2.4 改 善に向けた方 向性 。
3.2.3 他 者比較 の方法 :認 知バイアス .…
他者 比較 の方法 を類型化す る も う一つ の視角 は
,他
者 の地位 や 地位 関係 に関わ る認知バ イ アスであ る。端 的 には,客
観 的 な地位 尺度 で他者 の地位 や 地位 関係 を認識す るので はな く,何
らかの形 で現実 を歪 めて認識 す るよ うな認知バイ アス を意 味す る.こ
こでは 「方 向 性 のバイアス」 と 「地位 関係 のバイ アス」 として概念化 した2つ
のバイアスを想 定す る.方 向性 のバイ アス とは
,比
較対象 として選 定 され た他者 に対 して,比
較次元上 の地位 関 係 か らそれぞれ異 な る地位認識 を行 うよ うな認知バイ アスを意味す る.Yltzhaki(1979)の 相対的剥奪指標 で は,自
分 よ りも高い所得 を持つ他者 に対 してはそ の地位 関係 を差 と して 認識 す るものの,低
い所得 を持つ他者 に対 しては,実
際の地位 に関係 な く自己 と同 じ地位 である と認識す るよ うな想 定 を していた。逆 に Hey and Lambe■ (1980)の相対的充足指標 では,自
分 よ りも高い所得 を持つ他者 を差 のない もの として認識す ることを想 定 していた. この よ うな上位者/下
位者 に限定 して地位 上の差異 を認識す る認 知バイアス を導入す るこ とで,相
対的剥奪/充
足指標 か ら派 生す る主観 的地位 評価 を,他
者 比較 の方法 に よる ヴァ リエー シ ョン と して理解す る こ とがで きる.こ
こで は上位者 との地位 関係 のみ感応 す る認 識 を「上方バイアス」,下位者 との地位 関係 のみ に感応す る認識 を「下方バイ アス」と呼び,区別 してお こ う。
ただ
,方
向性 のバイ アスでは,差
があ る と認識 され た場合 は,客
観 的な尺度 に従 った地 位 関係 の認識 を行 うと考 えていた。そ うではな く,差
があ る と認識 され る地位 関係 そ の も の に作用す る認知バイアス も考 え られ る.こ
の よ うな認知バイアス をここでは 「地位 関係 のバイアス」 と呼んでお く.さ
らに地位 関係 のバイ アスには2つ
のパ ター ンが存在す る. 一つ は逓減則 のバ イアスで,他
者 と自己の客観 的な隔た りが大 きけれ ば大 きい ほ ど,認
識され る地位 関係 が大雑把 にな る とい うものである
.す
でに帰属意識 の数理モデル であるFK
モデル に
,自
己 よ りも高い地位 にあ る他者 を大雑把 に把握す る とい う 「格上 げバ イアス」を導入 した高坂 ([2000]2006)の 試みが存在す るが
,こ
の試 み は逓減則 のバイアスを導入 し た類例的研究 として見 なす こ とができる.また
,逓
減則 ではな く,よ
リ ドラステ ィ ックに尺度 を歪 めて,状
態 として認識 す るよ う な認 知バイ アス も想 定で き る.つ
ま り,
どれ だ け隔 ててい るのかではな く,地
位 上 の相違が存在す るか ど うか とい う状態 として他者 との地位 関係 を認識す るバイアスであ る
.詳
し くは後述す るが,間
々 田 (1988)が指摘 した順位 に よる地位 関係 の認識や,星
(2000)が主観 的地位 評価 として用 いていた上位者
/下
位者 比率 は,こ
の状態 として認識す るバイア スの ヴァ リエー シ ョンか ら捉 えることが可能であ る.この方 向性 のバイアス と地位 関係 のバイ アスは互 い に排反 的な ものではない。上位者 と の地位 関係 を逓減則 に従 つて認識す る とい うよ うに同時的 に作用す る組 み合 わせ も考 え ら れ る し
,上
位者 との地位 関係 を客観 的な地位 尺度 で認識す る とい つた片方 の認 知バイ アス だ けが働 くケー ス も考 え られ る.さ
らには,い
ずれ の認知バイアス も作用 していないケー ス もあ り得 る。作用 していないケー スを含 めれ ば,そ
れぞれ方 向性 のバ イアス と地位 関係 のバイアスは3通
りずつのパ ター ンが存在す るので,
トー タル では認知バイアスの組 み合 わせ は9通
り考 え られ る.こ
の9通
りのパ ター ンに差か比か とい う地位 関係 の認識 を加 え るこ とで,合
計 18通 りの地位 比較 の方法が導出可能 だが,地
位 関係 を状態 として認識す る 認知バイアスが働 いてい る場合 は,差
か比 か とい う区別 はキャンセル され るので,実
質的 には15通 りの組 み合 わせ に集約 され る.以
下の表3で
は,こ
の地位 関係 の認識 と認知バイ アスを基底 とす る15通 りの ヴァ リエー シ ョンを整理 した ものである.表
3
他者 比較 の ヴァ リエー シ ョン 地位 関係 のパ イアス 方向性の地位関係
バイアス
の認識
な し 逓減 則 状 態
3。
3「
他 者 比 較 」 の フ ォ ー マ ライ ズここでは
,2つ
の視角か ら導 出 され る15通 りの他者比較 をフォーマ ライズ してい く39。 ま ず,非
負 の実数 として階層 的地位 を定義 し,比
較対象 とな る他者 の地位 を 乃(≧0),
自己の 地位 をz(≧ 0)で表す.この 光 とzを定義域 として,他
者 比較 の方法 を定め る関数 を比較 関数 σ(乃,Z)と お く・ 他者比較 の ヴァ リエー シ ョンを構成す る基底 として,他
者 との地位 関係 をな し
差 ① ⑦
⑬
比 ② ③
上 方
差 ③ ⑨
①
比 ④ ⑩
下 方
差 ⑤ ①
⑮
比 ⑥ ⑫
39こ こでのフォーマ ライズ とは明確化の段階に とどまる (高坂 [2000]2006).
