅な低減も可能となりました. FTTHによるブロードバンドアクセ スの本格的な展開が進むと,提供サー ビス拡張への対応(NGN,マルチキャ スト,BS/CS信号),大量開通の稼働 削減への対応(DYI化,ONU一体化), 提供エリア拡大に向けた対応(長延 化),ECO化(省電力化)などのシス テム機能追加と改善へと研究開発の対 象は移り,システムの成熟度を上げる 技術開発を中心に現在まで行われてき ました.これら技術開発は,現在約 1900万ユーザにサービスを安定的に NTTアクセスサービスシステム研究所では,FTTH(Fiber To The Home)サービス提供のためのアクセスシステム技術の研究開発に取り組 んできました.本稿では,商用展開されてすでに20年近く経過している FTTHのシステムの技術的特徴,および対象としてきたサービスを振り返 ります.また,多様化するサービスに向けたアクセスシステム技術の研 究開発の方向性について述べます.

ふ じ も と

本 幸

ゆ き ひ ろ

NTTアクセスサービスシステム研究所 プロジェクトマネージャ

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提供する通信インフラとしての役割を 支えています(図 2 ). アクセスシステム技術開発の現在 の取り組み ■トラフィック増加に向けた技術 FTTHの本格展開から今日に至るま で,ブロードバンドトラフィックの伸 びは過去10年間で14倍となっていま す(図 3 ).この傾向は高精細映像な どのリッチコンテンツの普及に伴い今 後も増加することが容易に予想されま す.一方,移動体通信のトラフィック は,スマートフォンなどの普及に伴い ここ数年,毎年50%以上の大きな伸び をみせており,移動体ネットワークの バックボーンの帯域増強は大きな課題 です.現在の光アクセスネットワーク は,移動体基地局のバックボーンとし ても利用されており,バックボーンの 帯域増強への対応が求められます.こ のようにブロードバンドアクセスと移 動体通信のトラフィックの伸びに対応 したアクセスシステムの高速化が必要 な技術の 1 つであることはいうまで もありません.アクセスシステムの高 速化は,現在,10 Gbit/sの速度を伝 送するPONシステムが技術的に確立 さ れ て お り,IEEE802, お よ び ITU-Tにおいても規格化されていま す(5).しかし,爆発的なトラフィック の伸びと,高速光アクセスシステムの 適用先の多様化を考慮した場合,より 柔軟な運用を可能とするシステムが求 ONU お客さま宅 光スプリッタ 32分岐 光波長 設備センタ

ONU: Optical Network Unit OLT: Optical Line Terminal STM-PON: STM-OLTとSTM-ONUにより構成 SCM-PON: V-OLTとV-ONUにより構成 図 1  商用初期のFTTHシステム構成 STM-ONU 電話 映像 V-ONU WDM WDM 1.3 μm 1.3 μm 1.3 μm 1.55 μm 1.55 μm 1.55 μm 電話網 映像配信 ヘッドエンド STM-OLT V-OLT 図 2  ブロードバンドアクセスの伸びとFTTHシステム技術開発 02/03 03/09 05/03 06/09 08/03 09/09 11/03 12/09 14/03 CATV DSL FTTH 0 10 20 30 40 (百万) 通信系 FTTHシステム 映像配信系 FTTHシステム

▲B-PON ▲GE-PON ▲NGN対応(ONU+HGW一体化)

▲PON Multicast 対応 ▲DYI化 ▲省電力化 ▲長延化(37 dB) ▲V系広帯域化(BS/CS110°対応) ▲GV系一体化 ▲V-ONU経済化 ユーザ数

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め ら れ ま す.WDM/TDM(Time Division Multiplexing)-PON(6) は, 複数のTDM-PONをWDMにより同一 PON上に複数多重化するシステムで す(図 4 ).この仕様は,現在,ITU-T に お い てNG(Next Generation)- PON2として規格化が進められていま す.それぞれのTDM-PONは2.5〜10 Gbit/sの 速 度 の も の が 用 意 さ れ, TDM-PONを 4 波多重することによ り最大40 Gbit/sのPONとして運用す ることができます.また,任意の OSU(Optical Subscriber Unit) の 通信波長をONUへ動的に割り当てる ことにより,柔軟な速度設定や故障時 の変更等が可能となります.また,ポ イント ・ ツー ・ ポイント(P2P)型の 通信波長を同時にWDMオーバレイさ せることにより,PONとは独立した 占有型の通信の多重も可能となりま す.このような柔軟性は,同一のアク セスネットワークで一般向けサービス とビジネス向け,モバイル向けアクセ スサービスを同時に提供することを可 能にすると考えられます(図 4 ). ■モバイルフロントホール利用に 向けた技術 モバイルフロントホール(MFH: Mobile Front-Haul)は,基地局とな るBBU(Base Band Unit)* 1とアンテ

