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21世紀COEプログラム 市民主導型の健康生成をめざす看護形成拠点 平成15・16年度研究成果報告書

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21

世紀

COE

プログラム

市民主導型の健康生成をめざす看護形成拠点

平成

15・16

年度研究成果報告書

C O N T E N T S

ごあいさつ ……… 3 事業概要 ……… 6 People-centered Care をめざす看護実践開発研究   日本型遺伝看護の創生と普及 ……… 8   日本型がん看護 ……… 10   「日本型がん集学的アプローチのためのケア提供システムの開発」   日本型がん看護 ……… 12   がんサバイバーの身体活力の回復をめざすプログラムの開発   日本型高齢者ケア ……… 14   Women‐centered Care - 性暴力被害者ケア- …… 16   Women‐centered Care - 不妊ケア- ……… 18   地域緩和ケア(在宅ホスピスケア)プロジェクト ……… 20   慢性疾患をもつ子どもの在宅ケアのための   組織的プログラムの開発 ……… 22   日本人の国民性に相応した効果的な   健康教育プログラムの開発と実践 ……… 24   「全ての人々への健康(Health for All)」へ貢献できる   国際コラボレーション実践モデル開発 ……… 26   健康資源コンテンツデジタル化とe-learning 開発 …… 28   市民主導型看護サービスの活用と評価 ……… 30   日常生活援助のための看護技術 ……… 32 健康情報コンテンツ発信・相互交信システム開発 ………… 34 若手研究者の育成と連携 ……… 37 市民および専門職者とのコラボレーション推進   るかなび 聖路加健康ナビスポット/ ナースクリニック ………… 40   国際駅伝シンポジウム ……… 42   シンボルキルト プロジェクト ……… 50 評価会 ……… 52 People-centered Care モデル化への手がかり ………… 56 今後の方向性と課題 ……… 60

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聖路加看護大学は創立以来「キリスト教精神に基づき、看護を志す人々がより豊かな知 性と感性を共に追求し、看護専門職者として成長すること」を教育の目的として、教育と 研究を通して看護学の発展と社会の要請に応えてきました。平成 15 年度には、21 世 紀 COE プログラムに選定され、本学がこれまでに推進してきた「市民の視点からの看 護実践」を、さらに大きく推進することになりました。 聖路加看護大学 21 世紀 COE プログラム『市民主導型の健康生成をめざす看護形成 拠点』は、看護学の大きなパラダイムシフトを視野に入れ、現代社会において医療が 早急に解決の糸口をみつけなければならない健康問題 < 先進医療と看護、病との共生 と看護、社会構造のひずみと看護 > に焦点を当てた看護実践開発研究を核としてすす めております。さらには、 市民が知識・技術的能力を獲得して実質的な健康管理者とな るために活用できる健康情報コンテンツを集積し、世界的規模での発信を試みています。 また、複数の国際シンポジウムをはじめ報告会や評価会には、全教員や大学院生の参加 が可能な配慮をし、看護学研究科を中心に全学的取り組みになるよう支援してきました。その 結果、市民主導型の健康生成に向けた看護学の基本要素の抽出につながってきています。 2 年間にわたるこうしたプログラムの活動は、教職員や大学院生の研究活動にさらなる 活気をもたらしています。活動をつうじて得られた、様々な発見や気づきを実践に移す場 としての看護実践開発研究センターにおきましては、市民とのパートナーシップによるさま ざまな看護実践の経験は、市民の問題解決力の向上につながり、看護職と市民は健康 生成のパートナーであるという社会の認識の変化をすでに生み出しています。「solution としての看護(市民とともに健康問題を解く鍵となる看護)」という新たな視点を確認し たところです。 「生老病死」という四つの大きな体験をする人生において、その主役である市民が、最 期の瞬間まで生きていて良かったと思えるよう、看護は人生の折々に添い、希望や癒し に関与することのできる立場にあると思います。聖路加看護大学 21 世紀 COE プログ ラムは、この理念のもと、市民、 専門家の方々からのご意見を羅針盤にしてすすむもの であります。プログラムに対する多くのご意見がホームページ等を通して頂けることを心 よりお待ちしています。 学長

井部 俊子

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聖路加看護大学 21 世紀 COE プログラム

「市民主導型の健康生成をめざす看護拠点形成」

科学技術の革新的な進歩により、私たちの暮らしはより豊富で、便利になってきました。 それは同時に社会構造の変容にも少なからず影響をもたらし、個々人が生きていく上で の選択肢の多様性を広げることにつながってきました。 人生の生老病死という体験の上 にも、このような社会変化は大きな波として押し寄せています。医療についてクローズアッ プされている話題には、< 先進医療の恩恵の中で自己決定を迫られる人々 >< 慢性的な 病との共生のために継続的に多様なセティングで治療を受ける人々 >< 社会構造のひず みの中で潜在的能力や権利が充分には尊重されず適切な医療を手にしがたい人々 > など があげられており、現代社会における健康問題はますます複雑化し、社会的課題として の取り組みが急務となってきました。 聖路加看護大学 21世紀 COE プログラムでは、社会的課題となっているこれらの健康 問題に焦点をあて、固有のライフスタイル、価値・信念をもつ市民の「生きてきた経験」 から学ぶという理念のもとに、市民主導型の健康生成をめざす看護学の創生をめざしま す。 このプログラムの特徴は、市民の方々とのパートナーシップとコラボレーションです。 1 市民の視点から良質で実用性のある看護サービスを生成すること、 2 それが実質的な健康管理者である市民の手に届くよう健康情報コンテンツや e-learning として世界的規模で発信すること、 3 看護サービスの消費者である市民の視点からその質が評価され、政策提言や新 たな研究課題につなげられることです。 一言でいえば、市民主導の看護サービス生成、集積・発信、活用・評価を有機的に 連関する新しい看護実践科学創生の拠点をめざします。 本プログラムは、隣接した聖路 加国際病院や聖ルカ・ライフサイエンス研究所との教育・研究・実践活動の相互交流 を通して促進されるものです。そして、中央区ならびに東京都をはじめ、広く地域住民の 方々との相互交流が大きな原動力となると考えています。また、ホームページを通して、 国内外の多くの人々と交流・つながりをもっていただけることが成功の鍵であると思って います 拠点リーダー

