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異種の2量の割合として捉えられる量の割合としての意味づけ

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(1)Title. 異種の2量の割合として捉えられる量の割合としての意味づけ. Author(s). 渡会, 陽平. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 70(1): 223-232. Issue Date. 2019-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10540. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第70巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 70, No.1. 令 和 元 年 8 月 August, 2019. 異種の2量の割合として捉えられる量の割合としての意味づけ※1 渡 会 陽 平 北海道教育大学札幌校数学教育学研究室. Defining the Quantities that are Obtained as a Ratio of Two Quantities of Different Types as a Ratio WATARAI Yohei Department of Mathematics Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本稿の目的は,異種の2量の割合として捉えられる量を割合として意味づけて指導するため の学習内容及びそれを取り入れた学習内容の配列を提案することである。そのために,同種の 2量の割合及び異種の2量の割合として捉えられる量の比較の問題場面で共通して用いること のできる解法の背景にある数学的性質をG.Vergnaudの概念野理論を枠組みとして特徴づけ, その特徴づけをもとに学習内容について検討した。 その結果,同種の2量の割合及び異種の2量の割合として捉えられる量の比較の問題場面に おいて2量の関係を表現・数値化することを通して,速さを 「2量の関係を表す数」 という割 合の意味を持つ量として意味づけることのできる学習内容を提案した。また,その学習内容に は① 「2量の関係を表す数」 という割合の意味を明確にできる,②同種の2量の割合の比較の 問題場面における解法を活用できる,③速さの持つ量の性質についてよりよく理解できるとい う教育的価値があることを示した。. 1.研究意図. たりの大きさ”は 「一方の量の単位量に対応する もう一方の量の大きさ」 もしくは 「対応する2つ. “割合”は同種の2量に対してだけではなく異. の量の組」 を意味するし(渡会,2017a),その後. 種の2量に対しても用いられる用語であるが,こ. に学習する速さは既習の単位量あたりの大きさに. れまでの算数科の指導においては異種の2量の割. 基づく“単位時間あたりに進む道のり”に対応す. 合として捉えられる量が割合の側面も持つ量とし. る量として定義されてきた(渡会,2017b)。し. て意味づけられて指導されてはこなかった。具体. かしながら,近年の全国学力・学習状況調査の結. 的に言えば,異種の2量の割合として捉えられる. 果においても依然として割合の意味の理解に課題. 量の比較の問題場面において学習する“単位量あ. がある現状を鑑みると,割合と数学的に関連する. 223.

(3) 渡 会 陽 平. 学習内容においては割合とのつながりを明確にし. ができる(田端,2002)。そのため,現在の算数. て,よりいっそう割合の意味の理解を深められる. 科の指導では異種の2量の割合として捉えられる. ようにする必要があるだろう。そこで,本稿では,. 量の比較の問題場面でⓐⓑの解法を扱い,同種の. 異種の2量の割合として捉えられる量を割合の側. 2量の割合の比較の問題場面でⓒの解法を扱って. 面も持つ量として意味づけて指導することによっ. いる。このように従来の割合の比較の指導では比. て,割合の意味の理解を深めることについて検討. 較の方法に焦点が当てられているが,解法の背景. したい。. にある数学的性質に着目すれば,ⓐⓑの解法を同. 以上の問題意識から,本稿は,異種の2量の割. 種の2量の割合及び異種の2量の割合として捉え. 合として捉えられる量を割合として意味づけて指. られる量の両方の比較に用いることができるとい. 導するための学習内容及びそれを取り入れた学習. うことは,ⓐⓑの解法の背景には同種の2量の割. 内容の配列を提案することを目的とする。. 合及び異種の2量の割合として捉えられる量の両 方に対して適用できる数学的性質が存在すること. 2.研究方法 ⑴ 異種の2量の割合として捉えられる量を割合 として意味づけるための展望. を意味する。即ち,その数学的性質は同種の2量 の割合と異種の2量の割合として捉えられる量を 結びつけることができる可能性がある。 以上の理由により,本稿では同種の2量の割合. 異種の2量の割合として捉えられる量を割合の. 及び異種の2量の割合として捉えられる量の比較. 側面も持つ量として意味づけるためにはどうした. の問題場面で共通して用いることのできる解法の. らいいのか。そのための手立てとして,同種の2. 背景にある数学的性質を手がかりとして,同種の. 量の割合と関連づけて意味づけることが考えられ. 