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目 次 第 1 章 序 論 1 第 2 章 方 法 手 続 き 4 1. 調 査 質 問 紙 2. 調 査 対 象 と 調 査 実 施 3. 仮 説 4. 分 析 方 法 第 3 章 結 果 7 1. 改 編 した 尺 度 の 因 子 分 析 2. 各 大 学 の 基 礎 統 計 量 3. 仮 説

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(1)

2013 年度

関西福祉科学大学大学院

社会福祉学研究科

臨床福祉学専攻

修士論文題目

指導教員( 鎌田 次郎 )

社会福祉学研究科臨床福祉学専攻

学生番号 21161010 氏名 水本 尚吾

大学生における学習方略使用と達成動機、自己

効力感の関係

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目次

1章

序論 ・・・・・・・・・

1

2章

方法・手続き ・・・・・

4

1. 調査質問紙 2. 調査対象と調査実施 3. 仮説 4. 分析方法

3章

結果 ・・・・・・・・・

7

1. 改編した尺度の因子分析 2. 各大学の基礎統計量 3. 仮説をもとにしたモデル図の検討 4. 自己効力感高群・低群での t 検定

4章

考察 ・・・・・・・・・

11

1. 改編した尺度の因子分析 2. 各大学の基礎統計量 3. 仮説をもとにしたモデル図の検討 4. 自己効力感高群・低群での t 検定

5章

総合考察 ・・・・・・・・

14

参考文献

(3)

1

大 学 生 の 学 習 に お け る 学 習 方 略 使 用 と 達 成 動 機 、 自 己 効 力 感 の 関 係

第 1 章 序 論

日 本 で は 1980 年 代 か ら「 自 己 教 育 力 」が 推 奨 さ れ 、「 自 ら 学 び 、自 ら 考 え る 力 」 が 重 視 さ れ て い る(伊 藤・神 藤 , 2003)。こ の こ と は 、他 律 的 な 学 習 態 度 で な く 自 律 的 な 学 習 態 度 が 重 要 視 さ れ て い る こ と の 表 れ と 考 え る こ と が で き る 。 こ れ は 、 こ れ ま で 批 判 さ れ て き た 知 識 詰 め 込 み 教 育 へ の 回 帰 で は な く 、「 生 き る 力 」の 育 成 の 一 環 と し て 、基 盤 と な る 学 力 の 形 成 を 重 視 す る も の と 言 え る 。「 生 き る 力 」と は 、 1996 年 の 中 央 教 育 審 議 会 答 申 に お い て 、「 基 礎 ・ 基 本 を 確 実 に 身 に つ け 、 い か に 社 会 が 変 化 し よ う と 、 自 ら 学 び 、 自 ら 考 え 、 主 体 的 に 判 断 し 、 行 動 し 、 よ り よ く 問 題 を 解 決 す る 資 質 や 能 力 、 自 ら を 律 し つ つ 、 他 人 と と も に 協 調 し 、 他 人 を 思 い や る 心 や 感 動 す る 心 な ど の 豊 か な 人 間 性 、 た く ま し く 生 き る た め の 健 康 や 体 力 な ど の 力 」 と し て 、 変 化 の 激 し い 現 代 社 会 を 担 う 子 ど も た ち が 獲 得 す べ き 能 力 と し て 提 唱 さ れ た も の で あ る(中 央 教 育 審 議 会 , 1996)。 自 律 的 学 習 態 度 を 強 調 す る 趨 勢 は 初 等 ・ 中 等 教 育 に 限 ら な い 。 近 年 、 大 学 の 進 学 率 上 昇 や 、 年 功 序 列 や 終 身 雇 用 の 崩 壊 に 伴 う 雇 用 形 態 の 変 化 な ど 、 社 会 状 況 は 大 き く 変 化 し て い る 。 こ の よ う な 状 況 に お い て 提 唱 さ れ て い る 社 会 人 基 礎 力 や 学 士 力 は 、 他 律 的 で な く 自 律 的 な 学 習 態 度 を 重 視 し て い る(松 下 , 2010)。 そ の た め 、 大 学 生 の 自 律 的 な 学 習 態 度 の 形 成 は 、大 学 教 育 に お い て 最 も 重 要 な 課 題 の 一 つ で あ る と 考 え ら れ る(畑 野 , 2010)。 「 生 き る 力 」 を 育 む 上 で 重 要 で あ る と 考 え ら れ る の が 自 己 指 導 能 力 で あ る 。 自 己 指 導 力 と は 、 い わ ゆ る 、 自 ら 学 ぶ 力 で あ る 。 学 力 形 成 に お い て も 、 こ の 力 の 育 成 は 重 要 で あ る と 思 わ れ る 。 そ こ で 、 近 年 、 自 ら 学 ぶ 力 を 理 論 的 に 説 明 す る も の と し て 、 自 己 調 整 学 習(self-regulated learning ; 以 下 SRL) が 注 目 さ れ て い る 。 Zimmerman(1986)に よ る と 、自 己 調 整 と は 、学 習 者 が 、メ タ 認 知 、動 機 づ け 、行 動 に お い て 自 分 自 身 の 学 習 過 程 に 能 動 的 に 関 与 し て い く こ と と 定 義 づ け ら れ て い る 。 つ ま り 、 自 己 調 整 学 習 と は 、 自 ら の 状 態 を 能 動 的 に モ ニ タ リ ン グ し 、 コ ン ト ロ ー ル し て 、 よ り 効 果 的 に 学 習 す る こ と で あ る と 考 え る こ と が で き る 。 つ ま り 、 自 己 調 整 学 習 が で き る 者 は 、 知 識 、 ス キ ル を 身 に つ け る 際 に 、 他 人 に 頼 る こ と な く 、 自 分 で 目 標 を 立 て 、 そ れ に 到 達 す る 学 習 行 動 を 計 画 し 、 自 分 自 身 を モ ニ タ リ ン グ し な が ら 、 行 動 を コ ン ト ロ ー ル す る こ と が で き る と 考 え ら れ る 。 Zimmerman(1986)に よ る と 、自 律 的 に 学 習 に 取 り 組 む 過 程 を 、計 画 、遂 行・意 思 に よ る 制 御 ・ 自 己 省 察 と い う 3 つ の 段 階 で 記 述 さ れ る (Figuer1)。 計 画 の 段 階 は 、 自 ら 目 標 を 設 定 し 、 そ の 目 標 を 達 成 す る た め に 学 習 方 法 や 学 習 方 略 を 計 画 す る 段 階 で あ る 。 目 標 を 定 め 、 計 画 を 立 案 す る 際 に 、 自 己 効 力 感 や 目 標 志 向 性 、 学 習 内 容 に 対 す る 興 味 な ど の 要 因 が 影 響 す る と さ れ て い る 。 遂 行 ・ 意 思 に よ る 制 御 の 段 階 で は 、 選 択 さ れ た 学 習 方 法 、 学 習 方 略 が 実 行 さ れ る 。 学 習 目 標 に 関 係 の あ る 内 容 を 焦 点 化 し た り 、 学 習 方 略 が う ま く 実 行 さ れ て い る か を モ ニ タ ー し た り す る 。 自 己 省 察 の 段 階 で は 、 目 標 達 成 の 自 己 評 価 が 行 わ れ 、 成 功 や 失 敗 の 原 因 帰 属 が な さ れ 、満 足 感 や 不 満 感 と い っ た 自 己 反 応 が 生 じ る と さ れ て い る 。SRL の モ デ ル を

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2 学 習 の 行 動 制 御 過 程 の モ デ ル だ と す る と 、 こ の モ デ ル を 維 持 さ せ る 動 機 づ け の 過 程 が 重 要 に な る と 考 え ら れ る 。 動 機 づ け に 関 連 す る 概 念 と し て 、Figuer1 の モ デ ル に 組 み 込 ま れ て い る の が 、 自 己 効 力 感 と 興 味 で あ る 。 こ れ ら は 、 具 体 的 な 学 習 行 動 、 す な わ ち 、 学 習 方 略 の プ ラ ン ニ ン グ に 関 与 し て い る と さ れ て い る 。 こ れ ら を 動 機 づ け の 理 論 の 観 点 か ら 考 え る と 、 期 待 ‐ 価 値 理 論 の 枠 組 み に 当 て は め る こ と が で き る 。Bandura(1977)の 理 論 を 背 景 に 持 つ 自 己 効 力 感 は 期 待 ‐ 価 値 説 の 期 待 に 、興 味 は 自 己 に と っ て の 対 象 の 価 値 と し て 期 待-価 値 説 の 価 値 に 相 当 す る と 考 え ら れ る 。 Figuer1 自 己 調 整 学 習 の 3 つ の 段 階 に よ る 自 己 成 就 サ イ ク ル (Zimmerman, 1998 よ り 作 成) 他 方 で 、学 習 方 略 の 選 択 に 関 し て 、自 己 効 力 感(期 待 )と 興 味 (価 値 )だ け で 十 分 な 説 明 が さ れ て い る と 言 え る だ ろ う か 。Zimmerman(1998)で は 、自 己 省 察 の 段 階 に お い て 生 じ る 満 足 感 や 不 満 感 な ど の 自 己 反 応 は 次 の 段 階 に 反 映 さ れ 、 目 標 や 学 習 方 略 の 修 正 や 新 た な 目 標 設 定 が 行 わ れ る こ と に よ っ て 、SRL の モ デ ル に お い て 循 環 的 な サ イ ク ル が 生 じ る と さ れ て い る 。 つ ま り 、 目 標 達 成 が 十 分 で な い と 自 己 評 価 さ れ る と 、 目 標 の 再 設 定 や 、 目 標 を 達 成 す る た め の 学 習 方 略 を 再 検 討 す る な ど し て 、 次 の 学 習 行 動 が 生 じ る と い う 説 明 で あ る 。 こ の 説 明 は 、 学 習 者 の 自 己 効 力 感 、 興 味 が 保 た れ て い る よ う な 適 応 的 な 循 環 が 生 じ る 場 合 に は 有 効 で あ る と 考 え ら れ る 。 し か し 、 定 期 試 験 や 、 入 学 試 験 な ど で 、 学 習 者 の 自 己 効 力 感 、 興 味 に 関 係 な く 、 良 い 得 点 を 取 ら な け れ ば い け な い 状 況 を 想 定 す る と 、 日 頃 か ら 不 得 意 な 科 目 で は 、 学 習 者 の 自 己 効 力 感 が 低 く 、 対 象 に 対 す る 興 味 も 低 い と い う 場 面 も 考 え ら れ る 。 こ の よ う な 場 面 で も 、 学 習 者 は 何 ら か の 学 習 方 略 を 選 択 し て 学 習 を 行 わ な け れ ば な ら な い 。 こ の よ う な 場 面 で 、 学 習 者 が 適 切 な 学 習 方 略 を 選 択 で き な か っ た と す れ ば 、 結 果 的 に 、 努 力 し た に も 関 わ ら ず 、 良 い 得 点 が 取 れ ず 、 循 環 は 絶 た れ 、 自 己 効 力 感 は さ ら に 低 減 し て し ま う こ と も 考 え ら れ る 。 こ の よ う な 場 面 遂 行 ・ 意 志 に よ る 制 御 注 意 の 焦 点 化 自 己 教 示 モ ニ タ リ ン グ 自 己 省 察 自 己 評 価 原 因 帰 属 自 己 反 応 適 合 性 計 画 目 標 設 定 方 略 の プ ラ ン ニ ン グ ↑ 自 己 効 力 感 目 標 の 志 向 性 興 味

