東北地域への映画(映像)事業の継続的誘致のための
経済効果と課題に関する調査
は じ め に
近年、東北において撮影された映画には、平成 19 年と 20 年にぞれぞれ日本アカデミー 賞最優秀作品賞に選ばれた「フラガール」(第 30 回)や「東京タワー オカンとボクと、 時々、オトン」(第31 回)などがあり、映像資源としての東北への注目度は高まっている。 また、「たそがれ清兵衛」をはじめとした一連の藤沢周平作品の映画化などにより、東北の 歴史、風土、文化が全国的に再認識されつつある。 映画(映像)事業の受け入れは、撮影時のスタッフの移動費や宿泊費などが地元に投下 されるのを始め、オープンセットを制作した場合にはその制作費が、また、映画(映像) 公開後には撮影地が観光資源になるなど地元へさまざまな経済効果が生じることとなる。 また、オープンセットを残した場合、観光資源としての活用のほかに、これを利用した次 の映画(映像)の撮影誘致も大いに期待されるところである。さらに、撮影地を含む近隣 の観光資源との連携や、撮影受け入れに伴う地元の支援活動から、地域の活性化につなが ることも期待できる。 本報告書は、現時点で映画(映像)事業の誘致に取り組んでいる自治体や関係諸団体、 及び民間組織だけでなく、これから映画(映像)事業の誘致に取り組むもうとしている方々 にとっても、できるだけその取り組みを行っていく上での参考書となるよう、期待を込め て作成した。東北における映画(映像)事業の誘致を推進するための環境整備と誘致・支 援を通じた地域の活性化にも寄与することができれば幸いである。 なお、調査の実施及び本報告書の作成にあたり、水鳥川座長を始めとする検討委員の皆 様には、数多くの貴重なご意見をいただくとともに、熱心に議論していただいた。 また、県及び市町村、関係諸団体、映画(映像)関連企業の皆様には各種アンケート調 査やヒアリングに快く応じていただいた。 この場をお借りして、各位のご協力に深く感謝申し上げる次第である。 平成20 年 3 月 経済産業省 東北経済産業局 産業部 コンテンツ産業支援室− 目 次 −
第 1 章 調査の概要... 1 1 本調査の目的... 1 2 本調査の実施体制 ... 2 第 2 章 東北における映画ロケ実績と経済効果 ... 3 1 東北における映画ロケの実績 ... 3 2 映画ロケ受け入れの経済効果・社会効果の考え方 ... 5 (1) 映画製作の流れと地域の関わり ... 5 (2) 映画ロケ受け入れの経済効果・社会効果... 8 3 映画ロケ受け入れの経済効果と生産波及効果... 17 (1) 生産波及効果とは ... 17 (2) 生産波及効果分析を行うための前提条件... 19 (3) ロケ隊消費額(最終需要)額 ... 20 (4) 生産波及効果... 21 4 事例にみる映画ロケ受け入れの経済効果・社会効果... 25 (1) フラガール ... 26 (2) 蝉しぐれ... 30 (3) 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン ... 33 (4) 陰陽師 2... 36 (5) アヒルと鴨のコインロッカー ... 39 第 3 章 映画ロケ受け入れ及び映画公開後の課題... 45 1 映画制作会社のニーズ ∼ 映画制作会社へのアンケート調査より ∼ ... 46 (1) アンケートの概要 ... 46 (2) 制作会社のニーズ ... 46 2 ロケ誘致・支援に関する受け入れ側の課題 ... 54 (1) アンケートの概要 ... 54 (2) 受け入れ側の課題 ... 54 第 4 章 オープンセットの経済性 ... 61 1 江刺開発振興株式会社(岩手県奥州市)... 62(1) 誘致する映像コンテンツ(ターゲット)の明確化 ... 74 (2) ロケを受け入れる基盤(インフラ)整備... 75
【巻末資料】
第 1 章 調査の概要
1 本調査の目的
本調査の目的は、第1に、最近の東北における映画(映像)事業の受け入れ実績をもとに、 ロケーション撮影(以下、「ロケ」と言う)に伴って地元に生じた経済効果を試算するとと もに、公開後の撮影地及び近隣観光地への観光客の入り込み状況や地域活性化イベントの創 出といった社会的効果について、その実態を把握することである。第 2 に、今後も継続的 に映画(映像)事業の撮影を受け入れていく上で求められる課題を抽出し、その対処方法に ついて整理することである。 いったんロケを誘致すれば、スタッフの移動費や宿泊費、飲食費などが地元に投下される のを始め、オープンセットを制作した場合にはその制作費が、また、映画(映像)公開後に は撮影地が観光資源になるなど地元へさまざまな経済効果が生じることとなる。しかし、そ の効果の程度については、地域経済には何らかの効果があるだろうとは言われつつも、具体 的に一体どれほどの効果があるのかについては、これまで網羅的かつ定量的に把握された試 みがないことから、明らかになっていない。このため、本調査では、東北各地で映画(映像) ロケが増えている近年の実態を定量的に評価することによって、ロケ誘致がもたらす経済的 なインパクトの大きさを広く知ってもらおうという狙いがある。 また、近年は東北においてもいくつかフィルムコミッション1(以下、「FC」と言う)が 設立されるなど、ロケ誘致に向けた環境が少しずつ整いつつある。しかしながら、地元での 受け入れ体制や撮影終了後の「アフターロケーション活動」などにはいくつか課題も散見さ れており、せっかくの映画(映像)事業の誘致を地域活性化のために最大限役立てることが できないままに終わってしまう事例も少なからず見られるようである。たとえば、莫大な費 用を投じて作られたオープンセットも、撮影終了とともに地元で何ら活用されることもない ままに取り壊されてしまうなど、ロケ誘致の効果が極めて短期的、あるいは一過性のものに とどまっている例も多い。 このため、映画(映像)事業の誘致を地域活性化のために役立てるためにはどのような課 題が残されており、地元ではどのように誘致活動に取り組んでいく必要があるのか整理する ことが急務であると考えられる。誘致効果の最大化を図りたいというのが、本調査のもう一 つの狙いでもある。2 本調査の実施体制
本調査を進める上では、株式会社デジタル・イメージCEO水鳥川和夫座長を中心とする 以下のメンバーからなる検討委員会を設け、調査方針の決定や仮説の検討、調査結果に関す る討議などを行った【図表 1-1 参照】。 図表 1-1 検討委員会構成メンバー(敬称略・順不同) 氏 名 所属・役職 座長 水 鳥 川 和 夫 株式会社デジタル・イメージCEO 委員 布 佐 尚 子 歴史公園えさし藤原の郷江刺開発振興株式会社企画部主任 石 母 田 俊 典 奥州市産業経済部商工観光課ロケ対策室副主幹 宇 生 雅 明 庄内映画村株式会社社長 菅 原 順 一 庄内観光コンベンション協会事務局次長 奥 村 秀 三 宮城県映像制作社協会代表幹事 高 橋 勝 彦 東北芸術工科大学仙台事務所長 阿 部 昌 孝 株式会社 JTB 東北交流文化事業部地域貢献推進部長 事務局 加 藤 和 德 株式会社荘銀総合研究所主席研究員 齋 藤 信 也 株式会社荘銀総合研究所研究員 齋 藤 亜 紀 株式会社荘銀総合研究所研究員 【 検討委員会開催日程】 ・ 第1 回検討委員会:平成 19 年 8 月 24 日 13:30∼(於:仙台第2合同庁舎) ・ 第2 回検討委員会:平成 19 年 12 月 13 日 14:00∼(於:グレープシティ株式会社) ・ 第3 回検討委員会:平成 20 年 3 月 13 日 13:30∼(於:仙台第2合同庁舎)第 2 章 東北における映画ロケ実績と経済効果
1 東北における映画ロケの実績
