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保護者支援を共に学ぶ教育者ネットワーク“エデュサポネット”の来し方行く末

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(1)Title. 保護者支援を共に学ぶ教育者ネットワーク“エデュサポネット”の来し 方行く末. Author(s). 植木, 克美; 氣田, 幸和; 鎌田, 良子; 宮崎, 世司; 篠塚, 友希野; 浪 岡, 美保; 倉内, 明子; 砂川, 敬惠子; 三井, 理恵. Citation. 学校臨床心理学研究 : 北海道教育大学大学院教育学研究科学校臨床心理 学専攻研究紀要, 18: 91-100. Issue Date. 2021-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11626. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 保護者支援を共に学ぶ教育者ネットワーク “エデュサポネット”の来し方行く末 植木 克美*・氣田 幸和**・鎌田 良子***・宮崎 世司****・ 篠塚友希野*****・浪岡 美保******・倉内 明子*******・ 砂川敬惠子********・三井 理恵*********. Past and Future of Educator Support Network for the Study of Interaction with Parents. 1 『保護者支援をともに学ぶ教育者ネット ワーク』 ,通称エデュサポネットEducator Support Networkの趣旨. つきが弱くなり子育ての支援を受けづらい環境に なっている,保護者が経済的に困窮している,保 護者に心身の疾患がある,等のことで子育てに難 しさを抱える家庭が増えています.そして,子ど. 『保護者支援をともに学ぶ教育者ネットワー. もが学習につまずいている,友達との関係をうま. ク』は,保護者をサポートする力を身につけたい. く結べない,登校をしぶるといったことで悩みを. と考える学校教師たち,特に若い教師たちを応援. 抱える保護者がいます.このような状況にある保. しようとする教育者たちのネットワークです.教. 護者とのかかわりを,教師はどのように進めて. 師は子どもを共に育てていくパートナーである保. いったらよいのでしょうか.. 護者と信頼関係を結びたいと考えます.そして,. 保護者へのかかわり方やコツ,かかわる時に大. 教師は保護者と良好な関係を築くことで,子ども. 切にすること等を先輩教師から学びたいという意. たちが学校生活を安心して送り学びを深めていく. 欲をもつ若い教師たちはたくさんいます.保護者. ことを理解しています.. とのかかわりで困っていることを先輩教師に聴い. 今日,未来を担う子どもたちの成長を支えるた. てほしいと思う若い教師もいます.人は聴いても. めに,学校と地域社会,そして学校と家庭との連. らうことで気持ちが楽になります.しかし,教師. 携・協働が必要とされます.しかし,地域の結び. は忙しく,学校環境の変化等もあって,教師たち. *. Katsumi UEKI:北海道教育大学大学院学校臨床心理専攻. **. Yukihiro KIDA:札幌市青少年科学館. ***. Ryouko KAMADA:恵庭市立和光小学校. ****. Seizi MIYAZAKI:札幌市立資生館小学校. *****. Yukino SHINOZUKA:札幌市立新光小学校. ******. Miho NAMIOKA:北海道教育委員会. *******. Akiko KURAUCHI:札幌市立ひばりが丘小学校. ********. Keiko SUNAGAWA:札幌市立元町小学校. *********. Rie MITSUI:苫小牧市立苫小牧東小学校. キーワード:教育者ネットワーク 保護者支援 ワークショップ. 91.