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3 を 想 定 し た 上 で 、 山 田 ・ 堀 ・ 國 田 ・ 中 条(2009)は 、 自 己 効 力 感 と 興 味 と は 別 に 、 勉 強 し な け れ ば い け な い 理 由(動 機 づ け )を SRL の モ デ ル に お け る 循 環 的 な サ イ ク ル の 外 に 置 く こ と に よ っ て 、学 習 行 動 の 生 起 を よ り よ く 説 明 で き る と し た 。山 田・ 堀・國 田・中 条(2009)は 、「 自 己 反 応 が 次 の 計 画 段 階 に 反 映 さ れ る と い う 考 え 方 の 背 後 に は 、 価 値 の あ る こ と を 成 し 遂 げ る こ と に 動 機 づ け ら れ て い る と す る 達 成 動 機 の 概 念 が 暗 黙 裏 に 想 定 さ れ て い る も の と 考 え 、学 習 の 動 機 づ け の 過 程 に よ っ て 、 SRL の モ デ ル は 、 学 習 者 の 実 際 に 即 し た も の と な る だ ろ う 」 と し た 。 達 成 動 機 を 理 論 に 組 み 込 ん で い る 期 待-価 値 説 に 、Atkinson(1957)の 提 唱 し た 達 成 動 機 づ け 理 論 が あ る 。Atkinson(1957)で は 、行 動 の 生 起 は 達 成 動 機 と 期 待 と 価 値 と い う 3 つ の 要 素 に よ っ て 説 明 さ れ る 。こ れ ら 3 つ の 要 素 と 学 習 方 略 の プ ラ ン ニ ン グ の 関 係 を 調 べ る こ と に よ っ て 、 学 習 者 の 学 習 行 動 を 実 際 に 即 し て 説 明 で き る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 、 山 田 ・ 堀 ・ 國 田 ・ 中 条(2009)に 習 っ て 、 達 成 動 機 と 、 自 己 効 力 感(期 待 )の 2 つ に 焦 点 を 当 て 、 そ れ ら と 学 習 方 略 使 用 と の 関 係 を 調 べ る こ と と す る 。 自 己 効 力 感 と 学 習 方 略 の 使 用 と の 間 に は 密 接 な 関 係 が あ る こ と は こ れ ま で に 報 告 さ れ て い る 。Pintrich & DeGroot(1990)は 自 己 効 力 感 が 自 己 調 整 学 習 方 略 の 使 用 と 高 い 相 関 を 示 し 、 自 己 調 整 学 習 方 略 の 使 用 が 学 業 成 績 と 密 接 に 結 び つ い て い る こ と を 示 し て い る 。 ま た 、 森(2004)で は 、 自 己 効 力 感 が 、 中 学 時 期 か ら 現 在 の 英 語 学 習 方 略 の 促 進 に 重 要 な 役 割 を 果 た す こ と を 明 ら か に し た 。 伊 藤 ・ 神 藤 (2003)で は 、 自 己 効 力 感 が 高 い ほ ど 、 認 知 的 側 面 の 自 己 調 整 学 習 方 略 、 内 発 的 調 整 方 略 を よ く 用 い 、 外 発 的 調 整 方 略 を 用 い て い な か っ た こ と が 示 さ れ て い る 。 こ れ ら の 研 究 で 明 ら か に さ れ た よ う に 、 自 己 効 力 感 は 、 学 習 方 略 の 選 択 ・ 遂 行 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る と 考 え ら れ る 。 そ れ で は 、 達 成 動 機 と 学 習 方 略 の 使 用 の 間 に は ど の よ う な 関 係 が あ る の だ ろ う か 。 佐 藤 ・ 新 井(1998)で は 、 認 知 的 方 略 を 多 く 使 用 す る 者 は 、 課 題 の 達 成 を 目 標 と す る と 同 時 に 、 他 者 か ら の 評 価 も 意 識 し な が ら 学 習 し 、 課 題 が 失 敗 し た と し て も 方 略 が そ の 原 因 で あ る と は 考 え な い 傾 向 が あ る こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 、 藤 澤(2002)は 、い わ ゆ る ゆ と り 教 育 に よ っ て 、ご ま か し 勉 強 の 蔓 延 を 指 摘 し て い る 。 ご ま か し 勉 強 の 特 徴 と し て は 、学 習 範 囲 の 限 定 、代 用 主 義 、機 械 的 暗 記 志 向(暗 記 主 義)、 単 純 反 復 志 向 (物 量 主 義 )、 過 程 の 軽 視 化 (結 果 主 義 )の 5 つ が 挙 げ ら れ る 。 藤 澤(2002)は 、 こ う し た ご ま か し 勉 強 の よ う な 学 習 方 略 を 使 用 す る 学 習 者 の 特 徴 と し て 、 他 律 的 な 学 習 を 行 っ て い る こ と を 挙 げ て い る 。 つ ま り 、 こ の よ う な 学 習 方 略 を 用 い る 学 習 者 は 、 内 容 関 与 的 動 機 で は な く 、 結 果 に 対 す る 親 や 教 師 か ら の 賞 罰 の よ う な 他 律 的 動 機 づ け を 持 っ て い る と し て い る 。 こ れ ら の 研 究 は 、 達 成 動 機 が 学 習 方 略 の 使 用 に 親 密 に 関 わ っ て い る こ と を 示 し て い る 。 次 に 、達 成 動 機 、自 己 効 力 感 、学 習 方 略 使 用 と の 関 係 を 調 べ た 研 究 に 山 田・堀 ・ 國 田 ・ 中 条(2009)が あ る 。 山 田 ・ 堀 ・ 國 田 ・ 中 条 (2009)は 、 達 成 動 機 と 自 己 効 力 感 を 測 定 し 、 そ れ ら の 高 低 の 組 み 合 わ せ で 学 習 者 を 4 つ の 群 に 区 別 し て 、 そ れ ぞ れ の 学 習 方 略 の 使 用 を 比 較 し た 。調 査 の 結 果 、(1)自 己 実 現 的 達 成 動 機 の 高 い 学 習 者 は 、 低 い 学 習 者 よ り も 、 抽 象 的 学 習 方 略(例 : 授 業 中 先 生 の 話 を よ く 聞 く )、 基 礎 的 学 習 方 略(例 : 覚 え た い 内 容 に 線 を 引 く )、 自 己 調 整 的 学 習 方 略 (例 : 自 分 で 自 分 の 成 果 を ほ め る)を 使 用 す る こ と 、 (2)競 争 的 達 成 動 機 の 高 低 だ け で は 、 学 習 方

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4 略 の 使 用 に つ い て の 説 明 が 困 難 で あ る こ と 、(3)自 己 効 力 感 の 高 い 学 習 者 は 、低 い 学 習 者 よ り も 抽 象 的 学 習 方 略 、 基 礎 的 学 習 方 略 、 自 己 調 整 的 学 習 方 略 を 使 用 す る の に 対 し 、 自 己 効 力 感 が 低 い 学 習 者 は 不 適 応 的 学 習 方 略(例 : 一 夜 漬 け )を 使 用 す る こ と が 示 し た 。 山 田 ・ 堀 ・ 國 田 ・ 中 条(2009)で 示 さ れ た よ う に 、 達 成 動 機 、 自 己 効 力 感 、 学 習 方 略 使 用 と の 関 係 を 調 べ る 研 究 は 、 個 々 の 学 習 者 の 適 性 に 応 じ た 学 習 指 導 を 行 っ て い く 上 で 、 有 用 な 研 究 で あ る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 、 自 己 効 力 感 と 達 成 動 機 を 測 定 し 、 そ れ ら が 学 習 方 略 の 使 用 に ど の よ う に 関 わ っ て い る か を 調 査・検 討 す る こ と を 目 的 と す る 。具 体 的 に は 、 学 習 方 略 の 使 用 に 自 己 効 力 感 と 達 成 動 機 が 密 接 に 関 わ っ て い る と 仮 定 し 、 そ れ ら の 相 互 関 係 の モ デ ル 図 を 仮 説 と し て 作 成 し 、 そ の モ デ ル 図 を 検 討 す る こ と を 目 的 と す る 。 ま た 、 山 田 ・ 堀 ・ 國 田 ・ 中 条(2009)の 先 行 研 究 に よ り 、 自 己 効 力 感 の 高 低 が 、 達 成 動 機 と 学 習 方 略 の 使 用 に 影 響 し て い る と 考 え ら れ る た め 、 そ れ ら の 関 係 を 明 ら か に す る 。 本 研 究 で 用 い る 自 己 効 力 感 の 尺 度 は 、 森(2004)で 翻 訳 し て 用 い ら れ て い る Pintrich&De Groot(1990)の 自 己 効 力 感 尺 度 の 9 項 目 を 用 い た 。 こ の 尺 度 は 、 教 科 学 習 に お け る 自 己 効 力 感 を 測 定 す る も の で あ り 、 本 研 究 の 目 的 に 即 し た 尺 度 だ と 考 え ら れ る 。ま た 、達 成 動 機 の 尺 度 と し て 、速 水・伊 藤・吉 崎(1989) の 達 成 目 標 傾 向 尺 度 を 用 い た 。 達 成 目 標 傾 向 尺 度 は 、 下 位 尺 度 に 、 学 習 目 標 傾 向 と 、2 つ の 遂 行 目 標 傾 向 が あ り 、 Dweck(1986)が 動 機 づ け に 影 響 を 与 え る 達 成 目 標 と し て 、「 学 習 目 標 」と「 遂 行 目 標 」を 仮 定 し て い る こ と か ら 、達 成 動 機 と し て 、 本 研 究 に 即 し た 尺 度 だ と 考 え ら れ る 。 下 位 尺 度 と し て 、 学 習 目 標 傾 向 、 目 標 達 成 傾 向 α 、 目 標 達 成 傾 向 β の 3 つ の 下 位 尺 度 か ら 構 成 さ れ て い る 。 次 に 、学 習 方 略 の 使 用 に 関 し て の 尺 度 と し て は 、 佐 藤 ・ 新 井(1998)の 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 を 用 い た 。 下 位 尺 度 と し て 、 柔 軟 的 方 略 、 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 、 作 業 方 略 、 友 人 リ ソ ー ス 方 略 、 認 知 的 方 略 の 5 つ の 下 位 尺 度 か ら 構 成 さ れ て お り 、 学 習 者 の 学 習 方 略 の 使 用 を 調 査 す る 上 で 、 有 用 な 尺 度 で あ る と 考 え ら れ る 。 な お 、 本 研 究 の 研 究 内 容 、 及 び 、 方 法 は 関 西 福 祉 科 学 大 学 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 得 て い る 。

