Title
微生物ゲノム中の制限修飾系の解析とその応用( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
安井, 一将
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第517号
Issue Date
2009-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/33658
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本個)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 安 井 一 将 (愛知県) 博士(農学) 農博甲第517号 平成21年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 岐阜大学 微生物ゲノム中の制限修飾系の解析とその応用 主査 岐阜大学 教 授 鈴 木 徹 副査 岐阜大学 教 授 河 合 啓 一 副査 静岡大学 教 授 田 原 康 孝 副査 信州大学 教 授 千 菊 夫 論 文 の 内 容 の 要 旨 現在、微生物の完全長ゲノム配列が明らかにされている。これらゲノム解析よ って、遺伝子レベルで、生物の様々なメカニズム等が明らかになりつつある。 しかし、未だ有効的な分子遺伝子学情報が比較的少ない現状で、ゲノム情報を 十分に活用できていない状態である。それは、ゲノム解析が既知の遺伝子との 相同性などによって導きだされた予測結果だからである。明確にメカニズムの 解明をする為には、ゲノムDNAの配列情報だけではなく、遺伝学、生化学的な 解析を行わなければならない。しかし、ゲノム解析された微生物の多くは遺伝 子学的換作の技術が確立されておらず、分子遺伝学実験を行う事が困難である。 当研究室では、微生物のひとつである、風拡血鮎虎甜血皿 d(わね∫Cg乃Jお ÅrCC15703における完全長ゲノム配列を決定している。この学位論文は、現在 のゲノム研究におけるメカニズムの解析と問題解決について、且α(わね∫Ce乃血を 用いて行い、ゲノム解析よる菌の育種の解明の鍵を見つけ出し、遺伝子学的換 作の技術の確立を通じて、その中で制限修飾系の重大な関連性を示すものであ る。 成人の健康を考える上でとても重要な菌であると考えられる成人の腸管内で 優勢菌種皮aゐゐβCe月払について塩基単位での違いを確認できるタイリング アレイおよび、SOM解析による外来生物由来遺伝子の解析を用いて6菌種内多 型を解析した。その結果、点βゐぁぶce月払始祖株の存在が示唆され、その後の 分岐は、主に制限修飾系などの外来生物由来遺伝子群を取得によって形成され
-83-たと、且α(わJe∫Ce乃ぬ菌株の進化を考察することができた。また、ビフィズス菌 のヒトそれぞれ腸管に固有に存在する宿主特異性が成立する理由として、菌株 間でことなる糖関連遺伝子および細胞表層関連遺伝子によって、菌株特異的表 層構造が形成され、腸管定着性の違いによるものと考察した(文献1)。 次に、このメカニズムの明確な解析を行うため遺伝子操作系を構築として、 分子遺伝学的換作の基本的技術を確立する上で必須となる、効率の良い形質転 換系の構築に取り組んだ。ほとんどの微生物が有している制限修飾系は、外来 遺伝子の防御機構としての役割を担っていることはよく知られている。そこに 着目をし、PlasmidArtificalModification(M)法を考案した(文献2)。 M法は、大腸菌内にて、形質転換目的微生物の修飾酵素遺伝子を発現させ、 シャトルベクターを形質転換目的微生物と同様の修飾を受けさせる。導入後に 制限酵素による■シャトルベクターの切断を防ぐことで形質転換効率の改善を図 るものである。B.adblescentisATCC15703株において、考案したfAM法を用い て、形質転換効率の向上に取り組んだ。 結果、B.a(わIescentis ATCC15703のゲノム情報を解析し、BAD1233とBAD 12$3の二つの推定修飾酵素遺伝子を得た。これら用いて、クローングを行い、 シャトルベクターとともに大腸菌に同期させた。その後、シャトルベクターを
抽出し、且αゐね∫Cg乃血ATCC15703を電気穿孔法にて形質転換実験を行った。
M法を用いていない場合は、1-3×100cFU/pgDNAに対して、PAM法を用 いた場合は105cFU/pgDNAという高い形質転換効率を得ることができた。この M法によって今後、且βゐJβ∫Ce乃血の遺伝子換作系の確立を行うのに必要不可 欠な方法論になると思われる。 最後に、今回の研究により、制限修飾系は分岐に関わり、菌株間で異なって いることが示唆された。この制限修飾系、特に修飾系を菌株ごとに解析するこ とによって、M法を使用し効率の良い形質転換系の確立する手順として一般 的に応用できるようになれば、微生物全体において、今後のゲノム研究が飛躍 に進み、様々なメカニズムの解明に繋がることが期待される。 審 査 結 果 の 要 旨 DNA塩基配列解析技術の発展により、現在では、微生物の完全長ゲノム配列の解析は 比較的容易になっている。