小松 浩子

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科学技術が飛躍的発展を遂げている 21 世紀 は、ひとりひとりのライフスタイルにあわせて、 自分にとって最良の健康を得ることが可能な時 代です。それは同時に、自分の健康を守り創る ために、それぞれの生き方やライフスタイルに 照らしたさまざまな選択を迫られることでもあり ます。 長寿を手にいれた私たちの多くは、慢性病やが んとともに生きていくことになります。 しかし、治らない病を抱えていても上手に病気を コントロールし、いきいきと生活している人たち は自分を不健康だと思い悩むことは少ないでしょ う。そのためには、自分の身体とこころの状態を よく知り、治療の選択や生活の調整にも心を砕 いていかなければならないのも事実です。 医療技術の進歩によって治癒率や生存率の向上 した現在、必要とされているのは、多様で複雑 な治療や、めまぐるしく変わる医療システムを、 人々がよく理解したうえで、自分の健やかさのた めに活用できることです。こうした努力は、イン フォームド・コンセントや退院調整計画の医療 場面への導入という形ですすみつつありますが、 「医療者側からみた < 納得の上での同意 >9 割、 一方、患者側からみた < 納得の上での同意 >1 割」という新聞報道からも明らかなように、患 者にとって納得のいく医療と、現実の医療との 間にはまだ大きな隔たりがあるといえます。人々 が生涯にわたって、自分の健やかさを手に入れ るためには、生きてきた経験や知恵に基づいて 必要な医療を納得して選択し、自分の潜在力を 医療資源として役立てる主体的な医療への参画 を可能にする「医療コミュニティ」の形成が求め られているのではないでしょうか。 聖路加看護大学では、このような新しい医療の あり方について市民の方々とのパートナーシップ を通じて、広く意見を交換し、そこから見出され たアイデアや知恵を研究や実践活動につなげる ための活動をしています。また、その効果や必 要性を科学的な根拠として、社会に提言してい く、国際的な研究拠点づくりをめざしています。 具体的には、人々の生きてきた経験や知恵を互 いに活用することを通して、変革する社会や医 療の狭間で積み残されがちな健康問題の解決 をめざし、人々の健やかさを促進するという「市 民主導型の健康生成を促進する看護学 (People-centered Care)」の形成としてすすめられてい ます。COE プログラムでは、主に三つの活動を 通して、People-centered Care の創生をめざし ています。 1 People-centered Care モデルを開発し、それ を必要とするコミュニティに適用し、妥当性・ 実用性を検証すること 2 モデルの開発過程で得たエビデンスを、市民 や専門職者が有効に活用できるよう、健康情 報コンテンツとしてデジタル化し、website や e-learning により国内外の人々と相互交信す ること 3 市民や専門職者の視点に基づき開発したモデ ルから生み出された看護サービスの質を評価 し、政策提言や拠点のさらなる拡充と洗練を 図ること

事業概要

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5 年後には、次のような成果が達成できると考 えています。 1 市民の知を集めた新たな「医療コミュニティ の実現」 2 市民が手軽にアクセスし利用できる役立つ健 康情報を、必要時相互交信できるシステム 3 「新ヘルス・コミュニケーション論」の創出 4 医療危機を脱し 21 世紀の健康・生活の向上 への貢献 聖路加看護大学 COE プログラムの活動では、 この 2 年間に 4 領域 11 研究プロジェクトにお いて、People-centered Care モデルの開発を推 進してきました(詳細は、セクション III に記載)。 各研究領域において、コミュニティとの協働に より、〔自分にあった医療の意思決定を支えるガ イド開発〕〔性暴力被害者支援ガイドライン〕〔慢 性病をもつ高齢者の自己管理モニターを備えた 遠隔看護支援システム〕など、市民が主体的に 自分のための医療を選んでゆくための指針、場 や時間を越えて必要な看護サービスを利用する 有機的な医療システムをつくりあげました。併 せて、研究成果からわかりやすく良質で役に立 つ健康情報を、市民が手軽に利用し、必要に 応じて相互交信できるシステムとして「看護ネッ ト http://www.kango-net.jp/」という Web サイ トをオープンしています。「看護ネット」は、双 方向の交信を柱として、医療者の一方的押し付 けにならない、社会におけるヘルス・コミュニケー ションのひとつの新しい形となりうると考えてい ます。 また、People-centered Care が、社会に受け入 れられ根付くために、研究成果から見出した共 通テーマ(医療への意思決定、医療の協働メン バー等)に関し、セクターを越えて議論し、新 たな医療コミュニティ形成をめざしてプロモー ション活動(国際駅伝シンポジウム、市民フォー ラム)を行いました。こうした活動を通して医療 者と市民がパートナーシップを生み出す過程は、 すべてフィールド・データとして蓄積しており、 つながりや、やりとりに必須の〔言葉の力〕や〔場 づくり〕など社会学的、組織論的な視点を含む 概念とノウハウが生まれてきています。 以上のような研究活動を、パートナーである市 民の方々と分かち合うための報告書をまとめま した。報告書には、研究者が記した具体的な活 動とその評価のほか、5 年間にわたり研究活動 について客観的に評価しナビゲートしていただく 外部評価委員の方々による評価も記しています。 そして、これらの結果を踏まえて今後の課題を 見出しています。 この報告書をご覧いただいた皆様から、忌憚の ないご意見を得ることにより、聖路加看護大学 21 世紀 COE プログラム推進の更なる言動力を いただけことを心より願っております。

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普段の生活の中では、遺伝については話題にす ることも少ないと思います。しかし、親から引き 継がれ、子どもに引き継いでいく「遺伝子」は、 すべての人に関わってくることなのです。「生まれ るまえに子どもの状態を知ることができる出生 前検査」や「病気が発症するまえにその遺伝子 を検査する発症前検査」とは、どのようなもの なのか、そのことがらに直面する前から、少し 考えてみませんか。どのように私たちは医療を 活用したらいいのか、私たちはこのようなテーマ について、「みなさんと共に考えていきたい」と 考えています。

これまでの研究活動とその成果

 遺伝看護の創生

日本における遺伝看護の実践能力 ヒトゲノムプロジェクトは、少数の限られた人々 の問題としての「遺伝」からすべての人々に関わ る「遺伝」へとパラダイムの転換をもたらしまし た。科学技術の進歩の中で、生まれる前に子ど もの状態を知ること , 発病するまえにその遺伝 子の存在を知ることが、どのような意味をその 人の人生の中でもつのか十分に検討されないま まに科学技術のみが先行したことは否めません。 検査や治療の選択を迫られている人々の苦悩に 付き添い、人生の決定を支援する , 医療の中で の「CURE」とは異なる「CARE」が , 今遺伝医療 に求められています。 すでに海外では、遺伝カ ウンセラー , 遺伝看護師は存在し、各国の医療 事情に合わせた活動を展開しています。日本の 歴史と文化を考慮した「日本型遺伝医療」の構 築が、必要と考えています。 われわれは「遺伝 看護の実践能力を育成する教育モデルの開発と 評価」の研究に取り組み(科学研究 費基盤 A)、 わが国で始めて、遺伝看護の実践能力明らかに しました。 遺伝看護の教育モデルの開発 上記の内容にそって、看護職にむけた遺伝看護 「教育プログラム」を開発し評価まで行いまし た。 このような活動は、海外の学会 ISONG(国 際遺伝看護学会)で高い評価を得ました。今後、 このようなプログラム(まずは周産期遺伝相談) をネット上で提供していく予定です。

People-centered Care をめざす看護実践開発研究

 日本型遺伝看護の創生と普及

研究代表者

有森 直子

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遺伝医療に関連した 意思決定を支えるケアの開発 医療を受ける際に、検査を受けるべきか等の選 択に悩まれたときに意思決定を支援するガイド をネット上で紹介していく予定です。また、この 内容は、駅伝シンポジウムにおいて市民の皆様 に紹介されました(詳細は、40 ページ 駅伝シ ンポジウム参照)。

 遺伝看護の普及 :

 研究と社会的活動の融合

日本遺伝看護研究会の活動の拠点 本学は , 日本遺伝看護研究会の立ち上げより研 究会事務局としての機能を果たしてきました。 本 研究会は、1999 年に発足し、現在会員数は 160 名に上っています。本学は、定期的に行わ れる事例検討会や本会役員会の会場として、さ らに HP の情報発信地の役割を果たしています。

