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抗結核剤耐性BCGの抗原性に就て

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40

(鶴麺…糠麟熱8言)

抗結核剤耐性BCGの抗原性に就て

東京女子医科大学細菌学教:室(主任平野憲正教授) 小

バヤシ

(受付 昭和31年8月29日)

抗結核剤耐性結核菌の抗原性に就て曾て平野, 長田ユ)2[はストレプトマイシン(SM)耐性結核菌 に似て,叉平野,中西,福永5)はイソニコチン酸 ヒドラジッド(1:NAH)耐性牛型結核菌に於ていず

れもBCGよりも抗原性が強い事を報告した。叉

Hobby, Lenceat and Auerbauch4,も1:NAH耐性

同型結核菌の抗原性をBCGのそれと比較して同

様の成績を報告している。私は1.・’AH耐性BCG

と1種:のINAH誘導体及びoxadiazoline化合物

に対するBCG耐性株をえてその抗原性に就て検

討したので以下実験成績を報告する。1NAH誘導

体はIsollicoむiny1−4 hydroxybenzal hydrazone で他の1つは5−pyridyl一ユ,3,4−oxadiazolin−2− oneである。

実験方法

拝聴に用いた菌株は教室保存のBCGとその耐性株 である。即ちINAH耐性株はINAHを加えた小川培 地又はCOwper培地に約2週間毎に継代して次第に 而手性度をあげ約20代後に1000γ/cc以上に耐性となつ たものである。oxidiazoline誘導体及びINAH誘導 体の耐性株は同様にして耐性度をあげ原株の約500倍 耐性となったものである。 菌液作製 BCGのINAH耐性株は100 7/cc INAH 入小川培地に,他の2種の耐性株及び原株は薬剤を加 えない小川培地に2週間培養して菌苔をガラス玉入フ ラスコにかきとり,5分間手振りで磨砕し,滅菌蒸溜 水を加えて1mg/ccの菌液としそれを試験管に移して 約20分放置しその上層の菌液を実験に使用した。 免疫前述の様して作製した菌液を0.1cc宛即ち約 0.1mg宛を15g前後のDD系マウスの皮下に接種し て免疫を行い爾使用した菌液は滅菌蒸溜水で適当に稀 釈して小川培地に定量培養を行って生菌数を計算し た。 攻撃及び免疫効果判定 免疫2∼4週後にH: 7Rvの 2週間培養菌を前と同様にして1mg/ccの菌液とし, その0.1ccを尾静脈より接種して攻撃を行った。(菌 液の生菌数表参照)攻撃後2,5,7,10週後に各群よ り任意に2匹宛屠殺し肺,脾に於ける肉眼的所見並び にこれ等臓器に於ける結核菌の定量培養の成績より免 疫効果を判定した。各臓器の定量培養の方法は小川氏 法により1%Na OHでホモゲナィザーを用いて10倍 乳剤とし,後1%Na OHで適当に稀釈してその0.1cc 宛を各々3本宛の小川培地に培養し,4∼6週後に発 生した集落の平均より換算して臓器0.1nlg当りの生菌 数を計算した。

実験成績

第一回実験ではBCGの免疫菌数が8. 9×106v.u.

であるのに対してINAH R−BCGはその約1/9の

0.1×106v.u.であり攻撃は免疫2週後H37Rvの

2週培養菌の4.6×104▽・u・を尾静脈内に接種して 行った。攻撃画数が少なかったので屠殺は攻撃後 5週同とユ0週目に行い肺と脾を前述の方法で定量

培養を行った。その結果は第1表の如く5週目で

は肺0.1mg当り菌数が耐性株では27であるのに対 して原株では更に多く,脾0.1mg当りの菌数も耐 性株は6.1であるのに原株は21であった。 エ0週目の臓器培養所見ではこれに反して肺0.1

mg当り耐性株に於ては123,原株に於ては遙かに

少く,また脾0.1mg当り耐性株に於ては2.3,原 株に於ては1.1であった。 第二回実験でも原株の免疫菌数は10×10Gv.u. で耐性株の1.3×106v.u.に比して約8倍であっ

た。攻撃は免疫2週後にH,,Rvの2週聞培養菌

を尾静脈に1.3×106v.u.接種して行った。その結 Chizu KOBAYASHI (Depar’tment of Bacteriology, Tokyo Women’s Medica] College) : On the anti−

genicity of antituberculoug. drug−resistant BCG.

