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症例報告 検査室の介入と患者指導によりカリウムの偽高値が 改善した一例 伊東亜由美 1) 森 智嵩 3) 森永 芳智 2) 原口 雅史 3) 石原 香織 1) 中尾 一彦 3) 臼井 哲也 1) 栁原 克紀 2) 1) 長崎大学病院検査部 長崎県長崎市坂本 ) 長崎大

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(1)

症例報告

検査室の介入と患者指導によりカリウムの偽高値が

改善した一例

伊東亜由美

1)

森永 芳智

2)

石原 香織

1)

臼井 哲也

1)

森  智嵩

3)

原口 雅史

3)

中尾 一彦

3)

栁原 克紀

2) 1) 長崎大学病院検査部(〒 852-8501 長崎県長崎市坂本 1-7-1)  2) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態・解析診断学  3) 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科消化器内科学 要 旨 検査前過程の影響で起こる検査データの偽高値や偽低値について,検査室による適切な評価と指導は適切な治療に貢献 できる。偽性高カリウム(K)血症は検査前過程で発生することが多く,偽高値は不適切な治療につながり得る。今回, 検査室主体の原因検討,他職種との情報共有および患者指導が K 偽高値を解決した症例を経験した。症例は 72 歳女性, 自己免疫性肝炎疑いで入院中であった。主治医より K 値の大きな日差変動(3.9–6.2 mmol/L)と患者病態および使用薬剤 状況との乖離について問合せがあった。検査技師が病棟に出向き採血状況を確認すると,患者は過度のハンドグリップを 行っており,解除直後の K 値は 4.9 mmol/L であった。K 高値がハンドグリップの影響か判断するため,完全に掌を開い た状態で採血を行うと,採血管順序に関わらず K 値は 4.0 mmol/L で一定であった。以上より,ハンドグリップが K 高値 の原因と考えられた。この旨を診療録に記載するとともに,主治医,看護師と情報を共有した。さらに,患者本人に採血 時の注意点を説明し,自己申告する内容について指導した。指導後は K 偽高値を疑う値は示さなかった。正確な検査結果 を得るための検査前過程の質の確保には,医療者側の対策だけでなく,患者が自身の体質を認識することも重要である。 検査技師による積極的な連携と情報共有体制は,より質の高い医療につながるものと考えられる。 キーワード 偽性高カリウム血症,ハンドグリップ,検査前過程,情報共有,患者教育 I 緒 血中カリウム(K)値は種々の要因にて偽高値を 示すことが知られている1),2)。その要因としては,血 球からの K の放出を引き起こす溶血や全血での長時 間放置,白血球数・血小板数の増加,外部からの K の混入となる抗凝固剤(EDTA-2K など)の混入,ま た骨格筋からの K の放出を招く採血時のハンドグ リップ(掌を強く握り締める動作)やクレンチング (掌の開閉を繰り返す動作)などが挙げられる。高 K血症は致死的な不整脈を引き起こす可能性がある ため適切な処置が求められるが,K 偽高値の場合の 誤った解釈は不適切な処置につながる恐れがある。 今回,臨床像と合わず K 値が変動して偽高値が疑わ れた症例に対し,原因の検討および患者への直接指 導を行った。その結果,K 値が高値を示さなくなっ たことから,検査室の介入が K 偽高値の改善につな がった事例と考えられたため報告する。 II 症 患者:72 歳,女性。 主訴:なし。 既往歴:高血圧,脂質異常症。 家族歴:特記事項なし。 (平成 27 年 11 月 26 日受付・平成 28 年 3 月 3 日受理)

(2)

