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臨床的クラウンインプラント比の増加がインプラント周囲骨に及ぼす 影響に関する実験的研究 岡田信輔 An Experimental Study on the Influence of Increased Clinical Crown-to-Implant Ratio on the Bone Tissu

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Academic year: 2021

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学位論文

臨床的クラウンインプラント比の増加が

インプラント周囲骨に及ぼす影響に関する

実験的研究

学位申請者 岡田 信輔

広島大学大学院医歯薬学総合研究科

展開医科学専攻 顎口腔頚部医科学講座

先端歯科補綴学研究室

(主任:菅井基行)

2014 年

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臨床的クラウンインプラント比の増加がインプラント周囲骨に及ぼす 影響に関する実験的研究

岡 田 信 輔

An Experimental Study on the Influence of Increased Clinical Crown-to-Implant Ratio on the Bone Tissue around Dental Implant

Shinsuke Okada 緒 言 オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー テ ッ ド イ ン プ ラ ン ト は 30 年 前 に 初 め て Brånemark に よ り 臨 床 応 用 さ れ , 現 在 で は 患 者 治 療 の 1 オ プ シ ョ ン と し て 用 い ら れ て い る 。Brånemark ら の 初 期 の プ ロ ト コ ル 1 )で は オ ト ガ イ 孔 間 に イ ン プ ラ ン ト を バ イ コ ル チ カ ル に 複 数 本 埋 入 し た 後 に 上 部 構 造 で 連 結, 上 部 構 造 の 高 径 よ り 長 い イ ン プ ラ ン ト を 用 い る こ と で

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3 イ ン プ ラ ン ト 周 囲 の オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 長 期 維 持 を 目 指 し た 。オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン 1 )は 骨 と イ ン プ ラ ン ト 間 に 軟 組 織 の 介 在 な し に 接 触 す る こ と と 定 義 さ れ, イ ン プ ラ ン ト の 長 期 成 功 に 必 要 な 条 件 で あ り 2 ,3 ), こ れ は 1998 年 の ト ロ ン ト 会 議 で 示 さ れ た イ ン プ ラ ン ト の 成 功 の 基 準 の 4 項 目 ① イ ン プ ラ ン ト は , 患 者 と 歯 科 医 の 両 者 が 満 足 す る, 機 能 的 な ら び に 審 美 的 な 上 部 構 造 を 支 持 し て い る 。② イ ン プ ラ ン ト に 痛 み, 不 快 感 , 知 覚 の 変 化 , 感 染 の 兆 候 な ど が な い 。③ 臨 床 的 に 診 査 す る と き, 個 々 の 連 結 さ れ て い な い イ ン プ ラ ン ト は 動 揺 し な い 。 ④ 機 能 下 1 年 以 降 の 経 年 的 な イ ン プ ラ ン ト 周 囲 の 垂 直 的 骨 吸 収 は, 0.2 mm 以 下 で あ る 4 )を 満 た す も の と さ れ て い る 。し か し な が ら, 近 年 , 長 期 経 過 し た イ ン プ ラ ン ト の 中 に は オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン を 維 持 し て い る も の の 2 mm 以 上 の 辺 縁 骨 吸 収 を 示 す も の も 多 く 報 告 さ れ つ つ あ る 。Rasperini ら 5 )は, 120 名 の 健 常 者 と 歯 周 病 患 者 の イ ン プ ラ ン ト の 生 存 率 お よ び 辺 縁 骨 吸 収 量 を 比 較 す る た め, 10 年 間 の 追 跡 研 究 を 行 い , 歯 周 病 患 者 の 辺 縁 骨 吸 収 量 は 2.28 ± 0.72 mm で あ っ た と 報 告 し た 。 ま た , Hardt ら 6 ) 50 名 の 健 常 者 と 歯 周 病 患 者 の 機 械 研 磨 イ ン プ ラ ン ト の 生 存 率 お よ び 辺 縁 骨 吸 収 量 を 比 較 す る た め, 5 年 間 の 追 跡 研 究 を 行 っ た 結 果 , 歯 周 病 患 者 64%, 健 常 者 24%に 2 mm 以 上 の 辺 縁 骨 吸 収 量 が 生 じ て い た と 報 告 し た 。さ ら に Sanna ら 7 )は 30 名 の 患 者 の 喫 煙 者 と 非 喫 煙 者 の イ ン プ ラ ン ト の 辺 縁 骨 吸 収 量 を 比 較 す る た め, 最 長 5 年 の 追 跡 研 究 を 行 っ た 結 果 , 喫 煙 者 の 辺 縁 骨 吸 収 量 は 2.6 ± 1.6 mm で あ っ た と 報 告 し て い る 。 一 方 で, 現 在 で は シ ョ ー ト イ ン プ ラ ン ト に 代 表 さ れ る Brånemark ら の

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4 初 期 の プ ロ ト コ ル か ら 逸 脱 し た イ ン プ ラ ン ト 長 よ り 大 き な 高 径 の 上 部 構 造 も 用 い ら れ は じ め て お り, こ れ ら の シ ョ ー ト イ ン プ ラ ン ト の ク ラ ウ ン 頂 点 か ら ク ラ ウ ン イ ン プ ラ ン ト 接 合 部 ま で と ク ラ ウ ン イ ン プ ラ ン ト 接 合 部 か ら イ ン プ ラ ン ト 底 部 ま で の 比 で あ る ク ラ ウ ン イ ン プ ラ ン ト 比(C/I 比 )が 2 以 上 で 良 好 な 臨 床 成 果 が 報 告 さ れ は じ め て い る 。Tawil ら 8 )は, 109 名 の 患 者 を 対 象 と し て 262 本 の 長 さ 10 mm の 機 械 研 磨 シ ョ ー ト イ ン プ ラ ン ト(Brånemark System)の 平 均 観 察 期 間 53 ヵ 月 の 予 後 を 比 較 し た 結 果 , C/I 比 と 辺 縁 骨 吸 収 に 相 関 は な い と 報 告 し て い る 。ま た, 平 均 観 察 期 間 2.3 年 の 294 本 の イ ン プ ラ ン ト で は, 0.5-3 の C/I 比 の イ ン プ ラ ン ト は そ れ ぞ れ 高 い 生 存 率 ( 98.2%) を 示 し た と Schulte ら 9 )は 報 告 し て い る 。 さ ら に, Blanes ら 1 0 )は, 患 者 83 名 に 埋 入 し た 192 本 の イ ン プ ラ ン ト の C/I 比 が 2 以 上 の イ ン プ ラ ン ト の 生 存 率 お よ び 辺 縁 骨 吸 収 量 を 明 ら か に す る た め, 6 年 間 の 追 跡 研 究 を 行 っ た 結 果, C/I 比 2 以 上 の イ ン プ ラ ン ト の 累 積 生 存 率 は 94.1%で あ り , C/I 比 2 以 下 の イ ン プ ラ ン ト と 辺 縁 骨 吸 収 量 に も 有 意 な 差 は な か っ た と 報 告 し た 。し か し な が ら, 近 年 で は C/I 比 は ク ラ ウ ン 頂 点 か ら ク ラ ウ ン イ ン プ ラ ン ト 接 合 部 と ク ラ ウ ン イ ン プ ラ ン ト 接 合 部 か ら イ ン プ ラ ン ト 底 部 ま で の 比 で あ る 解 剖 学 的 C/I 比 と , 骨 吸 収 を 伴 う イ ン プ ラ ン ト で 評 価 す べ き ク ラ ウ ン の 頂 点 か ら 骨 ・ イ ン プ ラ ン ト 界 面 最 上 部 と 骨 ・ イ ン プ ラ ン ト 界 面 最 上 部 か ら イ ン プ ラ ン ト 底 部 ま で の 比 で あ る 臨 床 的C/I 比 の 2 つ に 分 け て 臨 床 結 果 を 考 察 す る べ き で あ る と 考 え ら れ は じ め て い る 1 1 )。 す な わ ち , 骨 吸 収 を 伴 わ な い イ ン プ ラ ン ト の 咬 合 圧 に 対 す る 力 学 的 支 点 は ク ラ ウ ン イ ン プ ラ ン ト

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5 接 合 部 で あ る の に 対 し, 高 度 の 骨 吸 収 を 引 き 起 こ し た イ ン プ ラ ン ト で は 力 学 的 支 点 が 骨・イ ン プ ラ ン ト 界 面 最 上 部 に な る た め, 辺 縁 骨 吸 収 を 伴 う イ ン プ ラ ン ト の 生 体 力 学 的 性 質 は, 臨 床 的 C/I 比 を 用 い て 評 価 す べ き で あ る 1 2 )。 し か し な が ら, C/I 比 と 辺 縁 骨 吸 収 に 関 し て の 見 解 は こ れ ま で 多 く 報 告 さ れ て い る も の の, そ の 報 告 の 大 半 は シ ョ ー ト イ ン プ ラ ン ト の 解 剖 学 的 C/I 比 に 関 す る も の で あ り , 臨 床 的 C/I 比 に 基 づ い た イ ン プ ラ ン ト 治 療 の 長 期 予 後 は 明 ら か で は な い 。 そ こ で, 本 研 究 で は , 辺 縁 骨 吸 収 を 伴 う イ ン プ ラ ン ト の 臨 床 的 C/I 比 の 増 加 が 周 囲 骨 に 及 ぼ す 影 響 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。 材 料 お よ び 方 法 本 研 究 は, 広 島 大 学 自 然 科 学 研 究 支 援 開 発 セ ン タ ー 生 命 科 学 研 究 支 援 分 野 ラ イ フ サ イ エ ン ス 教 育 研 究 支 援 部 動 物 実 験 施 設 内 規 お よ び 利 用 細 則 に 従 い 行 っ た 。 外 科 処 置 は い ず れ も 0.1 ml/kg の 塩 酸 メ デ ト ミ ジ ン 1.0 mg/ml ( ド ミ ト ー ル , 明 治 製 菓 株 式 会 , 東 京 )筋 肉 内 注 射 お よ び 0.5 ml/kg の ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル ナ ト リ ウ ム 50 mg/ml ( ネ ン ブ タ ー ル, 大 日 本 製 薬 株 式 会 社 , 大 阪 )の 静 脈 内 注 射 に よ る 全 身 麻 酔 と エ ピ ネ フ リ ン 含 有 2 %リ ド カ イ ン( キ シ ロ カ イ ン , 藤 沢 薬 品 工 業 株 式 会 社, 富 山 )に よ る 局 所 麻 酔 を 併 用 し て 行 い , 実 験 動 物 へ の 苦 痛 を 最 小 限 に す る よ う 努 め た 。ま た, 処 置 後 の 1 週 間 は 2.0 ml/day の エ ン

