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ロケ誘致・支援に関する受け入れ側の課題

第 3 章 映画ロケ受け入れ及び映画公開後の課題

2 ロケ誘致・支援に関する受け入れ側の課題

今年度、東北経済産業局では本調査と平行して「東北地域における映像産業の現状と課題 及び振興の方向性に関する調査」を実施している10。この調査は、これから東北において映 画やテレビドラマなどの「映像」に関連する産業の育成や振興を図っていく上で必要となる 指針や方向性を導くために実施しているものである。この調査の中で東北の全市町村に対し てアンケート調査を行い、各市町村における映像(映画、テレビドラマ、CMなど)ロケの 誘致や支援などに対する取り組み状況について聞いており、映画ロケの誘致と上映後の課題 を抽出する上でも大変参考になる結果が多く含まれている。このため、ロケを受け入れる側 の実態を把握するための資料としてこのアンケート調査の結果を一部掲載することとした。

なお、掲載する内容は、ロケ誘致に取り組んでいる(または予定している)市町村を中心 とした回答結果である。

(1)

アンケートの概要

アンケートの対象: 東北の全市町村(231市町村)

アンケートの方法: 郵送法

アンケートの期間: 平成

19

11

2

日〜16日 有効回答数: 190市町村(有効回答率

82.3%)

(2)

受け入れ側の課題

①ロケ誘致に向けた活動状況:ロケ誘致に取り組んでいる市町村は

12.6

%(

24

市町村) 

現時点ですでに映像ロケの誘致や支援を「している」市町村は

12.6%(24

市町)となっ ている。「していないが今後予定(検討)している」と回答した市町村(25.3%、

48

市町村)

もあわせると、映像ロケの誘致や支援に前向きな姿勢を示している市町村は

37.9%(72

市 町村)となっている【図表 3-11参照】。 

図表

3-11

ロケ誘致に向けた東北各市町村の活動状況 

12.6%

25.3%

2.6%

(n=190)

②ロケの意義や効果:経済効果への関心が高い 

ロケ誘致やロケ支援に取り組む市町村では、ロケを受け入れることによって「ロケ地など を訪れる観光客が増加する」(81.7%)、「対外的な地域イメージが向上する」(62.0%)、「ロ ケ隊の活動によって地元経済が潤う」(45.1%)ことに意義や効果を見出しているところが 多い。ロケを受け入れることによって生じる経済効果への関心が高い様子がうかがえる【図 表 3-12参照】。

図表

3-12

受け入れ側が考えるロケの意義や効果(選択は

3

つまで)

1.4 2.8

14.1 19.7

33.8 45.1

62.0

81.7

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 特に意義を感じない

その他 ロケにちなんだ商品開発や販売が促進される 住民同士の交流が活発化する 地元の人の歴史・文化への関心が高まる ロケ隊の活動によって地元経済が潤う  対外的な地域イメージが向上する ロケ地などを訪れる観光客が増加する

(n=71)

(%)

③ロケを受け入れる際の主な窓口:FCを設立して対応している 

すでにロケ誘致に取り組んでいる市町村では

78.3%が「FC」でロケを受け入れている

としており、ロケの受け入れ窓口が明確になっている。他方、今後ロケ誘致活動を予定して いる市町村では

48.3%が「特に決まっていない」としている。映画制作会社へのアンケー

トでは、許認可に関する行政当局のスピーディな対応を含め、包括的なロケ支援を求める声 が高いことから、ロケ誘致に意欲的な市町村ではFC設立も含めた検討が望まれる【図表

3-13

参照】。 

図表

3-13

ロケの受け入れ窓口(複数回答)

4.2 4.3

10.4 17.4

35.4 21.7

43.8 8.7

14.6

78.3

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 その他

観光協会 行政機関 特に決まっていない FC

すでにロケ誘致活動をしている(n=23) 今後ロケ誘致活動を予定している(n=48)

(%)

④制作会社への働きかけ:ロケ地情報の発信が中心 

現在すでにロケ誘致に取り組んでいる

23

市町村が制作会社へ行っている働きかけとして 最も多いのは「ホームページ(HP)による地元のロケ資源紹介」であり、全体の

60.9%

が取り組んでいる。また、「ロケ資源ガイドブックなどの作成・配布」も

30.4%の市町村が

取り組んでおり、地域のロケ資源をPRする動きが盛んに行われている。ただ、映画制作会 社に限ってみれば先のアンケート調査で結果を示したように【52ページ、図表 3-9参照】、 ロケ地情報の発信に対するニーズはあまりない。制作会社がほしい情報がどのようなもので あるのか、さらに彼らのニーズを深堀りするとともに、情報発信の仕方にもなんらかの工夫 を加える必要があると思われる【図表 3-14参照】。

図表

3-14

制作会社への働きかけ(複数回答)