2量の割合と関連づけた異種の2量の割合として. る。つまり,同種の2量の割合を既習として,異. 捉えられる量の意味づけについて検討する。. 種の2量の割合として捉えられる量の意味を同種. ⑵ 概念野理論の枠組み. の2量の割合の意味に基づいて解釈することがで. 上述の意味づけについて検討するために,本稿. きれば,異種の2量の割合として捉えられる量を. では初等数学における数学的な概念の発達を議論. 割合として意味づけることができるだろう。しか. するためにVergnaud(1983,1988)が提案した. し,同種の2量の割合の定義は同じ種類の量に属. 概念野理論を枠組みとした理論的考察を行う※2。. する2つの測定数に対する定義であるから,異な. 概念野理論では子どもの問題解決における思考. る種類の量それぞれに属する対応した2つの測定. を 「子どもが問題を解決するために“操作”また. 数に対してその定義を適用することは通常はでき. は“一連の操作”を選ぶときに,子どもによって. ない。. 考慮される数学的な関係」 と定義される. そこで本稿では,異種の2量の割合として捉え. theorems-in-action(以下,TIAと略記する)に. られる量と同種の2量の割合を関連づけるため. よって数学的に特徴づける。そして,記述された. に,それらの比較の問題場面に着目する。異種の. TIAと目標となる数学の内容との関係に基づい. 2量の割合として捉えられる量の比較の問題場面. て,子どものTIAを目標となる数学の内容につな. はⓐ 「一方の数量を揃えて他方を比較する」 方法. げるための学習内容や指導改善についての検討が. もしくはⓑ 「一方を単位量として他方を数値化す. なされる。. る」 方法を用いて解決することができるが,同種. また,概念野理論では乗法・除法に関わる概念. の2量の割合の比較の問題場面では上記2つの解. は比例関係にある2つの測度空間M1,M2で構成. 法に加えてⓒ 「一方(全体)を1とみて他方を測. される単比例の構造(図1)によって特徴づけら. 定して数値化する」 方法を用いても解決すること. れる。図1において,c,a,bが未知数の場合に. 224.

(4) 異種の2量の割合として捉えられる量の意味づけ. それぞれ乗法,等分除,包含除の問題場面に内在. れる量の意味づけ及びその意味づけで指導するた. する構造になり,それぞれ次のような操作として. めの学習内容,そしてその学習内容を取り入れた. 説明される。. 割合の学習内容の配列について検討する。最後に,. 図2は乗法を表わしている。「×b」 はM1にお. 上記で検討した学習内容の配列で指導をした場合. いて1をbに対応させるスカラー演算子であり,. に想定される割合指導における教育的価値につい. この「×b」をM2のaに適用することでa×bとなる。. て考察する。. 3.割合の比較の問題場面におけるTIAの分析 ⑴ 一方の数量を揃えて他方を比較するTIA 【図1】. 【図2】. 例えば,「5m2に3人いる部屋と6m2に4人い る部屋のどちらが混んでいるか。」という混み具. 図3は等分除を表わしている。「÷b」 はM1に. 合を比較する問題場面において,部屋の面積を. おいてbを1に対応させるスカラー演算子であり,. 30m2に揃える場合には,「部屋の面積が5m2から. この「÷b」をM2のcに適用することでc÷bとなる。. 30m2では6倍になっているから,人数も6倍に. 図4は包含除を表わしている。「÷a」 は上行に. なれば混み具合は変わらない。」という思考によっ. おいてaを1に対応させる関数演算子であり,こ. て乗法が用いられる(図5)。即ち,既習の「一. の「÷a」を下行のcに適用することでc÷aとなる。. 方が λ 倍になれば,もう一方も λ 倍になる。」と. いう比例関係に基づいて乗法が用いられるから, この解決にはTIA. 1が働いている(図6,渡会 (2012))※3。 【図3】. 【図4】. 本稿においては,概念野理論を枠組みとして割. TIA. 1:比例関係に基づいた乗法のTIA ∀a, λ ∈ ℚ+について,f(a×λ)=f(a)×λ. 合の比較の問題場面における解決の思考を問題場 面の構造に基づいてTIAとして特徴づけ,解法の 背景にある数学的性質と同種及び異種の2量の割 合の関係を明らかにすることで,同種の2量の割. 【図5】. 【図6】. 合と関連づけた異種の2量の割合として捉えられ る量の意味づけについて検討することができると. 上記の問題解決において表面的に見られる乗法. 考えるのである。. はTIA. 1の働きによるものであるが,この解決に. ⑶ 研究方法. おいて働いているTIAはTIA. 1だけではない。即. まず,同種の2量の割合及び異種の2量の割合. ち,「面積を変化させたら,それに伴って人数を. として捉えられる量の比較の問題場面で共通して. 変化させれば混み具合は変わらない。」と判断す. 用いることのできる解法における解決の思考を. る際に働いているTIAもある。このTIAを本稿で. TIAとして記述し,TIAと同種の2量の割合及び. は図7の構造における関係TIA. 2として表す※3。. 異種の2量の割合の関係を明らかにする。次に,. TIA. 2は,単比例の構造において対応する測定. 上述で明らかにした関係に基づいて同種の2量の. 数同士の比が一定であることを意味している。こ. 割合と関連づけた異種の2量の割合として捉えら. のTIAに よ っ て,「 5m2に 3 人 い る 部 屋 」 と. 225.