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6 フ ロ キ サ シ ン 製 剤 ( 犬 猫 用 バ イ ト リ ル 2.5%, バ イ エ ル 株 式 会 社 , 東 京 )を 筋 肉 注 射 し, 感 染 防 止 に 努 め た 。実 験 動 物 は , す べ て 広 島 実 験 動 物 研 究 所 か ら 購 入 し た 国 産 の ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド ホ ワ イ ト ラ ビ ッ ト お よ び ビ ー グ ル ラ ブ ラ ド - ル ハ イ ブ リ ッ ド 犬 を 使 用 し, 研 究 で 使 用 す る 承 認 を 得 た 。 実 験 1.骨 レ ベ ル の 低 下 し た イ ン プ ラ ン ト 周 囲 の オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 評 価 1 . 材 料 イ ン プ ラ ン ト は, 陽 極 酸 化 処 理 チ タ ン 製 イ ン プ ラ ン ト( Brånemark TiUnite® Mark III, 直 径 : 3.75 mm, 長 さ : 7 mm, ノ ー ベ ル バ イ オ ケ ア

ジ ャ パ ン 株 式 会 社, 東 京 )を 選 択 し た 。実 験 動 物 に は , 本 研 究 開 始 1 ヵ 月 前 よ り 個 別 の ケ ー ジ 内 で 飼 育 し, 環 境 に 十 分 順 応 さ せ た 雄 性 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド ホ ワ イ ト ラ ビ ッ ト 5 羽 ( 3.0-3.5kg) を 用 い た 。 2. 実 験 プ ロ ト コ ル 動 物 の 両 側 大 腿 骨 に 形 成 用 バ ー ( ノ ー ベ ル バ イ オ ケ ア ジ ャ パ ン 株 式 会 社, 東 京 )を 用 い て 埋 入 窩 を 形 成 し た 後 , 各 イ ン プ ラ ン ト が 平 行 と な る よ う 動 物 毎 に 製 作 し た サ ー ジ カ ル ガ イ ド を 用 い て イ ン プ ラ ン ト を 片 側 3 本 ず つ 計 6 本 を そ れ ぞ れ の 近 遠 心 的 な 位 置 関 係 の 割 合 が 均 等 に な る よ う 計 画 的 に 4 ス レ ッ ド , 2 ス レ ッ ド お よ び 1 ス レ ッ ド を 露 出 さ せ た 状 態 で 埋 入 を 終 了 す る こ と で, そ れ ぞ れ High, Mid お よ び Low と 定 義 し , イ ン プ ラ ン ト 周 囲 の 骨 レ ベ ル の 低 下 を 再 現 し た ( 図 1)。イ ン プ ラ ン ト の 埋 入 は Brånemark シ ス テ ム の 埋 入 プ ロ ト コ ル に

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7 従 っ て 行 っ た 。 す な わ ち , 埋 入 窩 の 形 成 は 外 部 か ら の 注 水 可 能 な 歯 科 用 マ イ ク ロ モ ー タ ー に て 滅 菌 生 理 食 塩 水 を 注 水 し な が ら 毎 分 800 回 転 以 下 の 回 転 数 で 間 歇 的 に 行 い, さ ら に そ の 操 作 中 は シ リ ン ジ に て 十 分 な 生 理 食 塩 水 を 外 部 か ら 注 水 し て 骨 窩 の 冷 却 に 努 め た 。 イ ン プ ラ ン ト 埋 入 時 点 を ベ ー ス ラ イ ン(0 週 )に 設 定 し , イ ン プ ラ ン ト 埋 入 か ら 8 週 後 , 動 物 に 血 液 凝 固 阻 止 薬 ( 5000 単 位 の ノ ボ ・ ヘ パ リ ン 注 1000, 日 本 ヘ キ ス ト ・ マ リ オ ン ・ ル セ ル 株 式 会 社 , 東 京 ) お よ び ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル ナ ト リ ウ ム を 静 脈 内 注 射 し, 次 い で 総 頸 動 脈 か ら 10%中 性 緩 衝 ホ ル マ リ ン を 注 入 し て 潅 流 固 定 を 行 っ た 。そ の 後 , 大 腿 骨 を 一 塊 と し て 摘 出, イ ン プ ラ ン ト を 含 む 骨 ブ ロ ッ ク を 得 た 。 3. 観 察 方 法

(1) イ ン プ ラ ン ト 安 定 度 測 定 ( Implant Stabilit y Quotient: ISQ) イ ン プ ラ ン ト 埋 入 の 0 週 お よ び 8 週 後 の イ ン プ ラ ン ト 安 定 度 を 測 定 す る た め, 共 鳴 振 動 周 波 数 分 析 装 置( Osstell®, Osstell AB, Göteborg) を 用 い て, ISQ 値 を 異 な る 2 方 向 か ら 各 3 回 ず つ 計 6 回 測 定 し , そ の 平 均 値 を 求 め た 。 (2) 除 去 ト ル ク 値 測 定 イ ン プ ラ ン ト の 除 去 ト ル ク 値 を 測 定 す る た め, イ ン プ ラ ン ト 体 を 含 む 骨 ブ ロ ッ ク を 固 定 後, デ ジ タ ル ト ル ク ゲ ー ジ( BTGE100CN®, 株 式 会 社 東 日 製 作 所, 東 京 )の 先 端 に 接 続 し た イ ン プ ラ ン ト ド ラ イ バ ー を イ ン プ ラ ン ト 体 に 嵌 合 さ せ 逆 回 転 力 を 負 荷 す る こ と で イ ン プ ラ ン ト を 除 去 し た 際 の 最 大 回 転 力 を 除 去 ト ル ク 値 と し て 計 測 し た 。 こ れ ら の 値 は 一 元 配 置 分 散 分 析 を 用 い て, 有 意 水 準 を 5%以 下 に 設

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8 定 し て 統 計 学 的 に 解 析 し た 。 実 験 2. 生 理 的 荷 重 が 骨 レ ベ ル の 低 下 し た イ ン プ ラ ン ト の 周 囲 骨 に 与 え る 影 響 の 検 討 1. 材 料 イ ン プ ラ ン ト は, 実 験 1 と 同 様 に 陽 極 酸 化 処 理 チ タ ン 製 イ ン プ ラ ン ト(Brånemark TiUnite® Mark III, 直 径 : 3.75 mm, 長 さ : 7 mm, ノ ー ベ ル バ イ オ ケ ア ジ ャ パ ン 株 式 会 社, 東 京 )を 選 択 し た 。実 験 動 物 に は , 本 研 究 開 始 1 ヵ 月 前 よ り 個 別 の ケ ー ジ 内 で 飼 育 し , 環 境 に 十 分 順 応 さ せ た 雄 性 ビ ー グ ル ラ ブ ラ ド - ル ハ イ ブ リ ッ ド 成 犬 5 頭( 2 歳 齢 )を 用 い た 。 2. 実 験 プ ロ ト コ ル 動 物 の 両 側 下 顎 小 臼 歯 部 (P1, P2, P3, P4) を 抜 歯 し , 無 歯 顎 部 を 準 備 し た 。 抜 歯 か ら 12 週 の 治 癒 期 間 を 経 て , イ ン プ ラ ン ト を 埋 入 し た 。ま ず, 下 顎 無 歯 顎 部 の 歯 肉 頬 移 行 部 に 近 遠 心 的 な 切 開 を 加 え て 粘 膜 骨 膜 弁 を 剥 離, 骨 面 を 露 出 し た 。そ の 後 , 全 て の 埋 入 部 で 頬 舌 側 の 骨 レ ベ ル が 同 じ に な る よ う 骨 整 形 を 行 っ た 。 そ の 後 す ぐ に, 臨 床 的 C/I 比 を 再 現 す る た め , 異 な る 骨 吸 収 量 を 想 定 し た 3 種 類 の 深 さ の 骨 欠 損 (High: 4 mm; Mid: 3.25 mm; Low: 2 mm) を そ れ ぞ れ の 動 物 に 対 し て ラ ウ ン ド バ ー, 骨 ノ ミ , マ レ ッ ト お よ び 骨 ヤ ス リ を 用 い て そ れ ぞ れ の 近 遠 心 的 な 位 置 関 係 の 割 合 が 均 等 に な る よ う 計 画 的 に 付 与 し た( 図 2)。そ れ ぞ れ の イ ン プ ラ ン ト 埋 入 位 置 を 決 定 し た 後 , 各 イ ン プ ラ ン ト が 平 行 と な り, 骨 欠 損 付 与 前 の 骨 縁 上 部 と イ ン プ ラ ン ト 頚

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9 部 が 一 致 す る よ う に 動 物 毎 に 製 作 し た サ ー ジ カ ル ガ イ ド を 用 い て 片 側 に 3 本 ず つ Brånemark シ ス テ ム の 埋 入 プ ロ ト コ ル に 従 っ て 埋 入 し た 。そ の 後, カ バ ー ス ク リ ュ ー を 装 着 し て 粘 膜 骨 膜 弁 を 縫 合 し た 。研 究 プ ロ ト コ ル を 図 3 に 示 す 。 イ ン プ ラ ン ト 埋 入 時 点 を ベ ー ス ラ イ ン に 設 定 し (0 週 ) , 10 週 後 に , す べ て の イ ン プ ラ ン ト に 2 次 手 術 を 行 い, ヒ ー リ ン グ ア バ ッ ト メ ン ト を 装 着 し た 。さ ら に そ の 1 週 後 , そ れ ぞ れ の イ ン プ ラ ン ト に 印 象 用 コ ー ピ ン グ を 独 立 さ せ た 状 態 で 装 着 し, 印 象 採 得 を 行 っ た 。印 象 採 得 は, 印 象 用 コ ー ピ ン グ の ガ イ ド ピ ン に 適 合 す る よ う に 作 製 し た オ ー プ ン ト レ ー を 用 い て ピ ッ ク ア ッ プ 印 象 を 行 っ た 。印 象 開 始 6 分 後 , ガ イ ド ピ ン を 抜 き , 印 象 を 口 腔 内 か ら 撤 去 し た 。イ ン プ ラ ン ト 印 象 と 同 時 に, 下 顎 の イ ン プ ラ ン ト の 上 部 構 造 と 点 状 に 咬 合 接 触 す る よ う 咬 合 面 を 平 面 状 と し た 上 顎 の 補 綴 物 を 製 作 す る た め, 対 合 す る 上 顎 小 臼 歯 4 本 を 支 台 歯 形 成 し , ア ル ジ ネ ー ト 印 象 材 に よ る 単 純 印 象 を 行 っ た 。 技 工 操 作 は 標 準 的 な プ ロ ト コ ル で 行 っ た 。す な わ ち, 得 ら れ た 印 象 の イ ン プ レ ッ シ ョ ン コ ー ピ ン グ に イ ン プ ラ ン ト ア ナ ロ グ を 接 合 さ せ, 低 膨 張 型 ( 0.09%)タ イ プ Ⅳ 超 硬 石 膏 (Silky-Rock®, Whip Mix, Louisville) を 真 空 練 和 後 , 印 象 へ 注 入 し て 作 業 用 模 型 を 製 作 し た 。 す べ て の 上 部 構 造 は 生 理 的 荷 重 を イ ン プ ラ ン ト に 加 え る た め, 咬 合 器 を 用 い て , 残 存 歯 の 咬 合 関 係 を 参 考 に 金 銀 パ ラ ジ ウ ム 合 金 ( キ ャ ス ト ウ ェ ル M. C., GC, 東 京 ) で 製 作 し た 。 イ ン プ ラ ン ト 埋 入 か ら 12 週 後 に , 下 顎 の 3 本 の イ ン プ ラ ン ト の そ れ ぞ れ に 高 さ 7 mm の 上 部 構 造 を ス ク リ ュ ー に て 固 定 し た 。こ の こ と