ナとなるRRH(Remote Radio Head)* 2

が離れて設置される場合のリンク区間 を指します.MFHでは無線の信号を 光デジタル信号へ変換するにあたり, CPRI(Common Public Radio Interface)に準拠したインタフェー スを用います.CPRIは無線電波をそ のままデジタル化するため,通常無線 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 (Gbit/s) 37.5% 50.9% 約14倍 2004 2005 2006 2007 トラフィック 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 ブロードバンド 総トラフィック (ダウンロード) 移動通信 総トラフィック (ダウンロード) 図 3  インターネット・モバイルトラフィックの増加 帯域占有 帯域占有 波長 λ1 λ4 時間 OSU # 1 OSU # 2 OSU # 3 OSU # 4 WDM # 1 WDM #n 図 4  WDM/TDM-PONの構成 P2P WDMオーバレイ 速度無依存の占有型通信として利用 WDM/TDM-PON 最大40 Gbit/sのPONとして利用 TDM-PON:2.5 ∼10 Gbit/s /波 WDM: 4 ∼ 8 波長 一般向けアクセス ビジネス向けアクセス モバイル向けアクセス 移動体 ネットワーク コア ネットワーク *1 BBU:デジタル信号処理,バックボーン ネットワークとの接続等を行います. *2 RRH:無線信号と光信号の変換等を行い ます.

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の伝送速度の16倍以上の帯域が必要 となります.したがって,光伝送シス テムによるCPRIの伝送には,非常に 高速なシステムが求められます.今後, 移動体通信は現在のLTEやLTE-Aか ら,10 Gbit/sをサポートする5Gへと 移行するにあたり,CPRIのままでは アクセス区間に100 Gbit/sを超えるシ ステムをMFH投入しなければならず, 経済的なRRHの展開のハードルとな ることが予想されます(図 ₅ ).そこ で,将来の移動体通信の高速化に対応 した経済的なMFHを実現するために, 従来のBBUの物理層の機能構成を見 直し,よりデータレートに近い速度の 信号を光信号として伝送する技術を開 発しています(7).具体的には,基地局 の各機能構成を分解し,現在のCPRI で行われている基地局間の密な協調が 可能であり,かつ,帯域幅を大幅に削 減可能な部分を新たなインタフェース として定義し,従来のCPRIと比較し て90%以上の帯域削減が可能となる ようにします.これにより高速化する 移動体基地局に対し,経済的なMFH のシステム化の実現が期待されます. 例えば,将来の5GのMFHであっても, 商用のLANなどで用いられている 10 Gbit/sの光インタフェースが利用 できるため,現在安価に入手可能な商 用技術を用いたシステム化が可能とな ります.さらに,MFHをPONへ収容 する形態も可能となり,さらなる経済 化と効率的運用も期待できます. 次の研究 ・ 技術開発領域に向けて ■新たなサービスとネットワーク これまでの人と人を中心とした通信 に加え,この数年,M2M(Machine to Machine)やIoT(Internet of Things) といったモノとモノ,人とモノをネッ トワークでつなぐことに関する議論が さかんに行われており,新しいサービ スやビジネスがすでに創出されつつあ ります.現在自動運転の研究が多方面 で行われていますが,仮に日本国内の 自動車がネットワークに接続されると 8000万台の「端末」が新たに生まれ ることになります.また,2020年ま でに世界中で約500億個以上のセンサ などのデバイスが「端末」化されネッ トワークに接続されるといった予測も 出され,それでも全体の数%にも満た ないといわれています.このような莫 大な数のデバイス ・ 端末がネットワー クに接続される世界では,アクセス ネットワークの構成もこれまで構築さ れてきたFTTHとは大きく変わる可能 性があると考えられます.例えば, M2Mにおけるアーキテクチャの中で 定義されているM2Mエリアネットワー クや基幹ネットワークは,これまでの アクセス ・ 中継といった区切りとは異 光伝送 帯域削減 (10分の 1 程度へ) 100 Gbit/s超 無線レートの16倍以上 LTE-A 225 Mbit/s LTE 150 Mbit/s LTE 100 Mbit/s LTE 75 Mbit/s CPRI 100 G 10 G 1 G 100 M 2010 2020 Mobile 5 G 4 G(LTE-Advanced) 3.9 G (LTE) (bit/s) 伝送速度 5 G 4 G 3.9 G 図 5  モバイルフロントホールの帯域削減 上位層 MAC層 物理層 BBU 現行のMFH構成 MFH (CPRI) RRH 無線 送受信 端末 上位層 MAC層 物理層 の一部 BBU RRH 物理層分割伝送 無線 送受信 物理層 の一部 端末 機能配備変更に より,無線デー タレートに近い 速度の信号を光 伝送する

