〔書略講23第麟63蛇骨〕
パネルディスカッション冠動脈疾患の治療
心筋梗塞合併症の外科治療
ニシダ 西田 東京女子医科大学 循環器外科学教室 ヒロシ エンドウ マサヒロ ハヤシ ピサエ コヤナギ ヒトシ博・遠藤真弘・林
久恵・小柳
仁 (受付 昭和62年11月4日)Surgery for the Complication of Myocardial Infarction
Hiroshi NISHII)A, Masahiro ENDO, Hisae HAYASHI
and Hitoshi KOYANAGI
Department of Cardiovascular Surgery, Tokyo Women’s Medical Coilege
We have performed surgery on 113 patients with postinfarction mechanical complications
between 1968 and 1987. Hospital mortality from ventricular septal perforation(VSP)was 7/32 (219%),ventricular aneurysm(VA);3/36(4.6%), papillary muscle rupture;0/1(0.0%), mitral regurgitation due to papillary muscle dysfunction;0/8(0.0%);free wall rupture(FWR);4/5 (80.0%),and pseudoaneurysm(PAN);0/2(0,0%). In severe VSP complicating cardiogenic shock, emergency operation before advanced multiple organ failure is essential, and early operation is also recommended in papillary muscle rupture and PAN. In blow−out type FWR, urgent operation and estabilshment of emergency system in CCU is required. As the conservative medical treat− ment improves, operative case of VA become more critical. In such severe case, IABP or ventricular assist device(VAD)are useful adjunct, and near future we will be able to use total artficial heart or perform heart transplantation.
はじめに 教室では,1968年から1978年の間に113例の心筋 梗塞後合併症に対し手術を施行してきた,病院死 亡率は,それぞれ心室中隔穿孔7/32(21.9%),心 室瘤3/65(4.6%),乳頭筋完全断裂0/1(0.0%), 乳頭筋機能不全による僧帽弁不全0/8(0.0%),自 由壁破裂4/5(80.⑪%),仮性心室瘤0/2(0。0%) であった.心原性ショック状態を呈するような重 症な心室中隔穿孔例では,多臓器機能不全が進行 する前に緊急手術を行なわなけれぽならない.ま た,乳頭筋断裂や仮性心室瘤においても早期手術 が望ましい.さらに,破裂型の自由壁破裂の救命 には迅速な手術とCCUでの緊急治療体系の確立 が必要である.このような:重症な心筋梗塞合併症 の治療に際しては,IABP,補助心臓装置などは有 一216 用な補助手段であり,近い将来には完全うえこみ 型人工心臓の使用や心臓移植も可能となるであろ う. 1.心室中隔穿孔1> 1)診断とポイント 心筋梗塞の約0.5∼1.0%に合併し,多くは梗塞 後1週間以内に発症する.初回梗塞例,高血圧合併 症例に多く,1枝病変例も多い.一般に筋性中隔 に発生し,診断は突然出現する振戦を伴う強い全 収縮期雑音を胸骨左縁第III∼IV肋間に聴:取し, Swan−Ganzカテーテルで左右短絡を証明するこ とによる. 2)手術 教室では1987年9月までに,58例の心筋梗塞後 心室中隔穿孔を経験した(図1).うち,*印で示