現病歴:高血圧,脂質異常症にて近医にて通院加 療中であった。約半年前より AST 値および ALT 値 の上昇が持続するため,当院に紹介受診となった。 腹部超音波検査では肝硬変および肝細胞癌は認めら れず,血液検査では肝炎ウイルスは陰性,IgG が高 値であった(Table 1)ため,自己免疫性肝炎の疑い で,初診翌日,精査加療目的に当院に入院となった。 定期内服薬:前医より,アトルバスタチン 5 mg/ day,ベニジピン塩酸塩 3 mg/day。当院受診前数ヶ月 において薬剤の変更やサプリメント類の摂取はな かった。 K値の推移:初診時含め,約 6 週間で 13 回の K 値測定記録の中で,初回 4.2 mmol/L から変動しなが ら漸増傾向,最高値 6.2 mmol/L,最低値 3.9 mmol/L であった。K 値に影響を与え得る薬剤として,低 K 血症の副作用があるプレドニン(prednisolone; PSL) および持続型インスリン注射が,各々入院 5 日目, 33日目より投与開始されていた。 入院 34 日目,主治医より,K 値の大きな日差変動 と患者の病状およびインスリンを含めた薬剤使用状 況との乖離について問合せがあった。 III 検査室の対応と経過 1.K 偽高値の要因検討 Kの偽高値の可能性を考え,溶血,白血球数・血 小板数増加,血漿と血清の差,EDTA-2K の混入,採 血時のハンドグリップ・クレンチングの 5 項目の影 響について評価した。 なお,本検討は,主治医が患者の治療に必要であ ると判断した検査を用いて行っており,検討目的の みでの検査は行っていないため,インフォームドコ ンセントは不要であった。 1)溶血,白血球数・血小板数増加,血漿と血清の 差,EDTA-2K の混入 溶血と白血球数・血小板数の増加の影響は,同日 採血した LD 値・AST 値と白血球数・血小板数を比 較,参照した(Table 2)。LD 値・AST 値は入院 8 日 目には低下し,14 日目にはほぼ一定の値を示してお り,K 値の変動に影響を及ぼすような溶血が存在し た可能性は低いと考えられた。また,白血球数・血 小板数はともに著しい上昇を認めなかった。 血漿と血清の K 値の差は,同日採血したヘパリン 入り採血管および分離剤入り採血管での K 値を比較 した。その結果,血漿 K 値は 6.2 mmol/L,血清 K 値 は 4.4 mmol/L と差がみられた。本来であれば血清 K 値が血漿 K 値より高くなるため,この結果は測定材 料の違い以外によるものと考えられ,血漿と血清の 差が本症例の K 偽高値の要因とはいえなかった。 EDTA-2Kの混入は,K と同時に測定した Ca 値・

ALP値を参照した(Table 2)。Ca は入院 1,4 およ

び 8 日目に測定されており,ほぼ一定の値を示して いた。ALP 値は入院 11 日目には低下し,前述の LD 値・AST 値と同様に 14 日目にはほぼ一定の値を示 していた。両者の結果より,EDTA-2K が混入した可 能性は低いと考えられた。 2)採血時のハンドグリップ・クレンチング 採血時にハンドグリップやクレンチングを行って いた場合,採血管の順序が K 値の変動と関連する可 能性が高いため,生化学用採血管を最後に採るよう Laboratory findings on the first medical examination

Item Data Item Data Item Data

WBC 6,000/μL Na 141 mmol/L TC 177 mg/dL

RBC 472 × 104/μL K 4.2 mmol/L AST 699 U/L

Hb 14.2 g/dL Cl 106 mmol/L ALT 807 U/L

Ht 41.9% BUN 14 mg/dL ALP 658 U/L

PLT 15.7 × 104/μL CRE 0.54 mg/dL LD 442 U/L

PT INR 1.28 TP 7.9 g/dL γGT 372 U/L

HBe Ag 0.1 COI (–) TBil 3.1 mg/dL CRP 0.24 mg/dL HCV Ab 0.2 COI (–) DBil 1.2 mg/dL IgG 1,851 mg/dL

