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他者比較による階層帰属意識の規定メカニズム : 数理的方法と計量的方法の統合をめざして

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Academic year: 2021

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(1)博 士 学位 申請論文. 他者 比 較 に よる階層 帰属意 識 の規 定 メカ ニ ズ ム 数 理 的方 法 と計 量 的方 法 の 統 合 を め ざ して. 関西 学 院 大 学 大 学 院社 会 学研 究 科 ユ 前田 豊. 博 士課 程 後 期 課 程. 3年.

(2) 園次. 序章 .… ………………………………………… ……………………………………………………………6. 1先 行研 究 の レビュー と方法論 .… ………… ……………………………………………………………8 1は じめに .… ……………………………………… …………………………………………………………………………8 2「 階層帰属意識」概念 の位 置 づ け .… …………………………………………………………… ¨ ・9. 1。. 1。. 1.2.1社 会的地位 の威信. D… ……………………………………… …………………………………… 9. 1.2.2経 済的 地位 の反 映 .… ……………………………………………………… ………………… ¨13 1.2.3階 層帰属意識 へ の新 たな視点 .… … ……………………………………………………………17 1。. 2。. 1.2。. 4階 層帰属意識 を問 う意義① 5階 層帰属意識 を問 う意義②. :階 層意識 として の 要件 .… ……………………………………20 :準 拠集 団理論 の彫琢 .… ………………………………………22. 1.3階 層帰属意識 の規定構 造 に関す る先行研 究 の レビュー .… ………………………………………23 1.3。. 1。. 24 1視 角 と手法 。 ………………………… …………………………………………… ………… ……. 1。. 24 3.2時 間的側面 。 …………………………………… …………………………………………………. 1。. 3.3空 間的側面 .… ……………………… ………………………………………………………… ¨26. 4方 法論 に関す る考察 .… ………………… ………………………………………………………… 027 1.4。. 1対 抗的な相補 関係 .… ………………………………………………………………………… ¨27. 29 1.4.2手 法 の併用 にむ けて .… …………………………………… ……………………………………. 2FKモ デル の概 略 と課題 .… ………… …………………………………………………………………34 2.1は じめに … ・ ・ ・ ・ ・034 ・ ・・ ・000000000000・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・…・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …・ 2.2FKモ デ ル の概説 .… ……………………… ………………………………………………………… 35 ....・. 2。 2。. 2.2。. 00・. "・. 0・. 000・. 000・. 0000・. 0・. 0・. 000・ 00・. 000000・. 00・. 0000・. 35 1公 理 と定理 。 ………………… ……………………………………………………………………. 2階 層的地位 の分布 .… ………………………………………………………………………… ¨39. 2.3FKモ デ ル の 問題 点 .… …………………………………………………………… …………………41 2.4改 善 に向けた方 向性 。 ……………………………………………… ……………………………… 045 48 3他 者 比 較 メカ ニ ズム①一一 「誰 を」「どの よ うに」 。 …………………………………………… ¨ 48 1は じめに .… …………………0… ……0… ………………………・……・………・…………¨……………………0…・…… ・ 3。. 3.2「 他者 比 較」 の概念的準備 .… ……………………………………………………………………・49 3。. 49 2.1比 較対象 となる他者 の選 定 。 ……………………………………………… ………………… ¨. 3。 2。. 2他 者比較 の方法. 49 :差 と比 .… ………………………………………………………………… …. 3.2.3他 者 比 較 の方法 :認 知 バ イア ス .… ………………………………………………………… ¨51 3。. 3「 他者 比 較」 の フォーマ ライ ズ 。 ………………………………………………………………… 052. 3.4主 観 的地位評価指標 の導 出 .… ………………………………………… ………………………… 055 3。. 5他 者 比較 の 実証的検討 .… ………………………………………………………………………… 058 58 3.5。 1分 析 の概要 .… …………………………… ……………………………………………………….

(3) 2分 析結果 .… ………………………………………………………………………………………59 3.5。 3主 観的地位 評価指標 のマ ク ロ的水準で の検討 .… ………………………………………… ¨ 62 3.5。. 3.5。. 4ま. とめ と課題. .… … ……… ¨…………………………………………………………………………… ¨70. 4他 者比較 メカ ニズ ム②一一. 「誰 が」「誰 を」. 72 .… ……………………………………………………. 4。. 1 目的 .… ……………………………………………………………………………………………………………………………… ・ ・72. 4。. 2選 択主体 の属性 .… ……………………………………………… …………………………… ……・73 4.2。. 1顕 示性 と地位 コ ンフ ァー ラル :職 業 と学歴 .… …………………………………………… ¨73. 4.2.2価 値体系 :年 代 .… ………………………………………………………………………………74 4。. 3分 析 .… ………………………………………………………………………………………………・75 4。 3。. 4。 3。. 4。 3。. 4。. 1モ デル の概説 .… …………………………………………………………………………………75. 2分 析 の概要 。 78 ……………… ………………………………………………………… …………… 3ベ ース ライ ンモ デル の分析 .… …………………………………………………………………80. 3.4個 人属性 の影響 :モ デ ル 選択 .… ……………………………………………… ………………83. 4.3.5個 人属性 の効果 :パ ラメー タの解釈 4。. 3.6個 人属性 の効果 :年 代 .… …………………………………………………………………… ¨85. 4。 3。. 4。. 4。. 85 .… ………………………………………………………. 7個 人属性 の効果. :職 業 .… …………………………………………………………………… ¨87. 3.8個 人属性 の効果 :学 歴 。 …………………………………………………………………………89. 4結 語 .… …………………………………… ………………………………………… ………………・91. 5比 較対象 と比 較方法 を考慮 した FKモ デ ル 。 ……………………………………… ……………… 094 1は じめに .… …・000…・ 。 。・ ・ ・ ・… 000… 94 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・¨・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・…・ ・・ ・ ・ ・ ● 00… …・ ・ ・ ・・ ・ ・ 2FKモ デル の確認 .… …………………………………………………………………………………94 3公 理 の修 正 0追 加 .… ……………………………………………………………… ……………… 096 5。. ...・. 000000・. 0・. 000・. 000・. 0・. 00・. 0000・. 000000・ 0000000・. D00●. 00000・. 00・. 5。. 5。. 5。. 3.1類 似 ・ 近接性 の公理 .… …………………………………………………………………………96. 5。. 3.2下 方比較 の公理 .… ………………………………………………………………………………98. 3主 体性 の公理 .… ……………………………………………………………………………… 100 4修 正 FKモ デ ル のデ リベ ー シ ョン .… …………………………………………………………… 105 5.4。 1階 層帰属意識 の デ リベ ー シ ョン 。 …………………………………………………………… 105 5.4。 2階 層帰属意識分布 .… …………………………………………………… ………… ………… 109 5.5非 独 立・ 非 同一 性 の階層次元 D… …………………………………………………………………H5 5.5。 1客 観 的 な社会階層 の特徴 .… ………………………………………………………………… H5 2シ ミュ レー シ ョンの方法 .… …………………………… …………………… ……………… H7 3シ ミュ レー シ ョンの条件 .… ………………………………………………………………… 121 5.3。. 5。. 5。 5。. 5。 5。. 5.5.4シ ミュ レー シ ョンの結果 .… ………………………………………………………………… 123. 5.6結 語 .… ………………………………………………………… ……………………………………128.

(4) アペ ンデ ィ 第 1章 のアペ ンデ ィックス :1952年 東京都調査. .… ……………………………………………… 0131. 第 3章 のアペ ンデ ィックス .… ………………………………………………………… ………………145 ス トリク トな評価 ではない 主観 的地位 評価 ス トリク トな評価 による主観 的地位評価. .… ……………………………………………………145. .… ………………………………………………………147. パ ラメー タ推 定値 ・ 記述統計 ・モ デ ル の逸脱度. .… ………………………………………………150. 第 4章 のアペ ンデ ィックス .… …………………………………………………… ……………………161 ベ ー ス ライ ンモ デ ル の結果 .… ………………………………………………… ……………………161 モ デ ル 選択 のアル ゴ リズム .… ………………………………………………………………………162 モ デ ル 選択 の結果 .… …………………… ……………………………………………………………167.

