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「学習指導力」に関する学生意識の質的検討 : 釧路校「教育フィールド研究」の実践を通じた学生の認識の発展

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(1)Title. 「学習指導力」に関する学生意識の質的検討 : 釧路校「教育フィールド 研究」の実践を通じた学生の認識の発展. Author(s). 栢野, 彰秀; 玉井, 康之; 赤田, 裕喜彦; 西出, 勉; 近江, 道郎; 倉賀 野, 志郎; 山瀬, 一史; 村上, 知子; 小林, 宏明. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 61(2): 9-22. Issue Date. 2011-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2340. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第61巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.61,No.2. 平成23年2 月 February,2011. 「学習指導力」に関する学生意識の質的検討 一釧路校「教育フィールド研究」の実践を通じた学生の認識の発展−. 相野 彰秀・玉井 康之・赤田裕喜彦・西出 勉*・近江 道郎 倉賀野志郎・山瀬 一史・村上 知子*・小林 宏明**. 北海道教育大学大学院高度教育実践専攻 *北海道教育大学釧路枚 *伊達市立関内小学枚. QualitativeAnalysisoftheConsciousnessoftheStudent. forthe“MethodsandTechniquesofInstructionSkills” −DevelopmentoftheRecognltlOnOfKushiroStudentsbythe“EducationalFieldStudy”−. KAYANOAkihide,TAMAIYasuyuki,AKADAYukihiko,NISHIDETsutomu*,OUMIMichirou KURAGANOShirou,YAMASEKazushi,MURAKAMITomoko*andKOBAYASHIHiroaki* AdvancedTeacherProfessionalDevelopmentPrograms,GraduateSchoolofEducation,HokkaidoUniversityofEducation. *KushiroCampus,HokkaidoUniversityofEducation 3B*. sekinaiElementarySehool. 概 要 北海道教育大学釧路校の学部学生の「学習指導力」の捉え方の変化と発展を捉えた。とりわけ,「教育フィー ルド研究」における実体験をもとにどのような印象で捉え,その捉えを「教育フィールド研究」の実践を通 して学習指導をどのようにしたら,どうなったと考えているのか,この点を明らかにすることを本研究の目 的とした。. 学生が書いた「学習指導力」に関する文章に質的検討を加えた結果,次の諸点が明らかになった。 第一に,第1学年時において,「難しい」,「理解しやすい」などの感性的な認識であったものが,第2学 年時では「対応」,「心がける」,「作成」という主体的な行動概念が多く出てきた。すなわち,第1学年時に. おける傍観的認識から,第2学年時には教師の立場に立った関わりの中での認識に発展した。さらに第3学 年になると,個々の子どもの多様性や状況の違いを認識するという第1学年時での段階を踏まえながらも, 「発間」,「教材」,「説明」 ,「机間指導」など,全体的指導と個別的指導を複合的に捉えられるようになった。. 第二に,自己認識において,第1学年及び第2学年の「教育フィールド研究」で学んだことを,第3学年 段階ではこれまでに学んだことを相対化して捉えられるようになり,指導場面の捉え方が柔軟になる。そし.

(3) 相野 彰秀・玉井 康之・赤田裕喜彦・西出 勉・近江 道郎・倉賀野志郎・山瀬 一史・村上 知子・小林 宏明 て,そこから捉えられる課題に対する方法論に具体性や多様性が現れるよう,認識が発展した。. 教師としての基本的・実践的な指導力の内容を, はじめに. 具体的で客観的な指標として提示し,これを手が. 北海道教育大学釧路校は2006年4月の大学再編. かりとして学生自身が臨床場面において具体的な. を機に,今の学校や地域社会が求める実践的な指. 課題を見いだし,自らの教育活動を改善するスキ. 導力を持つ小学校教師の育成を図るための科目. ルを身につけさせようと意図されている2)。. 「教育フィールド研究」を教育課程に位置づけた。 「教育フィールド研究」は教育実習の充実のため. では,「教育実践改善チェックリスト」を「教 育フィールド研究」の振り返りのために用いてい. に多様な形での児童との関わりや教師として必要. る学生は,具体的で客観的な指標として碇示され. とされる基礎的な資質の育成と形成を目指す実習. た教師としての基本的・実践的な指導力の内容を. 科目である。学部1,2年生全員に原則として履. どのように捉え,自らの具体的な課題をどのよう. 修が義務付けられ,毎週金曜日に学校現場に出向. に見いだし,改善しているのであろうか。これら. き一日中実習を行う。. の点を明らかにすると,釧路校「教育フィールド. 「教育フィールド研究」では,教師として必要. 研究」の実践を通じた学生の認識の発展がより明. と考えられる7つの能力(「学習指導力」,「生徒. 確にできる。このことでより理論と実践を往還さ. 指導力」,「教育相談力」,「学級経営力」,「地域教. せた学部の「教育フィールド研究」と教育実習と. 育連携力」,「協働遂行力」,「臨床的実践力」)が257. のあるべき姿が構想できるのではないか。この点. の行動目標として表されたチェックリスト(「教. が,筆者らが本研究に取り組んだ第一の問題意識. 育実践改善チェックリスト」と名づけられている). である。. が活用されている1)。これを用いて学生自身が「教. 本研究を進める際,システムとしての教育実習. 育フィールド研究」や「主免実習」を省察し,自. と「教育フィールド研究」の実践体系とその制度. らの課題を明らかにし,教師としての実践的な力. 的有効性を踏まえた上で,さらに学生の目線から. 量形成が図られている。. 教育効果に分析・検討を加える。その際には,個々. 第1,2学年時に「教育フィールド研究」の履. の学生には当然,性格・興味関心・力量差がある. 修を終えた学生は,学枚における教育活動全体を. ために,それらを個別的(質的)かつ総体的(量. 傭撤し,大学で学んだ知識と学校における指導が. 的)な分析が必要となる。. 表裏一体の関係にあると認識しつつある成果が現. これまでの教師教育研究では,アンケートなど. れている。加えて,「教育フィールド研究」を履. の大量意識調査から多変数の解析を数量的に実証. 修した第一期生の2010年度北海道・札幌市公立学. する場合が比較的多かった。一方それに対して,. 校教員(小学校教諭)の登録率は,受験者総数に. 個々の学生の成長モデルケースや困難の克服過程. 対して32.5%であった。この割合は,「教育フィー. 分析などの,エスノグラフイや個人史などの研究. ルド研究」が課されていない前年度の登録率に対. 方法も取り入れられてきた。. してプラス8.8ポイントの上昇となっている。 このことは,理論(大学における講義)と実践 (学校現場における「教育フィールド研究」)を. これらの双方とも重要な研究であるが,それら の双方の利点を取り入れなければならないと筆者 らは考え,1年次から3年次までの発達の意識調. 同時並行的に学ばせる北海道教育大学釧路佼の教. 査を行い,さらに,選択方式のアンケートではな. 育課程に基づく実践の成果であると考えられる。. く,個々の自由記述のみの調査データに分析を加. ところで,「教育実践改善チェックリスト」では,. 10. えた。これらの自由記述式のデータを大量に,か.