平成13 年に全国フィルムコミッション連絡協議会が設立され、我が国では映画やテレビ ドラマ、CMなどのロケを積極的に地域へ呼び込み、地域活性化のために活用しようという 機運が全国各地で高まっている。東北では、すでに平成12 年から映画サークル「北上シネ マディクト」(岩手県北上市)が各種サークル活動とともにFC活動を展開しているが、平 成14 年に福島県会津若松市に東北初となる自治体主導のFC「会津若松フィルムコミッシ ョン」が設立されると、同年には「かくのだてフィルムコミッション」(秋田県仙北市)、「盛 岡広域フィルムコミッション」(岩手県盛岡市)、「いわきフィルムコミッション協議会」(福 島県いわき市)が相次いで設立され、公的機関を中心にFC設立の動きが活発に行われるよ うになっている。現在、全国フィルムコミッション連絡協議会に加盟2しているFCは 11 団体となっているほか、非加盟組織も加えると25 団体がロケ誘致・支援活動を行っている (平成20 年 2 月末現在)【図表 2-1 参照】。 図表 2-1 東北のFCおよびロケ支援団体一覧 都道府県 名称 設立 全国FC連絡 協議会加盟 弘前フィルムコミッション 平成 15 年 ★ 下北フィルムコミッション 平成 17 年 七戸フィルムコミッション 野辺地・横浜・六ヶ所フィルムコミッション 青森県 十和田フィルムコミッション 平成 18 年 青森フィルムコミッション 平成 20 年 かくのだてフィルムコミッション 平成 14 年 ★ 能代フィルムコミッション ★ ロケーションかづの 秋田県 秋田フィルムネットワーク 平成 17 年 北上シネマディクト 平成 12 年 盛岡広域フィルムコミッション 平成 14 年 ★ 岩手県 奥州市ロケ対策室 平成 15 年 ★ 宮城県 せんだい・宮城フィルムコミッション 平成 15 年 ★ 山形フィルム・コミッション ★ もがみフィルムコミッション 平成 17 年 庄内映画村株式会社 平成 18 年 山形おきたまフィルムコミッション ★ 山形県 NPO法人酒田ロケーションボックス 平成 19 年 会津若松フィルムコミッション ★ 福島県近年のこうしたFC設立の動きは、映画(映像)制作会社のロケニーズの高まりとともに 確実に東北におけるロケ実績に結びついていると思われる。そこで、市町村や制作会社へヒ アリングやアンケート調査を行うとともに、インターネットや各種新聞報道等を基にして、 平成 14 年以降に東北でロケが行われた映画に関して、県ごとにロケの実績を調べてみた。 この結果、これまでに延べ 78 本3の映画ロケが行われていることが確認できた【図表 2-2 参照】。 ちなみに、県ごとに映画ロケの実績をみてみると、宮城県が16 本と最も多くなっている ほか、地域別では南東北での実績が46 本となっており、北東北の 32 本を上回っている。 また、ロケ実績を時系列でみると、平成14 年以降はFC設立の動きや最近の邦画ブームの 影響などもあって毎年着実に増加している。平成18 年は年間 25 本と近年まれにみるロケ の当たり年となった。 図表 2-2 東北における県別・年別映画ロケ実績 累計 (本) 19 年 18 年 17 年 16 年 15 年 14 年 青森県 9 3 3 1 2 0 0 秋田県 9 2 1 1 3 1 1 岩手県 14 0 3 5 4 2 0 北東北 32 5 7 7 9 3 1 宮城県 16 1 8 2 2 2 1 山形県 15 4 4 1 2 2 2 福島県 15 1 6 3 4 1 0 南東北 46 6 18 6 8 5 3 東北計 78 11 25 13 17 8 4 資料出所:制作会社や市町村へのヒアリングやアンケート調査、各種報道などを基に集計。 3 たとえば、「たそがれ清兵衛」のように、秋田県と山形県でロケが行われた作品に関しては、秋田県と山形県の誘致実 績をそれぞれ1 としてカウントした。また、同県複数市町村でロケが行われた作品に関しては 1 とカウントした。
2 映画ロケ受け入れの経済効果・社会効果の考え方
FC活動の目的は映画(映像)ロケの受け入れや支援を通して地域の経済や観光振興、文 化振興を促進することであるといわれているように、地域でロケが行われるとロケ地では経 済効果や社会効果を期待することができる。映画ロケの受け入れとその効果についての概念 を簡単にまとめてみた。 (1) 映画製作4の流れと地域の関わり まず初めに、映画製作の流れと地域の関わりについて整理したい。映画製作には大きく5 つの段階があるがドキュメンタリー映画などの非商業映画を除いた一般的な映画製作に関 しては、上映後のDVDやキャラクターグッズなどの販売なども含めると、最終的に 6 段 階の工程に分けることができる【図表 2-3 参照】。 図表 2-3 映画製作の流れ 劇 場 公 開 、 グ ッ ズ 販 売な ど 配 給 ・ 宣 伝 ポ ス ト プ ロ ダ ク シ ョ ン ︵編集 な ど ︶ プ ロ ダ ク シ ョ ン ︵撮 影 ︶ プ リ プ ロ ダ ク シ ョ ン ︵脚 本 な ど ︶ 企 画 資料出所:長谷川文雄・水鳥川和夫「コンテンツ・ビジネスが地域を変える」(2005)NTT出版 映画製作の第一歩は一般的にプロデューサーが映画製作を企画するところから始まる5。 もちろんプロダクション会社が商業目的で製作を企画するので、企画書はプロダクション会 社の経営会議にかけられてBEP(損益分岐点売上高)ラインやシノプス(あらすじ)、話 題性などの観点から映画として採算が取れるかどうか検討される。企画の内容が事業として 採算が合うと判断されれば、実際に監督へのオファーや俳優などのキャスティング、そして 脚本作りなどの「プリプロダクション」と呼ばれる工程へと進むことになるが、この段階に おいて重要なことは意図する監督や話題性のあるキャスティングが組めるかどうかというロデューサーの能力によるところが大きいが、映画製作と地域との関わりに関して言えば、 プロデューサーが「制作部」6と呼ばれる撮影隊を編成してからとなるため、通常この段階 で映画製作に地域がなんらかの関わりを持つということはない。 制作部が編成される頃にはある程度予算も固まり、具体的に撮影の準備が進められる。撮 影にあたっては、一般的に多くの映画にロケが取り入れられるので、ロケを行う前に「ロケ ーションハンティング(通称ロケハン)」を行ってシナリオに合ったロケーションを全国各 地から探し求めるという作業が行われる。この際、制作部のロケ担当者は全国フィルムコミ ッション連絡協議会の連絡網や自分たちの記憶・人脈などを頼りに全国各地から探し求める こととなる。もちろん各地のFCが作成しているホームページやロケーションガイドブック も参考にされるので、地域のFCはこうした制作部からの問い合わせに応じてシナリオに合 ったロケ地の情報を提供したり、あるいはロケハンなどに同行してロケ地になりそうな場所 を案内したりすることとなる。通常はこのようにして映画製作と地域の接点が初めて生まれ ることとなる。 ロケ地が決まれば、制作部は撮影スケジュールに合わせてロケ地の許可を取らなければな らない。道路や公共施設などに関しては事前に行政当局の撮影許可を得なければ撮影はでき ず、私有地である場合には地権者との調整も必要となる。このため、地域の実情に詳しいF Cなどに許認可の手続きや地権者との調整を依頼するほか、撮影当日に合わせてエキストラ の手配、スタッフの宿泊先やロケ弁などのケータリングサービスの提供先を紹介してもらう。 また、撮影当日には万が一地域とのトラブルが生じた場合などに備えロケに立ち会ってもら うほか、時には交通整理や見物人の誘導を行ってもらい、できるだけスムーズな撮影に協力 してもらう。 ロケも含めた撮影スケジュールがすべて完了すると、映画製作は撮影した映像の編集や音 入れなどの「ポストプロダクション」と呼ばれる工程に移るほか、映画の広報活動も本格的 にスタートする。この際、ロケ地に対する協力のお礼という意味も込めて先行試写会などの 名目による上映会や、監督・キャストらによる舞台挨拶などのキャンペーンも行うことがあ る。もちろん、こうしたイベントを企画する際には地域のFCやロケの協力者などと連携し て行うことが一般的である。また、地域のFCもこうした機会を生かしてロケ時の写真パネ ル展を開催したり、ロケ地マップなどを作成したりして誘客に努めている。 なお、こうした映画製作の流れをFCの活動側からみれば、以下のように整理することが できる【図表 2-4 参照】。 6故・黒澤明監督の「黒澤組」や山田洋次監督の「山田組」などが大変よく知られた存在である。通常は、監督やカメラ マン、美術スタッフなどはそれぞれフリーで活動しているので、映画制作ごとに一組の精鋭部隊が編成されるというの が一般的な形である。
