小テストのためのちょっとした工夫
岩 本 直 樹
(工学部教授)要旨
試験による成績評価は授業科目に付き物である。1学期間の試験頻度として期末試験1回のみでは 試験範囲が広く、また一発勝負になる。そこで、毎週の小テストのようなものが勉学を促す意味でも、 学生の理解度を知る上でも役に立つ。一方、試験頻度が増えると教員にとって問題作成、採点などの 負担が増えることとなる。本稿では、その負担をできるだけ減らせるように択一式試験問題について いくつかの工夫について述べる。1.はじめに
いまさら択一式試験方法の功罪は論じないこととする。様々な試験方法の中で択一式は採点のやり やすさが最大の利点であろう。実際、大学入試センター試験でも各科目で多用されている。択一式は 回数を多く行う試験には費用対効果という点で有効な方法であると思われる。2.マークシート
1)の作成と使用
択一式試験問題の解答用紙はマークシートが便利である。 これは、市販されているものを購入する、インターネットの サイトで作成する、自分で作るなどする。自分で作る場合は 既成のマークシートの必要な部分を切り取り、その画像つく り、それを解答用紙のファイルに埋め込む。筆者は大学入試 センター試験の解答用紙を用いている。(図 1 参照。)これを 必要部数印刷して試験に使用する。3.模範解答用紙の作成と採点
採点用模範解答用紙は各問題の正解を解答用紙に印をつけ、 それをポンチで穴を開ける。穴あけに必要なものはポンチ(直 径約5mm)、ハンマー、ゴム板である。採点にはその模範解答 図1 マークシート形式の解答用紙 の例。用紙を学生の解答用紙に重ねて正解の数を数えればよい。(図2、3参照。) その際、一つの問題に対して複数を塗りつぶして解答している場合に注意する。模範解答用紙を重 ねた状態では見分けられないからである。 五者択一ではランダムにマークしても確率的に約 20%は得点できるはずである。このため、連続し て1つ(たとえばA)の答えをマークして、明らかに問題を解いた結果とに認められない解答に対し ては点を与えないことで対処できる2)。 注2:現実には 10%以下、5%以下の得点の学生が必ずといっていいほど存在する。勉学の形跡が見 られないばかりかよほど運もよくないというべきであろうか。確率的にはなかなか意図しても 取れない点数ではある。
4.成績発表
成績発表はインターネット上で行なうのが便利である3)。発表が随時にできるし、学生が見る場合 にも見やすい。ただし、学生の名前、学籍番号などは使えない。そこで、成績発表用に個々の学生に 暗証番号を割り振ればよい。具体的には、履修者名簿のファイルで学籍番号あるいは名前の欄の横に 乱数を割り振る。(表1参照。)それを適当に拡大印刷して、短冊状にして各学生に配ればよい。(表 2 参照。)たとえば、0から1の間の乱数を発生させるには Microsoft Excel で数式欄に =RAND()*( 1-0) +0を入力すればよい。そのあと枠の右下角にカーソルをあて(十字マーク)、左クリックで下方へ 図2 模範解答用紙の例。下に黒い紙を 重ね、穴が開いている部分は黒丸 として見えるように表示してある。 図3 採点例。穴の開いた模範解答用紙 を学生の解答用紙に重ねた状態。
表1 履修者名簿での暗証番号の割り当て 学籍番号 氏名 暗証番号 1 15T701 香川太郎 0.239295633 2 15T702 高松次郎 0.639423811 3 15T703 讃岐花子 0.430097354 … 表2 個々の学生に配布する短冊の例 15T701 香川太郎 0.239295633
5.解答用紙の返却
解答用紙を返却する際、個々の問題に対する解答に採点はされていないことに留意する。つまり合 計点の記入はあるが、例えば第 10 問が正解かどうかということについて採点結果の記入はない。し たがって、学生が確認の自己採点をするためには模範解答を公表する必要がある。さらに、解答用紙 を返却する前にコピーをとって保存しておく必要がある。これは、もし学生から採点ミスの指摘があっ た場合、本当に採点ミスなのか学生が解答を書き換えて持ってきているのかを区別するためである。6.記述式と択一式の併用
択一式では解答に至った過程が分からない。とくに、計算問題で、実際計算をして答に至ったかど うかが分からない。そのために学生が実際に計算を行ったかどうかを記述する欄を設けるとよい。(図 1参照。この例では第 12、23、24、25 問が記述式になっている。)採点はあくまでマークシートによ り行い、該当する問題が正解の場合に適宜記述欄を見て、実質的に計算がなされたかどうかをチェッ クすればよい。つまり、マークシートで正解でも記述欄が空白である場合や適当な計算がなされてい ない場合は点を与えない。たとえば、図3の採点例では各問の配点が 1 点ずつの場合、得点は 25 点 満点中 12 点となる。一方、第 12、23、24、25 問の配点が各3点、そのほかの問題の配点が各1点の 場合、第 12、23、24 問が正解なので(それぞれの記述式の部分が正しく記述されているとして)得 点は 33 点満点中 18 点となる。7.予想問題集、過去問の提示