(5)

なるものかもしれません.また,適用 されるネットワーク技術に関しても, 1 つに集約できるものでもないよう です(図 6 ).さらに,モノが送受信 する情報の特性がどのようなものにな るのかも多種多様な議論があります. このように,M2M,IoT時代のネット ワークをどう実現するか,どのような アクセスサービスとして提供できるか は,非常に大きな研究開発テーマであ り,次に向けた新たな領域になると考 えています. ■部品としての技術の適用 NTTアクセスサービスシステム研 究所では,現在に至るまでさまざまな 技術を開発してきました.各々の技術 に関して接近してみると,ネットワー ク以外の領域に利用できる技術もある かもしれません.例えば,光ファイバ の 損 失 を 測 定 す るOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)は,光 ファイバネットワークの故障を探索す るだけでなく,光ファイバの物理的変 化を観測できるといった特徴を活か し,河川堤防の状態や構造物の歪みな どの観測にも用いられています(8).同 様に,PONを構成する個々の技術を 「部品」としてみなし他の分野への応 用(光信号の衝突回避制御が物流の制 御に利用できる等)も十分考えられる と思います.逆に他分野で利用されて いる技術を「部品」とみなし,ネット ワーク技術の不足する部分への組み込 みも考えられます.今回のつくば フォーラムでは,「アクセスシステム 技術」「オペレーション技術」「ネット ワーク技術」「基盤技術」として研究 所で開発されている技術が紹介されて いますが,この技術分類にとらわれな い「部品」として,何に利用できるか も考えていきたいと思います.同時に 各方面からの意見交換などを通し,新 たな領域でのコラボレーションも積極 的に進めたいと考えます. 今後の展開 多様化するサービスの創出には,こ れまで以上に研究開発のテーマの多様 化が必要となります.NTTアクセス サービスシステム研究所では,高速 ・ 広帯域化のアクセスシステム技術開発 に加え,M2M,IoTに向けた新しい視 点での技術開発,さらに,これまでの 領域を超えたところでの応用など,幅 広い研究開発にチャレンジしていきた いと思います. ■参考文献 (1) http://www.ntt.co.jp/RD/OFIS/active/1998pdf/ tn.pdf (2) http://www.ansl.ntt.co.jp/history/access/ ac0109.html (3) 落 合 ・ 立 田 ・ 藤 本 ・ 田 中 ・ 吉 原 ・ 太 田 ・ 三 鬼:“Gigabit Ethernet-PON(GE-PON)シス テムの開発,” NTT技術ジャーナル,Vol.17, No.3,pp.75-80,2005.

(4) Y. Fujimoto: “Application of Ethernet Technologies to FTTH Access Systems,” IEICE Trans. Commun., Vol. E89-B, No.3, pp.661-667,2006. (5) 可児 ・ 鈴木:“次世代10G級PONシステムの 標準化動向,” NTT技術ジャーナル,Vol.21, No.9,pp.90-93,2009. (6) 浅 香 ・ 可 児:“次 世 代 光 ア ク セ ス シ ス テ ム (NG-PON2)の標準化動向,” NTT技術ジャー ナル,Vol.27,No.1,pp.74-77,2015. (7) 宮本 ・ 桑野 ・ 寺田 ・ 木村:“PONを適用した 将来モバイルフロントホールの光伝送容量に 関する一検討,” 信学技報,Vol.114,No.119, CS2014-18,pp.7-12,2014. (8) 藤橋 ・ 宮本 ・ 奥津 ・ 奥津:“光ファイバセン シング技術を用いた防災分野への取り組み,” NTT技術ジャーナル,Vol.19,No.9,pp.52-56,2007. 図 6  M2Mの機能アーキテクチャ例 M2Mアプリケーション M2Mプラットフォーム M2Mゲートウエイ M2Mデバイス 基幹ネットワーク M2Mエリアネットワーク M2Mデバイス M2Mデバイス 有線(FTTHなど) 無線( 3 G, LTE, WiMAX, 5 Gなど) 10年以上使われる 共通インフラ デバイス・利用に応じた エリアネット IEEE802.11, .15.xなど ◆問い合わせ先 NTTアクセスサービスシステム研究所 光アクセスサービスプロジェクト TEL 046-859-5280 FAX 046-859-5514 E-mail fujimoto.yukihiro lab.ntt.co.jp

参照

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