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リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート 2012年版

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144. 無機シアン化合物(錯塩及びシアン酸塩を除く)

主な物質:シアン化水素、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カルシウム、塩化シアン シアン化水素 PRTR 政令番号:1-144 (旧政令番号:1 -108) CAS 番号:74-90-8 組成式: シアン化カリウム PRTR 政令番号:1-144 (旧政令番号:1-108) CAS 番号:151-50-8 組成式: シアン化ナトリウム PRTR 政令番号:1-144 (旧政令番号:1-108) CAS 番号:143-33-9 組成式: シアン化カルシウム PRTR 政令番号:1-144 (旧政令番号:1-108) CAS 番号:592-01-8 組成式: 塩化シアン PRTR 政令番号:1-144 (旧政令番号:1-108) CAS 番号:506-77-4 組成式: ・無機シアン化合物は、シアノ基を含む無機化合物で、代表的なものにはシアン化水素、シアン化カリ ウム、シアン化ナトリウム、シアン化カルシウム、塩化シアンなどがあります。 ・化合物によって用途は異なりますが、他の化学物質の原料、触媒、メッキなど工業分野で使われてい ます。シアン化水素はたばこの煙にも含まれています。 ・2010 年度の PRTR データでは、環境中への排出量は約 230 トンでした。主に事業所から排出されたも ので、主に大気中へ排出されたほか、河川や海などへも排出されました。また、たばこの煙に含まれ て家庭をはじめとする喫煙場所からも排出されました。 ■用途 無機シアン化合物は、シアノ基(-CN)を含む無機化合物で、代表的なものにはシアン化水素、 シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カルシウム、塩化シアンなどがあります。 シアン化水素は、別名青酸と呼ばれています。常温で無色透明の液体または気体で、水に溶け やすい物質です。ゴム、樹脂や繊維の原料となるアクリロニトリルや、乳酸などの有機化合物や 殺鼠剤の原料に使われるほか、農薬の原料などに使われています。また、鉱石に含まれている金 属を取り出すためにも使われています。なお、シアン化水素は、たばこの煙にも含まれています。 シアン化カリウムは、別名青酸カリと呼ばれています。常温で無色透明または白色の固体で、 水に溶けやすい物質です。シアン化カリウムは、分析の際に障害となる金属イオンの除去などに 使われたり、触媒、農薬や医薬品の原料としても使われています。 シアン化ナトリウムは、別名青酸ソーダと呼ばれています。常温で白色の固体で、水に溶けや すい物質です。酸と反応するとシアン化水素ガスを発生します。主に飼料添加剤の原料に使われ

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144.無機シアン化合物 ています。また、メッキに使われたり、金の精錬や非鉄金属から銅や銀などを抽出する際に使わ れるほか、顔料の原料として使われています。 シアン化カルシウムは、常温で特徴的な臭いのある無色透明または白色の固体です。農薬の原 料として使われています。 塩化シアンは、常温で無色透明の気体または液体です。シアンイオンを塩素処理すると生成され たり、アンモニウムイオンと塩素との反応によっても生成され、塩素消毒などの副生成物のひとつです。 なお、ライマ豆、アーモンド、杏仁、梅などには、シアン配糖体(シアンが糖分と結合した物 質)が含まれており、加水分解や酵素反応によってシアン化水素を発生することが知られていま す。 ■排出・移動 2010 年度の PRTR データによれば、わが国では 1 年間に約 230 トンが環境中へ排出されたと見 積もられています。主にが化学工業、窯業・土石製品製造業や下水道業などの事業所から排出さ れたもので、主に大気中へ排出されたほか、河川や海などへも排出されました。また、たばこの 煙に含まれて家庭をはじめとする喫煙場所からも室内空気中や大気中へ排出されました。この他、 金属製品製造業などの事業所から廃棄物として約 160 トン、下水道へ約 1.1 トンが移動されまし た。 ■環境中での動き 大気中へ排出された無機シアン化合物は、主にシアン化水素として存在しますが、シアン化水 素の分解速度は比較的遅く、化学反応によって半分の濃度になるのに、0.8~1.5 年かかるとされ ています 1)。シアン化ナトリウムやシアン化カリウムなどの無機シアン化合物が粒子状の状態で 大気中に存在した場合は、降雨・降雪や重力によって地表に降下するとされています 1)。また水 中では、シアン化水素の場合、酸素が十分で、シアン化水素でならして分解しやすいようにした 活性汚泥(汚水を浄化する働きをもつ微生物のかたまり)では容易に分解され、二酸化炭素とア ンモニアを生じるとされています1) ■健康影響 毒 性 無機シアン化合物は、非常に強い毒性をもっています。これはシアン化合物が呼吸酵素 の中の鉄と結合することによって、組織呼吸(内呼吸とも言われ、血液で運ばれた酸素が各組織 に取り込まれ、そこで生じた二酸化炭素を取り去る過程)を抑制するためです1)。高濃度のシアン 化合物を取り込んだ場合は短時間で死に至ります1)。また、低濃度のシアン化合物を取り込み続け ると、頭痛、めまいなどを起こすとの報告があります1) ラットに高濃度のシアン化ナトリウムを13週間、飲み水に混ぜて与えた実験では、精巣重量な どの減少が認められ、この実験結果から求められる口から取り込んだ場合のNOAEL(無毒性量) は、シアンに換算して体重1 kg当たり1日4.5 mgでした1)。この実験結果から、TDI(耐容一日摂取 量)は、シアンに換算して体重1 kg当たり1日0.0045 mgと算出され、これに基づいて、シアン化物 イオン及び塩化シアンの水道水質基準は0.01 mg/L以下と設定されています2)。2007年に、食品安