(5) 渡 会 陽 平. 「30m2に18人いる部屋」 の混み具合は等しいと. この解決においても働いているTIAはTIA. 3. 判断されるのである(図8,3/5=18/30)。従っ. だけではない。即ち,一方の数量を揃える解決と. て,この解決は,TIA. 2においてb=a×λの場合. 同様に「面積を変化させたら,それに伴って人数. には,. を変化させれば混み具合は変わらない。」という. f (a) /a=f(a×λ) /(a×λ). 判断があるからTIA. 2も働いている。つまり,. となり,上式とTIA. 1により,. TIA. 2によって 「5m2に3人いる部屋」 と 「1. f (a) /a=( f(a)×λ) /(a×λ). m2あたりに0.6人いる部屋」 の混み具合は等しい. が成り立つことに基づいている。上式は分数の性. と判断されるのである(図8,3/5=0.6/1)。従っ. 質により即座に導かれる関係ではあるが,児童は. て,この解決は,TIA. 2においてb=a÷aの場合. 異種の2量の割合を分数による関係としては捉え. には,. て い な い の で, 上 式 の 関 係 を 用 い る た め に は. f(a)/a=f(a÷a)/(a÷a). TIA. 2とTIA. 1が必要になるのである。. となり,上式とTIA. 3により, f(a)/a=( f(a)÷a)/(a÷a). TIA. 2:割合を一定に保つTIA f(a) f(b)  =  ∀a, b ∈ ℚ+\{0}について, a b. が成り立つことに基づいている。 ⑶ TIA. 2と同種及び異種の2量の割合の関係 ⑴⑵において示したように,「一方の数量を揃 えて他方を比較する」 解決にはTIA. 2とTIA. 1が 働き,「一方を単位量として他方を数値化する」 解決にはTIA. 2とTIA. 3が働いている。そして, 双方の解決ではTIA. 2を前提とした上でそれぞれ. 【図7】. 【図8】. TIA. 1とTIA. 3が働いている。よって,双方の解 決の根幹にある数学的性質はTIA. 2である。. ⑵ 一方を単位量として他方を数値化するTIA. TIA. 2においてa, bとf(a),(b) f は異なる測度空. ⑴の問題場面において単位量あたりの大きさと. 間の測定数であるから,f(a)/aとf(b)/bは異種の. 2. 「5 して 「1m あたりの人数」 を求める場合には, 2. 2. 2量の割合と見ることができる。つまり,TIA. 2. m で3人だから,1m あたりの人数を求めるた. は「異種の2量の割合を一定に保つ性質」である。. めには3人を5等分すればいい。 」という思考に. しかしながら,同種の2量の割合の比較の問題場. よって除法が用いられる(図9)。即ち,既習の「一. 面では状況が異なってくる。例えば,「ボールを. 方がa等分になれば,もう一方もa等分になる。」. 5回投げて3回ゴールに入った人と6回投げて4. という比例関係に基づいて等分除が用いられるか. 回入った人ではどちらのほうがよく入っている. ら,この解決にはTIA. 3が働いている(図10,渡. か。」 というシュートの入り具合を比較する問題. ※3. 会(2012)) 。. 場面において,投げた回数を30回に揃える場合に. TIA. 3:比例関係に基づいた等分除のTIA ∀a ∈ ℚ+\{0}について,f(a÷a)=f(a)÷a. は,「投げた回数を変化させたら,それに伴って 入った回数を変化させれば入り具合は変わらな い。」,「投げた回数を6倍したら入った回数も6 倍すればいい。」という思考によって問題が解決 される(図11)。 この場合,解決における2つの測度空間は 「投 げた回数」 と 「入った回数」 であり,ともに 「回. 【図9】. 226. 【図10】. 数」 の測度空間であるから3/5と18/30はともに同.