した3症例は,自由壁破裂(2例),乳頭筋断裂(1 例)の合併症例であり,これらはいずれも手術室 への搬送は不可能でありCCU内緊急手術に至っ たものである.したがって,手術施行35例のうち 心室中隔穿孔単独は32例で,手術非施行は23例で あるが,手術非施行例のなかで生存退院はわずか 1例のみで,この症例も1年後に心不全死してお り長期生存例は皆無ということになる.したがっ 祷 塁 例 ●*●*
に
lABP Swan−Ganzカテ むロ ト騰撫.,フ.ン、ラ,.}。 ○ トレLVADO O O O O OO O O O O O O O O ● ○ ○ ● ●* ○●○●○○●○●○●年19689197012345676919801234567
葦 爾 溺 ● ● ● ● ● ● ● ○ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● o ● ● ● ● ○生存例 ●死亡例 *他の心飾破裂舎併(購羅1
図1 教室における心室中隔穿孔の治療成績 て,救命のためには全例が手術適応となる.近年 では,カテコラミン,血管拡張療法や後述する大 動脈内バルーンパンピング(IABP)などによる手 術に至るまでの内科治療の進歩により手術非施行 例は激減しており,それに伴い生存退院例も増加 している. 本症の手術で最も問題となる点は,手術施行の タイミングである.梗塞急性期の壊死部心筋は脆 弱で,しぼしぼ止血あるいは修復不能に陥ったり, 致命的な遺残短絡の原因となるなどの理由で,従 来は壊死部心筋の搬訳読骨組織への修復機転が完 成する3週間を目安に手術を待機することが通例 となっていた.しかし,本方針では手術待機中に, 腎不全,感染症,低栄養などから不可逆性の多臓 器不全を併発し,心臓に対する修復術は成功して も結局救命に至らないケースが少なからず存在す ることより,現在では図2に示すごとき治療体系 が確立されている三〉.つまり,低心拍出量症候群 (LOS)や心原性ショックの認められない軽症例 では,3∼4週間手術を待機して計画的手術を施 行する.これらの認められる重症例では強力内科 治療に加えIABPを挿入し,反応良好で状態の連 続的改善の認められる症例に関しては,図2に示 SwarGanzヵテ一
・頼
e3∼4週言
熕矧d
計画的手術 心至中隔穿イL 〔IABP挿入〕 全収縮期堆ぎ うっ血性心不全: 反応 不良 緊憩、手術 } 強方内科療法一一一一一一一」 カテコールアミン,利尿剤 血管拡張療法 気管内挿管 rABP できれ,ご 2−3趨 CAG 11・ 数日以内 良 あるい:まん1 一・・凝ハ
捲緊暑手術 計画的手術 非伎 責の 任チ 画工 域ソ ク 〔亙ABP挿入〕 (血行動懇.腎綴能などの再悪化) ●待讐中の留意事項 諸翼器機能 消化管出血,感染 意識レベル 不整賑 梗塞拡大.自由壁破裂表1 中隔穿孔から手術までの期間と手術成績 期 間 例数 手 術 死 ∼7日 W∼21日 Q2日∼ 81014 3(37.5%) R(30.O%) P(7.1%) 総 計 32 7(21.9%)
周径比(△D
機能心筋収縮率(△D) す待機中の留意事項を念頭におきつつ手術を待機 する.これらの事項が発生した際には準緊急手術 に移行する.IABPな:どの強力内科治療にても改 善の乏しい超重症例では時を失せず緊急手術を施 行する.一般に,70歳以上の高齢者や糖尿病合併 例では腎不全を主体とした他臓器機能不全の進行 が早い2)ので早期手術が必要となる場合が多い. また,前述したごとき急性期手術における心筋の 脆弱性に対しては,IABPや補助心臓による左室 内圧の減圧に加え,fibrin glue oxycellurose fixa−tionにより確実な止血を得ている.中隔穿孔から 手術までの期間と手術成績を表1に示すが,早期 手術を余儀なくされる症例ほど不良であるが,こ のような対策を講じることにより成績の向上が得 られつつあり,本年は84歳の急性期手術(5下め) や,発症2日差の症例に対する緊急手術にも成功 し救命している. 2.