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企業における緊急地震速報の利活用調査

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Academic year: 2021

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6.企業における緊急地震速報の利活用調査

建部謙治・田村和夫・高橋郁夫・内藤克己

1.はじめに  緊急地震速報は気象庁が発表する情報で、地震の発生直後に震源に近い地震計でとらえた観測データを解析し て震源や地震の規模を直ちに推定し、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を予測し、可能な限り素 早く知らせる地震動の「予報」及び「警報」である。2007 年の配信開始から約 6 年が経過し、その間に種々の 活用方法が検討され、また大地震時に活用されてきた。本報では、現状における高度利用の緊急地震速報(予報) の導入や活用の実態を調査して整理し、速報の今後のより有効な活用を実現するための課題を探ることを目的と する。 2.研究方法  緊急地震速報の活用実態を明らかにするために、企業に対し、アンケート調査を実施する。企業としては、 2011 年の東北地方太平洋沖地震における速報の受信状況も併せて調査するため、昨年の茨城県の調査に引き 続いて、岩手県奥州市及び一関市(いずれも最大震度 6 弱)の商工会議所会員企業を対象とする。調査項目は、 昨年と同様に、企業の概要、企業側に専用端末を置いて受信する「予報」の緊急地震速報(以下、高度利用速報 と記す)の導入の有無、その評価、緊急地震速報を活用するための条件等についてである。調査方法は郵送法に より企業に送付し、返答されたアンケートを基にデータ整理をし、利活用の現状を明らかにする。 表 1 に調査の概要を示す。奥州商工会議所会員企業と一関商工会議所会員企業を合わせて 2573 社に送付し たところ、590 社から回答があり、回収率は 22.9%であった。 表1 調査の概要 3.企業における緊急地震速報の利用実態 3.1 回答企業の概要  図 1 は回答企業の資本金の状況を示したものである。 1000 万円未満の企業が 54%、1000 万円~ 5000 万円 未満の企業が 31%である。図 2 は従業員数を示したも ので、4 人以下の企業が 41%、5 人~ 19 人以下の企業 が 32% と、小規模な企業が多いことが分かる。図3は企 業の業種を示したもので、サービス業が 26% で最も多く、 次いで小売業 19%、建設業 18% の順でほぼどの業種も 万遍なく含まれている。   図1 回答企業の資本金 調査対象 奥州市 一関市 3.11時の震度 6弱 6弱 調査方法 調査時期 調査対象企業 1460社 1113社 2573社 有効回答 313社 277社 590社 回答率 19.7% 24.9% 22.9% 計 郵送による送付・回収 平成24年6月下旬~12月下旬 質問事項 会社概要・緊急地震速報の導入の有無・緊急地震 速報の評価・緊急地震速報の活用するための条件 など

54% 31% 5% 2% 2% 3% 4% 1,000万円未満 1.000万円~5.000万円未 満 5.000万円~1億円未満 1億円~3億円未満 3億円~10億円未満 10億円以上 未回答

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34        図2 回答企業の従業員数       図3 回答企業の業種 3.2 高度利用速報の有無  図4は高度利用速報の導入の有無を示したものである。「導入している」と回答した企業は 64 社で 11% に留 まった。また「これから導入予定」と回答した企業はわずか 5% しかなかったことから、受信端末を置く高度利 用速報(予報)はあまり普及していないといえる。図5は業種別導入率を示したものである。導入率は製造業が 最も高く約 20%、次いでサービス業が約 10%で、それ以外の業種は 10%以下である。導入時期は震災前に約 3割が速報を導入し、震災をきっかけにして約3割が導入することとなった。       図4 高度利用速報の導入の有無      図5 業種別導入率       図6 速報受信の可否       図7 受信ができなかった理由(導入有)  3.3 地震発生時の受信の有無  図 6 は東北地方太平洋沖地震における高度利用速報を導入している企業の受信の可否を示したものである。 ここでは、速報をテレビやラジオ等で見聞きしたことも含まれ、導入の有無に関係なく全企業を集計対象とし ている。導入企業の場合、「完全にできた」が 35%、「完全ではないができた」が同じ 35%、「できなかった」が 31% という回答であった。図7は受信ができなかった企業の理由を示したものである。「停電による支障」が 59%で半数以上を占め、「配信機器の不具合」、「受信回線の不具合」、「配信事業側の不具合」がそれ�れ 12% であった。なお、受信できなかった企業の業種についてはサービス業が多く、停電が主な原因となった。一方、

12% 7% 19% 26% 18% 16% 1% 製造業 卸売業 小売業 サービス業 建設業 その他 未回答 41% 32% 12% 5%4% 1% 1% 2% 0% 1% 1% 4人以下 5~19人 20~49人 50~99人 100~299人 300~499人 500~999人 1000~4999人 5000~9999人 10000人以上 未回答

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11% 5% 78% 6% 導入有 導入予定 導入無 未回答 0% 5% 10% 15% 20% 25% 割合(%) 業種

1

35% 35% 31% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 完全にできた 完全ではなかったができた できなかった 導入有 導入予定 導入無 12% 12% 59% 6% 12% 29% 配信機器の不具合 受信回線の不具合 停電による支障 地震の揺れによるシステ ムの損傷 配信事業側の不具合 その他

