89 ムの改良および,臨床例の経験の蓄積により,PTCA の適応は拡大し,その成績も向上している.一方 PTCA施行時の合併症は致命的になることもあり,適 応決定には慎重な考慮が必要である.また,遠隔期に おけ’る,再狭窄の出現が30∼40%に上り,その予防は 今後の大きな問題である.今回,我々は,PTCAの臨 床成績,合併症,適応の問題(特に,冠動脈バイパス 術との関係),再狭窄について検討を加えたので報告す る. 当院で昭和55年11月∼現在までに,PTCAを施行し た例は200例を超え,成功率80∼90%(criteriaにより 異なる)であった.合併症は,死亡2例(1%),急性 心筋梗塞症2例(1%),冠動脈穿孔2例(1%)が重 篤な合併症として見られた.適応としては,石灰化の 認められない,限局性の一枝病変で,内科治療抵抗性 の狭心症があり,バイパス術の適応があることを原則 としてきたが,最近では,二枝病変や,バイパス術後 のバイパス狭窄に対しても,PTCAを行なうことがあ る.また,担癌患者や他疾患の合併により,開心術が 困難と考えられた症例の中に,PTCAにより良好な経 過をたどった例がある.PTCAか冠動脈バイパス術か の選択については,両者の長所,短所および,患者の 背景因子,患者のriskとbene飢を十分に考慮して決 定する必要がある.再狭窄は,遠隔期に再造影を施行 し得た例では,40%を超える高率に見られたが,現在 までの所,有効な予防手段は見出されていない.今後 の大きな課題と思われる. 3.A・Cバイパス術 (循環器外科)遠藤 真弘 1968年に心室瘤,1970年にCABGに成功して以来, 900例の直達手術を施行し,その結果と予後に関する問 題点を検討した. 1.結果に関する諸問題 1)手術死亡率:術式,障害枝数,左室機能,臨床診 断(AMI, OMI, unstable等),合併障害(老齢,腎不 全,脳障害,大動脈瘤等),致死性不整脈合併有無性 別等について検討した.術式および臨床診断別の死亡
率の高い順に自由壁破裂〉中隔穿孔〉瘤切除>
CABG.障害枝数はLMT》TUD>DVP, SVD,合併
障害では70歳以上〉以下,腎不全,脳障害,大動脈瘤 等の因子は有意でなかった. 2)函南率:内胸動脈と大伏在静脈,枝別,グラフト 流量,sequentialとindividual,性別等について検討し た. その結果,死亡例(2.5%),および輸血・薬剤性肝 障害,術前からの腎不全で特に術後悪化例,創面感染 等を術後検査から除くと,CABGの94%にグラフト検 査を施行し得た.内堀動脈は主としてLADに吻合す るので,LADに対するLIMAとSa, Vとを比較する と,1986年度の開存率は97%と96%と有意でなかった. 枝別ではLAD>RCA, LCXであった.グラフト流量 では10m1/分以下でもLIMAおよびsequential by・ passの側々吻合部流量で開存した. sequentialとindi− vidualの比較は有意でなかった.性別では男性に開存 率が高い傾向を示したが有意でなかった. 2.予後に関する諸問題 1)5年生存率 手術死亡を含め,遠隔期での非心臓死等の死亡を全 て含めた5年生存率は,CABGで95.4%,瘤切除群で 90.5%,中隔穿孔閉鎖で77.8%であった. 死因は突然死(非心臓死も含む),心臓死,悪性腫瘍, 事故,脳血管障害の順に多かった.これに対し瘤切除 後の死因は突然死と心不全が多く,心不全死の中に MRの進行例が少なくなかった.2)cardiac events 特にPTCAと比較して
当院でのPTCAは72%がSVDを中心に施行され
たが,初期成功例の42%に再狭窄が生じ,初期不成功 例と合せると,1年後には初期成功の持続は半数とな る.これに対し,1976年∼1986年に施行した単独 CABGの初期成功例の601例のcardiac eventsは僅か に37例であった.年間になおすと1,37%弱であり,PTCAに比し著しく確実性が証された.主として
PTCAはSVD, CABGは多枝障害に施行されており, CABGの方が重症例にも拘わらず良好な結果であっ た.SVDにおけるCABG, PTCA,および自然歴の三 者を比較すると,非心臓死を含めた年間消耗率はそれ ぞれ0.53%,1.75%,1.35%であった.ちなみに1984 年生命表による54歳男性の年間消耗率は0.75%で, CABGのみが下がった. 4.心筋梗塞合併症の手術 (循環器外科)西田 博 1.心室中隔穿孔:教室では,現在までに27例の心筋 梗塞後心室中隔穿孔に対し,外科治療を施行し,手術 死亡4例(14。8%)と満足すべき成績をおさめている. 現在,本症の外科治療において最大の問題は,手術に 踏み切るタイミングで,従来,梗塞急性期の心筋の脆 弱性から,可及的に手術を遅らせる(3週間)のが理 想とされてきたが,待機中に,多臓器不全(MOF)に 801一90
陥る症例が多く,現在はショック例ではIABP挿入後 できるだけ早期に手術を施行すべぎであるとの報告も ある.われわれは,高齢老,糖尿病例では早期にMOF に陥ることが多いので,特に早期に手術を施行するよ うにしており,脆弱性に対しては丘brin glue oxycell 且xationにより確実な⊥L血を得ることにより対処し, 84歳例の発症2日めの緊急手術にも成功している. 2.心室瘤:近年,内科治療の進歩により心室瘤の適 応は,教室の小原が報告した心室瘤の予後不良ライン を越える重症例がその大半を占めるに至っている.教 室では,1985年に本邦で初めて補助心臓を用い,最重 症の心室瘤例の救命に成功した. 3.乳頭筋断裂:乳頭筋機能不全と異なり,完全断裂 は極めて稀な疾患であるが,教室では,本邦で初めて 乳頭筋完全断裂の緊急手術による救命例を得ている (1985年). 4.心室自由壁破裂:心室中隔穿孔に合併した自由 壁破裂の1例を∼緊急手術にて救命したが,いわゆる blow out型の自由画破裂は,5例中全例死亡とその予 後はいまなお極めて不良であり,今後内科医との連係 を強化することなどによりその成績向.とが望まれる.