学生の試験準備に役立つように、予想問題集あるいは以前に使われた試験問題(過去問)をインター ネット上で提示しておくとよい。重要な項目を選び、それらをどの程度理解しておいて欲しいかを問 題の形で提示しておけば学生の勉学を促すのに役立つと思われる。8.近隣の座席の答案が見える可能性のある大教室での試験問題
階段状になった教室などでは、見ようと思えば前の座席に座った学生の答案が見えることがある。 このように構造上、試験を行うのに不適当である教室で多人数に対してやむを得ず試験を行なわなけ ればならない場合がある。このようなとき、いくつかの種類の試験問題を作成して実施するという方 法がある。つまり、異なったバージョンの問題を作り、それを学生にランダムに配布する。各学生は、 解答用紙にどのバージョンを解答しているかを記入する。したがって、近隣の学生が自分の解答して いるバージョンと同じものを解答しているという保証がないので、他人の答案を見て解答を書き写す 意味がなくなる。試験のあとでは各バージョンごとに分類して採点をする。もちろんこの方法は小テ ストに限らない。9.座席指定で試験実施
これも小テストに限ったことではないが、多人数の試験では座席を指定して実施すると利点がある。 たとえば、試験室(講義室)で学籍番号順に座らせると「友達同士」がかたまる可能性が減るので不 正行為の機会も減る。また、答案用紙などを席順に集めれば学籍番号順に並んでいるので、並べ替え の手間が省ける。小テスト後に授業を行う場合座席指定を解除して自由席にすればよい。10.Toledo 大学での採点支援システム
これも小テストに限ったことではないが、多人数の試験では座席を指定して実施すると利点がある。 たとえば、試験室(講義室)で学籍番号順に座らせると「友達同士」がかたまる可能性が減るので不 正行為の機会も減る。また、答案用紙などを席順に集めれば学籍番号順に並んでいるので、並べ替え の手間が省ける。小テスト後に授業を行う場合座席指定を解除して自由席にすればよい。11.Toledo 大学での採点支援システム
筆者の前職場(1986-2000)The University of Toledo4)ではマークシートを使った試験の採点サービ
スが提供されていた。大学の備品として規定のマークシートがあり、試験はそれを使って行う。大掛 かりな数学を使わない自然科学の入門科目の試験でよく使った。たとえば学部1年生向けの天文学入 門(Introduction to Astronomy)では 100-200 人のクラスで約 100 問の択一式試験問題の中間試験を1 学期当たり3回行っていた。試験後、マークシートの答案を封筒に入れて情報センターへ持参すれば 24 時間以内に採点結果が提供される仕組みになっていた。これはプリントアウト(ハードコピー)の 形またはファイルの形、あるいは両方で提供される。提供されるデータは以下の通りである。
(a)各学生の得点結果:各学生について各問題ごとの正誤と総点が学籍番号順に並べられた得点表。 (b)問題の分析結果:各問題の正答率。
(c)集団の統計結果: 平均値(mean)、中央値(median)、標準偏差(standard deviation)、歪度(skewness) など。
これらのデータは試験結果の分析を行うのに非常に役立つものであった。手作りの模範解答用紙を 使った採点では各学生の総点のみしか分からない。(a)-(c) 全て求めるのには、学生の答案の各問全 ての入力が必要となり手入力では相当の労力を要する。情報センターにおける採点処理はまずマーク シートを光学マーク読取装置(Optical Mark Recognition Scanner)を通してディジタル化することから 始まる。現在ではパーソナルコンピューター用の光学マーク認識処理(Optical Mark Recognition)ソ フトウェアを使えば通常のスキャナーで読み取ることができるものがあることに触れておく。
12.おわりに
簡単であり小テストで使える方法についてマークシート方式に限って紹介を行った。Low-tech では あるが簡単に揃えられる道具類、方法のため使い勝手はよいと思われる。
注
1) 英語では Bubble Test Sheet, Bubble Answer Sheet あるいは Bubble Sheet という。
2) 香川大学では Open Source e-Learning Platform である Moodle (Modular Object-Oriented Dynamic Learning Environment) が使える。