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映画制作会社のニーズ 〜 映画制作会社へのアンケート調査より 〜

第 3 章 映画ロケ受け入れ及び映画公開後の課題

1 映画制作会社のニーズ 〜 映画制作会社へのアンケート調査より 〜

映画制作会社がロケ地としての東北にどのような魅力や課題を感じているのか把握する ためにアンケート調査を行った。結果は以下のとおりである。

(1)

アンケートの概要

アンケートの対象: 時事通信社『映画年鑑

2008

』に掲載されている「映画関係商社 録」の中から映画制作業務を行っている

84

社を対象とした。ま た、同年鑑への記載はないが、平成

14

年以降に東北でロケを行 った制作会社

13

社も加え、合計

97

社を対象とした。

アンケートの方法: 郵送法

アンケートの期間: 平成

20

2

7

日〜18日 有効回答数: 28社(有効回答率

28.9%)

(2)

制作会社のニーズ

① 映画制作実績:年間本制作数はおよそ

2

本程度 

初めに最近

5

年間に制作した映画の本数をたずねてみた。最も制作本数が多かった会社 で

200

本という回答もあったが、おおむね

10

本未満という回答が多く、25 社中

14

(56.0%)はこのカテゴリーに分類された。

なお、1社あたりの平均制作本数を計算すると

22

本となるが、100本以上の制作実績が あるとした

2

社を除いて平均値を算出し直すと、1社あたり

11

本、各社とも年間およそ

2

本程度の実績であった【図表 3-1参照】。

図表

3-1

最近

5

年間に制作した映画の本数

5社

16社

10〜49本 0〜9本

(n=25)

② 首都圏以外でのロケ実績:制作会社の

89%が実績あり(東北ロケは 46%が実績あり)

過去

5

年間に制作した映画の中に首都圏を除く地域でロケを行った作品があるかどうか たずねてみた。ロケを行った作品があると回答した制作会社は

88.9%となっており、制作

会社の多くは首都圏以外でロケを行った実績を有している。このうち東北でロケを行ったと 回答した制作会社は

55.6%であった【図表 3-2

参照】。

なお、サンプルを抽出する際に東北でロケを行った実績がある制作会社を意図的に

13

社 追加しているので、この会社からの回答を除いて集計してみたが、それでも

45.5%の制作

会社が東北でロケを行った実績があると回答した【図表 3-3参照】。

図表

3-2

首都圏を除く地域におけるロケ実績(対象:すべてのサンプル)

55.6%

33.3%

11.1%

東北でロケを行った映画がある

東北以外(首都圏除く)でロケを行った映画がある 首都圏以外ではロケを行っていない

(n=27)

図表

3-3

首都圏を除く地域におけるロケ実績(対象:『映画年鑑』掲載会社のみ)

45.5%

40.9%

13.6%

東北でロケを行った映画がある

東北以外(首都圏除く)でロケを行った映画がある 首都圏以外ではロケを行っていない

(n=22)

③ 東北でロケを行った理由:「原作の舞台が東北だから」(46.7%)

東北でロケを行った実績があると回答した制作会社に対しては、なぜ東北でロケを行った のかその理由についてもたずねてみた(複数回答)。最も回答が多かったのは「撮ろうとす る映画の舞台(背景)となっている土地だったから」で、制作会社の

46.7%がロケを行っ

た理由に挙げた。近年は「アヒルと鴨のコインロッカー」や「蝉しぐれ」などのように、東 北を舞台にした小説が数多く映画化されている。制作会社は映画化しようとする原作がある 場合、多くはその舞台となった地域でロケも行う傾向が強いということが推察される。言い 換えれば、東北には映画の題材にされている素材が多いということでもあろう。

また、「FCやロケ支援組織があったから」と回答した制作会社も

33.3%になっており、

ロケの受け入れ体制があるということも東北でロケを行った決め手になったようである。こ のほか、「その他」(20.0%)の理由として「美術スタッフの出身地で人脈が地域にあったか ら」という理由が挙げられているように、人脈や地域との縁でロケが行われているケースも みられる【図表 3-4参照】。

図表

3-4

東北でロケを行った理由(複数回答)

<その他>

自分がかつて遊びに行って

強力に協力してくれる企業があったから

美術スタッフの出身地で人脈が地域にあったから

20.0 0.0

13.3 13.3

20.0 20.0 20.0 20.0 20.0

33.3

46.7

0 10 20 30 40 5

撮ろうとする映画の舞台(背景)となっている土地だったから FCやロケ支援組織があったから 関係者(監督・スタッフなど)の推薦があったから かつて、別な作品のロケをやった時の人脈が地域にあったから 地元からの強い願望(売り込み)があったから 制作費や宣伝費の一部を地元で負担してくれたから たまたまロケで使えそうな風景や建物があったから その地域にロケ誘致の実績があったから 撮影に利用できる設備(オープンセット、機材など)が整っていたから 他と比べて、ロケ費用(旅費、宿泊費など)が安かったから その他