(5)

(6) 序章 タイ トル に もあ る通 り,本 論文 では階層帰属意識 と呼ばれ る意識 を主題 として取 り上 げて い るの だが ,こ の 階層帰属意識 が分類 され る 「階層意識 」 を,吉 川 (2008)は 次 の よ うに定 義 してい る. .. 狭義 の階層意識 =主 観 的社会階層 とは ,① 質問文 が言及 して い る こ とが ら自体が階層 に かんす る諸個人 の理解 0認 知 ・ 判断 ・ 構 えな どであ る とい う意 味で 「階層的」 であ り ,. 同時 に,② そ の 回答傾 向 (得 点分布 )が 社会的地位 に よつて 異 な ってい る とい う意味 で も 「階層的」 で あ るよ うな社会的態度 であ る.言 い換 えれ ば ,階 層構造 が形成要因 とな り, しか も階層構造 を維持 ・ 変革す る主観 の あ り方 として ,階 層構造 に対 して リフ レク シ ョン作用 (因 果 の再帰性 )を もつ こ とが ,狭 義 の 階層意識 =主 観 的社会階層 の重要 な. │12008:79) 要件 な ので あ る.(吉 り 社会階層 に規定 され つつ も,そ の意識 が社会階層 に志 向 してい る とい う,構 造 との相補 的 な関係 か ら階層意識 を措定 して い る と理 解 で きるだ ろ う.し か し,こ こで社会階層 に規定 さ れ る とい う点 ,つ ま り② の 「社会的 地位 に よ つて異 な ってい る」 とい う条件 を少 し考 えてみ たい. .. 端的 には,個 人 が位 置す る階層的地位 ,例 えば職 業的地位や学歴 上 の地位 といった もので. ,. 個人 が持 ち うる意識 の あ り方が異 な る こ とだ と換言 で きる② の条件 に関 して ,少 な くとも今 日の 階層意識研 究 では ,② の条件 を十全 に満 た してい る意識 は見 つ か つてい な い (吉 川 2008). 詳 しくは後述す るが ,本 論文 で取 り上 げ る階層帰属意識 も例外 ではな く,む しろよ り早 い段 階 で社会階層 との希薄 な関係性 が指摘 され ,こ の事実 か ら階層意識 と しての 階層帰属意識 を 否定的 に捉 える流れ も存在 した. .. しか し,本 論 文ではあえて社会階層 の 文脈 か ら階層帰属意識 の規 定 メカ ニズム を主題 と挙 げて い る.確 かに ,社 会階層 か らス トレー トフ ォ ワー ドに意識 が規 定 され て い る訳では ,お そ らくな い だ ろ う し,ま た ,そ もそ も規定 され ていた ら,こ こで この よ うな議論 は して い な い .だ が ,社 会的地位 が及 ぼす影響 は直接 的 に意識 として表 出 され て い る とは限 らな いだ ろ う, とい うのが本論文 の 出発点 であ る. .. つ ま り,階 層 的地位 か ら反射的 に意識 を表 出 してい るのでは な く,階 層的地位 か ら意識 を 定 め るまで の 間 に ,何 らか の主体的 な営み が介在 して い るので はな いか とい う可能性 を示唆 して い る.も ちろん ,可 能性 はあ くま で可能性 であ っ て ,仮 説 の段階 に留 ま る.そ もそ も解 明 され て い た ら,や は りここで この よ うな議論 は していな い .た だ ,こ れ も詳 しくは後述す るが ,階 層帰属意識 を尋ね る質問文 の趣 意 自体 が , 日本全体 での主観 的な地位 評価 とい う. ,. 漠然 と した もの な の で ,回 答者 がそ の 回答 に至 るまで の評価 プ ロセ ス には様 々 な要素が介入 してい るこ とは想像 に難 くな い .そ れ ゆ え,階 層帰属意識 が 階層 的地位 に よつて はあま り説 明 され な い こ とが明 らかにな った として も,こ の事実 を多様 な評価 プ ロセ スの反映 として肯.

(7) 定的 に捉 えるこ とがで き,そ こには 階層意識 の枠組 み に とらわれ な い ,豊 かな社会科学的意 義 を見出す こ とができる (佐 藤 2009). 本論文 では,こ の 主 体的な営み の具体的 な可能性 の 1つ として ,他 者 との地位 比 較 メカ ニ ズム を取 り上 げる.そ して ,そ の経験的妥 当性 を「社会階層 と社会移動全 国調 査 1」. (SSM調 査. ). か ら実証的 に検討 し,妥 当す る比 較 パ ター ンの析 出 と,他 者 比較 が及 ぼす 階層帰属意識 ヘ. の効果 を理論的 に検討す るこ とを 目的 とした い. .. 各章 の構成 と具体的な内容 は以下 の通 りである.ま ず第 1章 では,階 層帰属意識研 究 の レ ビュー を通 して ,階 層帰属意識 の規定 メカ ニ ズム に他者比較 の観 点か ら検討 を加 えよ うとす る本論文 の意義 を再確認す る とともに,具 体的 な検討方法 に数理 的手法 と計量的手法 を統合. 2章 では,数 理的手法 の コア とな る FKモ デ ル を検討 し,向 後 の議論 で展開 され る論点 を抽 出す る.こ の第 2章 の議論 を受 け,第 3章 と第 4章 で は ,具 体的な他者 比 較 メカ ニズ ム を 「誰 が 」「誰 を」「どの よ うに」 とい う 3つ の 問題 に分解 したのちに,統 計デ ー タを用 い てそれぞれ の 問題 に検討 を加 えて い く.実 質的 な最終章であ る第 5章 では ,第 3章 と第 4章 の分析結果 か ら新 た に析 出 され た他者比較 のパ ター ンを踏 ま した 手法 を用 い る意味 を説 明す る.第. える形 で ,FKモ デ ル をベ ース とす る新 たな数 理 モ デ ル を構 築 し,他 者比較 の方法 と階層帰属 意識 の 関係 を理論的 に検討 してい く. .. 本論文 の執筆 にあた り,多 くの人 か ら有形 ・ 無形 の援助 を賜 つ た .特 に,高 坂健次・ 関西 学院大学教授 には,学 部時代 か ら本論文 の執筆 まで の約 10年 とい う長 きにわた り,一 貫 した ご指導 を頂 い た .ま た石 田淳 0関 西学院大学准教授 には,本 論文 の草案段階 か ら読 んでいた だ き,有 益 なア ドヴァイ ス を頂 い た .こ こに記 して謝意 を伝 えた い. l確 か に SSM調 査デ ー タ以外 の デ ー タセ ッ トも利 用 可能 で あ る.し か し. .. ,以 降 の分析 で は ,時 点間比較 を射 程 に収 めてい るので ,長 い スパ ンで 階層 帰属意識 を尋 ね てい るデ ー タセ ッ トが必要 とな る。SSM調 査デー タ は 1955年 か ら 2005年 まで断続 的 に尋 ねてい るので ,こ の 意 味 で適 当なデ ー タセ ッ トだ と思 われ る。.

