第7章 保健体育科の取組
Ⅰ 昨年度の研究概要 研究テーマ 「自らの目標達成のために挑戦する姿勢を育む工夫」 成果と課題 昨年度の長距離走の授業を中心に,個に応じた取組を展開していくことで,生徒の意欲を高め,達 成感を味わうことができるようすべての授業を展開してきた。また生徒に対して細かな声かけにより, 運動が得意な生徒もそうでない生徒も意欲的に活動できている。今後はグループ学習をどのように発 展させ,授業内の時間配分を丁寧に計画していくことが必要である。 Ⅱ 今年度の研究テーマ 「思考力を高める実技授業の工夫」 1 平成 27 年度新体力テストの結果から ア 実態(第1学年男子生徒の新体力テスト平均値) 身長 体重 座高 握力 上体おこし 長座体前屈 反復横跳び50m走 立幅跳 ハンドボール投げ 持久走 平成27年度入学生 168.65 58.74 90.45 40.73 32.60 48.36 58.96 6.99 222.96 25.30 336.95 平成26年度入学生 169.91 58.32 90.56 41.12 33.88 52.13 59.12 7.27 215.66 24.03 338.72 平成25年度全国 168.30 58.29 89.79 38.69 29.95 47.46 55.47 7.45 217.65 24.82 385.71 イ 分析と考察 本校の第1学年男子生徒の体格は全国平均とほぼ同じである。また体力を見ると,すべての項目に おいて全国平均を上回っているものの,「投力」を診る指標であるハンドボール投げにおいては全国 平均との差があまりない。このことは体力要素のバランスが悪いということがいえる。 「投げる」という動作は日常生活においてはあまりない。ところが「投げる」という動作はさまざ まな運動・スポーツに繋がる動きであることから,生涯にわたってスポーツを楽しむためにも高めて おくことが重要である。 2 研究の基本的な考え方 ア 生徒に身に付けさせたい力 ネット型球技の基本技術及びゲームの方法を身に付けさせ,生涯にわたってゲームを楽しむこと ができる。また,仲間とのコミュニケーションを多く取り入れることで,正しい言葉で説明し,表 現できる能力を育てたい。 イ 力を身に付けさせるための手立て 生徒自身に思考錯誤させ,仲間とともに課題を解決していく授業形態を取り入れることで,「○ ○ができるようになった」と達成感を経験させる。中でも仲間に運動の技術を説明したり,小グル ープで議論する時間を多く取り入れるよう工夫する。Ⅲ 体育科学習指導案
授業者 松谷 清志 1 日 時 平成 27 年 11 月6日(金) 第5限 2 場 所 第一体育館 3 対 象 普通科1年3H・4H 男子9名(柔道選択者) 4 単元名 球技 バドミントン 5 単元について (1)単元観 《機能的特性》 レクリエーション的に体験している者が多いので,取り組みやすく,初歩的段階では比較的簡単 にラリーが続き,楽しむことができる。 《構造的特性》 定まったコートの中央のネットをはさみ,ラケットを使って羽根(シャトル)を常にノーバウン ドで,しかも全て1打で打ち合う球技に属する対人スポーツである。 他のスポーツ用具には見られない得意な形をした羽根(シャトル)は,その形状から緩急のスピー ドの差や独特な飛び方が生まれる。 《効果的特性》 シャトルの飛び方やそのスピードの差により,その変化に対応できる身体的能力(パワー・敏捷 性・全身持久力・巧緻性など)や空間感覚の向上を図ることができる。 ゲームではより的確な状況判断,予見の能力,作戦の工夫や個人の責任及びダブルスにおけるパ ートナーとの協力性なども育成できる。 (2)生徒観 対象の9名の生徒は,全員運動部に所属しており,新体力テストにおいてもB判定以上であり体 力的に恵まれているといえる。しかしながら,種目によってはかなりの技能差が現れることから, 巧緻性については発展途上にあるといえる。 