(%)

(n=15)

0

④ 東北が持つロケ地としての「強み」:手付かずの自然や風景、潜在的な素材が魅力 制作会社にとって東北のどのような点に魅力を感じているのか、ロケ地としての東北の

「強み」についてたずねてみた(選択は

3

つまで)。回答が最も多かったのは「オープンセ ットなどを作りやすい広大な土地がある」と「古い街並みが比較的残っている」で、制作会

社の

60.0%が東北の「強み」として挙げた。また、

「映画の題材になりそうな素材が多い」

40.0%の制作会社が「強み」に挙げている。手付かずの自然や風景、潜在的に残されて

いる素材などへの注目度が高くなっている【図表 3-5参照】。

図表

3-5

東北の「強み」(選択は

3

つまで) 

     

0.0

13.3 13.3 13.3

26.7 26.7

40.0

60.0 60.0

0 10 20 30 40 50 60 70

オープンセットなどを作りやすい広大な土地がある 古い街並みが比較的残っている 映画の題材になりやすそうな素材が多い 四季がはっきりしている ロケに対する住民の理解が進んでいる 首都圏からのアクセス 爆破シーンなどの特殊撮影がやりやすい ロケに対する行政の支援体制が整っている ロケ費用を安くしている

(%)

(n=15)

⑤ 東北が持つロケ地としての「弱み」:コスト高、支援体制の整備状況

一方、東北がロケ地としては劣っていると考える点についてもたずねてみた(選択は

3

つまで)。多くの制作会社が選んだのは「首都圏からのアクセス」であり、75.0%の制作会 社が「弱み」に挙げた。また、「ロケ費用を安くできる」という点に関しても東北の「弱み」

に挙げた制作会社が

41.7%にものぼることから、制作会社の多くは地理的に遠いことから

移動費や宿泊費がかさむことを敬遠していると思われる。 

なお、「ロケに対する行政の支援体制が整っている」も

25.0%の制作会社が「弱み」に挙

げていることから、ロケ誘致を活発化するためには支援体制の整備・充実を図っていくこと も必要であると考えられる【図表 3-6参照】。 

図表

3-6

東北の「弱み」(選択は

3

つまで) 

0.0 0.0 0.0 0.0

8.3 8.3

25.0

41.7

75.0

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

首都圏からのアクセス ロケ費用を安くできる に対する行政の支援体制が整っている 四季がはっきりしている 爆破シーンなどの特殊撮影がやりやすい オープンセットなどを作りやすい広大な土地がある 古い街並みが比較的残っている 映画の題材になりやすそうな素材が多い ロケに対する住民の理解が進んでいる

(%)

(n=12)

     ロケ        

⑥ 地域との交流に関する意向:制作会社の多くが地域との交流を求めている 

ロケ誘致の社会効果を最大化するため、地域との交流に関する以下の

6

つの項目に関し て制作会社がどのような意向を持っているか

5

肢択一形式でたずねてみた【図表 3-7参照】。

まず「住民エキストラの活用」であるが、制作会社の

92.6%が「やってもよい」と考え

ており、「できればやってもよい」(7.4%)と合わせると回答した制作会社のすべてが前向 きにとらえている。これは、第

2

章でも示したように、多くの作品にエキストラやボラン ティアスタッフなどの形で地域住民がかかわっている実態とも符合する。制作会社としても 地域住民と一体になって映画作りを進めたいという意向が強いようである。

2

つめは「地元での先行上映会(試写会)」であるが、「やってもよい」(59.3%)と「で きればやってもよい」(37.0%)を合わせると

96.3%の制作会社が前向きにとらえている。

上映会はロケに携わった住民同士で達成感や一体感を共有できるまたとない機会である上 に、地域としても映画を通して自分たちの街をPRできる。制作会社のこうした意向を地域 づくりに活用してもよいだろう。

3

つめは「制作発表会(記者会見)」である。制作会社としては映画のPRにもつながる ことから「やってもよい」(37.0%)と「できればやってもよい」(48.1%)を合わせると

85.1%が前向きであった。地域としてはロケがやってくることを周知して映画に興味や感心

を持ってもらったり、誘客のための広報材料として活用することも可能であろう。

図表

3-7

地域との交流に関する制作会社の意向

                   

14.8 29.6 25.9 29.6

25.9 33.3 18.5 14.8 7.4

37.0 18.5 18.5 18.5 7.4

37.0 48.1 7.4 3.73.7

59.3 37.0 3.7

92.6 7.4

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

住民エキストラの活用 地元での先行上映会(試写会)

制作発表会(記者会見)

ロケ情報(撮影場所、時間など)の公開 ロケ見学会 俳優や監督との握手会やサイン会

やってもよい できればやってもよい どちらとも言えない できればやりたくない やりたくない

(n=27)

 

ところで、「ロケ情報(撮影場所、時間など)の公開」や「ロケ見学会」については、ロ

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