(2)

41

第ユ表 INAH耐性BCGの抗原性 マウス1

免疫BCG8.9×10 e)▽.u.皮下 R・BCG⑪.1×106v.u.皮下 攻撃H.e7Rv 4 e 6×104v.u.2週後静脈 集落 数 (臓器0.1mg当)

攻 撃 後 5

週1・・

マウスNo. 1 2 1 週 2 耐 性 株 肺 23 32 1 lso 96 脾 7.51 5.1 3.6[ Ll

B

C

G

肺 28 1 576 35

L9

脾 10 肺』 e4”’ 53 i.sl o.3 対 照 99 +d一 1 7so ユe7 4。8

に於て著明であった。第3表では5週目迄しか定

量培養の結果を示さなかったが,これは原株免疫

群が10週迄に9匹結核死を来したので10週目の臓

器の培養を行う事が出来なかったからであり,同

期血中耐性株免疫群では2匹結核死を見たのみで

あった事から老えて10週迄耐性株の免疫効果が勝 れていたであろうと思われる。 脾 58 19

果は第2表に示す様に攻撃2週後,5週後に於け

る免疫効果は耐性株の方が旧株よりすぐれている

と考えられるが10週後になると逆になり特に肺

0.1rng当りの集落数は耐性株に於けるより遙かに 少なかった。

第2表 INAH耐性BCGの抗原性 マウス2

免疫BCG 10×106v.u.皮下

R−BCG工.3×106v.u.皮下 攻撃H37Rv 3×10fiv.u.2週後静脈

1集落数(臓器0.1mg当)

、攻撃卸 鋤・ 画・・週

マウ・N・.r・12 ・ 2 ・ 2

第3表INAH耐性BCGの抗原性 マウス3

免疫BCO1.1×105v.u.皮下

BCG−R 9.6×105v.u.皮下 攻撃H: 7R▽1.7×106v.u.4週後静脈 集 蕗二 数 (臓器=0.1mg当)

攻撃後12

週 5 週 マウスNo. 1 / 1 2 而手 性 株 肺 150 83.7 [ 9n..3 1 141.6

B

C

G

対 照 耐 性 株

脾135・3168

7.gl’ i,.一, 肺 十 十 十十十 柑・

脾 430[99.3 +

r

195 肺 十十 寺十÷ 暦十

酬・δ・i…

十 十十

肺・・1・・+1+{++1…

脾・6・・「・6・ラ・7を1・9「司・・

ピ■壁・・1’・8坦+!72い凹

・圏・gl・8・・1・4.・1・…2・・…

対 照

剛…1+睡・刑死死

脾95}・㌧}・5gj22・1死.L・E一.. 第三回実験では耐性株免疫菌数が原株より多い 揚合であって即ち県立1.1×105v.u.に対して耐

性株は9.6×105vu.で免疫を行い,免疫4週後

H37Rvを1.7×106v.u.尾静脈に接種して攻撃を

行った。その結果は第3表に示す様に攻繋2週

後,5週後の臓器の定量培養の結果は明らかに耐

性株免疫群に於て集落数が少く特に5週後の所見

第四回実験では原株と耐性株の回数が同じか叉 は耐性株が少し少い位免疫を行った吐合,大量の

攻撃菌に対してどの様な効果を示すかを検討し

た。攻撃は免疫3週後にH:37Rvを4.1×1e6v.Ud 又は4.5×10Gvu.尾静脈より接種して行った。免

第4表 INAH耐性BCGの抗原性 マウス4

免疫BCGl。8×106v.u.皮下

BCG−R 1.8×106v.u,皮下 攻撃Htl 7 Rv 4.1×106v.u.3週後静脈

集落数(臓器0・1mg当)

雇後1・

週 5

週110

! 週

・ウ・N・巨1・IL・

肺・2・・L・3・・336司・・廿

2 1 2 耐 性 株

B

c

G

対 照 脾 6.8 肺 15.6 P 48.7) 39.31 34.61 + 4.4−P ×x F++ 1 ++“ i+ 1 +’i’