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に よ り, 骨 欠 損 4 mm, 3.25 mm, 2 mm の 部 位 に 埋 入 さ れ た イ ン プ ラ ン ト の C/I 比 は 4:1( High C/I) , 3:1( Mid C/I) , 2:1( Low C/I) と な っ た 。次 い で 同 日 に, 上 顎 の 対 合 歯 に は , 咬 合 器 上 で 上 部 構 造 と 均 等 に 咬 合 接 触 す る よ う 製 作 し た 補 綴 物 を 装 着 し, 動 物 の 残 存 歯 の 咬 合 接 触 状 態 を 参 考 に し て す べ て の イ ン プ ラ ン ト の 咬 合 接 触 が 均 一 と な る よ う に 咬 合 調 整 を 行 う こ と で, イ ン プ ラ ン ト に は 生 理 的 荷 重 を 付 与 し た( 図 4)。24 週 で の 骨 添 加 を 標 識 す る た め , 上 部 構 造 装 着 時( 12 週 )に, 蛍 光 色 素( カ ル セ イ ン グ リ ー ン , Sigma Chemical, St. Louis) 25 mg/kg を 静 脈 内 に 注 射 し た 。

動 物 に は 上 部 構 造 装 着 後 か ら 固 形 食 を 与 え, 残 存 歯 の 歯 肉 お よ び イ ン プ ラ ン ト 周 囲 粘 膜 を 清 掃 す る た め, 0.05%の ク ロ ル ヘ キ シ ジ ン 1 3 ) (Concool Gel®, WellTech, Tokyo) に 浸 漬 し た 歯 ブ ラ シ で ブ ラ ッ シ ン グ を 週 に 5 回 行 っ た 。 イ ン プ ラ ン ト 埋 入 か ら 24 週 後 ( 24 週 ) , 動 物 に 血 液 凝 固 阻 止 薬 (5000 単 位 の ノ ボ ・ ヘ パ リ ン 注 1000, 日 本 ヘ キ ス ト ・ マ リ オ ン ・ ル セ ル 株 式 会 社, 東 京 )お よ び ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル ナ ト リ ウ ム を 静 脈 内 注 射 し, 次 い で 総 頸 動 脈 か ら 10%中 性 緩 衝 ホ ル マ リ ン を 注 入 し て 潅 流 固 定 を 行 っ た 。そ の 後, 下 顎 骨 を 一 塊 と し て 摘 出 , 正 中 に て 切 断 し て イ ン プ ラ ン ト を 含 む 骨 ブ ロ ッ ク を 得 た 。 同 ブ ロ ッ ク を 10%中 性 緩 衝 ホ ル マ リ ン に 48 時 間 浸 漬 , そ の 後 ア ル コ ー ル 系 列 に て 脱 水 , レ ジ ン 包 埋 を 行 っ た 。 得 ら れ た レ ジ ン ブ ロ ッ ク を 硬 組 織 薄 切 機 ( 硬 組 織 用 カ ッ テ ィ ン グ マ シ ン BS-5000, Exakt Apparatebau, Hamburg )を 用 い て 各 イ ン プ ラ ン ト 中 央 部 か ら イ ン プ ラ ン ト 長 軸 に 対 し て 近 遠 心 方 向

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に 半 切 し, 各 ブ ロ ッ ク 表 面 か ら 順 に 薄 切 し て 約 200 μm 厚 の 切 片 を 得 た 。 こ れ ら の 切 片 を 超 精 密 硬 組 織 研 磨 機 ( マ イ ク ロ グ ラ イ ン デ ィ ン グ マ シ ー ン, MG-4000, Exakt Apparatebau, Hamburg )を 用 い て 約 70 μm 厚 に 研 磨 し, 非 脱 灰 研 磨 標 本 と し た 。次 い で , 落 射 照 明 装 置 が 組 み 込 ま れ た 蛍 光 顕 微 鏡 (BZ‐ 9000, KEYENCE 株 式 会 社 , 東 京 ) を 用 い て 骨 添 加 を 蛍 光 観 察 し, そ の 後 , 同 標 本 に Villanueva 染 色 を 施 し , 光 学 顕 微 鏡 (BZ‐ 9000, KEYENCE 株 式 会 社 , 東 京 ) を 用 い て 組 織 学 的 観 察 を 行 っ た 。 3. 観 察 方 法

(1) イ ン プ ラ ン ト 安 定 度 測 定 ( Implant Stabilit y Quotient: ISQ) イ ン プ ラ ン ト 埋 入 か ら 0, 12 お よ び 24 週 後 の イ ン プ ラ ン ト 安 定 度 を 測 定 す る た め, 共 鳴 振 動 周 波 数 分 析 装 置 ( Osstell®; OsstellAB, Göteborg) を 用 い て , ISQ 値 を 唇 頬 側 お よ び 近 心 側 の 2 方 向 か ら 各 3 回 ず つ 計 6 回 測 定 し , そ の 平 均 値 を 求 め た 。 (2) X 線 学 的 観 察 イ ン プ ラ ン ト 埋 入 後 0, 12 お よ び 24 週 の 各 時 期 に イ ン プ ラ ン ト 周 囲 粘 膜 を 臨 床 的 に 観 察 す る と と も に, イ ン プ ラ ン ト を 含 む 周 囲 骨 の 規 格 X 線 撮 影 を 行 っ た 。 こ の 規 格 撮 影 は , デ ン タ ル 撮 影 用 イ ン ジ ケ ー タ( 撮 影 用 イ ン ジ ケ ー タ Ⅱ 型, 株 式 会 社 阪 神 技 術 研 究 所 , 兵 庫 )を 各 動 物 に 調 整 し た 撮 影 ジ グ を 用 い, 照 射 方 向 と 時 間 を 毎 回 一 定 に し て 行 っ た 。 イ ン プ ラ ン ト 周 囲 の 辺 縁 骨 吸 収 量 は デ ン タ ル エ ッ ク ス 線 写 真 を イ メ ー ジ ス キ ャ ナ ー(GT 9800, EPSON, 長 野 )で 取 り 込 み , 画 像 解 析 ソ フ ト を 用 い て, 以 下 の 項 目 を 計 測 し た 。

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12 ① ク ラ ウ ン イ ン プ ラ ン ト 接 合 部 か ら 底 部 ま で の 距 離 ② ク ラ ウ ン イ ン プ ラ ン ト 接 合 部 か ら 既 存 骨 と イ ン プ ラ ン ト が 接 触 し て い る 最 上 部 ま で の 距 離 イ ン プ ラ ン ト 周 囲 の 辺 縁 骨 吸 収 量 は 得 ら れ た ① と ② の 比 率 を イ ン プ ラ ン ト 実 測 長 に 乗 じ る こ と で 算 出 し た( 図 5)。な お , 埋 入 時 の 影 響 を 排 除 す る た め, 荷 重 後 ( 12 週 ) か ら の 変 化 量 を 算 出 し た 1 0 )。 (3) 組 織 学 的 観 察 得 ら れ た 標 本 の 蛍 光 観 察 お よ び Villanueva 染 色 に よ る 光 顕 的 観 察 後 , こ れ ら の 蛍 光 色 素 染 色 標 本 と 組 織 標 本 を 顕 微 鏡 デ ジ タ ル カ メ ラ (BZ-9000, KEYENCE 株 式 会 社 , 東 京 ) に て パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ (Dimension 5150C, Dell, Texas) に 取 り 込 み , イ ン プ ラ ン ト 周 囲 組 織 の 炎 症 性 反 応 を 既 存 骨 と イ ン プ ラ ン ト が 接 触 し て い る 最 上 部 の 骨 破 壊 像 を 観 察 す る こ と に よ り 評 価 し た 。 組 織 形 態 計 測 に お け る 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 の 割 合 は, 画 像 解 析 ソ フ ト を 用 い て イ ン プ ラ ン ト の 近 遠 心 に お い て 測 定 領 域 を 最 上 部 の ス レ ッ ド の 基 部 か ら イ ン プ ラ ン ト 底 部 ま で の ス レ ッ ド と 各 ス レ ッ ド の 頂 点 を 結 ん だ 隣 接 領 域 と ス レ ッ ド 先 端 か ら 側 方 1 mm の 側 方 領 域 と 設 定 し て 評 価 し た ( 図 6) 。 各 領 域 に お い て , 蛍 光 色 素 染 色 標 本 か ら は 2 値 化 し て 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 面 積 を, 組 織 標 本 か ら は 骨 面 積 を そ れ ぞ れ 算 出 し , 後 者 に 対 す る 前 者 の 割 合 を 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 の 割 合 と す る こ と で, 骨 添 加 の 定 量 的 評 価 と し た ( 図 7) 。 こ れ ら の 値 を 一 元 配 置 分 散 分 析 を 用 い て, 有 意 水 準 を 5%以 下 に 設 定 し て 統 計 学 的 に 解 析 し た 。

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13 結 果 実 験 1 す べ て の 動 物 は 観 察 期 間 を 通 じ て 体 重 の 減 少 は な く, 全 身 的 に 良 好 な 状 態 が 維 持 さ れ て い た 。ま た, す べ て の イ ン プ ラ ン ト に お い て 動 揺 や 脱 落 は み ら れ な か っ た 。 (1) ISQ 値