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算出されました3) また、シアン化カリウムを飲み込んだ場合の致死量は、人の事故事例や動物実験によってほぼ 150~300 mgとされています4)。この致死量に基づいて安全率を見込んだ許容限度を2 mg/Lと算出 して、これにさらに安全率を見込んで、水質環境基準は全シアンとして検出されないこと(定量 限界0.1 mg/L)と設定されています4) この他、ラットにジシアンを含む空気を6ヵ月間吸入させた実験では、体重減少が認められ、こ の実験結果から求められる呼吸によって取り込んだ場合のNOAELは、シアンに換算して24 mg/m3 でした1) 体内への吸収と排出 人が無機シアン化合物を体内に取り込む可能性があるのは、飲み水や食物 によると考えられます。また、シアン化水素が気体になった場合は、呼吸や皮膚からも取り込ま れる可能性があります 1)。致死量以下のシアン化物が体内に取り込まれた場合は、急速に体内で 分解され、尿に含まれて排出されます1) 。 影 響 水道浄水からは水道水質基準を超える濃度は検出されていませんが、水道水の原水にお いては、過去に水道水質基準を超える濃度の全シアンがまれに検出されています。このような汚 染された水を長期間飲用するような場合を除いて、飲み水を通じて口から取り込むことによる人 の健康への影響は小さいと考えられます。また、河川や地下水からは定量限界0.1 mg/Lを超える濃 度の全シアンは検出されていません。 また、呼吸によって取り込んだ場合については、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物 質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、体重減少が認められたラットの実験に おけるNOAELと大気中濃度の推計値を用いて評価し、この場合も、現時点では人の健康へ悪影響 を及ぼすことはないと判断しています1) なお、食品衛生法では、シアン化合物を天然に含有しているライマ豆などの使用を、生あんの 製造のみに限定しています5) ■生態影響 シアン化合物は、水生生物に対し急性毒性が強い物質とされ 1)、魚類に対する有害性からも PRTR 制度の対象物質に選定されていますが、現在のところ、わが国では水生生物に対する信頼 できる PNEC(予測無影響濃度)は算定されていません。 なお、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク 評価書」では、藻類の生長阻害を指標として、河川水中濃度の推計値を用いて水生生物に対する 影響について評価を行っており、環境中の水生生物へ悪影響を及ぼすことが示唆されるとして、 無機シアン化合物を詳細な調査や評価などを行う必要がある候補物質であるとしています1) 性 状 シアン化水素:無色透明の液体または気体 水に溶けやすい シアン化カリウム:無色透明または白色の固体 水に溶けやすい シアン化ナトリウム:白色の固体 水に溶けやすい シアン化カルシウム:無色透明または白色の固体 塩化シアン:無色透明の気体または液体