(6) 異種の2量の割合として捉えられる量の意味づけ. 意味づけておけば,異種の2量の割合として捉え られる量の比較の問題場面において関数比を同種 の2量の割合として解釈することができなくと 【図11】. も,同種の2量の割合の比較の問題場面において 関数比が割合を意味していたことから,異種の2. ※4. 。一般に単比例の構造. 量の割合として捉えられる量の比較の問題場面に. の問題場面(図7)ではb/aとf(b)/f(a)が同種の. おいても関数比が割合を意味していると推察する. 2量の割合でf (a)/aとf (b)/bが異種の2量の割合. ことができる。そこで,この関数比を“単位量あ. であるが,上述のように同種の2量の割合の比較. たりの大きさ”として意味づければ,単位量あた. の問題場面ではb/aとf(b)/f(a)だけでなくf(a)/a. りの大きさは割合を意味していると見ることがで. とf (b) /bも同種の2量の割合になるのである。つ. きる。従って,この単位量あたりの大きさによっ. まり,この場合にはTIA. 2は 「同種の2量の割合. て異種の2量の割合として捉えられる量を定義す. を一定に保つ性質」 になる。. れば,異種の2量の割合として捉えられる量が割. このようにTIA. 2は問題場面によって一定に保. 合として意味づけられたことになる。. つ 対 象 と な る 割 合 が 異 な っ て く る。 そ こ で,. 以下では,具体的な学習展開を想定して,上記. TIA. 2の意味を明確にするために2つの測度空間. の意味づけが可能であるのかについて検討する。. 間の対応する測定数の比を“関数比”とすれば,. ① 異種の2量の関係の表現の仕方. TIA. 2は 「関数比を一定に保つ性質」 と言い換え. まず同種の2量の割合の比較の問題場面におい. ることができる。そして,TIA. 2における関数比. て2.⑴で挙げたⓐⓑの解法を用いて解決する。. は異種の2量の割合として捉えられる量の比較の. 例えば図11の問題場面においては,問題文に提示. 問題場面では異種の2量の割合になり,同種の2. されている事象は 「5回投げて3回入った」 こと. 量の割合の比較の問題場面では同種の2量の割合. であるが,解決においては 「6回以降を投げた場. になる。. 合も同じ入り具合で入る」 という仮定を前提とし. 種の2量の割合である. て「30回投げたら18回入る」ことを想定している。. 4.異種の2量の割合として捉えられる量を 割合として意味づけるための学習内容につ いての検討 ⑴ 異種の2量の割合として捉えられる量の割合 としての意味づけ. この想定における 「同じ入り具合で入る」 という ことは 「投げた回数と入った回数の関係が保たれ る」 ということであり,その関係を数学の言葉で 表現すれば,倍や 「(比べる量)÷(基にする量)」 による割合の定義を用いて 「入った回数は投げた 回数の0.6(倍)である」 と表せる。. 3.において示したTIA. 2と同種の2量の割合. 次に,異種の2量の割合として捉えられる量の. 及び異種の2量の割合の関係より,同種の2量の. 比較の問題場面においてもⓐⓑの解法を用いて解. 割合の比較の問題場面においてⅰTIA. 2の顕在. 決する。例えば図5の問題場面においては,問題. 化,ⅱTIA. 2における関数比の数値化,ⅲ数値化. 文に提示されている事象は 「5m2に3人いる」. した関数比の意味づけをし,それをもとにして異. 部屋であるが,解決においては 「部屋の広さが異. 種の2量の割合として捉えられる量の比較の問題. なっていても混み具合が同じ」 部屋である. 場面においても上記のⅰⅱⅲを行うことで,異種. 「30m2に18人いる」 部屋を想定している。この. の2量の割合として捉えられる量を割合として意. 想定における 「混み具合が同じ」 ということは 「. 味づけられると考える。つまり,同種の2量の割. 部屋の広さとそこにいる人数の関係が保たれてい. 合の比較の問題場面において関数比を割合として. る」 ということである。しかしながら,この関係. 227.