埋 入 時 の ISQ 値 は , High, Mid, Low 各 グ ル ー プ の 順 に , 55.40 ± 4.12, 54.37 ± 2.80, 57.75 ± 7.86, 埋 入 か ら 8 週 後 の ISQ 値 は 68.50 ± 0.77, 78.33 ± 9.07, 74.18 ± 4.06 で あ り , 全 て の イ ン プ ラ ン ト で 埋 入 か ら 8 週 後 の ISQ 値 は 埋 入 時 と 比 較 し , 有 意 に 高 い 値 を 示 し た が , グ ル ー プ 間 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た ( 図 8) 。

(2) 除 去 ト ル ク 値

除 去 ト ル ク 値 は, High, Mid, Low 各 グ ル ー プ の 順 に 71.68 ± 16.98, 97.07 ± 35.41, 60.93 ± 5.38( Ncm) で あ り , グ ル ー プ 間 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た ( 図 9) 。 実 験 2 す べ て の 動 物 は 観 察 期 間 を 通 じ て 体 重 の 減 少 は な く, 全 身 的 に 良 好 な 状 態 が 維 持 さ れ て い た 。ま た, す べ て の イ ン プ ラ ン ト に お い て 動 揺 や 脱 落 は み ら れ ず, ス ク リ ュ ー の 緩 み な ど の 補 綴 学 的 合 併 症 も 起

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き な か っ た 。 イ ン プ ラ ン ト 周 囲 粘 膜 の 炎 症 性 所 見 は 観 察 期 間 を 通 じ て 肉 眼 的 お よ び 組 織 学 的 観 察 で は み ら れ な か っ た 。

1) ISQ 値

High C/I グ ル ー プ の 平 均 ISQ 値 は 0, 12, 24 週 の 順 に 59.63 ± 5.88, 59.75 ± 6.60, 63.00 ± 3.49, Mid C/I グ ル ー プ の 平 均 ISQ 値 は 64.63 ± 4.82, 64.88 ± 4.73, 66.00 ± 5.71, Low C/I グ ル ー プ の 平 均 ISQ 値 は 62.50 ± 2.51, 63.00 ± 2.60, 63.75 ± 1.56 で あ っ た 。 す べ て の グ ル ー プ で ISQ 値 は 安 定 し て お り , 各 グ ル ー プ 間 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た ( 図 10) 。

(2) X 線 学 的 観 察

イ ン プ ラ ン ト 辺 縁 骨 吸 収 量 は High C/I, Mid C/I, Low C/I の 各 グ ル ー プ の 順 に 0.19 ± 0.99, 0.15 ± 0.33, 0.11 ± 0.53 mm で あ っ た 。 3 グ ル ー プ の イ ン プ ラ ン ト 辺 縁 骨 吸 収 量 は 0.11 mm か ら 0.19 mm で あ り , 3 グ ル ー プ 間 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た ( 図 11) 。

3) 組 織 学 的 所 見

High C/I, Mid C/I, Low C/I 各 グ ル ー プ の す べ て の イ ン プ ラ ン ト は , イ ン プ ラ ン ト と 骨 の 間 に 軟 組 織 の 介 在 な し に 直 接 骨 と 接 触 し て い た 。弱 い 炎 症 性 所 見 が 歯 肉 溝 上 皮 に 限 局 し て 観 察 さ れ た( 図 12,① )。 し か し な が ら, 炎 症 性 変 化 に よ り 引 き 起 こ さ れ た 骨 破 壊 は 観 察 さ れ ず, 各 グ ル ー プ 間 で 炎 症 性 反 応 の 違 い は 観 察 さ れ な か っ た ( 図 12, ② ) 。High C/I グ ル ー プ の イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 で は Mid C/I お よ び Low C/I グ ル ー プ よ り も 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 が 多 く 観 察 さ れ た( 図 13)。隣 接 領 域 の 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 の 割 合 は High C/I, Mid C/I, Low

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C/I の 各 グ ル ー プ の 順 に 13.00 ± 0.80, 9.20 ± 2.90, 4.95 ± 1.15( %)で あ り, High C/I グ ル ー プ は Low C/I グ ル ー プ と 比 較 し て 有 意 に 高 い 値 を 示 し た (p < 0.05) 。 側 方 領 域 の 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 の 割 合 に つ い て は, High C/I, Mid C/I, Low C/I の 各 グ ル ー プ の 順 に 24.15 ± 5.55, 17.15 ± 10.25, 15.50 ± 1.50( %) で あ り , High C/I グ ル ー プ は Mid C/I お よ び Low C/I グ ル ー プ と 比 較 し て 有 意 に 高 い 値 を 示 し た( p < 0.05) ( 図 14) 。 考 察 1. 実 験 方 法 に つ い て 1) イ ン プ ラ ン ト の 選 択 オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 成 立 に 関 係 す る 因 子 の う ち, イ ン プ ラ ン ト に 関 係 す る 因 子 に は, 材 料 , 形 状 お よ び 表 面 性 状 の 3 つ が あ る 1 4 )。 イ ン プ ラ ン ト の 材 料 に 関 し て は, in vitro1 5 ,1 6 )や in vivo1 7 ,1 8 ) に お い て 高 い 親 和 性 を 示 す こ と が 報 告 さ れ て い る 純 チ タ ン お よ び チ タ ン 合 金 が 広 く 臨 床 で 用 い ら れ て い る 。し か し な が ら, チ タ ン 合 金 は バ ナ ジ ウ ム や ア ル ミ ニ ウ ム を 含 ん で お り, 臨 床 研 究 か ら は 現 在 こ れ ら の 元 素 に 起 因 す る 為 害 作 用 な ど の 知 見 は 報 告 さ れ て い な い も の の, 細 胞 毒 性 の 影 響 が 懸 念 さ れ る こ と か ら 1 9 ,2 0 ), 本 研 究 で は 純 チ タ ン を 選 択 し た 。イ ン プ ラ ン ト の 形 状 に 関 し て は, 現 在 臨 床 に お い て 最 も 多

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16 く 用 い ら れ て い る ス ク リ ュ ー 型 を 用 い た 。表 面 性 状 に 関 し て は, ア パ タ イ ト コ ー テ ィ ン グ 2 1 ), チ タ ン プ ラ ズ マ コ ー テ ィ ン グ( TPS)2 2 ), ブ ラ ス ト エ ッ チ ン グ 処 理 2 3 ), 陽 極 酸 化 処 理 2 4 )な ど の イ ン プ ラ ン ト が 用 い ら れ て い る が, 本 研 究 で は C/I 比 の バ イ オ メ カ ニ ッ ク ス の 観 点 か ら の 臨 床 的 指 標 を 確 立 し た か っ た た め, 臨 床 で 広 く 使 用 さ れ 研 究 報 告 が 豊 富 な Brånemark 陽 極 酸 化 処 理 イ ン プ ラ ン ト を 選 択 し た 。 2) 実 験 動 物 の 選 択 本 研 究 の 実 験 1 で は ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド ホ ワ イ ト ラ ビ ッ ト を 使 用 し , 実 験 2 で は ビ ー グ ル ラ ブ ラ ド - ル ハ イ ブ リ ッ ド 犬 を 用 い た 。 現 在 まin vivo に お け る イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 の 変 化 を 検 討 し た 報 告 に は , サ ル 2 5 ), イ ヌ 2 6 ), ブ タ 2 3 ), ウ サ ギ 2 7 ), ラ ッ ト 2 8 )な ど が 主 に 用 い ら れ て い る 。サ ル は 歯 列, 下 顎 骨 の 構 造 , 顎 骨 の 大 き さ な ど が ヒ ト と よ く 類 似 し 2 9 ), 臨 床 応 用 に 近 い 条 件 を 設 定 し て イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 組 織 の 反 応 を 検 討 で き る 利 点 が あ る 3 0 ,3 1 )。 し か し な が ら, 動 物 の 年 齢 を 明 確 に 設 定 で き な い こ と に 加 え, 個 体 数 の 確 保 も 難 し い 。さ ら に , 最 近 ニ ホ ン ザ ル を 用 い た 動 物 実 験 が 倫 理 的 観 点 か ら 問 題 視 さ れ つ つ あ る こ と か ら も, こ の 動 物 を 用 い る こ と を た め ら わ さ せ た 。一 方 , 本 実 験 で 使 用 し た ウ サ ギ 3 2 )は イ ン プ ラ ン ト 埋 入 後 の 骨 組 織 反 応 の 検 討 に 用 い ら れ て お り, 系 の 統 一 , 同 一 の 年 齢 , 数 の 確 保 が 得 や す い 一 方 , 個 体 差 が 少 な い な ど の 利 点 が あ り, イ ヌ な ど の 大 型 動 物 よ り も 比 較 的 早 期 に オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン を 得 れ る た め 骨 治 癒 の 研 究 と し て も 近 年 多 く 用 い ら れ て い る 3 3 , 3 4 )。 ま た, 本 実 験 で 使 用 し た ビ ー グ ル ラ ブ ラ ド ー ル ハ イ ブ リ ッ ド 犬 は 実 験 用 動 物 と し て 用 意 さ れ て お

