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事例紹介 市町村合併という選択と判断

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Academic year: 2021

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市町村合併と』もう選択と判断

谷口 新一 (キーワード:市町村合併,図書館,財政規律,高齢化率,AHP)

WⅦ

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1.はじめに

平成17年3月のいわゆる合併特例法の期限に向け

て,日本全回で市町村 合併の動きが活発化している. 住民の主体的な判断により決定されることであるが, 判断材料がないという意見も多く聞かれる.私は富Ⅰ_t_t で,自分が地域社会にできることは何かを見つめ実践 する場として,コミュニティシンクタンク「住みたい 富山研究所」を個人で運営している.ORに関する知 識は深くないが,市町村合併を別角度からデータ面で 考えてみたい.

2.小さな自治体は本当に非効率なのか

住民一人あたりの歳出は,八l:ー規模が小さくなるに 従い上昇する傾向がある.小規模町村の合併を推進す る背景となっているわけであるが,果たしてこの判断 基準だけでよいのだろうか.総務費など小さな自治体 が構造的に抱える非効率な面があることも否めないが, 「小さな自治体の行政サービス自体が非効率か」の判 断はもっと正確にすべきではないかと考える.富山児 内の図書館を例に考えてみたい.舟橋村立図書館は, 住民一人あたり貸出数60一怖でダントツ日本一の図書 館として有名であるが,住民一人あたり図書館層は1 フィ4000[li弱もかかっている.富山市が1600円である

から,約10倍ものコストをかけている.10倍だから

非効率なのだろうか. 私は「税金の払いがい」という視点が重安であると 一児、う.つまり,使われた税金に対して,どれだけの行 政サービスとして具≡呪化されているか.税金の払いが いという視点から分析してみたのが図1である.構朝 は人口規模(対数表示)である.縦軸は,平成13年 度の貸廿.1冊あたりのコスト(lざ】書館賀)である.1ヌl 書館要は,人件賀や資料賀などの合計であ り,脚寺賀 100 1000 10000 100000 1000000 図1人ll規模と図菩二館のコスト を除いてある.富山現には35の市町村があl),l迷ほ二 館設置率100%,つまり35の図書館がある.今回は 年間貸出が500柑未満の上平村と平利▲の二つのl窒l書館 を除いた.グラフのとおり,富山巾(人口32万人)

では貸出1冊あたi)コストは422lりである.高岡市

(人口17フナ人)は6:〕8日.人口が少ない程コストが上 がるという傾向は見られない.ノし口2500人弱の舟橋 村は224円で運営している.舟橋村の場合,一人あた りの図書館運営コストは大きいが,貸ノtl数という受益 あたりで見れば,高コストとはいえない.住民一人あ たりのコストという視座で自治体のパフォーマンスを 測定することは,必ずしも正確な評価を得られるもの ではないと考える.

3.小さな自治体は甘えているのか

小さくても元気な日治体はl二1本各地にあるが,小さ な自治体に手厚い地方交付税があるからこそ実現でき たことではないか,という矧!一iJもあろう.本質的に有 意義な議論は,過去の地方交付税額を公平かつ_†l二当で あるという前提のもと,小さな自治体が無駄使いしや すいのか,大きな自治体が無駄使いしやすいのか,と いうl±】治体の「財政規律」を把捉することである.財 政規律を把握するには,実質財政負租比率というデー オペレーションズ■リサーチ たにぐち しんいち 住みたい冨肛研究所 〒930一∩464冨山県中新川郡上≠判 ̄浅井15 3$⑬(46) © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

(2)

タが有効であると考える.実質財政負担比率とは,実 質負債(※)を標準財政規模で割り返した数値である. 一般家庭でいえば,年収に対しどれくらいの借金があ るかという数値であり,身の丈にあった財政運営をし ているかどうかの指標になる.しかも,実質負債とい う数値は,単年度の財政操作ではいかんともしがたい 数値であり,フローではなく過去の蓄積としてのスト ック指標として,各自治体の財政規律努力度を見る指 標として有効であると考える.図2は富山児内35市 町村のデータである.横軸は高齢化率であり,縦軸は 実質財政負担比率である.実質財政負担比率を見ると, 人口32万人強の富山市が1.781,17万人強の高岡市 が1.969などとなっており,人口が多いからといって 実質負債が少ないわけではない.つまり財政規律は大 きな自治体程良いということではない.人口1300人 弱の井口村が0.204と最低の数値となっているのをは じめ,大門町や城端町は人口1万人前後,下村や乎村, 上平村は1000∼2000人程度の自治体であり,むしろ 人口の少ない町村で財政規律が保たれている傾向も見 受けられる.また,全国データを分析しても大きな自 治体の財政規律が高いとはいえない結果となる(図 3). さらに注目したいのは,高齢化率との関係である (図2).少子高齢化のために合併が必要とされている が,高齢化率が36.1%と富Lレ県内で最も高い平村の 実質財政負担比率が0.603と低い.高齢化率が 27.4%と県全体の10年先行く高齢化率を示す城端町 でも負債は少ない.富山市や高岡市は,高齢化率が低 いにもかかわらず負債は少なくない.高齢化率の進行 を理由に合併を進めても,高齢化社会というI‡I本が直 面する課題に合併は自軌的には解決策となりえていな いことを示している.高齢化率が高いから無駄使いが 増えるのではない.高齢化率と無駄使いは独立した事 象である.

4.おわりに

市町村合併に閲し,住民投票が各地で行われている. 合併の相手選択肢が複数ある場合など,複数の中から 一つのみを選択して投票するのが一般的であるが,マ ルチアンサーの方がよいのではないか,いや,マルチ アンサーでは一人一人の住民の優先順位が反映されな い,それでは順位を記入する方法はどうか,持ち点講り はどうか,複雑すぎると投票者が混乱する,などいろ いろな意見がある.住民の意思をいかに客観化するか, 多くの自治体で悩んでいることである.AHP手法な どORに期待される役割も大きいと考える.意思が客 観化されたとしても選択する道は一つしかないわけで あり,データによi)結論が容易に導き出されるわけで はないが,だからといってデータの必要性が否定され ることではないであろう. 今回は,小さな自治体に関してイメージされている ことに対し,データ面で否定的なアプローチをしてみ た.あいまいなまま議論するのではなく,矧札・烹をよ りクリアにして判断する.そのためにはデータは重安 であり,今セlの合併論議でもデータによる判断の重要 性を再認識している.多元的で多様なデータは社会を 豊かにする.私も微力ながら尽力したい. 3.美川 2. 0 質惰 正 よ品タ。いノぎ 古呵す†† 12 5 ○ 0 高 酋市∧ ヽJヽ′ 山市句 ○ 5 ○ ○ ○ 0 1ヽ ㌔上 村 下村 大門町 ○ ◆城t 町 平村 ○ 5 井 村 0 10 15 20 25 30 35 40 図2 高齢化率と実質財政負担比率 ※実質負債とは,地方債現在高+債務負担行為一種立金 現在高である. 図3 実質財政負担比率 2003年5月号 © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず. (47)3馴

参照

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