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周期的に活性化する 色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ サブバルジ領域に局在し 周期的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し それにより毛が着色する しかし ゲノムストレスが加わるとこのシステムは破たんする 我々の研究室では 加齢に伴い色素幹細胞が枯渇すると白髪を発症すること また 5Gy の

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Academic year: 2021

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学位論文の内容の要旨

論 文 提 出 者 氏 名 上野 真紀子

論 文 審 査 担 当 者 主 査 田賀 哲也

副 査 清水 重臣、三浦 雅彦

論 文 題 目 Coupling of the radiosensitivity of melanocyte stem cells to their dormancy during a hair cycle

(論文内容の要旨) <要旨> 1906 年にベルゴニーとトリボンドーが細胞の放射線感受性についての法則を発表して以来、一 般に増殖頻度が高い細胞は放射線感受性が高いと考えられてきた。近年の幹細胞研究により、組 織幹細胞など未分化細胞は、分化した細胞と比較して放射線感受性が高いことが確認されたが、 組織幹細胞は一般に増殖頻度が低く大部分が休止状態にある事実と矛盾する。今回我々は、マウ ス毛包の色素幹細胞に放射線照射で DNA 損傷を与えることにより白髪が生じる現象に着目し、 この疑問について検討を行った。色素幹細胞を安定的に可視化できるDct-H2B-GFP トランスジ ェニックマウスと、増殖中の色素幹細胞のみを細胞死させる抗Kit モノクローナル抗体を使用し、 色素幹細胞の放射線感受性について検討した結果、静止期(G0 期)にある幹細胞は放射線感受 性が高く、増殖中の幹細胞は放射線感受性が低いこと、静止期と増殖期の幹細胞集団の共存によ り幹細胞プールとしては抵抗性を示すことが明らかになった。 <緒言> 生体を構成する組織の多くに未分化な組織幹細胞が存在する。それらが分化した子孫細胞を供 給することにより、組織は新陳代謝やダメージ後の修復を行うことができ、恒常性を維持するこ とができる。骨髄や小腸、皮膚といった新陳代謝の盛んな組織は古くから組織幹細胞のモデルと され、盛んに研究がおこなわれてきた。一方、それらの新陳代謝の盛んな組織は、放射線による 損傷を受けやすいことも知られている。1906 年、ベルゴニーとトリボンドーは細胞の放射線感受 性に関する法則を発表し、細胞分裂が盛んで未分化な細胞ほど放射線感受性が高いと結論づけた。 近年の幹細胞研究においても、未分化な細胞である幹細胞は、分化した子孫細胞に比べて放射線 感受性であるとの報告がされてきた。しかし一方で、組織幹細胞は一般にほとんど細胞分裂を行 わず長く休止状態を保つことが知られており、これは法則と矛盾する。ここで、休止状態の幹細 胞と増殖中の幹細胞ではどちらが放射線感受性なのか、という新しい疑問が生じるが、これまで にいかなる幹細胞システムにおいても明らかにされていない。 毛包は毛を産生する皮膚の小器官で、休止期、成長期、退縮期からなる毛周期を周期的に繰り 返す。毛包のバルジ領域とそのやや下方のサブバルジ領域に幹細胞が存在し、毛周期と同調して

