宇都宮大学教育学部教育実践紀要 第6号 別刷 2 0 1 9 年 8 月 9 日
大嶋 正克・溜池 善裕
中学校社会科における学習指導について
†
大嶋 正克
*・溜池 善裕
**小山市立小山第三中学校
*宇都宮大学教育学部
** 授業を通じて育成されていくべき資質・能力は,新学習指導要領によって,1.生きて働く「知識・技能」 の習得,2.思考力・判断力・表現力等,3.学びに向かう力・人間性の三要素に再整理された。今回の改訂を 受けて教師側には,授業のあり方だけに留まらず,子どもたちに対する学習指導においても従来の方法を再 考する必要性が生じている。本稿では,中学校社会科における授業の実践例をもとに,これから目指すべき 学習指導について述べていきたい。 キーワード:中学校社会科,学習指導,主体的・対話的で深い学び, 一人学習,共同学習 1.はじめに 学習の成果は,主としてテストによって測られる。 特に社会科においては,知識とされる(重要)語句 の蓄積量及びその正確な復元を求める形式のものが 多く出題されるため,一問一答型のワークや問題集 をひたすら解いていくような学習や指導が必然性を 帯びてくる。 しかし,新学習指導要領が示している育成すべき 資質・能力には,生きて働く「知識・技能」の習得 とあるように,固定された(活用されない)知識を 習得することは目指されていない。それと同時に思 考力・判断力・表現力等や学びに向かう力・人間性 の育成も掲げられているのであるから,たとえ膨大 な量で専門性が高い内容であったとしても,単にそ のような知識を保持しているだけの状態に留まって いるのであれば,ワークや問題集を繰り返し解くよ うな学習(指導)は,その目的を達成するための手 段とはいえないのではないだろうか。 世の中にある様々な事象を認識する上で大切なの は,具体的な捉えである。授業時数の制約がある中, 学ぶべき内容量が多くなればなるほど,その効率性 を求めて教師主導の(教え込む)授業になりがちと なってしまう。多くの心ある教師にとって悩ましい 現実である。こうした事態が,一方的な説明に終始 した授業を生み出し,その後始末としてワークや問 題集をひたすら解くだけの学習指導へと導く悪循環 を引き起こしている側面もある。 本来のあるべき資質・能力を育成していくため, 子どもたちが自律的な学習を行けるような指導とし て、子ども達に学習の仕方を指導することを学習指 導と位置づける必要があるのではないか。 2.実践授業について (1) 単元名「北アメリカ州」全11時間 (2) 単元の設定 本単元は,新社会科学習指導要領 地理的分野に おける,(2)内容の「B 世界の様々な地域」にあ る(2)世界の諸地域 ④ 北アメリカ に基づいて 設定した。ここでは,世界の各地域で暮らす人々の 生活が,自然や地形といった地理的条件のみならず, 歴史や宗教といった社会的条件からも少なからず相 互に影響を受けながら成立していることを中心に理 解する。ここで大切なのは,当該地域を具に観察・ 調査したり,統計資料を読み解くことによって浮か び上がってくる現象面を知識として獲得するだけで はなく,それらの要因についても様々な角度からの 考察を行い,得られた成果を表現する学習過程が求 められている点である。つまり,教師がひたすら語 句を教え込むことによって「知識」を獲得させてい くのではなく,生徒たちが調べてきた内容をもとに 多面的な考察を加えていくことによって,対象地域 † Masakatsu OOSHIMA* and Yosihiro TAMEIKE**:About the Learning Guidance in Junior High School Social Studies
* Oyamadaisan Junior Highschool,Oyama ** School of Education, Utsunomiya University
の社会認識を形成していくような主体性ある活動を しなければ,「学習」にはならないということである。 また,資源・エネルギー問題や人口・食料問題といっ た地球的課題の視点についても,各州ごとに異なる ものを関連づけて取り上げることとなっている。 北アメリカ州については,現時点で散見される問 題の中でも特に,人種・民族や文化の多様性といっ た視点について考えさせていきたい。現アメリカ合 衆国大統領となったD・トランプは,その就任前か ら「アメリカ第一主義」を掲げ,人種や移民といっ た問題に向き合おうとしていた世論を排除の論理で 分断した。その歪みは,現在でもアメリカ社会にお いて問題視されているだけでなく,同様な向きがイ ギリスのEU離脱など,ヨーロッパ各地でも顕在化 している。 翻って我が国においては,名目上移民を厳しく制 限しているものの,実質的には「留学生」や「技能 実習生」として120万人を超える人々(2017年時点) が,コンビニや地方の農家・工場等で働いている。 折しも「働き方改革」が声高に叫ばれ,人手不足が 深刻化していく中,こうした外国人を安価な労働力 として酷使している実態を,果たして安易に多様化 社会と呼んでしまっていいものなのだろうか。本校 においても多くの外国籍をもった生徒たちが,席を ともにして学んでいる。そんな実態からも多様化社 会を構築することは,北アメリカ州やヨーロッパ州 といった地域に限ったことではなく,もはや地球的 課題といっても過言ではない。今回,特に移民とい う歴史的な背景をもった北アメリカ州の学習を通し て,自分たちが生活している社会の現状についても 目を向けるとともに,多くの背景や価値観をもった 人々が共に暮らす社会の構築に向けて,真剣に考え 合う機会となってほしいと願う。 (3) 単元の目標 ① 北アメリカ州の学習を通して自分たちの生活と のつながりを認識し,多くの人々が幸せに暮ら していける世の中のあり方について,共に認識 を深めていこうと周囲に働きかけていくことが できる。(関心・意欲・態度) ② これまでの歴史的経緯や社会の変化を踏まえな がら,北アメリカ州にとって理想とすべき社会 のあり方を考えることができる。(思考・判断・ 表現) ③ 北アメリカ州に関する様々なニュースに気づ き,グラフや統計資料からその内容を具体的に 読み取ることができる。(資料活用・技能) ④ 北アメリカ州ではどのように国家が成り立って きたのか。また,多様化社会の利点について理 解している。(知識・理解) (4) 生徒の追究予測 第1次 北アメリカ州(教材)と出会い,その地域 に関心を持つ 単元開きの授業で,夏休みの課題として提出され たレポート(世界の国を調べよう)から,北アメリ カ州に該当する作品の「お知らせ」と「お尋ね」を 行う。調べた内容を学級内に伝達する活動(お知ら せ)によって,集団内で発言する機会を設けるとと もに,自分とは違う思考によって導き出された疑問 (お尋ね)によって,分かっていたつもりが本当は 分かっていなかった事実に向き合わせていきたい。 「お知らせ」と「お尋ね」のやりとりによって, 生徒たちは北アメリカ州に対する知識を共有させる ばかりではなく,幾つかの疑問をもつことであろう。 特にアメリカ合衆国については,メディアの種類を 問わず報道されない日がないと言えるほど,我が国 とは密接な繋がりがある。こうした学習を土台にし て,時事的なニュースについても敏感に感じ取って いく下地を築いていきたい。 そのようにして育まれていく北アメリカ州という 地域への興味や関心の眼差しが,やがて自分たちの 生活空間といった身近な場面にも,絶えず向けられ ていくことを願う。 第2次 現実にある様々な現象を知り,自ら調べて いこうとする 教科書の内容(自然環境,歴史・民族構成,農業, 工業・商業,文化)を一通り学習していきながら, アメリカ合衆国を中心とした北アメリカ州としての 特徴を大まかに掴んでいく。この学習過程で,なぜ アメリカ合衆国がすべての産業や文化といった分野 において世界をリードする存在となり得たのかとい う疑問を提示し,単元全体を貫く骨格としていきた い。 このような過程を経ることによって,生徒たちは, 学習対象となっている社会的事象をきちんとわかろ うとすればするほど,自分で調べなければならない (一人学習)ことに気づいていくだろう。この後実 施する集団学習を見据えて学習課題を設定(仮題: アメリカは,本当に多様なあり方を認めているのだ
ろうか)し,一人学習に向けて共通の方向性を求め ていきたい。 第3次 北アメリカ州の現状から,日常の自分たち のくらしについて考える 一人学習を終えたところで,再び学習課題と関連 させながら見つめ直してみる。例えば,長い歴史で 見た場合,紆余曲折をしながらも全体としては着実 に多様な社会を実現させてきているようにも見え る。だが,ここ最近の動きからは,明らかにこれま でのオバマ政権とは逆行しているかのようにも見え ることだろう。生徒たちは,世界の各地域でも似た ような現象が起きていると感じた時,北アメリカ州 を取り巻く社会のあり方について,どのような捉え 直しをしていくのであろうか。 今後も多くの世代に引き継がれていきながら,不 断の努力によって多様性を確保していく流れを進展 していくべきという前向きな意見が出される一方 で,多様性を担保するには,限界があると認めてし まうような本音も出されることだろう。だが,こう した話し合いを真剣に進めていく行為こそが,多様 性を認めることそのものなのである。結論や合意ば かりを「成果」として,効率性や生産性ばかりが強 調されがちな世情ではあるが,一人でも多くの生徒 が,より良く生きる社会の実現に向けて,考えを深 めていくことを期待して止まない。 3.授業に向けた指導 (1) 日記指導 子どもたちに学習指導をするには,それぞれの生 活背景を知ることが必要不可欠である(1)。そのため, 日頃からの日記指導は必然となる。だが,中学生で は,そのまま放っておくと書く内容が単に事実の提 示(「今日は部活があった」「集会があった」等)で あったり,同じ文言の繰り返しや無難な受け答え (「今日は疲れた」「集中して授業を受けた」)に終始 することが多い。 日記にはその日に起こった出来事を詳しく述べる だけでなく,それらについてどう思ったのか,どん な感情をもったのかを具体的に書くとともに,その 内容をはじめて知ることとなる読む側にもわかりや すく伝わるよう書いていくよう,毎日丁寧な指導を 行った。そうすることで,後に指導する一人学習に おいても,具体的で相手に伝わりやすい内容にまと めることができるようになるからである。 (2) 一人学習の導入 生徒たちにとっての学習とは,漢字や単語の反復 練習とか問題集の決められたページを解いてくると いったように,教師によって与えられた課題そのも のである(2)。そこで,日々の授業を通して浮かび 上がってくる疑問を解決するため,主体的に調べて くることや自身の考えをまとめる活動を自主学習と して位置づけた。 多くの生徒たちは,前々回の単元で学習したヨー ロッパ州におけるEUとしてのまとまりが,移民問 題や加盟国の財政危機によってイギリスの離脱問題 を引き起こしている現状と関連するように,アメリ カ合衆国でも同様の動きが起きていることに気づい ている。そのため,アメリカ合衆国は本当に多様性 を認める社会であるのかについて,自分たちで考え ていく学習が必然性を帯びてくることとなった。 