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ニューノーマル時代における CSIRT 活動

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[解説]

ニューノーマル時代における

CSIRT 活動

CSIRT Operations in the New Normal era

 177 テクノクロス株式会社星  敬 一 NTT TechnoCross Corporation Keiichi HOSHI

要 旨  新型コロナウイルスの爆発的感染拡大に伴い,企業や機関等における事業環境は一変し,その変化に乗じ たサイバー攻撃も急増している.サイバーセキュリティ環境が急激に変化する中,インシデント対応に関わ るCSIRT 活動も見直しが必要となっている.本稿では,コロナ禍において急激に変化した業務環境,ネット ワーク利用環境,サイバー攻撃の動向を整理し,その変化が及ぼす影響と今後の方向性について論じる.テ レワークが急増している業務環境の変化は従業員を孤立させ,連絡手段,支援体制の確保,共同作業環境の 整備を必要とする.この変化に連動して,自宅等からのリモートアクセスとクラウド利用が加速している. ネットワーク機器,サーバ等のリソース,帯域の確保に加え,脆弱性管理,設定管理が急務である.ネット ワーク利用環境が著しく変化する中においては,組織の「場所」で守る境界防御は限界にきており,「ゼロ トラスト」という概念が注目されている.ゼロトラストネットワークにおいては,エンドポイントでの防御・ 検知の強化,本人認証とそれに紐づく権限管理が重要になる.サイバー攻撃の動向も変化している.VPN に 対する攻撃,二重恐喝ランサムウェア,混乱や不安に乗じたフィッシングサイトやビジネスメール詐欺の増 加が特徴的である.こうした環境の変化は一時的なものではなく,デジタルトランスフォーメーションの加 速とともに,新たな「通常」として常態化していくであろう.ニューノーマル時代のCSIRT 活動においては, IT 資産管理/脆弱性管理/リスク管理の統合,ID(アイデンティティ)管理/権限管理,リスクアセスメントと プライオリティによる意思決定プロセス,人/場所/システムの分散と情報の集中のコントールが必要となる. CSIRT が経営層を支援し,情報システム担当部署とも密接に連携して,自組織内の戦略,実情に合わせてマ ネジメントしていくことが重要である.  キーワード  テレワーク,ニューノーマル,CSIRT,ゼロトラスト,デジタルトランスフォーメーション 1 はじめに 新型コロナウイルスの爆発的感染拡大に伴い,全 世界でこれまで経験したことのない深刻な影響が発 生している.事業を営む企業や機関等(以下,組織) では,出社が規制され在宅勤務等のテレワークを余 儀なくされている.これに伴い,業務環境が一変し, 従来の業務をどうやって継続すべきかが大きな課題 となっている.この業務環境の変化は,ネットワー ク利用環境も変化させ,この変化に乗じてサイバー 攻撃の動向も変化している.サイバーセキュリティ 環境が急激に変化する中,インシデント対応に関わ るCSIRT 活動も見直しが必要となっている.本稿で はコロナ禍における環境,動向の変化を整理し,そ れに適切に対応するための CSIRT 活動の要諦につ

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日本セキュリティ・マネジメント学会誌 Vol.○○, No.○ いて論じる. 2 CSIRT 活動 2.1. CSIRT の必要性 近年,インターネットを中心にネット社会が急拡 大し,情報システムは組織の活動に欠かせないイン フラ設備になっている.端末,サーバ,ネットワー クで相互に接続されたサイバー空間上では,インタ ーネットを介して全世界が接続されている.サイバ ー空間は,これを効果的に活用する組織に対して, 容易にグローバルな事業展開を可能とする恩恵をも たらす一方,不正アクセスやウイルス感染等のサイ バー攻撃の負の影響も及ぼす.サイバー被害は一瞬 にしてインターネットを通じてグローバルに拡散し ていく特徴もある.こうしたネット社会の中で活動 する組織においては,自組織内の情報システムをシ ステム管理者のみで防衛するには限界があり,他組 織と連携しながらサイバーセキュリティに取り組む 必要が生じている.