図表 2-4 映画製作とFC業務の流れ ①ロケ地としての可能性を検討 ②ロケ誘致の検討 ③ロケ誘致の推進 ④ロケの受け付け ⑤撮影の準備 ⑥ロケの実施 ・ ロケ支援内容の記録 ⑦ロケ後のアフターフォロー ・ 映像製作者のニーズを把握 ・ 地域の魅力・特性の把握 ・ 地域のロケ撮影関連会社を発掘(宿泊/飲食/交通/通訳/現地映像製作会社等)など ・ 地域のセールスポイントの明確化 ・ 誘致するロケ撮影のターゲットを設定 ・ 誘致体制の確立 ・ 誘致目標の設定など ・ FCの組織体制を確立(ロケ撮影の立会いにともなう時間外勤務体制の整備等) ・ ロケーションデータベースの構築 ・ プロダクションガイド/チラシ/パンフレット等の製作 ・ ロケ地を紹介するDVD/ビデオ等の製作 ・ ロケ誘致につながるインセンティブづくり(ロケハンに対する補助金制度/ロケ隊への宿泊助成金制度等) ・ 提供できる最低限のサービス一覧表の提示 ・ 地域でできる有料サービスの内容とその料金表を作成 ・ 映像企画につながる地域側からの情報提供(地域らしさ、地域にまつわる逸話等) ・ エキストラ登録制度の充実(心得/マナーのレクチャー、演技の質を向上) ・ 映像製作会社へ訪問しPRなど ・ ロケ支援の依頼文書の受付(製作担当者と支援内容について協議、書面にて受付) ・ シナリオハンティング(監督、脚本家が台本作りのために訪れる下見)のサポート ・ ロケーションハンティング(台本内容にもとづくロケ地の下見)のサポートなど ・ 製作側に対するエンドクレジットの掲載依頼 ・ 製作側に対するFCの実績への掲載依頼 ・ 製作側に対する映画やタレント等の写真の使用・掲載許可 ・ 地域の上映会の企画について製作側と調整 ・ 観光担当者との打ち合わせ(ロケ地マップの製作/ロケ関連商品の検討等) ・ 撮影許可申請(道路使用許可/催物開催届出/火炎行為届出/入林使用許可/公的施設撮影許可)の申請支援、または可 能であれば代行 ・ エキストラの手配 ・ マスコミへの連絡(製作側と要調整) ・ 撮影時の駐車場や待機場所(ベースキャンプ)の確保 ・ ロケ隊(出演者/スタッフ)への宿泊施設の紹介/手配 ・ ケータリング(弁当)の手配/紹介 ・ 機材(カメラ/クレーン/リフト/音響等)の手配/紹介 ・ 車両(タクシー/レンタカー等)の手配/紹介 ・ 小道具製作/購入等の関連企業の手配/紹介 ・ 撮影地区への連絡・調整 ・ 地域の条例/規制等の説明など ・ ロケ撮影立会い ・ 撮影中の違反行為を監視 ・ ロケ地周辺域への協力依頼と挨拶 ・ マスコミの対応 ・ 交通整理(通行車両や通行人の誘導等)のサポート ・ エキストラへの心配り ・ ロケ隊と連携してアクシデントに対応 ・ 撮影現場見学(ギャラリー)への対応 ・ 撮影中の音対策 ・ 撮影による破損の有無の点検など 評 価 ・成 果 の フ ィ ー ド バ ッ ク
(2) 映画ロケ受け入れの経済効果・社会効果 映画製作の流れと地域の関わりを踏まえたところで、ロケ受け入れがもたらす地域への効 果を改めて整理すると、以下の通りとなる【図表 2-5 参照】。 図表 2-5 映画ロケ受け入れの経済効果・社会効果 副次的効果 直接的効果 地域の活力向上 ●イベント創出 ・ 監督ら舞台挨拶 ・ 先行試写会、特別上映会 ●地域の認知度・イメージ向上 ●映像文化への関心の高まり ●郷土愛の育成 ●コミュニティー醸成 …など ●ロケ隊との交流・ふれあい ・ ロケ見学(見学会) ・ エキストラ、ボランティアス タッフとしての関わりなど ●余暇活動の充実 ●楽しみ創造 .…など 社 会 効 果 上映後 配給・上映 映画ロケ ●PR効果 ・ 劇場上映、TV放映、DVD 視聴、雑誌掲載 …など ●映画観賞 ・ チケット購入 ・ 関連グッズ購入 …など ●観光客の消費 ・ 宿泊費 ・ 交通費 ・ 飲食費 ・ 土産購入費 など ●ロケ隊の消費 ・ 宿泊費 ・ 飲食費 ・ 交通費 ・ セット組立費 ・ 会場等レンタル費 ・ 機材等運搬費 …など 経 済 効 果 映画ロケの効果には大きく分けて 2 種類ある。1つは、ロケ隊が地域にやってきて行う 各種の消費活動であり、すなわち経済効果である。たとえば、制作部のスタッフはロケハン の時から少なくとも2∼3 名が滞在してロケの準備を進めるが、オープンセットを制作する 場合などは数名の美術スタッフらが数ヶ月間滞在することも珍しくない。また、撮影時には キャストも含め、数十名から 100 名程度の撮影本隊が何日間も地域に滞在する。その際、 彼らの飲食代や移動のための交通費などが確実に地域の産業や経済に潤いをもたらすこと となる。加えて、オープンセットを制作する場合などは、建設資材の調達や重機等のレンタ ルなどに費用が投じられる。オープンセットの制作には数千万円から、場合によっては 1 億円を超える予算が費やされることも珍しくない。 これらはロケの期間中に生じる直接的な経済効果であるが、経済効果には上映中や上映後 の副次的な効果もある。たとえば地域性の強い映画などは地域の映画館で何度も上映が繰り 返されることから、地元では大変興行成績が良くなる傾向がみられる。典型的な作品は前述 の「フラガール」で、この映画の場合は地元の映画館での上映日数が 181 日間にも及んで
いる7。また、話題性もあって興行成績が良ければおのずとDVD販売やテレビ放映も何度 も行われるので、地域にとってはそれだけでも高いパブリシティー効果が得られる8。さら に、映画を観た観客がロケ地観光に訪れた場合などは、宿泊費や交通費、飲食費などの経済 効果が生じることとなる。このように、一言で経済効果といってもその効果の大きさにはさ まざまなタイプがある。ちなみに、こうした経済効果の大きさをタイプ別に整理すると、以 下のようになる【図表 2-6 参照】。 図表 2-6 映画ロケ受け入れによって地域に生じる経済効果の類型 経済効果 【第Ⅱ象限】 ロケ隊はロケ地でさほど多 くの消費活動を行わなかっ たものの、映画上映をきっ かけに数多くの観光客が ロケ地を訪れたタイプ。 【第Ⅲ象限】 ロケ隊の消費活動も少額 で、なおかつ映画上映がロ ケ地の誘客にさほど結び つかなかったタイプ。 【第Ⅳ象限】 ロケ隊はロケ地で多額の 消費活動を行ったものの、 映画上映がさほどロ ケ地 の観光PRにはならなかっ たタイプ。 【第Ⅰ象限】 ロケ隊がロケ地で多額の 消費活動を行ったほか、映 画上映がロケ地にとって大 いに観光客の呼び水とな ったタイプ。 ロケ隊需要 観光 需 要 一方、ロケを受け入れれば、必ずしも金銭的な価値だけでは評価できない効果、すなわち 社会効果も生じる。たとえば地元のメディアを通して映画のロケがやってくるとか、あるい は現在ロケを行っているといった情報が公表されると、自分たちの地域で映画撮影が行われ るという高揚感が生まれ、エキストラやボランティアスタッフなどの形で一緒にロケを成功 させようという機運が生まれる。もちろん、スムーズなロケ進行や俳優の肖像権などの問題 からロケを公開したがらないロケ隊も多いが、地域住民が積極的にロケに参加することで撮
が、映画によっては地域に特別な応援組織が作られ、撮影隊への炊き出しや親睦会などが開 かれるなど、地域の活性化につながるケースが散見される。また、事例は少ないながらも小 中学校などがロケの舞台となることもあり、間近で映画づくりの舞台裏をみることで子供た ちの職業観をはぐくむこともできる。 また、経済効果と同様に、社会効果についてもロケが終了した後のさまざまな副次的な効 果を期待することができる。最近は映画館の無い町も増えているが、ロケをきっかけにして 市民会館などで上映会が開催されることも多く、地域住民が映画に親しむ良い機会となる。 また、映画の中には地域の歴史や文化、風土などがふんだんに盛り込まれているケースも多 く、上映を通じて地域の住民が自分たちの住んでいる町について改めて多くのことを知るき っかけにもなる。さらには、映画を通して地域の名が全国に知れ渡ることで、「ロケの町」 としての誇りにつながることも考えられるなど、地域住民の情操教育にもつながる。このほ か、ロケ地マップを作成したり、ロケ地巡りの観光ツアーを企画したり、さまざまなイベン トを開催する能力やノウハウが地域に育つことによって、地域づくりのための人材育成につ ながるといった効果も期待できる。 なお、平成14 年以降に東北でロケが行われた映画の概要は次の通りである。ロケ隊の規 模はさまざまだが、ロケを通してさまざまな社会効果が生じていることがみてとれる【図表 2-7 参照】。