(4) 「学習指導力」に関する学生意識の質的検討. つ1年次から3年次までの時系列的に集めること. したがって,第1学年は2009年度当初からの約. により,量的調査と質的調査の両方をある程度統. 2ケ月半,第2学年は2008年度の第1学年時一年. 一させることができると考えたのである。この点. 間に加え2009年度には約2ケ月半,第3学年は主. が,筆者らが本研究に取り組んだ今一つの問題意. 免実習の直前かつ2007年度,2008年度の2ケ年間. 識である。. の「教育フィールド研究」の実体験を有する学生. このような自由記述式アンケートを数値化する. を対象とした実態調査となる。なお,有効な回答. ような統一的な方法であるために,量的調査法か. を行った学生数は,第1学年174名,第2学年149. ら見ても,質的調査法から見ても,不十分さは残. 名,第3学年171名,合計494名であった。. るが,逆にある程度質と量の両方を同時に分析す ることができる。このような観点から,分析記述 も質量統一の観点から分析を進めて行く。. 上述した問題意識から,北海道教育大学釧路校. 2.意識調査の質的検討 (1)概要. 「学習指導力」に記載された全53項目のチェッ. の学部学生は,「教育フィールド研究」における. クリストに対して書き出された文章記述の数は. 実体験を通して「学習指導力」をどのような印象. 570であった。学年別の内訳は,第1学年166,第. で捉え,その捉えを「教育フィールド研究」の実. 2学年162,第3学年242である。. 践を通して学習指導をどのようにしたら,どう. 意識調査の分析に当たっては,「学習指導力」. なったと考えているのか,この点を「教育実践改. のチェックリスト項目に対して書き出された大量. 善チェックリスト」に記載された教師として必要. の文章記述の意味内容を計算機で解析して,「学. と考えられる能力の観点から明らかにすることを. 習指導力」を学生がどのように捉え,その捉えを. 本研究の目的とした。. もとに「教育フィールド研究」においてどのよう. 本稿は,紙幅の都合により「教育実践改善チェッ. に試行し,その結果をどのように考えたのか,に. クリスト」を構成する教師として必要と考えられ. 関する知見を見いだした。計算機で解析するため. る諸能力のうち,「学習指導力」のみを対象とし. のソフトウエアは,ジャストシステム社製日本語. て分析検討を加えた報告である。. テキストマイニングソフトウエア「トラスティア R.2」を用いた。. 分析項目に関しては,ソフトウエアによる多次 Ⅰ.研究の方法. 元尺度構成法によって自動的に解析される。多次. 1.意識調査の実施. 元尺度構成法は,対象間の関連性を表すデータを. 2009年7月中旬に,北海道教育大学釧路校第1,. 分析する手法である。距離的データを用いて,デー. 2,3学年全員に対して,次の要領で意識調査を. タに潜む距離構造が2次元配置の対応分析図に散. 実施した。. 布図として描かれる。これによって,類似した対. ① 「教育実践改善チェックリスト」に記載され. 象が近くに,そうでないものが遠くに配置(マッ. た「学習指導力」に関する53のチェックリスト. ピング)される3)。. 項目に対し,これまでの「教育フィールド研究」 での実践経験を踏まえて,学生がチェックリス ト項目に即した具体的な行動や子どもへ働きか ける場面などが記述できる項目を選ばせる。. ② 選び出したチェックリスト項目それぞれにつ. (2)分析項目4) 1)感性分析. 感性分析は,学生が「学習指導力」をどのよう. な印象でとらえているかを知るために実施され. いて,学生が行った行動や働きかけを文章で記. る。文章記述中の形容詞句と名詞句の係り受け関. 述させる。. 係に着目して解析が行われ,形容詞句の発現頻度. 11.