(7) 渡 会 陽 平. は同種の2量の割合の比較の場合のように倍や. よって解決しても同様の結果を得られる。よっ. (比べる量) 「 ÷ (基にする量)」 による割合の定義. て,異種の2量の比の表現を用いて解決した結果. を用いて表現することができない。. とそれを用いないで解決した結果が一致したこと. このように同種の2量の割合の表現だけでは異. から,異種の2量に対して比の表現を用いても既. 種の2量の割合として捉えられる量の比較の問題. 習の数学との不整合が生じないと判断し,この表. 場面における2量の関係を表現することができな. 現を認めることができる。. い。そこで,本稿では異種の2量の関係の表現方. ② 異種の2量の関係の数値化とその意味づけ. 法として比の表現p:qに着目する。算数科におい. 異種の2量の関係を数学的に表現することがで. てp:qの表現は同種の2量の割合の表し方の1つ. きたので,さらにこの関係における関数比の数値. として指導されているが,図12の単比例の構造に. 化と意味づけをする。2量の関係p:qは比の値p/. おいて,. qとして1つの数で表すことができる。同種の2. a1:b1=a2:b2 ⇔ a1/b1=a2/b2 ⇔a1/a2=b1/b2. . 量の割合の比較の問題場面における2量の関係. . 「(入った回数):(投げた回数)=3:5」 について. ⇔a1:a2=b1:b2. は,比の値を除法3÷5の商として求められ,除法. が成り立つから,構造的には異種の2量の割合の. と商の意味を倍や割合によって説明できた上で2. 表し方としても用いることができる。. 量の関係を 「入った回数は投げた回数の0.6(倍) である」 と割合を用いて表すことができる。一方 で,異種の2量の割合として捉えられる量の比較 の問題場面における2量の関係 「(面積):(人数) =3:5」 については,形式的に比の値を除法3÷5. 【図12】. の商として求められるが,除法とその商の意味を 説明することはできない。. もちろん同種の2量の関係に対する表現である. そこで,異種の2量の比の値を割合として解釈. から,異種の2量の関係に対してそのまま適用す. するために予め同種の2量の比p:qの比の値を除. ることはできないが,同種の2量の割合の比較の. 法の商としてではなく分数表現 p/qで定義し,そ. 問題場面(図11)において予め同種の2量の関係. れが同種の2量の割合を表すことの解釈をしてお. を 「 (入った回数):(投げた回数)=3:5」 と表現. いたとする。そうすれば,異種の2量の関係 p:. しておけば,同様の解法を用いることのできる異. qを表す数を除法を経由することなくp/qと表すこ. 種の2量の割合として捉えられる量の比較の問題. とができ,同種の2量の割合の比較の問題場面か. 場面(図5)においても2量の関係を 「(人数):. らの類推によりp/qが割合を表していると推察す. (面積) =3:5」 と表現したくなる。そこで,この. ることができる。そして,p/qの小数値化は分数. 欲求に基づいて異種の2量の関係に対しても比の. の性質を用いて行う。例えば,3/5=(3÷5)/(5÷. 表現 p:qを用いることができると仮設をおいて. 5)=0.6/1=0.6である。この小数値化は 「一方を. ※5. 。そうすると,例えば「3人に20枚の紙. 単位量として他方を数値化する」 方法に対応する. を配るとき,21人に配るためには何枚の紙が必要. から用いられる除法は等分除として説明できる。. か。 」という問題場面に対して異種の2量の比の. そして,求められた割合0.6の意味を 「一方を単. 表現を用いて解決するならば,(人数):(枚数)に. 位量として他方を数値化する」 方法との対応を根. ついて3:5=21:□と表すことができ,既習の比. 拠として 「面積と人数の関係を単位面積あたりの. の計算により□=35と求めることができる。ま. 人数として表した数」として定める。そうすれば,. た,比の表現を用いないで既習の比例的推論に. 単位量あたりの大きさは従来の指導における 「一. みる. 228.

(8) 異種の2量の割合として捉えられる量の意味づけ. 方の量の単位量に対応するもう一方の量の大きさ. の割合の単元の導入ではなく速さの学習の直前に. 」 や 「対応する2つの量の組」 という意味だけで. 扱うことと,同種の2量の割合の比較及び速さの. はなく 「2量の関係を表す数」 という割合として. 比較の問題場面において関数比を扱うことであ. の意味も持つ。従って,異種の2量の割合として. る。このように提案した理由を以下で述べる。. 捉えられる量を2量の関係を表すものとしての単. ① 割合の比較の問題場面における学習内容. 位量あたりの大きさによって定義すれば,それは. 同種の2量の割合の単元の導入では割合の比較. 2量の関係を表すという割合の意味を持つ量とい. の問題場面を扱わないように配置した理由は2つ. うことになる。. ある。第一の理由は 「割合の定義」 と 「割合によ. ⑵ 割合の学習内容の配列. る関数比の解釈」 をそれぞれしっかりと理解でき. ⑴では比,同種の2量の割合の比較,異種の2. るようにするためである。⑴で示した意味づけは. 量の割合として捉えられる量の比較の順での学習. 割合の比較の問題場面における関数比の解釈と意. を想定することで,異種の2量の割合として捉え. 味づけに基づいているので,割合の比較の問題場. られる量を割合の意味も持つ量として意味づけ. 