• 検索結果がありません。

第20回聖路加看護学会学術大会:シンポジウム 実習を担当する大学教員の立場から

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "第20回聖路加看護学会学術大会:シンポジウム 実習を担当する大学教員の立場から"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

聖路加看護学会誌 Vol.19 No.2 January 2016 − 75 − Ⅰ.はじめに  実習は講義と演習での学びを統合する場であることは もちろんのこと,これから看護職に就くであろう学生の 意欲を喚起し,対象者や看護職,教員とのかかわりを通 して,看護の意義や楽しさを体験を通して得ることがで きる貴重な場である.それと同時に,ひとりの人間とし て一回りも二回りも成長するまたとない機会となる.そ うした意味ある場や機会とするためにも,大学と実践現 場の連携は不可欠である.ここでは,これらをめぐる本 学でのさまざまな取り組みについて紹介し,教育と実践 のハーモニーについて考えたい. Ⅱ.大学と実習施設の「連携」に関するさまざまな 機会 1.日本赤十字看護大学の紹介  日本赤十字看護大学(以下,本学)は,1890年に日本 赤十字社病院における看護婦養成に起源を有している. その後,1946年には日本赤十字女子専門学校を設立し, 戦後 GHQ の命により聖路加女子専門学校と看護教育模 範学院として統合され,1954年に学校法人日本赤十字女 子短期大学が設立された.  1986年には日本赤十字看護大学が設置され,2005年に 日本赤十字武蔵野短期大学と統合し,2016年には看護婦 養成開始から126年,大学設置から30周年を迎える.その 間,1993年に大学院看護学研究科修士課程設置,1995年 には大学院看護学研究科博士後期課程を設置している.  現在,学部は1学年定員130人,3年次編入は1学年定 員10人である. 2.本学の実習  本学では「人々の尊厳と権利を守り,看護を通して赤 十字の理念である「人道(Humanity)」の実現に向けて 努力する人間を育てます.」を教育理念として教育を展開 している.  看護学実習は1年次より段階的に学習を進めており, 多くの医療施設で実習を行っている.実習の多くは,赤 十字関連施設で展開しているが,大学と病院は赤十字と いう理念のもとでは方向性を一体としているものの,組 織としては別となる.基礎や成人領域に関する実習で は,該当学生のすべてが実習に行くため,総勢140人超の 学生が一度に実習を行うこととなる.そのため,1施設 での展開がむずかしく,基礎や成人領域に関する実習の 場合,一度に4施設,具体的には日本赤十字社医療セン ター,武蔵野赤十字病院,大森赤十字病院,横浜市立み なと赤十字病院を実習場所として,一斉に実習をしてい る.  実習場所であるすべての部署では,臨床指導者の役割 にある者が1~複数人配置され,実習の際には学生指導 の役割を担っている. 3.大学と実習の連携に関する会議等の実際  実習では病院側の臨床実習指導者と大学の教員が連携 を図って学生指導にあたるが,実習という一時点をめ ぐって,大学側と病院側とでさまざまな連携の機会を設 け,実習という場や機会をよりよくしていく工夫を行っ ている.  これまで説明したように,大学と病院は組織が別であ るということ,複数施設での実習を同時期に展開すると いうことから,両者の密な連携は不可欠となる.そのた めに,さまざまなレベルの会議を大学とそれぞれの病院 間で設定している.主な会議は次のものである.  まず,大学側の各領域の実習責任者と病院側は部長, 副部長,師長,看護部等が参加して年3回程開催されて いる【実習連絡会議】がある.ここでは,年間の実習予 定内容や実習受入・体制(次年度以降含む)等の検討, 実習報告を行っている.  次に【実習指導者会議:臨床指導者会議】は,より実 習の具体的展開に則した内容に関する内容となる.こち らは年3~5回程度開催され,今後の実習内容の確認や 体制の検討,終了した実習の報告等を大学側は実習を担 当する教員と病院側は臨地実習指導者,スタッフ,師長 等が参加して行われる.  施設によっては,【実習指導者会議:マイスターズ定例 会】年5回程度設け,実習で生じた内容をもとに指導等 について考える場がある.この会議は,大学側から数人 の実習委員会のメンバー,病院側からは経験を積んだ実 【第20回聖路加看護学会学術大会:シンポジウム】