 新しい「遺伝」教育 :

 いのちを守る視点にたった「遺伝」を

 市民とともに考える

新しい「いのちの教育」の展開へ 2005 年 1 月末の警察庁のまとめでは、昨年の 14 歳未満の事件は凶悪化し、2003 年より 3% 増、2 年連続 2 百人超と発表されています。こ のことからもわかるように、子どもたちをとりま く環境は、著しく変化を続けています。 私達は、いのちの連続性やいのちは唯一無二 であることについて、統合的に伝えていくことの 重要性を実感しています。本研究プロジェクトで は、日本助産婦会東京都支部「AYA の会」の プロジェクトと協働して、子どもたちに生命の尊 さを伝えるため、小学生を対象に、「いのちの 教育」を実施してきました。 この活動は「出前授業」として様々なメディアに も紹介されました。この間に絵本や人形などの 教材も充実させています。これまでに、両国小 学校、明石小学校において、出前講座を行って います。このような活動を紹介し、「遺伝」につ いての理解がいのちの教育の基盤となることは 言うまでもなく、今後このような問題は医療者 のみでなく市民と共に考えていきたいと計画して います。

  評 価

すべての評価は、ケアを受ける市民の皆様にど れだけ貢献できたかによって評価していきたい と考えております。遺伝看護は、まだ新しい分 野であるために、現時点での活動は主に看護職 の力量をアップすることに主眼が置かれていま す。したがって、看護職がどれくらい力量をつけ ることができたのかが、第 1 段階の評価となっ ています。このような看護職から受けたケアを 通して皆様に評価をお願いしていきたいと思っ ています。

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People-centered Care をめざす看護実践開発研究

 日本型がん看護

「日本型がん集学的アプローチのための

       

ケア提供システムの開発」

2

あなたが主役ですすむ がん医療の新しいシステムづくりをめざして がんの診断・治療技術の発展は目を見張るス ピードですすんでいます。それに伴い、治療の 選択肢が広がり、治療効果を高めるために複数 の治療法が、外来をベースに継続して行われる ようになってきました。本プロジェクトでは、継 続的に複数の治療が行われ、それに伴い治療 の場が変わっていくときに、治療効果が最大限 に高められるように、また、治療をうけるその 人自身が移り変わる治療に適切に対応し、治療 環境やシステムに戸惑うことなく個々の生活を 充実して送ることができるような、新しいがん 医療システムづくりをめざしています。この新し いがん医療システムは「がん集学的アプローチ」 と呼ばれています。(研究プロジェクト名は、少 し堅苦しいですが、「日本型がん集学的アプロー チのためのケア提供システムモデルの開発」と しています)。

これまでの活動とその成果

 どこまですすんでいるのか、わが国の

 「患者中心のがん医療システム」?

外来通院治療部門を中心としたがん医療シス テムのハード面(診療科の立て方や人員配置な ど)やソフト面(専門職者間での相談や連携な ど)が、患者を中心にどのように整えられてい るのか、またどのような課題があるのかについ て、医療者や患者の方々を対象に、面接調査を 行ってきました。現状では、〔主治医が一貫して 患者の治療過程へ責任〕をもつ体制が主であり、 主治医の判断により、〔必要時に専門医・他職 種への治療・ケアの依頼・委譲〕が行われてい ました。また、看護師は、〔主治医を介して患者 の病状や治療に関する情報の受け取り・理解〕 を行い、同様に〔主治医を介して他職種への依 頼・調整〕を行っていました。患者を理解する ことや、その時々に必要とされる連携や調整は、 外来という限られた人的・物的環境下で、主治 医、あるいはその意向をうけた看護師によって、 他の専門職者と点と点をむすびつけるように行 われていました。 残念なことに、患者からは、このような医療者 個々人の努力に基づいて行われている医療者間 の連携や調整は見えにくく、治療選択、治療継 続に関しては、医療者個々人の努力で行われて いると考えている人が、ほとんどという現状でし た。その反面、多くの患者は「医療者や医療シ ステムに対する信頼」を寄せていること、それが、 治療を選択・継続していく上で自分の要となっ ていることが明らかになりました。以上の分析 から、「患者中心のがん医療システム」の主要な 要素として、< 多重性 >< 継続性 >< 相互依存性 >< 自律性 > がみいだされました。 研究代表者

小松 浩子

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 米国視察から学んだ、わが国の

 「患者中心のがん医療システム」に

 取り入れるべき点

がん集学的アプローチの先駆的実践を行ってい る米国 M.D. Anderson Cancer Center の視 察 を行い、がん集学的アプローチを運用する上で の、ケア提供システムの現状と課題を調査しま した。医療保険制度ならびに臨床研究への取り 組み・制度の相違を考慮にいれ、わが国のがん 医療の現状を踏まえつつ、視察調査を分析した 結果、〔学術上の連携・協働を維持・向上する ためのスタッフに対する継続教育の重要性〕〔患 者を中心とした医療サービスの質および効率性 の維持・向上を支えるソフト面とハード面のシス テムづくり〕〔患者が医療サービスを上手に活用 するための賢い知恵の獲得や普及、そのための 健康資源活用システム整備〕などが明確になり ました。

  評 価

前述した調査結果は、今後わが国独自のがん集 学的アプローチを検討する上で大きな手がかり を示すものと考えています。現実の乳がん医療 の中で、日本の医療事情を反映した「患者中心 のがん集学的アプローチのためのケア提供シス テム」を開発するにあたり、前述したがん集学 的アプローチの主な要素がどの程度医療システ ムとして運用されつつあるのか、それを医療者 や患者はどのように認識しているのかについて、 集めたデータを基に、全国規模のアンケート調 査を実施する予定です。 また、これらの新しいケアシステムに必要とされ る、患者間でのサポートシステム(乳ガン女性 のためのサポートプログラム)、良質な医療サー ビスの標準化(外来がん化学療法のためのケア ガイドライン)がすすみ、実践を開始しています。 これらの評価を集積しながら、包括的にがん集 学的アプローチのためのケアシステムを実用化 する予定です。

「がん集学的アプローチ」とは ?

がん集学的アプローチは、優秀な専門家からなるチーム により、診断放射線医学、乳腺外科、内科的治療、放 射線治療、整形外科、病理学、看護やカウンセリング など異なる領域にまたがる医療サービスを、統合された 形で包括的に患者に提供するものです。 こうした専門チームは、最初の診断から、その後の治療 も含め一貫して、協働ミーティングを開催し、個々の患 者に最適の治療計画を立てます。このアプローチによっ て、患者は自分自身の治療にパートナーとして積極的に 関与し、中心的な役割を維持します。

Suburban Breast Center ホームページ抜粋・編集

(http://www.suburbanhospital.org/breastcenter/Multi_Approach.html)

Suburban Breast Center は、質の高い包括的ながん治療を提供している病院として、米国外科学会がん部会(CoC)より 認定されています。

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People-centered Care をめざす看護実践開発研究

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 がんサバイバーの身体活力の

回復をめざすプログラムの開発

研究代表者

外崎 明子

がん治療後の方々(がんサバイバー)の多くは、 貧血、食事量の減少などの治療の副作用や疾 患の影響により身体の各機能が低下し、疲れや すさや睡眠の変化(熟眠感がないので昼寝が必 要)といった症状が長期間続きます。これによ り、気分が晴れない、無気力、不安感があるな どの心理反応が多くみられます。そこでがんサ バイバーの方々がこれらの不快な症状から解放 され、治療前の普段の生活に順調に復帰できる よう、運動を取り入れた活力回復のためのプロ グラムを開発し、自らの力で新たな健康生成を していくことを目指しています。