面で関数比を扱うことは確定とする。この場合,. た。この意味づけを算数科のカリキュラムに取り. 従来通りの問題場面の配置で本稿の意味づけを行. 入れるために以下の学習内容の配列を提案する。. うとすると,同種の2量の割合の単元の導入にお. ⅰ 異種の2量の割合として捉えられる量の比. いて割合の定義とその定義による関数比の解釈を. 較:この問題場面において,ⓐ 「一方の数量を. しなければならなくなる。当然,1つの問題場面. 揃えて他方を比較する」 方法とⓑ 「一方を単位. において2つの事柄を扱おうとすれば,学習すべ. 量として他方を数値化する」 方法を学習する。. きことの焦点が曖昧になるという問題点がまず1. この学習における単位量あたりの大きさは割合. つあるが,この場合はそれだけではない。即ち,. を意味しない。. 同種の2量の割合は1つの測度空間内の2つの測. ⅱ 同種の2量の割合の定義:導入では同種の2. 定数の比である“スカラー比”に対して定義され. 量の割合の比較を扱わないで“割合”の定義を. るので,同種の2量の割合の単元の導入でスカ. する。導入の後は従来の内容を学習する。. ラー比と関数比の両方を同種の2量の割合として. ⅲ 比:同種の2量の割合の表現 p:qとその比 の値 p/qの意味について学習する。 ⅳ 同種の2量の割合の比較:この問題場面にお. 扱うことになってしまう。従って,同種の2量の 割合の定義がスカラー比を指す概念なのか関数比 を指す概念なのかが不明瞭になってしまうという. いて,同種の2量間の関係をp:q及びp/qを用. 問題点もあるのである。. いて表現し,同種の2量の割合で解釈する。. 第二の理由は同種の2量の割合の単元の学習内. ⅴ 速さの比較と定義:速さの比較の問題場面に. 容はスカラー比としての同種の2量の割合につい. おいて,道のりと時間の関係を比の表現p:qを. てだからである。同種の2量の割合の単元では割. 用いて表し,比の値 p/qを“単位時間あたりに. 合の定義や百分率・歩合,割合を用いた問題解決. 進む道のり”として意味づける。そして,“単. を学習するが,これらで用いられる割合は全てス. 位時間あたりに進む道のり”によって速さを定. カラー比としての同種の2量の割合である。従っ. 義する。この学習における単位量あたりの大き. て,同種の2量の割合の単元の導入で関数比を. さ(単位時間あたりに進む道のり)はⅳの問題. 扱ったとしてもその後の単元内での学習につなが. 場面からの類推により2量の関係を表すという. らないので,敢えて導入で扱う必要がないのであ. 割合の意味を持つ。. る。. ⅰⅲは従来通りの学習内容である。本稿におけ. 以上の理由から,同種の2量の割合の単元の導. る提案は,同種の2量の割合の比較を同種の2量. 入では割合の比較を扱わず,割合の比較を通して. 229.

(9) 渡 会 陽 平. 関数比に着目する学習内容をⅳⅴにまとめた。. いうことが分かるというよさがある。よって,こ. ② 同種の2量の割合の単元の導入. のような割合で表現することのよさについて議論. 同種の2量の割合の単元の導入で割合の比較を. することのできる問題場面も同種の2量の割合の. 扱わないのなら,どのような問題場面を導入で. 単元の導入において扱う価値がある。. 扱ったらいいのか。高橋・田畑・市川(2014)は. . 同じ割合に焦点を当てた問題場面を導入で扱って いるが,それは本稿における関数比としての同種 の2量の割合に対応するので,割合の比較と同様 に本稿で提案する意味づけのための導入としては. 【図13】. 【図14】. 適切ではない。 一方で教科書を見てみると,現在は同種の2量. 例えば,「Aさんは図13の形をした畑の斜線の. の割合の単元の導入ではどの教科書でも割合の比. 部分を1時間かけて耕した。どれだけ耕したと言. 較が扱われているが,過去の教科書では必ずしも. えるだろう。」という問題場面を導入で扱えば,. そうではなく,問題場面がなく割合の定義そのも. 図14のように畑を等分割することで 「全体の8/19. のを扱う導入や何倍かを求める問題場面で割合の. を耕した」 と表現して解決することができる。そ. 定義をする導入など,様々な導入が試みられてい. して,「1時間で全体の8/19を耕した」 という割. ※6. 。そのような変遷を経て,現在の導入にお. 合を用いた表現と,例えば 「1時間で32m2を耕. いて割合の比較が扱われているということは,割. した」 のような耕した面積を具体的に示した表現. 合の比較を扱ったほうが教育的に価値があると判. の2つを比較することで,割合で表現することの. 断されたからだろう。その理由を推察すると,他. よさや,割合での表現の限界といった割合の表現. の導入に比べて割合の比較には「問題解決に割合. の特徴について理解できるだろう。. る. を用いることができるから割合の有用性を実感す ることができる」というよさがあったからだと考 える。従って,割合の有用性を感じられる問題場 面ならば割合の比較の代替になりうるだろう。. 5.提案した学習内容の割合指導における教 育的価値についての考察. そこで, 『割合の根源的な意味は 「部分が全体. 4.において提案した異種の2量の割合として. のうちのどれだけを占めているのかを表した数」. 捉えられる量を割合として意味づけるための学習. であるから,割合を 「(部分の量)/(全体の量) 」. 内容を取り入れた割合の学習内容の配列で指導を. で定義すべきである』という渡会(2014)の主張. した場合に想定される割合指導における教育的価. に着目する。