(3) 学校臨床心理学研究 第18号(2020年度). 2 『保護者支援をともに学ぶ教育者ネット ワーク』の背景. のかかわりが少なくなったといわれます.炉辺談 話,廊下の会話といった日常的コミュニケーショ ンは少なくなっているようです.また,教師たち. の年齢構成が崩れ,若い教師の比率が高い学校や, 植木は勤務する北海道教育大学大学院教育学研 若い教師がお手本にしたいと思う中堅教師の人数. 究科学校臨床心理専攻で学ぶ小学校,特別支援学. が少ない学校も多くなっています.これらの学校. 校,幼稚園等の教師たちとディスカッションする. では世代の異なる教師たちが学び合うことは難し. 中で,保護者支援,子育て支援にかかわる教職生. くなります.意欲にあふれた若い教師が保護者と. 活全体を通した専門性の資質向上が喫緊の課題で. のかかわりで困難を抱え疲弊し,残念ながら心な. あると理解し,保護者支援の学びを支えるコミュ. らず離職する場合もあります.. ニティづくりの必要性を認識しました.そして,. ところで,学校教師は互いに自分のライフ・ヒ. 特に教職経験が少ない中で奮闘する若い教師の自. ストリーを語り合うことで,互いの問題を解決で. 主的自発的な学びをサポートするネットワークづ. きるとされます(Aspinwall,1986) .保護者と良. くり,コミュニティをつくりたいと考えました.. 好な関係を築き,複雑で多様な難しさを抱える保. これまで植木(2017a,2017bほか)は若手及. 護者と手を取り合って進んでいけるように,教師. び熟年の小学校教師28名に保護者支援についてイ. たちが知恵を出し合い考える必要があります.孤. ンタヴューを実施し,保護者支援を行う教師のコ. 軍奮闘する若い教師たちが学びたいと考えたとき. ンピテンシーを教師ひとりひとりに着目し検討し. に学べる教師コミュニティを保障する必要がある. ています.教師が教職経験を重ね,同僚教師に支. と考えます.. えられ保護者へのかかわりを変容させるプロセス. そこで,エデュサポネットでは,次の2つに取. と転機,関与する要因を検討しました.. り組み,若い教師を応援します.. これらの研究結果から,保護者支援において先. ⑴ 保護者支援を語り合うワークショップの開. 輩教師が若い教師に提供するサポートには情緒的. 発. サポート,情報的及び道具的サポートがあること. 世代の異なる教師たちが保護者支援の経験を. を明らかにしました.先輩教師による情報的サ. 語り交流し学び合うワークショップを開発しま. ポートにはこのような場合はこうしたら良いとい. す.集団で語り合うことで新たな語りが創造さ. う具体的アドバイスがあります.また,道具的サ. れ,語り合いをコミュニティのエンパワメント. ポートは個人に与えられる特定のモノやサービス. の 源 に で き る と さ れ ま す(Johnson-bailey,. とされ,若い教師にとって,先輩教師が保護者面. 2010) .創造的な語り合いの場としてワーク. 談に同席するのは道具的サポートとなります.ま. ショップを開発し,異世代教師たちのコミュニ. た,この場合,若手教師が一人ではないという安. ティづくりを進めます.. 心感をもてれば情緒的サポートにもなります.こ. ⑵ オンラインによるネットワークの構築. れらのサポートのうち,エデュサポネットの活動. 全国各地でがんばっている若い教師と,若い. において若手教師に提供が可能なサポートとして,. 教師を手助けしていきたいと考える教師たちを. 情緒的サポートと情報的サポートを考えています.. 結ぶネットワークをウェブで構築します.ウェ. これまでにワークショッププログラム(試案). ブ上のネットワークを通じて先輩教師が若い教. を作成し,2017年度からワークショップを実施し. 師から気づきを得ることもできるかもしれませ. てきました(植木,2020).参加者は延べ180名以. ん.具体的には,ホームページの製作とオンラ. 上となりました.また,ワークショッププログラ. インワークショップの定式化と運用を進めます. ム冊子を作成しています(保護者支援の経験交流 研究会,2019). なお,保護者支援の研究は,教師と保護者の関 係を研究している小野田(2015)らを参照してい ます.また,教職生活全体における保護者支援の 92.