実際にアメリカ社会の様子を捉えていくため,ど んな事を調べたら良いのか問いかけたところ,それ ぞれ得意なことや好きな事には違いがあるのだか ら,それぞれが関心をもっている事と関連した内容 を調べてみたいという意見が寄せられた。そこで, 個々の生徒たちが抱いている興味・関心にもとづい て調べてくるテーマを設け,他の課題と一緒に提出 するよう求めるようにした。 テーマの設定にあたっては,生徒一人ひとりと個 別に話し合い,アメリカの音楽やアニメキャラにつ いて,或いはオバマとトランプの違いとか NBA や MLB といったスポーツに関する事等,ユニークで 個性的なテーマが出されるようになる。一方,自身 のルーツが海外にあるという生徒などは,堪能な英 会話能力を駆使して ALT や身近な外国人に意見を 聞き取りにいくため,質問の内容を考えていた。 本来であれば,日記にしろ一人学習にしろ,級友 たちを前に伝える活動(お知らせ)があって然るべき なのだが,中学校の日常ではカリキュラム上そのよう な時間が確保できない。そこで,ある程度の調べがで きた者から随時,内容をまとめたノートを提出しても らうようにした。その文章に目を通すとともに,不明 な箇所や解決されていない疑問点,さらにどんなこと を調べればよいのか等を赤ペンで記入し,そのやり取 りをキャッチボールのように行っていくこととした。 良い調べができた作品については,本人の了承を 得た後,学級内に広く紹介してそれぞれが参考とし ていけるようにしていった。
(3) 共同学習 指導の順番としては一人学習にやや先んずる形で, 実施した。これも授業時数としての余裕がないため, 時折道徳の授業も活用しながら「この話題なら,誰に 尋ねれば詳しい答えが得られるか」といったそれぞれ の内面的な価値観の違いに気づかせていった。また, 学級全員で学ぶ場であることから,発言者に偏りが出 ないよう配慮する必要性や集団を前にしても臆する ことなく堂々と発言できるよう,常に良好な人間関係 を築いていくことも年間を通じて行っていった。 4.授業の実際(授業記録) 授業実施日:平成30年12月13日(木)第6校時 1学級委員:起立。気をつけ,礼(C:お願いします。), 着席。 2T:いいですか。はい,じゃ今までですね,北ア メリカ州について学習してきましたけど,その中で もアメリカ合衆国に焦点を当てまして皆さんに ちょっと調べをしてもらいました。今日は調べた内 容を元にですね,北アメリカ州のまとめとして話し 合いの授業をしたいと思っています。そこでですね 学習テーマですけど,(板書)というテーマで話し 合いをしていきたいと思います。では今から時間を とりますのでそれぞれねらいを設定してください。 はい,それでは始めて下さい。出来た人はちょっと 待っててくださいね。よろしいでしょうかね大体ね。 じゃあどんなねらい設定したか,発表してもらえる 人いるかな。出来る人お願いします。いませんか。 IM女さんどうでしょう。 3IM女:はい。クラスのみんなの意見を交流して, みんなで具体的に考えたい。 4T:あー,意見を交流してみんなで考えたい。も う一人いきますか。KaM女さんどうですか。 5KaM女:みんなの調べてきた資料を基にアメリカ の様な生き方を理解するところ。 6T:なるほどね,はいじゃあそういう風に他の人 もねらい設定したと思いますので,それに基づいて ですね授業を始めて行きます。はい,じゃーですね 早速ですけどこのテーマについて皆さんで調べ学習 をしてもらいましたけども,まずは調べた内容のお 知らせからいきたいと思いますので,さ,皆さんの 方からこんなこと調べてこういうことが分かったと いうことがありましたらお願いします。何でもいい ですよ。はい,じゃ MR女さんお願いします。 7MR女:はい。SS女さんが調べてきたものなんで すけど。 8T:はい,SS女さんの方はね。今日実はSS女さん 早退しちゃったから,調べた内容をMR女さんに託 したのね。じゃ MR 女さん,SS 女さん(の調べを 発表)ということで。 9MR 女:ヒスパニックについて調べたそうなので すが,アメリカについて日本人は憧れる,憧れると いう人は憧れない人より少ないそうですが,ヒスパ ニックの人は憧れる人よりも憧れない人の方が少な いそうです。日本人が憧れる主な理由は,金持ちや 経済が発展している,スポーツチームが強い。憧れ ない理由は日本が一番,差別,銃が怖い等です。ヒ スパニックの人は憧れる理由は,言語が他の国でも 知られている,スポーツが強い,金持ち,自分を認 めてくれそう。憧れない理由は,自分を認めてくれ なさそう,トランプの考えが嫌,自由がなさそうだ そうです。このことからアメリカに対してトランプ をどう思うかで,日本とヒスパニックの考え方が違 うそうです。これはサリナさんの考えですが,私は アメリカにヒスパニックの人が憧れる理由は,必ず しも憧れているのではないので,みんなが憧れてい ると断言するのはおかしいと思います。でも憧れて いる人がいるからやはりトランプの考えが良いと思 わなかったり,特に気になったのは自分を認めてく れそうという意見です。私は正直あまり自分の良さ は認めてくれると思うけれど,悪いところは認めて くれないと思います。そもそも日本人はよく相手や 互いの良いところ,悪いところを認め合うっていう けれど,本当にそれが出来ているのかと考えた時に, 日本人はアメリカのことを認めてくれなさそうと か,トランプの考え方が嫌とか,何となくで怖いと いう印象を持ってしまう。けれど,そういう考えの 日本の人の方が怖いと思います。勿論その中には SS 女さんも入っているそうです。ただしアメリカ をよく思う人もいれば悪く思う人もいます。それは 個性なのでしょうがないと思います。ヒスパニック の人がアメリカに憧れているという意見はやっぱり 多いので,ヒスパニックの人がアメリカに対しての 憧れは強いのではないか,またアメリカのことをい うと,だいたいトランプの考えがとよく言うけどト ランプ氏はアメリカファーストという考えは私たち 日本人からしたら,「はっ」て感じだけど,アメリ カ人からしたら自分の国が一番ということだから日
