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第32回山梨医科大学CPC記録:3ヵ月かけて右葉全体に広がった器質化肺炎の1例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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症例提示 温井郁夫(内科学 3) 症例:H.I. 89 歳,男性。(ID104-481-8,AN1281) 主訴:労作時呼吸困難,全身倦怠感 既往歴:昭和 25 年頃: appendectomy 昭和 57 年:左自然気胸にて胸膜癒着術施行 平成 2 年 6 月:左胸水貯留の為当科入院(Af, CHF, LC(日本住血吸虫症)) 平成 2 年 9 月:左胸水貯留にて胸膜癒着術施 行(喀痰培養で非定型抗酸菌陽性であった為 RFP, INH を半年間内服) 平成 10 年 6 月: ASO にて左外腸骨動脈−右 総大腿動脈 bypass 術施行(第 2 外科) 現病歴:平成 10 年 10 月下旬より咳,痰,労作 時呼吸困難が出現。症状増悪したため 11 月 2 日近医受診,右肺中葉の consolidation 認 め,肺炎の加療目的にて紹介入院となった。 入院時現症:身長 178 cm,体重 54 kg,体温 36.1°C,脈拍 72 bpm,血圧 98/52 mmHg, リンパ節腫大なし,右上中肺野で呼吸音低下, 心雑音なし,腹部は手術瘢痕を認めるのみ, 四肢に浮腫は認めない。 入院時検査所見: TP 8.3 g/dl,Alb 3.2 g/dl, CHE 139 IU/l,ZTT 18.9 KU,TTT 11.4 KU,

T.Bil 0.7 mg/dl, D.Bil 0.3 mg/dl, ALP 321 IU/l,LAP 39 IU/l,γ-GT 55 IU/l,LDH 139 IU/l,GOT 21 IU/l,GPT 14 IU/l,TG 55 mg/dl,T.chol 141 mg/dl,BUN 23 mg/dl, CRE 0.99 mg/dl, UA 8.3 mg/dl, Na 139 mEq/l,K 4.4 m Eq/l,Cl 104 mEq/l,Ca 9.2 mg/dl,P 3.3 mg/dl,CK 13 IU/l,CRP 2.1 mg/dl,WBC 6860/µl(桿状球 4 %分葉 球 58 %好中球 62 %好酸球 8 %好塩基球 7 % 単球 7 %リンパ球 16 %)RBC 453 万/µl, Hb 13.3 g/dl,Plt 24.3 万/µl,PT % 63.3, APTT 53.0 sec, FIB 358 mg/dl, ESR 84/109 mm,カンジダ Ag−,アスペルギル ス Ag−,BGA(Room air): pH 7.422,pCO2 36.6 mmHg, pO2 63.6 mmHg, HCO3 2 3 . 4 m m o l / l , B E −0 . 4 m m o l / l , S a O2 92.4 % 画像所見:当日供覧 喀痰培養: ’98.11/04 : Candida spp.+ ’98.11/20 : Proteus mirabilis + ’98.12/07 : Candida spp.+ ’98.12/14 : Citrobacter freundii + 第 32 回山梨医科大学 CPC 記録 日時:平成 11 年 12 月 1 日(水)午後 5 時 15 分∼ 7 時 場所:臨床講堂大講義室 司会:女屋敏正教授(内科学 3),大井章史教授(病理学 1)