CSIRT(シーサート:Computer Security Incident Response Team)はこうしたネット社会の急拡大と ともに生まれた体制の総称である. 2.2. CSIRT の目的と主な活動 CSIRT の目的は被害局限化と予防保全である.被 害局限化とは,主にサイバー空間上で発生するセキ ュリティを脅かすような好まざる事象,つまりイン シデントを速やかに検知し,被害発生時にはその影 響範囲を特定するとともに,当該事象が拡散しない ように封じ込めて被害を鎮静化,復旧させることで ある.予防保全とは,事業リスクを軽減させるため, インシデントが発生しないように事前に様々な調査 や対策を実施しておくことである.CSIRT の活動は 大きく以下の3つのカテゴリに分類できる[1]. a. インシデント事後対応サービス b. インシデント事前対応サービス c. セキュリティ品質向上サービス 活動内容は CSIRT を設置する組織により千差万 別であるが,一般的には,被害局限化のためのイン シデントハンドリング(上記 a),ソフトウェアや ハードウェアの脆弱性情報を収集・分析して対応を 管理する脆弱性情報ハンドリング(上記 b),セキ ュリティ関連情報(注意喚起や対応ノウハウ等)を 提供する情報提供(上記 b)を実施するケースが多 い. また,CSIRT が提供する活動範囲により,組織内 CSIRT,国際連携 CSIRT,コーディネーションセン ター,分析センター等,様々なタイプが存在する[2]. 本稿では,組織内CSIRT を対象とし,上記 a,b,c 全ての活動内容を対象とする. 3 最近の事業環境の変化 3.1. 業務環境の変化 3.1.1. 急増するテレワーク 新型コロナウイルスの流行に伴い,緊急事態宣言 が発令される中,在宅勤務を中心とするテレワーク が急増している.企業規模,業種・業態によっても 状況は異なるが,厚生労働省の2020 年 5 月~6 月に おける企業調査によると,テレワーク実施率が全体 で 67.3%,従業員 300 人以上の企業では 90%との 報告がある[3].テレワークにより,働き方改革が進 んだ,業務プロセスの見直しができた,業務の生産 性向上やコスト削減につながった等の効果を実感す る声も多数あがっている.またその後の実態調整に よれば,すでにテレワークを導入している企業にお いて,43%が継続・拡大したいと回答している[4]. コロナ禍におけるテレワークは,パンデミック対 策として急遽実施せざるを得なかった背景がある. 準備が不十分なままテレワークに踏み切った組織も 多いと思うが,テレワークを経験してみて効果を実 感した組織は,デジタルトランスフォーメーション (DX)1を推進する観点からも,さらなる業務プロ セスの変革,デジタル技術の導入,ワークライフバ ランスの実現を求めて,コロナ禍が収束する今後に おいても,テレワーク環境を一定規模継続するもの 1 デジタル技術を駆使してビジネスに変革をもたら し,社会や生活の質を高めていくこと ニューノーマル時代におけるCSIRT 活動 [解説]

ニューノーマル時代における

CSIRT 活動

CSIRT Operations in the New Normal era

 177 テクノクロス株式会社星  敬 一 NTT TechnoCross Corporation Keiichi HOSHI

要 旨  新型コロナウイルスの爆発的感染拡大に伴い,企業や機関等における事業環境は一変し,その変化に乗じ たサイバー攻撃も急増している.サイバーセキュリティ環境が急激に変化する中,インシデント対応に関わ るCSIRT 活動も見直しが必要となっている.本稿では,コロナ禍において急激に変化した業務環境,ネット ワーク利用環境,サイバー攻撃の動向を整理し,その変化が及ぼす影響と今後の方向性について論じる.テ レワークが急増している業務環境の変化は従業員を孤立させ,連絡手段,支援体制の確保,共同作業環境の 整備を必要とする.この変化に連動して,自宅等からのリモートアクセスとクラウド利用が加速している. ネットワーク機器,サーバ等のリソース,帯域の確保に加え,脆弱性管理,設定管理が急務である.ネット ワーク利用環境が著しく変化する中においては,組織の「場所」で守る境界防御は限界にきており,「ゼロ トラスト」という概念が注目されている.ゼロトラストネットワークにおいては,エンドポイントでの防御・ 検知の強化,本人認証とそれに紐づく権限管理が重要になる.サイバー攻撃の動向も変化している.VPN に 対する攻撃,二重恐喝ランサムウェア,混乱や不安に乗じたフィッシングサイトやビジネスメール詐欺の増 加が特徴的である.こうした環境の変化は一時的なものではなく,デジタルトランスフォーメーションの加 速とともに,新たな「通常」として常態化していくであろう.ニューノーマル時代のCSIRT 活動においては, IT 資産管理/脆弱性管理/リスク管理の統合,ID(アイデンティティ)管理/権限管理,リスクアセスメントと プライオリティによる意思決定プロセス,人/場所/システムの分散と情報の集中のコントールが必要となる. CSIRT が経営層を支援し,情報システム担当部署とも密接に連携して,自組織内の戦略,実情に合わせてマ ネジメントしていくことが重要である.  キーワード  テレワーク,ニューノーマル,CSIRT,ゼロトラスト,デジタルトランスフォーメーション 1 はじめに 新型コロナウイルスの爆発的感染拡大に伴い,全 世界でこれまで経験したことのない深刻な影響が発 生している.事業を営む企業や機関等(以下,組織) では,出社が規制され在宅勤務等のテレワークを余 儀なくされている.これに伴い,業務環境が一変し, 従来の業務をどうやって継続すべきかが大きな課題 となっている.この業務環境の変化は,ネットワー ク利用環境も変化させ,この変化に乗じてサイバー 攻撃の動向も変化している.サイバーセキュリティ 環境が急激に変化する中,インシデント対応に関わ るCSIRT 活動も見直しが必要となっている.本稿で はコロナ禍における環境,動向の変化を整理し,そ れに適切に対応するための CSIRT 活動の要諦につ ニューノーマル時代における CSIRT 活動