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17 り, 血 統 , 性 , 年 齢 , 体 重 な ど を 可 能 な 限 り 一 定 に す る こ と が で き る 。ま た, ビ ー グ ル ラ ブ ラ ド ー ル ハ イ ブ リ ッ ド 犬 で は 無 麻 酔 下 で ブ ラ ッ シ ン グ を 用 い て 実 験 結 果 に 影 響 を 与 え る と 予 測 さ れ た 口 腔 衛 生 状 態 を 容 易 に コ ン ト ロ ー ル で き る 。一 方, ブ タ は , 近 年 実 験 用 動 物 と し て 注 目 さ れ て い る が, 現 在 の 系 統 は 産 子 数 が 少 な く 量 産 が 困 難 な た め, 高 価 で 入 手 が 難 し い 3 5 )の に 加 え, イ ヌ に 比 べ て ヒ ト へ の 従 順 性 が 低 い た め 扱 い に く く, プ ラ ー ク コ ン ト ロ ー ル も 容 易 で は な い 。こ れ ら の 点 を 踏 ま え, 本 研 究 で は , イ ン プ ラ ン ト サ イ ズ や 埋 入 操 作 な ど が 臨 床 と ほ ぼ 同 じ 条 件 で 行 え る ビ ー グ ル ラ ブ ラ ド ー ル ハ イ ブ リ ッ ド 犬 を 用 い る こ と と し, 血 統 , 性 , 年 齢 , 体 重 等 の 条 件 を 可 及 的 に 統 一 し た 。こ れ ら の こ と に よ り, 抜 歯 後 の 埋 入 部 位 の 状 態 は 全 動 物 で ほ ぼ 同 じ と み な し て よ い 。 3) 埋 入 部 位 と 外 科 手 術 に つ い て イ ン プ ラ ン ト の 埋 入 部 位 と し て ウ サ ギ の 大 腿 骨 お よ び イ ヌ の 下 顎 小 臼 歯 部 を 選 ん だ 。ウ サ ギ の 大 腿 骨 は, 周 囲 が 筋 組 織 で 覆 わ れ て い る た め, イ ン プ ラ ン ト に 及 ぼ す 外 的 要 因 を 極 力 排 除 す る こ と が で き 3 6 ,3 7 ), 比 較 的 規 格 化 も 容 易 な こ と か ら , 通 常 の 埋 入 プ ロ ト コ ル か ら 逸 脱 し た 埋 入 状 態 で あ る 本 実 験 モ デ ル の イ ン プ ラ ン ト を 観 察 す る 部 位 に は 適 切 で あ る と 考 え る 。 イ ヌ の 下 顎 小 臼 歯 部 は イ ン プ ラ ン ト に 関 す る 他 の 動 物 実 験 で も よ く 用 い ら れ て お り 2 6 ), 他 の 研 究 結 果 と 比 較 す る こ と も 可 能 で あ る と 考 え た 。ま た, 大 臼 歯 部 を 選 択 す る と 大 臼 歯 を 抜 去 し な け れ ば な ら ず, そ の 場 合 の 咬 合 支 持 の 喪 失 が 動 物 を 衰 弱 さ せ る 危 険 も 考 え ら れ た 。 そ こ で 4 本 の 下 顎 小 臼 歯 を す べ て 抜 去

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し て, 小 臼 歯 部 の 無 歯 顎 部 を 準 備 す る こ と に し た 。

イ ン プ ラ ン ト の 埋 入 は, Brånemark ら 3 8 )の 提 唱 す る“最 小 限 の 組 織 侵 襲(minimum tissue violence)”の 概 念 に 基 づ い て 行 っ た 。埋 入 窩 形 成 の 際 に 生 じ る 過 度 な 外 科 的 侵 襲, 特 に 摩 擦 熱 は 近 傍 の 骨 細 胞 を 壊 死 さ せ, 骨 組 織 に 非 可 逆 的 障 害 を 与 え る 3 9 ,4 0 ,4 1 )。本 研 究 で は, デ ィ ス ポ ー ザ ブ ル の 鋭 利 な ド リ ル を 毎 分 800 回 転 以 下 で 用 い , 滅 菌 生 理 食 塩 水 を 外 部 か ら 注 水 し な が ら 埋 入 窩 の 形 成 を 行 い, 生 じ る 摩 擦 熱 が 極 力 小 さ く な る よ う 努 め た 。実 際, す べ て の イ ン プ ラ ン ト に お い て 良 好 な 骨 接 触 が 保 た れ て い た こ と か ら, 埋 入 手 術 が 本 研 究 へ 与 え た 影 響 は 軽 微 な も の で あ っ た と み な し て よ い 。 4) 上 部 構 造 と 荷 重 様 式 に つ い て イ ン プ ラ ン ト は 上 部 構 造 を 介 し て 機 能 す る こ と で 初 め て そ の 意 義 が あ る 。こ の た め, オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 長 期 維 持 こ そ が き わ め て 重 要 で あ り, 機 能 的 荷 重 に 関 係 す る 上 部 構 造 の 材 料 , 形 態 お よ び 咬 合 接 触 状 態 な ど は イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 構 造 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ す 。 イ ン プ ラ ン ト に 荷 重 を 負 荷 し た 従 来 か ら の 研 究 で は 金 属 製 上 部 構 造 を 用 い た も の が 最 も 多 く み ら れ る こ と か ら 2 3 ,2 5 ,2 6 ,4 2 ), 本 研 究 に お い て も 上 部 構 造 は 金 銀 パ ラ ジ ウ ム 合 金 を 用 い て 製 作 し た 。 荷 重 条 件 に お い て 対 合 す る 上 顎 の 補 綴 物 の 咬 合 面 は 平 面 と し, 側 方 力 を 排 除 す る た め 点 接 触 と し た 。 こ れ ま で の 動 的 荷 重 に 関 す る 検 討 で は, 荷 重 条 件 を 詳 細 に 規 定 し て い る も の が ほ と ん ど な く , 他 の 研 究 と の 比 較 は 容 易 で は な か っ た 。本 研 究 で は C/I 比 の 条 件 を 変 え て い る こ と か ら, 咬 合 は 一 定 で , か つ 生 理 的 範 囲 内 の 荷 重 で あ る 必 要 が あ

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19 る 。そ の た め, 咬 合 器 を 用 い て 上 部 構 造 を 製 作 し , 実 験 動 物 の 口 腔 内 で 残 存 歯 の 咬 合 接 触 状 態 を 参 考 に し な が ら 生 理 的 荷 重 を 加 え た 。 こ の よ う に す べ て の イ ン プ ラ ン ト に 生 理 的 荷 重 を 加 え る こ と で 臨 床 的 C/I 比 の 増 加 が イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 へ 与 え る 影 響 を 純 粋 に 評 価 で き る 。 5) 観 察 方 法 に つ い て イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 の 観 察 は 臨 床 的 に も っ ぱ ら デ ン タ ル X 線 写 真 や パ ノ ラ マ X 線 写 真 に よ り 行 わ れ て い る 。し か し な が ら, そ れ ら か ら 得 ら れ る 骨 に 関 す る 情 報 は 二 次 元 的 で あ る た め, 周 囲 の 状 態 を 正 確 に 読 み 取 る こ と は 困 難 で あ る 。Inoue ら 4 3 )は イ ン プ ラ ン ト 周 囲 の 骨 接 触 状 態 は X 線 学 的 観 察 の み で 正 確 に 評 価 で き な い と し て い る 。 そ こ で, 本 研 究 で は X 線 写 真 に よ る 経 時 的 な 辺 縁 骨 吸 収 量 の 変 化 を 観 察 す る と と も に, 周 囲 骨 の 変 化 を 組 織 学 的 評 価 す る こ と と し た 。オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン は, 光 顕 レ ベ ル で は イ ン プ ラ ン ト 周 囲 に 軟 組 織 が 介 在 し な い 骨 接 触 の 状 態 を 表 す も の と 認 識 さ れ て い る 1 )。本 研 究 で は, 一 定 の 生 理 的 荷 重 下 に お い て C/I 比 の 変 化 に よ る イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 へ の 影 響 を 観 察 す る た め, 光 顕 的 観 察 を 行 っ た 。ま た , 骨 添 加 を 観 察 す る た め, 蛍 光 色 素 を 用 い て 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 の 割 合 を 評 価 し た 。こ の 評 価 法 は, 周 囲 骨 に 生 じ る 骨 添 加 の 状 態 を 知 る こ と が で き, 既 存 骨 と の 区 別 も 容 易 で あ る う え , 定 量 化 も 可 能 で あ る 2 5 )。 そ れ ゆ え, 本 実 験 で は 荷 重 に よ り 生 じ る 周 囲 骨 の 変 化 , す な わ ち オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 維 持 の 変 化 を 観 察 す る た め, 蛍 光 色 素 を 用 い る 骨 添 加 の 状 態 を 評 価 し た 。 蛍 光 色 素 と し て は カ ル セ イ ン グ

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20 リ ー ン を 選 択 し た が, こ れ は 骨 芽 細 胞 の 石 灰 化 能 に 影 響 を 与 え な い と さ れ て い る こ と に よ る 4 4 )。 本 研 究 で は ,臨 床 で イ ン プ ラ ン ト 安 定 度 を 測 定 す る た め に 広 く 用 い ら れ て い る ISQ 値 も 測 定 し た 。 こ の こ と に よ り X 線 学 的 観 察 と と も に ISQ 値 に よ る イ ン プ ラ ン ト の 安 定 を 評 価 す る こ と で よ り 詳 細 に 臨 床 的 評 価 が で き た も の と 考 え る 。さ ら に, 実 験 1 で は 臨 床 上 評 価 が 難 し い 破 壊 試 験 で あ る 除 去 ト ル ク 値 を 測 定 し た 。 除 去 ト ル ク 値 は 骨・イ ン プ ラ ン ト 界 面 の 強 さ, す な わ ち オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 強 さ の 力 学 的 評 価 方 法 と し て 広 く 用 い ら れ て お り 4 5 ), 臨 床 観 察 項 目 で あ る ISQ 値 の 結 果 と 除 去 ト ル ク 値 の 結 果 を 比 較 , 検 討 す る こ と は 骨 レ ベ ル の 低 下 し た イ ン プ ラ ン ト の 様 相 の 詳 細 を 明 ら か に す る 上 で 重 要 で あ る と 考 え る 。 6) 組 織 形 態 計 測 学 的 観 察 に つ い て 本 研 究 で は 蛍 光 染 色 を 用 い た 組 織 標 本 に よ る イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 の 組 織 形 態 計 測 を 行 っ た 。 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 の 割 合 を 算 出 す る 測 定 領 域 は イ ン プ ラ ン ト 近 遠 心 の 隣 接 領 域 と ス レ ッ ド 先 端 か ら 側 方 1 mm の 側 方 領 域 と し た 。Gotfredsen ら 2 6 )は イ ン プ ラ ン ト に 側 方 静 的 荷 重 を 付 与 し た 場 合 の 測 定 領 域 と し て, イ ン プ ラ ン ト の 側 方 1 mm と 側 方 2 mm の 周 囲 骨 を 設 定 し て い る 。そ の 後 , 各 領 域 で の 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 量 の 評 価 を 行 っ た と こ ろ, 側 方 2 mm と 比 較 し て 側 方 1 mm で の 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 が 多 く み ら れ, 荷 重 を 負 荷 し た 場 合 で は イ ン プ ラ ン ト に 近 接 す る 領 域 で リ モ デ リ ン グ 活 性 が 高 か っ た と し て い る 。こ の こ と か ら, 本 研 究 で は ,隣 接 領 域 と 側 方 1 mm 領 域 の 2 つ の