一方、この情報を、有効に用いて菌株特異的な生命現象を明 らかにする方法論は、未だ開拓な場合がほとんどである。このため、菌種、菌株ごとの 特徴をゲノム情報に基づき効率よく解析し、さらに分子遺伝学、生化学的方法で証明す る方法論の確立が求められている。 安井一将氏は、岐阜大学ゲノム微生物学研究室においてこれまで完全長ゲノム配列を 解析してきた成人の腸内で優勢な菌種一つでありヒトの健康を考える上で重要な 点上鮎0ぬcfe正u皿α(わJe∫Ce乃抽をモデルにして、この間題を解決の緒となる研究をおこな った。点αゐJe∫Cβ乃お/よ個人ごとに異なる常在菌株が存在している。これらの多型解析を詳 細に解析することを目指し、現在理研セルバンクで入手可能な全ての且α血Je∫Ce乃お株、 JCM1275,JCM1251,JCM7044,JCM7045,JCM7046と新たなヒト由来分離株9-124を対象 菌株とした。一塩基単位での違いを確認できるタイリングアレイを作成した。完全長ゲ ノム配列が明らかであるATCC15703に対し、競合ハイプリダイゼーションを行った。そ の結果、これらの株が、遺伝子クラスタ単位での欠失をおこして順次成立していったこ とが明らかになった。 SOM解析による外来生物由来遺伝子の解析した結果、ビフィズス菌の共通祖先株に、 主に制限修飾系、細胞表層タンパク質、細胞外多糖などの外来生物由来遺伝子群を水平 伝搬により取得し且αゐお∫Cg〃お始祖株が成立し、その後、遺伝子クラスタの数回の欠失 のより、各菌株が成立した事が示唆された。ビフィズス菌のヒトそれぞれ腸管に固有に 存在する宿主特異性が成立した理由として、菌株間で異なる糖関連遺伝子および細胞表 層関連遺伝子によって、菌株特異的表層構造が形成され、腸管定着性の違いが生じたと 考察した。これについては、投稿論文1において報告した。 次に、こういった菌株特異的なホスト選択メカニズムの分子遺伝学的解析を行うため、 遺伝子操作系を構築目指した。様々な分子遺伝学的操作の基本的技術を確立する上で必 須となる、効率の良い形質転換系が不可欠である。そこで、氏は、微生物が有している 外来遺伝子の防御機柵である制限修飾系に注目し、これを回避するため導入しようとす るプラスミドDNAをあらかじめ人工的に修飾し、制限酵素に対する耐性を付与する PlasmidArtificalModification(PAM)法を考案した。具体的には、大腸菌内において目 的微生物の修飾酵素遺伝子を発現させ、その大腸菌中にシャトルベクターを一旦導入し、 .目的微生物と同様の修飾を受けさせる。さらにここからシャトルベクターを抽出しエレ クトロボレーションにより目的微生物を形質転換することにより、導入後に制限酵素に ょるシャトルベクターの切断が防がれ、結果として形質転換効率の向上を図るものであ る。この方法論の実効性を検証するためにB.adblescentisATCC15703株を用いて形質転 換効率の向上に取り組んだ。 B.a`わIescentis ATCC15703のゲノム情報を解析した結果得られた、BAD1233とBAD 1283の二つの推定修飾酵素適伝子をプラスミドpBAD33にクローングした大腸菌にシャ トルベクターpKKT427を導入した。その後、シャトルベクターを抽出し、且αゐJe∫Ceぬ ATCC15703を電気穿孔法にて形質転換実験を行った。PAM法を用いていない場合は、 1-3×100cFUbigDNAに対して、払M法を用いた場合は105cFUhigDNAという約10 万倍高い形質転換効率を示した。このM法が確立したことにより、今後、且αゐね∫Ce励∫ において遺伝子発現法、部位特異的欠失操作法、ランダム変異法の確立が容易になり、 本菌の分子遺伝学研究が飛躍的に進展する辛が期待される。この結果については、文献 2に掲載された。 今回の安井一将氏の研究により、ゲノム解析の結果を菌株レベルで詳細に研究する全 く新しい方法論が提案され実効性が検証された。これらの方法論は、且α血Jど∫Ce乃おのみ ならず制限修飾系を有しており、ゲノム解析が終了したあらゆる微生物に対して有効な 方法であり、今後の微生物の発展におおいに貫献すると考えられる。 以上について,審査委員全員一敦で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の 学位論文として十分価値あるものと認めた。 (文献1)Yasui,K.,Tabata,M.,Yamada,S・,Abe,T・,kemura,T・,Osawa,R・,andSuzuki,T・ (2009)htra-SpeCiesdiversitybetweensevenB所dobacteriumadolescentisstrains idenhfiedbygenome-Widetilingarray皿alysis・Biosci・Biotechnol・Biochem・inpress・ (文献2)Yasui,K.,Kan0,Y.,Tanaka,K・,Watanabe,K・,Shimizu-Kadota,M・,Yoshikawa,H・, andSuzuki,T.(2009)ImprovementofbacterialtranSformadonefnciencyusingpla5mid artificialmodification.NucleicAcidsRes37,e3.