4.3

17.4 21.7 21.7

30.4 30.4

60.9

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 HPによる地元のロケ資源紹介  

ロケ資源ガイドブックなどの作成・配布 映画制作関係者との定期的な情報交換 職員による制作会社などへの売り込み 近隣市町村と連携しPR   特に何も行っていない その他

(%)

(n=23)

⑤ロケにおいて難しい対応:エキストラの確保に苦心 

ロケを受け入れる側が最も対応に苦心しているのが「エキストラの確保」であり、すでに ロケ誘致を行っている市町村の

61.9%が難しい対応のひとつに挙げている。ロケによって

は平日の日中に行われるものから夜中や朝方に行われるものまでさまざまあり、たとえば会 社勤めの人が参加するのは難しい時間帯が多い。しかし、エキストラの確保については映画 制作会社が地元に協力をお願いしたい項目として上位に挙げており【51 ページ、図表 3-8 参照】、ニーズが高い。人材の確保とスムーズな提供が実現できればロケ誘致の大きな 売 り になることも考えられる。

また、「時間外や休日に及ぶ対応」(28.6%)や「複数の市町村にまたがる撮影での他の市 町村との調整」(23.8%)もそれぞれ対応に苦心している様子がうかがえる。FCの多くが 市町村などの公的機関の職員によって運営されているケースが多いことが対応を困難にさ せている要因だと考えられる。これらに関してもロケ支援のスムーズな対応を考えれば、や はり準民間的かつ広域的な運営体制のあり方についても検討してみる必要がありそうであ る【図表 3-15参照】。

図表

3-15

ロケにおいて難しい対応

9.5 14.3 14.3

23.8 28.6

61.9

0 10 20 30 40 50 60 70

エキストラの確保 時間外や休日に及ぶ対応  複数の市町村にまたがる 撮影での他市町村との調整

制作者のマナーが悪い 撮影のための許認可を 得るのに時間がかかる 特にない

(%)

(n=21)

⑥継続的な誘致のために必要なこと:人材の確保、ノウハウの継続が大切 

すでにロケ誘致に取り組んでいる市町村においても、また、これからロケ誘致に取り組も うとしている市町村においても継続的にロケ誘致を行っていく上で大切だと考えているこ とは人材の確保のようである。すでにロケ誘致に取り組んでいる市町村では

56.5%が「専

任者(コーディネーターなど)の確保・補強」が大切だと考えており、これから取り組む市 町村においても

42.2%が大切だとして、それぞれがトップに挙げている。映画制作会社の

意見にもあったように【53ページ、図表 3-10参照】、担当者が変わるとノウハウが引き継 げないケースも一部では見られることから、専任者の確保やたとえ異動があってもノウハウ をうまく引き継げる仕組みづくりが必要である【図表 3-16参照】。

図表

3-16

継続的な誘致のために必要なこと(複数回答)

2.2 0.04.4 8.7

4.3 13.3 0.0 17.8

8.9 17.4 13.3

17.4 17.4 28.9

28.9 30.4

37.8 21.7 28.9

56.5 31.1 56.5 42.2 56.5

0 10 20 30 40 50 60 7 その他

行政内部の理解  地域住民の啓蒙  誘致対応マニュアルの整備  撮影のための許認可を取りやすい体制 エキストラの確保 予算の確保 ロケ地の積極的なPR 市町村の枠にとらわれない広域的な取り組み ロケ資源の確保、整備 映像制作者との人的ネットワーク 専任者(コーディネーターなど)の確保・増強 

すでにロケ誘致活動をしている(n=23) 今後ロケ誘致活動を予定している(n=45)

0

⑦ロケ受け入れの効果を最大化する方法:制作会社にも地域イベントへの協力を要請する  第

2

章で示したように、ロケ受け入れの経済効果や社会効果を最大化するためにはロケ 期間中だけでなくロケが終わった後の取り組みも重要である。すでにロケ誘致に取り組んで いる市町村や今後取り組む予定である市町村では「俳優や監督の地元での舞台挨拶やトーク ショウの開催」(48.5%)と「劇場公開に合わせた観光キャンペーンの実施」(同)が重要だ と考えているようである。映画制作会社のアンケート調査結果にもあったように【50 ペー ジ、図表 3-7参照】、映画制作会社としてもこうしたイベントに協力する姿勢を見せている ことから、地域としても前もって各種イベントへの協力を打診し、地域の活性化に役立てる 手立てを講じていく必要がある【図表 3-17参照】。

図表

3-17

ロケ誘致の効果を最大化する方法(複数回答)

5.9

25.0 26.5

41.2 47.1

48.5 48.5

0 10 20 30 40 50 60

その他 オープンセットの保存と公開 ロケ実施に合わせた ツアーなどの開催 ロケ地マップなどの作成・頒布

ロケ地を巡るツアー等の開催 劇場公開に合わせた 観光キャンペーンの実施 俳優や監督の地元での舞台 挨拶やトークショウの開催

(n=68)

(%)

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