本人が日本が一番と思うことと大体同じなのではな いかと思いました。つまりアメリカはしっかり認め ているんじゃないかと思ったそうです。 10T:じゃ,(板書を訂正しながら)憧れているで いいのかな。(MR女:はい。)憧れている。で,えー SS女さんは認めているという意見なんですね。 11MR女:はい。みなさんどうですか。 12T:はい。どうでしょう。SS女さん,あのー実際 にお母さんの協力を得てそういう実際にヒスパニッ クの方から,日本に来ている方から聞いたそうです。 インタビューで。さあ皆さんどうでしょう。 13 MR女:SM女さん。 14SM女:はい。いいですか。(C:いいです。)私は, SS女さんと違ってアメリカは多様なあり方を認めて ないと思います。んと,今は私はアメリカの外交か ら認めている,認めているかを調べたんですけど, アメリカはサウジアラビアのジャーナリスト殺害事 件のサウジアラビアを守っていて,それはアメリカ がサウジアラビアから多く原油を輸入しているから だと知って,イスラエルがアメリカの外交でイスラ エルの首都をパレスチナからエルサレムというとこ に勝手にアメリカが,トランプが認めて,パレスチ ナで大規模なデモが発生して人が亡くなるような大 きな出来事になってしまったことを知って,アメリ カのそういうトランプの突発的な発言とかによって 人が死んじゃったりして,アメリカはしかも国連の 難民救済事業機関への資金拠出をその事件をきっか けにやめてしまって,アメリカは国のためにしかやっ ぱり動かないのかなと思ったんですけど,それは大 統領としては当たり前のことなんじゃないかと思っ て,オバマ氏の時とトランプ氏の時とどうちがうの か考えてみたんですけど,オバマ氏は国のためにい いことをしてアメリカの評判を上げて国として価値 を上げるっていう政治で,トランプ氏は,国のため になることをそのまま実行に移すような政治をして いて,トランプ氏はLGBTを認めていなかったり, 白人至上主義の人の暴走を止めたりせず放っておい たりしてるから,そういう人が動かしていることか ら,全員がそうとは限らないけど,政府は認めてい ないと思います。でアメリカ,アメリカが認めるのは, そういう国のためになるような人材を大切してると 思うので,LGBTの人が認めて欲しくてデモとか起 こしても,それを止めるために時間を割くのは大変 だし,認めるための法律とかつくるのも大変だから そうやって時間を割くのが大変だからとか思ってる から認められないんだと思います。どうですか。 15T: どうみんな分かった。長かったけど。いいよ ちょっと周りの人と。(C:ざわざわ)さあ,いか がでしょうか。 16SM女:FR男さん。 17FR 男:はい,いいですか。(C:いいです。)僕 は上院と下院の違いを調べました。アメリカの憲法 の第二条が下院で,第三条が上院で,第四条が上下 両院二院制となっております。アメリカは基本的に 上下両院議員選挙となっております。アメリカ議会 の議員の任期は 2 年,上院議員任期の任期は 6 年で すが下院議員に合わせ約 3 分の 1 の 2 年ごとに開選 しています。他にもほぼ有権者数に比例してつくら れています。小選挙区はつくられていないようです が,どうしても 1.8 倍の定数格差が生まれます。人 口において選ばれたということで,下院議員は原理 上国民の代表とされています。上院は各州2名ずつ 選出されています。定数 100,改選 35,下院も 2 名 ずつ選出されています。定数改選435。こうなると 定数格差が何十倍となるのですが,それは許されて ます。なぜなら,上院は州の代表とみなされている からです。格は上院議員の方が上です。大統領候補 になるにも下院議員からでは無理といわれていま す。そうなっています。上院では,大統領の助言者 として大統領に置かれた任命に対する同意権,大統 領が決定した条約に対する同意権などが与えられま す。ちなみに上院は議員,上院の議員は副大統領を 務めています。このことから身分は上院,現実では 下院の方が上だと思います。多様なあり方をもっと 認めて,アメリカをもっといい国にするべきだと思 いますがどうですか皆さん。 18T:最後の所だけみんなに呼びかけたいのは何? (FR 男:はい?)。最後,みんなに呼びかけたいの は何?(FR男:皆さんはどう思いますか。)その内 容,その何を呼びかけた?ちょっと最後早口になっ ちゃった。みんなに何を呼びかけたの? 19FR男:もっと多様なあり方を認めて,もっとい いアメリカという国ををつくるべきだと思います。 20T:FR 男君はこの今のあり方だと,多様じゃな いってこと。(FR男:はい。)上院,下院だと何で? 21FR男:何か,どっちが上なのか分かりづらいから。 もうちょいはっきりさせた方がいいかなと思って。 22T:どっちが上だかよくわかんないんだ。さっき