(5) 相野 彰秀・玉井 康之・赤田裕喜彦・西出 勉・近江 道郎・倉賀野志郎・山瀬 一史・村上 知子・小林 宏明. 順にそれらに対応する名詞句と文章記述が示され. 3)現象分析. 現象分析は,学生が学習指導を行ったら何が起. る。この文章記述には,どの学年の学生による記. こったかを知るために実施される。文章記述中の. 述であるかも示される。. 形容詞句と名詞句の係り受け関係とそれらを書 き出した学年の対応関係の解析も行われ,対応分. 名詞句と動詞句の係り受け関係に着目して解析が 行われる。 名詞句と動詞句の係り受け関係とそれらを書き. 析図に表される。これを見ることによって,対象. 出した学年の対応関係の解析も行われ,対応分析. 語句と書き出した学年間との関係が分かる。. 図に表される。これを見ることによって,対象語 句と書き出した学年間との関係が分かる。. 2)行動分析. 行動分析は,学生が学習指導をする際に何をし たいのかを知るために実施される。文章記述中の 動詞句と名詞句の係り受け関係に着目して解析が. Ⅱ.分析結果と考察. 行われ,動詞句の発現頻度順にそれらに対応する. 1.感性分析. 名詞句と文章記述が示される。この文章記述には,. 図1には,感性分析に関する対応分析図が示さ. どの学年の学年による記述かも示される。. れている。. 図1には,学習指導に対してどのような印象を. 動詞句と名詞句の係り受け関係とそれらを書き. 出した学年の対応関係の解析も行われ,対応分析. 学生が持っているかに関する知見を得るために,. 図に表される。これを見ることによって,対象語. 印象を表す形容詞句のラベルがつけられた点と学. 句と書き出した学年間との関係が分かる。. 年別のラベルがつけられた点が図上に示されてい る。すなわち,各学年が示されたラベルとその周 辺に示される形容詞句ラベルがその学年の持つ学. 円田ロー m門丁. 1ココ −0月コ ー0.41 0□0. 0ヰ1. 図1 感性分析に関する対応分析図. 12. 0月コ 1ココ.

(6) 「学習指導力」に関する学生意識の質的検討. 習指導力に対する印象の特徴となる。. や教育の特性に気づかなかったが,立場を替えて みたとき,子ども理解に多くの労力を費やす必要 があることに気づくのである。. (1)第1学年の特徴 図1中の第1学年ラベルの周辺には,「様々」, 「安全」,「難しい」,「正しい」,「分かりやすい」. などの形容詞句が見られる。これら5つの形容詞 句に書き出された文章記述例が表1に示されてい. (2)第2学年の特徴 図1中の第2学年ラベルの周辺には,「得意」, 「明確」,「上手」,「理解しやすい」,「早い」など. の形容詞句が見られる。これら5つの形容詞句に. る。. 表1より,第1学年は学習指導力に対しておお. 書き出された文章記述例が表2に示されている。. むね次の①∼④の印象を持っていることが分か. 表2より,第2学年は学習指導力に対しておお. る。①様々な児童に対する指導。②子どもの安全. むね次の①∼⑥の印象を持っていることが分か. 管理が必要。③子どもとの関わり方が難しい。④. る。①自分の得意な分野を教える。②子どもの得. 正しく,分かりやすい指導が必要。. 意な分野を大切にする。③自らの学習指導力に関. これら①∼④のうち,①,③は一般的かつ抽象. する課題を明確にする。④子どもの質問に上手に. 的印象。②,④は,学習指導方法とその際の留意. 答える。⑤子どもが理解しやすい授業をする。⑥. 点に関する印象と捉えられる。すなわち第1学年. 困り感を持っている子供に早く気づく。. は,指導方法と指導の際の留意点に着目して一般 的印象で学習指導を捉えていることが分かる。. これらの①∼⑥のうち①と④は,学生自らの学. 習指導力の資質,能力に関する印象と捉えられる。. 第1学年時においては,個々の子どもと接する. 一方,残る②,③,⑤,⑥は,子どもに対する指. 機会が多いために,様々な現象や問題にぶつかる。. 導の場面が中心の印象である。すなわち第2学年. ここで初めて教育活動の複雑さや困難さにふれる. は,子どもに対する指導の場面に加え,自らの学. のである。同時に,教育活動は一般論だけでは捉. 習指導力の資質,能力の観点からの印象で学習指. えられない一面があることも併せて自覚するので. 導力を捉えていることが分かる。. ある。つまり,自分が子どものとき,教師の配慮. 第1学年時においては,子どもとのかかわりな. 表1各形容詞旬ラベルに分類された第1学年の文章記述例 係り受け関係. 文 章 記 述. 形容詞句. にある名詞句. 様々. 児童,考え など. 安全. 児童,場面 ・学校での生活・授業などのすべての場面において生徒の安全を第一に考える必要があ など ることをフィールド研究の学習を通して学んだ。. 難しい. 正しい. 分かり やすい. 言葉, 関わり方 など. 質問,手順,. ・子どもたちはさまざまな子がいるので,その子たちに合った指導ができるようにした いと思います。 ・フィールド先で算数をわかりやすく教えられなかったからわかりやすく教えたい。 様々な考えをもっている児童たちの幅を広げていきたい。. ・難しい言葉を使ったり,自分の中ですでに当たり前になっている知識や用語をそのま ま使うと子どもは更に混乱してしまう。 ・学校の中での生活全般で,大学の授業で学習したことを生かしたい。フィールドで子 どもたちとの関わり方が難しかった。 ・1年生の場合,教師の字をよく見ているから正しく書く必要がある。 ・子どもから受けた質問に対して正しい日本語できちんと答える。あわてずに冷静に答. 書き方 など える。 ・「ふ」の正しい書き方を教えてあげた。 ・どこが分からないのか何と言えば分かってもらえるのかを考え,分かりやすい指導, 応答をする。 ・一番最初の国語の授業の時に,後で見た時に分かりやすいノートの取り方を教える。. 13.