学習に対する意欲は高く,どの種目についても積極的に取り組む姿勢が見られる集団である。 (3)指導観 本単元においては,仲間に対して技術的な課題や有効な練習方法の選択について指摘し合わせ ることで,技能の向上を図りたい。また毎時間のルーティンワークにより,パワー・敏捷性・全 身持久力・巧緻性などの身体能力を高めていきたい。 6 単元の目標 ○ バドミントンに関心を持ち,楽しさや喜びが味わえるように,自分の役割を自覚してその責任 を果たし,互いに協力して練習やゲームをしようとするとともに勝敗に対して公正な態度をと ろうとする。【関心・意欲・態度】 ○ 課題を設定し,その課題を解決するための方法を選んだり,見付けたりできるようにする。相手との攻防に合った作戦を立てたり,練習やゲームで新しい課題を選んだり,見付けたりでき るようにする。【思考・判断】 ○ 個人的な技能を身に付け,練習やゲームをすることができるようにする。【運動の技能】 ○ 特性や学び方,個人的な技術やパートナーとの動きの調整の仕方の構造,合理的な練習の仕方, ゲームや審判の方法について,言ったりできるようにする。【知識・理解】 7 単元の評価規準 関心・意欲・態度 思考・判断・表現 技能 知識・理解 ゲームに積極的に 取り組み,勝敗を競 い合う楽しさや喜び を味わえるようにす る。 また,自分の役割 を受け止め,協力し ようとするとともに 審判の判定や指示に 従い,勝敗の結果を 受 け 止 め よ う と す る。 さらに活動場所の 安 全 を 確 か め , 健 康・安全に留意しよ うとする。 自ら課題を設定し, その課題を解決する ための方法を選んだ り,見付けたりする。 また,相手との攻 防に合った作戦を立 てたり,練習やゲー ムで新しい課題を選 んだり,見付けたり する。 ゲームの中でハイ クリア,ドロップ, ドライブ,ヘアピン, スマッシュ,サービ スが打てる。 バドミントンの特性 や学び方,個人的な 技術や合理的な練習 の仕方,ゲームの審 判法の方法を言った りしている。 8 指導と評価の計画(全 10 時間) 次 学習内容(時数) 評 価 関 考 技 知 評価規準 評価方法 1 ○オリエンテーション(1時) ・学習の進め方について理解 する。 ・競技の特性について理解す る。 ・学習上の約束と用具の準備 やマナー・安全への配慮に ついて理解する。 ・用具の名称・内容について 理解する。 ◎ バドミントンはシャトル のスピードに緩急をつけた り,相手の予測をはずした りしてラリーを楽しむ特性 があることを言ったりして いる。 行動観察 2 ねらい1(1時) 基本的な技能を身につける ○ラケットの握り方 ○サービス,各ストロークの 練習 ○ ◎ ○ 練 習 場 所 の 安 全 を 確 か め,協力して準備を行い, 危険なプレーをしないな ど,健康・安全に留意し よう とする 。【関心・ 意 行動観察 質 問 へ の 反応
・オーバーヘッドストローク (フォア・バック) ・サイドアームストローク (フォア・バック) ・アンダーハンドストローク (フォア・バック) 欲・態度】 ◎バドミントンの技能を高 める練習方法について具 体例 を挙げて いる。【 知 識・理解】 3 ねらい2(4時) 個人的な技能を高めながらゲ ームを楽しむ ○フライトの練習 (クリアー・ドロップ・スマ ッシュ・プッシュ・ヘアピン) ○ミニゲーム ・ヘアピン,プッシュのみで ミニゲーム ・クリアーからのスマッシュ ◎ ○ ◎練習から課題を解決する 具体的な方法を見つけて いる。【思考・判断】 ○ 正 確 に シ ャ ト ル を と ら え,コントロールするこ とができている。【運動の 技能】 行動観察 4 ねらい3(4時) 相手や状況に応じた技能を高 めながらゲームを楽しむ ○まとめのゲーム ・審判や得点係をしながらゲ ームを行う。 ○学習のまとめ ・練習やゲームの振り返りを 行う。 ・仲間の良かった所を挙げる。 ◎ ○ ◎審判の判定や指示を受け 入れ,冷静に対処しよう とする。【関心・意欲・態 度】 ○審判の方法やゲームの運 営の仕方について具体例を 挙げて説明している。【知 識・理解】 行動観察 9 本時の展開 (1)本時の目標 「ヘアピン」の打ち方を知る。 (2)観点別評価規準 練習から課題を解決する具体的な方法を見つけている。【思考・判断】 正確にシャトルをとらえ,コントロールすることができている。【運動の技能】 (3)準備物 バドミントンラケット,シャトル,支柱,ネット (4)学習の展開 学習活動 指導上の留意事項 評価規準 評価方法 ○集合,挨拶,出欠確認, 健康観察 ○体調不良者及び見学者 には別メニューを指示 する。 練習場所の安全を確か め,協力して準備を行 い,危険なプレーをし 行動観察
○ラジオ体操,補強運動 ○本時の内容を知る ○十分なウォームアップ となるよう指示する。 ○本時の流れと課題を知 らせ,見通しを持って 学習ができるようにす る。 ないなど,健康・安全 に 留 意 し よう と する 。 (関心・意欲・態度) ○ウォームアップルーティ ンを消化する。(素振り, ストローク) ○ヘアピンの技術を知る① 代表者がビデオを見て, グループに伝える。音声 は聞こえない。 ○ヘアピンの技術を知る② 代表者がビデオを見て, グループに伝える。音声 あり。 ○ミニゲームを行う。 ○毎時行うメニューが整 然と実施できるよう指 示する。 ○ビデオ映像を準備し, グループ代表にだけ見 せる。 練習の方法については 集合させて指示する。 ○ポイントをグループ代 表に伝える。 ○ヘアピンとプッシュの みでゲームさせる。 練習から課題を解決す る具体的な方法を見つ けている。(思考・判断) 正確にシャトルをとら え,コントロールする ことができている。(運 動の技能) 行動観察 行動観察 ○片づけ,集合 ○本時のまとめ ○挨拶,解散 ○安全に物品を運ぶよう 留意させる。 ○他者からのアドバイス や打ち方のポイントを 再確認させる。 ヘアピンの打ち方を知ろう ミニゲームをやってみよう
Ⅳ 研究授業後の取り組み 1 研究協議について 授業者から 指導の工夫等 普段よりも生徒人数も少なく,言葉数も少なかった。 授業者も言葉少なになってしまった。 補強ルーティン(補強→素振り)については,いつもと同じ運動強度になるように工夫 している。映像を見せるのは今回が初めて。 伝達力に差があった。リーダーによって伝わり方が違うと思った。 協議・助言等 の内容 ▼積極的に自分たちで学びをすすめる仕掛けがあった。 ウォーミングアップ・ルーティンの素振りやグループリーダーの決め方にも工夫が見ら れた。 ▼グループによって伝達力,読み取る力に差があり,最後までイメージが払しょくでき ずに練習が進んだところもあった。3コートあったが最初の無音VTR 視聴後の伝達にお いても三者三様のイメージであった。(「こする感じ」「滑らせる感じ」「ポンとあてる感 じ」) ▼気づかせる方法として,授業の最初にまずミニゲームをして,そのゲームの質を高め るという目的の中で技能練習を行い,最後に発展的なゲームを行うという形式も本時の 展開で言うと良いのではないか。 ▼今日習得を目指した技能(ヘアピンショット)をゲームの中でどのように使うのか, 説明を加えたり伝える中で,より技能の定着につながるのではないか。リーダー以外の 人間が隣のグループを見たりしていた。授業の中でグループの再編成,呼ぶ人間を変え たり,組み合わせを変えたりするとより活発な学習になるのではないか。ルーティンに ついても素晴らしかったが,いつも同じではなく,「逆ルーティン」等を導入すると面白 い。 ▼今日の男子だけの(運動能力が高く,理解力も高い)グループではなく,女子の授業 であればどうやるのがいいのか考えていきたい。 ▼映像を使用するのは初めてであったが,日頃部活動で行っている感覚で授業に取り入 れてみた。 ▼他教科(芸術科)からの視点で見させてもらい,前回の授業観察でも実技を含めて授 業全体に流れがあって,参考にさせていただく部分が大いにあった。リーダーの決め方, 教え合い,組み合わせ,模範の見せ方などでも全体を見せてからなのか,部分からなの か,工夫がいる。 ▼(他校からの参加)本校でも学びの変革について取り組みが進んでいる。体育は特に アクティブラーニングを取り入れることができる教科だからと管理職に言われて,試行 錯誤している。授業の最初に目的等を伝達するためにホワイトボードを導入したりして いる。すぐ最近まで体育,スポーツでは短い言葉で(効果的に)いかにうまくさせるかとい うのが求められていた気がするが変化の意味を考えている。「考えさせる」というのが本 当に体育でいるのかどうかわからない。何のために,何を考えさせるのか。もっとシン プルにいった方が競技を楽しむには良いのではないか。 ▼これまで様々な研修を受けてきて,思考力,判断力を養うことが大切だということや 会話することが目的ではなく,技能の向上が目的だからそれを外れては駄目だと言われ てきた。形だけにならずに目的を意識するように考えている。リーダーを複数出してみ たり,理解を促進するためのワークシートを使用してみるのも良いのではないか。
今後の課題 ▼授業観察側からすると「(見ていて技能のポイントを)言いたくて,言いたくて仕方が ない」という状態だった。これを気づかせるのがアクティブラーニングであると考えた。 気づかせる,導くための方法論を構築したい。 ▼バドミントン自体に対して経験がない,知らないんだなというのを再認識した。男子 にも関わらず,手打ちになっていた子もあった。授業の最後にはそれなりの形になった が,きちんと見極めて,教え込んでやる部分が必要だと考えた。 ▼保健体育における「学力」とは何かを常に考えて,授業を展開してく必要がある。何 を考えさえ,何を習得させていくのか。 2 今年度の研究授業を終えて 今年度は「思考力を高める実技授業の工夫」を研究課題として研究に取り組んだ。特に実技授業で は,教師が「教え込む」形の授業形態が一般的である。そこを,生徒が主体的に「学ぶ」ことへシフ トさせ,生徒同士で思考させ,教えあうような授業形態にするにはどのような工夫が必要かを試行錯 誤してきた。 研究授業では,技術のポイントを生徒同士で教えあうことによって,生徒自らが課題を発見し,解 決していくことができる。また,教えるということから,主体的にポイントをより深く探ろうとする 姿が見られるのではないかという仮説を立て,授業を実施した。 <授業内容> 目標:バドミントンの打ち方「ヘアピン」を習得する。 ①生徒を3つのグループに分けさせる ②パソコンの映像のみを参考にして,グループに伝える ③パソコンの映像と音声を参考にして,グループに伝える <結果> ・3グループとも三者三様の伝わり方をした。 ・最後まで違いを払拭できずに終了したグループがあった。 ・隣のグループを見て,自分のグループを動かす姿が見られた。 <参観者からの意見> ・授業の最初にまずミニゲームをして,そのゲームの質を高めるという目的の中で技能練習を行い, 最後に発展的なゲームを行うという形式も本時の展開で言うと良いのではないか。 ・授業の中でグループの再編成,呼ぶ人間を変えたり,組み合わせを変えたりするとより活発な学習 になるのではないか。 ・リーダーを複数出してみたり,理解を促進するためのワークシートを使用してみるのも良いのでは ないか。 今回の研究授業は教え込みから,生徒同士の教えあいの形にシフトすることで,生徒の思考や言葉 が活発になったことが成果として挙げられる。しかし,グループを再編成したり,ゲームのどの場面 で使う技術なのかをあらかじめ理解させていない点では課題が残ったといえる。