この よ うに
FKモ
デル では,多
次元的な階層 プ ロフィール で特徴づ け られ る個人 が,公
理群 で示 した特殊 なバイアス を含 んだ地位 比較 を繰 り返 し行 い
,主
観 的 な社会階層 のイ メー ジにお ける自己の帰属す る相対的 な階層的地位 を見出 してい く過程 を想定 してい る.い
ま,この見 出 した階層的地位 を階層帰属意識 と見なせ ば
,以
下の図6で
図示す るよ うに,マ
クロ レベル に位置す る客観 的階層構造 か ら個人の階層 プ ロフィール が配分 (識別
)さ
れ るマ ク ロー ミク ロ間の過程,階
層 プ ロフ ィール か ら他者 との特殊 な地位 比較 を経 て帰属す る階 層 を決定す る ミク ロー ミクロ間の過程,個
人 レベル の階層帰属意識 が集積 して階層帰属意 識分布 が生成 され る ミクローマ ク ロ間の過程 の多水準 に亘 る3つ
過程 か ら,一
貫的に客観的 な階層構造 か ら 「中意識 の飽 和」現象 を特徴 とす る階層 帰属意識 分布 を生成す るメカニ ズムを
FKモ
デル に よつて記述す るこ とがで きる.28離散 一様分布 を用 いてい るが,浜田(2010)は それ ぞれ ランク数 の異 な る階層次元 を仮 定 した ときに も,
階層 的地位 分布 が正規分布 に従 うこ とを証 明 してい る. s≫ 同一
/ S
客観的な階層構造 階層帰属意識分布
① 独立で同一の分布
階層プロフィール 階層帰属意識
図
6 FKモ
デルによる階層帰属意識分布の生成メカニズム上述 した通 り
,FKモ
デ ル が示 唆 す るイ ンプ リケー シ ョンは多岐 に亘 るが,こ
こで階層 帰 属 意 識 の 問題 に注 目す るの で あれ ば,こ
の 図示 され た生成 メカ ニ ズ ムの プ ロセ ス にお い て,① 中心極 限 定理 か ら階 層 帰 属 意 識 分 布 の正 規性 を保 証 す るた め に必 要 な
,各
客観 的 階 層 次 元が独 立で同一 の分布 に従 ってい る とい う仮定 と,②
公理2と
公理3で
表現 され てい るよ うな階層次元間の識別順序 を所 与 とした,他
者 との地位 比較 に よる主観 的 な地位 評価 メカ ニズムの2つ
の仮定が,観
察 され た階層帰属意識 の正規性 には不可欠 な もの とな る29このわ ず か2つの仮定 によつてFKモ
デル は階層帰属意識 の正規性 を論理的 に厳密 な形 で保証 して い るわけだが,こ
の2つ
の仮定 を経験 的な観点か ら見た とき,そ
の妥 当性 は疑 われ る.まず,①各客観 的階層次元 が独 立で同一の分布 に従 うとい う仮定 を,1955年〜2005年
SSM
調査 の結果 に基 づ いて確認 す るた め
,先
述 した階層 帰属意識 の主要 な独 立変数 で あ る所 得・学歴・職業 の3階
層次元 に対応す る変数 として,個
人所得・現職職 業威信・最終学歴 をそれぞれ3カ
テ ゴ リー に分割 した ものの相対度数 を求 めた.連
続 変数 であ る個人所得 と 現職職業威信 は等 間隔で 「L(低
)」 「M(中
)」 「H(高
)」 に3分
割 し30,最終学歴 は 「中学」・
「高校」・「高校以上」 に統合 したのちに,「
L(低
)」 「M(中
)」 「H(高
)」 に再 コー ド化 し てある31.29 確 か にFKモデル にはそれ以上 の仮 定が導入 され てお り,他のイ ンプ リケー シ ョン,例えば 「スプ レッ ド現象 」や 「異質性 現象 」 を導 くた めには,公理 1で 想 定 していた レキシ コグラフィ ックに順序付 け られ る客観 的 な階層構 造 の仮 定 が不可欠 とな る.しか し,階層帰属意識分布 を問題 とす る限 りにお いて,定理 1と 定理2で確認 した通 り,イ メー ジ階層 の階層数 は次 元数 rと ランク数sによつて一義 的 に決 ま り,自 己 の相対的な階層 的地位 は階層 プ ロフ ィール と次元数sによつて決 ま るので, レキ シ ヨグラフ ィ ックに順序 付 け られ る客観 的 な階層構 造 の仮 定 はそれ ほ ど重要 な意 味 は持 た ない.加えて,公理2で示 され ていた全 ての個 人 が同 じ階層 次元 間順序 で他者 との地位 比較 を行 うとい う仮 定 も,確かに個人 間で識別 す る次元 間 順 序 が異 なれ ば,イ メー ジ階層 の構 成 はそ の順序 に よって変化す るものの,ランク数 rと 次元数sが一定 な らば,イ メー ジ階層 内 に見 出 され る相 対 的地位 の順位 に変化 は生 じず,結果 として階層 帰属意識 分布 は ま った く同 じ分布 とな るこ とか ら,たとえ個 人 間で異 な る順序 で識別 して も結論 は一緒 にな る.
