• 検索結果がありません。

性差医療

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "性差医療"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 689 ~ 690 頁(2015 年). 性差医療. 689. 大会シンポジウム 1. 性差医療* ─性差とライフステージを意識した健康支援─ 小宮ひろみ**. 性差医療の概念. 性差医療の歴史. 性差医療とはどのような医療か。日本における性差医療の先. 性差医療の歴史は,米国からはじまる。1957 年女性ジャー. 駆者である天野惠子医師は「性差医療とは男女比が圧倒的に一. ナリストであった Barbara Seaman は産後緩下剤を投与された. 方に傾いている病態,発症率はほぼ同じでも,男女間で臨床的. が,母乳を飲んだ自分の子が重篤な状態になったことから,女. に差をみるもの,いまだ生理的,生物学的解明が男性または女. 性の健康を守る運動を開始し,1975 年には全米で「全米女性. 性で遅れている病態,社会的な男女の地位と健康の関連などに. 健康ネットワーク」を創設した。一方,1960 年代サリドマイ. 関する研究を進め,その結果を疾病の診断,治療法,予防措置. ド医療事故(妊婦のサリドマイドを含む睡眠薬使用が,出生児. へ反映することを目的とした医療」と定義づけている. 1). 。具体. の四肢に欠陥を惹起)や,1970 年代の diethylstilbesterol(DES). 的に例を挙げたい。まず,男女比が圧倒的に一方に傾いている. 医療事故(妊娠中に DES 投与され女児に腟癌が発症)が発生. 疾患として,たとえば受療率を例に挙げると,男性が高いの. したことから,1977 年アメリカ食品医薬品局(以下,FDA). は,痛風,アルコールによる精神・行動異常,食道の悪性新生. は妊娠の可能性のある女性を新薬の知見に参加させないように. 物などであり,女性が高いのは骨粗鬆症,膀胱炎,鉄欠乏性貧. 通達をだした。1985 年アメリカ公衆衛生局(PHS)の Edward. 血,慢性関節リウマチ,メニエル病,甲状腺機能亢進症などが. N.Brandt 医師は女性の健康に関するデータが少ないことに気. ある。このように受療率には性差が存在する。その中にはすで. づき,すべての年齢の女性において女性に特有な病態につい. に性差にかかわる知見が存在する疾患もあるが,まだ明らかで. ての生物学的研究が行われるべきであると訴えた. ない疾患も多く存在する。次に発症率はほぼ同じでも,男女間. NIH は女性および少数民族・人種を調査研究の対象に含むこ. で臨床的に差をみるものであるが,これは虚血性心疾患の性差. とを義務づけるように通達した。1990 年 NIH 女性所長であり,. に代表される。50 歳代までは女性の罹患率は男性に比較し低. 循環器内科医である Bernadine Healy 医師は,女性生殖器およ. いが,60 歳に入ると男性に追いつき,75 歳以降では罹患率に. び乳腺の悪性腫瘍を除くと,多くの臨床研究の対象から女性が. 性差はなくなる。このように最終的結果は同じでも経過が男女. 除外され,その研究結果がそのまま女性にあてはめられている. 間で異なる疾患が存在する。第 3 にいまだ生理的,生物学的解. ことを指摘した 3)。それを受けて,NIH 内に ORWH が設置さ. 明が男性または女性で遅れている病態についてであるが,現在. れ,地域における女性医療の研究,診療,啓発教育を行うため. まで生殖器以外の疾患について性差にかかわる病態を明らかに. の National Centers of Excellence in Women’s Health(CoE). する医療・研究は限られているのではないかと思われる。NIH. の開設など米国政府は女性医学・医療の発展のために莫大な. の女性健康局(Office of Research in Women’s Health:以下,. 予算を投下してきた。1998 年 FDA は薬剤治験において性差,. ORWH)は,すべての領域で性差に関する研究をすすめるこ. 年齢差,人種差に関する検討を義務づけた。また,1999 年ま. 2). 。1986 年. とが,男女における健康を増進することであることを指摘して. で明らかにされた性差に関する研究をまとめるための委員会. いる。第 4 に性差医療はジェンダーを含めた医療である。セッ. (Committee on Understanding the Biology of Sex and Gender. クスとジェンダーを区別し,医療と研究を行うことを推奨して. Differences)が米国国立アカデミーに発足し,2001 年に 14 の. いる。性差医療とは,これらを疾病の診断,治療法,予防措置. 提言をまとめた。提言 7 では,すべての医学や健康関連の研究. へ反映することを目的とした医療と定義されている。. に性差の観点を含めることまた性差の中でセックスとジェン ダーを使い分けるなど詳細に記載されている。セックスとは染 色体の構成に由来した生殖器官とその機能であり,ジェンダー. *. Gender-Specific Medicine 福島県立医科大学 性差医療センター (〒 960–1295 福島県福島市光が丘 1) Hiromi Yoshida-Komiya, MD: Fukushima Medical University キーワード:性差,性差医療,女性外来. **. とは男性・女性としての個人の自己表現,またはその表現にも とづいた性が社会的慣例によりどのように受けとめられるかで ある。この両者を区別することが提言されたのである。 日本の性差医療であるが,1999(平成 11)年天野医師が第.