第 2 章 方 法 ・ 手 続 き

1. 調 査 質 問 紙 調 査 質 問 紙( 付 表 ) に は 、 自 己 効 力 感 の 尺 度 と し て 、 森 (2004) が 翻 訳 し た Pintrich&De Groot(1990)の 自 己 効 力 感 尺 度 の 9 項 目 を 用 い た 。 こ の 尺 度 は 、 教 科 学 習 に お け る 自 己 効 力 感 を 測 定 す る も の で あ り 、 本 研 究 の 目 的 に 合 っ た 尺 度 だ と 考 え ら れ る 。 達 成 動 機 の 尺 度 と し て 、 速 水 ・ 伊 藤 ・ 吉 崎(1989)の 達 成 目 標 傾 向 尺 度 を 用 い た 。 な お 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 は 本 来 、 中 高 生 向 け で あ る た め 、 調 査 実 施 に 際 し て 、 一 部 を 本 研 究 の 調 査 対 象 者 で あ る 大 学 生 に 適 し た 表 現 に 改 編 し て 用 い た 。 目 標 達 成 傾 向 尺 度 は 、「 問 題 を 解 く こ と が お も し ろ い か ら 」 な ど 9 項 目 か ら 構 成 さ れ る 学 習 目 標 傾 向 、「 両 親 や 先 生 に ほ め ら れ た い か ら 」 な ど 7 項 目 か ら な る 目 標 達 成 傾 向 α 、「 テ ス ト で よ い 点 を と り た い か ら 」 な ど 4 項 目 か ら な る 目 標 達 成 傾 向 β の 3 つ の 下 位 尺 度 か ら 構 成 さ れ て い る 。学 習 方 略 の 使 用 に 関 し て の

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5 尺 度 と し て 、 佐 藤 ・ 新 井(1998)の 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 を 用 い た 。 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 は 、「 勉 強 し て い る と き 、自 分 の わ か ら な い と こ ろ は ど こ か を 見 つ け よ う と す る 」 な ど 8 項 目 か ら な る 柔 軟 的 方 略 、「 勉 強 す る と き は 、 さ い し ょ に 計 画 を 立 て て か ら は じ め る 」 な ど 6 項 目 か ら な る プ ラ ン ニ ン グ 方 略 、「 勉 強 で 大 切 な と こ ろ は 、 く り 返 し 書 い た り し て お ぼ え る 」 な ど 6 項 目 か ら な る 作 業 方 略 、「 勉 強 す る と き は 、 最 後 に 友 達 と 答 え 合 わ せ を す る よ う に す る 」 な ど 4 項 目 か ら な る 友 人 リ ソ ー ス 方 略 、「 勉 強 す る と き は 、内 容 を 自 分 の 知 っ て い る 言 葉 で 理 解 す る よ う に す る 」 な ど 7 項 目 か ら な る 認 知 的 方 略 の 5 つ の 下 位 尺 度 か ら 構 成 さ れ て い る 。 2. 調 査 対 象 と 調 査 実 施 本 調 査 は 2013 年 8 月 15 日 か ら 2013 年 10 月 8 日 の 期 間 に 大 阪 府 下 の 私 立 K 大 学 と 大 阪 府 下 の 国 立 O 大 学 で 実 施 し た (Table1)。 有 効 回 答 は 男 性 91 名 ( 平 均 年 齢 19.29 歳 、標 準 偏 差 1.19)、女 性 97 名( 平 均 年 齢 19.05 歳 、標 準 偏 差 1.13) の 合 計 188 名( 平 均 年 齢 19.16 歳 、標 準 偏 差 1.16)で あ っ た 。ま た 、有 効 回 答 率 は 85.7% で あ っ た 。 私 立 K 大 学 で の 有 効 回 答 は 男 性 29 名 ( 平 均 年 齢 歳 19.48、 標 準 偏 差 1.43)、女 性 50 名( 平 均 年 齢 19.22 歳 、標 準 偏 差 1.38)の 合 計 79 名( 平 均 年 齢 19.32 歳 、標 準 偏 差 1.39)で あ っ た 。ま た 、有 効 回 答 率 は 86.8% で あ っ た 。 国 立 O 大 学 で の 有 効 回 答 は 男 性 62 名( 平 均 年 齢 19.19 歳 、標 準 偏 差 1.05)、女 性 47 名( 平 均 年 齢 18.87 歳 、標 準 偏 差 0.77)の 合 計 109 名( 平 均 年 齢 19.06 歳 、 標 準 偏 差 0.95) で あ っ た 。 ま た 、 有 効 回 答 率 は 84.5% で あ っ た 。 本 調 査 は 無 記 名 回 答 方 式 で 行 わ れ 、 原 則 と し て 集 団 実 施 さ れ 、 調 査 質 問 紙 は 即 時 回 収 さ れ た 。 Table1 各 大 学 の 基 礎 デ ー タ N 平均年齢 SD N 平均年齢 SD N 平均年齢 SD 男子 29 19.48 1.43 62 19.19 1.05 91 19.29 1.19 女子 50 19.22 1.38 47 18.87 .77 97 19.05 1.13 合計 79 19.32 1.39 109 19.06 .95 188 19.16 1.16 私立K大学 国立O大学 合計 3. 仮 説 学 習 方 略 の 使 用 と 自 己 効 力 感 、 達 成 動 機 の 相 互 関 係 の モ デ ル 図 を 作 成 す る に 当 た り 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 に お け る 学 習 目 標 傾 向 は 、 質 問 項 目 の 性 質 上 、 勉 強 自 体 が 楽 し い と い う 動 機 が 大 き い と 考 え 、 自 己 効 力 感 と 相 互 関 係 を 持 つ の で は な い か と 仮 定 し た 。 ま た 、 学 習 目 標 傾 向 は そ う し た 動 機 か ら 、 多 様 な 学 習 方 略 の 使 用 に 影 響 を 与 え る の で は な い か と い う こ と を 仮 定 し た 。 達 成 目 標 傾 向 尺 度 に お け る 成 績 目 標 傾 向 α 、 成 績 目 標 傾 向 β に 関 し て は 、 質 問 項 目 の 性 質 上 、 他 者 の 評 価 や 、 学 習 面 で の 成 績 を 意 識 す る も の で あ り 、 学 習 方 略 に お い て は 、 友 人 を 介 し た 学 習 や 、 作 業 量 を 意 識 し た 学 習 方 略 に な る の で は な い か と 仮 定 し た 。 仮 説 と し て の モ デ ル 図 は Figuer2 に 示 し た 。