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- 2 - 周期的に活性化する。色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ・サブバルジ領域に局在し、周期 的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し、それにより毛が着色する。しかし、ゲノムス トレスが加わるとこのシステムは破たんする。我々の研究室では、加齢に伴い色素幹細胞が枯渇 すると白髪を発症すること、また、5Gy の放射線をマウス皮膚に照射すると、色素幹細胞がバル ジ・サブバルジ領域内で異所性に分化した後に枯渇してその結果白髪が生じることを、これまで に報告してきた。しかし、放射線照射後に白髪が生じる現象は、毛包が休止期で色素幹細胞が休 止状態の時に照射した場合でしか検討されておらず、成長期の毛包に照射した場合については不 明であった。今回我々は、毛周期の各時期に放射線照射を行い、色素幹細胞の放射線感受性と細 胞周期との相関について検討を行った。 <方法> ・色素幹細胞の安定的な可視化 色素細胞系譜の細胞に GFP 蛋白が発現する Dct-H2B-GFP トランスジェニックマウスを新たに 樹立し使用した。このマウスにおいて、毛包のバルジ・サブバルジ領域に存在する GFP 陽性細 胞を色素幹細胞と認識して解析を行った。 ・毛周期のコントロール 生後7 週齢のマウスの体毛は休止期に同期しているが、抜毛することにより成長期に導くことが できる。抜毛後2 日目に成長期に入り、約 10 日間成長を続け、18~20 日目から退縮期となり、 25~30 日目に休止期に戻る。その各時期で解析を行った。 ・細胞周期の解析 Non-G0 期の細胞の検出は増殖マーカーである Ki67 と MCM2 の発現を免疫染色で検出すること により行った。S 期の細胞の検出は、BrdU の腹腔内投与(50mg/kg weight)の 1 時間後に皮膚を 採取し免疫染色でBrdU の取り込みを確認することにより行った。 ・増殖中の色素幹細胞の特異的除去 ACK2(抗 Kit モノクローナル抗体)を成長期初期に 3 回(抜毛後 1・3・5 日目)皮内投与し(1mg/ 回)、増殖中の色素幹細胞のみを細胞死させた。 <結果> 初めに、毛周期と放射線感受性の関係を明らかにするため、毛周期の各時期に5Gy の放射線を 照射しその後の毛色の変化を観察した。休止期の毛包に放射線を照射した場合には、以前の論文 の通り著明に白髪を発症したが、成長期の毛包に放射線を照射した場合には白髪を発症しなかっ た。次に、この現象が色素幹細胞の放射線感受性の違いを反映していることを確かめるため、 Dct-H2B-GFP トランスジェニックマウスを用いて休止期および成長期の毛包に放射線を照射 し、10 日後の GFP 陽性色素幹細胞の数を比較した。その結果、色素幹細胞数は、休止期に放射 線を照射した場合には著明に減少したのに対し、成長期に照射した場合には減少しなかった。こ こから、色素幹細胞の放射線感受性が毛周期に伴い変化することが明らかになった。 次に、毛周期の各時期における色素幹細胞の細胞周期の状態を詳しく調べるため、増殖期の細 胞の検出マーカーとしてMCM2 と Ki67 の発現、さらに BrdU の取り込みを免疫染色で確認した。

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その結果、毛周期の休止期および成長期後期から退縮期にかけての毛包の色素幹細胞には増殖マ ーカーが全く見られないことから G0 期にあると考えられるのに対し、成長期初期から成長期中 期の毛包内の色素幹細胞の一部には増殖マーカーやBrdU の取り込みが確認された。成長期初期 から中期にかけての時期は、放射線照射後に白毛化が誘導されない時期と大まかに一致しており、 色素幹細胞の放射線感受性とその細胞周期および毛周期の間に相関を認めた。 次に、色素幹細胞の細胞周期と放射線感受性の相関を確かめるため、増殖中の色素幹細胞のみ を細胞死させるACK2 を用いた実験を行った。ACK2 を成長期の毛包に投与すると、毛包は成長 期だが残された色素幹細胞はすべてG0 期となる。ACK2 投与を行ったマウス、行わなかったマ ウスに対して5Gy 放射線照射を行い、その後の毛色と色素幹細胞数の変化を比較した。その結果、 同じ成長期の毛包に放射線照射を行ったにもかかわらず、ACK2 を投与して増殖中の色素幹細胞 を除去してから照射した場合には、白髪を発症し色素幹細胞の数は減少した。この結果から、G0 期の色素幹細胞が放射線感受性で、増殖中の色素幹細胞が放射線耐性であると考えられた。さら に、G0 期で照射を受けた色素幹細胞は、毛包が成長期に入ると増殖マーカーを発現して細胞周 期に入ると同時に、異所性に分化して減少することを見出した。以上から、幹細胞の放射線感受 性はG0 期での休眠状態と密接に関連していることが明らかになった。 生体の細胞にDNA 損傷を与える遺伝毒性の誘発源は放射線以外にも様々あり、5FU のような 抗がん剤もその一つである。5FU は代謝拮抗剤でおもに S 期の細胞に DNA 損傷を与えることが 知られている。そこで、S 期の色素幹細胞が存在する成長期初期の毛包に、放射線あるいは 5FU あるいはその両者を与え、その後の毛色や色素幹細胞数の変化を比較した。その結果、放射線の み、あるいは5FU のみ与えた群では白髪を発症せず色素幹細胞数の減少も軽度であったが、放射 線と5FU の両者を与えた群では白髪を発症し色素幹細胞数の著明な減少を認めた。放射線のみ、 あるいは5FU のみではそれぞれ休止期の細胞のみ、あるいは増殖期の細胞のみにしか損傷を与え られないのに対して、両者を与えることにより休止期と増殖期の両者に損傷を与えた結果と考え らえる。この結果は、放射線が主に休止期の細胞損傷を与えることを裏付けするデータであると 同時に、休止期の細胞と増殖期の細胞が混在する状態が幹細胞プールを維持するのに有利な状態 であることを指し示すと考えられた。 <考察> 生体の細胞は日々様々なストレスにさらされるが、組織幹細胞は組織の恒常性維持に重要な役 割を果たしている。増殖中の細胞は複製ストレスを伴うため、組織幹細胞は長く休止期に保たれ ていることで DNA 損傷を最小限にしているとこれまで考えられてきた。放射線は DNA の二本 鎖切断を誘発し、主に増殖中の細胞が放射線感受性を示して細胞死することが知られてきたが、 組織幹細胞においても増殖中の幹細胞が最も高い感受性を示すのか、より高い感受性を示す細胞 分画や状態があり得るのかどうか、また、感受性細胞はいかなる細胞運命を辿るのかについては 不明であった。今回我々は、色素幹細胞において毛周期と連動して繰り返す休眠状態と増殖活性 化が幹細胞の放射線感受性と相関することを見出した。さらに、休止期にある幹細胞と増殖中の 幹細胞の放射線感受性を比較し、予想外にも休止期の色素幹細胞の方が放射線感受性であるデー タを示すことができた。