(4) 保護者支援を共に学ぶ教育者ネットワーク“エデュサポネット”の来し方行く末. ことばにして他者に語ることで,困った経験. 経験と教職専門性については教師のライフコース. を整理することができます!〉. 研究を行っている山崎(2012)を,そして若手教 師の育成と熟達をモデル化している中原ら (2015). ⑶ ⑴と⑵を通して,明日からの保護者支援を. の研究を踏まえています.さらに,ワークショッ. がんばろうという気持ちを参加者がもてるよ. プのデザインは,成人のナラティヴ学習研究の. うにします.. Rossiter, M. and Clark, M.(2010)と大学教育に. 1回毎の参加人数は8~20名程度とし,1グ. おける参加型授業を実践する中野(2017) , 川嶋・. ループ4名を基本とします.グループには,若手. 中野(2018)から構想を得ています.そして,大. 教師と年長の教師が入るようにします.ワーク. 武(2013)が用いている「機能的生活の質モデル」. ショップの実施時間を約3時間としています.. の枠組みを使って,ワークショップを組み立てて. ワークショップの目的を達成するために,多忙な. います.. 教師が無理なく参加できる時間の長さとして,土 日休日,平日の就業後に捻出できる時間の長さか. 3 保護者支援を語り聴き合うワークショッ プの開発. ら実施時間を考えました.ワークショップのプロ グラムは次の通りです. ⑴ オープニング(15分)趣旨説明,グループ づくり(図1参照). エデュサポネットで定式化を進めるワーク ショップで行うのは異世代の教師たちが困り悩ん. ⑵ 自己紹介(20分),グループ毎の活動. でいる保護者支援の経験を「語る」こと,そして. ⑶ 保護者支援の経験をふりかえるシート記入 (15分),個人作業. それを「聴き合う」ことです.それによって,特 に若手教師が自ら課題を解決できるようにサポー. ⑷ 保護者支援の経験交流,グループ毎に一人. トすることを目的とします.ワークショップのね. ずつ順番に経験を語り聴き合う(一人15分). らいは次の3つです.. (図2参照) ⑸ グループメンバー全員による経験交流(15. ⑴ 世代の異なる教師たちが保護者支援の経験. 分). について語り聴き合い,保護者支援で困って. ⑹ 経験交流をふりかえるシート記入(10分) ,. いることを交流し合います. 〈困っているこ. 個人作業. とを聴いてもらうことで,気持ちが楽になり. ⑺ 経験交流の分かち合い(30分),グループ. ます!〉. 毎の活動. ⑵ 世代の異なる教師たちに保護者支援の経験. ⑻ クロージング(10分),各グループからの. を語り聴いてもらうことで,参加者各自が自. 報告. 分の経験をふりかえります. 〈困ったことを. 図1 オープニング. 図2 経験の語り合い聴き合い. 93.

(5) 学校臨床心理学研究 第18号(2020年度). 教師がグループのメンバーと交流したいと思う 保護者支援の経験を思い出し,語りを促進する ツールとして,経験の内容を整理するシートを用 意しています.シートには,①どのようなできご とがあったか,②教師の抱いた感情や思いはどの ようなものであったか,③教師はどのようにした かったのか,④保護者の思いはどのようなもので あったか,⑤保護者と教師の考え,思いにズレは あったか,⑥グループのメンバーにアドバイスし て欲しいことがあるか,の項目6つを設定してい ます. なお,経験年数の異なる教師同士の対等な関係. 図3 ワークショップ紹介. づくり,主体的対話を促進するために,机をロの 字に配置して1辺に1名が座るようにします.ま. メンバーページも製作し,エデュサポネットの. た,直径1メートルの円形段ボール板「えんたく. 活動を推進するメンバーとして依頼する学校教師. ん」(川嶋・中野,2018)を用いて, ワークショッ. たちの情報交換,交流の場としての役割をもたせ. プを実施する場合もあります.. たいと考えています.. 安心して語り聴き合える場づくりのために約束. 5. 『保護者支援をともに学ぶ教育者ネット ワーク』の来し方. (ルール)を4つ設定します.①互いの経験,考 え,感情を大切にして交流する,②発表者が語り 終わるまで聴く,質問は発表者の語りが終わって からにする,③質問をされても話したくないこと. 