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6 〈 学 習 方 略 〉 〈 達 成 動 機 〉 Figuer2 モ デ ル 図 の 仮 説 本 研 究 に お け る 仮 説(Figuer2)は 、先 行 研 究 を 参 考 に し 、自 己 効 力 感 が 高 け れ ば 、 達 成 動 機 を 測 定 す る 達 成 目 標 傾 向 の 下 位 尺 度 の う ち 学 習 目 標 傾 向 が 高 く 、 学 習 方 略 の 使 用 を 測 定 す る 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 下 位 尺 度 の う ち 、 柔 軟 的 方 略 、 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 、 作 業 方 略 、 友 人 リ ソ ー ス 方 略 、 認 知 的 方 略 の 5 つ の 学 習 方 略 を 多 様 に 学 習 方 略 と し て 使 用 す る 傾 向 を 仮 定 し た 。 達 成 目 標 傾 向 尺 度 は 、 下 位 尺 度 で あ る 目 標 達 成 傾 向 α 、 目 標 達 成 傾 向 β の 2 つ の 遂 行 目 標 は い ず れ も 、 作 業 方 略 、 友 人 リ ソ ー ス 方 略 を 学 習 方 略 と し て 用 い る の で は な い か と 仮 定 し た 。 4. 分 析 方 法 1.改 編 し た 尺 度 の 因 子 分 析 と 相 関 本 研 究 で は 、 ま ず 、 目 標 達 成 傾 向 尺 度 の 一 部 を 本 研 究 の 調 査 対 象 者 で あ る 大 学 生 に 適 し た 表 現 に 改 編 し て 用 い た め 、項 目 間 で 因 子 分 析 を 行 う こ と と す る 。ま た 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 の そ れ ぞ れ の 関 係 を 分 析 す る た め 、 項 目 間 で 相 関 分 析 を 行 っ た 。 ま た 、 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 と 自 己 効 力 感 尺 度 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 得 点 の そ れ ぞ れ の 関 係 性 を 分 析 す る た め 、 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 つ の 下 位 尺 度 と 自 己 効 力 感 尺 度 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 の 得 点 間 で 、 相 関 分 析 を 行 う 。 2.各 大 学 の 基 礎 統 計 量 私 立 K 大 学 は 、 入 学 試 験 に お い て 、 公 募 推 薦 で の 入 学 が 多 く 見 ら れ 、 他 方 で 、 国 立 O 大 学 で は 、入 学 試 験 に お い て 、セ ン タ ー 試 験 、一 般 試 験 を 経 て 、入 学 す る 入 試 形 態 を 採 っ て い る こ と か ら 、 学 生 間 で 学 習 方 略 に 差 異 が 考 え ら れ る 。 本 研 究 で は 、合 格 者 の 特 徴 を 考 え 、大 阪 府 下 の 私 立 K 大 学 と 同 じ く 大 阪 府 下 の 国 立 O 大 学 で 調 査 を 行 っ た 。本 研 究 に 際 し て 、大 阪 府 下 の 私 立 K 大 学 と 同 じ く 大 阪 府 下 の 国 立 O 大 学 に お け る 基 礎 統 計 量 を 示 す こ と と し た 。 自 己 効 力 感 学 習 目 標 傾 向 成 績 目 標 傾 向 α 成 績 目 標 傾 向 β 柔 軟 的 方 略 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 作 業 方 略 友 人 リ ソ ー ス 方 略 認 知 的 方 略

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7 3.仮 説 を も と に し た モ デ ル 図 の 検 討 仮 説(Figuer2)を も と に 、学 習 方 略 の 使 用 尺 度 と 自 己 効 力 感 尺 度 、達 成 目 標 傾 向 尺 度 に お け る モ デ ル 図 を 検 討 す る た め 、学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 つ の 下 位 尺 度 と 達 成 目 標 傾 向 尺 度 を 因 子 分 子 し て 再 検 討 し た 下 位 尺 度 の 得 点 間 で 重 回 帰 分 析 を 行 い 、 自 己 効 力 感 尺 度 と 達 成 目 標 傾 向 尺 度 を 因 子 分 子 し て 再 検 討 し た 下 位 尺 度 に お い て は 相 関 を も と に モ デ ル の 検 討 を 行 う こ と と し た 。 4.自 己 効 力 感 高 群 ・ 低 群 で の t 検 定 自 己 効 力 感 尺 度 の 得 点 の 高 低 が 、 ど の よ う に 、 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 つ の 下 位 尺 度 と 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 3 つ の 下 位 尺 度 の 得 点 が 関 係 し て い る か を 分 析 す る た め 、 自 己 効 力 感 尺 度 の 中 央 値 で 高 群 、 低 群 に 分 け 、 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 つ の 下 位 尺 度 と 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 の 間 の そ れ ぞ れ の 下 位 尺 度 の 得 点 の 自 己 効 力 感 尺 度 の 高 群 、 低 群 に つ い て の t 検 定 を 行 う こ と と し た 。

第 3 章 結 果

1.改 編 し た 尺 度 の 因 子 分 析 本 研 究 で は 、 ま ず 、 目 標 達 成 傾 向 尺 度 の 一 部 を 本 研 究 の 調 査 対 象 者 で あ る 大 学 生 に 適 し た 表 現 に 改 編 し て 用 い た め 、 項 目 間 で 因 子 分 析 を 行 っ た(Table2)。 Table2 目 標 達 成 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 結 果 F1 F2 F3 共通性   6 わかることが楽しいから . 8 1 1 .102 .113 .680  18 難しい問題が解けると感動するから . 8 0 5 .103 .136 .677 1 問題を解くことがおもしろいから . 8 0 1 .127 -.067 .662 8 できるようになることが、おもしろいから . 7 9 7 .109 .168 .676  3 むずかしいことに挑戦することが楽しいから . 7 8 8 .114 .043 .636  12 新しい解き方や、やり方を見つけることがおもしろいから . 7 2 5 .209 -.011 .569  20 あたまを使うことが好きだから . 7 1 6 .249 -.210 .619  15 新しいことを知ることができるから . 6 7 3 -.054 .108 .467  10 つまづきや失敗を乗り越えることが楽しいから . 5 7 6 .258 .266 .469  17 友だちに注目されたいから .153 . 7 9 1 .041 .555   2 親や先生にほめられたいから .160 . 7 0 6 .007 .524  5 親や先生に認められたいから .266 . 6 1 4 .308 .543  7 良い成績をとると自慢できるから .174 . 6 6 4 .208 .515  13 友だちにバカにされたくないから .082 . 6 5 7 .267 .510  19 ライバルに勝ったとき気持ちがいいから .281 . 6 0 3 .196 .481  11 親や先生にしかられたくないから -.155 . 5 1 8 .250 .355  14 よい進路・就職先にいきたいから .065 .097 . 7 0 3 .508  9 資格試験・就職試験に失敗したくないから -.121 .263 . 6 9 9 .572  4 成績表をよくしたいから .109 .274 . 6 9 1 .564  16 テストでよい点がとりたいから .217 .181 . 6 8 9 .651 因子抽出法: 主成分分析 バリマックス法 目 標 達 成 傾 向 尺 度 の 一 部 を 改 編 し た 20 項 目 に 対 し て 主 因 子 法 に よ る 因 子 分 析 を 行 っ た 結 果 、3 因 子 構 造 が 妥 当 で あ る と 考 え ら れ た 。 再 度 、 3 因 子 構 造 を 仮 定 し 、 主 因 子 法 ・ バ リ マ ッ ク ス 回 転 に よ る 因 子 分 析 を 行 っ た 。 最 終 的 な バ リ マ ッ ク

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8 ス 回 転 後 の 因 子 パ タ ン を Table2 に 示 し た 。 第 一 因 子 は 、「 問 題 を 解 く こ と が お も し ろ い か ら 」 な ど 9 項 目 か ら 構 成 さ れ て お り 、 目 標 達 成 傾 向 尺 度 に お け る 学 習 目 標 傾 向 の 9 項 目 と 合 致 し た 。本 研 究 に お い て は 、 項 目 の 性 質 を 考 慮 し た う え で 「 学 習 の 喜 び 」 と 命 名 し た 。 第 二 因 子 は 、「 両 親 や 先 生 に ほ め ら れ た い か ら 」 な ど 7 項 目 か ら 構 成 さ れ て お り 、 目 標 達 成 傾 向 尺 度 に お け る 目 標 達 成 傾 向 α の 7 項 目 と 合 致 し た 。本 研 究 に お い て は 、 項 目 の 性 質 を 考 慮 し た う え で 「 他 者 評 価 」 と 命 名 し た 。 第 三 因 子 は 、「 テ ス ト で よ い 点 を と り た い か ら 」 な ど 4 項 目 か ら 構 成 さ れ 、 目 標 達 成 傾 向 尺 度 に お け る 目 標 達 成 傾 向 β の 4 項 目 と 合 致 し た 。本 研 究 に お い て は 、 項 目 の 性 質 を 考 慮 し た う え で 「 向 上 心 」 と 命 名 し た 。 2.各 大 学 の 基 礎 統 計 量 本 研 究 に 際 し て 、大 阪 府 下 の 私 立 K 大 学 と 大 阪 府 下 の 国 立 O 大 学 の そ れ ぞ れ に お け る 基 礎 統 計 量 を 示 し た(Table3)。 私 立 K 大 学 は 、 入 学 試 験 に お い て 、公 募 推 薦 で の 入 学 が 多 く 見 ら れ 、国 立 O 大 学 で は 、セ ン タ ー 試 験 、一 般 試 験 を 経 て 、入 学 す る 入 試 形 態 が 多 い こ と か ら 、学 生 間 で 学 習 方 略 に 差 異 が 考 え ら れ る こ と か ら 、 本 研 究 で は 、合 格 者 の 特 徴 を 考 え 、大 阪 府 下 の 私 立 K 大 学 と 同 じ く 大 阪 府 下 の 国 立 O 大 学 で 調 査 を 行 っ た 。 Table3 各 大 学 に お け る 基 礎 統 計 量

平均 最大値 最小値

平均 最大値 最小値

自己効力感

26.8 48 9 32.4 53 10

学習の喜び

23.7 44 9 30.0 44 9

他者評価

18.7 34 7 19.3 35 7

向上心

14.7 20 4 14.0 20 4

柔軟的方略

28.8 39 16 28.6 41 17

プランニング方略

19.2 28 6 20.0 30 11

作業方略

20.3 30 6 21.0 30 12

友人リソース方略

12.6 19 4 11.0 19 4

認知的方略

23.8 34 11 25.0 33 15

私立K大学

国立O大学

3.仮 説 を も と に し た モ デ ル 図 の 検 討 ま ず 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 の そ れ ぞ れ の 関 係 を 分 析 す る た め 、 項 目 間 で 相 関 分 析 を 行 っ た(Table4)。 相 関 分 析 の 結 果 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 の 項 目 間 に お い て 、 「 学 習 の 喜 び 」と「 他 者 評 価 」に お い て 有 意 に 正 の 相 関(r= .51,p <.01)、「 学 習 の 喜 び 」 と「 向 上 心 」 に お い て 有 意 に 弱 い 正 の 相 関(r= .20,p <.01)、「 他 者 評 価 」と 「 向 上 心 」 に お い て 有 意 に 正 の 相 関(r= .52,p <.01)が 見 ら れ た 。