Glu 99 mg/dL IDBil 1.9 mg/dL IgA 477 mg/dL

HbA1c 5.6% AMY 76 U/L IgM 147 mg/dL

Reference interval: PT INR; 0.85–1.22, HbA1c; 4.7–6.2%, AMY; 40–130 U/L, ALP; 115–359 U/L, LD; 119–229 U/L, γGT; 10–47 U/L, IgG; 870– 1,700 mg/dL, IgA; 110–410 mg/dL, IgM; 35–220 mg/dL

(3)

病棟に口頭で依頼した。依頼後 1 回目の採血時(入 院 38 日目)には K 値 4.8 mmol/L であったが,2 回 目の採血時(入院 41 日目)には 5.5 mmol/L と再度 上昇がみられたため(Figure 1),採血時の状況を確 認するために,検査技師が病棟に出向き,患者の採 血を行うことにした。 採血(入院 44 日目)のため訪室すると,指示前か ら掌を強く握り締めており,明らかな過度のハンド グリップを行っていた。ハンドグリップ解除の指示 直後に採血を行うと,K 値は 4.9 mmol/L であり,前 回値である 5.5 mmol/L(入院 41 日目)に比べ値の低 下はみられたが基準値上限であった。そこで,次の 予定採血日(入院 49 日目)に検査技師が再度出向 き,予めハンドグリップを解除し完全に掌を開いた Laboratory findings during hospitalization

Day of hospitalization K (mmol/L) LD (U/L) AST (U/L) WBC (/μL) PLT (×104/μL) Ca (mg/dL) ALP (U/L)

0

(the first medical examination) 4.2 442 699 6,000 15.7 658

1 3.9 467 743 6,300 15.3 9.4 608 2 4.4 421 776 6,400 16.4 555 4 3.9 436 766 6,600 13.9 9.4 697 8 5.4 236 182 8,300 15.7 9.2 563 11 4.4 213 99 9,200 17.1 442 14 5.6 205 79 11,700 18.1 498 17 4.3 196 60 14,500 20.4 474 21 6.2 189 57 9,600 14.5 450 24 4.4 203 62 8,000 11.4 430 28 5.2 194 37 11,300 11.9 450 30 5.8 210 30 12,200 13.6 436 34 6.2 204 23 11,100 12.7 418 36 4.4 207 22 10,100 13.5 374 38 4.8 225 23 10,200 13.9 352 41 5.5 230 24 11,100 14.1 329 44 4.9 289 25 14,700 15.8 371 49 4.0 297 26 13,300 15.6 311 51 4.2 284 25 15,800 14.8 295 Table 2  2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5 7 5.6 5.6 4.3 4.3 6.2 6.2 4.4 4.4 5.2 5.2 5.8 5.8 6.2 6.2 4.4 4.4 4.2 4.2 4.4 4.4 3.9 3.9 5.4 5.4 3.9 3.9 K (mmol/L) 0 1 10 20 30 day of hospitalization Prednisolone 40 mg/day (the first medical examination) 4.4 4.4 4.8 4.8 5.5 5.5 4.9 4.9 4.0 4.0 4.2 4.2 40 50

Long-acting insulin 4 → 6 units/day Inquiry from doctor

35 mg/day 30 mg/day 25 mg/day

20 mg/day

20 mg/day

Potassium levels during hospitalization Figure 1 

(4)