これまでの研究活動とその成果

これまでの研究活動は大きく以下の 2 つです。

 国内外での身体機能低下者への

 運動療法を基盤とした

 取り組みに関する現状分析

国内の地域の一般高齢者を対象とした寝たきり 予防のための運動プログラムは、神奈川県川崎 市、東京都千代田区などで実施され、介護負担 の軽減や高齢者自身の QOL(Quality of Life、 生活の質)の向上に成果を示しており、今後全 国的な普及が期待されています。がんサバイバー を対象としたものは、国外で米国を中心に医療 費削減目的も含め、乳がんや造血細胞移植(骨 髄移植など)後の方々を中心に広まり、具体的 にはウォーキングなどの持続的な有酸素運動プ ログラムを身体能力に応じて実施しています。 これにより免疫力、心肺機能、神経・筋機能な どが向上し、心理的な安定をもたらし、社会生 活への復帰までの期間が短縮し、QOL の向上 が望めるようになっています。

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 造血細胞移植を受ける患者における

 移植後の歩行に焦点をあてた

 身体能力の評価と主観的健康観との

 関連についての分析

造血細胞移植(以下、移植)は白血病などの治 療法として急速に普及しています。この治療で は無菌室管理が必要となり、患者は長期間狭い 空間での生活を余儀なくされ、歩行能力の低下 が他のがん治療と比較して多く見受けられます。 これを受けた患者の移植前から退院 3 ヶ月後ま での下肢筋力と主観的健康観(倦怠感と不安感) の推移と関連の分析によると(下図)、歩行数 が少ない者は下肢筋力は低く、不安感や倦怠感 が増し、さらに食事量が少ない場合は退院後も 筋力の低下が顕著でした。 下肢筋力では特に足関節の背屈力が弱くなり、 このため歩行速度が遅くなって歩行数が増えず、 外出の機会や気力を失うような悪循環が予測さ れ、社会復帰が遅れる要因になります。

  評 価

自宅においても運動を安全に効率よく実施でき る方法を確立し、特に運動の種類・強度・頻度・ 強化方法について、対象の方々の嗜好も取り入 れられるよう、市民の方々のニーズや地域の特 性に適合した方法であるよう検討していくことが 今後の課題と考えられます。 歩行数の減少 食事量が少ない 下肢筋力の低下 足関節の 背屈力の低下 歩行速度の低下 外出機会や 気力の低下 社会復帰の遅延 不安が増す 倦怠感が増す がんサバイバーの QOL の低下 悪循環

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People-centered Care をめざす看護実践開発研究

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日本型高齢者ケアプロジェクトでは、大きく分 けて二つ、全部で三つの研究・開発活動を推進 しています。全ての研究成果は下記 Web 上で 公開しています。 また、テキストやパンフレットとしても大学 2 号 館「るかなび」で、ご覧いただけます。 ■ HOT 支援館 http://www.kango-net.jp/paxhot_v1/index. html ■呼吸生き息き読本シリーズ http://www.kango-net.jp/project/04/04_2/ p04_06.html ■高齢者のおしりのスキンケア http://www.kango-net.jp/project/04/04_2/ p04_05.html ■高齢者の脱水予防 http://www.kango-net.jp/project/04/04_2/ p04_03_01.html ■ LMS-HOT http://www.kango-net.jp/project/04/04_2/ p04_04.html

日本型在宅版学際的チームアプローチ

市民・専門職教育センター開発

 専門職を目指す

 学生市民のための教育プログラム

異なる専門性をもつ複数の人材からなる学際 的チームアプローチ(Interdisciplinary Team Approach:ITA)は、高齢者への長期的なヘル スケアに不可欠ですが、そのためには、多職種 の専門性を理解したうえで、チーム内のコミュ ニケーションを重視した協働と連携を通じてケ アプランの作成などをすすめる必要があります。 しかしながら、老年学に関連する各専門領域で 用いられる用語やケア視点の難しさがあり、課 題も大きいものです。そのため、将来専門職を 目指す学生のうちにこれらの課題に気づいても らうため、学生市民に焦点をあて、学際的チー ムアプローチを推進する教育プログラムを開発 し実施しました。 これまでの研究活動とその成果 保健医療福祉専門職をめざす学生のための合 同教育プログラム(3 日間)を開発し、講義、 チェーンレクチャー、多職種事例検討会、チャ レンジプログラムを含むプログラムを作成し、 実施しました(写真 1)。全国から18 名の学生 が参加し、これらの学生に参加前、参加直後、 3 ケ月後、6 ケ月後に ITA の価値、効果の認識 および、自身の貢献とスキルを評価する質問紙 を用いて評価しました。その結果、「チームカ ンファレンスはそのプロセスを重視する」「チー ムアプローチはケア提供をより効果的にする」 「チャレンジプログラムはチーム作りに有効であ

 日本型高齢者ケア

研究代表者

亀井 智子

研究メンバー : 久代和加子、梶井文子

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る」「合計得点」において被験者内効果が有意 に認められました(p<0.05)。また、現在も参 加者同士が密に情報交換を行い、互いに情報 伝達や問題について相談しあうという交流が継 続していることが明らかとなり、市民主導による 課題解決のためのグループ化が図られるという 成果が確認されています。

 高齢者および家族・介護者市民

 向けの教育プログラム

脆弱な健康状態にある在宅高齢者にとって重症 化する以前の予防はとても重要です。高齢者に しばしば生じ、生活の質(Quality of Life:QOL) を低下させる脱水およびドライスキンに焦点を あて、高齢者脱水予防のためのチェックリスト、 および高齢者の臀部スキンケアプロトコルの開 発を行いました。 これまでの研究活動とその成果 ■脱水予防教育プログラム 在宅療養中で定期的に医療機関に受診中の高 齢者 159 名からデータ収集を行い、既に明らか になっている脱水に関連する要因を再検証し、 高齢者の脱水状態の早期発見と予防のための チェックリストを作成しました。 ■高齢者の実践的臀部スキンケア方法の開発 おむつを使用している入院・入所中の高齢者 114 名の臀部皮膚の細菌・皮脂量・水分量、療 養環境などについてデータ収集を行い、皮膚保 護清浄剤を用いた効果的なスキンケア方法(プ ロトコル)を開発しました(図 1)。これらは家族・ 介護者向けの教材パンフレットとして大学 2 号 館に掲示されています。

高齢者の健康生成のための

遠隔看護支援システム開発

慢性閉塞性肺疾患、喘息ほか呼吸器疾患をも ち在宅療養を行う市民のために、自宅にネット 端末を設置し、送信された日々の心身のデータ により健康管理を行う遠隔看護支援システムを 開発しました。看護モニターセンターにおいて は健康管理支援、およびインターネットによる 教育プログラムの提供をおこなうシステムを作 成しました。あわせて、ネット端末、パルスオキ シメータ、ピークフローメータ、血圧計、体温計、 療養日誌などを入れるための専用バッグと日々 の療養に必要な物品を収納するための壁掛け、 教育用テキスト(4 点)療養日誌を開発しました。 (写真 2) これまでの研究活動とその成果 今年度はモニターセンター用のサイトを完成さ せ、利用者管理の方法、トリガー項目に基づく 緊急通報の方法について具体化しました。また、 患者の調査を通じて、稼働状況に問題がないか、 急性増悪の兆候を捉えることが可能であるか、 継続してモニタリングを行っています。 写真 2. 遠隔看護支援 システム、および教材、 テキスト、専用バッグ 壁かけ