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21 領 域 を 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 の 割 合 を 評 価 す る 測 定 領 域 と し て 設 定 し た 。 天 然 歯 と イ ン プ ラ ン ト と の 大 き な 周 囲 構 造 の 違 い は 歯 根 膜 の 有 無 に あ り, 関 根 ら 4 6 )は, 同 じ 荷 重 を 負 荷 し た 場 合 の 変 位 量 は オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー テ ッ ド イ ン プ ラ ン ト が 天 然 歯 に 比 べ て 極 め て 小 さ い こ と を 明 ら か に し て お り, そ れ ゆ え , 天 然 歯 で み ら れ る よ う な 反 応 が 歯 根 膜 の な い イ ン プ ラ ン ト で は 生 じ な い 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 こ の こ と は, C/I 比 を 変 化 さ せ る こ と が , 天 然 歯 で の 歯 冠 歯 根 比 を 変 化 さ せ た こ と で の 生 体 反 応 と 必 ず し も 類 似 し な い こ と が 考 え ら れ た 4 7 )。 そ の た め, 異 な る C/I 比 に お け る 生 体 反 応 を 観 察 す る た め に イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 の 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 を 評 価 す る こ と は 適 切 で あ る と 考 え る 。 7) 観 察 期 間 に つ い て 荷 重 負 荷 後 に 生 じ る イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 の 変 化 を 評 価 し た 従 来 の 研 究 2 6 ,4 8 ,4 9 )で は 4 週 ~ 66 週 と さ ま ざ ま な 負 荷 期 間 が 設 定 さ れ て お り, 負 荷 期 間 に 関 す る 基 準 は な い よ う で あ る 。し か し な が ら , イ ン プ ラ ン ト 埋 入 か ら 12 週 後 ま で の 骨・イ ン プ ラ ン ト 界 面 の 経 時 的 変 化 を み た 研 究 5 0 )か ら, 埋 入 後 12 週 は オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 成 立 時 期 と さ れ て い る こ と, ま た , 本 研 究 で の 負 荷 開 始 時 期 で あ る こ と か ら オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 状 態 お よ び 負 荷 後 の リ モ デ リ ン グ 活 性 に よ る 骨 添 加 を 評 価 す る 上 で 適 切 で あ る と 考 え た 。 さ ら に, Gotfredsen 2 6 )ら は, カ ル セ イ ン グ リ ー ン 投 与 後 か ら 12 週 の 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 を 観 察 し た 結 果, 高 い リ モ デ リ ン グ 活 性 が 継 続 し て い る

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22 と 考 察 し て い た こ と か ら, カ ル セ イ ン グ リ ー ン 投 与 後 , 12 週 で の 評 価 は 適 切 で あ る と 考 え る 。ま た, ウ サ ギ の 大 腿 骨 に 埋 入 し た イ ン プ ラ ン ト の オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン 成 立 時 期 に つ い て は 多 く の 報 告 が あ り, そ の 成 立 時 期 は 3 週 ~ 12 週 と 様 々 で あ っ た 5 1 ,5 2 ,5 3 )。 本 研 究 は Seong ら 5 4 )の ウ サ ギ 大 腿 骨 を 用 い て 1, 4, 8 お よ び 12 週 で の 除 去 ト ル ク 値 の 比 較 を し た 結 果, 8 週 以 降 で 除 去 ト ル ク 値 に 有 意 な 差 が み ら れ な か っ た と の 報 告 を も と に, 埋 入 か ら 8 週 を オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン 成 立 時 期 と み な し た 。 2. 実 験 結 果 に つ い て の 考 察 (1) 実 験 1 埋 入 深 度 を 変 化 さ せ た こ と で 骨 レ ベ ル の 低 下 を 再 現 し た イ ン プ ラ ン ト は す べ て オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン を 獲 得 し, オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン は 埋 入 深 度 の 影 響 を 受 け な い こ と が 示 唆 さ れ た 。 そ の こ と は, す べ て の グ ル ー プ で 埋 入 か ら 8 週 後 の ISQ 値 が 埋 入 時 と 比 較 し て 有 意 に 高 く, 8 週 後 の ISQ 値 は 60 以 上 で あ っ た こ と , 除 去 ト ル ク 値 が グ ル ー プ 間 に よ る 差 が な か っ た こ と か ら 裏 付 け ら れ た 。 近 年, イ ン プ ラ ン ト の 安 定 の 客 観 的 評 価 と し て Implant Stabilit y Quotient ( ISQ 値 )を 測 定 す る こ と が 一 般 的 に な っ て い る 5 5 )Scarano

ら 5 6 )は ヒ ト を 対 象 と し て 機 械 研 磨 イ ン プ ラ ン ト と 陽 極 酸 化 処 理 イ ン プ ラ ン ト の 骨 接 触 率 と ISQ 値 の 比 較 を 行 っ た 結 果 , 骨 ・ イ ン プ ラ ン ト 界 面 の 剛 性 と ISQ 値 の 間 に 有 意 な 関 連 性 が あ る と 報 告 し た 。 ま た , Becker ら 5 7 )は 埋 入 時 の ISQ 値 と そ の 経 時 的 変 化 を 52 名 の 患 者 を 対

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23 62.0 で あ っ た こ と と , 埋 入 時 に 高 い ISQ 値 を 示 し た イ ン プ ラ ン ト 群 は 経 時 的 に ISQ 値 の 減 少 傾 向 を 示 し , 埋 入 時 に ISQ 値 が 60 以 下 の イ ン プ ラ ン ト 群 は 埋 入 か ら ア バ ッ ト メ ン ト 設 置 の 間 に ISQ 値 が 増 加 し た と 報 告 し た 。 ま た, 失 敗 し た 2 本 の イ ン プ ラ ン ト の 埋 入 時 の ISQ 値 は 50 お よ び 51 で 低 か っ た こ と か ら , 埋 入 時 60 前 後 の ISQ 値 は オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 獲 得 を 予 知 で き る と 述 べ て い る 。 さ ら に, Nedir ら 5 8 )は 36 名 の 患 者 を 対 象 に 109 本 の イ ン プ ラ ン ト に 対 し て 荷 重 後 1 年 間 の 前 向 き コ ホ ー ト 研 究 を 行 っ た 結 果 , ISQ 値 47 以 上 を 示 し た イ ン プ ラ ン ト は イ ン プ ラ ン ト の 安 定 が 期 待 で き る と 報 告 し て い る 。 し た が っ て 本 研 究 の 埋 入 時 か ら 8 週 後 の イ ン プ ラ ン ト の ISQ 値 は 埋 入 時 の ISQ 値 と 比 較 し て 有 意 に 増 加 し て い た こ と , さ ら に 埋 入 時 の ISQ 値 が 60 以 上 と い う 結 果 か ら , 臨 床 的 に オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン を 獲 得 し て い る と 考 え ら れ る 。ま た, 本 研 究 結 果 で は 除 去 ト ル ク 値 も グ ル ー プ 間 に よ る 差 は み ら れ な か っ た 。 除 去 ト ル ク 値 の 測 定 は, 骨・イ ン プ ラ ン ト 界 面 性 状 を 評 価 す る た め に 広 く 用 い ら れ て お り, 骨 と イ ン プ ラ ン ト の 接 触 率 が 増 加 す る と , 除 去 ト ル ク 値 が 増 加 す る と い う 関 係 に あ る と 報 告 さ れ て い る 5 9 ,6 0 ,6 1 )。 こ の こ と は オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン 獲 得 後 の イ ン プ ラ ン ト の 除 去 ト ル ク 値 は 単 な る 摩 擦 抵 抗 だ け で な く, 水 平 回 転 に よ る 剪 断 力 を 示 し 6 2 ), 骨 ・ イ ン プ ラ ン ト 界 面 の 破 壊 力 を 表 し て い る と い う 熱 田 ら 6 3 )の 報 告 と 一 致 し, 本 研 究 結 果 は , 骨・イ ン プ ラ ン ト 界 面 の 強 さ が イ ン プ ラ ン ト 長 よ り も 骨 質 に 依 存 し た 結 果 で あ る と 考 え ら れ る 。 こ れ ら の こ と よ り オ

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ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン を 獲 得 し た イ ン プ ラ ン ト の 骨 ・ イ ン プ ラ ン ト 界 面 の 強 さ は 埋 入 深 度 の 影 響 を 受 け な い こ と が 明 ら か と な っ た 。 (2) 実 験 2

臨 床 的 C/I 比 の 増 加 は , イ ン プ ラ ン ト の 安 定 性 に 影 響 を 与 え な い こ と は, High C/I の 平 均 ISQ 値 が 良 好 な 結 果 を も た ら し た 事 実 に よ り 証 明 さ れ た 。そ し て, こ の 知 見 は , イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 へ の 応 力 が 増 加 す る High C/I 比 の イ ン プ ラ ン ト は 骨 添 加 を 継 続 し て い た と い う 組 織 学 的 所 見 に よ り 裏 付 け ら れ た 。し た が っ て, 適 切 な プ ラ ー ク コ ン ト ロ ー ル 下 に お い て, 臨 床 的 C/I 比 が 増 加 し た イ ン プ ラ ン ト は 骨 添 加 を 維 持 す る こ と で 良 好 な イ ン プ ラ ン ト 安 定 を も た ら す こ と が 示 唆 さ れ た 。

本 研 究 で は 3 種 類 の C/I 比 を 想 定 し た 骨 欠 損 を 準 備 し た( High C/I, 4 mm; Mid C/I, 3.25 mm; Low C/I, 2 mm)。い く つ か の 研 究 で は 1 0 ,6 4 ) C/I

比 が 2 以 上 と 2 以 下 の イ ン プ ラ ン ト を 比 較 す る と イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 へ の 影 響 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た と 報 告 し て い る こ と か ら, 本 研 究 で は C/I 比 が 2 つ ま り は 骨 欠 損 量 2 mm を Low C/I と 定 義 し た 。 Schulte ら 9 )は 平 均 観 察 期 間 2.3 年( SD; 1.7)に お い て は C/I 比 0.5-3.0 の イ ン プ ラ ン ト は 高 い 生 存 率(98.2%)を 示 し た と す る 興 味 深 い 知 見 を 報 告 し て い る 。ま た, Gentile ら 6 5 )は, 長 さ 5.7 mm の Bicon イ ン プ ラ ン ト は, 同 一 の 表 面 性 状 で あ る 長 さ が 8 mm 以 上 の イ ン プ ラ ン ト と 比 較 し て, 生 存 率 に 有 意 な 差 が み ら れ な か っ た こ と か ら , 短 い イ ン プ ラ ン ト の 持 つ 大 き な C/I 比 は , 長 径 が 長 い イ ン プ ラ ン ト と 比 較 し て 生 存 率 に 有 意 な 差 が な い こ と を 示 唆 し た 。一 方 で, 天 然 歯 に お い て