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と考えるのが妥当であろう. 3.1.2. その影響と今後の方向性 テレワーク環境下においては,従業員の勤務場所 は組織内のオフィスとは限らず,勤務場所は特定さ れない.したがって,従業員が利用している端末や ネットワーク環境も一様ではない.オフィスに電話 しても,連絡をとりたい従業員に連絡できる保証は ない.業務上のトラブル発生時や相談,助けが必要 な時でさえ,周囲に相談できる相手,支援してもら う相手が存在しない.  このように従業員は孤立した環境で業務に従事す ることになる.何よりも大事なことは,連絡手段の 確保である.チームで共同作業,あるいは密接に連 携して業務を進めるケースにおいては,ビジネスチ ャットや Web 会議等の相互のコミュニケーション ツール,資料やデータ等の情報共有手段,プロジェ クト管理や共同作業のための電子白板等のコラボレ ーションツール等の統一・拡充が必要である[5].孤 立した環境だからこそ,それらをつなぐ支援ツール が必要不可欠となる. 3.2. ネットワーク利用環境の変化 3.2.1. 多様化するネットワーク利用環境 総務省は,2021 年 2 月,我が国におけるインター ネットトラヒックの集計結果を公表した[6].本調査 によると,2020 年 11 月集計における国内の個人向 け固定系ブロードバンド契約者の総ダウンロードト ラヒックは前年同月比56.7%増,総アップロードト ラヒックは同51.1%増と報告されている.2020 年 5 月集計時に大幅に増加したトラヒックがさらに増加 傾向を示し,3.1.1 項で説明したテレワーク急増の変 化が「新たな日常」として定着している状況がうか がえる,とも報告されている.  テレワーク急増に伴う変化は自宅等からのアクセ スの急増に留まらない.2021 年 1 月のトレンドマイ クロ社の調査によると,新型コロナウイルスの感染 拡大で,世界全体では87.2%,日本では 78.0%の法 人組織がクラウド利用を加速させている[7].DX が 求められる中,コロナ禍における業務の継続手段と してもクラウド利用は益々加速していくものと考え られる.ネットワーク利用環境はアクセス元,アク セス先ともに急激に多様化が進んでいる. 3.2.2. その影響と今後の方向性  ネットワークの利用形態が多様化するため,従来 の「通常」の状態が変化している.量的側面,質的 側 面 で 注 意 が 必 要 で あ る . 量 的 側 面 で は ,VPN (Virtual Private Network)等リモートアクセスを 実現するためのネットワーク機器,サーバ等のリソ ース,帯域の確保が必要である.通常の業務を維持 するための可用性を重視した運用が求められる.リ モートアクセスのトラヒック集中に備えて,代替手 段確保やBCP(Business Continuity Plan:事業継 続計画)策定も重要である.質的側面では,多様化 する環境に関する脆弱性管理,設定管理,認証・認 可が重要である.従来とは異なる多様なネットワー ク環境の中でも,正しい人が正しい使い方で,かつ 安全な状態で利用できる必要がある.コロナ禍の状 況では,可用性を重視するあまり,質的側面の管理 が疎かになりがちである.機密性,完全性の確保も 同時に求められる.  質的側面の確保はアクセス先である組織内環境や クラウド環境のみならず,アクセス元の自宅等の環 境においても同様である.トレンドマイクロ社は 「2021 年セキュリティ脅威予測」の中で,「攻撃者 はホームオフィスを新たな犯罪拠点に」と警告を発 している[8].自宅のルータや無線 LAN は格好の標 的となり,そこを踏み台に組織内に侵入される可能 性があることにも注意が必要である.  こうしたネットワーク利用環境が著しく変化する 中においては,組織の「場所」で守る境界防御は限 界にきているとされ,「ゼロトラスト」という概念 が注目されている[9].ゼロトラストネットワークに おいては,エンドポイントでの防御・検知の強化, 本人認証とそれに紐づく権限管理が重要になってく る.

