• 検索結果がありません。

江刺開発振興株式会社(岩手県奥州市)

第 4 章 オープンセットの経済性

1 江刺開発振興株式会社(岩手県奥州市)

会社名  江刺開発振興株式会社(歴史公園「えさし藤原の郷」) 所在地  〒023-1101 岩手県奥州市江刺区岩谷堂字小名丸

86-1

奥州市

歴史公園 

「えさし藤原の郷」 

設立  平成

5

5

18

代表者  代表取締役社長 相原正明(奥州市長)

資本金 

1

8,500

万円

従業員数 

72

名(うち、正社員

24

名)

最近の主なロケ実績 

(平成 14 年〜) 

映画

・ 「shinobi」松竹(平成

16

年)

・ 「陰陽師

2」東宝(平成 15

年)

テレビドラマ

・ 「風林火山」NHK(平成

19

年)

・ 「義経」NHK(平成

17

年)

・ 「里見八犬伝」TBS(平成

17

年)

・ 「時空警察捜査一課PART4」日本テレビ(平成

16

年)

・ 「はぐれ刑事」テレビ朝日(平成

16

年)

・ 「時空警察捜査一課〜聖徳太子編〜」日本テレビ(平成

15

年)

・ 「利家とまつ」NHK(平成

14

年)

・ 「武将・九戸政実」NHK(平成

14

年)

CM

・「オロナミンC」大塚製薬(平成

16

年)

● 設立の経緯 

・ 平成

3

年に平成

5

年放送予定のNHK大河ドラマ「奥州藤原四代(仮題)」(後に「炎立 つ」に改められる)が決定。平成

2

年ごろから旧江刺青年会議所が「清衡の里・江刺」

運動を展開していたことやその後の市の積極的な誘致活動が実り、平成

4

年にメインロ ケ地に選ばれる。

・ 市では大河ドラマを一過性のもので終わらせるのではなく、地域の歴史を顕彰しながら 将来の地域振興に結びつけるため、仮設オープンセットを元に本格的な平安建築を再現 することを決定。国や県、NHKの支援を受けながら歴史公園「えさし藤原の郷」が整 備される。

・ また、市では「えさし藤原の郷」の管理運営にあたって第

3

セクター「江刺開発振興株 式会社」を設立し、民間のノウハウを導入するとともに効率的かつ弾力的なサービスの 提供に努めている。

● 施設の概要 

・ 「えさし藤原の郷」は旧江刺市が市の向山総合公園(35ha)の一部に造った平安時代 をモチーフとする全国でも珍しい歴史テーマパークである。

・ 総事業費

36

8

千万円は、市の一般財源から

10

1,600

万円を拠出したほか、県の

補助金

1

5,000

万円と

25

1,400

万円の起債によって賄われ、

20ha

もの広大な敷地

117

棟(現在

123

棟)の歴史建造物が整備された。

・ 平成

5

7

月の開園以来、園内には「お休み処えさし藤原の郷」を平成

6

年に開業させ たほか、平成

7

年には「放送ふれあい館」と野外ステージ「舞楽殿」を、平成

9

年には

「天空館」をそれぞれ開業させている。また、平成

17

年に放映されたNHK大河ドラ マ「義経」のロケに使用された「義経屋敷」や「義経持仏堂」、「安宅関」も保存・公開 している。平成

18

年には、これまでに同園でロケが行われた映像関連資料を一般公開 するため、「放送ふれあい館」を閉館して新たに「ロケ資料館」をオープンさせるなど、

多くの観光客を楽しませている【下図参照】。

・ 同園への入場は有料(大人

800

円)となっており、年間

10

万人以上の入場者数がある。

同施設では原則的にロケを公開しているため、最近ではロケ目当ての観光客も少なくな い。たとえば、平成

17

年のNHK大河ドラマ「義経」のロケが行われていた時期には 例年以上の観光客が訪れ、年間入場者数は前年の約

2

倍となる

24.1

万人を記録した【下 図参照】。

14.1 13.2

24.1

12.2 10.8

15 20 25 30

(万人)

平成 18 年に完成した「ロケ資料館」 

・ このほか、同園ではさまざまな誘客事業に取り組んでいる。たとえば、施設整備のきっ かけとなったNHK大河ドラマ「炎立つ」にちなんで「炎がいどくらぶ」を立ち上げて 観光案内人を養成しているほか、ロゴやキャラクターの開発、関連商品の開発なども行 っている。また、ロケで訪れた俳優や芸能人を招いてトークショーを開いたり、郷土芸 能「江刺鹿踊」の定期公演会を開催したり、ロケで培ったノウハウを生かした「時代衣 装着付け体験」などの企画も数多く手がけ、多くの観光客から好評を得ている【下図参 照】。

● ロケ誘致・支援体制 

・ NHK大河ドラマ「炎立つ」のロケ以来、ロケ協力はもとより地域の観光振興や歴史文 化の顕彰等、地域活性化に役立つ事業を行うために「大河ドラマ協力実行委員会」が中 心になってロケ誘致・支援活動を展開している。

・ 同委員会は旧江刺市、岩手県、NHK盛岡放送局、市内関係団体をはじめ、県内報道各 社、県内大手旅行代理店など

90

団体で構成されており、平成

4

4

月に発足している。

役員は市長(会長)ほか、岩手県知事、盛岡大学長、作家など

78

名で構成されている。

・ 同委員会は市役所内(現・奥州市江刺総合支所)に実施本部(本部長:助役)を設けて おり、その下に「総務」、「ロケ対策室」、「会場建設」、「会場運営」、「物産観光」、「歴史 顕彰」、「交通対策」の