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ドメスティック・バイオレンスは、全世界的な問 題として国連総会、世界女性会議で中心的課題 として問題提起されてきました。日本では、夫 や恋人など親密な男性からの暴力を対象とした 総理府による全国無作為調査(2000)によると、 3人に1人が心理的な暴力を受けた経験をもち、 20 人に 1 人は「命にかかわるような暴力を受け た」経験をもっているという深刻な被害の実態 が報告されています。2001 年 10 月「配偶者か らの暴力の防止および被害者の保護に関する法 律」が制定され、さらに、2004 年に法律改正し、 通報をはじめとする医療者の役割が規定されま した。ドメスティック・バイオレンスは、女性の 健康に大きな影響を及ぼし、身体的暴力による けがのみならず、心理的な影響も多大です。こ れまで、ドメスティック・バイオレンスの被害者 に対し医療が何をすべきか、具体的に示した指 針は出されていません。そこで、本プロジェクト では、医療で用いられるドメスティック・バイオ レンスのガイドラインの作成と普及を行うことを 目的としています。

 活動経過および

 現在得られている結果

本ガイドラインは、Evidence- based Medicine(EBM: 根拠に基づいた医療)の基本 的手法に基づいて、看護の領域で作成された初 めてものです。ガイドラインは、 1) 作成グループの設置 2) ガイドラインの使用者と範囲の決定 3) 系統的な文献検索 4) 文献の批判的吟味とエビデンスレベルの作成 5) 推奨文の作成 6) 本文の作成 7) ガイドライン(案)の外部評価 8) ガイドライン(案)の修正 という手順を踏んで作成されました。 支援の内容は、 1 支援環境を整える 2 DV スクリーニング(質問紙の使用・リスク ファクターの探索・臨床症状の探索) 3 DV 可能性の査定 4 女性は支援を求めるかどうかを聞く 5 安全状態を査定 (DV の程度のアセスメント) 6 セイフティプランを立てる 7 情報提供 8 フォローアップ計画 9 記録 を含み、フローチャートで示されています。本 ガイドラインでは、根拠(エビデンス)を明ら かにし、現段階において最も有効性が期待され るケアを提示しています。ガイドラインの基盤 となる概念は、Women-centered Care であり、 その中心には「尊重」「安全」「意思決定」「エ ンパワー」が位置づけられています。 本ガイドラインの内容を、国内外の学会で発表 し、また、医学系ガイドラインシリーズの一分 野として出版(金原出版)し、その内容を広く 普及することに努めました。 研究代表者

堀内 成子

 Women‐centered Care

   -

性暴力被害者ケア-People-centered Care をめざす看護実践開発研究

5

16

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  評 価

「エビデンスに基づいた」科学の技法により、 資料が集められ、検討され、価値判断がなされ ているという点で、プロジェクトの科学的価値 や質については高いといえます。また、ガイドラ インを出版したことによって、モデル病院に試用 してもらうことが可能となり、ガイドラインの内 容が実施され、その過程で教育プログラムの開 発、医療における性暴力被害者支援システム構 築に役立てることができます。2005 年にはガイ ドラインの全文を web 上で公開し、広く市民の 意見(パブリックコメント)を収集していく予定 です。

DV

ドメスティック・バイオレンスとは ?

ドメスティック・バイオレンス(DV)とは、親密な関係にある男性からの女性への暴力です。 親密な男性とは、恋人、元恋人または夫、元夫といった男性パートナーをさします。暴力とは、 女性の安全や尊厳を脅かす力の行使であり、身体的暴力、精神的暴力、性的暴力が含 まれます。 身体的暴力 女性に外傷などの害を及ぼすかもしれない身体的な力を故意に使うこと。 身体的暴力には、引っかく、押す、突き飛ばす、投げ飛ばす、強くつかむ、 噛み付く、髪を引っ張る、平手打ちをする、殴る、火傷させるなどが含ま れます。 精神的暴力 女性に対し精神的な危害または苦痛となる行為、あるいはそうなる恐れの ある行為。そのような行為としての威嚇、強制も含まれます。女性を言葉 により侮辱する、女性の行動をコントロールする、女性を孤立させる、女 性が意に沿わないと無視するなどの行為、または脅しを指します。 性的暴力 女性の意思に反して、性的行為を強要すること。見たくないのにポルノビ デオやポルノ雑誌を見せる、中絶を強要する、避妊に協力しないことも含 まれます。 聖路加看護大学 女性を中心にしたケア研究班 / 編、EBMの手法による周産期ドメスティッ ク・バイオレンスの支援ガイドライン、第 2 章「用語の定義」(p.15)より抜粋・要約

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研究代表者

森 明子

 Women‐centered Care

   -

不妊ケア-今日、日本において生殖医療のあり方、不妊へ の支援の問題は大きな社会問題の一つとなって います。社会的認知は広がりつつあるものの、 不妊を不孝や不幸とみなす偏見や無理解は未だ 存在しています。また、生殖補助医療に対する 法的規制の不在、診療ガイドラインやインフォー ムドコンセント、カウンセリングなどの未整備に より、治療を受ける女性・カップルは、 不妊 と その 治療 からくる二重の心理的ストレスを抱 えています。女性自身が不妊や治療にともなう ストレスに対処する力をつけることができるよう なケアプログラムを開発すること、また、これを 不妊看護の専門性向上とつなげることは、女性 と看護職の両者にとって、ストレス軽減とそれに 対する支援が促進されるという意義があります。

これまでの研究活動とその成果

15 年度はフォーカスグループインタビューの結 果を踏まえ、聖路加国際病院および自助グルー プとの共催による市民フォーラムを開催しまし た。フォーラムで工夫したことは、医療者が行 なっている治療やケアについて、患者がそれら を受けている立場として、講演した後に、医療 者と当事者らで少人数グループを構成し、直接 対話できるようなプログラムにしたことです。全 国的な参加者が得られ、とくに体験者の生の声 を聴くことができたことへの満足、再開催を望 む声が聞かれました。当事者らの反応から、医 療者に、不妊の悩みや治療に関する適切な情 報提供と共感をもった理解を求めていることが わかった。開催の模様と当日の資料は 看護ネッ ト のホームページ(http://www.kango-net.jp) で閲覧できるようにしました。自助グループ側 は会報に報告を掲載し、毎日新聞の Web 新聞 Women interactive カモミール(http://www. mainichi.co.jp/women/action/box/NGO/ finrrage/)に関連記事を寄せました。

6

People-centered Care をめざす看護実践開発研究

18

(19)