実習を担当する大学教員の立場から

西田 朋子

日本赤十字看護大学看護学部

(2)

− 76 − 習指導者が数人参加し,実習指導に関して具体的場面や 現象から実習指導や大学と病院の連携のあり方について の検討を行っている.  そして,毎年度末に1回【実習指導者懇親会】を開催 し,赤十字関連施設のみならず,本学の実習を受け入れ ていただいているすべての実習施設の実習指導に携わっ てくださる方々を招き,大学側の教員との懇親会を設 け,総勢200人を超える会となっている.この場は,学生 の学内でのようすや実習指導をしての感想等を臨床指導 者の方からお話しいただくなど,施設を超えて交流をす る機会となっている. Ⅲ.大学と実習施設共催の「実習指導者研修会」 1.実習指導者研修会の概要  学生にとって実りある実習とするためには,連携に関 する会議等の取り組みだけではなく,実習指導をより充 実させていくことが大切であるという施設側と大学側双 方の意見をもとに,共同企画による「実習指導者研修会」 を2013年から開催している.研修会は,昨年度まで大学 側と複数施設のメンバーで構成されたプロジェクトで企 画・運営され,今年度からは本学のフロンティアセン ターの事業として展開し,今年度より本学の実習施設に 限らず,施設の条件は設けずに参加者を募集している. これまでの修了者数は109人で,講義は聴講制度も設け ているため聴講者も含めるとさらに多くの看護職からの 参加がある.  この研修会は厚生労働省が認めている「保健師助産師 看護師実習指導者講習会」と比べて時間数と内容をコン パクトにして実施しているのがひとつの特徴である(表 1).  看護師等養成所の運営に関する指導要領では,「実習 指導者になることのできる者は,担当する領域について の相当の学識経験を有し,かつ,原則として必要な研修 を受けた者であること」とされ,必要な研修は「保健師 助産師看護師実習指導者講習会」(以下,講習会)のこと を指している.しかし講習会は,定員数などに限りがあ り,実習指導を担当する看護職員全員が受講できる状況 にはないこと,また,講習会は40時間(40日間)である がその日程を確保することがむずかしいという現場にお ける課題があった.そのため,これらを考慮したプログ ラムを設定した. 2.研修参加者の学び  参加者は研修でさまざまな学びをし,役立っていると いう結果が得られている.とくに,「学生への理解」「学 生への関心」が高まったという意見や「自身の指導の傾 向がわかった」「自身の指導を吟味することができた」と 表1 実習指導者研修会の概要 日数 内容 1日 開講式 【本学の教育課程】本学のカリキュラムと実習の位置づけ 【教育原理】教育の意義,目的,教育活動の特性,人を育てる(教育)観など 【看護学概論】看護の概念,ケアリング等 【実習指導概論】実習指導の展開と実習指導者の役割,実習指導の過程・方法など 1日 【教育心理】人間の発達,学習過程における心理,学生の特性,状況的学習論など 【対人関係論】実習場面での対人関係スキル,アサーティブな自己表現など 【教育方法】状況に埋め込まれた学習(状況的学習論:正統的周辺参加論) 【各領域実習の実際】各領域実習の目標(領域毎;選択制にする) 2日 指導案を作成.(Group Work) 1日 【実習指導に関する実習】実習指導を実施し,そのなかで計画案を展開する 1日 自己学習(実習指導のリフレクション) 【看護倫理】看護と倫理,実習指導と倫理 【看護管理】看護・医療の動向と実習 自己学習(実習指導のリフレクション) 1日 実習指導の実際(演習Ⅱ)実際の実習指導をリフレクションし,事例検討を行う(Group Work) 修了式・閉講式 *その他,実習指導の実際(演習Ⅰ)8−9月 or 10月の実習 *オプション:大学で技術演習見学,他施設で実習指導の見学

(3)