心室瘤 1)診断とポイント 心室瘤とは左室造影上,収縮期,拡張期の全経 過を通じて本来の左室腔より心内腔が異常に突出 しているものと定義されている.この非収縮部に よる心内腔の異常突出により,心筋の壁張力の上 昇ひいては心筋酸素消費量の増加を招ぎ,心不全 や冠動脈狭窄病変の存在下では,狭心症の誘因と なったりする.心電図上,持続するSTの上昇を認 め,心筋梗塞の合併症中,最も高頻度(10∼15%) に認められ,左前下行枝の病変による広範な前壁 梗塞の場合が多い. 2)手術 手術適応としては,①難治性心不全,②難治性 致死性心室性不整脈の頻発,③遷延する狭心痛, ④くりかえす血栓塞栓症の4者があげら乳るが, 実際には本症のほとんど全例に認められる左室内 (右前斜位300} x ,ヘ 一.x....簡
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映 ア’拡張終期 』 \・㌔。_.〆/←∼収納終期 「’㍉・__〆 △L一号×100(%) △D−a吉b×100(%) a:X−X’(akinetic area) の周長(cm》 bl拡張終期左室輪部の全周長(cm) 図3 心機能からみた心室瘤の予後規定因子(小原41 による) 壁在血栓が遊離して末梢の血栓塞栓症をおこすこ とは極めてまれとされており,塞栓症の既往があ る,あるいは術前の心エコー検査などで有茎の浮 遊血栓であるなどの特殊な例でないかぎり血栓の 存在のみで手術適応となることはまれである.術 式としては,人工心肺使用下に瘤部の中央を切開 し,心室内の血栓除去を充分に行ない,血痕組織 を約1cm残し切除,短冊型のテフロンフェルトを 用い太い糸で,マットレス縫合および連続縫合を 行なう心室瘤切除術を施行するわけであるが,さ らに心室瘤と無関係の冠状動脈狭窄に対しては, 適応があれば同時にA−Cバイパス術を加える.手 術時期は,やはり療痕組織のしっかり形成される 6∼8週以降が望ましい.また,近年,不整脈を 手術適応とするものでは単純な瘤切除術に加え,encircling endcardial ventriculotomyや,術中に
心表面マヅピングあるいは体外循環下,心拍動下 に心内膜マッピングなどの電気生理学的検査を施 行し,不整脈のfocusを同定し,外科的に心内膜切 除endcardial resection,凍結療法cryosurgery, cryoablationやレーザー照射などを行いfocus を破壊するより確実な方法もとられつつある3). 教室の小原は,1977年に心室瘤の予後規定因子 として図3に示す,梗塞周径比と機能心筋収縮率 を考案提唱した4》.前者は,梗塞の大きさを表わす もので,後者は非梗塞つまり健常部の心機能を表 一218一
60 50 △D 40 機自旨’こ}筋30 収縮率 (%) 20 10 A B B−1 100 黍 駿50 B一[1 B−m 10 20 30 35 40 50 60 70 △L:Asynergyの輔囲(周径比)% A群:心機能改善を目的とする梗塞切除は不必要 B群:左室機能障害(十) B−1;good risk群 B−n;fair口sk群 B−m;poor risk群 図4 心室瘤の予後 わす指標で瘤切除術後の予後をゆだねる心機能で あると言える.後者を表わす指標としては,短径 の収縮率といった一次元的な本指標と異なり,非
梗塞部の駆出率そのものを表わす二次元的な
contractile segment ejection fraction5)6)などの
指標も考案されているが,小原の指標は測定が非 常に簡便であるにもかかわらず予後を比較的正確 に反映することにより主に本邦において広く普及 している.小原は,この2指標により心室瘤を図 4に示すごとく分類しているが,最近では血管拡 張療法,強心利尿剤などを主体とした心不全に対 する内科治療の進歩に伴い,保存的内科治療の成 績が向上しつつあり,A・Cバイパス術をあわせ行 なわない単独の心室瘤切除の適応例は,小原のい う心室瘤切除術のpoor risk群がその主体を占め るといった手術例の重症化が進んでおり,左室駆 出率6.2%の症例に対し,522gの切除を行ない救 命した症例や7),東大型の補助人工心臓を用いて 救命した左室駆出率12.5%,梗塞周径比65%,機