(8) 1. 先行研究 の レビュー と方法 論 は じめに. 本論文 の 目的 は ,共 時的 な他者 との比 較過程 に着 日して ,数 理 ・ 計量的手法 の 併用 か ら 階層 帰属意識 の 規 定構 造 を解 明 して い く こ とにあ る.研 究対象 とな る階層帰属意識 とは. ,. 「さま ざまな階級 ,階 層 ,民 族 ,世 代 ,そ の他 の社会集 団 がそれ ぞれ の存在 的諸条件 に規 定 され つつ 形成 され ,そ れ ぞれ の存在諸 条件 を維持 し,あ るい は変革す るた め の力 として 作用す るもの として の精神 的諸過程 と諸形象」 (見 田 1979:101)と 定義 され る社会意識 の うち,特 に社会階層 との 関連 か ら捉 え られ る階層意識 の 1つ として見なす こ とがで きる (原. 1990).公 平感や政党支持 な ど,階 層意識 の枠組み の 中には多 くの個別的 な意識 が含 まれ る が ,そ れ ら数 ある階層 意識 の 中で も階層帰属意識 は ,か つ て 中核 を成す階層意識 (原 1990) としてみ な され て い た時代 もあ り,1960年 代 の尾 高 ―安 田論争 に代表 され る中間層論争. ,. 1970年 後半 ∼ 1980年 前 半に かけて繰 り広 げ られ た 中意識 の増 加傾 向に対す る新 中間論争 と 中流階級論争 ,そ して ,2000年 中 ごろに展開 され た格差・ 下流社会 に関す る論争 な どの各 時代 のアジェンダに登場 し,そ れ ら論争 の経験的事実 を提供 してきた歴 史 を持 つ. .. この よ うな長 い歴 史 を持 つ 階層帰属意識 が ゆえに ,関 連す る先行研 究 には膨 大 な蓄積 が 確認 で きる.だ が ,同 じ 「階層帰属意識 」概念 を扱 ってい た として も,そ の位 置 づ けは時 代 的 に変遷 してお り,ま た主 として用 い られ ていた数理 的手法 と計量的手法 との 思想 上の 対 立 も存在 していたた め,決 して 階層帰属意 識研 究 が 同 じ方 向性 を共有 して推進 され て き たわ けではなか った. .. そ こで,本 論文 の導入 にあた る この章 では,「 階層帰属意識」概念 の歴 史的変遷 を見 るた め の 時代的区分 と して ,1960年 代 に尾高邦雄 と安 田二 郎 の 間 で 交わ され た第 一 次新 中間論 争 ,1970年 代 に繰 り広 げ られ た第 二次 中間論争 ,直 井道子 (1979)以 降 に ス タ ンダー ドと な つ た実証的 アプ ローチ を踏 まえた原・ 盛 山 (1999)と 数 土 (2009c),佐 藤 (2009)に よる 議論 に注 目して ,各 時代 区分 で 階層 帰属意識 に付与 され て きた意 味付 け の歴 史的変遷 を描 き出す .そ して ,そ の位 置 づ けの 変遷 か ら,階 層帰属意識 を主題 として ,そ して他者 比 較 メカ ニ ズム を理論 的視座 として設 定す る本論文 の意義 を ,階 層意識論 と準拠集 団理論 の 両 面 か ら概説す る こ とを試み る. .. 2つ の手法である数理的手法 と計 量的手法 の それ ぞれ につい て 蓄積 が確認 できる先行研 究 の レビュー を簡 単 に行 つたの ちに ,数 理 的手 法 の思想 を表 明 した高坂 ([2000]2006)と ,計 量的手法 の立場 を表 した 吉川 (2000a)の や り取 りか ら数理 ・ 計量的手法 の思想 的対 立 を明確 に し,厚 東 ・ 高坂 (1998)に よる理論 類 また ,階 層帰属意識研 究 にお ける中心的な. 型 に 関す る議論 を敷街 して 「数 理 ・ 計量的手法 の併用」 を手法 として選択す る ことの 方法 と意義 を確認す る. ..

(9) 1。. 2. 「階層帰属意識」概念 の位 置 づ け. 客観 的 な構 造 が意識 を規定す る とい う構 図 自体 は ,こ とさら説 明 の 要 らな い 社会学伝 統 の視角 ではあ るが ,階 層帰属意識 とい うよ り具体的 な階層意識 に焦点 をあてた場合 ,そ の 客観 的 な構造 と してイ メー ジ され て きた階層 次元 には時代的 な相違 が存在す る.そ して 今 日の 階層帰属意識研 究にお いて は ,理 論 を所 与 とした意識 の捉 え方 そ の ものに対 して. ,. ,. 経験 的 な要請 か らの検討 が加 わ る。本 節 で は 階層帰属意識 の 日本 にお ける研 究史 を概 観す る こ とで ,こ う した 各時代 で 変遷 して きた 「階層帰属意 識 」概念 の位 置 づ けを提 え,そ こ か ら階層 帰属意識 を主題 として挙 げる意義 を概説す る. .. 1。. 2.1 社会的地位 の威信 「階層帰属意識」 とい う名称 の 出 自は Centers(1949)ま で遡 るが , 日本 にお いて階層帰. 2.当. 属意識 を尋ねた初 めての社会調査 は,1952年 に実施 された東京 都調 査 であ つ た 京 大学 の 学部 生・ 大学院生. 時 の東. (ssM調 査研究会 )が 主体 とな って行 われ た この調査 は,メ. ン. バ ー の 「(1)大 都 市社会 にお ける,(2)社 会 的成層 と社会意識 に関 して調 査研 究 をな し. ,. 一つ の論文 にま とめてみた い とい う意欲 」 (安 田 1953:H4)が 調査動機 とな って お り,そ の 後 1953年 に ISA(国 際社会学会 )の 要請 を受 けて行 われ た東京 ・ 横浜 ・名古屋 0京 都 ・ 大 阪・神戸 を対象 とした 6大 都 市調査. 3の. プ レ調 査 (尾 高 1952,尾 高・ 西平 1953)と して も位. 置付 け られ るもので ある.こ の ときに導入 され た階層帰属意識 の項 目が ,そ の後 の 6大 都 市調査 とその拡張版 である 1955年 「社会階層 と社会移動全 国調査 (以 下 ,SSM調 査 )」 に 引 き継 がれ て い く. .. 4,6大 都 市調査 では. 東京都調査時点で の階層帰属意識 を導入 した動機 は分 か らな いが. ,. 1949年 に ロン ドン大学 の経 済学部 が行 つた同種 の社会調査 を踏襲す る形 で調 査項 目作成 さ れ た ものの ,含 まれ て い る調査項 目が 「不十分」だ と して ,新 た に階層帰属意識 を導入 し た こ とが報告 され て い る (尾 高・ 西平 1953)5.ま た ,1955年 であつた尾高邦雄 は ,後 に 1955年. SSM調 査 の 中心 的 メ ンバ ー. SSM調 査 に込 め られ た期待 の 1つ が 「従来 のマル クス. 2. 管 見 の 限 りで ,実 際 に使 用 され た 質 問項 目の構成 は安 田 (1953)の 整理 で しか 窺 い 知 る こ とがで きな か つた が ,関 西学院 大学社会学部 に安 田二郎氏 か ら寄贈 され た資 料 の 中に ,実 際 に使 用 され た 質 問紙 が発 見 で きた ので ,実 証 的 な社会階層研 究上 の 貴重 な資料 と してアペ ンデ ィ ック ス に掲載 してお く 3 6大 都 市調 査 は ,1951年 ISA(国 際社会学会 )パ リ会議 の合議 で定 ま った社会 階層 と社会移動 に関す る 国際比較調査計画 に基 づ くもので (尾 高 1952),そ もそ も全 国調 査 の予 定 だ った ものが ,予 算 の都合 上 ,6 都 市 に対 象 を限定 した形 で行 われ た もので あ った 高・ 西平 1953)。 4 ただ し,同 じ東京 都調査 に導入 され た違 う意識(尾 変数 に関 しては ,近 世 以後 の 「封建 主義的」絶対 主義 的社会構 造 を支 えた伝 統的価値 体系 と,近 代 的 な民主主義 ・ 社会 主義 的イデ オ ロギー の矛盾 をは らむ 2つ の 意識 体系が混在 していた (と 思 われ る)当 時 の社 会意識 を測定す るには ,既 存 の調査項 目があま りに単 純 で あ っ たた めに ,そ れ を よ り適切 な形 で修 正 したの ちに調査項 目に導入 した こ とが報告 され てい る (城 戸 ・ 杉 1954) 5 神 林 (2010)は ,導 入す る動機 と して (1)客 的 な社会 的地位 の測 定指標 として ,(2)当 時 の 日本 観 にお け る地位 構 造 の在 り方 を測 定す る指 標 として ,(3)マ ル ク ス 主義 的 な階級意識論・ 社会意識論 の影響 の 3つ の 可能性 を挙 げて い る。 ..