図表 2-7 平成 14 年以降に東北でロケが行われた映画一覧 No. 作品名 監督・出演 撮影地 撮影 時期 滞在 日数(延べ) ロケ隊 人数(延べ) オープン セット 支援 組織 住民 参加 上映会 の開催 その他 1 ちえみちゃんとこっくんぱっちょ 監督:横浜聡子 出演:鈴木由美子、森下法雄、他 青森県 16 年 20 400 ○ ○ キャストのオーディション、監督・キャストの 舞台挨拶実施 2 力道山 監督:ソン・へソン 出演:ソル・ギョング、中谷美紀、他 青森県 16 年 2 100 ○ あおもり映画祭事務局によって無料上映会 開催 3 青いうた・のど自慢 青春篇 監督:金田敬 出演:濱田岳、冨浦智嗣、他 青森県 17 年 20 1,000 ○ ○ スタッフ・キャストの舞台挨拶、懇親会の開 催 4 素敵な夜 ボクにください 監督:中原俊 出演:吹石一恵、キム・スンウ、他 青森県 18 年 25 1,125 ○ ○ 制作発表会、スタッフ・キャストの舞台挨拶 の開催 5 アオグラ 監督:小林要 出演:内田朝陽 、橋爪遼、他 青森県 18 年 26 923 ○ ○ 制作発表会の開催 6 銀河鉄道の夜 監督:秋原正俊 出演:谷村美月、市川男寅、他 青森県 18 年 7 105 ○ ○ スタッフ・キャストの舞台挨拶、写真撮影・ サイン会の開催、撮影に使用されたストー ブ列車の運行 7 伊藤の話 監督:秋原正俊 出演:温水洋一、田丸麻紀、他 青森県 19 年 4 32 ○ △ 20 年 4 月に先行上映会実施予定 8 五重塔 監督:秋原正俊 出演:ガッツ石松、飯田圭織、他 青森県 19 年 7 70 ○ ○ 制作発表会、キャストらの舞台挨拶実施 9 三本木農業高校、馬術部 監督:佐々部清 出演:長渕文音、柳葉敏郎、他 青森県 19 年 66 2,265 ○ △ 青森先行公開予定 10 たそがれ清兵衛 監督:山田洋次 出演:真田広行、宮沢りえ、他 秋田県 14 年 7 369 ○ チケットの販促支援など 11 好きだ 監督:石川寛 出演:宮崎あおい、西島秀俊、他 秋田県 15 年 50 490 ○ ○ 監督とのトークイベント開催、ロケガイドマッ プ作成 12 隠し剣 鬼の爪 監督:山田洋次 出演:永瀬正敏、松たか子、他 秋田県 16 年 5 300 ○ ○ スタッフ・キャストら歓迎レセプション、ロケ 風景パネル展の開催
No. 作品名 監督・出演 撮影地 撮影 時期 滞在 日数(延べ) ロケ隊 人数(延べ) オープン セット 支援 組織 住民 参加 上映会 の開催 その他 16 デコトラの鷲 愛と涙の男鹿半島 監督:香月秀之 出演:哀川翔、井上晴美、他 秋田県 18 年 10 35 ○ ○ 秋田市にて舞台挨拶、先行上映会開催 17 コドモのコドモ 監督:萩生田宏治 出演:甘利はるな、麻生久美子、他 秋田県 19 年 74 4,440 ○ 未定 廃校の提供 18 河 kappa 童 監督:秋原正俊 出演:谷中敦、小倉一郎、他 秋田県 19 年 5 60 ○ 監督・キャストの舞台挨拶実施 19 陰陽師 2 監督:滝田洋二郎 出演:中井貴一、深田恭子、他 岩手県 19 年 16 750 ○ ロケの公開、チラシ配布によるロケ地のPR 等を実施 20 壬生義士伝 監督:滝田洋二郎 出演:中井貴一、夏川結衣、他 岩手県 15 年 10 100 ○ ○ ○ 壬生義士伝マップの配付、日本アカデミー 賞受賞記念イベントの開催など 21 忍−shinobi 監督:下山天 出演:仲間由紀恵、オダギリジョー、他 岩手県 16 年 19 1,525 ○ 地元業者の協力で猊鼻渓にオープンセット を建築、雨天時の室内セット製作用に、施 設を提供(えさし藤原の郷) 22 オペレッタ狸御殿 監督:鈴木清順 出演:オダギリジョー、チャン・ツィイー、他 岩手県 16 年 23 260 ○ クランクインの際に記者会見実施 23 あずみ 2 Death or Love 監督:金子修介 出演:上戸彩、高島礼子、他 岩手県 16 年 5 38 24 タイマグラばあちゃん 監督:澄川嘉彦 出演:− 岩手県 16 年 − − ○ 25 オボエテイル 監督:芳田秀明、明石知幸、久保朝洋 出演:香川照之、村上淳、他 岩手県 17 年 37 880 ○ 26 孕み-白い恐怖 監督:田尻裕司 出演:前田亜希、矢口壹琅 、他 岩手県 17 年 9 180 ○ ○ ペンション提供、除雪、スノーモービル運転 など、ボランティアあり 27 ゲルマニウムの夜 監督:大森立嗣 出演:荒井浩文、広田レオナ 、他 岩手県 17 年 37 1,350 ○ ○ 28 待合室 監督:板倉真琴 出演:冨司純子、寺島しのぶ 、他 岩手県 17 年 31 1,736 ○ ○ ○ スタッフ・キャストらの舞台挨拶実施。岩手 県はじめ、他県にも上映推進委員会が設 立される 29 日本の自転車泥棒 監督:高橋忠和 出演:杉本哲太、藤田弓子、他 岩手県 17 年 10 275 ○ ○ 市民エキストラ約 100 名による撮影を敢 行。トークショー開催。 30 やじきた道中てれすこ 監督:平山秀幸 出演:中村勘三郎、柄本明、他 岩手県 18 年 5 330 ○ 遠野市ふるさと村職員による炊き出し、撮 影時の交通整理など (注1)滞在日数:ロケハン∼撤収までの期間 (注 2)ロケ隊人数:スタッフ+キャスト (注 3)支援組織:ロケ支援のために一時的に設立された支援組織(FC除く) (注 4)住民参加:エキストラやボランティアスタッフとしての協力
No. 作品名 監督・出演 撮影地 撮影 時期 滞在 日数(延べ) ロケ隊 人数(延べ) オープン セット 支援 組織 住民 参加 上映会 の開催 その他 31 SILK 監督:フランソワ・ジラール 出演:マイケル・ピット、役所広司、他 岩手県 18 年 10 156 ○ ○ 32 いのちの作法 監督:小池征人 出演:− 岩手県 18 年 42 − ○ ○ ○ 「いのちの作法」通信の発行 33 ミラーを拭く男 監督:梶田征則 出演:緒形拳、大滝秀治、他 宮城県 14 年 10 100 ○ 写真パネル展開催(仙台市) 34 半落ち 監督:佐々部清 出演:寺尾聡、原田美枝子、他 宮城県 15 年 2 102 ○ 35 千の風になって 監督:金秀吉 出演:西山繭子、伊藤高史、他 宮城県 15 年 7 162 ○ ○ 36 勇気の 3000 キロ 監督:小笠原佳文 出演:金山一彦、大西結花、他 宮城県 16 年 2 42 ○ 37 小春小町 監督:望月六郎 出演:細川茂樹、樹木希林、他 宮城県 16 年 7 92 ○ 38 放郷物語 監督:飯塚健 出演:徳永えり、安藤希、他 宮城県 17 年 2 10 39 ええじゃないか・ニッポン宮城 篇∼気仙沼伝説 監督:小林政広 出演:鈴木京香、岸部一徳、他 宮城県 17 年 66 2,305 ○ ○ ○ 撮影時の炊き出し、鈴木京香さんの知事訪 問など 40 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン 監督:松岡錠司 出演:オダギリジョー、樹木希林、他 宮城県 18 年 145 6,450 ○ ○ ○ 細倉金属鉱業(株)が全面的に撮影をバッ クアップ 41 アヒルと鴨のコインロッカー 監督:中村義洋 出演:濱田岳、瑛太、他 宮城県 18 年 30 1,800 ○ ○ ロケガイドマップ作成 42 自虐の詩 監督:堤幸彦 出演:中谷美紀、阿部寛、他 宮城県 18 年 7 420 ○ ○ 住民による気仙沼弁の指導など 43 実録・連合赤軍 ―あさま山荘への道程 監督:若松孝二 出演:ARATA、地曳豪、他 宮城県 18 年 22 660 ○ スタッフ・キャストの舞台挨拶の開催 監督:三池崇史
No. 作品名 監督・出演 撮影地 撮影 時期 滞在 日数(延べ) ロケ隊 人数(延べ) オープン セット 支援 組織 住民 参加 上映会 の開催 その他 46 最後の夢 監督: 出演:他 宮城県 18 年 3 45 47 コーラスたい♪ ∼彼女たちのキセキ∼ 監督:関顕嗣 出演:水谷妃里、大西麻恵、他 宮城県 18 年 7 210 ○ ○ 製作発表、キャストらによるトークショー実 施 48 未公表 監督: 出演:他 宮城県 19 年 1 70 ○ 49 たそがれ清兵衛 監督:山田洋次 出演:真田広行、宮沢りえ、他 山形県 14 年 - - ○ ○ ○ ○ 炊き出しの実施、監督舞台挨拶 50 おにぎり ARCADIA物語 監督:斎藤耕一 出演:吉永雄紀、松原智恵子、他 山形県 14 年 27 1,350 ○ ○ ○ 製作資金提供、チケット販促支援、ロケ見 学会、製作発表会など多数実施 51 スウィングガールズ 監督:矢口史靖 出演:上野樹里、貫地谷しほり、他 山形県 15 年 49 2,450 ○ ○ ○ ロケ地マップの作成、応援 WEB サイト作 成、各種イベント開催 52 透光の樹 監督:根岸吉太郎 出演:秋吉久美子、永島敏行、他 山形県 15 年 12 124 ○ ○ 木道撤去、軽トラ・テントの提供などの支援 を実行 53 隠し剣 鬼の爪 監督:山田洋次 出演:永瀬正敏、松たか子、他 山形県 16 年 53 1,700 ○ ○ ○ 監督を迎えての先行試写会の実施 54 蝉しぐれ 監督:黒土三男 出演:市川染五郎、木村佳乃、他 山形県 16 年 60 1,548 ○ ○ ○ ○ 写真パネル展開催、監督ら舞台挨拶実施 55 いのち耕す人々 監督:原村政樹 出演:− 山形県 17 年 365 − ○ 56 ユビサキから世界を 監督:行定勲 出演:谷村美月、北乃きい、他 山形県 18 年 12 480 ○ 制作発表会の開催 57 隠し砦の鉄平君 監督:佐藤広一 出演:佐藤直樹、天宮良、他 山形県 18 年 14 140 ○ ○ 58 SILK 監督:フランソワ・ジラール 出演:マイケル・ピット、役所広司、他 山形県 18 年 160 420 ○ ○ △ 08 年 6 月に先行上映予定 59 スキヤキウェスタン ジャンゴ 監督:三池崇史 出演:伊藤英明、佐藤浩市、他 山形県 18 年 100 10,000 ○ ○ 監督・キャストらを招き、制作発表会の開催 60 キャットボイス 監督:笹木彰人 出演:入山宏一、菜葉菜、他 山形県 19 年 7 105 ○ (注1)滞在日数:ロケハン∼撤収までの期間 (注 2)ロケ隊人数:スタッフ+キャスト (注 3)支援組織:ロケ支援のために一時的に設立された支援組織(FC除く) (注 4)住民参加:エキストラやボランティアスタッフとしての協力