能心筋収縮率10%の最重症例を経験している
が8)∼10),本症は,比較的純粋な左心不全であり,洞 調律が多く,多臓器不全に陥っている症例が少な いなどの点より,一時的補助人工心臓のもっとも よい適応のひとつであると考えられる11).教室で 蓋i 馨1i 980cases 1963919ア012345678919臼01 234567∼(8月) 65cases 手術成績 追憶馨あ珍B6 入院死亡3/65(4.6%) 図5 教室における冠外科と心室瘤切除術段数の推移 は,1987年9月までに980例の冠動脈直達手術を行 な:っているが,全症例数の増加が著しい反面,心 室瘤切除術の症例数は横這いである(図5).手術 成績は,65例の手術例中,手術死亡3例(4.6%) である. 3.僧帽弁閉鎖不全症 1)診断とポイント 乳頭筋断裂,乳頭筋機能不全(乳頭筋・腱索の 過度の伸展,萎縮,線維化などによる),心室瘤に よる二次的な僧帽弁輪の拡大などが原因となる. 乳頭筋断裂はかなりまれであるが,乳頭筋機能不 全は約1%にみられる.左室前乳頭筋は,前下行 枝,回施枝の二重支配をうけるのに比し,後乳頭 筋は右冠状動脈の単独支配をうけるので虚血に陥 りやすいので僧帽弁閉鎖不全の原因は後乳頭筋に 多く,下読梗塞に合併しやすい.診断は,振戦を 伴わない心尖部の全収縮期雑音,Swan−Ganzカ テーテルによる左右短絡の否定,肺動脈納入圧の V波の増高,心エコー検査,左室造影などによる. 表2に急性心筋梗塞における収縮期雑音の鑑別診 断を示す.乳頭筋断裂(特に完全断裂)は,急速 に肺水腫に陥り,予後はきわめて不良である. 2)手術 おもに弁置換術が行われる,その他,弁形成術, A−Cバイパス術なども適応があれぽ行なう.教室 では,明らかなリウマチ性原因によるものを除き, 虚」血に起因する9例の僧帽弁閉塞不全に対し,手 術を施行し全例を救命し得た.このうち1例は Killip分類IV型, Forrester subset IV型の後乳表2 急性心筋梗塞における収縮期雑音の鑑別診断 中隔穿孔 乳頭筋破裂 乳頭筋機能不全 生涯断裂 比較的稀 稀 比較的多い 梗塞に合併するのは稀自 切 度 索断裂の数%以下 梗塞部位 前壁梗塞に多い 下・後壁に多い 各 種 各 種 梗塞範囲 比較的広範囲以上 少範囲のことが多い 広∼中範囲 各 種
全収縮期 収縮早期∼全収縮期 収縮中∼後期・紡鐘型 High pitch, musical
心雑音 胸部左縁 心尖部 心尖部 心尖部
Thrill多い Thri11稀 Thri正1稀 Thrill稀
SG一カテーテル 左→右短絡 V波の異常高値 V波の軽∼中等度上昇 V波の上昇 ・破裂孔を直視できるこ ・弁尖の逸脱, ・逆流の証明 断裂腱索の左房への反転 とあり Huttering ・決定的特異性なし 雪踏のβμttering ・左→右短絡 ・乳頭筋断裂 心エコー ’狽奄垂フ証明 ・短軸で後交連側の摺場 が中央へ偏位 ・逆流の証明 頭筋完全断裂例で急性期に緊急僧帽弁置換術を施 行し,救命した12).本例は,乳頭筋断裂の本邦にお ける救命例の初例である.川崎病を含む乳頭筋機 能不全症候群による僧帽弁閉鎖不全は,いずれも 慢性期にもかかわらず,Sellers分類III∼IV度の僧 帽弁閉鎖不全例で,2例に弁置換術,4例に形成 術を施行した.虚血あるいは非虚血性の判別が困 難な当事断裂による2例の僧帽弁閉鎖不全に対 し,弁置換術を施行した.心筋梗塞を合併する腱 索断裂との因果関係は不明である. 4.自由壁破裂 1)診断とポイント 心筋梗塞後1週間前後に多発し,約10%にみら れる.Risk factorとしては,高齢者,高血圧,初 回梗塞,前壁梗塞,PTCR後などがあげられ,要 注意症状としては,①新たな胸痛の出現,遷延持 続する胸痛,②friction rubの聴取,③低血圧の 持続,④結節調律,ventricular rhythmを伴う一』 過性低血圧などがあげられる.このような症例に 次のようなdefinitive signが認められた場合には 躊躇することなく緊急手術を行なう.①結節調律, ventricular rhythmを伴う意識消失,ショック, ②心電図上は,QRS complexを認めるが血圧測 定不能ないわゆるelectro−mechanical dissoci− ationの状態,③心タンポナーデの所見,④心マッ サージ無効,などである. 