脾・・1\\瞬1・・r・殉・b14

肺 脾

・鼠・+ 司++予++什

2f.5111g.61 ss.611/ + 1 2s.si io.3 一 533 一

(3)

4・2 疫忌数は原意ではし8×106v・u・及び5.3×106v・u であり,耐性株に於ては1.8×106v.u.及び3.6× 106v.u.である。結果は第4表,第5表に示す様

に攻撃2週後,5週後では耐性株の方がやや勝れ

た免疫効果を示しているが,7週で同程度となり

10週では旧株の方がやや勝れている様に思われ

る。

第5表INAH耐性BCGの抗原性 マウス5

免疫BCG5.3×10“v・u・皮下 BCG−R 3.6×106v.u.皮下 攻繋H37Rv 4.5×106v.u.3週後静脈 集 落 数 (野川0.1mg当)

攻撃後[・

週 5 週 7 週

’…N・・巨

2 1 2 1 2

馨齢淵9i一:諜ド。鴛

B

C

G

対 照 肺・7・・1・2・・1・・骨[・・8・3195野 脾32.632・336.・1・2・・・…5・・61 月置 53.3 26.0 十}卜 十十十 十 十

脾++1・tL・33S・・陣皇1..・・6

以上はBCGとそのINAH耐性株の免疫実験で

あっだが次に他の種の耐性株の免疫効果に就て述 べる。 5−pyridyl−1,3,4−oxadiazoline−2−one耐性B 第6表 5−Pyridy]一1,3,4−oxadiazoline−2−one

耐性BCGの抗原性 マウス

免疫BCG2.1×loe’v.u.皮下 R・BCG U.6×106v.u.皮下 攻撃H3TRv17.1×10Gv.u.3週後静脈 CGの抗原性,免疫回数は受株2.1×106v.u.,耐 性株0.6×106v.u.で耐性株は受株の約%である。 攻撃は免疫3週後H37Rvの17.1×106v.u.を尾静

脈より接種して行った。その結果は第6表に示す

様に攻撃後2週目,5週目の臓器定量培養に於て

耐性株は原株に匹敵する免疫効果を示している。 Isonicotinyl−4−hydroxybenzol hydrazone而寸 性BCGの抗原性,免疫菌数は原株6.1×ユ06v.u., 耐性株3.4×106v.u.で耐性株は原株の約1/2であ る。攻撃は:免疫3週後H37Rvの1.7×106v.u.を

尾静脈より接種して行った。その結果は第7表に

示す様に攻撃2週後,5週後迄は耐性株は原株と

同程度の免疫効果を示したが7週後では肺,二二

に原株が勝れた効果を示している。 第7表 Isonicotiny1−4−hydroxybenzol

hydrozone耐性BCGの抗原性 マウス

免疫BCG6.1×106v.u.皮下 R−BCG 3.4×106v.u.皮下 攻撃H,1τRv 1.7×106v.u.3週後静脈 集 落 数 (臓器0.1mg当)

攻撃後 2

週 5 週 7 週 マ・・No・1・ 2 1 2 1 2 耐 性 株

B

C

G

対 照

肺1・5・・1 …+++

脾56・142 24・3…34・39・3」15・6

肺「・21・・85・・+・837・・

kes 1 16. 31 11. 3i 13. 61 32. 61 s 6. 3 集落 数 (臓器0.1mg当) 攻 撃 後 2 週 5 週 マウスNo. 1 2 1 1 1 2 236 十十午 十十 7S.61 31.11 98

肺641・8.5畑田+++÷+++

脾.1.+[++H・7・・緬・

耐 性 株

B

c

G

肺 173

脾 76

肺「336

99 十 350 脾 4s. 6 [ 67 i’ 19 21 対 照 川廿 十十 1・F一 且卑 十 390 126 総括及び老按

SM耐性BCGで曾て平野,長田12)がモルモ

ットに就て行った実験及び,平野,中印 福永5)