16 年度は当事者らのニーズを踏まえ、寄り多く の不妊に悩む女性・カップルに貢献する方法と して、広く専門相談機関や医療機関で活用でき るようなパンフレット(小冊子)の作成を企画 し、自助グループメンバーらと製作を進めまし た。また、看護職者に対し、不妊女性・カップ ルのストレス軽減のため、治療の開始・終結、 ステップアップに際し、どのように支援すべきか という視点が重要と考え、「不妊治療の開始と 終結」のテーマで日本不妊看護学会と共催で不 妊看護実践セミナーを開催しました。学会員の みならず全国的な参加者があり、満足度も高く、 他者にも紹介したいと答えた者が 8 割を超えま した。治療に関する最新の考え方、ターニング ポイントにおける患者の心理やサポートについ て、他職種とともに考える機会となりました。さ らに本年、看護職者向けに、既存の「不妊患者 支援のための看護ガイドライン‐検査と治療の プロセス‐」を看護ネットに掲載しました。

  評 価

不妊と生殖医療は現在、社会的ニーズの高い テーマであり、医療者 - 患者・当事者間の相 互 理 解 を深 めるための 擁 護 活 動は People-centered Care の実現に向かうものとして評価 できると考えています。不妊看護の研究実績が、 英国の生殖看護師らの関心を呼ぶことになり、 本プロジェクト代表者が RCN (Royal College of Nursing) の専門グループの年次総会での講 演者の一人として招聘されました。また、より広 い人々が本研究の成果を知り、活用できるよう に web 活用による伝達をはかってきましたが、 今後もこれに努めていく予定です。

(20)

研究代表者

川越 博美

研究メンバー : 廣瀬清人 長江弘子 酒井昌子 宮崎紀枝

 地域緩和ケア(在宅ホスピスケア)  

  プロジェクト

地域緩和ケアプログラムと

システムの開発

―市民との協働による家で死ねるまちづくりー

わが国の緩和ケアは、医療機関の緩和ケア病棟 で提供されるケアとして発展してきました。多く の市民は、住み慣れた地域で最期のときを過ご したいと思っています。しかし家で最期をと願っ ても、家族に頼りたくない、しかし在宅ケアの 整備は遅れているという現状を実感している市 民は、家で最期を迎えることをあきらめ、最期 は病院などの施設でと考えるようになっていま す。市民が本当に望む最期は何なのか、再度原 点にかえって検討し、市民とともに緩和ケアシス テムを構築することが必要です。そこで本プロ ジェクトは、市民がケアに主体的に参加する緩 和ケア、市民と専門職が協働する緩和ケアを地 域に築くこと、すなわち「市民との協働による家 で死ねるまちづくり」を目的として研究をすすめ ています。具体的には次のような研究目標を立 てています。

 標準化された

 地域緩和ケアプログラムの作成

1 エビデンスをもとに地域緩和ケアプログラ ムを作成し実践による評価を経て精選 2 地域緩和ケアプログラムの活用のための訪 問看護師研修会、市民の学習会の開催

 市民参加型

 地域緩和ケアチーム基準の作成

1 地域緩和ケアチームの概念の明確化 2 地域緩和ケアチーム基準の作成

 市民参加型地域緩和ケアシステムに

 必要なプログラムの開発

1 緩和ケア訪問看護ステーション基準の作成 (専門特化型訪問看護ステーション) 2 ホスピス通所看護プログラムの開発と評価 (訪問看護 ST が市民ボランティアとともに 実施するデイホスピス) 3 在宅ホスピスケア市民ボランティアの育成 プログラムの開発と評価

7

People-centered Care をめざす看護実践開発研究

行政(市町村) 本人家族 緩和ケアチーム 市民 市民 診療所 訪問看護 ST ヘルパー ST 調剤薬局 市民参加型地域緩和システム Hospital 緩和ケア病棟

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(21)

これまでの研究活動とその成果

2004 年度は、末期がんで死亡した全国 547 事 例の分析結果に基ついて地域緩和ケアプログラ ムを作成し、「末期がん在宅ケアの手引書」「家 族向け教育ブックレット」としてまとめました。 また開発したプログラムが末期がん患者と家族 の生活を豊かにするものか、実際に使用できる かを検証するために無作為比較対照試験を実施 しました。 作成した手引書は、地域緩和ケアプログラム普 及のため、全国の関連機関に配布し、訪問看 護師を対象とした研修会を開き、134 名の訪問 看護師の参加をいただきました。その後訪問看 護ステーションのカンファレンスなどに参加して 手引書によるケアについて一緒に考え意見をい ただきました。さらに、こうして得られた研究 成果を、韓国のホームケアカンファレンスで、シ ンポジストとして発表しアジアにおける地域緩和 ケアについて話しあいました。 2005 年度は、国際駅伝シンポジウム「あなた は最期をどこで迎えたいですか」(VI-ii 駅伝シ ンポジウム参照)を 7 月17 日に実施し、「家で 死ねるまちづくり」について市民と場を共有して 語りあうことを試みました。またホームページを 通じて市民との意見交換を試みました。390 名 もの参加者があり、市民の関心の深さと、共に 語りあい、市民のニーズにそったシステムを市民 とともに築くことの重要性を再認識しました。 12 月16 日には、健康なまちづくり交流会―最 期まで地域に住み続けるためにーを下記のよう な内容で開催しました。開発したケアプログラム 「家族向け教育ブックレット」の普及と、家で死 ねるまちづくりのための意見交換と交流を目的 としました。中央区を中心に 19 名の市民が参 加してくださいました。また都合で参加できな い方 2 名からもファックスで意見をいただき関 心の深さが分かりました。 あわせて、地域緩和ケアに関する国内外の文献 検討も、緩和ケアに興味をもつ市民と共に行い ました。文献検討の結果、地域緩和ケアチーム の構成要素を整理することができました。 また、訪問看護ステーションで実施するホスピ ス通所看護プログラム(デイホスピス)を開発し、 訪問看護ステーションで実際にケアを提供しま した。また、その結果を第 6 回アジア太平洋ホ スピスカンファレンスで発表し世界の人々と共有 しました。

  評 価

今後は、まちづくり交流会でできたつながりを どのように発展させ、家で死ねるまちづくりにつ なげていくかが課題です。同様に、本プロジェ クトで開発したプログラムが制度化されるよう政 策提言をしていく必要があります。 最期まで地域で住み続けられる まちづくり交流会プロフラム 1. アイスブレイキング 2. 講話「健康なまちづくりって ?」 順天堂大学 島内憲夫 愛と夢と勇気を育むまちづくりをめざして 3. インターネットで調べた住民アンケート結果 聖路加看護大学 長江弘子 4. 講話「家で死ねるまちづくり」 聖路加看護大学 川越博美 5. みんなで語りあってみよう(グループ意見交換) 「自分が住むまちがどのようなまちならいいだろう」 「そのためにどうしたらいいだろう」 家で死ねるまちづくり交流会

(22)

 慢性疾患をもつ子どもの在宅ケアの

  ための組織的プログラムの開発

高度専門医療の発展に伴い、医療機器を装着 し、また医療処置を継続しながら家庭や学校 で生活できる子どもたちが増加してきています。 そのような子どもたちや家族が、在宅療養を安 心かつ安定した形でおくることができるようにす るには、医療のみならず福祉や教育との連携は 欠かせません。しかし、関連職種間の連携やネッ トワークの不十分さ、コーディネーターや連携 の窓口の不明瞭さ、利用できるサービスや看護 支援体制の不足など、さまざまな問題や課題が 指摘されています。また、提供される小児医療 や社会資源、学校の受け入れなど格差があり、 さらに家族機能の脆弱さ、土地柄なども絡み、 子どもを取り巻く療養環境は複雑化しています。 このような状況の中で、それぞれの子どもや家 族の状況、住んでいる地域に密着した、よりき め細かな支援体制を検討することが必要となっ ています。 本研究は、慢性疾患や障害をもつ子どもの在宅 ケアの質を確保するため、子どもや親、医療・ 福祉・教育機関などを組織的に取り込んだケア プログラムを、地域性を考慮して開発すること を目的としています。