30ただ し,個人所得 に対 しては99パーセ ンタイル以上の値 を外れ値 として除外 してあ る.
31こ こでは旧制の学歴 を新制の学歴 に対応 させてコー ド化 している。調査年度でそれぞれ回答カテ ゴリー が異 な るので,各調 査年度 での対照 は異 な るが,大枠 では尋常・ 高等小学校 を新制 中学,旧制 中学・ 師範 学校・ 女学校 程度 を新制 高校,旧制 高校・ 高等 師範学校 以上 を新制 の高校 以 上 に対応 させ てい る◆
他者 との地位比較
42
む′3‐
覇 ゛′61 悩 :
鞍 │
罪 :
澤 :
味0、41
一 一 一
. 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ・ 一 一 一 一
. 一 中
鶉 酬鐵 魃
﹂ M H
学機 撻A講母 鍵ミ贅
・∵ ‐‐i …:: 111‐ ‐1・‐:i∵=
学鮭憐人所得職業 学護機人満碍霧業
階層次元
図
7
調 査 年 度 別 の 階 層 次 元 分 布もちろん
,カ
テ ゴ リー分害1にはい くつかの ヴァ リエー シ ョンがあるので,こ
の3分
害Jの 方法 が分布 を見 るた めに最適 な ものであ る とは言 えない.た
だ,カ
テ ゴ リー の累積相対度 数 を図示 した図7を
確認す る限 り,高
学歴 の大衆化や195501965年
を基準 とした 1975年 以降の所得格差 の減少 とい った,こ
れ までの階層研 究 (原・盛 山1999)で
主張 され ていた 時代 的 な階層構 造 の変化 を読 み取 るこ とが可能 なので,ま
った くの的外れ な方法 ではない だ ろ う.この よ うな手法上 の留保 は付 くが
,こ
の図7を
確認す る限 り,明
らかに学歴・所得・職 業 の各階層次元 が同一の分布 である とい う仮定 は成 り立たない ことが伺 える.「中意識 の肥 大化」現象 が指摘 され始 めた 1975年以降に限定 して言 えば,1975年
では全 ての階層次元 で″ 層 の構成 比率 が低 く
Z層
の構成比率 が高い とい う特徴 をもつてい るものの,学
歴階層 に 比較 して職 業階層 と所得階層 にお ける〃 層 の構成比率 は極 めて低 く,図
式的 には正の方 向 に裾 野が よ り広 が ってい る分布 になってい る と言 え る.職
業階層 と所得 階層 に関 しては,そ の後 の年代 で もほぼ同 じよ うな正 の裾 野 が広 が ってい る分布 を維持 してい る ものの
,学
歴 階層 では徐 々に ν 層 と″ 層 の構成比率が上昇 してい き,二層 をモー ドとす る分布 か らν 層 をモー ドとす る分布 へ と変化 してい るこ とがわか る.