次に,これまでの活動をふりかえり,これから. には,応えなくてよい,④語り聴き合ったことは. のエデュサポネットの展開を考えていきます.①. ワークショップの中だけで閉じる,です.. 世代が異なる教師が集まって保護者支援の経験を 語り聴き合うことをどのように考えるか,②語り. 4.オンラインによるネットワークの構築. 聴き合ったことを学校で活用したことがあるか, ③エデュサポネットにどのような期待を持ってい るか,の3点を中心にしてまとめます.. 現在, ホームページの製作を進めています. ホー ムページは全国の学校教師に情報発信するために エデュサポネットの活動紹介,若手教師が経験し. 篠塚友希野. た保護者とのかかわりエピソード等のコンテンツ. 世代が異なる教師が話し合う機会は小学校内. を考えています.図3は,ワークショップ紹介の. でも日常的にありますが,学校種が異なる教師. 動画で,イラストにナレーションをつけています.. が集まって話せる機会は少ないので,このワー. 特に若手教師や将来,教師を目指している人たち. クショップは毎回大変勉強になります.何度も. が親しみをもてるようにキャラクタを登場させ,. ワークショップに参加していますが,毎回感じ. 教師たちが気軽に安心してワークショップに参加. ることは,どの学校種でも保護者支援での悩み. して欲しいとの意図をもって製作しています.図. に共通点があるということです.そのため,同. 3のイラストの真ん中にいる人物がエデュサポ. じグループの教師同士が共感し合いながら話を. ネットのメインキャラクタである“ジュリさん”. することができます.同世代の教師同士だと,. です.ジュリさんは将来教師を目指しています.. 考え方が偏ったり話が広がっていかなかったり. また,若手教師が経験した保護者とのかかわりを. しがちですが,異世代の教師に相談することを. 紹介するエピソードは若手教師に情報的サポート. 通して,違う視点での考え方や支援の仕方を知. を提供することをねらっています.. ることができました.参加するたびに新しい発 94.

(6) 保護者支援を共に学ぶ教育者ネットワーク“エデュサポネット”の来し方行く末. 見があります.さらに,共感してもらえる仲間. ると考えます.この活動の存在が広く認知され. に聴いてもらうことで気持ちがすっきりして. ていけば,北海道内だけでなく,日本全体で教. 「明日も頑張ろう. 」 と素直に感じることができ,. 職員の現状を支え合うことができるコミュニ. モ チ ベ ー シ ョ ン が 上 が る の が, こ の ワ ー ク. ティとなっていくこともできると感じました.. ショップのすごいところだと考えます.保護者 支援だけでなく児童への関わりも含めて,他の. 倉内 明子. 教師からいただいたアドバイスは現場の実践で. 保護者支援について大学教育の中で学ぶ機会. 生きてきます.今後は幼稚園,保育園,小学校,. が少ないです.保護者支援はケースバイケース. 中学校,特別支援学校だけにとどまらず,放課. であり,様々な保護者と出会い,かかわる経験. 後等デイサービスや児童養護施設などの先生と. から体験的に学ぶ部分が多いため,経験豊富な. 話せる機会があると,嬉しいです.. 教師から若手教師が学ぶことは有意義だと考え ます.また,固定概念にとらわれない,若手教. 宮崎 世司. 師の新鮮な見方・考え方に触れることにより,. このワークショップの特徴である「世代が異. 経験豊富な教師も自分の考え方を見つめなおす. なる教師が集まること」について,大変興味深. 機会が与えられ,双方にとって有益だと考えま. くかつ意義深いものであると考えます.現場で. す.実際にワークショップに参加してみて,日々. は,学年内でその日にあった子どもや保護者へ. の保護者支援へのエネルギーやゆとりをもらえ. の対応についてはよく交流しますが,積極的に. たと感じています.近年,働き方改革によりで. これまでの経験を交流し合うことはあまりあり. きるだけ早く退勤するように促されることが多. ません.そのため,自らの経験値だけが保護者. く,同僚とゆっくり語り合う時間が取りにくく. 支援の土台となることが多いと感じています.. なっています.