性差医療
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(2) 690. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 47 回日本心臓病学会において「女性における虚血性心疾患」. 治癒しないことが多い。複数の医療機関を受診するも,改善せ. のテーマでシンポジウムを開催したことから幕が開いた。さら. ず,当院を受診されることがある。たとえば,「めまい,頭痛」. に,その医療を実践する場として「女性外来」が,2001(平成. を主訴に受診した場合,器質的疾患を除外することがもっとも. 13)年 5 月鹿児島大学医学部附属病院,9 月には千葉県立東金. 重要である。次に,患者さんが置かれている背景や環境を探る. 病院に設置され,その後,急速に日本全国に拡がりをみせた。. 必要がある。すなわち医療者側に傾聴の態度が必要になり,そ. また,2003(平成 15)年には「性差医療・医学研究会」また「性. の態度を示すことにより,患者さんは語りはじめる。性差外来. 差医療情報ネットワーク」が設置され,2008(平成 20)年に. は Narrative-based medicine を重視する。. は「性差医療・医学研究会」が「性差医学・医療学会」に発展 した。日本においても,徐々に性差医療は医学・医療の現場に 浸透してきている。. 性差医療の現状. 性差医療の現場から 当院の現状を少し述べさせていただきたい。当院の性差医療 センターは 2004(平成 16)年に女性外来として設置された。 その当時は,週に 2 回の振り分け外来であったが,2008(平成. 日本における性差医療の現状を紹介する。. 20)年から one stop shopping 型の診療体制となった。現在,. 日本循環器学会において,2010(平成 22)年に「循環器領. 婦人科,心身医療科,乳腺外科,内分泌内科,歯科口腔外科を. 域における性差医療に関するガイドライン」(2008 - 2009 年. 有する(2015 年 4 月現在)。院内外の女性医師に兼務という形. 度合同研究班報告:班長 鄭 忠和)4)が作成されたことである。. で診療の協力を依頼し,体制はほぼ定着している。. これは,日本循環器学会,日本性差医学・医療学会など 18 学. 私は,性差医療に携わってから,「婦人科」と「女性外来」. 会が合同で作成したものであり,「今後の循環器分野における. でなにが異なるのかを自問自答してきた(女性外来でも婦人科. 基礎・臨床研究への新しい視点を提供」していることが記載さ. と同様の器質的疾患を有する患者を診察している)。そこで,. れている。各分野における性差医療のガイドラインとしてモデ. 女性外来の患者の特徴を明らかにすることを目的として,性成. ルとなる画期的なガイドラインである。さらに,消化器病領域. 熟期の当センター婦人科受診患者(子宮筋腫,子宮内膜症など. では日本消化器病学会関連研究会として「消化器病における性. 器質的疾患を有する)について,心の健康を評価・比較し,血. 差医学・医療研究会」が活動しており,徐々に様々な学術領域. 中レプチンやストレス関連物質を測定し,健康婦人と比較し. で「性差の視点」が組み込まれている状況である。. た 6)。その結果,患者の SF-36(全体的健康感),SRQ-D(抑. では,性差医療を実践する外来はどうか。 「性差医療情報ネッ. うつ),STAI(不安度)を評価したところ,受診患者は心の健. トワーク」Web サイト 5) の病院情報から,女性外来として. 康が低下していることが明らかになった。また,近年,うつ・. 239,男性外来は 66 掲載されている(2014 年 2 月 12 日現在) 。. 不安を示す動物モデルがレプチン低下を示すことやレプチン変. 医療機関としては,大学病院・総合病院・クリニックなど様々. 異マウスで不安行動をとることが報告されているが,まだ人で. であり,さらにその診療体制も異なる。このように独自性をも. はレプチンの変化について明らかにされていない。受診患者は. ちながらも,共通の特徴が存在する。女性外来の場合,1.初診. 健康婦人に比較し,唾液中ストレス関連物質は有意な差を認め. は 30 分 2.症状は問わない 3.紹介状は不要 4.女性医師. なかったが,明らかに血中レプチン値が低下していた。その機. が担当することが多い ということが特徴であると思われる。. 序について解明が必要であるが,女性外来を受診する患者は,. 性差を決定する因子. 軽度うつ・不安状態にあり,一般の産婦人科を受診できない, あるいは受診しても満足しないという特徴を有することが推測. 性差を決定する因子として染色体,内外性器,性腺(性ホル. された。現在,私は一般婦人科診療も行っているが,患者の区. モン),ジェンダーがある。ここでは,性差医療において重要. 別化の必要性や「女性外来」がもつ重要性を認識している。. な位置をしめる性ホルモン,ジェンダーについて述べる。男性. 最後に,性差を意識した医療・医学が普及し,男女両者の健. ホルモンであるテストステロンは年齢とともに緩やかに低下す. 康に貢献することを切に願い,自分自身も精進していきたい。. る。女性ホルモンであるエストロゲンは思春期に急上昇し,性 成熟期に維持され,更年期には急速に低下する。60 歳をすぎ ると,女性のエストロゲンは男性よりも低下する現象を認める (女性にもテストステロンが存在し,男性にもエストロゲンが 存在する)。すなわち女性は 60 歳を超えると,男性に比較し, 性ホルモンの状態はきわめて不利といえる。エストロゲンは子 宮・卵巣のみならず心臓・血管の保護作用,骨量の維持,糖脂 質代謝,脳細胞の保護など重要な役割を有する。したがって, エストロゲンの低下は閉経後女性の健康に大きな意味をもつこ とを認識しなければならない。ジェンダーについてであるが, このジェンダーの概念も医療に組み込まなければ,患者さんは. 文 献 1) 天野惠子:性差医療.学士会会報.2010; 88: 102. 2) Brandt EN Jr: Some thoughts about women’s health and its evolution. J Gend Specif Med. 1998; 1: 48. 3) Healy B: The Yentl syndrome. N Engl J Med. 1991; 325: 274–275. 4) 鄭 忠和,天野惠子,他:循環器領域における性差医療に関する ガイドライン.Circulation J Suppl II.2010; 74: 1085–1160. 5) 性差医療ネットワーク.http://www.nahw.or.jp/(2015 年 5 月 3 日) 6) Yoshida-Komiya H, Takano K, et al.: Plasma levels of leptin in reproductive-aged women with mild depressive and anxious states. Psychiatry Clin Neurosci. 2014; 68: 574–581..
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