渡会(2014)が指摘する割合の意味. 値として,以下の3点を挙げる。. が割合の根源的な意味であるならば,その意味で. ⑴ 「2量の関係を表す数」 という割合の意味の. の割合を用いることで割合のよさを感じられる日. 明確化. 常場面が存在することになる。例えば,「仕事が. 4.において提案した学習内容では,同種の2. 1/3くらい片付いた。」という表現は日常生活にお. 量の関係を表した数を同種の2量の割合によって. いて当たり前に使われるが,この表現は既に片付. 解釈したことに基づいて,異種の2量の関係を表. いた仕事が全体のうちのどれだけを占めているの. した数が単位量あたりの大きさとして意味づけら. かを割合を用いて表している。そして,この表現. れる。即ち,2量の関係を表すということと同種. を用いることによって残っている仕事は全体の. の2量の割合や単位量あたりの大きさが結びつけ. 2/3であり,今まで片付けた仕事の2倍の量を片. られて意味づけられることによって,割合が 「2. 付けることで全ての仕事を終えることができると. 量の関係を表した数」 という意味を持つというこ. 230.

(10) 異種の2量の割合として捉えられる量の意味づけ. とを明確にすることができる。. のとき,第1試合と第2試合を合わせたシュート. ⑵ 割合の比較の問題場面における解法の活用. の成功率が80%とはならないことは判断できるだ. 現在の学習内容では,異種の2量の割合として. ろう。そこで,第1試合と第2試合を合わせた. 捉えられる量の比較の問題場面において2.⑴で. シュートの成功率の正しい値について考えれば,. 挙げたⓐⓑの解法を扱い,同種の2量の割合の比. 投げた回数や入った回数といった他の要素も考慮. 較の問題場面においてⓒの解法を扱っている。こ. しなければ正しいシュートの成功率を求めること. の場合,同種の2量の割合の比較の問題場面でも. が で き な い こ と が 分 か る。 よ っ て,(3/10)+. ⓐⓑの解法を用いて解決することができるが,そ. (5/10)=(8/10)のように割合だけを足し合わせる. れはⓐⓑの解法が同種の2量の割合の比較の問題. ことは不適切であり,やってはいけないことだと. 場面にも適用できることを確認する意味しかな. 結論づけることができる。従って,速さも割合で. く,それらが同種の2量の割合の定義に結びつく. あるから,同じ方向に進む2つのものが合併した. わけではない。. ときの速さはそれぞれの速さを足し合わせただけ. 一方で,本稿で提案した学習内容においては,. では求められず,正しい速さを求めるためには他. 同種の2量の割合の比較におけるⓐⓑによる解決. の要素も考慮する必要があると説明することがで. や比p:qを用いた解決は関数比一定の性質の顕在. きる。. 化につながる。また,ⓒによる解決や 「(部分の. このように,速さを割合として意味づけること. 量) (全体の量)」 の定義に基づく割合を用いた解 /. で速さの持つ量の性質について説明することがで. 決は関数比一定の性質における関数比の解釈につ. きるようになる。つまり,速さについてのよりよ. ながる。即ち,割合の比較のために用いられる解. い理解につながるのである。. 法が,この問題場面を扱うことの目的である割合 による関数比の解釈のために活用できるのである。 ⑶ 速さの持つ量の性質についての理解. 6.まとめと今後の課題. 算数教育において速さは合併による加法が成り. 本稿では,異種の2量の割合として捉えられる. 立たない量である内包量に分類されている。例え. 量を割合として意味づけて指導するための学習内. ば,同じ方向に時速30kmで進む車と時速50kmで. 容として,同種の2量の割合の比較の問題場面及. 進む車がいて,2台を連結させたとしても時速. び異種の2量の割合として捉えられる量の比較の. 80kmにはならないことは児童も日常の経験から. 問題場面において2量の関係を表現・数値化する. 判断できるだろう。しかしながら,従来の速さの. ことを通して,速さを 「2量の関係を表す数」 と. 定義では 「時速30kmは1時間に30km進む速さで,. いう割合の意味を持つ量として意味づけることの. 速さは (道のり)÷(時間)で求められるから,時速. できる学習内容を提案した。また,その学習内容. 30kmは30÷1と表せる。同様に時速50kmは50÷1. を算数科のカリキュラムに取り入れることには,. と表せる。よって,時速30km+時速50kmは, (30. ① 「2量の関係を表す数」 という割合の意味を明. ÷1)+ (50÷1)=(80÷1)より時速80kmである。」. 確にできる,②同種の2量の割合の比較の問題場. というこの状況についての推論がなぜ成り立たな. 面における解法を活用できる,③速さの持つ量の. いのかを説明することはできないだろう。. 性質についてよりよく理解できるという3つの教. 一方で,速さを割合によって意味づけた場合に. 育的価値があることを示した。. は,合併による速さの加法が成り立たない理由を. 今後の課題は,従来の学習内容からの変更点と. 同種の2量の割合の加法を考えることで説明する. なる同種の2量の割合の単元の導入,同種の2量. ことができる。例えば,第1試合のシュートの成. の割合の比較及び速さの比較の問題場面における. 功率が30%で第2試合のシュートの成功率が50%. 具体的な指導展開について実証的に検討すること. 231.