そのため,保護者支援の困りに. いざ未経験の事象が起きた際には,不安と緊張. ついて調べたり共有できたりする場がウェブ上. がいつも付きまとっています.そのような状況. にあれば,そこから情報を得て日々の保護者支. であるため,このワークショップに参加するこ. 援に役立てることができるのではないかと考え. とで,自分の視野が広がると共に,心にゆとり. ます.特に,郡部の小さな学校ほど相談できる. が生まれ,余裕のある保護者支援を展開するこ. 同僚が少なく,また,地域住民同士のつながり. とができていると感じています.より経験豊富. が深いがゆえに保護者や子どもへの対応が難し. な教師からの経験談は,自分の現在もっている. い状況も見受けられます.今後,オンラインで. 子や保護者への関わりに十分生かすことができ. ワークショップを開催することができれば,郡. ます.そして,若手の教師の悩みを聞くことで,. 部・離島などの教師も参加しやすく,都市部以. 学年を組んでいる後輩教師の思いに寄り添い,. 上にニーズがあると考えます.ぜひ多くの人が. 適切なアドバイスを伝えることができます.. 参加できるようなシステム(広報のしかたも含. 勤務校でも,保護者支援の共有の重要性を感. めて)を構築していただきたいです.. じ,研修を開くようになりました.近年ますま す重要となってくる「保護者支援」が気軽に学. 三井 理恵. べるワークショップは,今後更に広がりを見せ. 私達教師に求められているもの,それは,様々. るのではと思います.このワークショップを体. な問題や課題について対応を,日々懸命に模索. 験していれば,学校内での研修も円滑に進めら. しながら,目の前にいる子ども達により良い教. れ,内容や質を充実させることができます.ま. 育を提供していくことです.教師生活27年目を. た,コロナの影響により対面での交流が難しく. 迎え,先輩,後輩の教師たちがコミュニケーショ. なっている現状では,オンラインワークショッ. ンを取り合い,教育を支えていくことが求めら. プやエデュサポネットホームページによる活動. れてきているとより一層強く感じています.. が大変便利で有効に活用できる手段の一つとな. 私は,コロナ禍で教師を対象にしたあるホー 95.

(7) 学校臨床心理学研究 第18号(2020年度). ムページに出会いました.そのサイトは,教師. 教師がゆっくりと語り合うこのワークショップ. 同士が日々の実践を共有し,授業準備や学級経. は,若い教師だけでなく参加したどの年代の教. 営の疑問などが解決できるようなシステムに. 師にも得られるものが多いと考えます.. なっています.今はこのように,全国の教師が. このワークショップでは,参加者で討議した. オンラインでつながれる時代なのだと改めて実. り答えが明確に提示されたりする形は取りませ. 感しました.私達は,エディサポネットの活動. ん.しかしゆっくりと語りを聴いてもらえる時. を展開しています.ワークショップを経験して. 間は貴重であり,ワークショップ終了後には参. いく中で,この取組みを情報発信していく重要. 加者の表情が穏やかになり,「明日からまたが. 性を実感しています.それは,私自身が難しい. んばりたい」という感想がたくさん聞かれるこ. 問題に直面した際に,力になってくれる場所や. とからも,その意義は大きいものであると考え. 相談出来る窓口が必要だったからですし,同じ. ています.. ように相談したいと思っている教師が全国にい るからです.. 砂川敬惠子. 私が考えるエデュサポネットホームページは,. 様々な世代の教師と話し合いを重ねることで,. 誰もが閲覧することができるものです.それは,. 保護者支援に大切なことは,人の気持ちに意識. ①保護者支援について気軽にアクセスでき,情. を向けて,自分の意識を変えていくことだと思. 報を得て学ぶことができる,②専門家と相談が. うようになりました.小説家の童門冬二は著書. できる,③教師同士がコミュニケーションをと. 『上杉鷹山』 (1983年)で,江戸時代に活躍し. り問題を解決することができる,ものになると. た米沢藩藩主,上杉鷹山の改革について述べて. いいと考えます.私は,教師達のニーズに合っ. います.その中で,藩の3つの壁として,制度. たエデュサポネットの活動が展開されていく事. の壁,物理的な壁,意識(こころ)の壁を取り. で,子ども達により良い教育が提供できること. 