聖路加看護学会誌 Vol.19 No.2 January 2016 − 77 − 単なる指導方法の獲得だけではなく,対象の理解を踏ま えることの大切さ,そして指導のあり方を考え意味づけ る機会となっている. Ⅳ.大学院生(看護教育学領域)の「教育実習」 1.院生の背景と実習概要  本学修士課程看護教育学領域の院生は,何らかの職業 経験をもっており,医療現場での臨床実習指導者として の指導経験や後輩指導の経験,また看護基礎教育機関で の実習指導経験をもっている者がほとんどである.  実習は,看護教育学実習Ⅰ(教育実習),看護教育学実 習Ⅱを設定し,実習Ⅰはすべての修士1年生が履修して おり,学生は実習にでる前に,臨地実習指導法に関する 内容や講義や演習に関する模擬授業も含む,看護教育方 法に関する科目を履修してから本実習に臨むような仕組 みがある.  共通する実習目的・目標は図1に示したような内容で あるが,院生はこの実習目的・目標をもとにして,自身 のこれまでの経験を踏まえた独自の実習目的と目標,そ れに則した実習計画を設定し,実習に臨む.  実習は,本学の学部2年生もしくは1年生の臨地実習 1クールのなかで行い,院生が単独で1つの病棟を担当 する仕組みではなく,本学のある程度実習経験を積んで いる教員とペアになって行う.院生は,学内の教員間の 打ち合わせ,学生へのオリエンテーション等から参加 し,どのような準備がされているのかを知ったうえで, 実習を開始し,学生の許可が得られれば評価面接にも同 席をしている.  実習が開始してからは,自らの実習計画に沿って展開 をしていく.多くの学生は,実習当初は教員がどのよう に学生にかかわっているのか,またその意図や理由など を知るために,教員の実習指導に関するシャドウイング を行っている.その後は,学生によっては特定の学生に 対する指導案を立案したうえで実習指導を展開したり, また,個人に焦点を当てるのではなくグループ全体に対 する指導案を立ててかかわっている.そして,自身の計 画に沿って,院生という立場で実習施設の指導者や師長 へのヒアリング等を行うなど,さまざまな活動を通して 学生の理解,実習場の理解,そして実習指導のあり方を 考えるに至る.  実習中は,実習での経験を他者との意見交換を通して ふり返ったり,意味づけをして次の日からの実習につな げていったり,他施設の状況を知り,より客観的に自身 の実習やこれまでの経験を振り返ることができるよう に,学部生が自己学習の日に院生は領域内で中間報告と いう機会を2度設け,フリーディスカッションや自らの 実習目的・目標に沿った実習の経過報告を行っている. また,実習を終えた後には,最終報告会を開催し,学び を深めて統合,発展させている. 2.実習を通しての院生への期待と学び  院生は本学の学部生が行っている実習に教育実習とし て参加すると,この実習が“よい”実習だと解釈しがち であるが,むしろ院生がこれまでに経験してきた実習指 導のあり方のほうがよいこともある.そういう意味で は,学生にとってよりよい実習とするには,どうしたら よいのかをこれまでの経験と実習での経験,理論的知識 をもとにして,より客観的に考え俯瞰し,修了後に実践 できることを期待している.実習により院生は,次のよ うな学びをしている.その一部を紹介する.  まず,学生が病院,病棟になじむという体験の理解で ある.院生自身も,これまで勤務経験のない施設で実習 をするよう配置するため,その場になじむことや居場所 【目的】   看護学実習における教育・指導について,自ら課題を見いだし,指導の実際を通 して探究することを目的とする. 【目標】   実習目標については,目的に鑑み,各自のこれまでの経験を振り返り,以下の点 を考慮して各自設定する.   1.看護学実習という授業の位置づけを考慮し,その特徴を把握する.   2.現代学生の特性を考え,学生の理解を努める.   3.学生に必要なかかわりとはなにかを考え,効果的な教育・指導を考察する.   4. 実習環境を整え,教員として指導役割を考える.また,臨床側(指導者, 師長,病棟スタッフ)と役割分担について考える.   5. 看護実習指導を通して,既習の理論や文献を活用して理解を深め,自らの 臨床指導上の課題を見いだす. 図1 大学院生看護教育学実習Ⅰの目的・目標