3 ヵ月かけて右葉全体に広がった器質化肺炎の 1 例

要 旨:症例は 89 歳の男性。既往歴に肺気腫があり,17 年前に気胸を発症している。9 年前に胸 水貯溜に対して胸膜癒着術を受け,このときの喀痰培養で非定型抗酸菌が陽性で抗生物質の投与 を受けている。平成 10 年 10 月,労作時の呼吸困難を主訴として入院。入院時,右 S2 の肺炎があ り,その後肺炎は右上下葉に多発し,抗生物質投与に部分的に反応したが,3 ヵ月後,呼吸不全 で死亡した。剖検では,両肺に高度の肺気腫と胸膜の線維化を認めた。右肺には急性期の肺炎は 認められなかったが,器質化肺炎から蜂窩状肺に至る新旧の肺線維症が認められた。結核病巣は 見つからなかった。潜在癌として,肺に紡錘形細胞癌,盲腸と S 状結腸に腺癌が見つかった。本 例は肺気腫で荒廃した肺に発症した気管支肺炎の治癒吸収が阻害されて起こった器質化肺炎と考 えられ,急速に進行した肺の線維化が注目された。

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’98.12/14 :Enterobacter cloacae + ’99.01/04 : Klebsiella oxytoca + ’98.12/14 :Citrobacter freundii + ’98.01/06 : Klebsiella oxytoca + ’98.01/11 : Klebsiella oxytoca + ’98.01/18 : Acinetobacter calcoaceticus ++ ’98.12/14 :Pseudomonas aeruginosa + ’98.12/14 :Klebsiella oxytoca + ’98.02/01 : Candida spp.+ 入院後経過:入院後は,画像上より細菌性肺炎 を考え,IPM/CS による治療を開始した。 CRP 値の減少をみたが,11 月中旬より再び 上昇。AZT+MINO に変更したが,薬疹が出 たためすぐ中止。その後も抗生剤を順次変え ていったが CRP, WBC とも漸増傾向を示し た。非定型抗酸菌症の既往があることより, 12 月 14 日より抗結核薬(RFP+INH),抗真 菌薬(FLCZ)も併用した。画像的に悪化傾 向にあることから FLCZ は 1 月に入って中止 した。1 月 25 日に CRP 12.0 となり,γ -glo-brin 製剤を使ったが,呼吸苦更に進行。副 腎皮質ステロイド,気管支拡張薬等も用いた が全身状態悪化し 2 月 19 日死亡した。 剖検の目的: 1)肺炎の原因菌の証明は可能か? *抗酸菌の既往あり *各種抗生剤に抵抗性だった 2)右上葉は器質化しているか? 3)肺悪性腫瘍は存在するか? 4)最終的に右肺の含気がなくなったが,気 管支のどの辺りの閉塞か? 発言 池田真人医員(内科学 3) まず,この症例を治療していく上で臨床上問 題になったことをいくつか列挙する。1)高齢 者肺炎によく見られるように,CRP,血沈など 表 1.真菌の検出 11/10 12/8 1/6 2/15 カンジダ Ag − − − 4(2 >) クリプトコッカス Ag − − アスペルギルス Ag − − − − β-D-グルカン 38.6 28.1 (20>) 12/8 サイトメガロ−アンチゲネミア(−) 図 1.入院後の治療と白血球数および CRP の変動。