No. 作品名 監督・出演 撮影地 撮影 時期 滞在 日数(延べ) ロケ隊 人数(延べ) オープン セット 支援 組織 住民 参加 上映会 の開催 その他 61 おくりびと 監督:滝田洋二郎 出演:本木雅弘、広末涼子、他 山形県 19 年 37 2,320 ○ 未定 62 山桜 監督:篠原哲雄 出演:田中麗奈、東山紀之、他 山形県 19 年 20 505 ○ ○ 未定 63 ICHI 監督:曽利文彦 出演:綾瀬はるか、中村獅童、他 山形県 19 年 30 2,500 ○ ○ 未定 64 容疑者 室井慎次 監督:君塚良一 出演:柳葉敏郎 、哀川翔、他 福島県 15 年 91 2,335 ○ ○ 駅前繁華街に消防車、ポンプ車を出動さ せ、ロケ敢行 65 美しい夜、残酷な朝 ∼日本篇「box」 監督:三池崇史 出演:渡部篤郎、長谷川京子、他 福島県 16 年 8 360 66 デコトラの鷲 会津・喜多方・人情街道! 監督:香月秀之 出演:哀川翔、野波麻帆、他 福島県 16 年 6 70 ○ ○ キャストらの舞台挨拶実施 67 バルトの楽園 監督:出目昌伸 出演:松平健、ブルーノ・ガンツ、他 福島県 16 年 6 480 ○ ○ ○ キャストらの舞台挨拶実施 68 ゴジラ FINAL WARS 監督:北村龍平 出演:松岡昌宏、菊川怜、他 福島県 16 年 7 560 ○ 69 フラガール 監督:李相日 出演:松雪泰子、豊川悦司、他 福島県 17 年 34 2,380 ○ ○ ○ 70 スターフィッシュホテル 監督:ジョン・ウィリアムズ 出演:柄本明、佐藤浩市、他 福島県 17 年 7 40 ○ 71 日本沈没 監督:樋口真嗣 出演:草彅剛、柴咲コウ 、他 福島県 17 年 2 80 ○ 72 アルゼンチンババア 監督:長尾直樹 出演:役所広司、鈴木京香、他 福島県 18 年 17 770 ○ 地元の商店や小学校の協力、地元TV局で 特番作成、監督の舞台挨拶など 73 武士の一分 監督:山田洋次 出演:木村拓哉、檀れい、他 福島県 18 年 1 100 山形県内で監督・キャストらによるキャンペ ーン展開 監督:大澤豊 チケット販促、製作費支援、各種イベント開
No. 作品名 監督・出演 撮影地 撮影 時期 滞在 日数(延べ) ロケ隊 人数(延べ) オープン セット 支援 組織 住民 参加 上映会 の開催 その他 76 親父 監督:千葉真一、井出良英 出演:千葉真一、田中好子、他 福島県 18 年 29 620 ○ △ エキストラ 30 人、ボランティア 7 人、上映会 予定 77 真夜中のマーチ 監督:下山天 出演:玉山鉄二、窪塚俊介、他 福島県 18 年 14 104 ○ 未定 エキストラ 35 人、ボランティア 3 人 78 僕の彼女はサイボーグ 監督:クァク・ジェヨン 出演:綾瀬はるか、小出恵介、他 福島県 19 年 11 660 ○ ○ 計 2,135 65,928 (注1)滞在日数:ロケハン∼撤収までの期間 (注 2)ロケ隊人数:スタッフ+キャスト (注 3)支援組織:ロケ支援のために一時的に設立された支援組織(FC除く) (注 4)住民参加:エキストラやボランティアスタッフとしての協力 資料出所:市町村及び映画制作会社へのアンケート調査やヒアリング、FCやロケ支援団体のホームページ、新聞報道等から抽出した。
3 映画ロケ受け入れの経済効果と生産波及効果
ここでは、先に示した映画ロケの実績をもとに、東北で撮影された映画ロケによって、い ったいいくらの経済効果(直接効果)が生じているか推計する。また、推計したデータを基 に、ロケ隊がロケ地で消費した財やサービスを生産するために東北の産業にはどれだけの生 産波及効果を得ることができたのかについても算出する。 (1) 生産波及効果とは ロケ隊がロケ地にやってくると、彼らは地域で寝泊まりしながら食事をするほか、移動の ためにロケバスをレンタルしたり、燃料を購入したり、あるいはオープンセットを建設する ために資材や重機を調達したりして撮影のために地域内でさまざまな消費活動を行う。ロケ を受け入れる地域にとってみれば、ロケ隊がやってくることによって地域で生産する財やサ ービスに対する追加的な需要が生じるので、その需要を賄うための生産活動が行われる。こ の際、ロケ隊へ供給する財やサービスの生産に必要な原材料や燃料などについても生産が行 われるので、同時にこのような産業の生産活動も誘発されることとなる。通常、このように ある特定の地域に生じた需要を賄うためにどの産業にどれだけの生産波及のプロセスが生 じたかということを「生産波及効果」(もしくは「経済波及効果」)と呼ぶ【図表 2-8 参照】。 図表 2-8 生産波及効果の概念たとえば、生産波及効果のイメージを分かりやすくするために、ロケ隊の宿泊先で朝食に 自家製パンが出されたケースを想定してみよう。仮に、宿泊先ではパンを 1 コあたり 100 円で提供したとし、パンを焼くためには小麦粉や卵など50 円分の原材料費と 10 円分の燃 料費がかかったとする。この時、原材料や燃料の生産を行った産業部門においては50 円+ 10 円で 60 円分の生産活動が誘発されたとみなすことができる。また、パンがロケ隊の手に 届くまでにはさらに100 円分の生産活動が行われているので、結局、100 円+60 円で 160 円分の生産波及効果が宿泊部門や原材料製造部門などにあったとみなすことができるので ある。 ただし、もっと厳密に言えば、調達する原材料などをすべて域内の産業によって賄うこと は困難であるため、通常は域外や海外から購入してこなくてはならない。地域産業への生産 波及効果を算出する場合にはこうした分を除外し、純粋に域内から調達できる分だけを計算 する(これを「第1次間接効果」と呼ぶ)。また、購入した代金はそれぞれの産業で働いて いる労働者へ分配されたり、あるいは企業の設備投資に回されたりして新しい需要が生じる こととなる(これを「第2 次間接効果」と呼ぶ)。こうした派生的な需要が生じることによ っても生産活動が誘発されるので、結局、生産波及のプロセスは派生需要がなくなるまで続 くことになる【図表 2-9 参照】。 図表 2-9 生産波及効果分析のフローチャート ︵収 束 演 算 ︶ “メイド・イン・東北”の財、サービス限定 ロケ隊の需要(支出) 直接効果 家計消費 生産 誘発 雇用者所得 粗付加価値額 原材料 投入額 生産誘発額(第 2 次間接効果) 間接効果 雇用者所得 粗付加価値額 原材料 投入額 生産誘発額(第 1 次間接効果) 原材料の 生産誘発
なお、生産波及効果とは、100 円の需要が生じれば 160 円になって返ってくるという意 味ではない。ごくおおざっぱに言えば、最終的に 100 円分のパンを提供するためにかかっ た各産業部門の生産額を積み上げると 160 円になるということであり、波及効果が高けれ ば高いほどさまざまな産業に恩恵があるという意味である。 (2) 生産波及効果分析を行うための前提条件 生産波及効果を算出するにあたっては、以下の条件を設定した。 ① 本章第2 節(2)で経済効果の考え方を整理したように、ロケ受け入れの経済効果には ロケ隊の消費活動からなる直接的効果と映画観賞や観光客の消費活動などからなる副 次的効果とに分けられる。ここで、副次的効果は映画の内容によってロケ地へ多額の経 済効果をもたらすものもあればそうでないものもあることから、すべての映画ロケ受け 入れによって生じる効果であると見なすと生産波及効果の過大推計につながりかねな い。よって、生産波及効果の推計にあたってはロケ隊消費額をベースにした直接的効果 のみをもって推計の基本データとする。 ② 推計の対象とする映画作品は、本章第1 節で示したように、平成 14 年以降に東北でロ ケが行われた78 本である。ただし、ヒアリングやアンケート調査などによってロケ隊 の規模や滞在日数が得られなかったものを除外し、最終的に73 作品とした。また、ロ ケ隊の消費額が得られた作品(10 本)に関しては把握している消費額をそのまま利用 するが、消費額のデータが得られていない作品に関しては、得られているデータの平均 消費単価を利用する。なお、平均消費単価は以下の通り【図表 2-10 参照】。 図表 2-10 ロケ隊の平均消費額 宿泊代 (1 人あたり) 飲食代 (1 人あたり) 燃料代 (1 日あたり) 車両等 レンタル代 セット 制作費 その他 消費単価 5,533 円 3,846 円 60,711 円 3,905,309 円 41,845,660 円 3,433,537 円 (注)「セット制作費」はロケ地にオープンセットを制作した13 作品にだけ利用する。 ③ なお、生産波及効果を算出するにあたっては、平成12 年東北地域産業連関表(75 部門) を用いる。
