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<書評> Adam Brown 著 Pronunciation and Phonetics: A Practical Guide for English Language Teachers

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Academic year: 2021

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埼玉学園大学・川口短期大学 機関リポジトリ

<書評> Adam Brown 著 Pronunciation and

Phonetics: A Practical Guide for English

Language Teachers

著者

本井 昇

雑誌名

埼玉学園大学紀要. 人間学部篇

14

ページ

201-203

発行年

2014-12-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1354/00000274/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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― 201 ―

 本書(出版社:Routledge 出版年:2014年)は、 Adam BrownがRogerson-Levell(2011) と 同 様 の、 英国の英語教師養成システムに於ける専門家レベル (DELTA=Diploma in Teaching English to Speakers

of Other Languages)を目指す教育実習生のために 書いた発音指導と音声学・音韻論の本である。著者 は Pronunciation models(1991a)と2つの発音指 導に関する論文集(Brown, 1991b; 1992)の編者と して有名であり、こうした入門書的著書を物するの は恐らく初めてなのではないかと思える。その点で も興味があり手に取った一冊である。  この本は3部構成であり、第1部Phonetics、第2 部Pronunciation teaching、第3部Sample exercisesと なっている。また、各章の始めに学習目標が書かれ ており、末尾にはサマリーと練習問題が付けられ、 巻末には練習問題の答えが掲載されている。英語教 育に携わる者に教えることを意識した構成と言える。 その割り振りは、本文273ページ中、第一部には23章、 152ページ(約55.7%)、第二部は12章、81ページ(約 30.1%)であり、第三部は33ページ(約12.1%)となっ ている。  書物の半分強が費やされている第1部の中身は、 基本的に初級レベルの音声学・音韻論の概説書と言 えるもので、音声器官の解説、母音、子音の記述を 含め、音節、弱化、連続発話に於ける音変化、プロ ソディ-(pausing and speed, word stress, tone groups, tones, rhythm)が要領よくまとめられている。また、 日本では軽視される声質(voice quality)も取り上 げられているが、基本的な解説に留まっている。総 体として、この第一部の内容は、更に学習・研究を 進める上での良い出発点となる十分な知識を提供し てくれるものといえる。取り分け、日本で出版され ている音声学関係の図書では記述が手薄な傾向の強 いプロソディ-の領域により多くのページが割かれ ていることには好感が持てる。何故なら指導項目を 削 減 し た 発 音 シ ラ バ ス(reduced pronunciation syllabus)に基づく教材編成やコース編成が指向さ れる現状では、音声の領域では対話練習や音読など 文脈のある教材への取組みをを通じて、よりtop-downの指導に力点が置かれ、bottom-up傾向の強い 母音や子音は、“学習者が伝達の作業を通じて自然に 覚え、自分で変える”という方向への力点の変更が 模索されているからであり、教師にとってはtop-down教材を準備する際に有益な情報だからである。  加えて、第2章世界のアクセント(Accents of English world wide) と 第13章 ア ク セ ン ト の 違 い (Accent differences)は、現代の教師が、日本語と 英語の違い以外に何を知り、何を研究しなければな らないかについて考える上での良い出発点となると 言える。取り分け第13章の5母音システムと3母音 システムの違いに関する記述は、明瞭性(intelligibility) という観点からみれば、指導項目を削減した発音シ ラバスに於いて母音よりも子音が重視される傾向に 対する理解を深めてくれると言える。  第2部では、音声教育に関わる事柄がまとめて取 り上げられており、音声記述の章の中にこうした知 識が混ぜ込まれている、本書と同等の書である Rogerson-Levell (2011)よりも取り組み易いと言え キーワード : 発音指導、アクセント(訛)と指導目標、第二言語習得、(教授法との)統合 Key words : pronunciation teaching, accents and targets, L2 acquisition, integration