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の炎症反応,発熱,白血球数上昇が一貫して軽 微であった。2)痰の量が多いわりに咳の力が 弱く,気管サクションを嫌がった。またトラヘ ルパーや気管切開を本人,家族ともに拒否した ため排痰が十分ではなかった。3)IVH 挿入も 当初拒絶され,十分な栄養管理ができなかった。 4)抗生物質に抵抗性で,臨床症状に比べて胸 部 X 線写真の所見は悪化の一途をたどった。 入院当初の労作時呼吸困難の原因として,黄 緑色痰を呈し,胸部 X 線写真にて区域性の所 見であったため細菌性肺炎が考えられた。通常 であれば,市中肺炎の原因菌として肺炎球菌や インフルエンザ桿菌を考えるが,基礎疾患とし て肺気腫があり,外来でエリスロシン(EM) が投与されていたこと,既往歴に緑膿菌感染に よる肺炎,胸膜炎を起こしていたことより緑膿 菌もカバーできるチエナム(IPM)投与から開 始した。長年の肺気腫のため,右心不全を中心 とした心不全の存在も考慮されるが,臨床所見 上浮腫,うっ血肝,頚静脈怒張は見られなかっ た。 入院当初の喀痰培養からはカンジダが検出さ れたが,X 線写真より原因菌とは考えられなか ったため,そのまま細菌感染を考えて抗生物質 を変更しながら経過をみたが,炎症反応は改善 せず胸部 X 線写真では肺陰影が増加した。 12 月に入り,胸部 X 線写真上で病変は器質 化されたと考え,在宅での治療を考慮し経口抗 生物質に切り替えたところ,症状,炎症反応が 悪化したため 12 月中旬より抗酸菌,カンジダ, 緑膿菌をターゲットとした薬に切り替えた。以 後,菌交代現象を起こしたためか,喀痰培養で は弱毒菌が検出され,治療も無効であった。 比較的短期間で肺炎の器質化が完成した理由 としては,初期治療の効果のでている間に十分 な排痰ができなかったことが挙げられる。 討論 西川圭一講師(内科学 2) 本症例は基礎疾患に高度な肺気腫を有する高 齢者に合併した難治性肺炎であり,いわば予後 不良の高齢者肺炎のひとつの典型例ともいえ る。画像所見では両側上葉に強い,著明な肺気 腫があり,右上葉に非区域性の,すでに器質化 しているものと考えられる肺炎像を認め,それ が治療抵抗性で徐々に拡大し,最終的には右肺 全体に及び,呼吸不全で死亡した。肺炎は画像 的にはその多くの部分が器質化しているものと 考えられるが,高齢者特有の免疫能の低下や排 痰障害,更には繰り返す誤嚥,また抗生剤長期 使用による菌交代などが難治化の原因となり, 不完全な治癒と反復する感染が遷延したものと 思われる。肺炎の初発は今回のエピソードより 以前である可能性が高く,また当初は肺炎球菌 などによる通常の細菌性肺炎であったと思われ るが,当院入院後の喀痰培養では通常の肺炎の 際に検出される細菌群は全く検出されず,一貫 して弱毒菌群や嫌気性菌,あるいは口腔内常在 菌を検出しており,本症例ではこれらがいずれ も起炎菌であったと考えられる。 病理所見と診断 平島奈緒子大学院生(病理学 1) 剖検番号: 1298,89 歳,男性。 死後 2 時間 47 分,開胸開腹にて剖検(開頭なし) <病理所見> A.肉眼的所見 1.外表:身長 170 cm,体重 50.6 kg。やゝや せ形。表在リンパ節は触知しない。眼球結膜 に軽い黄染があり,眼瞼結膜に貧血を認める。 瞳孔は正円で,左 5 mm,右 5 mm。皮膚に 黄染なし。下腿に浮腫をみない。手術瘢痕: 両鼠径部に 6 cm,右大腿内側に 7 cm。(バイ パス手術のため。) 2.体腔液:左右胸腔癒着のため,胸水はなし。 心嚢液は 60 ml,黄色透明。腹水は 50 ml, 黄色透明。腹膜も滑らかだが,回盲部に軽い 癒着あり。 3.肺:両肺とも胸膜の癒着が著しい。(胸膜 を含めた重量:左 1,050 g,右 1,030 g)び漫 性に気腫が見られるが,右上肺に腔の拡張は 見られず,含気がなくなって solid になって いる。特に右 S2では胸壁との癒着が強く,