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日本セキュリティ・マネジメント学会誌 Vol.○○, No.○ 4 CSIRT から見た最近のサイバー攻撃動向の変 化 前章で説明した事業環境の変化を捉えて,サイバ ー攻撃も変化している.サイバー攻撃は,今後も攻 撃者から見て最も効果的と思われる標的に狙いを定 めて変化していくものと想定される.本章では,特 にコロナ禍において急増している特徴的なサイバー 攻撃の動向について説明する. 4.1. VPN に対する攻撃 2020 年 8 月,11 月にそれぞれ,VPN 暗証番号流 出,VPN 製品パッチ2未適用リスト公開等,VPN に 対するサイバー攻撃が急増していること,あるいは 今後急増する恐れがあること,が大きく報じられた [10][11].事実,被害内容が詳細に公表されている事 例もある[12].これらは,2019 年に多くの VPN 製 品で報告された脆弱性が原因となっている可能性が 高い[13].ネットワーク利用環境の変化に伴い,VPN ニーズが急増し,可用性重視のあまり脆弱性管理が 追いついていないと考えられる. 4.2. 二重恐喝ランサムウェア サイバー攻撃により重要なデータを暗号化し てアクセスできない状態にし,データ復旧と引き 換えに身代金を要求するランサムウェア攻撃が 一般に知られている.事業継続が特に求められる 組織においては大きな脅威となっている.独立行 政法人情報処理推進機構(,3$)は,ランサムウ ェアの攻撃の手口が変化していると注意喚起し ている>@.攻撃者は標的を定め,自身の手で標 的組織内に侵入して,気づかれないように最も効 果的な攻撃をしかけるのである.ツール等による 一斉攻撃よりも被害が大きくなる可能性がある. また,データ復旧の身代金要求に加えて,データ を公開すると脅迫して,さらに身代金を要求する 二重恐喝ランサムウェアも増加している.警察庁 は, 年  月,二重恐喝ランサムウェアの被害 2 セキュリティ上の脆弱性を修正するプログラム が発生していると警鐘を鳴らしている>@.業務 継続の危機に加えて,機密情報漏洩の危機をもた らすことで,高額な身代金要求に応じさせる狙い があるのであろう.重要なデータのバックアップ 対策に加えて,情報漏洩対策も重要となる. 4.3. 混乱や不安に乗じた攻撃 これまで経験したことのないコロナ禍の状況にお いては,従業員は業務環境の変化に不慣れなため, 混乱や不安も多い.こうした混乱や不安に乗じて, フィッシングサイトやビジネスメール詐欺,不正ア プリ(例えば,偽Web 会議アプリ)等が急増してい ると報告されている[16].巧妙に仕組まれた攻撃は 本物と見分けがつきにくく,テレワーク環境におい ては,相談できる相手が周囲にいないため個人で判 断しなければならない.このような環境も被害を受 けやすくする要因の一つと考えられる. 4.4. 動向の変化が及ぼす影響と今後の方向性 リモートアクセスの急増に伴い,VPN や RDP(リ モートデスクトップ)等のサーバ機器が増加してい る.急遽増設することも多いであろう.また,リモ ートアクセス環境に対する攻撃も急増していること から,こうした環境のIT 資産管理,脆弱性管理,リ スク管理の強化が必要である.さらに,4.1 節でも説 明したとおり,認証情報が漏洩している可能性も否 定できない.ID 管理を徹底するとともに,多要素認 証,特権管理,権限管理の強化も求められる.特に, リモートアクセス環境下においては,本人になりす まされた不正アクセスの検知は困難である.3.2.2 項 で説明した本人認証とそれに紐づく権限管理の重要 性に帰結する.  業務環境,ネットワーク利用環境の変化を捉えた サイバー攻撃は可用性を重視する組織の弱みを突い てくる.リモートアクセス環境を狙った DDoS(分 散サービス停止)攻撃やランサムウェア攻撃に対す る備えも必要である.つまり,3.2.2 項で説明した重 要なサービスの代替手段確保やBCP 策定,さらに, ニューノーマル時代におけるCSIRT 活動 と考えるのが妥当であろう. 3.1.2. その影響と今後の方向性 テレワーク環境下においては,従業員の勤務場所 は組織内のオフィスとは限らず,勤務場所は特定さ れない.したがって,従業員が利用している端末や ネットワーク環境も一様ではない.オフィスに電話 しても,連絡をとりたい従業員に連絡できる保証は ない.業務上のトラブル発生時や相談,助けが必要 な時でさえ,周囲に相談できる相手,支援してもら う相手が存在しない.  このように従業員は孤立した環境で業務に従事す ることになる.何よりも大事なことは,連絡手段の 確保である.チームで共同作業,あるいは密接に連 携して業務を進めるケースにおいては,ビジネスチ ャットや Web 会議等の相互のコミュニケーション ツール,資料やデータ等の情報共有手段,プロジェ クト管理や共同作業のための電子白板等のコラボレ ーションツール等の統一・拡充が必要である[5].孤 立した環境だからこそ,それらをつなぐ支援ツール が必要不可欠となる. 3.2. ネットワーク利用環境の変化 3.2.1. 多様化するネットワーク利用環境 総務省は,2021 年 2 月,我が国におけるインター ネットトラヒックの集計結果を公表した[6].本調査 によると,2020 年 11 月集計における国内の個人向 け固定系ブロードバンド契約者の総ダウンロードト ラヒックは前年同月比56.7%増,総アップロードト ラヒックは同51.1%増と報告されている.2020 年 5 月集計時に大幅に増加したトラヒックがさらに増加 傾向を示し,3.1.1 項で説明したテレワーク急増の変 化が「新たな日常」として定着している状況がうか がえる,とも報告されている.  テレワーク急増に伴う変化は自宅等からのアクセ スの急増に留まらない.2021 年 1 月のトレンドマイ クロ社の調査によると,新型コロナウイルスの感染 拡大で,世界全体では87.2%,日本では 78.0%の法 人組織がクラウド利用を加速させている[7].DX が 求められる中,コロナ禍における業務の継続手段と してもクラウド利用は益々加速していくものと考え られる.ネットワーク利用環境はアクセス元,アク セス先ともに急激に多様化が進んでいる. 3.2.2. その影響と今後の方向性  ネットワークの利用形態が多様化するため,従来 の「通常」の状態が変化している.量的側面,質的 側 面 で 注 意 が 必 要 で あ る . 量 的 側 面 で は ,VPN (Virtual Private Network)等リモートアクセスを 実現するためのネットワーク機器,サーバ等のリソ ース,帯域の確保が必要である.通常の業務を維持 するための可用性を重視した運用が求められる.リ モートアクセスのトラヒック集中に備えて,代替手 段確保やBCP(Business Continuity Plan:事業継 続計画)策定も重要である.質的側面では,多様化 する環境に関する脆弱性管理,設定管理,認証・認 可が重要である.従来とは異なる多様なネットワー ク環境の中でも,正しい人が正しい使い方で,かつ 安全な状態で利用できる必要がある.コロナ禍の状 況では,可用性を重視するあまり,質的側面の管理 が疎かになりがちである.機密性,完全性の確保も 同時に求められる.  質的側面の確保はアクセス先である組織内環境や クラウド環境のみならず,アクセス元の自宅等の環 境においても同様である.トレンドマイクロ社は 「2021 年セキュリティ脅威予測」の中で,「攻撃者 はホームオフィスを新たな犯罪拠点に」と警告を発 している[8].自宅のルータや無線 LAN は格好の標 的となり,そこを踏み台に組織内に侵入される可能 性があることにも注意が必要である.  こうしたネットワーク利用環境が著しく変化する 中においては,組織の「場所」で守る境界防御は限 界にきているとされ,「ゼロトラスト」という概念 が注目されている[9].ゼロトラストネットワークに おいては,エンドポイントでの防御・検知の強化, 本人認証とそれに紐づく権限管理が重要になってく る. ニューノーマル時代における CSIRT 活動