(10) 主義 の 階級 理論 に よつて神 秘化 され て いた一 社会 の 階級構 造 が 現 実 には どの よ うな かた ち を と り, どの よ うな性 質 を も つてい るのか とい うこ とをは じめて 経験的 に明 らかに し うる であろ うとい うこと」 (尾 高. 1995:27)に あ つて ,そ の現実 の階層構造 を経験的 に描 き出す. た めには ,包 括 的 かつ 不変的 な社会経済的地位 ス ケ ールの 作成 と,補 助 的 な指標 と して所 属階級 につい ての 自己判定 が必 要 だ つた と述 べ て い る (尾 高 1995:28).こ こか ら類推す る に ,少 な くとも階層帰属意識 が 導入 され た理 由は ,マ ル ク ス主 義 的階級論 の経験的妥 当性 を検討す るにあた つて ,そ れ まで の既存研 究では不十分で あ つ た個 人 の所属 階級 につい て の 自己判定 を補完す るためであ っ た と考 え られ る.こ の. 6大 都 市調査 にお い て階層帰属意. 識 を尋ねた質問文 は以下 の通 りであ る. .. 【 階層帰属意識】 「仮 りに現在 の 日本 の社会 を,上 流. 中流 ,下 流 の二つ の層 に分 ける とすれ ば ,あ な たはその どれにはい ると思 い ますか。 」 (※ 「中流」 と答 えた場合 は,さ らに 「中の上 」 ,. 「中の 中」「中の下」を尋 ね る) と ころで ,当 時 の調査 で 導入 され た調 査項 目の 中 に ,階 層帰属意識 とよ く似 た意識項 目 と. して 階級 帰属意識 も同時的 に導入 され ていた .階 級帰属意識 の質 問文 は以 下 の通 りであ. る. 階級帰属意識 】 【 「仮 りに現在 の 日本 の社会 を ,資 本家 階級 ,労 働者 階級 ,そ の他 の二つの層 に分 ける とすれ ば ,あ なたはそ の どれ には い る と思 い ますか .」 この 階層帰属意識 の質 問項 目に関 して ,東 京都調査 の場合 で は 階層帰属意識 の カテ ゴ リ ーが 「上 流 階級 ,中 流階級 ,下 流階級」 と 「階級」 が語尾 に付 い て い た点で ワー デ ィ ン グ の相違 が存在 し,ま た ,そ の後 引 き継 がれ た 1955年 SSM調 査 では ,「 上 流」「中流階層 の 上 のほ う」「中流階層 の 下 のほ う」「下流階層 の上の ほ う」「下流階層 の 下 のほ う」 と分害1の また ,階 級 帰属意識 に関 して も,東 京都調査 は同 じなのだが ,1955 年 SSM調 査では,「 そ の他 」 を 「中産階級 」に置 き換 え,別 途 「そ の他」 カテ ゴ リー を設 けた 4カ テ ゴ リー を回答 カテ ゴ リー として い る この 階級 帰属意識 の カテ ゴ リー は ,1960. 仕 方 が 変更 して い る. 6。. 7。. 年 に尾 高 が実施 した 「中間階級調 査 」 で も使用 され て い た (尾 高 1995). この よ うな回答 カテ ゴ リー 上 の 時 間的変化 があ るものの ,階 層 帰属意識 と階級 帰属意識 間は共通 して 日本社会 にお け る 自己 の帰属 ラ ンク を尋ねた調査項 目であ るこ とに変 わ りな く,階 層 0階 級帰属意識 の 違 い は帰属 ラ ンク を 「上 流 ,中 流 ,下 流」 とす るのか ,そ れ と. 66大 都 市調 査 で確認 され た 分布 に偏 りを考慮 した変更 で ある と考 え られ る 7「 そ の他 」 に中間 と答 える回答者 が 多 か ったた めである と考 え られ て い る. (神 林 2010). (神 林 2010). 10.

(11) も 「資本家 階級 ,労 働者 階級 ,中 産階級 ,そ の他 」 とす るのかの とい う帰属 カテ ゴ リー の 違 いで しかない .し か し,こ の. 2つ の質 問項 目が併用 して用 い られ てい た とい うことは. ,. 少 な くとも階層帰属意識 と階級帰属意識 には異 な る合意 が込 め られ て い た こ とを意味す る. .. それ では ,こ の 時代 の研 究者 に とつて 階層 帰属意識 とは どの よ うな意識 と して認識 され て い た の だ ろ うか. .. この 問題 を考察す る資料 として ,こ こでは尾高邦雄 と安 田二 郎 の 間 で 交 わ され たや りと. 2人 のや りと りは,1961年 に発表 され た尾 「 高 の 日本 の 中間階級―― そ の位 置 づ けに関す る方法論的覚書」 に端 を発す る.こ の論文 りに着 目す る.当 時 の社会階層論 を リー ドした. SSM調 査 と 1960年 中間階級調査 を用 い て ,当 時 の論 壇 で互 換的 に用 い られ て い た 「中間階級 」や 「中産階級 」 とい っ た類似 した概 念 の構造 を丹念 に検討 し,当 時 の 日本 社会 にお け る序列 的階級構造 の あ り方 を明示 的 に表 した研 究 な の だが ,そ の成果 もさる こ となが ら,階 級構 造 の 導 出 に主観 的方法 と客観 的方法 を統合 した手法 か らアプ ロー チ した 点で も特徴 づ け られ る.こ の統合的 な手法 とは ,研 究者 の視 点か ら階級 の規 定構造 を定 め る客観 的方法 に加 えて ,回 答者 が 下す 「中間」「中流」「中産 」 へ の 自己判定 も階級構 造 の 探 索 に用 い る とい う複 眼的 な手法 を意味 し,主 観 的方法 に対す る分析 の 中 で ,「 中流」,つ は 1955年. ま り階層帰属意識 が用 い られ てい る. .. では,尾 高 は この論文 の なかで階層帰属意識 を どの よ うに位置 づ けて い たのか .尾 高は. ,. 調 査結 果 か ら示 され た 「中間」「中流」「中産」の分布 と自身 の調 査 経験 を踏 ま えて ,「 中流」 は職 業 上 の 地位 や 学歴 とい っ た社会 的地位 が持 つ威 信 で構 成 され る序列構造上 の真 ん 中辺 りをイ メー ジす るカテ ゴ リーで ,「 中産」は所有財産や収入 とい つた経済的地位 の序列構造 にお ける上位者 をイ メー ジす るカテ ゴ リー ,「 中間」 は 「中流 」「中産」 の よ うな具体 的社 会経済的地位 で構成 され る序列構造上 のイ メー ジではな く,「 どっ ちつ かず の 曖味 さ」や「中 ぶ ら りん の 不安定 さ」 とい っ た 「中間」 の 消極 的なイ メー ジが先行 した もので ある と位 置 付 けて い る (尾 高 1995:206-208). この尾 高論文 が発表 され てか ら. 6年 後 に,安 田二郎 は当該論文 の 問題 点 をま とめた 「階. 級帰属意識 と階級意識一一 尾高論文 に対す る疑 問」(1967)を 発表 して い る.ま た同 じ年 に尾 高 は安 田論文 で呈示 され た問題 点 に対す る リプ ライ として 「安 田二 郎君 に答 え る」 を発表 し,そ の批判 に対す る反駁 を試 みて い る.こ の安 田 と尾 高 に よる論争 は ,発 端 とな っ た尾 高論文 で展 開 され ていた分析 とそ のデ ー タ,そ して解釈 に関す る,多 岐 に亘 る論 点 をめ ぐ って な され た もので ,そ の グに向 い ていた. 1つ の論点 が階級帰属意識 と階層帰属意識 に 関す るワー デ ィン. .. 先述 した通 り,1952年 東京都調査 と 1955年. SSM調 査 ,1960年 中間階級調 査 にお ける階. 級帰属意識 の 項 目は ,「 資本 家階級」 と 「労働者 階級 」 は共通 して い るものの ,「 そ の他 」 が 「中産 階級 」 へ と置 き換 え られ ていた .こ の点 を安 田は それ (中 産 階級 )は 元来 ,「 有産」「無産」 に対す る コ トバ で あ っ て ,「 資本家」.