状態で,依頼された 3 種類の採血管〔分離剤入り採 血管 2 本(1 および 4 番目),EDTA-2K 入り採血管 1本(2 番目),クエン酸ナトリウム入り採血管 1 本 (3 番目)〕に採血を行った。ハンドグリップが K 値 へ影響したか評価できるように,1 番目と 4 番目に 採取した分離剤入り採血管では,K 値はいずれも 4.0 mmol/Lであった。十分にハンドグリップの影響を解 除した状態での採血が行えたものと考えられたと同 時に,K 偽高値の原因は過度のハンドグリップであ る可能性が示唆された。 2.他職種との情報共有 検査室医師と検査技師により,K 偽高値の要因検 討および検査技師による病棟での採血施行の結果を 主治医に報告した。その際,担当看護師にも同席を 依頼し説明を聞いてもらうとともに,同内容を診療 録に記載した。また退院後外来で採血する場合に備 え,外来採血担当者に対して回覧による情報共有を 行った。さらに本症例に直接関わっていない職員に 対しても採血時のハンドグリップ・クレンチングに 対する注意喚起を行うため,検査室の院内回報 (Figure 2)を利用し本事例の周知を行った。 3.患者への指導 患者は今後も様々な施設で採血される機会があり 得るため,他施設においても正確な値を得られるよ う,患者に対し採血される際の注意点を直接指導し た。指導はベッドサイドで行い,「手のひらを握り締 めることにより血液中の K の値が上昇しやすい体質 である可能性が高いため,採血時は手のひらを握ら ないようにしてください。もし握るように指示され たときは,こういう体質の可能性があると長崎大学 病院で言われたことを採血担当者に伝えてくださ い。」と口頭で説明した。 IV 検査室介入後の経過 検査技師による患者指導,病棟看護師および外来 採血担当者への情報周知後の K 値の経過を Figure 3 に示す。患者は入院中に 1 回,退院後外来で 9 回, ハンドグリップを行わなかったと十分に想定できる 状況下で採血を行ったが,K 値はいずれも高値を示 さなかった。これは,検査部介入前に本症例にみら れた K 高値の原因は,採血時のクレンチングやハン The excerpt of circular announcement from clinical laboratory

(5)

ドグリップであった可能性を強く示唆する結果で あった。 V 考 察 生体内の K は心筋の収縮や神経の情報伝達などに 重要な役割を果たしており,血中濃度は非常に狭い 範囲に維持されている。高 K 血症は重篤な不整脈を 起こす可能性があるため血中 K の異常高値は臨床的 意義が高いが,偽高値をきたす要因も多岐に存在す ることが知られている。採血時に血管を怒張させる 目的で行う駆血帯装着後のハンドグリップやクレン チングも有意に K 値を上昇させる要因のひとつであ り,その機序は,筋細胞の脱分極の間に細胞内の電 気的陰性度が弱まり,能動輸送による K の取り込み より放出の方が優位になるためと考えられている3) しかし 2011 年に日本臨床検査標準化協議会より上 梓された標準採血法ガイドライン(GP4-A2)では, クレンチングは禁止されているが軽いハンドグリッ プは許容されている4)。そのため医療従事者におい てもハンドグリップに対する認識は十分ではなく, 日常的に行っている例を経験する。 今回,臨床像と合わず K 値が大きく変動した症例 に対し,検査室として原因の検討を行った。本症例 では副作用として高 K 血症が挙げられている薬剤の 使用はないものの,K 値は治療薬開始後から高値を 示し始めたため薬剤性の可能性は否定できないが, 採血時のハンドグリップの解除により K 値が一定の 値を示すようになった。一方,ハンドグリップやク レンチング以外の K 偽高値の要因としては,溶血, 血液細胞数の増加(白血球:50,000/μL 以上,血小板 数:500,000/μL 以上1)),EDTA-2K の混入が考えられ る。溶血は外観や LD 値との比較,血液細胞数の増 加は血算データの参照,EDTA-2K の混入は Ca 値の 低下や他の酵素活性の阻害などにより確認すること ができる場合があるため,検査室が K 偽高値の可能 性を疑いやすく,医師への確認や再採血依頼の必要 性を判断しやすい。しかし,ハンドグリップおよび クレンチングにおいては,他の検査結果からの推測 が困難であり,また K 値上昇の程度に個人差があ る5)ため,検査室として対応に苦慮している。採血 担当者がこれらの動作を行わせないことが第一であ るが,実際の採血現場では血管の怒張のためにやむ を得ず行う例も少なくない。このような場合,ハン ドグリップまたはクレンチングを行ったという情報 を,採血担当者から検査担当者や担当医師に伝える 連絡経路を整えておくことが重要である。 また本症例では,K が高値を示し続けたのではな く大きな日差変動が生じていた。この原因としては, 本院の入院患者の採血はシフト勤務の看護師が基本 的に行っているため,担当看護師によりハンドグリッ プやクレンチングの有無,採血管の順序といった採 血状況が異なっていた可能性が考えられる。また, 本来,血球凝集時の血球からの K の放出が血清での 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5 7 K (mmol/L) day