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35 高度利用速報を導入していない企業は緊急地震速報(警報)の受信が「できなかった」という回答がほぼ半数の 46% であった(図 6)。これらの企業は携帯電話やテレビ、パソコンなどの受信によるものである。  3.4 緊急地震速報の評価  図8は高度利用速報を導入している企業や導入していない企業の速報に対する評価を示したものである。 高度利用速報の導入企業の場合、予測精度が「妥当」42% であるが、「やや低い」「かなり低い」を合わせると「妥当」 とほぼ同じである。図9は配信スピードについての評価を示したものである。配信のスピードについては、企業 は 「十分に早い・妥当」と 「やや遅い・かなり遅い」 との差はほとんどなく、配信スピードに対する満足度は必 ずしも高くない。図 10 は情報量についての評価である。「十分な情報量・妥当」 の合計がほぼ半数で、「少ない 」 との回答が約 3 割あり、より多くの地震情報の配信を望んでいる利用者がある。 3.5 緊急地震速報の今後の見通し  図 11 は緊急地震速報の今後の活用予定を示したものである。高度利用速報を導入している企業は 「現状維持 」 もしくは「拡大」を考えているが、「導入していない」企業の約3割はまだ積極的な速報の導入に踏み切れて いない現状を伺うことができる。      図8 予測震度の精度の評価       図9 配信のスピードの評価 図10 配信される情報量の評価   図11 緊急地震速報の今後の活用予定       図12 有効活用するための条件

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0% 15% 30% 45% 60% 十分に高い 妥当 やや低い かなり低い 不明 導入有 導入予定 導入無 0% 10% 20% 30% 40% 50% 十分に早い 妥当 やや遅い かなり遅い 不明 導入有 導入予定 導入無

1

5% 50% 27% 8% 8% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 十分な情報量 妥当 やや少ない かなり少ない 不明 導入有 導入予定 導入無

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4% 20% 46% 0% 0% 29% 0% 50% 100% 早急に拡大を行っていく 徐々に拡大を考えていく 現状のまま使う 活用を縮小の方向で考える 活用を取りやめを考えている 活用の方向は全くわからない 導入有 導入予定 導入無 0% 20% 40% 60% 情報の精度の向上 情報の種類の多様化 広報活動 有効活用事例の蓄積 誤配信の減少 情報通信技術の発展 利用者への教育 景気の回復 その他 不明 導入有 導入予定 導入無

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36  図 12 は高度利用速報の有効活用するための条件を示したものである。導入している企業の場合、「情報精度 の向上」が最も多く、次いで、「誤配信の減少」、「情報の種類の多様化」、「情報通信技術の発展」、「景気の回復」 の順であった。一方、「導入していない」あるいは「導入予定」の企業についてもほぼ同じ回答結果であった。 4.岩手県と茨城県の比較 岩手県と、昨年同様な方法で調査した茨城県を比較すると、事業規模や業種、速報を導入している企業割合 など、基本的には大きな差は見られない。しかし、導入している企業の業種や事業規模の内訳をみると、資本規 模は 5000 万円未満の企業が茨城県より岩手県の方が 14 ポイント高い。従業員数では 19 人以下の企業が茨城 県と岩手県はほとんど変わらないが、1000 人以上では茨城県は岩手県よりポイント数が高い。このように、高 度利用速報を導入した企業規模は岩手県の方がやや小規模企業が多いことがわかる。業種については製造業を除 くとほぼ同じであるが、「小売業」と「卸売業」は比較的低い。表 3 は業種別資本金別導入企業の内訳を示した ものである。いずれの業種でも、建設業を除くと、大半が小規模企業で、大企業の割合は低い。受信の有無につ いては、茨城県と岩手県ではほとんど変わらない結果となった。 表3 業種別資本金別導入企業の割合     図13 予測震度の精度(導入有)         図14 配信スピード(導入有)  図 13、図 14 は予測震度の精度、配信のスピードの評価を示したものである。いずれも「妥当」という回答 が最も多く、ほぼ同じ傾向を示す。両県を比較すると、評価は岩手県より茨城県の方がやや高い。今回の調査で は、導入時の初期コストも低いと思われるものも多い結果から、回答者の中には専用端末による速報と一般配信 を混同した可能性も否定できないので、今後のアンケート調査での配慮点としたい。 5.まとめ  本報では、高度利用の緊急地震速報(予報)の活用を促進するための基礎データを得るために、企業を対象と したアンケート調査を岩手県と茨城県で実施した。その結果、企業では大震災をきっかけに緊急地震速報を導入 しているものもあるが、まだ十分に活用が進んでいないこと、予測震度の精度や配信スピードにやや不満を感じ ている利用者がいること、将来的な普及には、情報の精度の向上、導入コストの低減、業種別事業規模別の有効 活用事例の蓄積等が必要と考えられていることが明らかとなった。

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1000万円 1000万~5000万円 5000万~1億円 1億円~3億円 3億~10億円 10億円以上 茨城 2 50% 50% 0% 0% 0% 0% 岩手 15 47% 33% 0% 7% 13% 0% 茨城 2 100% 0% 0% 0% 0% 0% 岩手 2 50% 50% 0% 0% 0% 0% 茨城 4 75% 25% 0% 0% 0% 0% 岩手 8 63% 38% 0% 0% 0% 0% 茨城 11 64% 18% 0% 18% 0% 0% 岩手 18 78% 6% 6% 0% 0% 6% 茨城 6 17% 33% 17% 0% 17% 17% 岩手 9 33% 56% 0% 11% 0% 0% 導入有 資本金 製造業 卸売業 小売業 サービス業 建設業

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0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 十分に高い 妥当 やや低い かなり低い 不明 岩手県 茨城県 8% 54% 23% 4% 12% 4% 38% 35% 10% 8% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 十分に早い 妥当 やや遅い かなり遅い 不明 岩手県 茨城県

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