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9 Table4 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 の 相 関 分 析 結 果 他者評価 向上心 学習の喜び r .507** .203** 他者評価 r .517** N=188 * p<.05 ** p<.01 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 と 自 己 効 力 感 尺 度 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 の そ れ ぞ れ の 関 係 性 を 分 析 す る た め 、学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 つ の 下 位 尺 度 と 自 己 効 力 感 尺 度 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 の 得 点 の 間 で 、 相 関 分 析 を 行 っ た(Table)5。 Table5 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 と 自 己 効 力 感 尺 度 、達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 の 相 関 分 析 結 果 学習の喜び 他者評価 向上心 柔軟的方略 プランニン グ方略 作業方略 友人リソー ス方略 認知的方略 自己効力感 r .421** .312** .200** .223** .263** .191** -.029 .287** 学習の喜び r .507** .203** .290** .311** .280** .008 .477** 他者評価 r .517** .226** .201** .138 .252** .252** 向上心 r .354** .312** .273** .266** .246** 柔軟的方略 r .766** .600** .311** .618** プランニング方略 r .624** .266** .685** 作業方略 r .281** .679** 友人リソース方略 r .227** N=188 * p<.05 ** p<.01 Table5 の 通 り 、自 己 効 力 感 得 点 と 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 で あ る 、「 学 習 の 喜 び 」得 点 に お い て 有 意 に 正 の 相 関(r= .421 ,p <.01)が 見 ら れ 、「 他 者 評 価 」 に お い て 有 意 に 弱 い 正 の 相 関(r= .312, p <.01)が 見 ら れ た 。「 向 上 心 」 に お い て は 、有 意 に 非 常 に 弱 い 正 の 相 関 が 見 ら れ た(r= .200,p <.01)。こ の 結 果 を も と に 、 自 己 効 力 感 尺 度 と 達 成 目 標 傾 向 尺 因 子 分 子 し て 再 検 討 し た 下 位 尺 度 の 関 係 は 相 関 を も と に モ デ ル 図 の 検 証 を 行 っ た(Figuer3)。 Figuer3 自 己 効 力 感 と 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 相 関 図 自 己 効 力 感 向 上 心 他 者 評 価 学 習 の 喜 び *p≺.05 **≺.001 r =.421** r =.312**

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10 ま た 、自 己 効 力 感 得 点 と は 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 で あ る「 柔 軟 的 方 略 」得 点(r= .22, p <.01)、「 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 」得 点(r= .26, p <.01)、「 認 知 的 方 略 」(r= .29, p <.01) に お い て 有 意 に 弱 い 正 の 相 関 が 見 ら れ た 。 そ の 結 果 か ら 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 、 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 に お け る モ デ ル を 検 討 す る た め 、学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 つ の 下 位 尺 度 と 達 成 目 標 傾 向 尺 度 を 因 子 分 子 し て 再 検 討 し た 下 位 尺 度 の 得 点 間 で 重 回 帰 分 析 を 行 っ た 。重 回 帰 分 析 の 結 果 、学 習 の 喜 び か ら 、柔 軟 的 方 略(R²= .166, β =.264,p<.01)、 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 (R²= .155, β = .305, p<.001) 、 作 業 方 略 (R² =.130,β = .307, p<.001)、 認 知 的 方 略 (R²= .244, β = .468, p<.001)の そ れ ぞ れ に 対 し て 、 影 響 を 与 え て い る と い う 結 果 を 得 た(Figuer4)。 Figuer4 学 習 の 喜 び と 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 と の 重 回 帰 分 析 ま た 、 他 者 評 価 か ら 、 友 人 リ ソ ー ス 方 略(R²= .090, β = .237, p<.05)に 対 し て 影 響 を 与 え て い る と い う 結 果 を 得 た(Figuer5)。 Figuer5 他 者 評 価 と 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 と の 重 回 帰 分 析 学 習 の 喜 び β =.264** β =.305*** β =.307*** β =.468*** 柔 軟 的 方 略 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 作 業 方 略 友 人 リ ソ ー ス 方 略 認 知 的 方 略 R²= .130 R²= .155 R²= .166 R²= .090 *p≺.05 **p≺.01 ***p≺.001 R²= .244 他 者 評 価 β =.237* 柔 軟 的 方 略 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 作 業 方 略 友 人 リ ソ ー ス 方 略 認 知 的 方 略 R²= .130 R²= .155 R²= .166 R²= .090 *p≺.05 **p≺.01 ***p≺.001 R²= .244

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11 ま た 、 向 上 心 か ら 柔 軟 的 方 略(R²= .166, β = .345, p<.01)、 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 (R²= .155, β = .309, p<.001)、 作 業 方 略 (R²= .130, β = .299, p<.001)、 認 知 的 方 略(R²= .244, β = .197, p<.01)の そ れ ぞ れ に 、 影 響 を 与 え て い る と い う 結 果 を 得 た(Figuer6)。 Figuer6 向 上 心 と 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 と の 重 回 帰 分 析 4.自 己 効 力 感 高 群 ・ 低 群 で の 学 習 方 略 の 使 用 と 達 成 目 標 傾 向 の 差 自 己 効 力 感 尺 度 の 得 点 の 高 低 が 、 ど の よ う に 、 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 つ の 下 位 尺 度 と 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 3 つ の 下 位 因 子 の 得 点 に 関 係 し て い る か を 分 析 す る た め 、 中 央 値 で 自 己 効 力 感 尺 度 を 高 群 、 低 群 に 分 け 、 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 つ の 下 位 尺 度 と 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 3 つ の 下 位 尺 度 の そ れ ぞ れ の 得 点 を 自 己 効 力 感 尺 度 得 点 の 高 群 、 低 群 の 間 で t 検 定 を 行 っ た 。 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 下 位 因 子 で あ る 、「 柔 軟 的 方 略 」、「 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 」、 「 作 業 方 略 」、「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」、「 認 知 的 方 略 」 の そ れ ぞ れ の 得 点 に つ い て 、 自 己 効 力 感 得 点 の 高 群 ・ 低 群 間 の 差 異 を 調 べ た 結 果 を Table6 に 示 す 。 柔 軟 的 方 略 得 点 (t=2.894, p<.01)、 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 得 点 ( t=3.800, p<.01)、 作 業 方 略 得 点 (t=2.473, p<.01)、 認 知 的 方 略 得 点 ( t=4.636, p<.01) の そ れ ぞ れ の 得 点 で 自 己 効 力 感 得 の 高 群 が 有 意 に 高 か っ た 。 ま た 、 友 人 リ ソ ー ス 方 略 得 点 に つ い て は 有 意 な 差 が 見 ら れ な か っ た 。 向 上 心 β =.345** β =.309*** β =.299*** β =.197** 柔 軟 的 方 略 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 作 業 方 略 友 人 リ ソ ー ス 方 略 認 知 的 方 略 R²= .130 R²= .155 R²= .166 R²= .090 *p≺.05 **p≺.01 ***p≺.001 R²= .244

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12 Table6 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 に お け る 自 己 効 力 感 得 点 高 群 ・ 低 群 の t 検 定 結 果 学習方略の使用尺度 平均値 SD 平均値 SD df t F 柔軟的方略 29.46 5.266 27.24 4.622 186 2.894** 2.855 プランニング方略 20.55 4.359 18.06 4.221 186 3.800** .079 作業方略 21.26 4.187 19.61 4.732 186 2.473** .625 友人リソース方略 11.79 3.420 11.51 3.286 186 .557 .006 認知的方略 11.79 3.420 22.45 4.875 186 4.636** .681 自己効力感高群(N=121) 自己効力感低群(N=67) N=188 * p<.05 ** p<.01 ま た 、達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 3 つ の 下 位 因 子 で あ る 、「 学 習 の 喜 び 」、 「 他 者 評 価 」、「 向 上 心 」 の そ れ ぞ れ の 得 点 に つ い て 、 自 己 効 力 感 得 点 の 高 群 ・ 低 群 間 の 差 異 を 調 べ た 結 果 を Table7 に 示 す 。 「 学 習 の 喜 び 」 得 点 (t=5.606, p<.01)、「 他 者 評 価 」 得 点 ( t=3.359, p<.01)、 に お い て 、自 己 効 力 感 得 点 の 高 群 が 有 意 に 高 く 、「 向 上 心 」得 点(t=2.054, p<.05)、 で も 自 己 効 力 感 得 点 高 群 の ほ う が 有 意 に 高 か っ た 。 Table7 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 下 位 因 子 に お け る 自 己 効 力 感 得 点 高 群 ・ 低 群 の t 検 定 結 果 目標達成傾向尺度 平均値 SD 平均値 SD df t F 学習の喜び 29.57 6.917 23.40 7.750 186 5.606** 1.471 他者評価 19.98 5.175 17.33 5.221 186 3.359** .019 向上心 14.64 3.346 13.61 3.219 186 2.054* .347 自己効力感高群(N=121) 自己効力感低群(N=67) N=188 * p<.05 ** p<.01

第 4 章 考 察

1.改 編 し た 尺 度 の 因 子 分 析 と 相 関 目 標 達 成 傾 向 尺 度 の 一 部 を 改 編 し た 20 項 目 を 因 子 分 析 し た 結 果 (Table2)の 3 因 子 が 既 存 の 目 標 達 成 傾 向 尺 度 の 3 因 子 と 合 致 し た 。 本 研 究 で は 、 モ デ ル を よ り わ か り や す く す る た め 、「 学 習 目 標 傾 向 」を「 学 習 の 喜 び 」、「 成 績 目 標 傾 向 α 」を 「 他 者 評 価 」、「 成 績 目 標 傾 向 β 」 を 「 向 上 心 」 と 改 め た が 、 本 来 、 中 高 生 向 け で あ っ た 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 が 大 学 生 に お い て も 応 用 で き る こ と が 示 唆 さ れ た と 考 え ら れ る 。 ま た 、 相 関 分 析 に お い て も 、 抽 出 さ れ た 3 因 子 に 相 関 が 見 ら れ 、 尺 度 内 の 関 連 性 も 確 認 で き た も の と 考 え る 。 2.各 大 学 の 基 礎 統 計 量 入 試 形 態 を 考 慮 し て 、 各 大 学 の 基 礎 統 計 量(Table3)を 示 し た 。 自 己 効 力 感 や 目 標 達 成 傾 向 尺 度 の 下 位 因 子 で あ る 「 学 習 の 喜 び 」 で は 、 平 均 点 に 多 少 の 差 が 見 ら れ た が 、 入 試 形 態 に よ っ て 、 学 習 方 略 の 使 用 に は 、 大 き な 影 響 が な い と い う こ と が 示 唆 さ れ た 。