Hospitalization Outpatient visit

Intervention by clinical laboratory staff members

0 50 100 150 200 250

Potassium levels before and after intervention by clinical laboratory staff members Figure 3 

(6)

K値を上昇させる1)ため,血清 K 値が血漿 K 値より も高くなるはずであるが,本症例では同日採血した 血漿 K 値と血清 K 値は逆の差がみられた。これは, ①採血時のハンドグリップおよびクレンチング,② 採血管の順序,③患者の体質の三つの要因が合わ さって影響したことが原因と考えられる。具体的に は,採血担当者が患者に過度なハンドグリップやク レンチングを行わせた後,ヘパリン入り採血管,分 離剤入り採血管の順に採血したため,ハンドグリッ プやクレンチングにより引き起こされた筋細胞から の K 放出による血漿 K 値の上昇が,血球からの K 放出による血清 K 値の上昇を上回り,さらに患者の 体質がその差を大きくさせたと思われる。今回,K 値の日差変動が採血状況の影響を受けている可能性 があることを認知するまでに時間を要したため,当 時の詳細な採血状況の把握が困難であった。また本 院のように病床数の多い病院では,一人の看護師が 短時間で多数の患者の採血を行わなければならない ため,患者ごとの採血状況を記憶しておくには限界 があると思われる。前述の標準採血法ガイドライン では,採血管順序に推奨はあるものの十分なエビデ ンスはなく,状況に応じて判断するようにされてい る5)。クレンチングによる影響は採血開始から 5 mL 以降は少ないという報告6)~8)があることから,ハン ドグリップやクレンチングを行った場合には生化学 用採血管を最後に採ることが K 偽高値の回避法とな ることを,採血担当者は認識しておくべきである。 今回のような採血時の影響を受けた症例を周知徹底 することで,採血担当者へ採血状況が検査値へ与え る影響の認識拡大を図り,担当者により採血状況が 大きく変わらないようにする必要がある。 今回,患者は高齢ながら理解力が良好であり,口 頭での指導のみで採血時のハンドグリップを防ぐこ とに成功した。同じ動作を行ったとしても検査値へ の影響は個人差が大きい項目の場合,患者に自身の 体質を認識してもらうことは誤った検査結果を出さ ないための有効な防御策となり得る。しかし,全て の患者に本指導法が通用するわけではない。特に採 血が困難な患者は高齢者であることが多いため,指 導時点では内容を理解し,実施できていたとしても, 今後も指導内容を遵守できるとは限らない。どこの 医療施設を受診した場合でも正確な検査結果が得ら れるようなシステムを構築させていく必要があると 思われる。具体的には,本症例のように採血状況で 値が変動しやすい体質の患者に対しては,「採血時に ○○を行うと△値に影響しやすい体質の患者さんで す。□□の状態での採血をお願いします。」といった 文言を記載したカードを作成し,患者に保険証など とともに携帯してもらうことで,採血の際には患者 がカードを採血担当者に渡すだけで済むようなシス テムが挙げられる。 VI 結 今回,採血時のハンドグリップの解除と患者への 指導のみで K 偽高値を改善した症例を経験した。正 確な結果を得るためには,医療施設側の対策は当然 ながら,患者が自身の体質を認識することも非常に 重要である。検査技師を主導とした他職種との連携 および情報共有体制を築くことは,より質の高い医 療につながるものと考えられる。   本論文の内容は,第 64 回日本医学検査学会(平成 27年 5 月 16 日~17 日,マリンメッセ福岡,福岡県 福岡市)にて,一般演題として発表した。 ■文献  1) 日本臨床検査自動化学会会誌編集部:「極端値・パニック値 対応マニュアル「カリウム K;potassium」」,日本臨床検査自 動化学会会誌,2005; 30 (Suppl. 1): 34–40.  2) 池本 敏行:「偽性高カリウム血症におけるピットフォール」, 検査と技術,2014; 42: 253–255.