(2) 690. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 47 回日本心臓病学会において「女性における虚血性心疾患」. 治癒しないことが多い。複数の医療機関を受診するも,改善せ. のテーマでシンポジウムを開催したことから幕が開いた。さら. ず,当院を受診されることがある。たとえば,「めまい,頭痛」. に,その医療を実践する場として「女性外来」が,2001(平成. を主訴に受診した場合,器質的疾患を除外することがもっとも. 13)年 5 月鹿児島大学医学部附属病院,9 月には千葉県立東金. 重要である。次に,患者さんが置かれている背景や環境を探る. 病院に設置され,その後,急速に日本全国に拡がりをみせた。. 必要がある。すなわち医療者側に傾聴の態度が必要になり,そ. また,2003(平成 15)年には「性差医療・医学研究会」また「性. の態度を示すことにより,患者さんは語りはじめる。性差外来. 差医療情報ネットワーク」が設置され,2008(平成 20)年に. は Narrative-based medicine を重視する。. は「性差医療・医学研究会」が「性差医学・医療学会」に発展 した。日本においても,徐々に性差医療は医学・医療の現場に 浸透してきている。. 性差医療の現状. 性差医療の現場から 当院の現状を少し述べさせていただきたい。当院の性差医療 センターは 2004(平成 16)年に女性外来として設置された。 その当時は,週に 2 回の振り分け外来であったが,2008(平成. 日本における性差医療の現状を紹介する。. 20)年から one stop shopping 型の診療体制となった。現在,. 日本循環器学会において,2010(平成 22)年に「循環器領. 婦人科,心身医療科,乳腺外科,内分泌内科,歯科口腔外科を. 域における性差医療に関するガイドライン」(2008 - 2009 年. 有する(2015 年 4 月現在)。院内外の女性医師に兼務という形. 度合同研究班報告:班長 鄭 忠和)4)が作成されたことである。. で診療の協力を依頼し,体制はほぼ定着している。. これは,日本循環器学会,日本性差医学・医療学会など 18 学. 私は,性差医療に携わってから,「婦人科」と「女性外来」. 会が合同で作成したものであり,「今後の循環器分野における. でなにが異なるのかを自問自答してきた(女性外来でも婦人科. 基礎・臨床研究への新しい視点を提供」していることが記載さ. と同様の器質的疾患を有する患者を診察している)。そこで,. れている。各分野における性差医療のガイドラインとしてモデ. 女性外来の患者の特徴を明らかにすることを目的として,性成. ルとなる画期的なガイドラインである。さらに,消化器病領域. 熟期の当センター婦人科受診患者(子宮筋腫,子宮内膜症など. では日本消化器病学会関連研究会として「消化器病における性. 器質的疾患を有する)について,心の健康を評価・比較し,血. 差医学・医療研究会」が活動しており,徐々に様々な学術領域. 中レプチンやストレス関連物質を測定し,健康婦人と比較し. で「性差の視点」が組み込まれている状況である。. た 6)。その結果,患者の SF-36(全体的健康感),SRQ-D(抑. では,性差医療を実践する外来はどうか。 「性差医療情報ネッ. うつ),STAI(不安度)を評価したところ,受診患者は心の健. トワーク」Web サイト 5) の病院情報から,女性外来として. 康が低下していることが明らかになった。また,近年,うつ・. 239,男性外来は 66 掲載されている(2014 年 2 月 12 日現在) 。. 不安を示す動物モデルがレプチン低下を示すことやレプチン変. 医療機関としては,大学病院・総合病院・クリニックなど様々. 異マウスで不安行動をとることが報告されているが,まだ人で. であり,さらにその診療体制も異なる。このように独自性をも. はレプチンの変化について明らかにされていない。受診患者は. ちながらも,共通の特徴が存在する。女性外来の場合,1.初診. 健康婦人に比較し,唾液中ストレス関連物質は有意な差を認め. は 30 分 2.症状は問わない 3.紹介状は不要 4.女性医師. なかったが,明らかに血中レプチン値が低下していた。その機. が担当することが多い ということが特徴であると思われる。. 序について解明が必要であるが,女性外来を受診する患者は,. 性差を決定する因子. 