2)手術 緊急外科治療以外には救命手段はない.ただち に,左開胸下に心血ンポナーデの解除を行なう. 心膜穿刺による診断,治療は現実として困難かつ 不確実であり,時を失することなく左開胸に踏み 切るべきである.ついで,破裂部を指でおさえな がら,テフロンフェルトなどで補強しつつ縫合す る.並行して人工心肺の準備を行なう.一方,左 開胸によるタソポナーデの解除ではその後の人工 心肺の確立が困難であったり,多量の失血による 極度のhypovolemiaによる低血圧により予後不 良なので,剣状突起下から部分的に心タンポナー デを解除した状態である程度の血圧を保ちつつ手 術室に搬送し,人工心肺下に修復を行なうべきで あるとするものもある.いずれたせよ,徐々にし みだすように破裂が進みいくぼくかの時間的余裕 の存在する心タンポナーデ型(Oozing型)に比し, 即死に近い状態で全く瞬間的に極度のショック状 態に陥る突然死型(Blow−out型)の予後は極めて 不良であり,本邦でも一例の救命例が報告されて いるにすぎない.教室でも,今日までに表3に示 すように8例の自由壁破裂に対し緊急手術を施行 しているが,Blow−out型に救命・例はない.今後, 救命例を得るためにはハイリスク例の適確な把握 一220一
表3 左室自由壁破裂 例 数 手術例 救命例 a)突然死型 25 5 0 (Blow−out型) b)心タンポナーデ型 8 1 / (Oozing型) c)仮性心室瘤型 4 2 2 とCCUでの緊急手術体制の整備などが急務であ ると考える. 5.仮性心室瘤 1)診断とポイント 仮性心室瘤は,自由壁破裂の一亜型である.瀕 死の心破裂が極めて稀に心膜などの癒着により拡 大が阻止され突然死をまぬがれることがある.こ れが急性期をすぎると癒着心膜と血腫は左室圧に より膨隆し,左室と連絡する仮性心室瘤を形成す る.仮性心室瘤は再破裂を生じる可能性を含み, 極めて予後不良で,とくに3ヵ月以内の再破裂に よる死亡は高頻度であり13),通常の真性の左室瘤 ときわだった対比を示している.仮性心室瘤の術 前診断は必ずしも容易ではないが,最近は心エ コー沚クの発達などにより比較的容易となりつつ ある.診断に供する事項としては,①突然のシ・ッ クの既往があり,心破裂のあったことが推定され る,②心膜摩擦音(friction rub)を聴取する,③ 連続性あるいは収縮期雑音を聴取する,④心電図 上,ST上昇の持続がある,⑤胸部X線写真上, 梗塞後急激に心拡大がみられる,⑥左室造影,心 断層エコーで,イ)左室と仮性心室瘤の融合部で 心内膜がはっきり途絶,ロ)嚢状または球状の瘤 の確認,ハ)瘤の基部に比して,比較的狭い入口 部の存在などを確認する,などである. 2)手術 内科治療は効果が期待できないので破裂口閉 鎖,仮性心室瘤切除を施行する.教室では,4例 の仮性心室瘤を経験し,うち2例に手術を施行し, いずれも救命している(表3).しかし,手術待機 中に破裂により突然死を来した症例を経験してお り,再破裂が高頻度なので診断確定後できるだけ 速やかに手術を行なうことが望ましい.本症は周 囲組織との癒着が広範なので癒着剥離は充分慎重 mm Hg 1σo 50 一、・
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diastole 図6 1ABPによる動脈圧の変化とIABPの模式図 にする必要があり,その目的とともに術中破裂に 対処すべく開胸前から大腿動静脈を露出し,VA バイパスの準備が必要である. 6.補助循環 心筋梗塞合併症においては,心筋壊死に伴う心 機能障害を加えて,なんらかの器械的合併症が加 わるといった二重のダメージが心臓におよび,手 術に際してはカテコラミンなどの薬剤のみでは不 十分で器械的な循環補助手段が必要となる場合が 少なくない.現在,主に用いられている大動脈内バルーンパンピングintraaortic balloon pump− ing:IABPと最近ようやく本邦でも普及しはじ めた補助心臓装置,心室補助装置ventricular assist device l VADの概略について述べる.