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13 3.仮 説 を も と に し た モ デ ル 図 の 検 討 仮 説(Figuer2)を 仮 定 し 、学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 因 子 と 自 己 効 力 感 尺 度 、達 成 目 標 傾 向 尺 度 を 因 子 分 析 し た 3 因 子 に お け る モ デ ル 図 の 検 討 を 行 っ た 。ま ず 、 自 己 効 力 感 と 達 成 目 標 傾 向 尺 度 と の 間 で 相 関 分 析 を 用 い て 検 討 を 行 っ た 結 果 、 自 己 効 力 感 と「 学 習 の 喜 び 」に 正 の 相 関 が 見 ら れ た 。ま た 、自 己 効 力 感 と「 他 者 評 価 」 の 間 に も 、 弱 い 正 の 相 関 が 見 ら れ た (Figuer3)。 仮 説 で は 、 自 己 効 力 感 尺 度 、 で は 「 学 習 の 喜 び 」 だ け が 自 己 効 力 感 と 相 関 関 係 を 示 す と 仮 定 し た が 、 こ の 結 果 か ら 、 自 己 効 力 感 と 「 学 習 の 喜 び 」 に 関 す る 仮 説 は 証 明 さ れ た と 言 え る 。 や は り 、 勉 強 自 体 が 楽 し い と い う 動 機 づ け か ら 勉 強 に 取 り 組 む 者 は 、 勉 強 取 り 組 む こ と に 積 極 的 に な り 、 そ れ が 学 力 の 向 上 に も つ な が り 、 学 力 の 向 上 は 、 自 己 効 力 感 を 高 め る 要 因 と な っ て い る こ と が 考 え ら れ る 。他 方 で 、仮 説(Figuer2)で は 仮 定 し な か っ た が 、自 己 効 力 感 と「 他 者 評 価 」が 弱 い な が ら 、相 関 関 係 を 示 す 結 果 と な っ た 。 近 年 、 教 育 分 野 に お い て も 、 褒 め る こ と 奨 励 さ れ る よ う に な っ て き た 社 会 に お い て 、本 研 究 の 結 果 か ら も 、勉 強 が 楽 し い と い う 要 因 だ け で な く 、他 者 の 評 価(本 研 究 で は 、主 に 親・ 先 生・ 友 だ ち)は 、勉 強 面 に お い て も 、自 己 効 力 感 を 高 め る 一 因 に な っ て い る こ と が 読 み 取 れ る 。 自 己 効 力 感 尺 度 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 を 因 子 分 析 し た 3 因 子 の 関 係 性 に お い て は 、相 関 分 析 を 用 い て い る こ と か ら 、 こ れ ら の 関 係 は 、 相 互 関 係 で あ る こ と が 仮 定 さ れ る が 、 勉 強 が 楽 し い と い う こ と と 他 者 か ら の 評 価 が 、勉 強 面 に お い て 自 己 効 力 感 を 高 め る 要 因 と な っ て い る こ と が 考 え ら れ る 。 こ れ ら の こ と か ら 、 勉 強 面 に お け る 自 己 効 力 感 は 、 学 習 自 体 が 楽 し い と い う 勉 強 に 関 す る 直 接 的 な 動 機 づ け と 、 勉 強 す る こ と で 他 者 か ら 評 価 さ れ た い と い う 間 接 的 な 動 機 づ け に よ っ て 高 め ら れ て い く と 考 え ら れ る 。 自 己 効 力 感 と 「 向 上 心 」 に も 、非 常 に 弱 い 相 関 が 見 ら れ た が 、そ の 相 関 が 非 常 に 弱 い こ と か ら Figuer3 に は 関 係 性 を 示 さ な か っ た 。 こ れ は 、 こ こ で 仮 定 す る 「 向 上 心 」 が 、 よ い 成 績 を 取 り た い と い う 動 機 づ け か ら く る も の を 想 定 し て い る こ と か ら 、 予 備 校 が 乱 立 し 、 よ い 成 績 を 取 り よ い 大 学 に 入 る こ と や よ い 就 職 先 を 探 す た め に 、 年 々 、 就 職 活 動 が 激 化 し て い る 現 代 社 会 の 情 勢 を 鑑 み る と 、 そ れ ら の 動 機 と 自 己 効 力 感 と の 関 係 性 を 安 易 に 切 り 離 す こ と は 難 し い と も 考 え ら れ る が 、 少 な く と も 、 本 研 究 に お い て は 、「 向 上 心 」 よ り も 、「 学 習 の 喜 び 」 や 「 他 者 評 価 」 の ほ う が 、 勉 強 面 に お け る 自 己 効 力 感 に 影 響 を 与 え る も の と 考 え ら れ る 。 ま た 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 を 因 子 分 析 し た 3 因 子 が 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 因 子 に ど の よ う に 影 響 し て い る か を 分 析 す る た め に 重 回 帰 分 析 を 行 っ た 結 果 、「 学 習 の 喜 び 」が「 柔 軟 的 方 略 」、「 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 」、「 作 業 方 略 」、「 認 知 的 方 略 」 の そ れ ぞ れ に 対 し て 、 影 響 を 与 え て い る と い う 結 果 を 得 た (Figuer4)。 仮 説 で は 、「 学 習 の 喜 び 」 が 多 様 な 学 習 方 略 の 使 用 に 影 響 を 与 え る と 仮 定 し た が 、「 学 習 の 喜 び 」は「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」に は 影 響 を 与 え て い な か っ た 。 こ れ は 、 勉 強 自 体 が 楽 し い と い う 動 機 か ら 勉 強 に 取 り 組 む 者 に と っ て 、 勉 強 と は あ く ま で 個 人 で 行 う も の で あ っ て 、 使 用 す る 学 習 方 略 に お い て も 、 友 人 を 介 し た 学 習 方 略 は 、 そ れ ほ ど 大 き な 影 響 力 を 持 た な い 可 能 性 が 考 え ら れ る 。ま た 、「 他 者 評 価 」と「 向 上 心 」が「 作 業 方 略 」と「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」 に 影 響 を 与 え る と 仮 定 し た が 、「 他 者 評 価 」は「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」に の み 影 響 を 与 え (Figuer5)、「 向 上 心 」 は 「 学 習 の 喜 び 」 と 同 様 に 「 軟 的 方 略 」、「 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 」、「 作 業 方 略 」、「 認 知 的 方 略 」 の そ れ ぞ れ に 対 し て 、 影 響 を 与 え て い る

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14 と い う 結 果 を 得 た (Figuer6)。「 他 者 評 価 」 は 「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」 し か 影 響 を 与 え て い な か っ た と い う 結 果 は 、「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」の 質 問 項 目 の 性 質 上 、友 人 と 共 に 勉 強 を 行 う と い う よ り は 、 ど ち ら か と い う と わ か ら な い と こ ろ を 教 え て も ら う よ う な ニ ュ ア ン ス が 見 ら れ る た め 、 勉 強 に 関 し て 、 あ ま り に も 他 者 の 評 価 を 気 に し て し ま う と 、 他 者(こ こ で は 友 人 )に 頼 り き り に な っ て し ま い 、 多 様 な 学 習 方 略 を 使 用 す る 学 習 習 慣 が 身 に 付 き に く い 可 能 性 を 示 唆 し て い る と 言 え る 。ま た 、 「 向 上 心 」 は 「 学 習 の 喜 び 」 と 同 様 に 「 軟 的 方 略 」、「 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 」、「 作 業 方 略 」、「 認 知 的 方 略 」の そ れ ぞ れ に 対 し て 、影 響 を 与 え て い る と い う 結 果 を 得 た 。 こ の 結 果 は 、 本 研 究 に お い て は 、 よ い 成 績 を 取 り た い と 思 う 者 が 、 勉 強 自 体 が 楽 し い と い う 動 機 か ら 勉 強 に 取 り 組 む 者 と 同 じ よ う な 学 習 方 略 の 使 用 の 構 造 を 持 っ て い る と い う こ と を 示 唆 し て い る 。本 研 究 で は 、「 向 上 心 」が よ い 成 績 を 取 り た い 、 よ い 就 職 先 ・ 進 路 に 行 き た い な ど の 動 機 が 想 定 さ れ た こ と か ら 、 多 様 な 学 習 方 略 を 使 用 せ ず 、「 作 業 方 略 」 と 「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」、 つ ま り 、 実 際 に 作 業 的 な 学 習 方 略 と 友 人 を 介 し た 学 習 方 略 を 用 い る こ と を 仮 定 し て い た が 、 実 際 に は 、 よ い 成 績 を 取 る こ と や 、 よ い 就 職 先 ・ 進 路 を 目 指 す 者 は 、 多 様 な 学 習 方 略 を 用 い て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。ま た 、「 向 上 心 」が「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」に 影 響 を 与 え な か っ た 結 果 は 、 よ い 成 績 を 取 る こ と や 、 よ い 就 職 先 ・ 進 路 を 目 指 す た め に は 、 友 人 も ま た 競 争 す べ き 相 手 で あ る と い う こ と を 示 唆 し て い る と 考 え ら れ る か も し れ な い 。 4.自 己 効 力 感 高 群 ・ 低 群 間 の 学 習 方 略 の 使 用 と 達 成 目 標 傾 向 の 差 自 己 効 力 感 尺 度 の 得 点 の 高 低 が 、 ど の よ う に 、 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 つ の 下 位 尺 度 と 中 央 値 で 自 己 効 力 感 尺 度 を 高 群 、 低 群 に 分 け 、 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 つ の 下 位 尺 度 の そ れ ぞ れ の 得 点 を 自 己 効 力 感 尺 度 得 点 の 高 群 、 低 群 の 間 で t 検 定 を 行 っ た 結 果(Table6)、1% 水 準 で「 柔 軟 的 方 略 」、「 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 」、「 作 業 方 略 得 点 」の そ れ ぞ れ の 得 点 で 自 己 効 力 感 得 の 高 群 が 有 意 に 高 く 、「 認 知 的 方 略 」が 自 己 効 力 感 得 点 低 群 の ほ う が 有 意 に 高 い と い う 結 果 を 得 た 。 こ の 結 果 か ら 、 自 己 効 力 感 の 高 群 は 低 群 と 比 較 し て 、「 柔 軟 的 方 略 」や「 プ ラ ン ニ ン グ 方 略 」と い う メ タ 認 知 的 な 学 習 方 略 を 使 用 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ れ は 、 自 己 効 力 感 の 高 い 者 は 自 己 効 力 感 が 低 い 者 と 比 較 し て 、計 画 的 に 勉 強 に 取 り 組 む 姿 勢 を 持 ち な が ら も 、 自 分 の 状 態 に 合 わ せ て 柔 軟 に 学 習 の 進 め 方 を 変 更 で き る こ と が 示 唆 さ れ た と 言 え る 。ま た 、「 認 知 的 方 略 」が 自 己 効 力 感 得 点 高 群 の ほ う が 有 意 に 高 い と い う 結 果 は 、 自 己 効 力 感 の 高 い 者 は 自 己 効 力 感 が 低 い 者 と 比 較 し て 、 理 解 す る こ と や 集 中 力 な ど の 学 習 課 題 に 取 り 組 む 上 で 、 個 人 の 認 知 的 な 働 き を 重 視 し て 学 習 し て い る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 自 己 効 力 感 尺 度 の 得 点 の 高 低 が 、 ど の よ う に 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 因 子 分 析 し た 3 つ の 下 位 因 子 の 得 点 に 関 係 し て い る か を 分 析 す る た め 、中 央 値 で 自 己 効 力 感 尺 度 を 高 群 、 低 群 に 分 け 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 3 つ の 下 位 尺 度 の そ れ ぞ れ の 得 点 を 自 己 効 力 感 尺 度 得 点 の 高 群 、 低 群 の 間 で t 検 定 を 行 っ た 結 果 (Table7)、 1%水 準 で 「 学 習 の 喜 び 」 得 点 、「 他 者 評 価 」 得 点 に お い て 、 自 己 効 力 感 得 点 の 高 群 が 有 意 に 高 く 、5%水 準 で「 向 上 心 」得 点 で も 自 己 効 力 感 得 点 高 群 の ほ う が 有 意 に 高 か っ た 。 森(2004)が 翻 訳 し た Pintrich&De Groot(1990)の 自 己 効 力 感 尺 度 は 、 い わ ば 、 学 習 場 面 に お け る 自 己 評 価 で あ る こ と か ら 、 自 己 効 力 感 の 高 い 者 は 、 自 己 の 能 力 や 努 力 に 対 し て 高 い 効 力 感 を 持 っ て い る こ と が 考 え ら れ 、