(12) 「労働者 」 と同一 次元 の概念 ではな い .… 。 資本家 一 労働者 とい うカテ ゴ リー は元来. ,. 生産 手段 の所有者 と非 所有者 を意味 して ,単 な る財産 の所有 ・ 非所有 を意味 してい る ので はな い筈 である.従 つて 「中産 」 とい うコ トバ をそ の 間 に割込 ませ るこ とは ,考 慮 の次元 を複数化す るもので ,誤 ま りとい わね ばな らない .」 (安 田 1967:103-4) と述 べ ,所 有資産 の状況 を表す はず の 「中産」 とい う言葉 を,生 産 手段 の有無 を表す 「資 本家」「労働者」 の 間 の 中間 カテ ゴ リー にお く尋ね方 が ,資 産 と生産手段 の 2つ の次元 を横 断 した不 適切 な尋 ね方 で あ る と批半Jし た .し か し,こ の 問題 点 に対す る尾 高 (1967)の リ プ ライは ,確 か に理論 上では 「資本家」 は生産 手段 の所有 を意味す るが ,資 本家 に属す る 小企業主 の 中 で も,自 分 を 「資本家」 と位 置 づ ける回答者 は少 な く,む しろ,デ ー タを踏 まえれ ば ,回 答者 は資本 家 一労働者 の 区分 を経 済的 な次元で捉 えて い た と考 え られ るため そ の 中間 カテ ゴ リー に経済的 な次元 の 自己判断 であ る 「中産」 を入れ るこ とは ,何 ら問題 ,. ではな い とい うもので あ っ た. .. この よ うに ,少 な くとも尾 高 と安 田の 間 には ,質 問文 の 言葉通 りに生産 手段 の 次元 を反 映 した もの と見 るのか ,そ れ とも回答者 が抱 く言葉 の イ メー ジか ら遡及 して種 々の経 済的. 8.し か し翻 って 次元 を反映 した もの と見 るのか , とい う明確 な認識 の差 が存在 していた. ,. 両者 の 間 で 異 な る認識 が与 え られ た 階級 帰属意識 に対 して ,階 層帰属意識 に 関す る論争 で は ,両 者 の位 置 づ けが同 じである とい うこ とを示 す結果 とな る. .. 回顧 を含 む た め注 意 が必 要 な のだが ,階 層帰属意識 に 関す る論争 は尾 高 と安 田 の思 い違 い に よる部分 が大 きい。6大 都 市調査 も 1955年 SSM調 査 もす べ て面接法 で行 われて い た の だが ,上 述 した通 り 6大 都 市調査 では ,「 中流」 と答 えた回答者 に対 して ,さ らに 「中の上 」 「中の 中」「中 の 下」 を尋ねて い た .ま た ,1955年 SSM調 査 では ,回 答者 に提示す るシー トでは ,「 上流 」「中流階層 の上のほ う」「中流階層 の 下 の ほ う」「下流階層 の上のほ う」「下 流階層 の 下 のほ う」 と必ず 「∼ 流」 が付 くカテ ゴ リー とな つていたの に対 して ,調 査 員 が 記入す る シー トでは 「上 」「中 の上 」「中 の 下」「下 の上 」「下 の 下」 と 「∼ 流」 が外 され た カテ ゴ リー とな つてい た. (SSMト レン ド研 究会 1983,神 林 2010).そ の ため,資 料 として. 残 され た 質 問紙 を もとに振 り返れ ば ,そ こには 「∼ 流」 を付 けた回答 カテ ゴ リー な のか. 2つ の調査 は異 な る階層帰属意識 の尋ね方 を して い た と判断 され るDこ 事情 を踏 まえた上で ,安 田が提示 した 問題 点 とは とい う点 で. ,. うした. 「尾 高教授 も (階 層帰属意識 を)プ レス テ ィー ジ な い し社会的地位 の 差 として理 解 し てい る点で ,わ れ われ とは著 しくは異 な つ ていない , しか し,上 流階級 ,中 流 階級 と い うコ トバ の代 りに ,唯 単 に上 ,中 ,下 とい うコ トバ で代 置 して い る。 … ,尾 高教授 の ワーデ ィ ングは生活程度 を意味す る こ とになって しま つて ,プ レス テ ィー ジの ニ ュ 8こ ぅした異 な る位 置 づ けを検討す るのが 目的 で あ ったか は定かではな いが ,1965年 SSM調 査 では回答 カ テ ゴ リー を変 えた 二つ の質 問文 か らこの 階級 帰 属意識 を尋ね てお り,さ らに各回答 カテ ゴ リー に属す る個 人 の イ メー ジや ,そ の 条件 も細 か く聞 いてい る (SSMト レン ド分析研 究会 1983). 12.

(13) ア ンス は極 めて薄 くな っ て い る とい わ ぎるをえな い .」. (安 田. 1967:105,カ ッコ内引用. 者) とい うもの で ,端 的 には 「∼ 流」 を付 けるか付 けな いかで ,階 層 帰属意識 が社会的地位 の 威 信 に よる もの な のか ,そ れ と も生活程度 に よつて決定 され るのか とい う違 い を指摘 した もの だ と解釈 で きる. 9。. ただ ,上 述 した通 り,安 田の指摘 は質 問文 の保 存記録 に よる誤 解 と. も理解 でき るので ,こ の指摘 に対す る尾 高 (1967)の リプ ライ は ,安 田の思 い違 い を指摘 した上 で ,安 田の指摘通 り 「∼ 流」 が威信 の序列構 造 を尋ね た もので あ るな ら,翻 っ て尾 高論文 の解釈 も正 しい もの にな る と答 えてい る. .. この よ うに ,お そ らくはマ ル クス 主 義 的階級理論 の経験 的 な検討 を共通 の 目的 と して. ,. 階級 的 な 自己判 定 を測 る指標 として 階級 帰属意識 と階層帰属意識 は導入 され た の だが ,そ の 間 には どの よ うな客観 的 な階 層次元 を反 映 した意識 な のか ,と い う点 で明確 な差 が確認 で きる.階 級帰属意識 には ,あ くまで文言通 りに生産手段 の所有 とい う意味 で 階級 帰属意 識 を見 るのか ,そ れ とも個 人 の抱 く言葉 の イ メー ジに準拠 して経 済的次元 にまで拡 張 した 意識 と見 るのか とい う差が尾 高 と安 田の 間 であ ったが ,SSM調 査 な どで尋ねて い た「∼ 流」 を付 けた階層 帰属意識 には両 者 での認識 にお ける差 は存在 してお らず ,社 会的地位 の威信 Ю を反 映 した意識 である とい う共通理解 が 両者 の 間 で あ つた と言 えるだ ろ う. l。. 2.2 経済的地位 の反映 お そ らく最 も ジ ャー ナ リス テ ィ ックに階層 帰属意識 が注 目され たのは,朝 日新 聞誌 上で. 繰 り広 げ られ た「新 中間階層 」論争 であろ う。1977年 5月 20日 に寄稿 された村 上泰 亮 の「新 中間階層 の 現実性 」 に端 を発 す るこの論争 は ,経 済学者 の岸本重陳 に よる 「新 中間階層論 は可能 か 」 (1977年 6月 9日. ),社 会学者 の富永健 一 に よる 「社会階層構造 の現状」 (1977. 年 6月 27日 ),政 治学者 の 高 畠通敏 に よる「“ 新 中間階層 "の ゆ くえ」(1977年 7月 14日 ), そ して 4者 による座 談会 (1977年 8月 22日 ∼8月 24日 )ま で の 「新 中間階層」 を共通テ ーマ とす る一 連 の論争 を指す. .. 4つ のデ ィシプ リンが混在 した この論争 は,少 な くとも 2つ の視点 か ら「新 中間階層」を 論 じていた .一 つ は 「新 中間階層 」 の増 加 を引き起 こ した メカ ニズム で ,も う一つ は 「新 中間階層」 に着 日 した政治 的趨勢 で ある.た だ し後者 は ,概 して前 者 のメカ ニ ズム に対す る見解 をベ ース としてお り,「 新 中間階層」 とい う経済成長期 を経 て出現 した 巨大な層 が ど の よ うに政治的動 向を左 右 してい くのか とい う問題 に集約 され る.主 に高 畠論文 は ,こ の 「新 中間層 」 を政治的 な側 面 か ら捉 えてい る論文 な ので ,こ こでは ,前 者 の 問題 に言及 し. 9. そ の 後 ,濱 島 (1991)は 「∼ 流 」 を付 けた階層帰属意識 と付 けな い 階層 帰属意識 との 差 を実証 的 に検討 してい る。 10 二 人 の りと りの み を取 り上 や げて ,当 時 の 階層帰属意識 に与 え られ た位 置 づ け と理 解 す るのは ,多 少 強 引 か も しれ な いが ,そ の 後 の 階層 帰属意識研 究 の進捗状況 か らみれ ば ,他 には高橋 (1960)な どが あ るが 当時 の 階層 帰属意識 に焦 点 をあてた研 究 は驚 くほ ど少 な い (神 林 2010). ,.