(3) ロケ隊消費額(最終需要)額 以上の前提条件の下でロケ隊消費(最終需要)額を推計すると、結果は以下のとおりであ る【図表 2-11 参照】。ロケ隊の消費額は総額 18.6 億円、1 本あたり平均 2,544 万円の支出 となっている。 図表 2-11 ロケ隊消費額(推計値) 項目 消費額(円) 付記 宿泊代 408,788,947 飲食代 320,813,390 燃料代 93,090,632 車両等レンタル代 270,801,616 セット制作費 502,147,920 オープンセットを制作した 13 本分 その他 261,786,050 計 1,857,428,555 ロケ 1 本あたり平均 25,444,227
(4) 生産波及効果 続いて、ロケ隊の総消費(最終需要)額18.6 億円をもとにして、東北の産業にどれだけ の生産波及効果があるか算出した。結果は以下のとおりである【図 表 2-12、 図表 2-13、 図表 2-14 参照】。 18.6 億円の需要を賄うため、東北の産業には 15.4 億円の直接的な生産誘発額が生じてい るほか、原材料等の生産誘発額は6.7 億円(第 1 次間接効果)、家計や企業などの消費支出 を迂回して誘発される生産額(第2 次間接効果)は 10.5 億円となった。また、これらを合 わせると東北においては最終的に32.5 億円の生産波及効果があるという結果となった。 なお、ロケ隊の最終需要100 万円あたりの生産波及効果は 175 万円であり、倍率に換算 すると1.75 倍であった。仮に、東北において同額の需要がパソコン関連産業(電子計算機・ 同付属装置産業)に生じた場合を想定してみると、その倍率は 0.51 倍である【図表 2 15 参照】。これは、パソコンの生産工程が海外も含めて広範囲に及んでおり、需要と供給が域 内で完結していないためである。言い換えれば、ロケ隊の消費活動は相対的に東北の産業に 振り向けられる比率が高く、たとえば商業やサービス業、農業や食品加工業など、地場産業 にとってたいへん魅力的な需要であるということができる。 図表 2-12 ロケ隊の消費活動に伴う生産波及効果(概要版) (単位:百万円) ① 最終需要額 1,857 生産誘発額 粗付加価値 誘発額 雇用者所得 誘発額 ② 直接効果 1,539 839 495 ③ 第1次間接効果 670 368 184 ④ 第2次間接効果 1,046 638 283 ⑤ 生産波及効果(=②+③+④) 3,254 1,845 961 ⑥ 波及倍率(=⑤/①) 1.75 倍 (注)四捨五入により、合計は必ずしも一致しない。
図表 2-13 ロケ隊の消費活動に伴う生産波及効果(詳細版) (単位:百万円) 直接効果 第1次間接効果 第 2 次間接効果 生産波及効果 粗付加価値誘発額 粗付加価値誘発額 粗付加価値誘発額 粗付加価値誘発額 最終需要額 原材料投入額 雇用者所得 中間生産物 雇用者所得 中間生産物 雇用者所得 中間生産物 雇用者所得 001 農業 0 0 0 0 0 18 8 10 1 33 15 18 2 51 24 27 3 002 林業 0 0 0 0 0 5 2 3 1 1 0 1 0 6 2 4 1 003 漁業 0 0 0 0 0 4 2 3 1 6 2 4 1 11 4 7 2 004 金属鉱物 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 005 非金属鉱物 0 0 0 0 0 2 1 1 0 0 0 0 0 3 1 1 0 006 石炭 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 007 原油・天然ガス 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 008 食料品・たばこ 0 0 0 0 0 33 22 11 4 70 47 23 8 103 69 34 12 009 飲料 0 0 0 0 0 18 7 11 2 24 9 14 3 42 17 25 5 010 繊維工業製品 0 0 0 0 0 1 0 0 0 2 1 1 1 3 2 1 1 011 衣服・その他の繊維製品 0 0 0 0 0 1 0 0 0 5 3 2 1 6 4 2 2 012 製材・木製品 0 0 0 0 0 20 12 8 4 2 1 1 0 21 13 8 4 013 家具・装備品 0 0 0 0 0 5 3 2 1 2 1 1 1 7 4 3 2 014 パルプ・紙・板紙・加工紙 0 0 0 0 0 9 6 3 1 5 4 2 1 14 10 4 2 015 紙加工品 0 0 0 0 0 4 2 2 1 5 3 2 1 9 5 4 2 016 出版・印刷 0 0 0 0 0 16 8 8 5 15 7 8 5 31 15 16 10 017 化学肥料 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 1 0 0 2 1 1 0 018 無機化学基礎製品 0 0 0 0 0 2 1 1 0 2 1 1 0 4 2 1 0 019 石油化学基礎製品 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 1 0 0 1 1 0 0 020 有機化学製品 0 0 0 0 0 2 2 1 0 3 2 1 0 6 4 2 1 021 合成樹脂 0 0 0 0 0 2 1 0 0 2 1 1 0 4 3 1 0 022 化学繊維 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 023 化学最終製品 0 0 0 0 0 5 4 2 1 10 7 3 1 1 6 10 5 2 024 医薬品 0 0 0 0 0 1 1 0 0 6 4 2 1 7 4 3 1 025 石油製品 0 0 0 0 0 10 6 4 0 22 13 10 0 32 18 14 1 026 石炭製品 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 027 プラスチック製品 0 0 0 0 0 9 6 3 2 10 6 3 2 1 8 12 6 4 028 ゴム製品 0 0 0 0 0 3 2 1 1 2 1 1 0 5 3 2 1 029 ガラス・ガラス製品 0 0 0 0 0 2 1 1 0 1 1 1 0 3 2 2 1 030 セメント・セメント製品 0 0 0 0 0 13 7 5 3 0 0 0 0 13 8 6 3 031 陶磁器 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 032 その他の窯業・土石製品 0 0 0 0 0 3 2 1 1 1 0 0 0 4 2 2 1 033 銑鉄・粗鋼 0 0 0 0 0 3 2 1 0 1 1 0 0 5 3 2 1 034 鋼材 0 0 0 0 0 7 5 2 1 2 2 0 0 9 7 2 1 035 鋳鍛造品 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 2 1 1 0 036 その他の鉄鋼製品 0 0 0 0 0 2 2 1 0 1 0 0 0 3 2 1 0 037 非鉄金属製錬・精製 0 0 0 0 0 1 1 0 0 1 0 0 0 2 1 0 0 038 非鉄金属加工製品 0 0 0 0 0 4 2 1 1 2 1 1 0 5 3 2 1 039 建設・建築用金属製品 0 0 0 0 0 18 10 7 4 1 0 0 0 1 9 11 8 4 040 その他の金属製品 0 0 0 0 0 10 5 5 3 6 3 3 2 16 7 8 5 041 一般産業機械 0 0 0 0 0 2 1 1 0 1 1 0 0 3 2 1 1 042 特殊産業機械 0 0 0 0 0 2 1 1 0 1 0 0 0 