これまでの研究活動とその成果

 資料収集と質問紙調査

関東の 3 地域を選定し、慢性疾患や障害をも つ子どもに関する基礎資料を得るために、これ までに出されている資料を収集分析するととも に、慢性疾患や障害をもつ子どもや家族へのニー ド調査を実施しました。調査は 2 地域で実施し、 その結果、日常生活上配慮と支援を必要する子 どもが 30% 以上いることが明らかになりました。 また、家族の 60% 以上は何らかの社会資源を 活用していましたが、その約 20% は利用に際し ての不便を感じていたことがわかりました。

 フォーカスグループインタビュー

3 地域において、看護職(病棟・外来看護師、 保健師、訪問看護師、養護教諭)によるフォー カスグループインタビューを行い、慢性疾患の 子どもへのケアの現状や課題を分析しました。

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People-centered Care をめざす看護実践開発研究

研究代表者

及川 郁子

22

(23)

以上の結果を基に、それぞれの地域に合わせた 活動を展開しはじめました。

 パンフレットの配布と交流会

早期退院に向け、病院看護師が社会資源をより 理解して紹介できるために、看護師向けのパン フレット(右上図)を作成し、配布しました。ま た、地域の看護職や親の会の人たちと交流しな がら、疾患の知識や理解のための啓発活動を 継続しています。

 医療・福祉・教育の連携を図るための

 リーフレットの作成と配布

地域によっては看護職の連携が不十分であるた めに、お互いに紹介できない状況があります。 特に医療と教育の連携に向けたリーフレットを 作成し配布しています。またフォーカスグループ の継続による看護職への啓発活動を展開予定 です。

 ナースクリニックの開催

フォーカスグループを発展させ、看護職と慢性 疾患をもつ子どもや家族による交流会を開始し、 継続しています。 (右下図 : 過去に開催されたクリニックの案内よ り)

(24)

 日本人の国民性に相応した効果的な

  健康教育プログラムの開発と実践

この研究では、わが国で深刻な問題となりつつ ある生活習慣病患者の劇的な増加傾向の抑制 に貢献できる、これまでにない斬新な健康教育 実践プログラムを確立するための基礎的研究を すすめています。この研究には、次のような目 的があります。 1. 市民自らの自発的な日常生活習慣の改善 2. 自分に合った生き方の創造に結びつく、魅力 的な健康教育実践プログラムの開発と実践 3. その評価

これまでの研究活動とその成果

平成 15 年度は、市民の日常生活の中に「毎日と り入れてもらえると期待できるもの」として、ゲー ム感覚で、自分の生活習慣を客観的にふりかえ ることが可能な、i アプリソフトウェアの開発を すすめました。このソフトウェアでは、目覚め の状態、朝食摂取の有無など、日常生活の中か ら得られる情報に基づいて、キャラクターを変 化させながら、育成シミュレーション形式でゲー ムをすすめていくことができるようになっていま す。その成果として、この「生活体験型健康ゲー ム」の利用者には、自分の日常生活習慣の特徴 について、長期的な視点に立って客観的にふり かえる機会を日常的に提供できます。 平成 16 年度は、日常生活の中に「季節に一度 はとり入れてもらえると期待できるもの」として、 2 つの健康教育プログラムを企画し、山梨県北 杜市の(財)キープ協会キープ自然学校におい て実践しました。これらのプログラムには、い のち・健康の大切さ、素晴らしさについて、自 然体験活動をとおして感じること、都会で営む 家族の日常生活習慣を見直すきっかけをつくる こと、というねらいがあります。

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People-centered Care をめざす看護実践開発研究

研究代表者

菊田 文夫

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(25)

「牛飼い体験と秋を感じる親子キャンプ - いのちを感じ、いのちにふれる -」 平成 16 年 11 月 27 日∼ 28 日に実施。4 家族、 15 名の皆さまに参加していただきました。動物 の「いのち」にふれる機会や、動物や大地から の恵み ( 牛乳や農作物 ) を素材に、塩分摂取量 について体験的に学習できる、料理づくり体験 をとおして家族の健康を考える機会を提供しま した。 「冬の森でいのちを感じる親子キャンプ -アニマルトラッキングと雪遊び -」 平 成 17 年 2 月 19 日 20 日に実 施。7 家 族、 22 名の皆さまに参加していただきました。日ご ろ都会に生活する参加者が、冬の自然の楽しさ、 厳しさを感じる機会や、アニマルトラッキングを とおして、野生動物たちのいのちを感じる機会 を提供しました。さらに、冬の森で生きる動物 たちの毎日の生活を想像しながら、私たちヒト が、冬に営む都会の日常生活をふり返るきっか けづくりを行いました。 さらに、「週に数回はとり入れてもらえると期待 できるもの」として、総合型地域スポーツクラブ を築地・明石町地区に展開していくために、ス ポーツを無理なく日常生活にとり入れる生活習 慣形成のヒントとなる、地域住民の健康観やス ポーツニーズに関する情報を収集しました。

  評 価

この研究で提案する健康教育プログラムは、体 験学習を最も重要なものと捉えています。また、 市民の日常生活や生きかたの中に、「毎日とり入 れてもらえると期待できるもの」、「週に数回はと り入れてもらえると期待できるもの」、そして「季 節に一度はとり入れてもらえると期待できるも の」、という 3 つの柱から構成されており、とて も独創的なものとなっています。 平成 15 年度に開発をすすめた「生活体験型健 康ゲーム」は、広く市民に利用してもらえると 期待できます。さらに、ゲーム感覚で日常生活 習慣改善へのきっかけづくりができることから、 無理のない、しかも、利用者のやる気を減退さ せることなく、健康的な生活習慣を獲得できる ように支援が可能になると考えられます。その 効果については、これから継続して日常生活デー タを収集し、科学的根拠に基づいた検証が必 要です。 平成 16 年度に企画、実施した 2 つの健康教育 プログラムでは、参加者に自然体験をとおして、 健康やいのちの大切さ、素晴らしさを感じても らえたことが、ふり返りシートに記入された感想 からうかがえました。しかしながら、これらの 体験が、これまでの日常生活習慣を見直すきっ かけになっているのか、家族が営む日々の暮ら しや生きかたの中に、どのように生かされてい るのか、という点については、家族の日常生活 習慣の変化を捉えるための長期にわたる経過観 察、そして、参加者から生理学的データを収集 することによる確認が必要です。

(26)

 「全ての人々への健康

(Health for All)

