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2. エネルギー政策推進の 3 本柱と MP3EI ここ 10 年のインドネシアの経済成長率は数パーセントで推移し この高い経済成長を背景に電力需要が急速に増加している 特に 電力需要は経済成長率よりも 1~2% 高く推移してきているため 電力エネルギーの安定供給は 官民一体となった国家事業として位

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Academic year: 2021

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1 最近のインドネシアの電力事情 エネルギー鉱物資源省・政策アドバイザー 矢野友三郎 1. インドネシアという大国 インドネシアと言えば、ASEAN の主要国で、昔はデビ夫人、今は AKB48 の海外初の姉妹とな る JKT48 というのが一般的な日本人感かも知れない。しかし、2004 年にユドヨノ政権の誕生後 のインドネシアの政治・経済の安定化により、日本からの投資が急増し最後に残っているアジ アの良きパートナーとして知られるようになった。 インドネシアは、ASEAN 唯一の G20(主要 20 カ国・地域)のメンバー国として発展を続け、 BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)と肩を並べるほどの経済成長振りを見せている。 現在、インドネシアの経済規模(GDP)は、韓国に次ぎ世界第 16 位(2010 年)、数少ない日本 の貿易赤字国、世界一の親日国家、そして、日本の 2 倍の 2.4 億人の人口(世界第 4 位)を誇 るが、驚くことに平均年齢 28 歳(日本 45 歳)で、30 歳未満が人口の半分を占める大きなビジ ネス市場である。9 月に米コンサルタント・マッキンゼー社(注 1)は、2030 年にインドネシ アの経済規模は世界7位になる可能性があるとした報告書を発表し、インドネシア経済の潜在 力の高さを改めて示した。 (注 1)http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE88H05I20120918 図表1:ASEAN諸国のGDP比較(2010 年) 0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000

GDP

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2 2.エネルギー政策推進の3本柱と MP3EI ここ 10 年のインドネシアの経済成長率は数パーセントで推移し、この高い経済成長を背景 に電力需要が急速に増加している。特に、電力需要は経済成長率よりも1~2%高く推移して きているため、電力エネルギーの安定供給は、官民一体となった国家事業として位置付けられ ている。 エネルギー政策推進の3本柱は、①政策、②法律、③FIT(固定価格買取制度)である。政 策については、国家レベルでは 2006 年の国家エネルギー政策(KEN、改訂中)、国家総合エネ ルギー計画(RUEN、策定中)、事業レベルでは 2008 年の国家電力総合計画(RUKN)、2011 年 の電力供給事業計画(RUPTL)により推進されている。法律については、2007 年のエネルギー 法、2009 年の新電力法、2009 年の省エネルギー政令、2003 年の地熱法等が制定(注 2)され ている。FIT(Feed in Tariff)については、4項で解説する。 (注2)http://energy-indonesia.com/(インドネシアの電力エネルギー事情) また、最近では政府高官が口を開けば唱える MP3EI(経済開発加速化・拡充マスタープラン) (注 3)の大旗の下で全体計画が進められている。インドネシアの関係者であれば、MP3EI は 一読しておくのが望ましい。この計画によれば 2025 年の目標を、①世界の 10 大経済大国に入 る、②名目 GDP を 2010 年の 7,000 億ドルから 4~4.5 兆ドルの高所得国へ、③一人当たり GDP を 3,000 ドルから約 15,000 ドルとしている。日本政府は、首都圏投資促進特別地域(MPA)構想で の官民連携を活用して、電力エネルギー開発を含むジャカルタ首都圏のインフラ整備を支援し ている。 (注3)http://www.ekon.go.id/media/filemanager/2011/07/06/m/p/mp3ei-english_final.pdf 3.最近の電力エネルギー事情 現在、2012 年の総発電容量は 4,100 万 KW で、関西電力の総発電容量を上回る規模となって いる。そして、2020 年までに総発電容量を 5,500 万 KW に引き上げる計画で、これは東京電力 をやや下回るものである。現在、日本の 10 電力会社の総発電容量は 22,800KW で、日本とイン ドネシアとを比較すると如何に日本が大きな電力消費国であるかが分かる。 現在、インドネシアでは、①今後の電力供給不足を解消し持続的発展を支えるための電力の 安定供給、②遠隔地における生活水準の向上等均衡のとれた国土開発のための電化率向上、③ 電力開発投資の資金不足を補う海外からの投資を促進するインフラ整備や法的制度面での整 備・改善に取り組みことが求められている。これは、インドネシアが高い経済成長を達成・維 持するための不可欠なもので、かつ、政府が掲げる雇用の拡大につながるものである。 経済成長のスピードを維持し安定的な電力供給体制を構築するため、2006 年 7 月に開発容量 1,000 万 kW で全て石炭火力の第 1 次クラッシュプログラム(開発計画年:2006-2009 年)、2010 年 1 月に開発容量約 950 万 kW、地熱 41.7%、石炭 35.6%、水力 12.6%、等の第 2 次クラッシュプロ グラム(開発計画年:2010-2014 年)を発表した。しかし、第 1 次クラッシュプログラムは、2011