1)大動脈内バルーンパンピングIABP(図6) (1)原理および実際 通常,厳島部の大腿動脈からバルーンを挿入し, :先端は左鎖下動脈分岐直後の下行大動脈に位置さ せる.最近,皮膚切開をせず経皮的にSeldinger法 を応用して挿入可能な〉ミルーンが開発され迅速か つ簡便に使用可能となり急速に普及した.成人の 場合,容量30∼40mlのバルーンを患者の心電図ま たは動脈圧波形と同期させ,心室拡張期にバルー ンを膨張(in且ate)させることより,①diastolic augumentation:大動脈拡張期圧=冠状動脈灌流
圧を上昇させることにより心筋への酸素供給を増 やし,また,逆にその心室収縮期に急速にバルー ンを縮小(deHalate)・させることにより,② systolic unloading:大動脈収縮期圧を低下させ, 左室の前負荷,後負荷を低下せしめ,左室仕事量 を減少させる装置である.IABPの使用基準,離脱 基準は表4に示すごとくである.近年,経皮的に 挿入可能なバルーンの登場により,内科医のみで も容易にIABPが挿入可能となって以来, IABP の小型軽量化もあいまって心筋梗塞後合併症の症 表4 1ABP使用基準,離脱基準 使用基準 離脱基準 心係数 繒k期血圧 カ房圧 A量 <2.0〃min加2 モW0mmHg рQ5mmHg モQ0m1/h >2.0∼2,5〃min/m2 рP00mmHg
q20mmHg
рS0∼50ml/h 4項目のすべてを満足するようなdeep shockに至る前 にhypovolemia(循環血液量不足),酸塩基平衡などを補正 したのちも,カテコールアミンの使用量が増加し,血行動 態の安定が得られない場合は,上記の基準にとらわれず, 早期にIABPを開始するほうがよい.例をIABPを駆動しっっCCU間搬送する例が増
加しつつある14).教室では,いままでに表5に示す ごとく9例のCCU間搬送後緊急手術・例を経験し 8例を救命しているが,うち6例が心筋梗塞後合 併症例(心室中隔穿孔5例,後乳頭筋完全断裂に よる僧帽弁閉鎖不全1例)で,全例を救命しえて いる.現在は,長距離移送中の電源としては,予 備バッテリーを使用しているが,将来的には補助心臓駆動下の搬送や,移動donor心あるいは
donorあるいはrecipientの搬送も可能なように搬送車両から大電源の確保が可能なように
mobile CCUの重装備化が望まれる15). 2)補助心臓IABPが,主に圧補助装置であり心機能の約
20%の補助が限界であるのに対し,補助心臓は流 量補助が可能で最大限心機能の100%までの補助 が可能であり,IABPの限界例といった超重症例 に威力を発揮する.左心補助の場合は,左房(時 に左室)より脱血し,大動脈に還血し,右心補助 の場合は右房より脱血し肺動脈に還血する.左心, 表5 1ABP駆動下CCU間搬送後手術例 症 例 年齢,性 搬送日 診 断 使 用 機 窟 搬送区間(時間) 転帰 1.Y.N. 56,男 ’84−3−8 陳旧性心筋梗塞(前壁,下壁) s安定狭心症 カ心不全,EF14% Datascope @ 83M i内蔵バッテリー・CO2ボンベ) 中野区一新宿区 @ (15分) 死 2.K. T. 72,女 ’85−2−4 急性心筋梗塞(下壁) 纉茁ェ筋完全断裂 椁X弁閉鎖不全 S原性ショック Datascope @ 83M i内蔵バッテリー・CO2ボンベ) 板橋区一新宿区 @ (20分) 生 3.T. K。 80,女 ’85−11−20 急性心筋梗塞(広汎前壁) S室中隔穿孔 S原性ショック Aries @Mode1−700 i内蔵バッテリー) 板橋区一新宿区 @ (20分) 生 陳旧性心筋梗塞(下壁) Kontron 4,M.W. 65,女 ’85−12−26 急性心筋梗塞(前壁)不安定狭心症左心不全 Model−10i磐舞¢ラ鷺騒つ