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25 は, 歯 周 疾 患 の 咬 合 性 外 傷 の 原 因 の 1 つ に は 短 い 歯 根 や , 臨 床 的 に 不 利 な 歯 冠 歯 根 比, す な わ ち 歯 冠 の 長 さ に 比 べ 歯 根 の 長 さ が 短 い こ と な ど が 考 え ら れ る 。す な わ ち, 歯 冠 歯 根 比 が 大 き い こ と は 咬 合 時 に 歯 周 組 織 に 障 害 を 与 え る 起 因 と な り う る 。 先 天 的 に 歯 の 支 持 部 位 で あ る 歯 根 が 短 い 場 合 あ る い は, 後 天 的 に 歯 槽 骨 の 吸 収 に よ り 臨 床 的 歯 根 が 短 く な る と, 力 学 的 に 歯 槽 骨 辺 縁 部 に は 生 理 的 許 容 範 囲 を 超 え た 力 が 加 わ り, 二 次 的 に 咬 合 性 外 傷 が 生 ず る 6 6 )。 こ の よ う な 場 合, 歯 に 側 方 力 が 加 わ る と, 側 方 力 は 不 適 当 な て こ の 因 子 と し て 作 用 し , 日 常 の 咀 嚼 力 で さ え 過 度 の 破 壊 力 に 変 換 さ れ る 6 7 )。 こ れ ら の 報 告 か ら イ ン プ ラ ン ト の C/I 比 は 天 然 歯 の 歯 冠 歯 根 比 と 類 似 し な い と 考 え ら れ る 。 本 研 究 で は 異 な る 骨 吸 収 量 を 想 定 し た 3 種 類 の 深 さ の 骨 欠 損 を 用 い た 。す な わ ち, ベ ー ス ラ イ ン の イ ン プ ラ ン ト と 骨 の 接 触 長 さ は 異 な っ て い る 。し か し な が ら, 全 て の イ ン プ ラ ン ト 周 囲 に は 軟 組 織 の 介 在 な し に イ ン プ ラ ン ト と 骨 は 直 接 接 触 し て い た に も 関 わ ら ず, High C/I, Mid C/I お よ び Low C/I グ ル ー プ で は 各 測 定 時 期 の ISQ 値 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 は, Degidi ら 6 8 )の 16 本 の 機 械 研 磨 お よ び 陽 極 酸 化 処 理 イ ン プ ラ ン ト を 対 象 と し た 研 究 で み ら れ た ISQ 値 と 骨 ・ イ ン プ ラ ン ト 接 触 率 は 統 計 学 的 に 有 意 な 関 係 を 示 さ な い と す る 結 果 と 一 致 す る 。 ま た, Al-Nawas ら 6 9 )は 成 功 し た イ ン プ ラ ン ト の ISQ 値 は 増 加 し , オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン が 獲 得 で き な か っ た イ ン プ ラ ン ト で は, ISQ 値 は 減 少 し て い た と 報 告 し て お り , High C/I, Mid C/I お よ び Low C/I グ ル ー プ の 各 観 察 時 期 で の ISQ 値 が 60-68 と

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26 安 定 し た 値 の な か で, 増 加 傾 向 を 示 し た 本 研 究 結 果 は す べ て の イ ン プ ラ ン ト が オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン を 獲 得 し, 観 察 期 間 を 通 し て 臨 床 的 に 安 定 し て い た と み な し て よ い 。ま た, 本 研 究 の イ ン プ ラ ン ト 辺 縁 骨 吸 収 量 は 0.11 mm か ら 0.19 mm で あ り , 3 グ ル ー プ 間 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た 。こ の 結 果 は, Tawil ら 8 )が 報 告 し た C/I 比 と 辺 縁 骨 吸 収 量 に 相 関 は み ら れ な い と す る 結 果 と 一 致 し, ま た Rokni ら 6 4 )に よ る, C/I 比 が 1: 0.8 か ら 3: 1 の 198 本 の イ ン プ ラ ン ト の 平 均 的 な 辺 縁 骨 吸 収 量 は 1.5 mm( SD; 0.4)で あ り , C/I 比 と 辺 縁 骨 喪 失 量 に 相 関 は み ら れ な か っ た と す る 結 果 と も 一 致 し た 。 蛍 光 観 察 に よ り ,荷 重 負 荷 後 の イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 で は イ ン プ ラ ン ト ・ 骨 界 面 領 域 だ け で な く , 側 方 ま で 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 が 多 く み ら れ , 周 囲 骨 全 体 で 骨 添 加 が 高 か っ た 。Berglundh ら 5 0)は , 埋 入 12 週 後 の イ ヌ の 骨・イ ン プ ラ ン ト 界 面 で は 新 生 骨 が 層 板 構 造 を 示 し , 成 熟 し た 状 態 で あ っ た と し て い る 。本 研 究 に お け る 埋 入 24 週 後 の 各 グ ル ー プ の イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 は 層 板 構 造 を 有 し ,Villanueva 染 色 に よ る 基 質 タ ン パ ク の 染 色 が ほ と ん ど み ら れ な か っ た こ と か ら 成 熟 し た 骨 と み な さ れ る 。 ま た, Miyamoto ら 7 0 )に よ り, イ ン プ ラ ン ト 埋 入 早 期 に 周 囲 骨 の リ モ デ リ ン グ 活 性 は 高 く な り, オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン 成 立 時 期 に は そ の 活 性 は 低 く な る こ と が 報 告 さ れ, 埋 入 12 週 後 は オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン 成 立 ま で に 生 じ た リ モ デ リ ン グ 活 性 の 影 響 は ほ ぼ 消 失 し た 時 期 で あ る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 こ の こ と か ら, 埋 入 12 週 以 降 に み ら れ る リ モ デ リ ン グ 活 性 は 荷 重 に よ り 惹 起 さ れ た 骨 の 変 化 と み な さ れ る 。 本 研 究 で は カ ル セ イ ン グ リ

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27 ー ン の 2 回 投 与 は 行 っ て お ら ず , 新 生 骨 の 形 成 量 あ る い は 割 合 に つ い て は 観 察 で き な か っ た 。し か し な が ら, Degidi ら 6 8 )は 下 顎 無 歯 顎 患 者 12 名 に 対 し て , オ キ シ テ ト ラ サ イ ク リ ン の 2 回 投 与 に よ り 荷 重 イ ン プ ラ ン ト と 無 荷 重 イ ン プ ラ ン ト の 周 囲 骨 の リ モ デ リ ン グ の 様 相 を 比 較 し,( 1)荷 重 イ ン プ ラ ン ト の 骨 芽 細 胞 数 は 無 荷 重 イ ン プ ラ ン ト と 比 較 し て, 有 意 に 高 い 値 を 示 し た が , 破 骨 細 胞 数 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た 。(2)荷 重 イ ン プ ラ ン ト は 無 荷 重 イ ン プ ラ ン ト と 比 較 し て 高 い 割 合 で 層 板 骨 が 観 察 さ れ た 。 (3)テ ト ラ サ イ ク リ ン 標 識 率 は 荷 重 イ ン プ ラ ン ト 表 面 で 高 い 値 を 示 し た 。 (4)既 存 骨 が 新 生 骨 に 変 換 さ れ る 所 要 時 間 は 即 時 荷 重 と 無 荷 重 の イ ン プ ラ ン ト 間 で 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た 。(5)荷 重 は イ ン プ ラ ン ト 表 面 で 層 板 骨 形 成 を 阻 害 せ ず, 線 維 性 骨 の 形 成 を 生 じ な か っ た と 報 告 し て お り , 本 研 究 結 果 の High C/I の 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 の 割 合 が 多 い こ と は 骨 吸 収 よ り も 骨 添 加 に よ る 影 響 が 大 き く, そ れ は 臨 床 的 C/I 比 の 応 力 の 増 加 に よ り 惹 起 さ れ た と 推 察 さ れ る 。 観 察 期 間 中, す べ て の イ ン プ ラ ン ト に お い て オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 喪 失 は み ら れ な か っ た 。Miyata ら 4 9 )は, サ ル に 埋 入 し た イ ン プ ラ ン ト に 100 μm の 咬 合 干 渉 を 与 え て 動 的 荷 重 を 4 週 負 荷 し た 場 合 に オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン は 喪 失 し な か っ た が, 250 μm で は 皮 質 骨 の 吸 収 と オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 喪 失 が み ら れ た と 報 告 し て い る 。こ の こ と は, オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 喪 失 は 骨 の 許 容 で き る 閾 値 を 越 え る 過 大 な 荷 重 が 負 荷 さ れ た 場 合 に 起 こ る こ と を 示 唆 し て い る 。本 研 究 で は, 生 理 的 な 動 的 荷 重 を 与 え た が , 皮 質

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28 骨 の 吸 収 や オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 喪 失 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ れ は Miyata ら が 与 え た 咬 合 干 渉 の よ う な 側 方 力 を 本 研 究 で は 排 除 し た た め か も し れ な い 。こ の こ と は, イ ン プ ラ ン ト の 上 部 構 造 に 与 え る 咬 合 の 基 本 的 原 則 と し て の 「 側 方 力 を で き る だ け 排 除 す る 」7 1 )こ と を 支 持 し て い る 。 ま た, Isidor ら は サ ル に 埋 入 し た イ ン プ ラ ン ト に 高 い 咬 合 を 与 え て 動 的 荷 重 を 負 荷 し た 場 合 に ,4.5~ 15.5 ヵ 月 の 間 に 皮 質 骨 の 吸 収 と オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 喪 失 が み ら れ た と 報 告 し て い る 。 し か し な が ら 咬 合 の 高 さ を 規 定 し て お ら ず 直 接 本 研 究 と 比 較 す る こ と は で き な い 。お そ ら く, 感 染 し た か , あ る い は 側 方 力 が 生 理 的 許 容 範 囲 を 超 え た た め 骨 の 適 応 が 果 た せ な か っ た た め で あ ろ う 。前 述 の Miyata ら や Isidor ら が 与 え た 荷 重 は 動 的 荷 重 で あ り , そ の 場 合 に は イ ン プ ラ ン ト の 動 揺 と 共 に オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン が 喪 失 し て い る 。 イ ン プ ラ ン ト の 微 小 動 揺 と オ ッ セ オ イ ン テ グ レ ー シ ョ ン の 喪 失 と が 関 連 す る 7 2 )と さ れ て い る よ う に, 断 続 的 な 力 で あ る 動 的 荷 重 は イ ン プ ラ ン ト に 微 小 動 揺 が 生 じ て い る 場 合 に は そ れ を 増 大 さ せ る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る 。 骨 梁 構 造 を 再 現 し た 有 限 要 素 モ デ ル を 用 い た 解 析 結 果 で は 7 3 ), 骨 ・ イ ン プ ラ ン ト 界 面 ば か り で な く イ ン プ ラ ン ト か ら 離 れ た 海 綿 骨 領 域 に も 応 力 集 中 が 認 め ら れ て い る 。し か し な が ら, シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 実 験 で あ る 有 限 要 素 解 析 は 線 形 静 解 析 で あ る た め, 周 囲 骨 に 生 じ る 応 力 の 値 や そ の 分 布 は 静 的 荷 重 に は 応 用 で き る も の の, 動 的 荷 重 で は 中 心 咬 合 位 で 咬 合 し た 1 時 点 の み で 応 用 可 能 と な り , 経 時 的 な 骨 の 変 化 に 関 し て は 評 価 で き な い 。さ ら に, 現 在 リ モ デ リ ン グ に 影 響