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15 こ れ ら の 結 果 は 、そ う し た 観 点 か ら 、 速 水 ・ 伊 藤 ・ 吉 崎(1989)の「 そ れ ら (学 習 す る こ と 自 体 を 目 標 と し て 勉 強 す る と い っ た 目 標 傾 向 、 他 の 人 に 承 認 さ れ た い た め に 勉 強 す る と い う 目 標 傾 向 、よ い 成 績 を と る た め に 勉 強 す る と い う 目 標 傾 向)は 能 力 絶 対 視 、 能 力 努 力 相 対 視 、 努 力 信 仰 と 名 付 け た 能 力 観 ・ 努 力 観 に 支 え ら れ て い る 」 と い う 結 果 を 支 持 す る も の で あ り 、 自 己 効 力 感 が 高 い 者 は 自 己 効 力 感 が 低 い 者 と 比 較 し て 、学 習 場 面 に お い て 自 己 を 高 く Dweck(1986)が 動 機 づ け に 影 響 を 与 え る 達 成 目 標 と し た 「 学 習 目 標 」 と 「 遂 行 目 標 」 の そ れ ぞ れ に 高 い 動 機 づ け を 持 っ て い る と 考 え ら れ る 。

第 5 章 総 合 考 察

本 研 究 で は 、学 習 に お け る 自 己 効 力 感 の 尺 度 と し て 森(2004)が 翻 訳 し た Pintrich & De Groot(1990)の 自 己 効 力 感 尺 度 を 用 い 、達 成 動 機 の 尺 度 と し て 、速 水・伊 藤 ・ 吉 崎(1989)の 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 一 部 を 本 研 究 の 調 査 対 象 者 で あ る 大 学 生 に 適 し た 表 現 に 改 編 し 、再 度 因 子 分 析 し 、因 子 名 を 、わ か り や す く す る た め 、「 学 習 の 喜 び 」、「 他 者 評 価 」、「 向 上 心 」 の 3 つ と し た も の を 用 い 、 学 習 方 略 の 使 用 に 関 し て の 尺 度 と し て 、 佐 藤 ・ 新 井(1998)の 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 下 位 尺 度 の 5 因 子 を 用 い て 、 そ れ ら の 尺 度 間 の 関 係 性 の モ デ ル 図 を 仮 説 と し て 作 成 し 、 そ の モ デ ル 図 を 検 討 す る こ と を 主 な 目 的 と し た 。 本 研 究 で は 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 は 中 高 生 向 け の 質 問 項 目 が 含 ま れ て い る こ と も あ り 、 大 学 生 の 実 情 に 合 う よ う に 、 少 し 内 容 を 改 編 し た が 、因 子 分 析 の 結 果 の 3 因 子 が 既 存 の 目 標 達 成 傾 向 尺 度 の 3 因 子 と 合 致 し た 。 本 研 究 で は 、 モ デ ル 図 の 検 討 を よ り わ か り や す く す る た め 、「 学 習 目 標 傾 向 」 を 「 学 習 の 喜 び 」、「 成 績 目 標 傾 向 α 」 を 「 他 者 評 価 」、「 成 績 目 標 傾 向 β 」 を 「 向 上 心 」 と 改 め た が 、 速 水 ・ 伊 藤 ・ 吉 崎(1989)の 達 成 目 標 傾 向 尺 度 は 、 大 学 生 を 調 査 対 象 と し た 研 究 に お い て も 、 十 分 に 、 信 頼 性 、 妥 当 性 を 持 っ た 尺 度 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 モ デ ル 図 の 検 討 に お い て は 、4 章 の 考 察 で も 述 べ た よ う に 、 自 己 効 力 感 と 達 成 動 機 の 間 に は 、 勉 強 自 体 が 面 白 い と い う 動 機 づ け は 、 本 研 究 に お い て は 、 自 己 効 力 感 に も っ と も 大 き な 相 互 作 用 を 与 え て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ の こ と は 、 勉 強 自 体 が 楽 し い と い う 動 機 づ け か ら 勉 強 に 取 り 組 む 者 は 、 勉 強 取 り 組 む こ と に 積 極 的 に な り 、 そ れ が 学 力 の 向 上 に も つ な が り 、 学 力 の 向 上 は 、 自 己 効 力 感 を 高 め る 要 因 と な っ て い る こ と が 考 え ら れ る 。 ま た 、 勉 強 自 体 が 面 白 い と い う 動 機 づ け と 同 時 に 、 他 者(本 研 究 で は 、 主 に 親 ・ 先 生 ・ 友 だ ち )か ら 評 価 さ れ た い と い う 動 機 づ け も 、 弱 い な が ら 、 自 己 効 力 感 と の 間 に 相 互 作 用 を 与 え て い る こ と を 示 さ れ た 。 こ の 結 果 か ら は 、 勉 強 が 楽 し い と い う 要 因 だ け で な く 、 他 者 の 評 価(本 研 究 で は 、 主 に 親 ・ 先 生 ・ 友 だ ち )は 、 勉 強 面 に お い て も 、 自 己 効 力 感 を 高 め る 一 因 に な っ て い る こ と が 読 み 取 れ る 。 こ う し た 関 係 は 、 達 成 目 標 傾 向 尺 度 の 3 つ の 下 位 尺 度 の そ れ ぞ れ の 得 点 を 自 己 効 力 感 尺 度 得 点 の 高 群 、低 群 の 間 で t 検 定 を 行 っ た 結 果 、1%水 準 で 「 学 習 の 喜 び 」 得 点 、「 他 者 評 価 」 得 点 に お い て 、 自 己 効 力 感 得 点 の 高 群 が 有 意 に 高 か っ た と い う 結 果 か ら も 、 自 己 効 力 感 が 、 勉 強 自 体 が 楽 し い と い う 動 機 づ け や 他 者 か ら 評 価 さ れ た い と い う 動 機 づ け が 、 自 己 効 力 感 と 密 接 に 関 係 し て い る こ と を 示 唆 し て い る と 言 え る 。 一 方 で 、 達 成 目 標 傾 向