上げています.特に,壊さなければならないの. を願っています.. は,意識(こころ)壁です.そのための手立て として具体的に「情報をすべて共有すること.. 浪岡 美保. 職場での検討を活発にすること.その合意を尊. 私は小学校教師の経験が32年あり,現在は教. 重すること.城内(藩中)に,愛と信頼の念を. 職を離れて教育関係の相談業務に就いています.. 回復すること.」と述べています.異世代教師. 2019年にはファシリテーター養成講座を受講し,. 連携による保護者支援を語るワークショップに. 拙いながらファシリテーターを務めました.. 参加して,私が感じていた,話題の共有,対話,. ファシリテーターとしてワークショップを進行. その合意を尊重する雰囲気に似ているように感. する際には,参加者が安心して語れる場をつく. じました.. ることを一番大切にしています.このワーク. 今年度,児童の小集団活動に「こころの健康」. ショップの最大の特徴が,何の評価もされずに. を学習する予定がありましたが,コロナ禍で実. 話を聴いてもらえる心地よさに癒やされること,. 施できませんでした.環境が整ったら,このワー. グループ内の参加者の語りを聴いて自分の経験. クショッププログラムの組立てを参考にして学. に照らして自分の感性で今後に生かす糸口をつ. 習を実施できるようにしたいです.. かむことであると考えているからです.. 私が,異世代教師連携による保護者支援を語. 私が初任の頃は,放課後職員室のストーブを. るワークショップに参加し続けているのは,自. 囲んで自然に話の輪が広がり,その中で日頃の. 分の意識(こころ)を振り返り,また保護者支. 悩みや思いを相談したり,先輩教師の経験談か. 援をがんばっていこうという前向きな気持ちに. ら学んだりすることが多かったように思います.. させてくれる機会であるからです.. そんな井戸端会議のできる時間的余裕は今の職 員室にはありません.だからこそ世代が異なる 96.

(8) 保護者支援を共に学ぶ教育者ネットワーク“エデュサポネット”の来し方行く末. 鎌田 良子. を囲んで参加するのですが,絶妙な距離感と. 保護者とのかかわりは重要なことであるので. ファシリテーターの上手な進行のおかげで,つ. すが,その一つ一つについて問題を共有し,解. いつい対話が弾みます.それぞれの教師たちの. 決する時間はとれていないのが現実です.エ. 悩みや迷い等々を切実に受け止めることができ. デュサポネットで行われている違った職場のメ. るので,自分の成功体験・失敗体験の中から,. ンバー,グループのワークショップは同じ仕事. 少しでもヒントやアドバイスになることを一生. をしている仲間の声を聴きあうという点でとて. 懸命に思い起し,その方の困り感に寄り添って. も貴重だと思います.. お伝えしようと真剣に考えさせられます.です. 学校での活用は,勤務校の新任教諭(1~3. から,若手の教師にとっては,複数の教師から. 年)研修会でワークショップを行いました.新. 自分の困りの根本を見据えたアドバイスやサ. 任教諭研修会でしたので最後に研修担当教諭の. ポートをもらうことができる場となり,中堅,. 講評の時間を設けました.新任教諭が保護者と. ベテランの教師にとっては,自分の経験を整理. 面談をする時に重要な姿勢と考え「真摯に相手. し直し,問題に対処する手法を再構成する場に. の話を聴くこと」を一番の目標にしました.勤. なっていると考えます.. 務時間の都合上,90分バージョンにしてそれぞ. そして,このような場は教育実践の真っ只中. れの経験を語り合いました.お互いの話を聴く. にいる人にこそ重要ですから,これまでの職場. という行為は大変良かったという評価でしたが,. では,若手やベテランの分け隔てなく希望者を. 新任なので具体的な答えが欲しいという希望も. 募り,参加させていただきました.そこで学ん. ありましたので,何らかの方法でそのニーズに. だ教師からは,保護者支援にかかわる学びとと. も応えられたらよいと感じました.. もに,幼稚園や中学校,特別支援学校等々,小. エデュサポネットへの期待として,小さくま. 学校の教師以外の方の経験や目の付け所,対処. とまらずに一般化して多くの仲間に活用しても. 