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剥離困難だった。また右 S1に 4 cm ほどの嚢 胞性病変があり,その壁は硬化し,内壁に軽 い凹凸不整があった(図 2)。その壁から肺 内にかけて 2.4 × 1.9 × 1.0 cm に亘って境界 不鮮明に拡がる黄白色の病変が存在した。気 管支粘膜にび漫性に出血,発赤があった。リ ンパ節は,気管分岐部に約 4 cm の腫大があ る他,縦隔,肺門リンパ節とも数珠状に腫大 していた。 4.大腸:回盲部に 7.0 × 5.0 × 2.0 cm の乳頭 状に増殖する周提を持つ 2 型病変を認めた。 中心の潰瘍は径 2 cm 程であまり広くない (図 3)。また下行結腸に 1.5 × 1.2 × 1.0 cm の隆起性病変を認めた。 5.心臓:(510 g)心外膜は滑らか。右室腔の 拡大と心筋の肥厚を認める。右室壁は 7 mm であった。左室壁は 15 mm。左室前側壁に 白色の線維性瘢痕を認めた。心内膜も滑らか で血栓形成も認めない。冠状動脈に有意な狭 窄はない。 6.肝臓:(890 g)表面は平滑で凹凸はない。 色 は 暗 赤 色 で う っ 血 気 味 で あ る 。 胆 嚢 に 60 ml の debris を認めた。胆汁排泄試験陽 性。 7.腎臓:(左 110 g,右 110 g)左右共に被膜 剥離は容易で,多数の小嚢胞形成や,腎梗塞 の瘢痕がみられる。軽い腎盂拡大も見られ る。 8.大動脈:左外腸骨動脈−右総大腿動脈バイ パス術後。全体的に動脈硬化が著しく石灰化, 潰瘍形成が目立つ。 9.前立腺:両葉とも肥大している。巣状の結 節性の硬化をみる。 10.脾臓(80 g):被膜や脾柱が部分的に厚く なっているところがある。 11.甲状腺(14.5 g),副腎(左 8.5 g,右 10.5 g), 精巣(左 8.5 ,右 10.5 g):著変なし 12.骨髄:赤色髄であるが,osteoporosis があ る。 13.バイパス後の人工血管: clot の付着はあ るが,良好に開存している。 B.組織学的所見 1.肺:右上中葉は完全に器質化または線維化 しているところが多い。種々の段階の器質化 肺炎の像が見られる(図 4)。右 S1の嚢胞は, 径 4 cm で線維性に肥厚した壁からなる。そ の一部に紡錘形の細胞集団から成る肉腫様病 変がある。そこから肺内に連続して 2.4 × 1.9 × 1.0 cm にわたる部分は免疫染色で, CAM 5.2(+),HHF 35(−),S-100(−)(図 5)。新しい WHO 分類によると Carcinoma with pleomorphic, sarcomatoid or sarcoma-tous elements の中の spindle cell carcinoma に相当する。 右下葉と左肺は,汎小葉型の肺気腫と軽い 図 2. 右肺割面像。 上中葉は器質化が進んでいて含気がない。下 葉に著しい気腫性変化を認める。肺尖部に肥 厚した線維組織を有する嚢胞が見られる。 図 3.回盲部に見られた 2 型病変。

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図 4. 器質化肺炎。(× 300)

肥厚した肺胞壁には強い炎症細胞浸潤を認める。また肺胞腔にはフィブ リンの滲出とともに線維性組織で置き換えられた肉芽組織も見られる。

図 5. 肺の紡錘形細胞癌。(左: HE 染色,右: CAM 5.2 染色),(× 1,500) 異型の強い肉腫様細胞群は上皮のマーカーである CAM 5.2 陽性であった。