がINAH耐性牛酸菌でマウスに就て行った実験に

比べると今回私の行った INAH耐性BCGの実験

の成績は前二者の口合の様な著明な抗原性の差を 認める事は出来なかった。しかしこれは実験動物 の種類の相異及び菌株の相異によるものであると 思われる。従来マウスは結核の免疫には不適当で あると考えられていたが大量の菌を静脈内より感 染させれば短期開内に結核症を起す事が分ってよ

り9)実験に用いられ,マウスを以てするBCGの

研究も行われる様になった。即ちマウスを以てす 一534一

(4)

43

るBCGの研究でSiebenmann5)はBCGlmgを

マウス皮下に接種し42日後に人型結核菌H:b・ 7Rv O. 5mgで尾静脈より攻撃したところ,攻撃33日目 では免疫群の生存率100%であり対照群は66。6% であったと云う。叉石原6)も同じくマウスを以て

するBCGの研究の論丈でマウスではBCG接種

後20∼30日頃結核菌重感染に対して免疫が獲得さ れ.免疫効果の比.較の基.準として死亡日数の中央 値,臓器の定量培養及び組織的検索を以てするの が望ましいと述べている。又佐藤7)は同一菌種を 接種した場合でも肺,肝,脾内生菌数の動態曲線を みると臓器の異なるに従って夫々異った曲線を示 すから菌力の程度を関係ずけるには2臓器以上の 動態の相互関係をみる事が必要であるとのべてい

る。私はマウスを用いて抗結核剤耐性BCGの種

々の菌量で免疫を行いBCGとの免疫効果を比較

したのであるが,効果の判定には肺,脾の肉眼的 所見及び定量培養の成績を以てし,死亡日数の中 央値,体重減少曲線等は参老程度とした。その結

果は前述の如くINAH耐性B C Gは免疫乱数が原

株に比して非常に少い揚合でも攻撃5週迄は原株

と同程度の免疫効果を示し,:免疫品数が多い揚合 は原株以上の免疫力を持っているが,10週になる と耐性株の免疫菌数の多い場合を除いて原株の方

が勝れた成績を示している。結核の免疫特にBC

Gの免疫能に出てはいろんな人により検討が加え られ攻撃方法(菌株,菌量,経路,免疫後攻撃迄 の期間等),免疫方法(菌量,経路,回数),動物

の種類により所見は必ずしも一定ではないがBC

Gがある程度の免疫能を与える事は明らかであ

る。小森8)は免疫菌数が多ければ免疫力が強いと 述べているが私の実験の場合の様に耐性株は原株 の約ソ1。の菌数であるにも拘らず原話と同程度の 免疫能を示している事は興味ある事と思われる。 しかしそれが長く続かず攻撃5週目位迄なのはな ぜであろうか。この点に就ては今後の研究にまた なければならない。 結 論

1. BCGの玉NAH耐性株を用いてマウスに就

て免疫実験を行い,耐性株は免疫菌数が原株の約 1/10の場合でも攻撃.5週迄は原株と同程度の免疫 能を有する成績をえた。

2。 BCGのINAH耐性株は原株より非常に多

量を免疫に用いれば原株より以上の免疫能を有す ると思われる。

3. BCGのINAH誘導体及びoxadiazoline

化合物に対する耐性株の免疫能は原株と同程度と 思われる。 (以上は第29回日本細菌学会で発表したものである。) 終りに終始御懇篤なる御指導と御校閲を贈った平野 憲正教授及び種々御助言を頂いた中西清子助教授に厚 く御礼申し上げます。 女 献 1)平野憲正,長田富香:日本細菌学雑誌,8,337 (昭28) 2)平野憲正,長田冨書:口本細菌学雑誌,8,743 (昭28) 3)平野憲正,申西清子,門守慶子:第六回日本細 菌学会誌東支部例会(昭29)

!1//) ffobby, G.k, kencert, wtF. and Auerba,cbe, O.:Am. Rev. rA’”uberc. 70, 527 (1954・)

5) Siehermm,ftnn, ¢.(le.:J. of ltnmudp.ol. 67, 1’37

(IC一 51)

6)石原定次;結核,説,22(欝56) 7) 佐藤蕊行:結核,30,455(1955) 8)小森武彦:結核,31,6(1956)

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