軽度うつ・不安状態にあり,一般の産婦人科を受診できない, あるいは受診しても満足しないという特徴を有することが推測. 性差を決定する因子として染色体,内外性器,性腺(性ホル. された。現在,私は一般婦人科診療も行っているが,患者の区. モン),ジェンダーがある。ここでは,性差医療において重要. 別化の必要性や「女性外来」がもつ重要性を認識している。. な位置をしめる性ホルモン,ジェンダーについて述べる。男性. 最後に,性差を意識した医療・医学が普及し,男女両者の健. ホルモンであるテストステロンは年齢とともに緩やかに低下す. 康に貢献することを切に願い,自分自身も精進していきたい。. る。女性ホルモンであるエストロゲンは思春期に急上昇し,性 成熟期に維持され,更年期には急速に低下する。60 歳をすぎ ると,女性のエストロゲンは男性よりも低下する現象を認める (女性にもテストステロンが存在し,男性にもエストロゲンが 存在する)。すなわち女性は 60 歳を超えると,男性に比較し, 性ホルモンの状態はきわめて不利といえる。エストロゲンは子 宮・卵巣のみならず心臓・血管の保護作用,骨量の維持,糖脂 質代謝,脳細胞の保護など重要な役割を有する。したがって, エストロゲンの低下は閉経後女性の健康に大きな意味をもつこ とを認識しなければならない。ジェンダーについてであるが, このジェンダーの概念も医療に組み込まなければ,患者さんは. 文 献 1) 天野惠子:性差医療.学士会会報.2010; 88: 102. 2) Brandt EN Jr: Some thoughts about women’s health and its evolution. J Gend Specif Med. 1998; 1: 48. 3) Healy B: The Yentl syndrome. N Engl J Med. 1991; 325: 274–275. 4) 鄭 忠和,天野惠子,他:循環器領域における性差医療に関する ガイドライン.Circulation J Suppl II.2010; 74: 1085–1160. 5) 性差医療ネットワーク.http://www.nahw.or.jp/(2015 年 5 月 3 日) 6) Yoshida-Komiya H, Takano K, et al.: Plasma levels of leptin in reproductive-aged women with mild depressive and anxious states. Psychiatry Clin Neurosci. 2014; 68: 574–581..

(3)

参照

関連したドキュメント

エステセムⅡ ハンドミックスペースト キャンペー ン フィルテック フィル アンド コア フロー コンポ フィルテック フィル アンド コア フロー コンポジット

出典: Denis Cortese, Natalie Landman, Robert Smoldt, Sachiko Watanabe, Aki Yoshikawa, “Practice variation in Japan: A cross-sectional study of patient outcomes and costs in total

Analysis of the Risk and Work Efficiency in Admixture Processes of Injectable Drugs using the Ampule Method and the Pre-filled Syringe Method Hiroyuki.. of

0742-27-1132 0742-27-8565 平日・土日祝  24時間 奈良県庁. -

15762例目 10代 男性 下市町 学生 (県内) 軽症 県内感染者と接触 15761例目 10代 男性 天理市 学生 (県内)

Hiroyuki Furukawa*2, Hitoshi Tsukamoto3, Masahiro Kuga3, Fumito Tuchiya4, Masaomi Kimura5, Noriko Ohkura5 and Ken-ichi Miyamoto2 Centerfor Clinical Trial

URL http://hdl.handle.net/2297/15431.. 医博甲第1324号 平成10年6月30日

在宅医療の充実②(24年診療報酬改定)