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重要なデータのバックアップ対策,情報漏洩対策で ある.  分散した環境でリモートアクセスする従業員に関 しては,攻撃情報,不審メール情報,インシデント 情報等を集約して共有できる手段を確保するととも に,情報伝達手段も明確にしておく必要がある.分 散された環境においてこそ,情報の集約が重要であ る. 5 ニューノーマル時代における CSIRT 活動 5.1. コロナ禍において直面した CSIRT 活動の課 題 一般社団法人日本コンピュータセキュリティイン シデント対応チーム協議会(NCA)は,コロナ禍の 緊急事態宣言下における CSIRT の対応状況につい て,NCA 加盟組織にアンケート調査を行い,その調 査結果を公表した[17]. 本調査結果では,9 割以上の組織がテレワーク対 応の準備を進めていたものの,インシデントの検知 と対応に関する環境整備は喫緊の課題である,と分 析されている.この結果を踏まえて,インシデント 検知と対応それぞれに対して, ・想定される課題 ・解決の方向性,実現手段例 ・組織としての備え が検討,整理されている.考慮すべき事項が詳細か つ具体的に示されているので,是非参照されたい. 5.2. ニューノーマル時代における CSIRT 活動の留 意点と今後の方向性 本節では,これまで説明してきたコロナ禍におけ る環境,動向の変化に対応して求められる CSIRT 活動の留意点と今後の方向性について再整理する (図1).一部,前節でご紹介した NCA の調査結 果とも重複する部分もあるが,お許しいただきたい. テレワークの急増により,VPN 等のリモートアク セスも急増し,VPN 機器等を急遽増設する必要に迫 られた.IT 資産管理,脆弱性管理が不十分なため, サイバー攻撃の被害も続出した.こうしたリスクが 組織内に内在していることが十分に把握できていな かった.Web 会議,チャットツール,オンラインス トレージ,コラボレーションツール等,新たなアプ リケーションやサービスの利用も増加しているため, こうしたサービスやソフトウェアの脆弱性について も管理が必要となる.ニューノーマル時代において は,DX の加速も進み,業務環境,ネットワーク環 境は変化し続けるものと想定される.クラウド利用 も促進されるであろう.今まで以上にIT 資産管理を 十分に行い,管理されたIT 資産に対する脆弱性管理 を徹底し,把握している脆弱性に関して,そのリス クの所在と適切な対処を行っていく必要がある.こ のように IT 資産管理~脆弱性管理~リスク管理が 連鎖して統合管理できるとともに,その管理状況を 可視化,自動化して,対処も迅速化できる仕組みが 必要となる. 図1 今後強化すべき CSIRT 活動の方向性 5.3. ゼロトラストを見据えた ID 管理,権限管理の 強化 3章で説明した事業環境の変化は,ネットワーク の「場所」で守る境界防御の限界を示している.エ ンドポイントでの防御・検知,本人認証が益々重要 になってくる.また,4.1節で説明したとおり,パ スワード等の認証情報の漏洩リスクにもさらされて