(7) 相野 彰秀・玉井 康之・赤田裕喜彦・西出 勉・近江 道郎・倉賀野志郎・山瀬 一史・村上 知子・小林 宏明 表2 各形容詞旬ラベルに分類された第2学年の文章記述例. 形容詞旬 係り受け関係 にある名詞句 得意. 児童,分野 など. ・自分の得意な教科を教えるとき。. ・授業中いつもは学力が低く目立たない子をその子が得意な分野で輝けるように支援す る。児童をしっかり見て何に関心があるか把握することが大切。 ・これが出来れば,日々成長していく。常に自分をちゃんと評価できたら,課題も明確 になり,教師としての力も磨かれていく。 ・算数のテストで問題文の意味がわからないの質問に上手く返すことが出来なかった。 ・児童の質問に上手に応えられるのはもちろんだが,加えて理解ができるように例題も 出せる。. 明確 課題. 上手. 文 章 記 述. 質問,児童 など. 理解しや い 授業 など ・授業の中で児童が色々と思考して,授業の内容を理解しやすい様な発言を引き出す。 す 早い 児童 など ・因っている児童に早く気づきアドバイスをする。. ど現象面に目を向ける傾向にあった。しかし,第. むね次の①∼④の印象を持っていることが分か. 2学年時では,第1学年時での経験を生かし,自. る。①子どもを丁寧に指導する。②子どもに見や. らの働きかけによって子どもとの関係や指導効果. すい字や板書計画を行う。③子どもに適切な支援. が異なることに気づいていく。すなわち,同じ指. が必要。④子どもにとっての学習情報が必要。 これらは全て,子どもにとってどのような学習. 導を行っても子どもによってその効果は必ずしも. 同じではないことに気づくのである。このことは. 指導が必要かという観点からの印象と捉えられ. 将来,確かな子ども理解に通じる第一歩である。. る。すなわち,第3学年は,子どもに対する指導. 一方で,学校における指導体制やその指導方法に. の場面を中心に学習指導力の印象を捉えているこ. 目を向けたとき,自分の力量不足なども徐々に認. とが分かる。. 識していくようになる。. 第3学年時では,「必要」,「大事」という言葉. からも分かるように,自分に課せられた問題を意 識するようになってくる。第2学年時では「難し. (3)第3学年の特徴 図1中の第3学年ラベルの周辺には,「丁寧」, 「見やすい」,「必要」,「大事」などの形容詞句が. い」と感じる段階であるが,第3学年時では他の 人の方法や情報をいろいろ取り入れようとしてい. 見られる。これら4つの形容詞旬に書き出された. るために,「必要」という認識が出ている。ある. 文章記述例が表3に示されている。. 意味では,課題が意識されたために,あらゆる情. 表3より,第3学年は学習指導力に対しておお. 報が改善のための取り入れるべき方法として見え. 表3 各形容詞句ラベルに分類された第3学年の文章記述例. 形容詞旬 係り受け関係 にある名詞句 丁寧. 見やすい. 指導,チェッ. クなど 字,板書計画 など. 必要 支援 など 大事 情報. 14. 文 章 記 述. ・因っている子がいたら適切に声をかけ,分かるまで丁寧に指導することができる。 ・授業のなかで一人一人に目を配る,また授業で把握できなかったことは,ノートやプ リントを丁寧にチェックする。 ・児童生徒が見やすい字で大きくはっきりとした字を書くことができる。 ・見やすく,わかりやすい板書計画を立てる事はもちろんだが,実際の黒板を貸して頂 き,常に予習と復習を行っていきたい。. ・学習面や生活面において特別に支援が必要な児童がいないかを知り,指導教員と相談. しながら適切な指導を行う。. ・児童にとって,黒板は大事な情報であるため,見やすい字,書き順をを大切にしてい く。.

(8) 「学習指導力」に関する学生意識の質的検討. てきたともいえよう。これらの積極性は,将来教. 2.行動分析. 図2には,行動分析に関する対応分析図が示さ. 師を目指す上で最も重要な要素のひとつである。. れている。. 図2には,学習指導の際に学生が何をしたいの. (4)各学年の賃寺徴の比較. これまでに述べた第1∼3学年の特徴から,第. かについて,行動を表す動詞句のラベルがつけら. 1学年の一般的かつ抽象的印象から,第2学年に. れた点と学年別のラベルがつけられた点が分析図. なると学生自らの資質,能力及び子どもの指導場. 上に示されている。すなわち,各学年が示された. 面に関する印象に変容する。第3学年になると,. ラベルとその周辺に示された動詞句ラベルがその. 目前に迫った主免実習の場を想定し,子どもに対. 学年の学生が何をしたいのかについての特徴とな. する指導の場面で学習指導を捉えるように変化し. る。. ているといえる。. 逆に言えば,第1学年時で全体状況を捉え,第. (1)第1学年の賃寺徴. 2学年以降では個々の課題をそれだけで見るので. 図2中の第1学年ラベルの周辺には,「入る」,. はなく,個々の課題を互いに連関させてとらえる. 「とる」,「行く」などの動詞句が見られる。これ ら3つの動詞句に書き出された文章記述例が表4. ことができるようになっているといえる。. また全体的な状況は,ある意味では評論的な立. に示されている。. 表4より,第1学年は学習指導力に関して子ど. 場として解釈できるが,その全体状況を踏まえた 上でも,第2学年,第3学年では,自らの関わり. もに応じた指導を行ったことは書いているが,そ. 方や指導責任を考えるようになり,傍観的な認識. の他の多くは教育フィールド研究中に実体験した. から,自分自身の取り組むべき課題を捉える主体. 事実が善かれている。ずなわち第1学年は,ある. 的な認識に発展しているといえる。. 視点を持って学習指導力を捉えているとはまだい えない状態と考えられる。. ⊂コ ⊂∃ ⊂=l. m. 亡り ⊂=l. 冠雪・芸干 ロ主唱 −OJ∃6 −0=:ヨ. 0工10. ロココ. 0月6. ロ月9. 図2 行動分析に関する対応分析図. 15.