方法が大変参考になったとの声が多々あり,学. らえる存在になって欲しいです.そして,それ. びを深めることが出来たようです.. ぞれの場で応用できるものになればと思います.. 6. 『保護者支援をともに学ぶ教育者ネット ワーク』の行く末. 例えば29学級の大規模校である現在の職場で活 用するのであれば,まずは4~5名いる学年単 位で気軽に実施してみるのもよいかと思いまし. た.それをきっかけに定期的に計画することで, これまでの活動を通して言えることは,エデュ 新しい事例の交流のみならず前回の事例の振り. サポネットの活動が参画する学校教師にとって情. 返りをする機会が得られ,自分の保護者支援を. 緒的サポートになり得ているということです.た. さらに客観的に観察する機会になります.それ. だし,情報的サポートについては先輩から後輩に. が定着したら,低学年,中学年,高学年ブロッ. “教える” “教えようとする”という行為に結び. クで,などと波及させていくというのはどうで. つく場合をどう理解するかについてディスカッ. しょうか.. ションを深める必要がありそうです.情報的サ ポートをどう理解するか,評価するかは,このサ. 氣田 幸和. ポートが提供される文脈によって異なるのかもし. 2017年度の初回から様々な学校種の若手,中. れません.. 堅,ベテランの教師たちが膝を突き合わせて,. 人工知能を中心とした情報処理システムの研究. 保護者対応やサポートにかかわる意見交換と学. を行っている堀(2013)は人が何かをできるよう. び合いの場に新たな可能性と魅力を感じ,以来, になりたいと必死になっている時に,その道の達 5回以上参加しております.. 人の行為を見たり語りを聴くことで開眼すること. 私自身は小学校の教職経験30年以上のベテラ. があるかもしれないと述べています.若い教師が. ンとして,若手や中堅の教師と「えんたくん」. 保護者とのかかわりで困難を感じなんとかしたい 97.

(9) 学校臨床心理学研究 第18号(2020年度). 引用文献 ASPINWALL, K. (1986) “Teacher Biography: the In-service Potential”, Cambridge Journal of Education, Vol.16, 210-215 保護者支援の経験交流会(2019) 異世代教師連 携による保護者支援を語るワークショップ(手 引き) 平成30年度北海道教育大学学長戦略経 費 堀浩一(2013) Polanyiのいう「傾倒」と語る ことの関係はどうなっているのでしょうか? 諏訪正樹他 一人称研究にまつわるQ&A 人. 図4 エデュサポネットの行く末. 工知能学会誌 第28巻第5号 745-753 と努力している正にその時に先輩の語りを聴くこ. JOHNSON-BAILEY, J. (2010) In ROSSITER, M.. とで,その困難を乗り越えることができる場合が. and CLARK, M. (Ed.) Narrative Perspectives. あるのではないでしょうか.つまりそれは情報的. on Adult Education: New Directions for Adult. サポートを若手教師が先輩教師から得たといえる. and Continuing Education. Willey Periodiacls,. ことになるのかもしれません.若手教師が必要と. Inc., A Wily Company(立田慶裕・岩崎久美. している時に必要な情報を提供できるようなエ. 子・金藤ふゆ子・佐藤智子・萩野亮吾訳 2012 . デュサポネットの活動を展開していきたいです. 成人のナラティヴ学習,人生の可能性を開くア. (図4参照) .そして,メンバーの叡智を結集す. プローチ 第7章 他者の側面で学ぶこと,洞 察とエンパワメントの手段 福村出版). ることで,ひとりひとりの学びが深まるようなコ. 川嶋直・中野民夫(2018) えんたくん革命,一. ミュニティづくりを進めていきたいと考えます.. 枚の段ボールがファシリテーションと対話の世. 謝 辞. 