(11) 渡 会 陽 平. である。. 杉山吉茂(1986) .公理的方法に基づく算数・数学の学習 指導.東洋館出版社. 高橋丈夫・田端輝彦・市川啓(2014) .割合の導入時にお ける比例関係の顕在化に関する一考察 ―同じ割合の数. 註. 対を作ることを通して―.日本数学教育学会誌.第96巻.. 1.本稿は平成28年11月に開催された日本数学教育学会 第49回秋期研究大会において口頭発表した内容につい. 第4号.4-15. 田端輝彦(2002).同種の2量の割合と異種の2量の割合. て加筆・修正したものである。(渡会陽平(2016).異. の指導順序に関する考察.日本数学教育学会誌.第84巻.. 種の2量の割合として捉えられる量の割合としての意. 第8号.22-29.. 味づけ.日本数学教育学会 第49回秋期研究大会 発表集. 渡会陽平(2012).小学校算数科における乗除法の意味に. 録.203-206.). 関する学習過程の分析 ―G.Vergnaudの概念野理論を. 2.Vergnaudは概念野理論において 「測度空間」 や 「数. 枠組みとして―.日本数学教育学会誌 数学教育学論究.. 学的な関係」 といった用語を用いているが,これらは 数学において厳密に定義された意味での 「測度空間」. 第93巻.Vol.97・98.3-16. 渡会陽平(2014).小学校算数科における倍と割合の意味. や 「関係」 の意味で用いられているわけではない。例. に関する学習過程の分析 ―G.Vergnaudの概念野理論. えば,測度空間は実質的には単に半ベクトル空間であ. を手がかりとして―.日本数学教育学会誌.第96巻.. ると述べられている(Vergnaud,1983)。数学におけ. 論究臨時増刊.217-224.. る意味との誤解を生じうるが,本稿はVergnaudの理論. 渡会陽平(2017a).異種の2量の割合として捉えられる. を枠組みとして分析を行う立場から,Vegnaudの用語. 量を表す表現“あたり”の用い方に関する研究.日本. の用い方に倣って議論を進める。. 教材学会 第29回研究発表大会 研究発表要旨集.106-. +. 3.TIAの記述におけるℚ は0以上の有理数全体の集 合,ℚ+\{0}は0より大きい有理数全体の集合,f は測. 107. 渡会陽平(2017b).小学校算数科における表現“Aあた. 度空間M1からM2への写像(具体的には比例の関数)で. りB”の意味に関する研究.北海道教育大学紀要 教育. ある。. 科学編 第68巻 第1号.137-149.. 4.Vergnaud(1983)の枠組みでは単比例の構造は比例 関係を前提とする構造として定義される。よって,こ の場合のようにM1とM2が同種の量であり,かつ単位 (助数詞)が同じであっても,M1とM2の比例関係を前 提として解決しているから単比例の構造で表現するこ とができる。 5.「仮設をおく」 とは,ある原理・法則が成り立つかど うかわからないが,その原理・法則が成り立つと仮定 して,仮定した原理・法則が成り立つという前提のも とで考えを進めていくことである(杉山,1986)。 6.本稿では,昭和30年発行から平成26年検定までの学 校図書,教育出版,啓林館,東京書籍,大日本図書, 大阪書籍,日本文教出版の算数科教科書を参考にした。 紙幅の都合により全てを列記することは省略する。. 引用・参考文献 Vergnaud, G. (1983). Multiplicative structures. In R. Lesh & M. Landau (Eds.), Acquisition of mathematics concepts and processes, New York; Tokyo: Academic Press, 127-175. Vergnaud, G. (1988). Multiplicative structures. In J. Hiebert & M. Behr (Eds.), Number concepts and operations in the middle grades, Hillsdale: Lawrence Erlbaun Associates, 141-161.. 232. . (札幌校特任講師).

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参照

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