書評

Adam Brown

Pronunciation and Phonetics: A Practical Guide for English Language Teachers

本 井   昇

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― 202 ― 埼玉学園大学紀要(人間学部篇) 第14号 る。ここでは、従来の音声学の図書でも割合頻繁に 取り上げられて来た母語の影響(第29章)、綴り字 と音声の関係(第31、32章)、聞き取り能力と発音 の関係(第34章)以外に、第27章動機付けと心理状 態(Motivation and affect)、第28章化石化(Fossilization)、 第33章 言 語 以 外 の 要 素 に よ る 伝 達 (Nonverbal communication)のような第二言語習得の研究と深 く関わる事柄に関しても相当のスペースが割かれて いる。こうしたことからも、現在、発音指導の問題 は、単なる英語の音声記述のレベルを超え、より“教 育”の領域でのシステマチックな記述に重点を置く 方向に向かう形で扱われていることが分かる。  その他の章では、第24章指導目標 (Targets)、第 26章指導の効果(The effectiveness of pronunciation teaching)と第30章重要とされる音声特徴 (Importance) で、何を目標とし、どのような教え方をし、何を重 視して学習を進めるべきかを考える上で参考になる 事柄が議論されている。  指導目標では、必ずしも母語話者の標準的アクセ ントを身につける必要がないことが主流の考え方と なっている現在、明瞭性・話し手が聞き手に与えた い自身のイメージ (image)・自分らしさ(identity) という3要素が最終的な到達目標を決める上で検討 されるべき課題であることを明らかにしている。提 示されている具体的に検討するべき事柄として、① 世 界 標 準 の ア ク セ ン ト(Received Pronunciation, General American等)の一つを選択する方法、②友 人・映画スター・アナウンサー等のようなモデルとな る話し手を決め、それをコピーするような態度で習 得を目指す方法、③Lingua Franca Coreのような指 導項目を削減した発音シラバスを決定し、それに基 づいて教える方法がある。日本でもよく知られてい る英国の音声学者J.C. Wellsが母語話者の発音レベ ルを目指すことを勧めるとする(2005)背景には、 上記①②及びイメージの問題が考慮されていること が分かる。こうした目標設定は、所謂職業上英語を 使う必要のある学習者以外には決定的と云える程大 きな問題ではなく、相当上級の学習者でない限りそ れ程神経質になる必要はないと云える状況であろう。 Wells自身も授業の中の議論で、「母語話者と全く同 じレベルの発音を身に付ける必要があるのだろう か?」という反問をし、自身のフランス語(彼の発 音はさすがに専門家であり、音だけ聞いていれば完 璧なパリのフランス語である)を聞いてフランス人 がベルギー人と思っていたというエピソードを紹介 している。   指 導 の 効 果 に 関 し て は、Jonathan Marksの “Pronunciation. That part of a student which is exactly the same at the end of the course as at the beginning”(2012: 4)という言葉に表れている通り、 教室で教える場合を見る限り、目に見えて大きな改 善が見られないのが常であるが、ここでは、成功の 為の決定要因、短期・長期の改善などの議論をして いる。著者は、最終的に、発音指導することは発音 の改善以外に聞き手として理解能力の向上に資する という指摘を行うと同時に、学習者に共通の問題と なる音声特徴を慎重に選択し、教室で割く指導時間 に見合うものとするよう教師に対して要請している。  重要な音声特徴としては、学習者のアンケート調 査の結果なども検討されているが、その本体は、各 音素の発生頻度に基づくfunctional loadの考え方の 紹介である。しかしながら、前節の結論と同様、教 室では全ての音声特徴を取上げる必要は無く、学習 者の分析の上に立って選択がおこなわれる必要が強 調 さ れ る 形 で 一 定 の 留 保 を し て い る。Audio-lingualism時代のように只ひとつの分析手法に頼る ことが決して良い結果を生まなかった現実が考慮さ れていると言える。  また、現在では避けて通ることの出来ないテスト と評価の問題に関しては第35章が充てられている。 一般的なテストの分類と同様の記述もあり、この分 野の良い入門編となっているように思えるが、トー タルな発音の評価の点でより踏み込んでいるWalker (2010)のこの問題に関する記述と共に検討すると 有益と思われる。  第3部では14種類の練習のサンプルを提示してい る。 通 読 の 上Hankock(1995) やHewings(2004) のような教材集の検討に進むと大量の練習方法に関 する知識を得、レパートリーを広げるのに役立つと 思われる。また、Seidlhofer(2001)は、Communicative Teachingと の 関 わ り で 有 益 な“ ‘skill-getting’か ら ‘skill-using’の 言 語 活 動 へ の 連 続 ”(Rivers and

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― 203 ― 書 評 Temperley, 1978)という発想との関わりで発音練習 を8分類している。是非参照し、こうした観点から 第2部第25章で取上げられている様々なアプローチ と発音領域との統合(Integration)の問題を吟味し て欲しい。恐らく、1学期なり1年のコースのデザ インを行う際に有益な情報・知識を提供してくれる と思われる。  本書もRogerson-Levell(2011)と同様Companion Websiteにアクセスすることを通じて音声を聞くこ とが出来るようになっている。便利ではあるが、筆 者の意見としては、初心者にとっては音声学・音韻 論の記述はRogerson-Levell (2011)がより分かり易 く学習しやすいと思える。しかし、本書の第2部の 内容の充実を考慮すると学習者はこの2冊を熟読す ることが十分な知識を得る上での近道と云えるかも しれない。兎も角、この2冊を十分理解することが、 こ の 分 野 の よ り 総 合 的 な 本 で あ るCelce-Murcia, Brinton and Goodwin(2010)を読みほぐす上で必 要な背景知識を与えてくれることは確かなことであ る。

参考文献

Brown, A.(1991a). Pronunciation models. Kent Ridge: Singapore University Press.

Brown, A.(1991b)(ed.). Teaching English

pronunciation. London: Routledge.

B r o w n , A .( 1 9 9 2 )( e d . ) . A p p r o a c h e s t o

pronunciation teaching. London: Macmillan

Publishers Ltd.

Celce-Murcia, M, D.M. Brinton and J.M. Goodwin (2010). Teaching pronunciation. New York:

Cambridge University Press.

Hancock, M.(1995). Pronunciation games. Cambridge: Cambridge University Press.

Hewings, M.(2004). Pronunciation practice

activities. Cambridge: Cambridge University

Press.

Marks, J. (2012). “In praise of pronunciation”.

English Teaching professional 81: 4-6

Rivers, W. and M. Temperley(1978). A practical

guide to the teaching of English as a second or foreign language. New York: Oxford University

Press.

Rogerson-Revell, P(2011). English phonology

a n d p r o n u n c i a t i o n t e a c h i n g . L o n d o n :

Continuum International Publishing Group. Seidlhofer, B.(2001). “Pronunciation”. In R. Carter

and D. Nunan (eds.)(2001). The Cambridge

guide to teaching English to speakers of other language. Cambridge: Cambridge University

Press.

Walker, R.(2010). Teaching the pronunciation of

English as a lingua franca. Oxford: Oxford

University Press.

Wells, J.C. (2005). “Goals in teaching English pronunciation”. In Dzinbalska-Kotaczynk, K. and J. Przedracka (2005). English pronunciation

参照

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