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16 尺 度 の 3 つ の 下 位 尺 度 の そ れ ぞ れ の 得 点 を 自 己 効 力 感 尺 度 得 点 の 高 群 、低 群 の 間 で t 検 定 を 行 っ た 結 果 、5%水 準 で「 向 上 心 」得 点 で も 自 己 効 力 感 得 点 高 群 の ほ う が 有 意 に 高 か っ た が 、 自 己 効 力 感 得 点 と 「 向 上 心 」 得 点 の 間 に は 、 非 常 に 弱 い 相 関 関 係 し か 示 さ な か っ た た め 、モ デ ル 図 に は 相 互 作 用 と し て 記 載 し な か っ た 。「 向 上 心 」 が 、 よ い 成 績 を 取 り た い と い う 動 機 か ら く る も の で あ る こ と か ら 、 予 備 校 が 乱 立 し 、よ い 成 績 を 取 り よ い 大 学 に 入 る こ と や よ い 就 職 先 を 探 す た め に 、年 々 、 就 職 活 動 が 激 化 し て い る 現 代 社 会 の 情 勢 を 鑑 み る と 、 そ れ ら の 動 機 と 自 己 効 力 感 と の 関 係 性 を 安 易 に 切 り 離 す こ と は 難 し い と も 考 え ら れ る が 、 森(2004)が 翻 訳 し た Pintrich&De Groot(1990)の 自 己 効 力 感 尺 度 は 、 い わ ば 、 学 習 場 面 に お け る 自 己 評 価 で あ る と 考 え る と 、自 己 効 力 感 が 高 い 者 は 自 己 効 力 感 が 低 い 者 と 比 較 し て 、 よ い 成 績 を と り た い と い う 動 機 づ け を 高 く 持 っ て い る が 、 よ い 成 績 を と り た い と い う 動 機 づ け に お け る 、「 よ い 成 績 」や「 よ い 進 路・よ い 就 職 先 」と い う よ う な「 よ い ~ 」 の 「 よ い 」 と 部 分 に は 、 個 人 の 考 え 方 に 応 じ た 個 人 差 が あ り 、 勉 強 自 体 が 楽 し い と い う 動 機 づ け や 勉 強 す る こ と で 他 者 か ら 評 価 さ れ た い と い う 動 機 づ け ほ ど 強 く は 自 己 効 力 感 に 反 映 さ れ な い も の と 考 え ら れ る か も し れ な い 。 達 成 目 標 傾 向 尺 度 を 因 子 分 析 し た 3 因 子 が 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 因 子 に ど の よ う に 影 響 し て い る か を 分 析 す る た め に 重 回 帰 分 析 を 行 っ た 結 果 か ら 、「 学 習 の 喜 び 」は 、学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 因 子 で 、「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」 以 外 の 多 様 な 学 習 方 略 を 使 用 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。「 学 習 の 喜 び 」が「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」に 影 響 を 与 え て い な い こ と に つ い て は 、 勉 強 自 体 が 楽 し い と い う 動 機 づ け が 、 本 来 的 に 他 者 か ら の 評 価 な ど の 他 者 と の 関 係 性 の 上 に 成 り 立 っ て い る 動 機 で な い こ と か ら 、 勉 強 自 体 が 楽 し い と 感 じ て い る 者 に と っ て 、 学 習 場 面 に お い て 、 友 人 と 何 か を 共 有 す る 必 要 が な い こ と を 示 唆 し て い る と 考 え ら れ る 。 そ の 上 で 、 勉 強 自 体 を 楽 し い と い う 動 機 づ け が あ る た め に 、 多 様 な 学 習 方 略 の 使 用 に 影 響 を 与 え て い る と 考 え ら れ る 。 こ の こ と は 、「 他 者 評 価 」 が 学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 因 子 で 、「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」 に し か 影 響 を 与 え て い な い こ と か ら も 示 唆 さ れ て い る と 考 え ら れ る 。 つ ま り 、 過 剰 に 他 者 の 評 価 を 気 に す る こ と が 、 学 習 方 略 に 使 用 に 関 し て 、 極 端 に 、 他 者(こ こ で は 友 人 )を 介 し た も の に 偏 っ て し ま う 可 能 性 が 本 研 究 で 示 唆 さ れ た と 言 え る 。 他 者 か ら 評 価 さ れ た い と い う 動 機 づ け が 自 己 効 力 感 に 相 互 作 用 を 与 え て い る こ と は 、 本 研 究 で も 明 ら か に な っ た が 、 他 者 の 評 価 を 意 識 す る こ と が 過 剰 に な っ て し ま う と 、 学 習 方 略 の 使 用 と い う こ と に 関 し て 言 え ば 、 学 習 方 略 の 使 用 の 選 択 肢 を 狭 め て し ま う 可 能 性 が 示 唆 さ れ た と 言 え る 。 ま た 、「 向 上 心 」が「 学 習 の 喜 び 」と 、学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 因 子 に 対 し て 、 同 じ 構 造 で 影 響 を 与 え て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ う し た 結 果 は 、 自 己 効 力 感 と 達 成 動 機 に 関 係 よ り も 、 予 備 校 が 乱 立 し 、 よ い 成 績 を 取 り よ い 大 学 に 入 る こ と や よ い 就 職 先 を 探 す た め に 、 年 々 、 就 職 活 動 が 激 化 し て い る 現 代 社 会 の 情 勢 を 如 実 に 表 し て い る と 言 え る か も し れ な い 。 つ ま り 、 自 己 効 力 感 と い う 、 自 己 評 価 と は 別 の 次 元 で 、 本 研 究 で 研 究 対 象 と し た 大 学 生 に は 、 よ い 進 路 ・ よ い 就 職 先 を 探 す た め に は 、 多 く の 場 合 、 当 然 の よ う に 学 力 試 験 が あ り 、 よ い 進 路 ・ よ い 就 職 先 に 進 学 ・ 就 職 す る た め に は 、 多 様 な 学 習 方 略 が 必 要 で あ り 、 よ い 成 績 を 取 り た い と い う 動 機 づ け を 持 つ 者 は 、 入 学 試 験 や 入 社 試 験 を ク リ ア す る た め の テ ク ニ ッ ク と し て 多 様 な 学 習 方 略 を 使 用 す る こ と を 指 導 さ れ て い る こ と が 考 え ら れ る の で は な

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17 い だ ろ う か 。「 向 上 心 」が「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」に 影 響 を 与 え て い な い こ と も 、現 代 の 大 学 生 の 実 情 を 表 し て い る と 考 え る こ と が で き る か も し れ な い 。 先 に 述 べ た よ う に 、「 向 上 心 」が「 学 習 の 喜 び 」と 、学 習 方 略 の 使 用 尺 度 の 5 因 子 に 対 し て 、 同 じ 構 造 で 影 響 を 与 え て い る こ と が 本 研 究 で は 示 唆 さ れ た 。 し か し 、 同 じ 構 造 を し て い て も 、「 向 上 心 」 が 「 学 習 の 喜 び 」 と 同 様 に 、「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」 に 影 響 を 与 え て い な い こ と に つ い て は 、「 学 習 の 喜 び 」が「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」を 与 え て い な い こ と と は 違 う 解 釈 が で き る か も し れ な い 。 つ ま り 、 勉 強 自 体 が 楽 し い か ら と い う 動 機 づ け を 持 ち 、 学 習 場 面 に お い て 、 友 人 と 何 か を 共 有 す る 必 要 が な い と 考 え ら れ る 者 と は 違 い 、 よ い 成 績 を と り た い と い う 動 機 づ け を 持 つ 者 に と っ て 、 他 者(こ こ で は 友 人 )は 入 学 試 験 ・ 入 社 試 験 の 競 争 相 手 で あ り 、 そ の 他 者 を 介 し た 学 習 方 略 を 使 用 す る こ と は 、「 友 人 リ ソ ー ス 方 略 」は 、よ い 成 績 を と り た い と い う 動 機 づ け を 持 つ 者 に と っ て は 、 敬 遠 し が ち な 学 習 方 略 だ と 考 え ら れ る か も し れ な い 。 本 研 究 で は 、 大 学 生 の 学 習 に お い て 、 学 習 方 略 使 用 、 達 成 動 機 、 自 己 効 力 感 の 関 係 性 を モ デ ル 図 の 検 討 を い う 方 法 で 探 っ て き た が 、 自 己 効 力 感 が 高 く 、 勉 強 自 体 が 楽 し い と い う 強 い 動 機 づ け を 持 ち 、 多 様 な 学 習 方 略 を 使 用 し な が ら 学 習 に 取 り 組 め る こ と が も っ と も 望 ま し い と い う の が 、 大 多 数 の 意 見 で あ る と 考 え る 。 し か し 、本 研 究 を 進 め る 上 で 、重 要 な ウ エ イ ト 占 め た SRL の よ う に 、自 分 自 身 の 学 習 過 程 に 能 動 的 に 関 与 し 、 自 ら の 状 態 を 能 動 的 に モ ニ タ リ ン グ し 、 コ ン ト ロ ー ル し て 、 よ り 効 果 的 に 学 習 す る こ と は 成 績 な ど の 学 習 成 果 に 有 効 で は あ る が 、 畑 野(2010)が Csikszentmihalyi(1990)の フ ロ ー 理 論 の 例 を 挙 げ て 指 摘 し て い る よ う に 、SRL の モ デ ル に お い て 循 環 的 な サ イ ク ル も 学 習 に 対 す る す べ て を 説 明 す る も の で は な く 、 本 研 究 で 行 っ た 大 学 生 の 学 習 に お け る 学 習 方 略 使 用 、 達 成 動 機 、 自 己 効 力 感 の 関 係 性 を モ デ ル 図 の 検 討 に お い て も 、 仮 説 と し て 、 筆 者 が 想 定 し た モ デ ル 図 に も 、 多 々 、 検 討 の 余 地 が あ り 、 ま た 、 モ デ ル 全 体 を 検 証 し て い く こ と が 今 後 の 課 題 で あ る と 考 え る 。 さ ら に 研 究 を 発 展 さ せ て い く こ と が 必 要 で あ る と 考 え る 。 ま た 、 本 研 究 で 作 成 し た モ デ ル 図 に お い て 、 自 己 効 力 感 と 強 い 相 互 関 係 を 示 さ な か っ た 「 向 上 心 」 が 、 自 己 効 力 感 と 相 互 作 用 を 示 し た 「 学 習 の 喜 び 」 と 学 習 方 略 の 使 用 に 関 し て 、 同 じ 構 造 を 示 し た こ と に 関 し て 、 な ぜ 、 そ う い っ た 結 果 に な っ た の か に 関 し て 、 今 後 、 さ ら に 研 究 を 発 展 さ せ て い き た い と 考 え る 。

謝 辞

本 研 究 の 調 査 際 し て 、 関 西 福 祉 科 学 大 学 社 会 福 祉 学 部 臨 床 心 理 学 科 の 鎌 田 次 郎 教 授 に は 数 々 の ご 指 導 賜 り ま し た 。 ま た 、 大 阪 大 学 人 間 科 学 研 究 科 赤 井 誠 生 教 授 に は 快 く 調 査 に 協 力 く だ さ っ た 上 、 数 々 の ご 教 授 い た だ き ま し た 。 ま た 、 デ ー タ 整 理 に 際 し て 、 関 西 福 祉 科 学 大 大 学 院 2013 年 度 鎌 田 ゼ ミ の 皆 様 に は ご 協 力 い た だ き ま し た 。 こ こ に 記 し て 御 礼 申 し 上 げ ま す 。

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文 献

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参照

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