上院は州の代表って言ったけど,下院は結局じゃ何 なの。(FR男:国民の代表です。)え?(FR男:国 民の代表です。)国民の代表。これ分かりますか, 違い。(C:ざわざわ)この違い分 かる人。(C:挙 手0)わかんないって人(C:ほぼ全員挙手)。はい。 FR男君はわかってるこれ?(FR男:わかんない。) わかんない。調べたけど分からない。ということは みんなに呼びかけても難しいことだね。んー。どう ですか皆さん(C:ざわざわ)。 23FR男:NH男さん。 24NH男:質問なんですけど,さっきの話だと自分 の頭じゃまだ分からないんで,もう少しわかりやす くお願いします。 25T:だそうです。もっとわかりやすくだって。 26FR男:じゃ NH男さんに質問なんですが,具体的 にどういう返しをすればいいのか教えてください。 27NH 男:それが分かんないから教えてください。 教えてください。…助言,わかんないからもっとわ かりやすく教えてください。 28FR 男:身分上では上院の方が上なんですけど, 現実には下院の方がなんか現実には下院の方が上 で,な,なんか上院だと副大統領なれるっていうん ですけど,自分では正直下院の方が現実に上だった ら,副大統領,下院が副大統領になればいいと思う んですけどそれで大丈夫ですかね。 29T: どう,NH 男君。わかった?(NH 男:わか りませんでした。)よく分からないんだって。誰か 助けてあげて(C:ざわざわ)。 30FR男:KA女さん。 31KA 女:いいですか。(C:いいです。)さっき身 分では上院の方が上って,下院,実際は下院の方が 上って言ってたんですけど,どうしてそうなったの かをどうして下院,実際に下院の方が上になったの かを教えて欲しいです。 32FR男: ちゃんとした方の考え方ですけど,下院の 方が頭がいい人が多いんじゃないかなと思います。 33T: 頭の良さなんですか。そこどうですか。FR 男君。何でこうなっちゃたのか。うん,そこどうで すか。うんもっとわかりやすくみんなに。 34FR男:さっきのこと言えばいいですか。下院の 方が,あ,上院より下院の方が頭がいいんじゃない かなと思う。 35T: どうですか皆さん。 36SM男:何でそう思うんですか。 37FR男:それ以外に何か方法が見つからない。自 分の考えの中で方法が見つからない。SM男さん。 38SM男:はい。んっとさっき,上院の方があの副 大統領になるってって言ったんで,上院のが頭,頭 いいと副大統領になるんで頭いいと思うんですけど 何で下院の方が頭いいか,通じてない。 39FR男:たぶん上院は上院の特定の人しか頭はよ くないんじゃないかと思います。(C:ざわざわ) SM女さん。 40SM 女:はい。FR 男さんに質問なんですけど, 結局上院と下院の違いを調べてFR男さんはアメリ カ多様性のあり方を認めているのか,どう思ったの かとその理由をはっきり言ってください。 41FR男:あり方を認めている認めていないとかで なく,認めた方がいいと思います。(C:ざわざわ) SuH女さん。 42SuH女:認めた方がいいっていうのは,アメリカ が認めていないっていう考え方ですか。 43FR男:みんな全ては認めていないとは思ってな いんですけど,ほんの一部は認めてないんじゃない かなと思っています。SuH女さん。 44SuH女:はい。いいですか。(C:いいです。)んと, FR男さんはほんの一部の人は認めていないという 考えだったんですけど,私は認めている人と認めて いない人が半分半分いるんじゃないかと思いまし た。理由は,私はジャズに関する,知った,ジャズ について調べたんですけど,ジャズはもともと黒人 がつくった音楽で,それを今も白人が演奏したって いうことから,黒人の,方を白人の人が認めている といえば認めないで黒人の音楽を反対する人もいる ので私は多様なあり方を認めている人と認めていな い人が五分五分,五分五分ぐらいいるんじゃないか と思ったからです。どう思いますか。MR女さん。 45MR女:はい。私もSuH女さんと同じような考え で,私はスヌーピーから多様性を,があるかないか を調べたのですがピーナッツの世界ではチャーリー ブラウンやスヌーピー以外に黒人のフランクリンと いう男の子がいるんですが,そのフランクリンは出 版当初からは存在しなかったそうです。ピーナッツ は 1950 年に誕生しフランクリンが初めて登場した のは 1968 年なので,約 18 年の間ピーナツの世界は 白人だけの世界だったそうです。そこから白人がど うして白人だけの世界になってしまったのだろうか と考えていて作者のシュルツさんは周りには黒人が
いなかったのではないだろうか。1900,1918 年か ら 1939 年で人種的差別撤廃提案という提案がされ ました。けれども提案なので差別は続いていたのだ ろうと思いました。そんな中,教師からの一通,一 通の手紙が届き,黒人の子どもの立場からというこ とでフランクリンが出来たそうです。私はピーナッ ツの世界は黒人白人が仲が良く,人種の多様性や個 性の多様性が一人ひとりが認められている小さな町 だと思いました。アメリカも多様性が認められてい る部分もあります。けれども政治的には認め,認め られていないところもあるのでごく一部の人達だけ が認めているのだと思います。トランプ氏が大統領 になり,ツイッターで人種差別が書かれているのが あり人種差別で訴えられるなどあってはならないこ とだと思うので,アメリカは誰かがもっと強く訴え ないと多様性が認められる世界には変わらないと思 いました。どうですか。SK男さん。 46SK男:はい,いいですか。(C:いいです。)えっ と,MR 女さんと同じ考えです。あの僕は ALT の 先生とインタビューしたその結果はあの,(T:ど うぞ。)ALTの先生に質問したことは,トランプと オバマについてどう思いますかと聞きました。んと その結果は,ALT の先生があのオバマについてト ランプに比べてオバマはアメリカが世界の中心で同 盟国同盟国があることより心配していました。