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日本セキュリティ・マネジメント学会誌 Vol.○○, No.○ いる.安易なパスワードの設定やパスワードの使い まわしを避けるのは当然のこととして,一つの認証 手段に頼るのもリスクが大きい.  一方,クラウド利用の加速は ID 管理,権限管理 の多様化,複雑化を招く.利用するサービス,シス テムが増えれば,それぞれに ID 管理,権限管理が 必要となるため当然である.それぞれに対して,個 別に ID 管理,権限管理を行うとなれば,そこにア クセスする利用者一人ひとりにその管理の負荷を委 ねることになる.そうなれば,利用者はその負荷を 軽減させるためにパスワードの使いまわし等の良か らぬ行為を起こしかねない.特に重要な情報を扱う サービス,システムに関しては,ID セントリックで シングルサインオン等の仕組みを活用し,多様なサ ービス,システムにアクセスする際の認証,認可の 仕組みを統合して,管理を強化したい.あるいは, こうした仕組みが実現可能なサービス,システムに 利用を制限したい.クラウド利用促進の号令のもと, 管理が行き届かなくなる事態は避けたい.したがっ て,情報システムにおける今後のキーポイントは重 要な情報の管理とID 管理,権限管理と考えられる. 重要情報にアクセス可能な利用者と操作が限定され ることである.そのために多様なサービス,システ ムを利用していく環境下にあっては,ID 管理,権限 管理を統一したポリシー,ルールで実現するための 仕組みが必要となる.本課題の解決は情報システム 担当部署の役目であるが,CSIRT と連携してニュー ノーマル時代のセキュアな情報システムを構築して いく必要がある. 5.4. DX を見据えたリスクアセスメントとプライオリテ ィによる意思決定 5.4.1. 可用性を重視したマネジメント コロナ禍におけるテレワークの移行は業務をどう やって継続させていくかが大きな課題となった.各 組織で知恵を出しながら業務継続を進める中,テレ ワークの実施が効果的と判断され,継続・拡大した いと考えている組織も多い.したがって,今後も従 来の業務形態に戻ることなく,テレワークを中心と した業務形態が進んでいくものと考えられる.  こうした環境下においては,業務を維持,継続さ せるための環境整備が重視され,従来以上に可用性 重視のマネジメントが求められる.バックアップ対 策や BCP 策定が重要である. 注意しなければなら ないのは,可用性のみに注意が払われ,機密性,完 全性の検討が疎かになってはいけないということで ある.可用性確保のために機密性,完全性を犠牲に する場合も想定されるが,リスク分析をしっかりと 行った上で,犠牲は許容可能な範囲に留めることで ある.経営層が事業リスクを把握した上で,意思決 定に関与していくことが重要である.事業リスクア セスメントとプライオリティによる経営層の意思決 定とそれをCSIRT が支援する体制が必要となる. 5.4.2. 分散と集中のコントロール ニューノーマル時代においては,テレワーク等に より従業員の働く場所が分散し,クラウド利用の加 速とともに情報システムも分散する.こうした分散 が進む中,情報は集中して管理する必要がある. 5.4.2.1. 人・場所の分散 従業員が分散しているため,第一に重要なのは連 絡手段の確保である.組織のラインを通じた緊急連 絡体制,CSIRT への連絡体制,経営幹部へのエスカ レーション体制,従業員間の連絡体制,土日・休日・ 深夜の連絡体制,等である.予め連絡体制,手段を 決めておき,いつでもそれが参照できる形にしてお く必要がある.同時に,CSIRT はチームで連携して 業務を進める必要があるため,情報伝達・共有,指 示,共同作業のための手段の確保も必要である.  責任者に連絡がつかないケースや責任者がパンデ ミックに見舞われるケースも想定して,責任・権限 の再分担も事前に設定しておくべきである.  また,従業員がテレワークで孤立している中でも, インシデント等不測の事態に陥った場合にはリモー トから支援できる環境の整備も必要である. ニューノーマル時代におけるCSIRT 活動 重要なデータのバックアップ対策,情報漏洩対策で ある.  分散した環境でリモートアクセスする従業員に関 しては,攻撃情報,不審メール情報,インシデント 情報等を集約して共有できる手段を確保するととも に,情報伝達手段も明確にしておく必要がある.分 散された環境においてこそ,情報の集約が重要であ る. 5 ニューノーマル時代における CSIRT 活動 5.1. コロナ禍において直面した CSIRT 活動の課 題 一般社団法人日本コンピュータセキュリティイン シデント対応チーム協議会(NCA)は,コロナ禍の 緊急事態宣言下における CSIRT の対応状況につい て,NCA 加盟組織にアンケート調査を行い,その調 査結果を公表した[17]. 本調査結果では,9 割以上の組織がテレワーク対 応の準備を進めていたものの,インシデントの検知 と対応に関する環境整備は喫緊の課題である,と分 析されている.この結果を踏まえて,インシデント 検知と対応それぞれに対して, ・想定される課題 ・解決の方向性,実現手段例 ・組織としての備え が検討,整理されている.考慮すべき事項が詳細か つ具体的に示されているので,是非参照されたい. 5.2. ニューノーマル時代における CSIRT 活動の留 意点と今後の方向性 本節では,これまで説明してきたコロナ禍におけ る環境,動向の変化に対応して求められる CSIRT 活動の留意点と今後の方向性について再整理する (図1).一部,前節でご紹介した NCA の調査結 果とも重複する部分もあるが,お許しいただきたい. テレワークの急増により,VPN 等のリモートアク セスも急増し,VPN 機器等を急遽増設する必要に迫 られた.IT 資産管理,脆弱性管理が不十分なため, サイバー攻撃の被害も続出した.こうしたリスクが 組織内に内在していることが十分に把握できていな かった.Web 会議,チャットツール,オンラインス トレージ,コラボレーションツール等,新たなアプ リケーションやサービスの利用も増加しているため, こうしたサービスやソフトウェアの脆弱性について も管理が必要となる.ニューノーマル時代において は,DX の加速も進み,業務環境,ネットワーク環 境は変化し続けるものと想定される.クラウド利用 も促進されるであろう.今まで以上にIT 資産管理を 十分に行い,管理されたIT 資産に対する脆弱性管理 を徹底し,把握している脆弱性に関して,そのリス クの所在と適切な対処を行っていく必要がある.こ のように IT 資産管理~脆弱性管理~リスク管理が 連鎖して統合管理できるとともに,その管理状況を 可視化,自動化して,対処も迅速化できる仕組みが 必要となる. 図1 今後強化すべき CSIRT 活動の方向性 5.3. ゼロトラストを見据えた ID 管理,権限管理の 強化 3章で説明した事業環境の変化は,ネットワーク の「場所」で守る境界防御の限界を示している.エ ンドポイントでの防御・検知,本人認証が益々重要 になってくる.また,4.1節で説明したとおり,パ スワード等の認証情報の漏洩リスクにもさらされて ニューノーマル時代における CSIRT 活動