(9) 相野 彰秀・玉井 康之・赤田裕喜彦・西出 勉・近江 道郎・倉賀野志郎・山瀬 一史・村上 知子・小林 宏明 表4 各動詞句ラベルに分類された第1学年の文章記述例 係り受け関係 にある名詞句. 動詞句. 授業,6年生, 学級など. 入る. メモ,コミュ. とる. ニケーション など. 行く. もと,タイミ ング など. 文 章 記 述. ・身近な話題から授業に入っていき生徒中心,全体が参加できるような授業展開をする。 ・私はフィールドで6年生に入ったが,国語で横書きノートを使っていたりマス目の大. きなノートを使っている人がいたので機会があれば指摘していきたい。 ・フィールド先で2年生の学級に入っているのですが,ものさしの読み方を教えるのに. かなりてこずってしまいました。 ・フィールドでの授業参観はいつも子どもの様子や先生の指導法をメモにとっていま す。 ・自分は音楽研究室に所属しているので音楽を通じて子どもとコミュニケーションを とったり楽しませたりしたい。 ・授業中,分からないで悩んでいる生徒のもとへ行き,一人一人の理解度に合った指導 をする。 ・自分は附中に行っていて,たまに生徒の机間指導のようなことを手伝わせてもらうこ とがあり,出来るだけ教えたいのですが,実際どのタイミングで行っていいのか分か りません。. 第1学年時は,法則的に指導方法を捉えるとい. むね次のような行動をした,あるいはすればよい. うよりは,まず目の前に居る子どもの指導に関. と考えていることが分かる。①授業に用いる言葉. わって,これまでに身につけていた教育の常識に. や教材の吟味。②授業中に困り感をもつ子どもの. 基づいて試行錯誤を繰り返すという段階である。. 把握。③授業観察の気づきをメモに取る。. ここでは,自分が小・中・高校において習得した. これらの①∼③のうち①,②は,子どもや自ら. 教科の知識だけでは,子どもの指導はできないこ. に対してこれからどのような行動をとればよいか. とに気づく段階である。第1学年時は,視点と課. に関する記述と捉えられる。一方③は,「教育. 題を持った教育活動ができている段階ではない。. フィールド研究」において自らがどのような行動. そのため,高校までのように,教育を深く捉えな. をしたかに関する記述と捉えられる。すなわち第. いで教育活動を捉えていたことの安易さに気づく. 2学年は,これまでの教育フィールド研究におい. 過程である。. て自らが取った行動に加え,子どもに対する指導 場面においてどのような行動を取ればよいかを考 えているといえる。. (2)第2学年の特徴 図2中の第2学年ラベルの周辺には,「用いる」,. 「気付く」などの動詞句が見られる。これら2つ. 第2学年時になると,随所に困り感のある子ど もに目が向くようになるが,これは子どもの困り. の動詞句に書き出された文章記述例が表5に示さ. 感という側面と同時に,それをうまく指導できな. れている。. い学生自身の困り感の表れでもある。第2学年時. 表5より,第2学年は学習指導力に関しておお. の段階は,第1学年時の段階に比べてより自ら子. 表5 各動詞句ラベルに分類された第2学年の文章記述例 動詞句. 係り受け関係 にある名詞句. 文 章 記 述. ・なるべく簡潔に要点をまとめ,学年相応の言葉を用いて説明する。 用いる. 気付く. 16. 言葉,教材 など. ・現場の教師の授業を観察しているときに,児童の興味・関心を引き寄せるための工夫 にはどのような方法があるか。また,どのように教材を用いて指導していけばよいの. かを自分で考えながら観察すること。 児童,メモ ・授業で因っている児童に対し気付いて,机間指導を行い,分かるまで指導する など. ・フィールド実習の時,気付いたらすぐにメモがとれるように常にメモ帳をもっている。.

(10) 「学習指導力」に関する学生意識の質的検討. どもに関わったり,指導したりする場面が増えて. て,どのような行動を取ればよいかを考えている. くる。そのために,評論するよりも,実践場面に. といえる。. おいてその指導の難しさを捉えることができたと. 第3学年時は,子どもの指導に関わって困り感. いうことである。したがって,第2学年時の段階. を持つ第2学年時の段階から,ある程度法則的な. で困り感が出てくるということは,教師教育の発. ものを見つけ出し,それに気づくことによってよ. 達段階としても,通過しなければならない課題で. り普遍的な指導方法と,自ら関わるべき指導課題. ある。. へと認識が広がっていく。すなわちある程度,見. 通しを持った関わり方をすれば良いという認識が 生まれてくる。このような認識を持つことで自分. (3)第3学年の特徴 図2中の第3学年ラベルの周辺には,「支援」, 「観察」,「心がける」,「伝える」などの動詞句が. 見られる。これら4つの動詞句に書き出された文 章記述例が表6に示されている。. の成長も実感できて,教育実践の多様性がより面 白くなっていく段階である。. また第3学年時では,普遍的な指導方法の認識 ができるために,指導場面を想定して,予測を立. 表6より,第3学年は学習指導力に関しておお. てていくようになる。教育実践は,必ずしも予測. むね次の①∼④のような行動をとればよいと考え. 通りに行かないものであるが,ある程度の見通し. ていることが分かる。①子どものニーズに応じた. を持つことができるようになると,失敗感や困り. 支援。②授業中における子どもの観察。③授業中. 感も少なくなっていく。. に心がける具体策の立案。④子どもに応じた伝え. (4)各学年の特徴の比較. これまでに述べた第1∼3学年の特徴から,第. 方の具体策の立案。 これら(手∼④は全て,学習指導に対して子ども. 1学年の教育フィールド研究における学習指導場. や自らに対してこれからどのような行動をとれば. 面の自らの動きや働きかけに対する認識の深まり. よいかに関する記述と捉えられる。すなわち第3. をまとめると,自らがした,あるいはこれからす. 学年は,子どもに対する実際の指導場面を想定し. るという捉えから,第2学年になるとこれまでの. 表6 各動詞句ラベルに分類された第3学年の文章記述例 動詞句. 係り受け関係 にある名詞句. 文 章 記. 述. ニーズ,指導 ・一人ひとりの子どもがどこでつまずいているのか,何が理解できるのかを知り,その など ために教師としてどのように指導,支援が出来るのかを考え,実践していくこと。 ・授業の中で,生徒一人ひとりの反応,表情などをしっかりと観察し,理解できていな 授業,表情 い子にはよりわかりやすく伝えられるよう努力する。 観察 ・授業を観察し,担任の先生の働きかけに対して,子どもがどのような反応をするのか を知り,研究授業での参考にすることができる。 ・授業などを行う人,自身が楽しくない顔をしていては,児童もおもしろくない。どん なに自信のない授業でも明るさは忘れないように心掛ける。 心がける 授業 など ・クラスの前に出ると緊張して早口になったり,話がまとまらなくなってしまいます。 けれど,前に出て,児童に話しかける時こそ,みんなの顔を見て,落ち着いて,伝え たいことをきちんと話せるよう心掛けたいです。 ・大学の講義による各教科の指導法をフィールド研究などで実際に子ども達に使う時。 自分では,簡単にわかるものでも,児童に伝えるとなると,とても難しいものでした。 たまたまそのときは,その児童は分かってくれましたが,幅広い児童に指導していく 児童,相手 伝える には,それに応じた我々の知識や技能などがとても必要になってくることを改めて分 など かりました。 ・児童生徒の前で話をする際には,相手にしっかり伝えるためゆっくり・はきはき・わ かりやすく話す。 支援. 17.

