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審査請求時期パターンから考察される企業の特許戦略について : トヨタ 自動車を例に

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Academic year: 2021

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審査請求時期パターンから考察される企業の特許戦略について

―トヨタ自動車を例に―

[研究代表者]後藤時政(経営学部

経営学科)

研究成果の概要 最近では、特許を自社の付加価値創造最大化の手段として認識し、成果を上げている企業も見られるようになった。 このような企業は、企業内に特許を有効に付加価値創造に繋げられる能力やプロセスといった、特許の扱いに関する 組織能力が構築されていることが推測される。本研究ではこのような組織能力をパテント・ケイパビリティーと定義 し、どのようなものがそれにあたるのか発掘した。 その結果、企業内において事業戦略と特許戦略が整合性をもって行われているか、すなわち、事業戦略に沿って、 どの特許出願を審査請求するか、またそれをいつするのかを決定するプロセスはこのような組織能力の一つであり、 審査請求の時期を観察することよって特許マネジメントの良し悪しが判断できると結論付けた。本報告では、トヨタ 自動車の特許マネジメントへの適用例について述べる。 研究分野:技術経営、知的財産権 キーワード:特許、パテント・パテントケイパビリティ―、特許マネジメント、審査請求時期、付加価値創造 1.研究開始当初の背景 特許を得るに当たり、出願をしてから36 ヶ月の間出 願した特許に審査を行うか猶予が与えられる。 審査請求自体にも費用はかかるため、請求された出願 が実態審査の後、権利化さたことはいいものの、それが 付加価値創造に貢献しない特許であれば、無用の長物と なってしまう。したがって、審査請求するかどうかは慎 重に判断されなければならず、そのようなプロセスが企 業にあるかどうかは、審査請求の時期のパターンからあ る程度判断できるものと思われる。 2.研究の目的 本研究室では複数の企業に対して審査請求時期の分 析を行ってみた。すると、トヨタ自動車に他の企業にな い特徴的な審査請求時期のパターンが確認できた。 そこで本研究では、トヨタ自動車に注目し、組織能力 の様子がうかがえるいくつかの特許情報パラメータを 観察し、そのマネジメントの方法について考察した。 3.分析方法 3.1 トヨタの審査請求時期パターン 図1には、トヨタ自動車の2002 年~2013 年の特許出 願に対して審査請求がいつ成されたか、そのパターンを 示した。多くの企業が36 ヶ月に渡って平均的に請求す るか、もしくは、一時期に偏って請求を行っているのに 比べると、そのどちらのパターンにも当てはまらないと いった意味で特徴的である。 本研究では図1に示すように、0 ヶ月から 12 ヶ月を 第一期、13 ヶ月から 24 ヶ月を第二期、25 ヶ月から 36 ヶ月を第三期の三期で分け、特許の扱いに違いがあるか 分析を行った。 3.1 各種分析 それぞれの期で特許の扱いに違いがあるか判断する ため、公開特許公報のデータ[2]に基づき、次に示す 5 つの分析を行った。次の(1)~(5)の分析方法をそれぞれ の期間に適用し、期間による違いを見極めた。 (1) ポジショニング分析 出願された特許の平均頁数及び、年間出願件数を算出 130

(2)

し、特許出願方策マトリクスに当てはめ、ポジショニン グを行う。 (2) 代理人利用頻度分析 代理人の有無の頻度を調べ、特許出願業務について、ど の程度代理人に依頼しているかを分析。 (3) テキスト・マイニング分析 トヨタが提出した2002~2013 年の特許出願書類に対し て、テキスト・マイニングを行い権利化する(製品)機能 を出願名称の出現頻度で把握する。 (4) 査定率分析 審査請求を行った特許の内、どの程度拒絶査定を受けて いるか比較し査定有りの割合について把握する。 (5) IPC 出願分野分析 国際特許分類に基づきA~H のセクションに分け、ど の分野へ特許出願しているかを把握する。 4.研究成果 4.1 分析結果 第一期、第二期、第三期に審査請求された特許につ いて、実態審査が行われた後、登録査定(登録されて特 許になる)になったのか、拒絶査定なったのか、その割 合を調べてみた。その結果を図2に示した。 結果では、第一期と第二期に比べ、第三期の登録査定 率の割合が低いことから、早く審査請求された特許出願 の方が、特許要件をクリアできるような、質の高い特許 であるように思われた。 次に IPC 出願分野分析の結果を図3および図4に示 した。図3は第一期におけるA分野からH分野に成され た特許出願の割合を示したものであるが、このように、 B(処理操作、運輸)分野とF(機械工学、照明)分野 の出願の割合が下がり、H(電気)分野の出願の割合が 上昇していた。なお、この傾向は第二期についても同様 であった。 これに対して、図4に示した第三期の結果では、これ ら四分野の経年による変化は、第一期および第二期と比 較して緩やかであった。 通常、重要な特許ほど、審査請求時期が早いと考えら れる。また、実態審査における査定の結果も併せて考え ると、初め二年間に審査請求される特許はトヨタ自動車 にとって比較的重要な特許であることが考えられる。 図1 トヨタ自動車の特徴的審査請求時期パターン 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 5000 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 出願 県k数(件) 請求時期(⽉) ※)2002年から2013年までの出願の合算

第⼀期

第⼆期

第三期

図2 第一期~第三期、査定の割合 84% 83% 77% 16% 17% 23% 第 一期 第二 期 第 三期 査定 の割合 (% ) 査定 拒絶 131

(3)

一方、第三期では、審査請求される特許数が著しく増 加することから、権利化する必要性はあるものの、それ ほど重要ではない特許出願がまとめてこの時期に審査 請求されているように思われる。 このことから、その企業の新規の取り組みや、重要視 されている特許は第一期および第二期に審査請求が行 われていると考えられる。 このようにトヨタ自動車は、権利化の優先度をつけて いることがわかった。 4.2 まとめ 本研究によって、トヨタ自動車の審査請求時期による 特許戦略の違いを明確にすることができた。 査定率分析および IPC 出願分野分析の結果を併せて 考察すると、トヨタ自動車は審査請求が早くなされる特 許出願は質が高く、企業にとって重要視されていること が推測できた。 逆に、審査請求時期が遅い特許出願は、大企業ゆえに すべての特許を精査できず、優先度の低い特許出願をま とめて審査請求されたものと考えられる。 今後の課題として、ヒアリング調査などを行い、デー タの裏取りを行っていきたい。 [参考文献] [1]知的財産教育協会編,『知的財産管理技能検定公式テ キスト改訂8 版』(2016). [2]本国特許庁,公開特許公報(2004~2013). 図3 第一期における IPC 分析 図4 第三期における IPC 分析 132

参照

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