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増殖期の色素幹細胞がその自己複製において放射線耐性を示すメカニズムについては、今後の 課題である。サイトカインなどの外的因子や DNA 損傷修復を制御する内的因子の関与が考えら れる。休止期の細胞はNon-homologous end joining (NHEJ;非相同末端結合)によって修復され るが、S 期~M 期の細胞でみられる homologous recombination (HR;相同組み換え)と比べると 修復が不正確であるために、放射線感受性が高くなる可能性が考えられる。

今回我々が示した結果は、DNA 損傷を受けた組織幹細胞の自己複製制御とその運命決定にお いて新たな見解を与えている。今後、癌幹細胞に対する選択的な治療法の開発等において、組織 幹細胞プールの維持制御についての考察が役立つ可能性が考えられる。

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論文審査の要旨および担当者

報 告 番 号 甲 第 4671 号 上野 真紀子 論文審査担当者 主 査 田賀 哲也 副 査 清水 重臣、三浦 雅彦 (論文審査の要旨) 組織幹細胞の長期に亘る維持は当該組織ひいては個体の恒常性維持に必須である。幹細胞が自 己複製と多分化能を発揮して組織の構築と再構築に寄与する際には、種々の要因で生じる DNA 損 傷というストレスを回避する仕組みが重要な意義を持つ。申請者は本研究で、毛包の色素幹細胞 集団において放射線による DNA の二本鎖切断への感受性が異なる多様性が存在するのか否か、ま たそれは幹細胞の増殖状態あるいは静止状態と相関しているのか、という未解決の問題に取り組 んだ。 申請者はまず、マウスの毛周期を同調させた上で 5 Gy の放射線を照射して白髪化させる系を用 いて、毛包が休止期であり色素幹細胞が静止期と考えられる場合には放射線感受性が高いことを 見いだした。そこで、色素幹細胞が増殖状態にある際には Kit シグナル依存性に生存することを 利用して抗 Kit 中和抗体投与によって静止期の色素幹細胞だけを残す手法で同様の解析も行い、 色素幹細胞は増殖状態ではなく静止状態にある場合に放射線感受性が高いことを示唆するデータ を得た。 申請者はさらに毛周期の各ステージにおける色素幹細胞の細胞周期の状態を知るために、増殖 マーカー(MCM2 と Ki67)の発現と BrdU の取り込みを蛍光免疫染色で解析した。その結果は、色 素幹細胞の放射線照射に対する感受性が色素幹細胞の細胞周期および毛周期と相関していること を示しており、静止状態の色素幹細胞の方が増殖状態よりも放射線感受性の高いことを支持する ものであった。 申請者の研究はこのように、細胞周期と放射線感受性の関係を色素幹細胞で初めて明らかにす るとともに静止期の色素幹細胞の方が放射線に感受性が高いということを示した点で意義深い。 本研究で得られた新知見は正常組織幹細胞の維持機構に関する興味深い成果と言え、また、近年 注目されている癌幹細胞を標的とする癌治療法の開発に関する研究に重要な示唆を与えるもので ある。

参照

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