北海道大学 大学院情報科学研究科 システム情報科学専攻
小野里 雅彦
概 要 北海道大学では平成25年4月よりReaD&Researchmapを 活用した研究者総覧のWebサービスを開始した.発表者はこの 新サービスの仕様策定等を主導した立場から,このシステムの 紹介をするとともに,開発に至った経緯,導入のプロセス,運用 の状況と今後の課題について述べる*. システム更新にいたる経緯 研究者総覧Webサービスの概要 ReaD&Researchmap利用の効果 新システムへのユーザ移行準備 新システムの課題 *本発表における見解は小野里個人のものであり, 北海道大学が公式に提示するものではない.
北海道大学 1876年設立の札幌農学校がルーツ. フロンティア精神 国際性の涵養 全人教育 実学の重視 基本理念 教員数:正規2,083, 非正規685 学生数:学部11,394, 大学院6,351 部局数:12学部29学科,52専攻 財務:年間予算 1,033億円 運営費交付金42.5%, 病院27.7%,外部資金29.8% 基本データ
システム更新にいたる経緯 国立大学法人化/学校教育法一部改正 内部用XML-DB 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 大学情報データベース運用開始 ReaD&Researchmap運用開始 旧システム運用停止/新システム運用開始 新システム仕様検討開始 大学ポートレート(仮称)運用開始予定 大学情報データベース仕様検討開始 大学情報データベース利活用状況調査 公開用XML-DB 分析用RDB を含む合計9台の サーバーで構成
旧システム(~2013.3)の特徴と課題 研究業績から組織運営まで のデータを一元的に管理 詳細で多岐にわたるデータ 項目を取り扱い可能 北海道大学の要求に合わ せたシステム開発と保守 Webインタフェースによる対 話的データ入力機能の提供 ReaDへのデータ提供機能 の実装 特 徴 問題点 様々な要求に対応するため システムが肥大化 使われないと思われるデー タ項目まで入力要求 開発・運用にかかる経費・ 人員が必要 Web画面を前にしてのデー タ入力作業の煩雑さ ReaDの仕様変更・サービ ス変更への対応
大学情報データベース(教員業績)に対する考え方の変化 旧システム設計時 システム更新検討時 研究業績の情報源 データ入力の範囲 データ編集作業 データの所有者 データの利用目的 データ入力時期 データ閲覧手段 ハードウェア 教員管理情報 可能な限り詳細に キーボード入力 所属大学 主に管理 定期(年度) パソコン 専用サーバー 外部データベース 必要最小限に 検索+マウス選択 研究者自身 主に公開 随時 携帯情報端末 クラウドサービス
研究者総覧Webサービスの構想 個人WEBページ表示 スタイルシート(CSS) JavaScript 基本情報 研究活動情報 社会貢献情報 教育活動情報 研究者マスタ 職員番号,研究者番号 氏名,所属,職名等 R&R 研究者 業績データ シラバスデータ 時間割データ 人事 JST R&R 個人WEBページ 表示のリクエスト 教務 R&R個人ページ ページリンク
研究者総覧Webサービスのデータソース
基本情報
研究活動情報
教育活動情報
社会貢献,大学運営,その他
学術論文 競争的研究資金 特許 氏名,役職 所属(含:兼職) R&Rアカウント 学歴,経歴 専門分野 受賞 担当授業科目 学外での各種委員 社会貢献活動 役員,部局長経歴 人事DBR&R
R&R
R&R
教務DB 時間割 シラバス 研究指導学生数 学位審査 担任・相談員 人事DB D D D M M Y北海道大学アカデミッククラウド 総理論演算性能43TFLOPS、2,000以上
のバーチャルマシンを構成可能な、国内最 大規模の学術クラウドシステム
北海道大学
研究者総覧Webサービスの概要
PC版
研究者(情報提供者)の立場から
研究業績データの収集・管理・入力に要する労力の大幅削減
外部システム(CiNii Articles, J-GLOBAL, PubMed, ArXiv,..)からのデータ の取り込み 所属機関に依存しない研究業績データの蓄積 転出をしても無駄にならない/転入してもすぐにデータ公開可能 府省共通研究開発管理システム(e-Rad)との連携 研究費申請/報告におけるデータ活用 ReaD&Researchmapの多様な機能の利用 研究者ブログ,研究講義資料公開,コミュニティ,...
運用者(大学)の立場から システムの導入・運用にかかる経費の大幅削減 研究者自身による研究業績データの入力・編集機能の省略によるシステ ム構成の単純化.経費 約1/10 収集する研究業績データ項目の明確化 ReaD&Researchmapのデータ項目が標準セットに 機能拡張の容易性 ReaD&Researchmapから一括して取得したデータファイルを中心に付加 的な機能拡張が可能.
利用(閲覧者/評価者)の立場から 見やすい研究者総覧ページの実現 ページデザインの自由度の向上,英語ページの提供,R&R個人ページへ のリンク 表示される研究者の範囲拡大 正規教員(教授,准教授,講師,助教,助手) + 特任教員,博士研究員, 学術研究員など 研究アクティビティに関する精度の高いデータの一括入手 部局別,研究分野別,部局間連携,...
2012.11 2012.12 2013. 1 2013. 2 2013. 3 2013. 4 新システム仕様決定 新システム納入契約 新システム試行運用 新システム納入契約 新システム正式運用/ 旧システム運用停止 新システム用データ準備 新システムへの変更の全学通知 R&Rへの移行広報HP R&Rアカウント取得推進 新システムページの内容確認 R&Rへのデータ移行(希望者) システム更新 ユーザ移行支援 R&R ID 取得率(正規教員) 2012.11 61.4% → 2013.11.5 89.6%
ReaD&Researchmap利用手引き (北海道大学版)
新システムの課題 IR(Institutional Research)への活用(例:各部局での研究活動 の分析と評価のための基礎データの整備とツールの開発) 教育活動に関する収集データ項目の拡充と計画/実績の区別. 研究者総覧における英語コンテンツの充実 北海道大学学術成果コレクション(HUSCAP)との連携 北海道大学シングルサインオン(SSO)システムからのR&Rへの ログイン ResearcherID/ORCIDとの連携(著者―論文の対応付けのデー タベースへの反映)
新システムの課題 大学ポートレート(仮称) 人事DBS 教務DBS 海 外 国 内 学 内 学内外のシステムと 今後どのように連携し ていくか?
おわりに R&Rのような研究情報基盤を積極的に活用することは,大学の 発信する学術情報のQuality(網羅性,正確性),Cost(経済性, 効率性),Delivery(即時性,的確性)の面で優れた選択である. 将来のシステム更新時期においては,まったく違ったソリュー ションが優位性を持つことも予想される.常に新しい技術やリ ソースを柔軟に取り込んでいくことが必要であろう. 本システムの開発に際してReaD&Researchmapの情報提供な どにご支援頂いた科学技術振興機構(JST)ならびに国立情報 学研究所(NII)の関係各位に感謝の意を表する.