(11) 相野 彰秀・玉井 康之・赤田裕喜彦・西出 勉・近江 道郎・倉賀野志郎・山瀬 一史・村上 知子・小林 宏明. 教育フィールド研究で取った行動に加え,子ども. 的な課題に関わることによって,課題の大きさに. に対する指導場面においてどのような行動を取れ. よって自信を喪失することなく,段階的な発展を. ばよいかが考えられるように変化しているといえ. 遂げるということである。. る。第3学年になると,目前に迫った主免実習お ける実際の指導場面を想定して,子どもに対して,. 3.現象分析. あるいは自らがどのような行動を取ればよいかが. 図3には,現象分析に関する対応分析図が示さ. 考えられるようになったといえる。. れている。. 図3には,学生が学習指導を行ったら何が起. これまでも見てきたように,第1学年時の観察 から入ることによって,全体像が見えてくる。学. こったかに関する知見を得るために,行動の対象. 生は,第1学年時で大状況をとらえたうえで,第. を表す名詞句のラベルがつけられた点と各学年の. 2学年から第3学年にかけて小状況をとらえてい. ラベルがつけられた点が図上に示されている。す. くことになるが,これは第1学年時からの「教育. なわち,各学年が示されたラベルとその周辺に示. フィールド研究」で観察から入ることが,全体状. される名詞句ラベルがその学年の持つ学習指導を. 況をとらえさせる条件になっていることを意味し. 行ったら何が起こったのかに関する特徴となる。. ている。また第1学年から第3学年まで観察から,. 関わり中での困難に入り,それに対して想定した. (1)第1学年の賃寺徴. 行動を考えるというように,傍観的認識から主体. 図3中の第1学年ラベルの周辺には,「人」,. 的認識に発展している。このことは,一般的な認. 「フィールド研究」,「活動」,「算数」などの名詞. 識の発展でもあるが,それは過度な主体的な関わ. 句が見られる。これら4つの名詞句に書き出され. りによって負担感を感じることなく,適度な関わ. た文章記述例が表7に示されている。. 表7より,第1学年では,子どもに対する適切. りで持って徐々に困難を克服していくという周辺. 参加論のプロセスを意味している。いきなり主体. な指導が生じていると捉えてもいるが,その他の. ルド研究 ●勢野意舐 ノ㌧. ===≡・−・. ●答え. ⊂:⊃. ⊂∃ ⊂=l. ⊂=l. 亡勺 ⊂=l. ロ唱千 田印干. 0月0. −0月0. −0ヱ〕0. 0□0. 図3 現象分析に関する対応分析図. 18. 0工〕0. 0月0. 0左10.