 3) Clausen T, Everts ME: “Regulation of the Na, K-pump in skeletal muscle,” Kidney Int, 1989; 35: 1–13.

 4) 日本臨床検査標準協議会標準採血法検討委員会:「採血手 順」,12–20,標準採血法ガイドライン(GP4-A2),渡邊 卓 (編),学術広告社,東京,2011.  5) 日本臨床検査標準協議会標準採血法検討委員会:「採血器具 に関する諸注意」,27–29,標準採血法ガイドライン(GP4-A2),渡邊 卓(編),学術広告社,東京,2011.  6) 倉薗 裕子,他:「採血時の手指運動と各種血液成分の変化」, 体液・代謝管理,1998; 14: 42–45.  7) 清宮 正徳,他:「採血に起因する血中カリウム偽高値の出現 機序と,回避方法に関する検討」,日本臨床検査自動化学会 会誌,2009; 34: 839–844.  8) 浅井 のどか,他:「採血手技が生化学データに及ぼす影響に ついて」,日赤検査,2009; 42: 50–56. 本論文に関連し,開示すべき COI 状態にある企業等はありません。

(7)

Case Report

A case of pseudohyperkalemia improved by evaluation and patient

education by clinical laboratory staff members

Ayumi ITO1) Yoshitomo MORINAGA2) Kaori ISHIHARA1) Tetsuya USUI1)

Tomotaka MORI3) Masafumi HARAGUCHI3) Kazuhiko NAKAO3) Katsunori YANAGIHARA2)

1)Department of Laboratory Medicine, Nagasaki University Hospital(1-7-1, Sakamoto, Nagasaki-shi, Nagasaki 852-8501, Japan)

2)Department of Laboratory Medicine, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Science

3)Department of Gastroenterology and Hepatology, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Science Summary

Intervention by clinical laboratory staff members in the evaluation of non-negligible false values in clinical laboratory tests can lead to appropriate management of patients. Serum/plasma potassium levels can be influenced by pre-analytical processes, and falsely elevated potassium levels can mislead physicians to prescribe unnecessary treatments. A 72-year-old woman with autoimmune hepatitis was hospitalized. In the examinations during hospitalization, her potassium levels varied (3.9–6.2 mmol/L) but her condition was consistent. Her laboratory findings showed no evidence of hemolysis, and there was no marked increase in blood cell counts. To determine the condition of blood collection, we visited her room. Visiting her bedside revealed that her handgrip was excessive before blood collection. Her potassium level after sufficiently opening her hand was 4.0 mmol/L, whereas that after excessive handgrip was 4.9 mmol/L. Thus, her potassium levels could be affected by the excessive handgrip. To share information on blood collection with doctors and nurses, these findings were written in the medical record and she was educated to tell blood-collection operators about the potential elevation of potassium levels when her blood is drawn. After the information sharing and patient education, no elevated potassium levels were observed. The quality control of pre-examination processes requires not only measures by medical staff members but also self-awareness on the part of the patient. Active cooperation and information sharing by clinical laboratory staff members can contribute to achieving high-quality healthcare.

Key words: pseudohyperkalemia, hand-grip, pre-analytical process, information sharing, patient education

参照

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