郡 山一東 京@(3時間) 生 クッシング症候群 5,E.K, 38,女 ’86−9−20 急性心筋梗塞(広汎前壁) S室中隔穿孔 S原性ショヅク Aries @ Model−700 i内蔵および予備バッテリー) 群 馬一口 京 @(2.5時間) 生 皮フ・尿路カンジダ症 6.N.S. 72,男 ’87−1−7 急性心筋梗塞(亜広汎前壁) S室中隔穿孔 カ心不全 Aries @ ModeL700 i内蔵および予備バッテリー) 横須賀一東 京 @(2.5時間) 生 7.K.A. 47,男 ’87−8−14 急性心筋梗塞(前壁)[塞後不安定狭心症 Datascope @System 90 i内蔵バッテリー) 港 区一新宿区 @ (15分) 生 8.S.M. 68,女 ’87−9−5 急性心筋梗塞(亜広汎前壁) S室中隔穿孔 カ心不全 Aries @ Mode1・700 i内臓および予備バッテリー) 三 島一東 京 @(3時間) 生 9.F.1. 71,女 ’87−10−19 急性心筋梗塞(前壁) S室中隔穿孔 S原性ショック Aries @ Model・700 i内蔵および予備バッテリー) 横 浜一睡 京 @(1,5時間) 生 一222一右心の両方にとりつければ両心補助も可能であ る.空気駆動のタイプが主体で,東大型(サック 型),国循型,トーマス型(ダイアフラム型)など 国産の補助心臓装置が,現在治験中であり,今日 までに100例近い症例に用いられている.前述した ごとく,教室でも1985年6月17日に重症の心室瘤 に補助心臓を用い救命に成功したが,本例は重症 の開心術後に補助心臓を使用し救命し得たものと しては本邦初成功例である。 7.人工心臓と心臓移植 以上述べた現行の治療ではどうしても救命し得 ない症例がいまだなお厳然として存在し,それに 対し人工臓器,移植の両面から手がさしのべられ ようとしている.既に,アメリカでは完全置換型 の人工心臓も臨床使用が開始されつつあり,さら に欧米では心臓移植はごくあたりまえの治療手段 のひとつとして社会に根をおろしつつある.また, 心筋梗塞後の心原性ショック例に対しdonor心 の得られるまで補助心臓装置で心機能および全身 循環を維持しつつ移植に備え,最:終的には心移植 で救命するいわゆるbridge bypass後の心臓移植 といった両者の連係にもとづいた治療も行なわれ ている.本邦ではCCUの導入以来,心筋梗塞にお いて不整脈死は激減したものの,心原性ショック の死亡率は,超急性期の緊急ACバイパス術に加
え,今日ではPTCRやPTCAなどの治療が試み
られるようになり若干の向上が認められはするも のの,なお80%前後と高率である16).急性期の梗塞 切除術はその心室容量の狭小さなどからして成績 は不良で適応とはならず,せっかくCCUに収容 しながら無力感にさいなまれつつ多くの人命が失 われている今日,われわれに残された治療手段で ある人工心臓と心臓移植の獲得こそが今後の最重 要課題であろう. 文 献 1)西田博,遠藤真弘,林久恵ほか:心筋梗塞後 心室中隔穿孔の外科治療.胸部外科 37:249− 259, 1984 2)西田博,遠藤真弘,林久恵ほか:心筋梗塞後 心室中隔穿孔における多臓器不全(MOF).臨胸外 4:593−602,1984 3)八木葉子,西田博,林久恵ほか:虚血性心疾 患における致死性心室性不整脈に対する外科治 療.心臓ペーシング 2:310−311,1986 4)小原邦義:梗塞後左室瘤切除ないしasynergy切 除の適応に関する臨床的研究.日胸外会誌 25: 907−927, 19775)Watson LE, Dickhaus DW, Martin RH et al:
Left ventricular aneurysm, Preoperative
hemodynamic, chamber volume, and results of aneurysmectomy. Circulation 52:868−873,1975
6)Kapelansk孟DP, Al・Sadir J, Lamberti JJ et
al: Ventricular features predictive of surgical outcome fQr left ventricular aneurysm. Circula− tion 58 :1167−1174, 1978 7)西田博,遠藤真弘,林久恵ほか:VT,心不全 にて6ヵ月臥床し,522gの切除を行なった巨大左 擁壁。Coronary 1:159−167,1984 8)遠藤真弘,西田 博,小柳 仁ほか:補助循環 一LVAD成功例とIABPの最近の動向.現代医療 18 :811−822, 1986 9)遠藤真弘,西田 博,小柳 仁ほか:補助循環 (pending stand by IABPとpending stand by
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