(12) 「学習指導力」に関する学生意識の質的検討 表7 各名詞句ラベルに分類された第1学年の文章記述例 名詞句. 人. フィール. 係り受け関係 にある動詞句 いる など. 行く,ふりか. 文 章 記. 述. ・授業中に因っている人がいたら自ら話しかけ適切な指導をする。 ・私はフィールドで6年生に入ったが,国語で横書きノートを使っていたりマス目の大 きなノートを使っている人がいたので機会があれば指摘していきたい。 ・私がフィールドで行っている小学校ではほとんど作業ばかりで授業見学もさせてもら えないので授業補助をしてみたい。. える など. ・フィールドのメールやふり返り活動で自己評価をしている。あらためて自分を見つめ ド 直すことの重要さがわかった。 ・子どもとしっかり向き合い分かるまで真剣に指導する。フィールドで算数を教えた。 活動 行う など ・研究室の活動で授業起こしを行ったが,再現できるような記録を作りたいと思った。 ・子どもとしっかり向き合い分かるまで真剣に指導する。フィールドで算数を教えた。 教える,分か ・フィールドの時に算数の問題が分からない子がいてその子が理解できるまで教えてあ 算数 らないなど げた。. 多くは教育フィールド研究中に実体験したことに. てきたわけではなかったので,その難しさを感じ. よると捉えられる。すなわち第1学年は,指導対. たことによる。これがまず最初の大きな刺激とな. 象の明確化と指導技術の面からも学習指導に生じ. るのである。. る現象を捉える傾向は高くはないと考えられる。. 第1学年時は,「教育フィールド研究」の経験 を踏まえ,子どもの現象を捉えているが,それは. (2)第2学年の特徴 図3中の第2学年ラベルの周辺には,「話」,「仕. 「教育フィールド研究」の経験が,極めてカル. 方」,「説明」,「積極的」,「様子」などの名詞句が. チャーショックのような刺激を与えていることに. 見られる。これら5つの名詞句に書き出された文. 他ならない。「人」という概念が多く出てくるこ. 章記述例が表8に示されている。. とも,それまで教員を志望してきたが,一人一人. の子どもの様子を捉えて,教師の教育活動を眺め. 表8より,第2学年ではおおむね次の①∼③の 点が学習指導力に関して生じる現象と捉えている. 表8 各名詞句ラベルに分類された第2学年の文章記述例 名詞句. 係り受け関係 にある動詞句. 話. 聞く,伝える など. する,変える 仕方. 説明. など. 応じる, 用いる など. 積極的 行う,みる など 様子 見る など. 文 章 記. 述. ・担任の先生の話を聞くよう,声かけをする。 ・わかりやすく話を伝えることができるように,普段からわかりやすい会話を心がける。 わかりやすい会話をする人の話にはよく耳を傾けどのような話し方をしているのか注 目する。 ・その子の習熟度に応じて説明の仕方を変える。分からなければ基礎からわかりやすく 説明する。 ・発間の仕方はワークシートにしたり,選択肢にしたり,クイズ形式やフラッシュカー ドなどの工夫をしたいです。 ・その子の習熟度に応じて説明の仕方を変える。分からかナれば基礎からわかりやすく 説明する。 ・なるべく簡潔に要点をまとめ,学年相応の言葉を用いて説明する。 ・授業に入らせてもらえる機会が多いので,これはいつも意識している。積極的に見て 回り,わからない子に教えるのはもちろん,できている子をほめてのばそうという努 力もしている。 ・普段から,クラスでの様子をよく見て,一人一人どんなことに興味があるかを把握す る。日常でのその子との会話などで。. 19.

(13) 相野 彰秀・玉井 康之・赤田裕喜彦・西出 勉・近江 道郎・倉賀野志郎・山瀬 一史・村上 知子・小林 宏明. といえる。①子どもに分かりやすい話。②子ども. 点が学習指導力に関して生じる現象と捉えている. に応じた可変的な説明。③子どもの様子の積極的. といえる。①十分な教材研究。②子どもに目を向. 観察。. けた指導。③授業中の机間指導。④十分な指導時. これら①∼③は,指導対象の明確化と指導技術. 間の確保。. に関する記述と捉えられる。すなわち第2学年は,. これら①∼④のうち,②,③は指導対象の明確. 子どもに対する実際の指導場面を記述していると. 化と指導技術に関する記述と捉えられる。①,④. いえる。. は,学習指導に当たっての必要条件と捉えられる。. 第2学年時は,子どもに分かりやすい話という. すなわち第3学年は,学習指導に当たっての前碇. ことからも分かるように,教科を中心に指導技術. と子どもに対する実際の指導場面を現象として捉. の向上を意識するようになる。とりわけ第2学年. えているといえる。. 時は,大学においても,教科の知識や教科教育指. 第3学年時は,第2学年時での教科の指導の困. 導法を学んでいる。そこで,その教科の知識は,. 難性を踏まえた上で,子どもの状況にあった教材. 子どもの状況に応じて応用していかなければ,現. の工夫を考えている。さらに,個々の状況によっ. 実の子どもに通じないこと,すなわち,指導でき. ては指導に時間のかかる子どももたくさんいると. る教材にならないということも感じ取っている。. いう現実を踏まえた指導課題を意識している。一. このように指導対象の状況と指導技術が見えて来. 方で,指導方法や指導技術という側面と併せて「指. れば来るほど,ある意味では自分自身の困難な状. 導時間時数の確保」という避けて通れない課題な. 況や自己課題にも直面する状況となる。. どへの対応も考えなければならない。第1学年時 の全体的な状況を経て,第2学年時の個々の学習. (3)第3学年の特徴. 指導の困難さを経て,最後に第3学年時では,個々. 図3中の第3学年ラベルの周辺には,「教材」, 「目」,「机間指導」,「時間」などの名詞句が見ら. の子どもの状況を踏まえた全体の指導課題へと, 認識が発展していることが分かる。. れる。これら4つの名詞句に書き出された文章記 述例が表9に示されている。. (4)各学年の特徴の比較. これまでに述べた第1∼3学年の特徴から,第. 表9より,第3学年ではおおむね次の①∼④の. 表9 各名詞句ラベルに分類された第3学年の文章記述例 名詞句. 教材. 係り受け関係. 文 章 記 述. にある動詞句. 使う,用意,. ・どんな教材を使えば児童の学習意欲を高める事ができるのか考え,事前にしっかり準 備することができる. 。 作成 など ・教材研究に取り組み,児童が興味関心を持てるような授業案を考える。また導入の部 分で使える教材を考え,授業に入り込みやすくする。. 目. 配る,向ける など. 机間指導 行う など. 時間. −ご(1. とる,つかう など. ・練習問題を取り入れる,机間巡視を行うなど,児童の様子に目を配り,つまずいてい る子に対しては,一緒に,どこでつまずいているのかを考え,それに応じて説明を迫. 加していく。あるいは,一段階前へ戻る。. ・授業中の机間指導などを通して,普段から児童一人一人の学習状況に目を配れるよう こころがける。. ・授業中には,机間指導を行い,児童一人ひとりが授業内容をどのように理解している か把握する。. ・机間指導を積極的に行う。授業中,子ども達が考える時間を多くとり,その際,子ど もの様子・習熟度を観て,子どもに適した方法で授業を行う。 ・時間をうまくつかい,分からない子に分かる子が教える形をとったり工夫して指導す ることができる。.