また独 立であ る とい う仮 定 を検討す るため
,カ
テ ゴ リカル変数 に リコー ドした3つ
の階 層次元の組み合 わせ を用 いて独 立性 の検定 を行 つてみた.いま3つ
の変数 が存在す るので,学歴 ×個人所得
,学
歴 ×職 業威信,個
人所得 ×職業威信 の3通
りの組み合 わせ が考 え られ るが,す
べ ての階層次元の組み合 わせ について,独
立であ る とい う帰無仮説 は棄却 され る 結果 とな り (′ <0。001),加
えて クラメール の連 関指標/を
計算 してみた ところ,以
下の図8で
示す よ うに,そ
の関連 の度合 も時間的 に,そ
して変数 の組 み合 わせ に よって異な るこ と が示 され た.韓
8
階 層 次 元 の組 み 合 わせ 別 の ク ラ メー ル の 関連 係 数V
続 いて
,②
他 者 との地位 比較 に よる主観 的 な地位 評価 メカニズムの仮 定 に対す る経験的 妥 当性 を検討 しよ う.こ
の仮 定 に関 しては,上
で行 つた よ うな統計デー タに準拠 した直接 的 な検討 は行 えないが,階
層 帰属意識 の規 定プ ロセ スにお け る他者 との地位 比較 は,こ
れまでの実証的な階層帰属意識研 究 で も議論 され て きた メカニズムなので
,こ
こでは関連す る先行研 究 の結果 を検討す る.た
だ し,階
層帰属意識 の分布 は国際的 に中意識 が肥大化 し てい るとい う特性 を持つ ものの(Evans and Keney2004)32,国
によつて階層帰属意識 の 規定構造 は同一ではないので (坂元 1988),検討 は 日本 の統計デー タを参照 した もののみ に 限定す る.管見の限 り
,い
ち早 く他者 比較 の メカニズム を実証 的 に検討 した先駆 的 な試 み と して,1975年
SSM調
査デー タを用 いた三隅 (1986)の試 み を挙 げ られ る.こ
の研 究 は階層研 究の32ただ し,階層帰属意識 には本 文 中で使 用 され てい る5段階 の階層帰属意識 と「1」 〜 「10」 を回答 カテ ゴ リー とす る 10段 階 の階層帰属意識 の2つが あ り,国際的 に普遍 であ る とい う知見は10段階 の階層 帰属意 識 か ら導かれ た知 見 であ るた め
,5段
階 で も成 り立つ のか につ いては不明で あ る。 日本 に限定 され るが,5
段 階 と 10段 階の階層帰属意識 の差異 に言及 した もの と して,199502005年SSM調査 を分析 した佐藤(2009) な どがある。
重要 な概念 であ る地位 の非一貫性概念 を個人 レベル か ら集 団間の レベル に拡 張 し
,さ
らに集 団間での地位 の非一貫性 を準拠集 団概念 と接合 させ なが ら
,階
層帰属意識 の規定 メカニ ズムの解 明 を試 み た ものである.分
析 の結果,階
層 帰属意識 の規 定 プ ロセ スにおいて他者 の存在 が重要 な位 置 を占めてい るこ と,そ
して個人 の地位認識 の過程 の中には,地
位 の非 一貫性 の条件 に依存す る形 で,地
位 の他者 比較 メカニズムが階層 帰属意識 の規 定構 造 に介 在 していた こ とを明 らかに してい る.しか し
,三
隅 (1986)は地位 の他者 比較 メカニズム を留保 つ きで認 めた ものの,デ
ー タの調査時点や分析 手法が異 な るその後 の実証的研 究ではやや否 定的な結果 が示 され てい る. 間々 田
(1988,1990)は ,閾
値 の よ うな絶対的な基準 を上回 るか ど うかに よつて判定す る とい う 「絶対基 準 メカニズム」 と,世
間一般 と比較 した ときの 自己の相対的地位 に よつて 判定す る とい う「相対的判断 メカニズム」の2つ
の仮説 を階層帰属意識 の規定 メカニズム として設 定 し,1955〜 1985年SSM調
査デー タか ら実証的な検討 を加 えてい る.そ
こで間々 田は,観
察 され た時代 的 な所得分布 の変化 を所 与 とした ときに,相
対的判 断 メカニズ ムが 想 定す るよ うな心理的 な評価 メカニズムに よつて実際 の階層 帰属意識 の分布 を上手 く表現 す るこ とがで きない とい うこ とを示 した.ま
た,間
々 田 (1988,1990)が世 間一般 を比較対 象 としていたのに対 して,同
じ居住 地域 に住 む他者 を比較対象 と見 な して分析 を行 つた小 林 (2004)は,1995年 SSM調
査デー タか ら「自分 が住 む居住地域 の所得水準 と比較 して 自 身 の階層 帰属 を決 定す る」 とい うメカニズムが普遍 的 に妥 当す るものではない こ とを明 ら かに してい る.同
様 に居住地域 に着 日した数 土(2010,20H)は
,1985〜 2005年SSM調
査 デー タを用いた時点間比較 か ら,1985年
時点では居住地域 で近接 した他者 を比較対象 とす る所得 の他者 比較 メカニズムが確認 され た ものの,以
降の時点 ではそ うした メカニズムの 経験的妥 当性 が確認 で きな くなった ことを報告 してい る.この よ うに
FKモ
デル に組 み込 まれ ていた②他者 との地位 比較 に よる主観 的 な地位評価 メカニズムの仮 定 に対 して は,少
な くとも実証 的な先行研 究 に鑑 み る限 りにおいて,時
間的 に普遍 な地位 評価 メカニ ズムであった とは言 うこ とがで きない と結論づ け られ るだ ろ う.