2 1 1 0 043 その他の一般機器及び部品 0 0 0 0 0 1 1 1 0 1 0 0 0 2 1 1 1 044 事務用・サービス用機器 0 0 0 0 0 2 1 0 0 1 0 0 0 2 2 1 0 045 民生用電子・電気機器 0 0 0 0 0 1 1 0 0 11 8 3 2 12 9 3 2 046 電子計算機・同付属装置 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 2 1 0 0 047 通信機械 0 00 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 1 1 0 0 048 電子応用装置・電気計測器 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 049 半導体素子・集積回路 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 1 0 0 050 電子部品 0 0 0 0 0 5 3 2 1 4 3 1 1 9 5 3 2 051 重電機器 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 052 その他の電気機器 0 0 0 0 0 2 1 1 0 3 2 1 1 5 3 2 1 053 乗用車 0 0 0 0 0 0 0 0 0 12 11 2 1 12 11 2 1 054 その他の自動車 0 0 0 0 0 12 8 3 2 17 12 5 3 29 21 8 5 055 その他の輸送機械 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 1 0 0 2 1 1 1 056 精密機械 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 0 2 1 1 0 057 その他の製造工業製品 0 0 0 0 0 3 2 1 1 7 4 3 1 9 6 4 2 058 再生資源回収・加工処理 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 2 1 0 0 059 建築及び補修 502 498 263 235 173 9 5 4 3 8 4 4 3 515 272 243 179 060 公共事業 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 061 その他の土木建設 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 062 電力 0 0 0 0 0 31 12 19 3 26 10 16 3 57 22 35 6 063 ガス・熱供給 0 0 0 0 0 3 1 1 1 2 1 1 0 5 2 2 1 064 水道・廃棄物処理 0 0 0 0 0 20 7 13 7 13 4 8 5 33 11 22 12 065 商業 0 0 0 0 0 57 15 42 30 154 42 113 80 212 57 155 110 066 金融・保険・不動産 0 0 0 0 0 75 21 54 20 88 25 63 24 163 46 117 45 067 住宅賃貸料(帰属家賃) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 121 10 111 0 121 10 111 0 068 運輸 0 0 0 0 0 33 11 22 16 47 16 31 22 80 27 53 38 069 通信・放送 0 0 0 0 0 26 9 18 7 31 10 21 9 57 19 39 16 070 公務 0 0 0 0 0 2 1 1 1 3 1 2 2 5 2 3 3 071 その他の公共サービス 0 0 0 0 0 13 4 9 8 61 19 42 37 74 23 51 45 072 調査・情報サービス 0 0 0 0 0 8 3 5 3 8 3 5 3 16 6 10 6 073 その他の対事業所サービス 533 398 161 237 134 100 40 59 34 59 24 35 20 557 225 332 188 074 対個人サービス 823 643 276 367 187 13 6 7 4 105 45 60 31 761 326 435 222 075 その他 0 0 0 0 0 13 10 3 1 7 6 2 0 2 1 16 5 1 合 計 1,857 1,539 700 839 495 670 301 368 184 1,046 408 638 283 3,254 1,408 1,845 961
図表 2-14 生産波及効果の算出フローチャート 4.9 中間投入額 3.0 3.7 雇用者所得(B) 1.8 . 中間投入 額 粗 付加価値誘発額 中間投入額 粗付加 価値誘発 額 1. 2 1.9 2.9 4.5 雇 用者所得 雇用者 所得 0.8 2.0 逆行列 3.1 生産 誘発 額 (第2次 間接効果 ) 民間 消費支出 構成比 消費 支出 消費支出 自給率 (単 位:億円 ) 生産誘 発額 (第2 次間 接効果) 8.4 生産誘発額(第1次間接効果)③ 粗付加価値誘発額 7.0 雇 用者所得 (A) 直 接 効 果② 7 .4 雇用者所得 (A+B) 6 .8 中間投入額 6.7 粗付加価値誘発額 平 均消費性 向 自給率 自給率 逆行列 18.6 15.4 最終需要額① 収 束 演 算 ④− 2 ④−1 図表 2-15 パソコン関連産業と比較した場合の生産波及効果の違い (単位:百万円) 映画ロケ需要 パソコン需要 ① 最終需要 1,857 1,857 ② 直接効果 1,539 437
4 事例にみる映画ロケ受け入れの経済効果・社会効果
平成14 年以降に東北でロケが行われた映画のうち、以下の 5 本について制作会社へのヒ アリングやアンケート調査を実施するとともに、ロケに協力した地域の関係者などへヒアリ ングを実施して、ロケ地に生じた具体的な経済効果と社会効果を調べた。 (1) フラガール (2) 蝉しぐれ (3) 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン (4) 陰陽師2 (5) アヒルと鴨のコインロッカー(1) フラガール 製 作 年 平成 18 年 主なロケ地 福島県いわき市 配 給 シネカノン ロ ケ 期 間 平成 18 年 1 月∼(34 日間) 制 作 シネカノン スパリゾート・ハワイアンズ 公 開 平成 18 年 9 月 23 日 いわきフィルムコミッション協議会 興 行 成 績 14 億円 ロ ケ 協 力 映画「フラガール」を応援する会、他 1.直接的経済効果 ・ロケ隊消費額:4,965 万円(制作会社へのヒアリングより) 2.副次的経済効果 ・「映画『フラガール』を応援する会」支出額:921 万円(平成18 年度総会資料より) ・観光客消費額:11 億 1,449 万円 合計:11 億 7,335 万円 経 済 効 果 【付記】 ・ 観光客消費額の推計は以下の通り行った。 ・ ロケ地への誘客効果は映画公開後半年間続くものと仮定し、ロケとの関連の深い いわき市湯本地区の観光入込客数の対前年度比増加分を上映効果による誘客数 とみなした。いわき市「市内観光交流人口統計」によると、この期間(平成 18 年10 月∼平成 19 年 3 月)における観光入込客数の増分は 62,068 人となってい る(下図参照)。 ・ 次に、国道交通省「旅行・観光消費動向調査」の東北への旅行中に消費する1 人 あたり消費額(日帰り:12,236 円、宿泊:48,107 円)を用いて、上記観光入込客数の増 分に掛け合わせ、観光客消費額を算出した。 ・ なお、観光客は湯本地区を回遊しているので、同一人物が観光地点ごとに複数計 上されている可能性がある。観光消費額の過大推計を防ぐため、いわき市石炭・ 観光入込客数(人)の増分(平成 17 年度比) 計 日帰り 宿泊 スパリゾート・ハワイアンズ 43,843 35,282 8,561 いわき湯本温泉 7,470 2,465 5,005 いわき市石炭・化石館 10,755 10,755 − 湯本地区計 62,068 48,502 13,566 資料出所:いわき市