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5.4.2.2. システムの分散 多様な働き方を支えるため,また,業務の継続と 効率化を進めるため,システムは多様化し分散環境 も進展している.リモートアクセスで組織内ネット ワークへのアクセス集中がリソース枯渇を招くこと も分散環境を進める要因になっている.分散が多い ほど管理は煩雑になる.組織内の通信状況を把握す るためには,モニタリングポイントが適切かどうか を再度見直し,許可された通信と許可されていない 通信を判別可能か,異常検知が可能かを改めて確認 する必要がある.  さらに,インシデント発生時には,侵害されたエ ンド・エンドでの通信経路を確認することも重要で ある.従来のように従業員が組織内オフィスにいる とは限らず,ネットワークの経路も固定的ではない. その経路上には管理できていない機器が存在してい る可能性がある. 5.4.2.3. 情報の集中 人・場所の分散,システムの分散等により,情報 も分散される傾向にある.リモートアクセス環境下 では孤立する従業員が頼れるのは,手元にある端末 からアクセスできるシステムと情報である.利用す るシステムは用途に応じて利用者が選択すればよい が,求める情報は容易にいつでもアクセス可能な状 態になっているとは限らない.したがって,分散化 が進む環境においては,情報の集中化が必要である. 情報が物理的に集中管理されているかどうかは問わ ない.ポータルサイトによって,分散配置された情 報に集約してアクセスできる形態でもよい.  また,チーム内,チーム間での共同作業を進める ための共有環境の整備も必要である. 5.4.2.4. ルール・手順の整備 ニューノーマル時代においても CSIRT として実 施すべき業務内容に変わりはない.環境が多様化, システムが分散化する中で,同じ業務を進めるにあ たり,従来のやり方では業務が進まなくなることが 課題である.管理すべき対象も変化している.こう した環境が変化する中における留意点や今後の方向 性は前述したとおりであるが,これらを見据えて, ルールや手順を見直し,組織内にも浸透させていく ことが重要である. 6 まとめ  コロナ禍における環境,動向の変化を踏まえ,さ らに,今後加速が求められるDX の推進に向けて, ニューノーマル時代における CSIRT 活動の留意点 と今後の方向性について論じた.コロナ禍で世の中 が経験した実態を踏まえ,課題として留意すべき事 項とその課題解決のための一つの方向性を示した. これら全てを実現するのは簡単なことではない.各 組織が抱える悩みも本稿で示した事項に留まらない であろう.CSIRT が経営層を支援し,情報システム 担当部署とも密接に連携して,自組織内の戦略,実 情に合わせてマネジメントしていくことが重要であ る.ニューノーマル時代に向けて,今回経験した大 きな変化は今後も継続していくものと想定される. 本稿で示した事項が今後のCSIRT 活動の発展,ひい ては組織全体の発展に少しでも貢献できれば幸いで ある. 参考文献 [1] 日本コンピュータセキュリティインシデント対 応チーム協議会「CSIRTスタータキットVer 2.0」, https://www.nca.gr.jp/imgs/CSIRTstarterkit.pd f,2011 年 8 月 [2] 一般社団法人 JPCERT コーディネーションセン ター,「CSIRT ガイド」,CSIRT マテリアル』, 2015 年 11 月,5 頁 [3] 厚生労働省,「テレワークを巡る現状について」, 『第1回「これからのテレワークでの働き方に関 する検討会」』,2020 年 8 月 17 日,4 頁 [4] 日本経済新聞「企業の 43%「テレワークを継続・ 拡大」厚労省調査」, https://www.nikkei.com/article/DGXMZO6627