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29 を 及 ぼ す 応 力 の 閾 値 に 関 し て も ほ と ん ど 不 明 で あ る た め 7 4 ), 有 限 要 素 解 析 で 得 ら れ た 応 力 の 値 と リ モ デ リ ン グ 活 性 を 直 接 結 び つ け る こ と は 困 難 で あ る 。し か し な が ら, 荷 重 に 対 す る 骨 の 動 態 を 考 え た 場 合 , 平 衡 状 態 か ら 骨 吸 収 や 骨 添 加 へ 移 行 す る に は, 骨 に 伝 達 さ れ る 荷 重 が 骨 の 反 応 す る 閾 値 に 達 す る 必 要 が あ る 7 5 )。 本 研 究 の 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 の 割 合 の 評 価 は, 骨 添 加 に よ る カ ル セ イ ン グ リ ー ン の 沈 着 を 指 標 と し て い る こ と か ら, 骨 添 加 が 生 じ る 応 力 の 閾 値 を 反 映 し て い る と 考 え ら れ る 。さ ら に, 骨 添 加 に は 細 胞 間 レ ベ ル で の 応 答 も 考 え る 必 要 が あ る 。こ れ ま で に, in vitro に お い て , 骨 細 胞 に 周 期 的 な 伸 張 ・ 圧 縮 力 を 与 え た 場 合 に は c-fos や IGF の 発 現 7 6 )が, ま た , 持 続 的 圧 縮 力 の 場 合 に は オ ス テ オ ポ ン チ ン の 発 現 7 7 )が そ れ ぞ れ 高 ま る こ と が 報 告 さ れ て お り, こ れ ら の 力 の 違 い が 細 胞 間 レ ベ ル で 何 ら か の 影 響 を 及 ぼ し て い る 可 能 性 も 考 え ら れ る 。し か し な が ら, 本 研 究 で は 細 胞 レ ベ ル の 反 応 ま で は 明 ら か に し 得 な か っ た の で, 今 後 は 荷 重 様 式 や そ の 大 き さ が 細 胞 の 感 受 性 な ど に ど の よ う に 影 響 す る の か を in vitro に お い て さ ら に 研 究 し て い く 必 要 が あ ろ う 。

負 荷 12 週 後 の High C/I, Mid C/I お よ び Low C/I グ ル ー プ の 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 の 割 合 に は 明 ら か な 違 い が 観 察 さ れ た 。一 方 で, 観 察 期 間 中 す べ て の グ ル ー プ に つ い て は ス ク リ ュ ー の 緩 み が な か っ た こ と, ま た , す べ て の グ ル ー プ に つ い て は 咬 合 状 態 を 咬 合 紙 を 用 い て 毎 週 検 査 し た が そ の 印 記 状 態 に 変 化 が み ら れ な か っ た こ と な ど か ら, す べ て の グ ル ー プ に お い て 付 与 し た 負 荷 が 観 察 期 間 を 通 し て イ ン プ ラ ン ト に 加 わ っ て い た と み な し て よ い 。 生 理 的 許 容 範 囲 内 の 大 き な

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30 荷 重 は 骨 量 を 増 加 さ せ, 骨 添 加 あ る い は 安 定 を 促 進 す る と さ れ て い る 7 8 ,7 9 )。本 研 究 に お い て み ら れ た 負 荷 12 週 後 の High C/I イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 の 骨 添 加 は ,荷 重 に み あ っ た 骨 構 造 の 変 化, つ ま り 骨 の 適 応 が 生 じ た 結 果 で あ る と 考 え て よ い 。 イ ン プ ラ ン ト 治 療 は 高 い 成 功 率 を 成 し 遂 げ て い る に も 関 わ ら ず, イ ン プ ラ ン ト 周 囲 の 感 染, 例 え ば イ ン プ ラ ン ト 粘 膜 炎 あ る い は イ ン プ ラ ン ト 周 囲 炎 に よ り 失 敗 す る 8 0 )。 イ ン プ ラ ン ト 粘 膜 炎 は 歯 肉 組 織 の 発 赤 あ る い は 腫 脹 を 特 徴 と す る 炎 症 病 変 で あ る の に 対 し て, イ ン プ ラ ン ト 周 囲 炎 は し ば し ば 化 膿 お よ び 深 い ポ ケ ッ ト と 関 連 し, 常 に イ ン プ ラ ン ト 辺 縁 骨 吸 収 を 伴 う 8 1 ,8 2 )。Mombelli ら 8 3 )に よ り 報 告 さ れ た イ ン プ ラ ン ト 周 囲 炎 の 治 療 は で き る 限 り 早 く に 細 菌 の 付 着 を 除 去 し, 進 行 を 止 め る こ と で あ る 。本 研 究 で は , 健 康 な イ ン プ ラ ン ト 周 囲 粘 膜 を 維 持 す る た め に 週 に 5 回 の ク ロ ル ヘ キ シ ジ ン を 浸 漬 さ せ た 歯 ブ ラ シ に よ る ブ ラ ッ シ ン グ を 行 い, イ ン プ ラ ン ト 周 囲 粘 膜 の 健 康 維 持 に 努 め た 。こ の こ と に よ り, X 線 学 的 観 察 お よ び 組 織 学 的 観 察 で は イ ン プ ラ ン ト 辺 縁 骨 の 破 壊 あ る い は 吸 収 は 観 察 さ れ ず, 臨 床 所 見 で も イ ン プ ラ ン ト 周 囲 粘 膜 に 炎 症 所 見 が 観 察 さ れ な か っ た の で あ ろ う 。 し た が っ て, 本 研 究 で 用 い た 動 物 は イ ン プ ラ ン ト 周 囲 炎 の 感 染 を 防 ぎ, 細 菌 付 着 を 除 去 し た と も の と み な し , 適 切 な プ ラ ー ク コ ン ト ロ ー ル 下 に 置 か れ た モ デ ル で あ る と 考 え る 。 観 察 期 間 を 通 し て, イ ン プ ラ ン ト に 補 綴 学 的 合 併 症 は み ら れ ず , イ ン プ ラ ン ト の 喪 失 お よ び ス ク リ ュ ー の 緩 み も 見 ら れ な か っ た 。 Nissan ら 8 4 ), 歯 槽 骨 頂 か ら 咬 合 平 面 ま で の 距 離 を Crown Height

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31 Space( CHS) と 定 義 し , CHS の 増 加 に 伴 う 非 軸 方 向 の 荷 重 に よ っ て 著 し い 側 方 モ ー メ ン ト が 生 じ, 側 方 モ ー メ ン ト に よ り 生 じ た 応 力 は , イ ン プ ラ ン ト ア バ ッ ト メ ン ト 接 合 部 あ る い は 歯 槽 骨 に 集 中 し, 補 綴 コ ン ポ ー ネ ン ト の 破 損 や イ ン プ ラ ン ト の 喪 失 に つ な が る 歯 槽 骨 の 微 小 骨 折 を 引 き 起 こ す 可 能 性 が あ る と 述 べ て い る 。 彼 ら の 研 究 の 結 果 で は, C/I 比 が 1:1.75 以 上 の 場 合 に は 15 mm 以 上 の CHS で 補 綴 学 的 失 敗 が 生 じ, CHS は C/I 比 よ り 生 体 力 学 に 関 連 す る 有 害 な 影 響 を 評 価 す る 上 で 重 要 で あ る 可 能 性 が あ る と し て い る 。 本 研 究 で は 上 部 構 造 は 高 さ が 7 mm で あ っ た こ と か ら , C/I 比 が 1:1.75 以 上 に も 関 わ ら ず 補 綴 学 的 合 併 症 は 生 じ な か っ た も の と 考 え ら れ る 。

本 研 究 で は, High C/I グ ル ー プ で は Mid C/I お よ び Low C/I グ ル ー プ よ り も 蛍 光 ラ ベ ル さ れ た 骨 が 多 く 観 察 さ れ た 。 こ れ ま で の 多 く の 研 究 に よ る と, 生 理 的 許 容 範 囲 内 の 大 き な 荷 重 は 骨 量 を 増 加 さ せ, 骨 添 加 あ る い は 安 定 を 促 進 す る と さ れ て い る 7 8 ,7 9 )。Gomez-Polo ら8 5 )は, 増 加 し た C/I 比 は オ ー バ ー ロ ー ド を 増 加 さ せ , 骨 の 細 胞 変 化 を 引 き 起 こ し た と し て い る 。こ の こ と か ら, 本 研 究 に よ り 生 じ た 応 力 は High C/I で 最 も 強 か っ た が , そ の 応 力 は 骨 が 適 応 で き る 生 理 的 許 容 範 囲 内 で あ り, 骨 は リ モ デ リ ン グ を 活 性 す る こ と に よ り 応 力 に 適 応 し た も の と 推 察 さ れ, 臨 床 的 C/I 比 の 増 加 し た イ ン プ ラ ン ト は , イ ン プ ラ ン ト 周 囲 骨 の 骨 添 加 を 維 持 し, 臨 床 的 に 安 定 し た 状 態 を 継 続 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。し か し な が ら, 本 研 究 で は , 観 察 期 間 を 通 し て イ ン プ ラ ン ト 周 囲 粘 膜 を 健 康 に 維 持 し て い る 。さ ら に は, 本 モ デ ル は 犬 モ デ ル の た め 一 般 的 に 下 顎 の 側 方 運 動 を 生 じ な い 。 し た が っ

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