(4)

− 78 − をつくること,スタッフと関係をつくっていくことに最 初は時間を要することを実体験する.院生は,「これまで 看護職の経験をもっていても,緊張したり戸惑いもある のだから,病院で働いた経験をもたない学部生はもっと 緊張が高いのだろう」と自身の体験を学部生の体験に引 き寄せて考え,学生が実習場に溶け込んでいくことがで きるための,かかわりや準備を実感をもって考えること ができるようになる.  そして,学生の多くは青年期にあり,こうした学生が 直面する対人関係や看護実践,学び方に関する具体的な 姿を目の当たりにし,学生の理解を進めている.さらに, 学生や教員,スタッフとのかかわりを通して,これまで 自身が行ってきた学生や後輩への指導の振り返りから, 指導における自身の傾向に気づき,これからどうしたい か,ということを個々に考えることにつながっていく. また,実習のさまざまな体験を通して教員間の連携,学 校と施設の連携のあり方についての考察を深め,最終的 には学生にとっての実習のあり方,学生の成長を促す指 導についての学びを深めている. Ⅴ.学部・編入4年生に対する「看護教育学の授業」  本学では,学部生に対する看護教育学に関する科目と して,「看護教育学Ⅰ:3年次(1単位)」「看護教育学 Ⅱ:4年次(2単位)」「看護教育方法:4年次(2単位)」 を設定している.  これらの科目では,学生のうちからの教育的かかわり への関心をもてる人材を育成したいという思いもこめら れている.  なかでもとくに看護教育方法の科目では,内容に『学 習指導法―教材研究,授業案の作り方,授業の展開』『臨 地実習指導法―実習の位置づけ,授業としての実習,実 習指導の実際(指導案等)』を組み込んでいる.一見,学 生を教える経験をもたない学部生にはむずかしく理解し にくい内容に思えるかもしれないが,学生はこの授業を 通して,教える側の準備や工夫,学習者へのかかわりや 言葉かけの意図や思考,そして大学側と施設側の連携の 実際を知り,教えることへの興味関心が増大していく.  それと同時に,教える側の大変さも理解し,「授業に対 する見方が変わった」というように,教えるという視点 をもちながら授業をとらえられるようになっていく.ま た,それだけではなく,学習理論についての授業を通し て,自分の学び方や傾向,そしてこれまで受けてきた看 護学教育を学生の立場で振り返り意味づけるという作業 が行われている.  看護職となり後輩や学生を教える立場になった看護職 のなかには,教えた経験がないのでどうしたらよいかわ からない,という人もいる.いずれ後輩や学生を教える 役割を担う学生が「学ぶ」ことから「教える」ことにも 興味を寄せ,教育的かかわりに対するへの関心をもつこ とができるようかかわることは教育と実践をつないでい くための大切な芽となるのではないだろうか. Ⅵ.おわりに  他機関での取り組みも参考にしながら,本学における 取り組みもさらに発展させ,学生の学びを支援していき たい.

参照

関連したドキュメント

 少子高齢化,地球温暖化,医療技術の進歩,AI

54. The items with the highest average values   were:  understanding  of  the  patient's  values,  and  decision-making  support  for  the  place  of 

2.認定看護管理者教育課程サードレベル修了者以外の受験者について、看護系大学院の修士課程

 This study was designed to identify concept of “Individualized nursing care” by analyzing literature of Japanese nursing care in accordance with Rodgers’ concept analysis

では,訪問看護認定看護師が在宅ケアの推進・質の高い看護の実践に対して,どのような活動

一貫教育ならではの ビッグブラ ザーシステム 。大学生が学生 コーチとして高等部や中学部の

また、当会の理事である近畿大学の山口健太郎先生より「新型コロナウイルスに対する感染防止 対策に関する実態調査」 を全国のホームホスピスへ 6 月に実施、 正会員

 文学部では今年度から中国語学習会が 週2回、韓国朝鮮語学習会が週1回、文学