オバ マはまた,全ての国を一つにすることにも,もっと 関心を持っていた。またトランプ,トランプのこと でオバマ,オバマに比べてトランプの考えは他の国 とはあまり協調しておらず,代わりにアメリカを最 優先課題としている。でもあのオバマはアフリカ系 アメリカ人であるが,アメリカ人,あーアメ,アメ リカ人を,一緒にあの考えさせるとあの,協力させ ることがうまくできたが,あのトランプはあのアメ リカ人があの,アメリカの他の人をあの分け,他の 国とうまく協力しなかったりで,これらはあのこれ らのことから,あの人種差別がいつもアメリカ人に 適用されされることを示しているのだと思います。 47T: じゃこれは(板書を指しながら)うまくいっ ていないってことね。(SK男:はい。)ALTの先生 のインタビューでね。はい,だそうですけどどうで しょうか。 48SK男:ES女さん。 49ES 女:私はアメリカの国歌から調べたんですけ ど,アメリカの国歌を日本語に訳すと,1番だけな んですけど「ほら貴方も見えるだろうか,夜の闇に 別れを告げ朝日に照らされて,それで日没の中,歓 声の中で手にした我らの誇り高き功績を,幅広のス トライプと共に輝く星々は,その死線を越える戦い の最中,我々が守る城壁の上で勇ましく己を誇示し 続け,そしてロケット弾の赤い閃光と空気を震わせ る炸裂した爆弾までもが,我らの旗がここに健在で あるということを一晩中見せつけていた。その輝く 星々を讃え旗は今もたなびく。ここは自由の大地の 上,勇者たちの祖国であると示すように」が日本語 の訳なんですけど,私はこの国歌からアメリカは, 自分の国の多様さは認めているけど,他国の考えを 認めていないと思います。なぜなら歌詞の中に「死 線を越える戦いの最中我々が城壁の上で勇ましく己 を誇示し続け」っていう歌詞があって,本当に多様 なあり方を認めていれば我々は自分たちのことしか 考えていないような言葉や,死線を越える戦いの最 中という言葉は使わないと思うからです。本当に多 様なあり方を認めていて本当にたくさんの多様なあ り方を認めているなら今の国歌を変えてもっといい 言葉を使って,いい言葉を使ってる国歌に変えるべ きだと思います。どうですか。 50T:今の分かりました。大丈夫?どうでしょう。 51ES女:TH男君。 52TH男:え,僕はアメリカのメジャーリーグの黒 人の差別について調べたんですけど,あのアメリカ の開幕の,開幕ローテーションの中でアフリカ系選 手はたったの 88 パー,88 パーセントにしかならな かったんですけど。(T:ん。何パーセント?)あっ, 間違えちゃった。8パーセントです。(C:笑い) 53T: 8パーセント。88パーセントしかって言った けど,8パーセントね。 54TH男:はい,間違えました。野球だけでなくそ うなんですけどフットボールやバスケットボールは 60 パーセントや 70 パーセントになるので,野球だ けで見ると多様性を,あ,多様なあり方を認めてい ないと思うんですけど,他のフットボールやバス ケットは多様なあり方を認めていると思いました。 皆さんどう思いますか。SeH女さん。 55SeH女:質問です。なんで野球だけ少ないんです か(以後はよく聞き取れず)。 56TH男:調べていないのでわかりません。 57SeH女:KiM女さん。 58KiM 女:んと,私はマーベルとディズニーにつ
いて調べたんですけど,とマーベルとディズニーを みて最近は認め,多様なあり方を認めていると思い ます。んと,昔は黒人の主役とかヒーローとか少な かったんですけど今は「モアナと伝説の海」とか「プ リンセスティアナ」とか黒人がたくさん出てきてい るので最近になって認められていると思います。皆 さんどうですか。SuH女さん。 59SuH女:はい。質問です。どうして最近は黒人が 増えているのかわかりますか。 60KiM 女:んと,ディズニーの方は分からないい んですけど,マーベルの方は,んと 1968 年にキン グ牧師が射殺されてから黒人のキャラクターが増え てきているので,キング牧師の暗殺がきっかけで増 えたのだと思います。 61T:そろそろ時間なんで,あと1つぐらいお願い します。どうでしょうか。 62KiM女:OG男さん。 63OG男:はい。キング牧師が,あ質問なんですけ どキング牧師が暗殺されたのはいつなんですか。 (KiM 女:1968 年 で す。) え っ と, せ ん な ん と か 1968,さっき言った年の経過,あの最近,暗殺され てからすごい経っていると思うんですけど。(T: 暗殺されてから?)あの,さっきのあの映画,ちょっ と間が長いのでその間は何があったんだろう。 64KiM女:ディズニーの方は何があったのか調べて ないんですけど,マーベルの方は1968年にキング牧 師が暗殺されてから1969年9月にファルコンという 映画が誕生しているので,マーベルではキング牧師 のことが大きかったんだなと思いました。YK女さん。 65YK 女:はい。あのだいぶ前に戻るんですけど, SuH 女さんが黒人の歌を白人が歌ってる,歌って るっていったんですけど,であの SuH さんは認め ている人と認めていない人半分半分って言ってたん ですけど,私は調べて黒人の歌を白人が歌っている のは黒人の泥臭い音楽を黒人が少しでもわかりやす く歌ったったという調べて分かったので,こういう 言葉からそれは差別,差別発言かなと思って,私は 認めていない人の方が多いと思います。で,黒人の 音楽はリズムブルースというふうに言われていてそ れも黒人系の音楽として世界中で愛されているけ ど,白人には愛されていないと思います。