(14) た残 りの. 3論 文 に注 目す る.た だ し,岸 本論文 と富永論文 は,村 上論文 が展 開 した 「新 中. 間階層」 の増 加 メカ ニ ズム に対す る反駁 を展開す る とい う点 では共通 してい るの だが ,マ ル ク ス主 義 的発想 か らの批判 を行 った岸本論文 に対 して ,富 永論 文 では地位 の非 一 貫性 か ら批判 を加 えて い る.こ こでは,向 後 の展 開 を視野 に収 め ,村 上 と富永 の 両氏 に よる論 争 に焦′ 点を絞 り,こ の論争 の なかで階層帰属意識 が どの よ うに認識 され ていたのか確認す る 村 上 と富永 は基本的 には 「新 中間階層 」 の増加 メカ ニ ズム を高度経 済成長 に起 きた時代 .. 的変化 に求 めて い る点では共通 して い るの だが ,抽 出す る特徴 が 両者 の 間 で は根本 的 に異 な る.ま ず ,論 争 の契機 とな った村 上 論文 にお ける新 中間階層 とは ,「 上層 で も下層 で もな い 中間的 な地位 に ,生 活様 式や意識 の 点で均質的な巨大な層 」 と して現れ た層 を指す .総 理府 (現 内閣府 )が 実施 して い る 「国民 生活 に 関す る世論調査 (以 下 ,世 論調査 )」 で ,9 割 の人が 自分 の生活 程度 を 「中」 であ る と回答 し,そ の 中 で も 「中 の 中」 には 6割 の人 が 回答 した とい う事実 を取 り上 げ ,こ の肥 大化 した 中間層 は ,高 度経 済成長 に よつて経 済的 資源 の格差 は平等化 し,職 業 上の外 見的 な差異や消費・ 生活 ス タイ ル ,情 報接触 の仕方や 日常的な ものの 見方が均 一 化 ・ 均質化 した ことによ るもの だ と論 じて い る. .. 後 に 「みんな同 じ,み. H,富 永論文では 1975 んな 中間」 と集約 され る上 の村 上説 に対 して. SSM調 査 をデ ー タ として ,地 位 の非 一 貫性 か ら増加 の メカ ニズム を説 明す る。地位 の非 一 貫性 とは,「 所得 が 高 い もの必ず しも威信 地位 が 高 くな く,威 信地位 の 高 い もの必ず しも. 年. 勢力地位 が 高 くな い , とい うよ うに複数 の 階層 的地位構成 要素 の あ い だ に くい ちが いが大 き い こ と」 を意味す るもので ,高 度経済成長期 に社会的資源 ・ 報酬 の分配規則 が 民主的 に な っ たた めに,高 い地位 で一 貫 して い るわ けで もな く,ま た低 い 地位 で一 貫 してい るわけ ではな い ,非 一 貫的な地位 群 を持 つ 多数 の個人 が 中間層 として現 出 したのだ と説 明す る. 12。. この よ うに高度経 済成長 が招 い た 変化 を均質化 と見なす か ,そ れ とも地位 の 非 一 貫性 の増 加 と見なす か とい う点 で村 上 と富永 の 主張 は食 い違 うわけだ が ,両 者 は共通 して ,増 加 し た 「新 中間階層 」 が何 らか の 客観 的 な階層次元 に よ って影響 を受 けて い た とい う認識 が存 在す る. .. で は ,こ う した一 連 の論争 が巻 き起 こつた 時代 に ,階 層帰属意識 は どの よ うな文脈 で位 置付 け られ ていた の だ ろ うか .尾 高 一安 田論争 で 階層帰属意識 の経験的デ ー タを提 供 して. SSM調 査デ ー タに注 目す る と,3人 の論者 の なかで SSM調 査 を用 い て い た の は富永た B.確 認 した通 り,彼 の論 文は村上論文 を批判す るもの として理解 できる.そ だ一人だ つた. いた. の均質化仮説 を唱 える村 上 論文 で ,「 新 中間階層」 の増 加 を経験的 に支持す るデ ー タ として. H. 岸 本論 文 は 「機 能 の均質化 」の観 点か ら村 上説 を批判 してい る。機 能 の 均質化 とは ,構 造 的 に資本 家 一 労働 者 とい う経 済体制 は維持 され てい るが ,例 えば ス トックオプ シ ョンの よ うに労働者 が 資本家 の役割 を 重複 す るよ うな ,機 能 の側 面で平等化 した構 造 を意 味す る。確 か に 日常的 な レベ ル で は均質化 は進 む もの の ,依 然 として構 造的 に機 能 の 均質化 は進 んでお らず ,こ う した構造 的 な差異 は ,や は り意識 の 差異 を生 み 出す もので あ る とい うのが岸本論 文 の 要諦 にな るだ ろ う 12た だ し ,富 永 は後 に 1955年 か ら 1965年 にか けて生 じた非 一 貫性 の増加 の方 が ,1965年 か ら 1975年 に か けて生 じたそれ よ りも急進 的 で あ った こ とを実証 してい る (富 永 ・ 友枝 1986). 13た だ し ,村 上 はそ の後 SSM調 査 に言及 して議論 を行 ってい る (村 上 1984). 14.

(15) 援用 されて い たのは ,世 論調査 であ っ た .論 文が掲載 され た 1977年 時点で の質 問文 は以下 の通 りであ る. .. 「お宅 の 生活 程度 は,世 間一 般 か らみ て この 中. (「. 「中 の 下」 「下」) 上 」「中の上 」「中 の 中」. の どれ に入 る と思 い ますか .」 「生活程 度」 の 主観 的な ラ ン ク付 けを求 め る この質 問に,「 中 の 中」 と答 えた回答者 比率 は 59.2%で ,「 中 の上 」「中 の 中」「中 の 下」 を合 わせ る と 90.1%の 回答者 が該 当 した。 この 世論調査 の結果 に対 して ,富 永論文では 「類似調 査 」 として SSM調 査 を対照 させ て い る .. 富永 が用いた 1975年. SSM調 査 の質問文 は以下 の通 りであ つた. .. 「か りに現在 の 日本 の社会全体 を,こ の表 にか いて あるよ うに 5つ の層. (「. 上 」「中の上 」. 「中 の 下」「下 の上 」「下 の 下」)に 分 ける とすれ ば,あ なた 自身 は ,こ の どれ にはい る と思 い ます か .」 ここで ,SSM調 査側 の質問紙 に変更が確認 で きる。先 の尾高 一安 田論争 では ,「 ∼流」を つ けるかつ けな いか で,回 答者 の受 け取 るイ メー ジ は異 な るものの ,少 な くとも SSM調 査 で尋 ねてい た 階層 帰属意識 とは 「∼ 流」 を付 けた威信 に よる序列 であ る とい う共通 理 解 が. SSM調 査 では,「 社会」 とい う枠組 み の 中での主観 的地位 を尋ね る とい う点 は共通 してい る ものの ,回 答 カテ ゴ リーか ら 「∼ 流」 を外 してお り,そ れ まで の威信 上での序列 と してではな く,生 活程度 の序列 として の 階層 帰属意識 を尋 ねて い る と も解釈 で きる変更が加 え られ て い た .そ れ ゆ え,世 論調 査 に SSM調 査 を対照 させ た 富永 に あ っ た .し か し,1975年. とつて ,少 な くとも階層帰属意識 とは安 田 ―尾 高に共通 して理 解 され て い た威信 の序列 を 反 映 した意識 と して捉 え られ てはお らず ,だ か らこそ ,世 論調 査 と対照 させ る こ とが可能 だ っ た と解釈す る こ とがで きる. .. もちろん ,こ れ は推 測 に従 うもので あ って ,富 永 自身 が SSM調 査 の 階層帰属意識 が生活 程度 に規 定 され る意識 だ とい う認識 の も とで ,世 論調査 と対照 させ た のか は分 か らな い. .. しか し,富 永論 文 の 中では ,地 位 非 一 貫性 を起 こ して い る階層次元 に ,学 歴年数・ 職 業的 地位 といった威信 の対象 とな る社会的地位 だ けではな く,所 得 もそ の. 1つ と して加 えて い. た .階 層 帰属意識 が生活程度 に よつて 定 ま ってい る と考 えた 場合 ,そ こには所得や資産 な ど経済的要因 が少 なか らず考慮 され るが ,学 歴や職 業 な どの威信 で定ま ってい る と考 えた 場合 ,経 済的要因 の影響 は希薄 である と考 え られ る (安 田 1967)。. それ ゆ え,非 一 貫性 を構. 成す る次元 と して所得次元 を考慮 した とい うこ とは ,少 な くとも尾 高 一安 田論争 の 時点 で 共通 していた社 会 的地位 の威信 を反 映 した 意識 とい う考 え方 よ りも,経 済的 地 位 に よる影 響 も少 なか らず認 めた拡張的 な意識 であつた と判断す る こ とが可能 だ ろ う .. さ らに ,当 時 の他 の研 究で も,こ の よ うな拡張 され た 階層帰属意識 の捉 え方 は散見す る.