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3 年中で進捗率 64%、全ての建設は 2014 年にずれ込む見通しである。なお、進捗率の定義は日 本と異なるため割り引いて考えたほうが良い。また、水力に特化した第 3 次クラッシュプログ ラムも検討されているが公表時期は未定である。 また、今後の 10 年間での電力開発は、PLN(国営電力公社)独自の電力供給だけでは難しく、 半分近い(注 4)電力は民間企業による IPP(独立系発電事業)に期待する面が大きく、今後、 インドネシアの発電事業への民間企業の参画機会は益々大きくなる。 (注 4)インドネシア国際インフラ会議(2012 年 8 月)での PLN 社長発言(43%を期待)。 図表2 MP3EI を達成するため 2020 年までの追加の発電容量 (出典)インドネシア国際インフラ会議(2012 年 8 月)、Jarman 電力総局長資料 (電化率の向上) また、政府は経済成長のスピードを維持する安定的な電力供給体制を構築するとともに、地 方電化にも注力している。これまでは国土を構成する5島(スマトラ島、ジャワ島、カリマン タン島、スラウェシ島、パプアニューギニア島)の中でもジャワ島を中心に開発が進展してき た。この結果、ジャカルタ及び周辺への人口の一極集中による環境悪化を引き起こしているが、 豊かな国土開発のためには、国家一体となった均衡かつ持続可能な成長が必須で、これは引い ては政治の安定にもつながるものである。政府は、2014 年までに電化率を 80%、2020 年までに 電化率を 99%まで引き上げる計画である。図表3は、2012 年現在の全国 33 州の電化率の状況 で、電化率の数字は日本の電化率の定義と異なるため少し割り引いて考えたほうが良い。

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4 図表3 全国 33 州の電化率と 2014 年までの電化率の推移 (出典)インドネシア国際インフラ会議(2012 年 8 月)、Jarman 電力総局長資料 (2013 年の電気料金の値上げ) インドネシアでは、公共料金の値上げは、約 30 年間のスハルト政権崩壊の引き金とな った経験から鬼門である。しかし、PLN の健全な経営のためにも増加する電力供給を賄う には政府の電力補助金(国家予算からPLN 拠出の補助金)を頼りにしない、電気料金の 値上げが不可欠である。幸い、今年、2013 年からの電気料金の値上げ案が国会で採択され た。これによれば、電気料金を3 カ月毎に 3~4%値上げし、年末までに 15%引き上げられ る(施行は大統領署名後の2013 年 1 月)。 4.再生可能エネルギーの開発 インドネシアは日本に比べてエネルギー資源に比較的恵まれているが、エネルギーの安定、 持続的成長のためには再生可能エネルギーの開発は不可欠である。電力エネルギーは、①化石 エネルギー、②原子力エネルギー、③再生可能エネルギー、④省エネルギーに分類されるが、 政府の最大のエネルギー政策目標は、エネルギー源の多様化(エネルギーミックス)である。 このため、2010 年に電力総局から再生可能エネルギー関連部門を独立させ新・再生可能エネル ギー、省エネルギー総局を新設し推進体制を強化した。また、化石燃料依存度の低減は、環境 への配慮にも有効である。 政府の再生可能エネルギー開発の政策目標は、国家エネルギー政策(2006年)で17%と位置

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5 付けられ、各エネルギー種の構成比率は、次のとおりである。 1) 石油は20%未満。 2) ガスは30%以上。 3) 石炭は33%以上。 4) バイオ燃料は5%以上。 5) 地熱は5%以上。 6) その他の新・再生可能エネルギー、バイオマス、原子力、水力、太陽光、風力は5%以上 7) 液化石炭(liquefied coal)は 2%以上 また、エネルギー鉱物資源省は、2025 年までに再生可能エネルギーの比率を 25%に引き上げ る独自の「VISION25/25」計画を発表している。 FIT(Feed in Tariff)については、今後の 10 年間のグリーンエネルギー政策に大きな影響を 与えるもので、政府はマーケット・インセンティブを付与してエネルギーミックス政策の強力 な支援ツールとして矢継ぎ早に新しい買取価格を公表している。これまでに、地熱、バイオ、 水力が既に公表され、今後は新規太陽光、バイオ、水力の改定案が公表される予定である。原 子力については、PLN独自の調査がバンカ島で進んでいるが、本格的な調査開始は、2014 年 4 月の大統領選挙後と言われている。 (省エネルギー) 政府は、2009年の省エネルギー政令に基づき省エネルギー政策を推進しているが、社会の関 心は今一歩で不透明感がある。また、2011年の省エネ・節水の大統領指示により、政府機関を 中心に省エネ率(20%)、燃料節約(10%)、節水(10%)の目標を定めた。今年6月からエネル ギー鉱物資源省は、3M(Mematican消灯、Mencabut節電、Menyesuaikan適温)キャンペーン 活動を開始した。また、9月から11月にかけて、スマトラからパプアまで全国13ケ所で地方自 治体の担当者を対象に「エネルギー節約、節水、節電」の啓発講習会も始めている。 5.今後の課題 今年 8 月に発表された世界経済フォーラム・国際競争力調査(144 ケ国)では、インドネシ アは前年に比べ順位を4つ下げて世界 50 位(日本 10 位)となった。インドネシアは、東南ア ジア地域の中ではマレイシア(25 位)、ブルネイ(28 位)、タイ(38 位)に続いて 50 位(65 位:フィリピン、75 位:ベトナム)にランクされた。インドネシアが 50 位となった理由を指 標でみると、労働市場の効率性が 120 位(日本 20 位)で大きく足を引張った。ビジネスの問 題としては、①非効率な官僚主義、②汚職、③インフラの未整備が上げられた。これは、イン ドネシアに勤務して感じるものと全く同じである。 電気エネルギーを含むインフラは整備されつつあるが、現在の経済成長のスピードに実行力 が伴ているかはやや難しいところである。著者は、省内の幹部職員に対してインドネシアの競 争相手はインドネシア自身であると説いているが、「Indonesia Can」であることは間違いない。 (2012.10.10、記)

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