なので, 私は多様なあり方を認めていない方の人が多いん じゃないかなと思います。どうですか。SM女さん。 66SM 女:いいですか。(C:いいです。)んと,今 まで聞いてると,いろんな場所でいろんな多様なあ り方を認めてる人もいたら,認めていない人もいる と思うんですけど,私は全部のアメリカの人がみん な多様なあり方を認められるようになった方がアメ リカはもっといい国になると思うので,どうしたら アメリカはもっといい国になるのかを,みんなに聞 きたいです。 67T:はい,どうですかね,どうやればアメリカが よくなるのかをみんなに。もう時間がないので,えー じゃあ一旦話し合いを,一旦ストップしますのでと りあえず,はい今日の授業自分の決めたねらいに定 めて振り返って。 68C:(それぞれが振り返りを書く) 69T: じゃ時間もないんですけど。まだ書いてる人 いますけど,発表してもらえますか。HM女さんど うですか。 70HM女:発表はできなかったが,みんなの意見を 聞けて自分の調べてきた内容をどこで答えたらどう 言えばいいのか考えられた。今度は発表できるよう に頑張りたいと思います。 71T:だそうです。ML女さん。途中でもいいです。 72ML女:みんなの意見を聞いて,アメリカは,肌 の色とか出身国とか気にしないで様々な人に対応で きるようになれば発展できると思いました。 73T:だそうです。皆さん途中ですけどどうでしょ うか。もうちょっと待ちますからそうしたら私の方 からまとめの話をします。じゃ一旦聞いて下さい。 はい,じゃね今日話し合いの学習をしました。皆さ ん堅くてなかなか自分から言えなかったのと,やは りまだ一人学習調べが難しい言葉でやってましたか ら,もっと自分の言葉でわかりやすく,自分のもの に出来てない部分があると思いますね。で,自分の 物になるような調べになるともっと良いと思いま す。後半は少しこう,いろんな意見が上がってきた ので良かったと思います。で最後にSM女さんから 出たこれもあります(板書を指しながら)ので,次 の機会に考えていきたいと思います。次の時間に各 時間あげますので。はいおしまい。 74学級委員:起立 気をつけ,礼。 ※Cの記号は,不特定多数の生徒を指す。 5.子どもの学び(ノート及び授業分析) (1) 一人学習の様子から ワークや問題集を解くことばかりを課題として与
えられてきた生徒たちであったが,比較的意欲を もって調べる活動に取り組んでいる。その内容につ いても,当初こそインターネットや本の内容を抜粋 して書き写してきたものが多く見られたが,教師と ノートのやり取りによる指導を通して,理解した内 容を自分の言葉で書いてくるようになった。その際 には,図で示してみたり一覧表を作成してみると いった,具体的で構造的な把握をしようとする試み も見られるようになる。しかも,そのようなノート へのまとめ方は,その後も全教科における自主学習 で継続的に行われていった。 こうした学習指導によって生徒たちは,その内容 を理解するような学習の場合,ノートに具体的で構 造的なまとめを行い,単語や語句を覚えたりするよ うな学習では従来通りワークや問題集を解くという ように,その目的に応じて自身の学習を変えていく ことができるようになったのである。 調べ学習を行っている生徒の胸中にも触れてみよ う。授業記録にも何度か発言者として登場している SM女は,調べ学習の過程で「矛盾」と題した作文 を書いてきた(以下部分抜粋)。 「アフリカの自立,EU の存在意義,どういう世 界にしたいか考える。でも,例えば世界を平和にし たいというのが私の願いだとする。それは,完全な 形で叶うことはない。EUがある時点で平和な今は, EUがいらないという人の争いによっていつかくず されるかもしれない。平和には争いが必要だ。誤ち (原文ママ)が必要だ。でも誰も悲しい争いは望ま ない。でも,正しい道はすぐに見つかりはしない。 何かを手に入れるためには,何かを失うというの は本当で,自分がぎせいになってだれかを救うこと ができるのは,数少ない人間にしかできない。私達 の世界には『矛盾』がある。矛盾と上手く付き合う ことができないだろうか。未来のために,今できる ことはないだろうか。」 彼女は,ただ単にアメリカの多様性について調べ ていたのではない。今回の学習を通じて,アメリカ 合衆国やEUを取り巻く世界情勢を,自分の問題と して手繰り寄せながら捉えようとしていたのであ る。さらに共同学習の後には,「なぜ私達は学ぶのか」 という作文を書いている(以下部分抜粋)。 「私は,よく学ぶことに意味はあるのか?と思う ことがある。数学の方程式なんか,きっと私のなり たい仕事ではつかわないし,理科の実験だって研究 者かなにかになりたい人じゃなきゃつかわない。 じゃあ私達はなぜ,必死になって学ぶのだろうか? (中略)例えばテストで良い点をとらないと親にお こられる。だからがんばるなんて,あまり良いとは 言えない。これからのことを考えて子供のために… というのも分からなくないけど,本人が学びたいと 思えないのなら,それはなんの興味もうまないし, 将来のためにならない。本当に「やりたいこと」が みつかったとき,そこに向かって学べばいい。子供 の意欲にそぐわない過度な期待と学びの強用(原文 ママ)は,かえって学びへの喜びを消してしまうた め,逆効果だ。」 今回の実践を通して,学ぶことの意義や必要性に ついて,彼女なりに考える機会を得ることができた ことが推察される。学びとは,現時点で必ずしも必 要とされる実用的なものではなく,親などといった 他者の期待を背負うものでもない。あくまで学習者 本人の意欲と主体性に関わるものなのだと。 (2) 共同学習の様子から この学習における話し合いの流れを大まかに区 切ってみると,次のような分節となる。即ち,第1 分節~№15T「アメリカは多様なあり方を認めてい るのか」第 2 分節№ 16 ~ 43「調べてきた内容を立 ち止まってちゃんと考えよう」第 3 分節№ 44 ~ 65 「様々な見方をしてみよう」第4分節№66 ~「テー マを捉え直してみよう」の4分節である。 第1分節では,学習テーマである「アメリカは本 当に多様なあり方を認めているのだろうか」につい て,調べてきた内容を発表し合っていく。冒頭,体 調不良のため早退を余儀なくされた SS 女からノー トを託された MR 女が代わって調べた内容を述べ, 以下SM女,FR男と続く。そしてこのFR男の調べ てきた内容と意見を巡って,再検討を促していく展 開となるのが第2分節である。 第2文節では№24NH男が,FRの調べてきた内容 が難解すぎて理解できないので,もっとわかりやす く教えてほしいと伝えたことをきっかけに,№ 31KA 女,№ 36SM 男,№ 40SM 女もそれぞれが, FR男の考えの根拠を具体的に示すよう促している。 そしてFR男自身も,自分の調べてきた内容の不充 分さを認めた上で,№ 37 によって実は行き詰まっ ている状況であったことを,包み隠さず正直に述べ ている。教師があまり介入せずとも,生徒たちは各々 がちゃんと自分の頭で考え,納得いかなければ率直
にそれを指摘し合い,再考を促された側も素直にそ の不備を認めているのである。こうした一連のやり 取りから,学級内の信頼関係が確立されていること も窺い知ることができる。 第3分節では,再び各自が調べてきた内容を発表す る場面となるのだが,№ 55SeH 女,№ 59SuH,№ 63OG男と発表内容に対して質問が投げかけられる展 開となった。その中で,アメリカが多様性を認めてい るのか否かについては,現在と過去とでは違った結論 に行き着くことが明らかとなってくる。つまり,もの ごとをより具体的に捉えるには,歴史的な視点をもっ て経緯を辿る必要があることに気づくのである。 最後となる第4分節では,冒頭で№66SM女が,「ど うしたらアメリカはもっといい国になるのかを,み んなに聞きたいです」と述べている。これまでは教 師の示したテーマに基づいて,各自が調べる活動を 行ってきたのであるが,こうした話し合いによって, さらに自分たちが考えていくべき内容を示すことが できるようになっていくのである。 (3) 授業後の感想(振り返り)から 本格的な共同学習は,今回がはじめてであったこ ともあり,発言できたことを評価する内容があった 一方で,発言できなかったことを悔やむもの等,授 業における自身の行動面での関わり方を記述するも のが数点ほど見られた。 一方で,共同学習において多くの級友たちの意見 を聞くこと自体が収穫であったとするものや,その 結果,自身の考えを改めようとしたり,逆に確信を 得ることができたとする内容が多数を占めている。 また,より深く調べたいとする意見や,授業記録№ 66SM女の発言に触発されたのか,さらに発展的な学 習へと移行していきたいとする考えが寄せられた。 6.まとめ 一連の学習を経て,まずは各自が,個性的な興味・ 関心にもとづいて追究していくことを学んだ。そし て,目前の事象について調べた内容を理解しつつ, どのように咀嚼していけば他者に分かりやすく伝え ることができるのかについても,意識することがで きたと思う。 次は,他者の存在の大切さである。学級集団で1 つのテーマについて話し合いを行うことで,思考の 深まりは勿論のこと,自分だけでは思いもつかない であろう新たな視点の獲得も自覚することができた といえるであろう。 また,自分の頭で考え,理解や納得が得られない ときは,はっきりとその意志を示して立ち止まり, 周囲に助けを求めることも躊躇無く実施している。 教師による最低限の支えはあったにしても,全面的 に教師が介入しなければならないような事態に陥っ てはいない。 日記指導や日頃からの関わり合いを通じて子ども たちの背後にある生活環境を知り,その上で一人ひ とりに即した学び(調べ方)をともに築き上げてい く。その後,ある程度の一人学習が成り立っていく 頃を見計らって共同学習の機会を設けていく。 常日頃からあたたかい雰囲気に包まれた学級集団 づくりと言うと,学級活動や生徒指導上の課題と見 る向きもあるだろう。しかし,学習が個人と集団と の間を行き来する性質を帯びている(3)以上,他者 との関係づくりも学習指導の延長線で見ていくべき である。 授新学習指導要領によって示された三要素からな る資質・能力は,このような学習指導を継続的に行 うことで育成されていくものと考える。 注 (1) 溜池善裕「社会科における評価と学習指導の一 体化-思考体制の変化と集団的思考をとらえる 手がかりに着目して-」(『社会科教育研究』№ 132,2017 年)。同「問題解決学習から『しみ じみとする授業』へ(十二)-最も真剣な共同 生活-」(『考える子ども』№372,2016年)。 (2) 大嶋正克・溜池善裕「中学校社会科における奈 良の学習法の実践」(『宇都宮大学教育学部教育 実践紀要』no.5,2018年)。 (3) 溜池善裕「問題解決学習から『しみじみとする 授業』へ(十九)-学習・学習指導(一人学習・ 相互学習・共同学習)-」(『考える子ども』№ 384,2018 年)。同「社会科教育における重松 鷹泰の授業分析研究の意義-『子どもがする授 業』の発見と追究に着目して-」(『社会科教育 研究』№121,2014年)。 (付記)この論文は大嶋が全文を執筆し、溜池が表 現等を確認して成ったものである。 平成31年3月29日 受理