272 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(119) イナ バ シゲ キ稲葉茂樹(昭和2
医学博士 乙第933号昭和63年3月18日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)Persistent atrial standsti11の臨床的および電気生理学的検討 一リウマチ性弁膜症および心筋疾患に合併したatrial standsti11一 (主査)教授 広沢弘七郎 (副査)教授 白坂 龍暖,教授 羽生富士夫
論 文 内 容 の 要 旨
目的 Atrial standstill(AS)ウよ心房の電気的興奮性が消 失する稀な不整脈である.その基礎疾患は多岐にわた るが,基礎疾愚によるASの病態の違いについて検討 した報告は未だない.本研究の目的は弁膜症および心 筋疾患にみられたASの病態および臨床的意義を検討 することである. 対象および方法 対象はASと診断された22症例である.これら22例 をその基礎疾患からリウマチ性弁膜症を有した11例 (弁膜症群)と特発性および続発性心筋疾患を有した11 例(心筋疾患)に分類し,両群の臨床像および電気生 理学的所見を比較した.ASは右房および左房内の多 点でマッピングを行い,少なくとも1ヵ所以上で心房 電位が消失し,かつ高出力刺激に対しても反応のみら れない部位(電気的興奮性消失部位)が確認されたも のとした. 結果 1.臨床像および血行動態:Adams-Stokes発作の 合併頻度は心筋疾患群で有意に高率であった.血行動 態では肺動脈収縮期圧および肺動脈記入圧は弁膜症群 で有意に高値を示した. 2.心電図経過:弁膜症群では初診からAS診断に 至るまでの経過は極めて長く,全例に心房細動(Af) の時期が認められた.この経過中,心房の調律はf波振 幅の漸減→微小なP波を伴う異所性心房調律または 頻拍(EAR/T)→心房波消失へと移行した.心筋疾患 群の経過は弁膜症群に比し有意に短かく(p〈0.001), 経過中Afが認められたものは1例のみであった.他 の10例では心房の調律は洞調律→EAR/T→心房波 消失へと移行した. 3.Holter心電図所見:重症心室性不整脈は心筋疾 患群に多く,特に心室頻拍は有意に高率であった. 4.心房内マッピング所見:心房内における電気的 興奮性消失の出現頻度は直言とも右訳義側壁が最も高 く,房室鼻輪近傍部が最も低い傾向が認められた. 5.治療および予後:弁膜症群では10例が心臓弁膜 手術を受け,6例がペースメーカー植え込み術を受け たが,予後は良好で観察期間中死亡はなかった.心筋 疾患群では11例がペースメーカー植え込み術を受けた が観察期間中3例が心不全,1例が心室細動,1例が 突然死,1例が脳塞栓で死亡した. 考察 弁膜症群では長期間にわたる心房の血行動態的負荷 がASの原因と考えられ,心臓弁膜手術などによる負 荷の解除により予後は良好であった.一方,心筋疾患 群ではASは心房筋の変性の結果と考えられ,同時に 進行する心室筋障害による心室性不整脈や心室不全が 同群の予後を不良にしているものと考えられた. 結語 弁膜症および心筋疾患に合併するASではその病態 および臨床的意義は大きく異なっていた.この違いは 両者における心室筋病変の差を起因することが示唆さ れた. 一936一273
論 文 審 査 の 要 旨
Partial atrial standstillは比較的新しい概念である.心不全に対する内科的,外科的に有効なる治
療法が施行されるようになり,比較的長く生存できるようになった心疾患患者において,心房筋の終 末的現象として見られるものであるといえる.
本研究は,このようなatrial standsi11にっき,新しい電気生理学的検査法を駆使してその実態を 探ったもので,臨床病理学的にも,又,心電図学的にも価値ある研究である.
主論文公表誌
Persistent atrial standstillの臨床的および電気生
理学的検討 一リウマチ性弁膜症および心筋疾患に合併した atr三al standsti11一 東京女子医科大学雑誌 第58巻 第1号 18~30頁(昭和63年1月25日発行) 副論文公表誌 1)徐脈性不整脈のペースメーカー治療における心 室性頻拍性不整脈の臨床的意義:房室ブロッ クにおける心室性頻拍性不整脈の臨床的意義 心臓ペーシング研究会プロシーディングス 7 42~45 (1983)
2)Intra-atrial mapping of chronic atrial fibrilla.
tion in patients with mitral valve disease
and cardiomyopathy(僧帽弁膜疾患および心 筋症患者における慢性心房細動の心房内マッ
ピソグによる検討)
Exerpta Medica:Proceedings of the Free Paper Sessions of the International sympo-
sium on Cardiac Arrhythmias:
117~120 (1986) 3)Atrial standstillの診断
循環器科 22 160~167(1987)