社 会 効 果 1.「映画『フラガール』を応援する会」による支援活動 ① 広告宣伝活動 ・ ポスター、チラシ、のぼり旗の掲出 (ポスター:4,000 枚、チラシ:55,000 枚、のぼり旗:400 本) ・ 応援する会ホームページの開設:平成18 年 3 月 7 日∼ (アクセス数:109,665 件(平成 19 年 12 月 1 日現在)) ・ 映画前売り券の販促活動 (販売実績:22,352 枚) ・ 映画完成披露試写会の開催 (いわき市(7/3)と郡山市(7/4)にて、それぞれ 450 人、110 人を動員) ・ 市民交流会の開催:平成18 年 7 月 3 日 (松雪泰子さん、石原プロデューサー(制作会社)らを招いてフリートーク、メイキングフ ィルムの上映などを実施。市民ら450 人が参加。) ・ 映画「フラガール」誕生物語パネル展示:平成18 年 8 月 10 日∼翌年 4 月 27 日 (市内9 ヵ所、全国の映画館約 150 館にて掲出) ・ JR東日本とのタイアップ (JR:びゅうプラザでの入場券販売、ポスター掲出、周遊バスチラシ配布) ・ ネクスコ東日本とのタイアップ (インター職員のアロハ着用、パンフ配布、SAへのロケ地マップ配布) ・ 全国主要「フラ・タヒチイベント」(5 ヵ所)におけるロケ地マップ配布 ② 誘客事業 ・ プレゼントキャンペーン:平成18 年 9 月 23 日∼10 月 31 日 (ハワイアンズ宿泊券:ペア40 組、湯本温泉宿泊券:ペア 10 組、ハワイアンズ入場券:ペ ア100 組、クオカード:500 名) ・ JR東日本とのタイアップによるロケ地巡りツアー ③ 受入事業 ・ レトロバスによる市内観光周遊バスの運行:平成18 年 9 月 23 日∼(29 日間) (乗客実績:5,233 人) ・ 地元映画館での記念プレゼント配布 (公開記念:“レイ”の配布(200 名)、達成記念:映画回数券、ハワイアンズ入場券、湯本 温泉宿泊商品券、フラガール関連グッズ等の配布) 2.その他 ・ 市民ボランティア「一山一家」の活躍 (エキストラは最大1,000 人を動員:ハワイアンズで踊るラストシーン) ・ 記念郵便切手の発行(平郵便局) ・ 「フラミュージアム」の開設(スパリゾート・ハワイアンズ) ・ 学芸会の演目に「フラガール」(地元の幼稚園、保育園) (「お遊戯フラ」を幼稚園へ普及させる方針:「応援する会」)
● フラを通じて協調性や達成感、異文化への理解を促すなど、子供たちの情操教育にも役立て ている(資料提供:いわき市)。
(2) 蝉しぐれ 製 作 年 平成 17 年 主なロケ地 山形県鶴岡市 配 給 東宝 ロ ケ 期 間 平成 16 年 1 月∼(60 日間) 制 作 セディックインターナショナル、他 公 開 平成 17 年 10 月 1 日 庄内ロケ支援実行委員会、他 興 行 成 績 14 億円 ロ ケ 協 力 1.直接的経済効果 ・ロケ隊消費額:1 億 8,700 万円(制作会社へのヒアリングより) 2.副次的経済効果 ・「映画『蝉しぐれ』庄内ロケ支援実行委員会」支出額:4,539 万円(総会資料より) ・観光客消費額:3 億 7,242 万円 合計:6 億 481 万円 経 済 効 果 【付記】 ・ 観光客消費額の推計は以下の通り行った。 ・ ロケのために制作されたオープンセットは取り壊されずに資料館として公開さ れている。よって、ここを訪れる観光客はすべて上映効果によるものとみなした。 ・ また、映画「蝉しぐれ」に登場する海坂藩のモデルになった庄内藩ゆかりの施設 (致道館、大宝館)についても、上映効果による誘客が期待できる。致道館と大 宝館については映画公開前から現存する観光施設であるので、ロケ地への誘客効 果は映画公開後半年間続くものと仮定し、同施設への観光入込客数の対前年度比 増加分を上映効果による誘客数とみなした。誘客数は以下のとおり。 ・ なお、ここでも観光客の2 重計上の問題があるので、観光消費額の推計は観光拠 点となる蝉しぐれオープンセットの入込数(23,377 人)だけを対象とする。 ・ 国道交通省「旅行・観光消費動向調査」の東北への旅行中に消費する1 人あたり 観光入込客数(人) 備考 蝉しぐれオープンセット 23,377 映画公開後半年間の入込客数 蝉しぐれ資料館 14,205 〃 大宝館 2,700 映画公開後半年間の対前年度比増分 至道館 600 〃 計 40,882 資料出所:鶴岡市
社 会 効 果 1.「映画『蝉しぐれ』庄内ロケ支援実行委員会」による支援活動 ① 広告宣伝活動 ・ 映画前売り券の販促活動 ・ 試写会開催 (全国ロードショーに先駆け、三川町の映画館にて4/4 と 9/26 に開催。9/26 日には黒土監督、 木村佳乃さんら舞台挨拶。それぞれ270 人、349 人を動員。) ・ 「侍コンサート」の開催(計4 回) (オープンセットの公開イベントに行ったコンサートを継続的に開催。延べ2,350 人を動員。) ・ 第15 回赤川花火大会にて「蝉しぐれ」花火打ち上げ:平成 17 年 8 月 10 日 ・ 各地公民館を会場とした上映会の後援 ・ 黒土監督御礼挨拶:平成18 年 3 月 30 日 (映画のヒットを記念して三川町の映画館にて舞台挨拶を実施。) ② 誘客事業 ・ 映画パネル展開催:平成17 年 9 月 3 日∼10 月 11 日 (庄内空港3 階にて展示) ・ JR東日本、農協観光などとのタイアップによるロケ地巡りツアー ・ 観光パンフレット「松ヶ岡」の配布 ・ マスコミ取材対応及び関連記事掲載 (合計37 件) ③ 受入事業 ・ オープンセット・資料館の一般公開:平成17 年 4 月 15 日∼ (黒土監督らを招き、テープカットやコンサートなどのイベントを実施。市民ら延べ 1,400 人が参加。) ・ オープンセットガイド講習会の開催 2.その他 ・ 鶴岡市観光連盟のホームページ上にて「蝉しぐれ」特集掲出 (ロケ地マップ、ロケ風景、映画概要など) ・ 市民総勢558 名がエキストラでロケに参加 ・ 庄内映画村株式会社の設立とロケ誘致活動の開始 (映画「蝉しぐれ」のプロデューサー宇生雅明氏によって設立。蝉しぐれ資料館を譲り受けて 誘客事業を引き継いだほか、積極的にロケ誘致活動を展開。) ・ 鶴岡藤沢周平文学愛好会によるシンポジウム「文学と映像で語る『蝉しぐれ』」 開催:平成17 年 7 月 (黒土監督とエキストラで参加した学生などによるパネルディスカッションを実施。) ・ 東北公益文科大学大学院開学記念公開講座にて講演会開催:平成17 年 11 月 (黒土監督を招き、仙台市にて実施。)
● 鶴岡市観光連盟では、市内観光の1つとしてロケ地巡りを提唱しており、ロケ地マップなど を作成して誘客を図っている(資料提供:鶴岡市観光連盟)。
(3) 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン 製 作 年 平成 19 年 主なロケ地 宮城県栗原市 配 給 松竹 ロ ケ 期 間 平成 18 年 4 月∼(145 日間) 制 作 フィルムメイカーズ、他 細倉金属鉱業株式会社 公 開 平成 19 年 4 月 14 日 栗原市 興 行 成 績 16.3 億円 ロ ケ 協 力 せんだい・宮城フィルムコミッション、他 1.直接的経済効果 ・ロケ隊消費額:1 億 2,011 万円(制作会社へのヒアリングより) 2.副次的経済効果 ・観光客消費額:3 億 4,764 万円 合計:4 億 6,775 万円 経 済 効 果 【付記】 ・ 観光客消費額の推計は以下の通り行った。 ・ ロケのために制作されたオープンセットはセットの所有者である細倉金属鉱業 (株)によって一般に公開されている。よって、ここを訪れる観光客はすべて上 映効果によるものとみなした。 ・ ただし、オープンセットの観光入込客数に関するデータは存在しないので、平成 19 年 5 月 10 に朝日新聞(インターネット版)に掲載されたゴールデンウィーク 期間中のデータを利用する。 ・ なお、栗原市の観光統計によれば、ロケ地となった同市鶯沢地区における映画公 開後半年間の同地区への観光入込客数は対前年度比 3,174 人の減少となってい る。このため、他の観光地への上映効果はないものとした。 ・ 次に、国道交通省「旅行・観光消費動向調査」の東北への旅行中に消費する1 人 あたり消費額(日帰り:12,236 円、宿泊:48,107 円)を用いて観光客消費額を算出する が、日帰り・宿泊者数は宮城県「観光統計概要」より、県の平均値(日帰り:宿泊 =85.7:14.3)を利用して按分した。結果は以下の通り。 観光入込客数(人) 備考 オープンセット 20,000 平成 19 年GW期間中の入込客数 観光消費(日帰客):17,131 人×12,236 円=2 億 0,961 万円 観光消費(宿泊客): 2,869 人×48,107 円=1 億 3,803 万円 合 計:3 億 4,764 万円 資料出所:朝日新聞(インターネット版、平成19 年 5 月 10)