界を変える みくに出版 中 原 淳( 監 修 ) ・ 脇 本 健 弘・ 町 支 大 祐(2015) 教師の学びを科学する,データから見える若手. エデュサポネットの活動にご理解とご協力をい ただいている先生方に衷心よりお礼申し上げます.. の育成と熟達のモデル 北大路書房 中野民夫(2017) 学び合う場のつくり方,本当. そして,イラスト作成者の尾上樹里さんに深謝い. の学びへのファシリテーション 岩波書店. たします.. 小野田正利(2015) それでも親はモンスター. 附 記. じゃない,保護者との向き合い方は新たなス テージへ 学事出版. これまでの研究活動を「小学校教師の保護者支. 大武美保子(2013) 認知症から見る人間の知能. 援における変容プロセスと世代継承性に関する研. と人工知能による支援 人工知能学会誌 28巻. 究」 (平成26~29年度 科学研究費 基盤研究C). 5号 726-733. と「保護者支援を語る異世代教師たちの経験交流. ROSSITER, M. and CLARK, M. (Ed.) Narrative. 型ワークショップ開発に関する研究」 (令和元~. Perspectives on Adult Education: New. 令和3年度 科学研究費 基盤研究C) ,そして. Directions for Adult and Continuing Education.. 平成30年度北海道教育大学学長戦略経費の支援を. Willey Periodiacls, Inc., A Wily Company (立. 受け実施しています.. 田慶裕・岩崎久美子・金藤ふゆ子・佐藤智子・. 北海道教育大学倫理委員会の承認を受けていま. 萩野亮吾訳 2012 成人のナラティヴ学習,人. す(北教大研倫,20140510012019061001) .. 生の可能性を開くアプローチ 福村出版) 98.

(10) 保護者支援を共に学ぶ教育者ネットワーク“エデュサポネット”の来し方行く末. 植木克美(2017a) 第1章 熟年教師が語る「見 えない能力」の教育と評価 渡部信一編著 教 育現場の「コンピテンシー評価」 , 「見えない能 力」の評価を考える ナカニシヤ出版 植木克美(2017b) 「印象に残った保護者」と のかかわりにおける小学校教師の成長と世代継 承,熟年教師と若手教師の事例比較 教育情報 学研究 第16号 21-34 植木克美(2020) 熟達教師の「経験知」をWeb で若手教師に伝える 渡部信一編著 AI時代 の教師・授業・生きる力,これからの「教育」 を探る ミネルヴァ書房 山崎準二(2012) 教師の発達と力量形成,続・ 教師のライフコース研究 創風社. 99.

(11) 学校臨床心理学研究 第18号(2020年度). SUMMARY Past and Future of Educator Support Network for the Study of Interaction with Parents UEKI Katsumi, Special Course of Clinical Psychology and School Education,. Graduate School of Education, Hokkaido University of Education. KIDA Yukihiro, Sapporo Science Center KAMADA Ryouko, Eniwa Wako Elementary School MIYAZAKI Seizi, Sapporo Shiseikan Elementary School SHINOZUKA Yukino, Sapporo Shinko Elementary School NAMIOKA Miho, Hokkaido Government Board of Education KURAUCHI Akiko, Sapporo Hibarigaoka Elementary School SUNAGAWA Keiko, Sapporo Motomachi Elementary School MITSUI Rie, Tomakomai Higashi Elementary School. Key words : Educator support network, Interaction with Parents, Workshop. 100.

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