7

つの専門部会が官民一体となって組織されている。

・ ロケの際には支所の職員をはじめ、実行委員会のボランティアスタッフ

400

名が警備や 接待、臨時施設の設置などを行うほか、市民や県外在住の愛好家からなる「江刺エキス トラの会」(登録者約

1,100

名)がエキストラの手配や出演などの協力を行っている。

・ また、映像制作者への施設の貸し出しも有料にて行っている。

● 継続的ロケ誘致と誘客効果 

・ 平成

5

年の開園以来、「えさし藤原の郷」では合計

70

本以上の映像(映画、テレビ、C Mなどの)ロケが行われている。同園では全国的にも珍しい平安建築などの施設を撮影 に使用できることが制作者に対する大きな 売り となっていると思われるが、時代劇 を中心とした新たなロケニーズをうまく開拓できたという点がこれまで継続的にロケ 誘致を図れてきた最大の理由であると考えれらる。

左から、時代衣装着付体験、ハマグリ絵付体験、弓矢体験、鎧着付体験の様子 

・ 他方、前述したように、同園では毎年

10

万人以上の誘客実績を残しており、年間およ そ

7

千万円の入場料収入がある。また、園内の付帯レストランでも毎年

6

万人ほどの利 用客があり、飲食代や土産販売も大きな収益の柱となっている。一般的に、オープンセ ットは維持・管理に費用がかかることや継続的に集客を図ることが難しいなどの理由か らロケが終わり次第取り壊されることがほとんどである。しかし、同園の事例を見ても わかるように、オープンセットを地域資源として活用できる道も十分残されている。

・ 近年、東京ディズニーランドの成功をきっかけにしてわが国には数多くのテーマパーク が造成されてきたが、バブル経済の崩壊やその後の長引く景気低迷などの影響から多く のテーマパークが経営不振に陥っているといわれる。そうした中にあって、地方発のテ ーマパークでこれだけ継続的に集客実績を残せているという点は注目されるべきこと である。しかも、その原動力となっているのは本格的な平安建築という施設の性格はも とより、継続的な映像ロケであるということも強調されるべきであろう。

・ ただし、同園を運営する江刺開発振興株式会社によれば、団体客の

8

割は県外の観光客 であるにもかかわらず、市内には大規模な宿泊施設や温泉地が少ないことから宿泊費や 飲食費などの観光支出の多くが地域の外へ流出してしまっており、大きな課題だとい う。

・ 現在、地域の中でより多くの誘客効果が得られるようにと、奥州市をはじめ市内の各経 済団体や大手旅行会社が連携し、同園を市内観光の拠点とするような街づくりに取り組 んでいる。平泉の文化遺産をはじめ、地域に点在する資源を結び付けることで地元の商 店街などへも観光客が回遊するような観光地を目指しており、同園を核とした地域力も 少しずつ培われている。このような観点は今後の地域づくりのあり方にとっても非常に 有益であると思われる。

2 庄内映画村株式会社(山形県鶴岡市)

会社名  庄内映画村株式会社

所在地  〒997-0158 山形県鶴岡市羽黒町松ヶ岡字松ヶ岡

29

番地

 

(写真左:「松ヶ岡オープンセット」、同右:「石倉オープンセット」) 

庄内映画村 

設立  平成

18

7

7

代表者  代表取締役社長 宇生雅明

資本金 

1,750

万円

従業員数 

6

名(うち、正社員

3

名)

最近の主なロケ実績   

映画

・ 「ICHI」ワーナー・ブラザース映画(平成

19

年)

・ 「山桜」東京テアトル(平成

19

年)

・ 「おくりびと」松竹(平成

19

年)

・ 「スキヤキ ウェスタン ジャンゴ」ソニー・ピクチャーズ・エ ンタテインメント(平成

18

年)

● 設立の経緯 

・ 平成

17

年に公開された映画「蝉しぐれ」のプロデューサーを務めた宇生氏は、映画の ロケが庄内地方に大きな元気をもたらしていることに感銘を受け、引き続き同地に映画 のロケを誘致して、地域を活性化したいという想いを募らせる。

・ 平成

17

8

月頃、映画「蝉しぐれ」の制作会社が時代劇を

2

本撮る予定であるという 情報を聞きつけた宇生氏は庄内でのロケを積極的に働きかけ、制作会社から内諾を得る ことに成功する。

・ しかし、庄内ロケを実現するためにはロケ費用を自ら工面しなければならなかったた め、映画「蝉しぐれ」のロケで知り合った地元の関係者らへ相談したところ、法人を設 立して資金を集めようということとなった。庄内地方一円から

35

の団体や企業などが 法人設立のための出資要請に応じ、平成

18

7

月に同社を設立した。

・ すでに庄内でのロケの内諾を得ていた映画「スキヤキ ウェスタン ジャンゴ」(三池崇 史監督、平成

19

年公開)は、同社がロケを誘致し、支援する最初の作品となった。

・ その後、平成

19

年には「おくりびと」、「山桜」、「ICHI」(いずれも平成

20

年春以 降に公開予定)のロケを立て続けに誘致し、同社の名はたちまち映画業界に知れ渡る。

平成

20

年中の映画ロケを

4

本内定させるなど、同社の映画ロケ誘致・支援の取り組み に関しては各方面から大きな注目が集まっている。

● 施設の概要 

・ 国定史跡・松ヶ岡開墾場(山形県羽黒町、現在は市町村合併により鶴岡市)にある大蚕 室を改修して作られた「蝉しぐれ資料館」を平成

18

7

月に鶴岡市から譲与され、現

関連したドキュメント