  へ貢献できる国際コラボレーション

  実践モデル開発

日本は戦後の復興から脱した 1960 年代から、 世界の保健の課題である健康格差の改善のた めに取り組み始めました。看護職もその活動に 参加し、現在も多くの国々の様々な領域で活動 をしています。しかしながら、開発途上国での 看護活動研究については海外青年協力隊の調 査などに限られています。今後、開発途上国に 対して、より質の高い協力をするためには、国 際貢献できる看護職の人材の育成が重要です。 この教育分野での研究開発は、「WHO 看護助 産の強化のための活動指針」において4 番目に 高い優先度となっています。こうした国際看護 人材育成がひいては「全ての人々への健康」の 目標、あるいは国連のミレニアムゴールの達成 に貢献できると考えています。

これまでの研究活動とその成果

平成 14 年度から国際医療協力委託研究として、 「開発途上国における看護技術移転教育プログ ラムの開発に関する研究」を本学国際医療協力 研究班(本学 WHO 委員会、国立保健科学院、 日本看護協会国際部、国際保健福祉医療大学 など)、国際医療センター国際医療協力局派遣 課班、国立看護大学校班との協働で進めてきま した。

 国際看護専門看護師

 養成プログラムの開発研究

本学研究班は、系統的な国際看護育成プログ ラムの中で総括を務めながら、特に「国際看護 専門看護師養成プログラムの開発研究」を進め てきました。平成 14 年度は開発途上国で看護 専門家として 1 年以上働いた、あるいは働いて いる看護職者から面接調査を行ない、国際看 護コラボレーターとして必要とする能力を概念 化しました。平成 15 年度には、それを検証し、 修士レベルの国際看護学カリキュラム試案を作 成しました。また、海外からのアドバイザーと ワークショップを開き、海外のカリキュラムとの 比較・検討をもとに、試案カリキュラムをさらに 洗練させる方向性を検討しました。平成 16 年 度 10 月には、英国のロンドン大学公衆衛生熱 帯医学部の熱帯看護学(認定コース)、グラスゴー カレドニアン大学看護学研究科の国際看護の視 察・調査を行ないました。11 月19 日から 22 日 までは、米国コロンビア大学国際臨床看護学の Dr. Richard Garfield を招聘し、本研究のワー クショップを開催しました。コロンビア大学大 学院の臨床国際看護学で提供するコースは、担 当のDr. Garfieldの公衆衛生看護学および疫学、 人間の安全保障を基盤とした、国際比較を特徴 とするコースでした。

10

People-centered Care をめざす看護実践開発研究

研究代表者

田代 順子

26

(27)

こうした調査から明らかになったことは、大学 の卒後の国際看護学あるいは看護における国際 保健学は、それぞれの大学の特徴と強みにもと づいて科目として提供されているものの、一つ の専門領域を形成するのではなく、あくまでも、 学生の視点をグローバルに広げることを教育目 的としていることでした。平成 17 年 1 月にはマ ヒドン大学看護学科の国際プログラムを視察・ 調査しました。マヒドン大学の国際プログラム は第 3 国の留学生や研修生を受け入れ、学部、 大学院での学位取得を通して、看護学の移転・ 交流を進めるものでした。 研究の成果として、大学院修士レベル国際看護 専門看護師のコースの教育基準試案が作成され ました。この試案では、「それぞれの看護学の 専門性を基盤として、国際保健・医療の知識・ 技術をもって『国際医療協力』における看護領 域のリーダーとして活躍できる基礎的能力を育 成する」を教育理念にすえました。この教育基 準にそって、モデルとして聖路加看護大学院修 士課程の「国際看護学」カリキュラムを組み、 新たな専攻として開講します。平成 17 年度から 国際看護学の各科目を運用し、受講する院生か らの評価を得ながら、各コースを改善してゆく 予定です。

  評 価

本 研 究 で は、WHO の 提 唱 する「Health for All」の「全ての人々」とは「市民」のことである と捉えています。したがって、市民(全ての人々) のニーズは、国連(MDG; ミレニアム開発目標) および WHO がゴールとしている健康格差を解 消することと捉えています。このニーズに対し て、日本に看護領域における国際協力の拠点を 作り、看護職の進める国際協力の質を向上しよ うと取り組んでいます。この研究結果は南アフ リカで開かれた、WHO 看護開発協力センター 会議、および第 3 回 Multidisciplinary Health Care Conference、第 8 回日本看護科学学会国 際学術集会(福島)で発表されました。 研究では、海外で働く日本の看護職がホスト国 の看護職とより良いコラボレーションを築く支 援もしています。研究によって、日本国内の国 際協力機関との連携で進めていることからネッ トワークが形成され、ホスト国での働きに後方 支援が可能になりつつあると評価しています。 また、ワークショップにおいても、米国の国際 協力活動の看護専門家に助言をもらい進めてい ますので、今後は、国内連携だけで無く、国際 的連携を通しても国際活動支援が可能となると 考えています。 2004 年、基礎的研究は終了し、本学大学院に 国際看護を開講するという成果につながってい ます。また、本研究は、厚生労働省国際医療セ ンターからの委託事業であるので、同センター に、この成果を基に開発途上国での看護職の人 材養成のためのセミナーの開催してもらうことも できると考えます。さらに、この成果は、他大 学でも国際看護教育基準としての利用が可能で あり、日本の国際貢献に資する研究であると評 価しています。

(28)

 健康資源コンテンツデジタル化と

  e-learning 開発

本プロジェクトでは、各研究プロジェクトの研 究成果(看護を実践するときの根拠となるもの = エビデンス)を、市民や看護専門職により広 く普及させることを目的としています。このとき、 ただ一方的に情報を提供するだけでは、それ らがうまく実践に取り入れられたか、本当に役 に立ったかはわかりません。研究成果の評価、 フィードバックを得てこそ、エビデンスの存在意 義が認められるといえます。このプロセスにお いては、幅広い学問領域に渡る 3 つの学際的 な領域が注目されています。

 ヘルス・コミュニケーション

保健医療はコミュニケーションの上に成り立って います。しかし、そのコミュニケーションにお いて、疾病の予防、病気や疾患の状況、治療 やケアにかんする情報がその送り手と受け手で それぞれどのように理解されたり、受け止めら れたりしているかということが研究されるように なったのは比較的最近のことです。欧米が早く から研究を進めているのに対して日本ではまだ まだ遅れています。情報の過大または過小な評 価、質問や反論の余地がなく強制的・義務的 な影響力を及ぼしている可能性、脅威やショッ クを与えている可能性とそれへ対処方法に関す る情報などさまざまな問題があります。

 e ラーニング、教育工学

教育もコミュニケーションであり、従来は情報 提供者である教育者が、自分のペースでよかれ と思った方法で、すなわち教育者中心で教育を 行ってきていました。しかし、それでは高い学 習効果が得られないことがわかってきました。 受け手である学習者が情報をどう受け止めてい るかに注目していなかったからです。教育から 学習へ、教育者中心から学習者中心にする方法 の模索が始まりました。なかでも学習者が自分 (達)のペースで、そのつど理解度を確認しな がら進められる、コンピュータを利用した e ラー ニングが注目されるようになりました。そして、 この技術を含めて、学習者中心で学習効果の高 い方法の検討のために教育工学という領域が発 展してきました。

 看護情報学

 (Nursing Informatics)、

 消費者健康情報学

 (Consumer Health Informatics)

上の 2 つの領域での成果を含めつつ、看護情 報学あるいは消費者健康情報学として、つぎの ような検討課題があげられます。

11

People-centered Care をめざす看護実践開発研究

研究代表者

中山 和弘

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参照

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