52
差 で認識す るのか
,そ
れ とも比 で認識す るのか とい う地位 関係 の認識 を導入 したが,そ
れぞれ に対応す る比較 関数 は次 の よ うに表現す ることが可能 だ ろ う.
σグ(ノメ,Z)=Z―ノ′
①
σ″(ノli9 Z)=ノ
J/Z
②θグは差 として認識す る比較関数 を表 し,θrは比 として認識す る比較関数 を表す。 この
2つ
の比較関数は表1に
おける① と②で示 された他者比較に対応 してお り,認
知バイアスが作用 していない他者比較に相 当す る比較関数である
.こ
の2つ
の比較関数 を基本 として,認
知バイアスが作用す る比較関数 を導出 していこう.
認知バイアスの うち
,方
向性 のバイアスには,自
己を基準 とした上位者の地位 関係のみ に感応的な上方バイアス と,下
位者のみに感応的な下方バイアスの方向性が異なる2つ
の バイアスが存在 していたDこ
の うち上方バイアスを想定す る場合,対
応す る比較関数 は次 のよ うになる。それぞれ表
1の
③ と④に相 当す る比較関数で,上
位者 に対 しては地位差,な
い しは地位比 を出力す るが,下
位者に対 しては地位 の相違が無いもの とし見な し,そ れぞれ差では0を
,比では
1を
返す関数 となっている.同
様 に,表 1の
⑤ と⑥に対応す る下方バイアスを考慮 す る比較関数は,そ
れぞれ乃
<Z
ノJ≧Z ノゴ
<Z
乃 ≧Z と表現す るこ とができる40。
も う一つの認知バイ アスであ る地位 関係 のバイアスには
,離
れれ ば離れ るほ ど大雑把 に 地位 関係 を認識す る逓減貝Jと,連
続 ではな く離散的 に状態 として認識す る2パ
ター ンが存 在 していた.そ
の うち逓減貝Jに関 しては,端
的 には狭義 の凹関数 で あれ ば表現 可能 だが,ここではシンプル に 自然対数 として定式化 してお く.
この
2つ
の比較関数は表1の
⑦ と③ にそれぞれ相 当す る比較関数である。ここで,⑦
の比較関数 に
+1を
加 えているのは,0を
基準 とす る比率尺度 として表現す るためで,も
し+1を
40こ の うち,Yithaki(1979)の相 対的剥奪指標 は,③に対応 す る比較 関数 を採 用 してお り,Hey and Lambe■
(1980)の相対 的充足指標 は⑤ に対応 す る比較 関数 を採用 していた。
洵 立 洵 金
乃 乃 乃 乃
o ︶ ル
︲ F
F
一一 一一 z>
z>
r
z>
r
︐z>
乃 乃
> 一
< Z Z
> り う
一 刺 醐
﹁ ﹂
r l ゼ ー ー
︑ z 一一 g
< ヽ ノ ー︒
乃 ら
% Z
③
④
⑤
⑥
⑦
③
⑬ て を た 作
・ す し 0
い 互 る 表 対 ま な 交 き に 表
は 出 め 用 ま こ
加 えていないのであれ ば
,他
者 と自己の地位 が同一 で ある場合 は不定 とな り,連
続 的 な尺度 として用い るこ とがで きないか らである。
も う一つの地位 関係 のバイ アスで あ る状態認知 のバ イアスは
,連
続 的 に地位 関係 を捉 え るのではな く,離
散的 に状態 として認識す るバ イアス を意 味 していた。 この よ うな状態 と して捉 える場合,も
はや地位 関係 を差 で認識す るのか,比
で認識す るのか とい う違 いは意 味 を もたないので,一
括 して ダ ミー変数 を用いた以 下の比較 関数 で表現す るこ とが可能 で ある.光
<Z
ノJ≧Z
%れ出か 1嗚 『 計リ
タ I ⑨
‰静 か │ば 『わ夕 I ⑩
[1[集 「 112こ 星 二 ]塁 姦 ユ
│こ屁 :キ 璽 曇 :]射 『
[:夏 奮 曇 I「1月 1,3重 撃 雪
とができる。
‰ 静 か │ば
Zl乃→
夕 蔓 ①
%"温ル か │マ ガ
タ 蔓 ⑫
[辱l軍 :Fl柱 彗 秀 i:二 蓮 壁 屋 I彙 肇 IIこ 曇 皐 二 ]I:霞 重 裏 i曇 暮 「 二 表 1の ⑭
ε
b′″ α ヮ 専 〃 α だ
(」乃 ,Z)={: ;il: ⑭
象
,套
馨11ま表現 され
,表 1の
⑮に対応する下位者 との地位関係を状態 として認識する比1 0
r l く I L
光Z
″〃 あソ θ フ
⑮
54
として比較 関数 は表 され るD
以上で
,地
位 関係 の認識 と認知バイアスか ら構成 され る15通 りの他者比較 と,そ
れぞれ 対応す る15通 りの比較関数 が導 出で きた.最後 に,他者比較 をま とめた表3に
準ず る形 で,表
4に
て比較 関数 をま とめてお く.表
4
比較関数 の ヴァリエーシ ョン 地位関係のパイアス 方 向性 の 地位 関係バ イアス の認識
な し 逓減 則 状 態