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144.無機シアン化合物 生産量6) (2010 年)※ 国内生産量:約 38 トン(シアン化水素) 排出・移動量 (2010 年度 PRTR データ) 環境排出量:約 230 トン 排出源の内訳[推計値](%) 排出先の内訳[推計値](%) 事業所(届出) 84 大気 86 事業所(届出外) 5 公共用水域 14 非対象業種 - 土壌 0 移動体 - 埋立 - 家庭 12 (届出以外の排出量も含む) 事業所(届出)における 排出量:約 190 トン 業種別構成比(上位 5 業種、%) 化学工業 46 窯業・土石製品製造業 33 下水道業 15 プラスチック製品製造業 2 金属製品製造業 1 事業所(届出)における 移動量:約 160 トン 移動先の内訳(%) 廃棄物への移動 99 下水道への移動 1 業種別構成比(上位 5 業種、%) 金属製品製造業 65 電気機械器具製造業 12 輸送用機械器具製造業 6 窯業・土石製品製造業 5 非鉄金属製造業 4 PRTR 対象 選定理由 経口慢性毒性(全シアン),作業環境許容濃度(シアン化水素),生態毒性(シアン 化水素:魚類,シアン化カリウム:魚類,シアン化ナトリウム:魚類) 環境データ 水道水 ・原水・浄水水質試験:水道水質基準超過数(シアン化物イオン及び塩化シアンと して測定);原水 0/5217 地点、浄水 0/5805 地点;[2009 年度,日本水道協会]7) 8) 公共用水域 ・公共用水域水質測定:環境基準超過数(全シアンとして)0/3914 地点;[2010 年度, 環境省]9) ・要調査項目存在状況調査(全シアンとして):検出数 4/57 地点,最大濃度 0.002 mg/L; [2008 年度,環境省]10) 地下水 ・地下水質測定:環境基準超過数(全シアンとして);概況調査 0/2904 本,汚染井 戸周辺地区調査 0/21 本,継続監視調査 0/101 本;[2009 年度,環境省] 11) 適用法令等 ・大気汚染防止法:特定物質(シアン化水素) ・水道法:水道水質基準値 0.01 mg/L(シアン化物イオン及び塩化シアンとして設定) ・水質環境基準(健康項目):検出されないこと(定量限界 0.1 mg/L) (全シアンとし て設定) ・地下水環境基準:検出されないこと(定量限界 0.1 mg/L) (全シアンとして設定) ・水質汚濁防止法:有害物質,排出基準 1 mg/L 以下(シアン化合物)

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・土壌汚染対策法:土壌溶出量基準 検出されないこと,土壌含有基準 50 mg/kg 以 下(遊離シアンとして設定) ・廃棄物処理法:特定有害産業廃棄物、金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準(汚 泥):1 mg/L 以下(シアン化合物) ・労働安全衛生法:シアン化カリウム 管理濃度 シアンとして 3 mg/m3 シアン化ナトリウム 管理濃度 シアンとして 3 mg/m3 シアン化水素 管理濃度 3 ppm ・食品衛生法:残留農薬基準(シアン化水素として)例えば,米(玄米)20 ppm, ばれいしょ 1 ppm 注)排出・移動量の項目中、「-」は排出量がないこと、「0」は排出量はあるが少ないことを表しています。 ※本物質の生産量は 2010 年農薬年度(2009 年 10 月~2010 年 9 月)のものです。 ■ 引用・参考文献 1)(独)製品評価技術基盤機構・(財)化学物質評価研究機構「化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0」 ((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 委託事業、2008 年公表) http://www.safe.nite.go.jp/risk/files/pdf_hyoukasyo/108riskdoc.pdf 2)厚生労働省「水質基準の見直しにおける検討概要」 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/dl/k09.pdf 3)食品安全委員会「清涼飲料水評価書:シアン」 http://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kya20030701815&fileId=021 4)環境省「環境基準項目等の設定根拠等」 http://www.env.go.jp/council/toshin/t090-h1510/02.pdf 5)厚生労働省「加工食品の表示に関する共通 Q&A」 http://www.maff.go.jp/j/jas/hyoji/pdf/qa_ka_2_h2304.pdf 6)(社)日本植物防疫協会『農薬要覧 2011』(2011 年 10 月発行) 7)(社)日本水道協会「水道水質データベース」平成 21 年(2009 年)水質分布表・原水 http://www.jwwa.or.jp/mizu/pdf/2009-b-01gen-02avg.pdf 8)(社)日本水道協会「水道水質データベース」平成 21 年(2009 年)水質分布表・浄水(給水栓水等) http://www.jwwa.or.jp/mizu/pdf/2009-b-04Jyo-02avg.pdf 9)環境省「平成 22 年度公共用水域水質測定結果(表 2)」 http://www.env.go.jp/water/suiiki/h22/full.pdf 10)環境省「要調査項目存在状況調査結果(平成 20 年度)」 http://www.env.go.jp/water/chosa/h20.pdf 11)環境省「平成 21 年度地下水質測定結果(表 2・3・4)」 http://www.env.go.jp/water/report/h22-01/01.pdf ■ 用途に関する参考文献 ・化学工業日報社『16112 の化学商品』(2012 年 1 月発行) ・環境省「環境基準項目等の設定根拠等」 http://www.env.go.jp/council/toshin/t090-h1510/02.pdf ・厚生労働省「水質基準の見直しにおける検討概要」 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/dl/k09.pdf ・(独)製品評価技術基盤機構・(財)化学物質評価研究機構「化学物質の初期リスク評価書 Ver.1.0」((独) 新エネルギー・産業技術総合開発機構 委託事業、2008 年公表) http://www.safe.nite.go.jp/risk/files/pdf_hyoukasyo/108riskdoc.pdf

参照

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