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日本セキュリティ・マネジメント学会誌 Vol.○○, No.○ 1500W0A111C2000000/,2020 年 11 月 [5] DIGITAL X「そのテレワークはデジタルトラン スフォーメーション(DX)につながっているか 【第32 回】」, https://dcross.impress.co.jp/docs/column/colum n20170918-1/001425-2.html, 2020 年 5 月 [6] 総務省「我が国のインターネットにおけるトラ ヒックの集計結果(2020 年 11 月分)」, https://www.soumu.go.jp/main_content/000731 585.pdf,2021 年 2 月 [7] トレンドマイクロ「-クラウド利用に関する実 態調査 2021-新型コロナウイルスの感染拡大で 約9 割の法人組織がクラウド利用を加速」, https://www.trendmicro.com/ja_jp/about/press-release/2021/pr-20210120-01.html,2021 年 1 月 [8] トレンドマイクロ,「2021 年セキュリティ脅威 予測」,『TRENDMICRO|research』,2020 年12 月,4-6 頁 [9] NTT テクノクロス「ゼロトラストとは? ~ゼ ロトラストネットを実現するために」, https://www.trustshelter.jp/column/2019-03-11 /,2020 年 3 月 [10] 日経新聞「テレワーク、VPN 暗証番号流出 国 内38 社に不正接続」, https://www.nikkei.com/article/DGXMZO6299 4110U0A820C2MM8000/,2020 年 8 月 [11] YAHOO!ニュース「Fortinet 製 SSL-VPN の脆 弱性にパッチ未適用のリスト約5 万件が公開さ れる。日本企業も含む。」, https://news.yahoo.co.jp/byline/ohmototakashi/ 20201124-00209286/,2020 年 11 月 [12] NTT コミュニケーションズ「当社への不正アク セスによる情報流出の可能性について(第 2 報)」, https://www.ntt.com/about-us/press-releases/n ews/article/2020/0702.html,2020 年 7 月 [13] JPCERT/CC「複数の SSL VPN 製品の脆弱性 に関する注意喚起」, https://www.jpcert.or.jp/at/2019/at190033.html, 2020 年 9 月 [14] IPA「【注意喚起】事業継続を脅かす新たなラ ンサムウェア攻撃について」, https://www.ipa.go.jp/security/announce/2020 -ransom.html,2020 年 8 月 [15] 警察庁「令和 2 年におけるサイバー空間をめぐ る脅威の情勢等について」, https://www.npa.go.jp/publications/statistics/ cybersecurity/data/R02_cyber_jousei.pdf, 2021 年 3 月 [16] トレンドマイクロ,「ランサムウェアの新たな 戦略「遠隔侵入」と「情報暴露」 2020 年上期 セキュリティラウンドアップ」, 『TRENDMICRO|research』,2020 年 8 月, 20-27,33 頁 [17] 一般社団法人日本コンピュータセキュリティ インシデント対応チーム協議会CSIRT 評価モ デル検討ワーキンググループ,「新型ウイルス 感染リスク禍におけるCSIRT 活動で考慮すべ きこと -CSIRT 対応プラクティス集(ver.1.0)-」, https://www.nca.gr.jp/activity/imgs/CSIRTcor respondence practice collection-ver.1.0.pdf, 2020 年 9 月 (受付日:200○年○月○日)  著者略歴 星 敬一(ほし・けいいち) 1985 年,慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業. 1987 年,慶應義塾大学大学院理工学研究科修了. 1987 年~2012 年,日本電信電話(株)研究所にて, 通信網設計,次世代 IP-VPN,情報セキュリティの 研究開発に従事.2012 年~2014 年,(株)NTT デ ータ技術開発本部にて先進技術開発に従事.2014 年 ~現在,NTT テクノクロス(株)にて,セキュリテ ィビジネス,CSIRT 業務に従事. ニューノーマル時代におけるCSIRT 活動 5.4.2.2. システムの分散 多様な働き方を支えるため,また,業務の継続と 効率化を進めるため,システムは多様化し分散環境 も進展している.リモートアクセスで組織内ネット ワークへのアクセス集中がリソース枯渇を招くこと も分散環境を進める要因になっている.分散が多い ほど管理は煩雑になる.組織内の通信状況を把握す るためには,モニタリングポイントが適切かどうか を再度見直し,許可された通信と許可されていない 通信を判別可能か,異常検知が可能かを改めて確認 する必要がある.  さらに,インシデント発生時には,侵害されたエ ンド・エンドでの通信経路を確認することも重要で ある.従来のように従業員が組織内オフィスにいる とは限らず,ネットワークの経路も固定的ではない. その経路上には管理できていない機器が存在してい る可能性がある. 5.4.2.3. 情報の集中 人・場所の分散,システムの分散等により,情報 も分散される傾向にある.リモートアクセス環境下 では孤立する従業員が頼れるのは,手元にある端末 からアクセスできるシステムと情報である.利用す るシステムは用途に応じて利用者が選択すればよい が,求める情報は容易にいつでもアクセス可能な状 態になっているとは限らない.したがって,分散化 が進む環境においては,情報の集中化が必要である. 情報が物理的に集中管理されているかどうかは問わ ない.ポータルサイトによって,分散配置された情 報に集約してアクセスできる形態でもよい.  また,チーム内,チーム間での共同作業を進める ための共有環境の整備も必要である. 5.4.2.4. ルール・手順の整備 ニューノーマル時代においても CSIRT として実 施すべき業務内容に変わりはない.環境が多様化, システムが分散化する中で,同じ業務を進めるにあ たり,従来のやり方では業務が進まなくなることが 課題である.管理すべき対象も変化している.こう した環境が変化する中における留意点や今後の方向 性は前述したとおりであるが,これらを見据えて, ルールや手順を見直し,組織内にも浸透させていく ことが重要である. 6 まとめ  コロナ禍における環境,動向の変化を踏まえ,さ らに,今後加速が求められるDX の推進に向けて, ニューノーマル時代における CSIRT 活動の留意点 と今後の方向性について論じた.コロナ禍で世の中 が経験した実態を踏まえ,課題として留意すべき事 項とその課題解決のための一つの方向性を示した. これら全てを実現するのは簡単なことではない.各 組織が抱える悩みも本稿で示した事項に留まらない であろう.CSIRT が経営層を支援し,情報システム 担当部署とも密接に連携して,自組織内の戦略,実 情に合わせてマネジメントしていくことが重要であ る.ニューノーマル時代に向けて,今回経験した大 きな変化は今後も継続していくものと想定される. 本稿で示した事項が今後のCSIRT 活動の発展,ひい ては組織全体の発展に少しでも貢献できれば幸いで ある. 参考文献 [1] 日本コンピュータセキュリティインシデント対 応チーム協議会「CSIRTスタータキットVer 2.0」, https://www.nca.gr.jp/imgs/CSIRTstarterkit.pd f,2011 年 8 月 [2] 一般社団法人 JPCERT コーディネーションセン ター,「CSIRT ガイド」,『CSIRT マテリアル』, 2015 年 11 月,5 頁 [3] 厚生労働省,「テレワークを巡る現状について」, 『第1回「これからのテレワークでの働き方に関 する検討会」』,2020 年 8 月 17 日,4 頁 [4] 日本経済新聞「企業の 43%「テレワークを継続・ 拡大」厚労省調査」, https://www.nikkei.com/article/DGXMZO6627 ニューノーマル時代における CSIRT 活動

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