(14) 「学習指導力」に関する学生意識の質的検討. 1学年の「教育フィールド研究」における観察事. を踏まえながらも,「発間」,「教材」,「説明」,「机. 実が生じる現象という捉えから,第2学年になる. 間指導」など,全体的指導と個別的指導を複合的. と子どもに対する実際の指導場面における指導対. に捉えるようになった。. 象の明確化と指導技術に関する現象が捉えられは. また自己認識においては,第1学年及び第2学. じめるように変容しているといえる。第3学年に. 年時の「教育フィールド研究」で学んだことと,. なると,子どもに対する実際の指導場面だけでは. 第3学年時で学んだことを相対化して捉えるよう. なく,学習指導に当たっての前碇条件に関する現. になっており,指導場面の捉え方が柔軟かつ多様. 象も捉えられるように変容しているといえる。. な方法に認識が発展している。. このように観察から入っている捉え方は,ある. 学習指導力といっても,教育(教科)内容に関す. 意味では評論家として勝手気ままに実践をとらえ. る指導力や教育方法に関する指導力など様々な側. ることになるが,観察による自由な評価が,全体. 面が存在する。従来は,教育内容や教育方法に関. 的な状況と多面性を捉える条件となる。その上で. する講義を大学で聴くだけに終わっていたので,. 子どもの指導に関わる中で,子どもの学習到達度. 大学で学ぶ理論と現場の学校で行われている実践. を踏まえていない教科指導は,教科教育にならな. との一致点や差異点を学生の段階で感知できてい. いということも認識されている。そしてその指導. なかった。そのため,大学で学ぶ理論と教育現場. の壁にぶつかる中で,指導内容や指導方法を検討. で行われる実践が遊離したものとして捉えられ,. し,子どもの認識にあった教材を考えていくとい. 理論の重要性が必ずしも認識されていなかった。. う主体的な教師の実践的指導力の課題に観点が. しかし,釧路校タイプの「教育フィールド研究」. 移っていくということである。. を履修する学生は,大学で学んだ理論を一旦自分 なりに解釈し,それに基づく視点による教師の学 習指導及び子どもの姿の観察を「教育フィールド. おわりに. 研究」において実体験するため,教育実習が行わ. 「教育実践改善チェックリスト」を構成する教 師として必要と考えられる能力のうち「教育 フィールド研究」における実体験をもとに「学習. れる第3学年において先述したような認識の変化 がなされると考えられる。. 研究開始当初筆者らは,教師として必要な能力. 指導力」をどのような印象で捉え,その捉えを「教. のうち「学習指導力」に関する学生の捉えを分析・. 育フィールド研究」の実践を通して学習指導をど. 検討するだけで,「教育フィールド研究」のあり. のようにしたら,どうなったと考えているのか,. 方にまで論考できるとは全く考えていなかった。. に関する学生が書き出した文章に質的検討を加え. すなわち,大学における講義と同時並行的に毎週. た結果,釧路校の学生は学年が上がるにつれて,. 一回一日中現場の小学校に出向き,実習を継続的. 次のように認識が変化することが明らかになっ. に行う釧路校タイプの「教育フィールド研究」は,. た。. 学生に実践的指導力をつけるための極めて質の高. 第1学年時において,典型的な「難しい」,「理. 解しやすい」という意味では,いずれも感性的な 認識であ. ったものが,第2学年時では「対応」,「心. い教育が行われているといえる。. これまでのことから,教師に必要と考えられる 能力に対する学生の捉えの特徴に分析・検討を加. がける」,「作成」という主体的な行動概念が多く. えただけで,釧路校の行っている「教育フィール. 出てくる。それだけ傍観的認識から,教師の立場. ド研究」の有効性にまで踏み込んで論考できる予. に立った関わりの中での認識に発展している。さ. 期せぬ成果も得られた。しかし本ノ稿においては,. らに第3学年になると,第1学年時での個々の子. 教師に必要と考えられる諸能力のうち「学習指導. どもの多様性や状況の違いを認識するという段階. 力」に対する学生の捉えの特徴を明らかにできた. 21.

(15) 相野 彰秀・玉井 康之・赤田裕喜彦・西出 勉・近江 道郎・倉賀野志郎・山漸 一史・村上 知子・小林 宏明. だけである。今後,残る諸能力に対する学生の捉 えの特徴を明らかにする課題が残された。. 付記. 本研究の一部は,平成22年度科学研究費補助金 (基盤研究(C),課題番号21530784,研究代表者. 赤田裕喜彦)の資金援助によって行われている。. 註 1)北海道教育大学:『学び続け自己を高める教師をめ ざして』,2006.. 2)同上書,p.1,2006. 3)松村真宏,三浦麻子:『人文・社会科学のためのテ. キストマイニング』,pp.68−75,2009,誠信書房. 4)塚本条一:『授業改善を改善せよ』,pp.123−142,2006, ジャストシステム.. 5)図1における原点は、3つの各学年を示す学年ラベ ルの重心が示されている。各形容詞旬ラベルの縦軸及 び横軸の座標は,各形容詞旬ラベルの寄与率をもとに, 原点を中心にして相対的に示されている。図2及び3. も同様である。. (相野 彰秀 教職大学院釧路校担当教授) (玉井 康之 教職大学院釧路校担当教授) (赤田裕喜彦 教職大学院釧路校担当教授) (西出 勉 北海道教育大学釧路校教授) (近江 道郎 教職大学院釧路校担当教授) (倉賀野志郎 教職大学院釧路校担当教授) (山瀬 一史 教職大学院釧路校担当教授) (村上 知子 北海道教育大学釧路校教授) (小林 宏明 伊達市立関内小学校長). ?2.

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