本論文の実質的な最終章 となる本章では
,こ
れまでの実証的分析か ら示 された他者比較 に関す る経験的事実 と,新
たに行 つた実証的分析か ら導出 された経験的事実を踏まえ,そ
れ らを反映す る形でオ リジナル
FKモ
デルに公理の修正・追加 を行 った。具体的には,地
位128
上で類似・ 近接 した他者 に比較対象 を限定す る とい う修正公理
2*,比
較次元上 で 自己 よ り も低 い他者 のみ に比較対象 を限定す る とい う修正公理3*,階
層 プ ロフィール上 の序列 に従 い他者識別 を行 う階層次元 の順序 を変 える とい う公理4,の 3つ
が修正・追加 され た.それ ゆえ
,こ
の修正 され たFKモ
デル は,そ
れ までのオ リジナルFKモ
デル とは,少
な くとも
3つ
の点で異なる。 こ うした公理上の相違が生み 出すデ リベー シ ョンの差異 を検討 し た ところ,適
用す る公理 の組 み合 わせ によつて修正FKモ
デル とオ リジナルFKモ
デル が異 な る階層帰属意識 の予測値 を導 き,ま た正規性 を特徴 とす るオ リジナルFKモ
デル の階層帰 属意識分布 とは異 な る分布 を修正FKモ
デル が導 くこ とが明 らかに され た。さらに
,こ
の2つ
のモデル を用いて現実の社会階層 の特性 を踏 まえたシ ミュ レー シ ョン 分析 を行 った ところ,オ
リジナルFKモ
デル と修正FKモ
デル との違 いが,客
観 的 な社会階 層 の変化 に感応 的か否 か と言 う相違点 と して浮 かび上 がった.し
か し,い
ずれ のモデル が予測す る階層帰属意識分布 も
,正
規性 を特徴 とす る現実 の階層帰属意識 とは異 な る分布形 であ るこ とも同時的 に示 され た.本論文ではオ リジナル
FKモ
デル を歴 史理論 として捉 え,その公理系の経験 的 な妥 当性 を 議論す るこ とで,経
験的 に見出 された比較 のパ ター ンか ら修正FKモ
デル を構築 してきた.しか し
,そ
の帰結 として修正FKモ
デル か ら導かれ た理論 的な分布 は,少
な くとも現実 の階 層帰属意識分布 とはかい離 していた.確
かに,修
正FKモ
デル が客観 的な階層構造 の変化 に 感応 的ではない とい う特徴 は,階
層帰属意識分布 が1975年以降で不変 である とい う点 と対 応 してい る と捉 え られ るか も しれ ないが,シ
ミュ レー シ ョンに用 いた条件 が,あ
る程度現 実 の社会階層 の特徴 と整合 的である とす るな ら,正
規分布 ではな く正 の歪度 を持つ分布 と して推移 してい る とい う事実 は,修正FKモ
デル で想 定 していた地位 比較 メカニズムに よつ て階層帰属意識 の規定 メカニズムが十全 に表現できていない ことを示 してい る69.それ ゆえ
,階
層 帰属意識 の規定 メカニズ ムに関す る歴 史理論 としては,未
だ発展 の可能 性 を残 してい る と言 える.も
ちろん,第 1章
の先行研 究 レビューで述べた通 り,階
層帰属意識 の規定因 は
,地
位 の他者 比較 に限定 され るわ けではないので,規
定 メカニズムに関す る歴 史理論 を定立す る とい う目的 に照 らせ ば,様
々な要因まで射程 に収 めて議論す る必要 が あ るだ ろ う.こ
の意味 で,本
章 を含 めた本論 文 の試 み 自体 は,規
定 メカニズムに関す る 歴 史理論 の構築へ のわず かな貢献 として捉 え られ るだ ろ う。69詳細 は省 くが,修正公理 3*を 想 定 していない修 正FKモデル を用 いて,個人 レベル での ミク ロ的 なあて はま りを検討 した結果,マク ロだ けではな く ミク ロ レベル で も経験 的 な妥 当性 は認 め られ なか った。分析 の一部 は前 田 (20H)を参照.
130
アペンディックス
ドキュメント内
他者比較による階層帰属意識の規定メカニズム : 数理的方法と計量的方法の統合をめざして
(ページ 128-131)