(16) こ とがで きる.富 永論文 の 実質的 な根拠 とな っ た分析 は ,今 田・ 原 の 「現在 日本 の 階層構 造―― 地位 の一 貫性 と非 一 貫性 」 ([1977]2008)に 集約 され てい る.こ の論 文では威信 ,学 歴 ,所 得 ,財 産 ,生 活様式 ,権 力 の. 6階 層次元 を変数 とす るクラス ター 分析 か ら 6つ の ク. ラス ター を析 出 し,地 位 が一 貫的 な クラス ター ,つ ま り全 ての 階層次元 で 高 い 地位 を 占め るクラス ター や ,逆 に全 ての 階層次元 で低 い地位 を 占 め るクラ ス ター よ りも,階 層次元間 で 異 な る地位 を 占めるよ うな地位 の非 一 貫性 を特徴 とす るクラス ター が 60%程 度存在す る こ とを明 らかに した .さ らに ,彼 らは得 られた クラス ター 構成 か ら多次元的 な資源 の分配 状況 を検討 し,財 産 の保有率 が地位 の一 貫性状況 と対応 してい る こ とを発 見 した .こ こか ら,多 次元的 な階層次元 を総合す る階層指標 として財 産保 有率 を見 る こ との 妥 当性 を検討 して い るの だが ,そ の際 に外部指標 として使用 され た のが ,階 層帰属意識 だ つ た. .. 「… ,各 クラス ター ご との 階層帰属得 点 ,階 層満 足得 点 と財 産 ラ ンク との順序 が 高 く相 関すれ ば ,現 段 階 では ,財 産変数 がそれ だ け総合的 な地位 尺度 を代表す るもので あ る,と み なす根拠 となろ う.」 (今 田・ 原 [1977]2008:69) 実際 に階層 帰属意識 のス コア と財産 ス コア との順序 関係 を吟 味 した ところ,地 位 の不 一 致性 の順序 に対 して ,財 産 と階層帰属・ 満 足 ス コアが 同 じ傾 向を示 した こ とか ら,財 産保 有率 の総合 的地位 尺度 として の妥 当性 を明 らかに してい る.こ の とき,外 部指標 と して用 い られた階層帰属意識 には ,財 産 は の ぞ くとして も,少 な くとも威 信 ,学 歴 ,所 得 ,生 活 様 式 ,権 力 を総合 的 に網羅 した 階層指標 と しての位 置付 け が 明 らか に与 え られ てお り,や は り威信 を反映 しただ けで はない ,も う少 し拡 張 され た意識 変数 として認識 され ていた と 判 断できる。 また ,尾 高 一安 田論争 にお いて ,階 層帰属意識 が威 信 の反映 した意識 で あ る とした安 田 自身 も拡 張 した 階層帰属意識 の捉 え方 を していた .議 論 の 焦点 は 階級帰属意識 に向 い て い る の だが ,高 度 にイデオ ロギ ッシ ュ な階級 意識 を提 えるた めには ,も つ とも根源 的 に規定 す る客観 的属性 との対応 関係 だけではな く,そ の媒介 として 「日々の生活 の なかでや しな われ る 日常的 な意識 」 (安 田編 1973:87)を 介在 させ るア プ ロー チ を提示 してい る.そ の 「日 常的な意識」 の. 1つ に階層帰属意識 を取 り上げ,具 体的 には 「生活 意識 」 を代表す る意識. 変数 として位 置付 けて い る (安 田編 197395).こ こでの階層帰属意識 とは. ,. 「か りに現在 の 日本 の社会 を,生 活程度 か らみて ,こ の表 に書 いて あ るよ うに (「. 5つ の層. 上 」,「 中 の上 」,「 中 の 下」,「 下 の上 」,「 下 の 下」)に 分 ける とすれ ば ,貴 方御 自身 は. ,. そ の どれ に入 る と思 い ます か ?」 (安 田編 1973217) とい う質問文 に よる もので ,元 々尾 高 一安 田論争期 に安 田が主張 して い た 「∼ 流」 を付 け た威信 に よる階層帰属意識 で はな く,生 活意識 を提 えた意識 として 階層帰属意識 を理 解 し 16.

(17) て い た と判断 できる. .. この よ うに ,「 新 中間階層 」論争期 にお い て ,そ れ まで の尾 高 一安 田論争 で確認 できた よ うな威信 の み に基 づ く階層 帰属意識 ではな く,所 得や ,そ れ に起 因す る生活程度 とい った 経 済的地位 に よる側 面 を考慮 した ,よ り拡 張的 な意識 として 階層 帰属意識 は捉 え られ てい た と理 解 で きるだ ろ う .. 1。. 2.3 階層 帰属意識 へ の新 たな視点 上述 した 通 り,「 新 中間階層」論争 は 1970年 代後半 に展開 され た .そ の後 ,村 上 と岸本. は ,地 位 の非 一 貫性 を踏 まえた うえで ,そ れぞれ独 自の論 へ の拡張 を試 みて い る (岸 本 1978, 村 上 1984).そ れ に付 随す る形 で 「新 中間階層」論争 は 「中流階級 」論争 とも言 うべ き論争 に発展 してい き ,単 な る生活程度 だ けではな く価値観 や生活様 式 ,消 費活動 の在 り方 まで も含意す る 「中流 階級 」 に ,肥 大化 の確認 され た 「中」意識 回答者層 が相 当す る層 な のか とい うこ とが議 論 され る こ とにな る.こ れ らの議論 の 帰結 は概 ね 「中流意識 」 と 「中」意 識 回答者 は異 な る とい うこ とを示す もの であ った の だが. (oog.石 川. 1982,濱 島 1991),階 層. 帰属意識 に生活程度 の評価 以 上 の価値観 や行為 まで も含意 した意 味 を与 える傾 向は ,最 近 の 下流化・ 格差 に関す る議論 の 中で も散見す る ことがで きる (三 浦 2005)14。 価値観 や 生活 様 式 まで も含 意す る概念 と階層帰属意識 を対応 させ る試 み は ,生 活程度 と 捉 え られ ていた 階層帰属意識 に更な る意 味付 けを与 えるもので あ る.し か し,こ うした更 な る意味付 けは,決 して斯界 にお い て共 通 していたわけではな い .今 田 (1989)は ,「 中流 階級 」論争 が ,単 な る生活程度 を反 映 した 「中」意識 を 「中流階級 」意識 に置 き換 え る認 識 上 での幻 想 と,そ う した認識幻想 に基 づ い て ,そ れ が幻想 で あ る と批判す る現実上 で の 幻想 の 2つ の幻想 が入 りこんだ 「中流 の幻想 ゲー ム」 である と捉 え,世 論調 査や. SSM調 査. で得 られ た 階層帰属意識 そ の もの は ,あ くまで生活程度 の反 映 で あ つて ,価 値観や 生活 様 式 まで も含意す る概念ではない ことを示 してい る15。 では ,「 新 中間階層」論争 ,そ して 「中流階級」論争 を終 えた とき,階 層帰属意識 は どの よ うに捉 え られ るよ うにな つ たのだろ うか .こ の 問 い へ の 回答 として ,「 中流階級」論争以 降 の 階層帰属意識 へ の認識 を方 向づ けた直井道子 (1979)に よる実証研 究 の含意 を確認 し てお こ う.直 井道子 の 主要 な発 見 は ,「 中」意識 が 客観 的な階層次元 ではな く,「 暮 らし向 き」 といっ た意識 変数 に強 く規 定 され て い る とい う点 にあ つ た .し か し,こ こで注 目す る ポイ ン トは ,少 な くとも直井道子 に とつて 階層帰属意識 は説 明 され る変数 として受 け止 め られ ていた 点 にあ る. .. 確 か に 「新 中間階層」論争 の とき も,な ぜ 「中」 と答 える人 が増 加 したのか とい うメ カ ニ ズムの 問題 は議 論 の俎 上 に挙 げ られ ていたが ,そ れ に対 して提示 され た回 答 は ,地 位 の И. 今 日お い て も,階 層帰属意識 を生活程度 の反 映 と して捉 え る研 究者 もい る (橋 本 2006). ,今 田は階層帰属意識 へ の過剰 な意 味付 けを戒 め る こ とが 目的 で はな く,明 確 なイ メー ジを持 つ 中流 階級 を軸 に して ,実 際 の 生活水 準 が上 昇 したのか ,そ して機 会 が均等 して き のか を確 か めあ うゲ ー ム が地位 の 明確 な対 立構 図 を溶 解 させ る政治 的安 全弁 の機能 を有 した こ とを主張す る 目的で用 い られ ていた。. 15た だ し. 17.