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中隔の肥厚があるが,肺胞腔は開いていると ころが多い。骨髄塞栓(+)。チールネルセン 染色にて抗酸菌(−)。 組織細菌検査:培養同定; Enterococcus spp.(+),酵母様真菌(少数),抗酸菌(陰 性) 2.大腸:回盲部の腫瘍は mucinous carcino-ma で(図 6),serosa を破って浸潤し始めて いた。まだ癌性腹膜炎までは起こしていない。 中等度のリンパ管浸潤と軽度の静脈浸潤をみ る。筋層内に石灰化日本住血吸虫卵をみる。 S 状結腸末端より 25 cm のところの山田 IV 型ポリープは中等度異型の adenoma の中に adenocarcinoma を 1 × 1 cm に亘って認め る。この腫瘍周囲に脈管浸潤は見られない。 3.心臓:左室前側壁に古い心内膜下梗塞をみ る。右室心筋内にも軽い線維化がある。冠動 脈前下行枝#6 に 90 %の狭窄を認める。 4.肝臓:古い日本住血吸虫症と軽いうっ血, sinusoid の拡大をみる。 5.膵臓:石灰化吸虫卵,ラ氏島への少量のア ミロイド沈着を認める。 6.脾臓:軽いうっ血,被膜と脾柱に,ヘモジ デリンの沈着とともに弾性線維の変性,石灰 化した Gamna-Gandy 結節が見られ,リンパ 小節の脱落を認める。 7.腎臓:小さい嚢胞は全て retention cyst。 糸球体,尿細管の脱落は乏しい。表層の間質 に focal にリンパ球の浸潤を認める。 8.甲状腺:著変なし。 9.副腎:皮質リポイドの減少がある。 10.前立腺:結節性の過形成あり。腺の 2 相性 は保たれている。 11.精巣:精子形成なく atrophic である。 12.骨髄:やゝ hypercellular。 <病理診断>

1.蜂巣肺と肺線維症(End-stage fibrosis and honeycomb lungs) 1) びまん性汎小葉性肺気腫 2)器質化肺炎 3)肺線維症 4)気胸,胸水貯留に対する胸膜癒着術後 5)右肺尖の線維性嚢胞 6)右心拡大(肺性心) 2.3 重癌 1)紡錘形細胞癌,右上葉 2)大腸癌(盲腸: 2 型,S 状結腸: Ip 型, 腺腫内腺癌) 3.副病変 1)心筋梗塞瘢痕,冠動脈硬化症 2)大動脈粥状硬化症,左外腸骨動脈−右総 大腿動脈バイパス術後 3)右腎梗塞瘢痕 4)肺,大腸,肝,膵,腎,前立腺の日本住 血吸虫卵 5)前立腺の結節性過形成 6)膵ラ氏島のアミロイド沈着 7)蘇生術に伴う肺内の骨髄塞栓 <直接死因> 呼吸不全 図 6. 回盲部腫瘍の組織像。(× 1,500) 粘液産生の著しい大腸癌で,ところによって signet ring cell 様の癌細胞が粘液の中に浮い ている。

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考察:高齢者の肺炎は,抗生剤の進歩が著しい 現在においても,体力や抵抗力の低下,基盤に ある疾患,強力な抗生剤の使用などによる菌交 代現象を招き,難治性の経過をとりやすいと言 われている。今回の症例もベースに広範囲の肺 気腫があり,肺性心の所見(胸部の CT で肺動 脈が太くなっていたこと,剖検時の心の右室腔 が拡大し,乳頭筋が発達していたこと)も存在 したことから呼吸予備能は少なかったと推測さ れる。そこに何らかの機転により感染を受け肺 炎を起こしたが,肺胞内滲出物の吸収不十分に より肺胞内に肉芽組織の新生を残し,徐々にそ の範囲を広げていった結果が今回の右上中葉に 広がった器質化肺炎である。剖検組織片から有 意な起因菌はみられなかったが,経過中に喀痰 培養から検出された細菌類が高齢者の肺炎の典 型と考えた弱毒菌類であったことから,栄養不 良(患者が高カロリー輸液を拒否していた。) や喀痰排出困難も重なって,肺炎の治癒吸収が 阻害されたものと考える。 剖検によって,肺に肉腫様の組織像を呈した 紡錘形細胞癌と盲腸に粘液癌,S 状結腸に腺腫 内腺癌を認めたが,いずれにおいても転移,脈 管浸潤や播種は認められず,今回の生命予後に は関わっていなかったものと思われる。

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