(18) 非 一 貫性仮説 で あ つた .後 に盛 山 (1990)に よ つ て否 定 され る地位 の非 一 貫仮 説 は ,前 提 として不均 一 に分配 され た社会 ・ 経 済的資源 を所与 として 階層帰属意識 は成 立 してい る と い う構 図 が必 要 とな る.こ の構 図 は ,地 位 の非 一 貫性 を実証 した今 田・ 原論 文 にお け る財 産状況 の統合 的指標 に関す る議論や ,安 田 の階級意識 を構成す る 日常的意識 とす るアプ ロ ーチ に も通底 して い る もので あ る.し か し,直 井道子 は客観 的 な社会階層 の 特徴 と階層帰 属意識 との因 果 関係 を所 与 の もの とは しな い で ,客 観 的 な社会階層 か ら階層 帰属意識 の規 定 メカ ニズム を直接 的 に検討す べ き問 い として提示 した点で 特筆す べ き特徴 を持 つ て い る. .. 社会的資源 の 反映 か らよ り拡 張 され た概念 として内包 的 に位 置付 け られ て きた階層帰属 意識 は ,直 井道子 の研 究以降 ,経 験 的 に規 定構 造 を問われ る概念 へ と変 化 してい つた .し か し,一 方 で この よ うな経験 的 な検討 を踏 まえた結 果 ,こ れ まで とは異 な る水準で の位 置 付 けが階層帰属意識 に与 え られ る ことにな る. .. 盛 山 (1990)は それ まで の 客観 的 な階層 的地位 の み に階層帰属意識 を還元 しよ うと試 み るス タン ス を 「素朴 な実在反 映論 」 として批判的 に受 け止 め ,そ れ に代 わ る新 たな研 究 ス タ ンス として 「意識 システ ムの あ る論理性 を探求す る こと」 を挙 げ る.「 意識構造 に関す る 仮説 を立てそ れ に よつて 現象 として意識や行動 を説 明す る」 とい う具体的 な戦略 を取 る こ のス タンスの も と,盛 山は階層帰属意識 , とくに 「中」意識 は個人 の抱 く生活水 準 の イ メ ー ジ と実 際 の 生活水準 との兼 ね合 いか ら成 立す るもので あ り,生 活水準 のイ メー ジは現実 の 生活水準 とは タイ ム ラグを伴 って断続的 に変 化す るもの であ る とい う仮説 を構築 した。 階層 帰属意識 を この よ うに考 えれ ば ,高 度経済成長期 に実 際 の 生活水準 が堅 調 に改善 し てい く一 方 で ,基 準 とな る生活水準 の イ メー ジはそれ には対応 していない低 い水 準 で推移 して い るた めに ,経 済成長 に歩 を合 わせ るよ うに 「中」意識 が肥 大化 して い っ た傾 向 が理 解 で きる.ま た ,高 度経済成長以降 ,階 層帰属意識 はそれ まで経 時的 に増 加傾 向にあ つ た 「中」回答者 比率が一 定 にな る とい う「中意識 の飽和」(原 1990:10)の 局面 に入 るのだが ,. これ は高度経済成長以降 に低水準 の経済発展 が続 く一 方で ,基 準 とな る生活水準 のイ メー ジが よ り高 い水 準 で抱 かれ るよ うにな つ たために,結 果 として拡 大傾 向 か ら安定傾 向に シ フ トした ,と い うよ うに同様 の ロジ ックか ら理解す る ことがで きる (盛 山. 1990)。. 階層 帰属意識 が生 活水 準 の イ メー ジ と実態 を反映 した 意識 で あ る以上 は ,あ る一 定 の 豊 か さに到達 した 日本社会 にお い ては ,そ れ が劇 的 な時間的変化 を見せ な い 限 り,階 層 帰属 意識 の分布 変化 は起 こ り得 な い と予測 され る.だ が ,成 長や 平等化 を特徴 とした経済成長 以降 ,格 差 が社会階層 を語 る. 1つ のキー ワー ドとして喧伝 され ,実 態 として も格差 は決 し. て縮小傾 向 にはな く,中 には拡大傾 向にある階層的地位 が存在す る ことが 明 らかにな っ た. .. 数 あ る階層意識 の 中には ,例 えば性 別役割意識 の よ うに時 間的 に変 化す る階層意識 が ある 一 方で ,階 層帰属意識 はそ う した 表 面 上 の格差傾 向に感応 的 ではない こ とが明 らか され た (原. 1997).か つ ては 「階層意識 の焦点」 として特別 な位置 づ けが与 え られて きた階層帰属. 意識 は ,経 済成長以降 に出現 した 社会階層 の特徴や ,そ れ に対す る人び との意識 を表現 で きな い こ とが分 か り,結 果 として 「階層帰属意識 の デ ー タが優遇 され た の は ,ま さに 日本 18.

表 2 階層 的地位 の分布 (3次 元 ×3ラ ンク ) 階層的地位    度数    相対度数 3.7% 11.1% 22.2% 25。 9% 22.2% 11.1% 3.7% 例 として図 5で 示 した 3次 元 × 3ラ ンクのケー スでの分布 を考 えてみ る と ,{〃 ,ノ ,二 }を {1,2,3}と 読み替 え ,ま たそれ ぞれ階層 プ ロフィール に一人ずつ位 置す る とい う仮定 (chance societyの 仮定 )を 設 けた とき ,得 られ る階層的地位 の度数分布表
表 5主 観 的地位 評価 の ヴァ リエー シ ョン 地位関係のパイアス 方向性の   地位関係 バイアス    の認識 方 向性の    地位関係 バイアス    の認識 な し 逓減則 状 態表6 主観 的地位 評価 の ヴァ リエー シ ョン(ストリク トな評価 方法)地位関係のパイアスな し逓減則 状 態な し差助(Z)=Z―Eレ]助bg(Z)=E[10g(Z― ノ+1),Z]ゎψ一E[10gし一Z+1),Z]留̀r̀″ 島′ッ(Z)=1比S″(Z)=型ZSr log(z)=E[ogし)]‑log
表 7  最適 モデル の結果 選定次元 地位評価 1955年 1965年 1975年 1985年 1995年 2005生F職業Sグ グ。 w″ ″αだ log 年代 助 ψ〃α″ 都道府県Sr αow″α r log 都道府県助 全体Srぁw″ α″ r10g 年代Sグd。ソ "α だ 1。 g 係 数 p値 係数   p値 係 数 p値 係数   p値 係 数 p値 係 数 p値 定数 〉 =下 の上 〉 =中 の下 >=中 の上 〉 =上 1.243     0.002‑0.865   
表 12は 基準カテ ゴ リー を低威信 のカテ ゴ リーに合 わせ て推 定 した 1965年 の結果 を示 した ものである .ま ず ,職 業で類似 した他者 をもつ とも強 く比較対象 として認識 し (0。 229),次 いで地域 で近接 した他者 を強 く比較対象 として認識 してい る とい う特徴 を持つ低威信 に比 較 して ,中 威信 では地域 (0。 165),学 歴 (0.203),職 業 (0.298)の 3次 元で類似・近接 した 他者 を強 く比較対象 と して認識す る傾 向
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