• 検索結果がありません。

10~20

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "10~20"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

コンクリートダムにおけるクラック等の劣化が堤体の安定性に与える影響

独立行政法人土木研究所 正会員 岩下 友也 ○大舘 渉

1.はじめに

わが国のダム建設は1960年代から1970年代にピークを迎 えており,これらのダムが今後完成後

50

年を迎え,老朽化 に伴う機能の低下等の問題の発生が予想される.そんな中,

ダム本体における各種劣化・損傷の将来的な進行度予測に関 しては,研究段階にあるのが現状である.このことを踏まえ 本研究において,実際のコンクリートダムにおける劣化事象 の分析を行い,その内の特にクラックがダム本体の安全性に 与える影響度分析を行った.

2.ダム本体の劣化・損傷事象の抽出

(1)劣化事象の抽出資料

国土交通省が所管するダムでは,施工後

10~20

年,また は前回実施後の

10~20

年を目安に総合的な安定性を確認す る「総合点検」を実施している.本研究ではその総合点検よ り,ダム本体部の劣化事象を抽出することとした.なお,デ ータは,総合点検を開始した昭和

59

年度~平成

22

年度まで 実施した延べ

128

基のコンクリートダムの総合点検結果を対 象とした.

(2)劣化事象の抽出

近年の総合点検で使用されている評価指標に基づき,延べ

128

基のコンクリートダムの劣化事象を劣化の進行程度別に 整理することとした.総合点検の評価指標は劣化事象を

A,B,C

3

段階に分け,評価

A

は劣化が進み緊急の対応が必 要なもの,評価Cは早急な対応が不要なもの,評価

B

はそれ らの間としている.各評価の指標を表-

1

に示す.

評価区分毎にダム本体に生じた劣化事象を抽出し,内訳を 図-

1

に示す.同図より,評価

A

では「漏水」,評価

B

およ び評価

C

では「クラック」,「漏水」による劣化事例が多い結 果であった.なお,堤頂部(天端道路構造物)等は堤体の安 定性に直接的影響が少ないことから,本検討の対象外とした.

3.劣化がダムの安定性に与える影響の解析的検討

(1)劣化事象の選定

総合点検の調査結果より,漏水及びクラック(水平打継目 の劣化も含む)による劣化形態が最も多いことがわかった.

これらの劣化事象のうち,漏水については,堤体ジョイント 部を除けばクラック等が原因で発生する劣化事象である場合 が多いと考えられるため,クラック等と同様な劣化事象とし て扱わないこととした.これより,安定性の解析的検討に用 いる劣化事象は施工不良や経年的な劣化による打継ぎ目に沿 ったクラックを想定した,“水平クラック”を選定した.

(2)解析基本条件

クラックを考慮した安定解析は,クラック部を含む堤体ブ ロックの

”滑動”と ”転倒 ”について, Henny

の式を用いた”滑動 安全率”,及び堤趾部における転倒モーメントと抵抗モーメン トの比による”転倒安全率”によって評価することとした.

安定性検討に用いる堤体モデル形状は堤高

100m,上流面

勾配鉛直,下流面勾配は滑動安全率4程度,かつ上流端鉛直 応力が圧縮側となるように

1:0.8

に設定した(図-2).こ の際,基礎岩盤のせん断強度は既往ダムの事例より2.16MPa,

内部摩擦係数は1.0とした.主な解析条件を表-2に示す.

表-1 総合点検の評価指標

A

現在支障が生じており、

緊急に対策を講じない と、ダム本体やゲート等 の安全性,機能が確保で きないもの。

B

現状では支障は生じてい ないが、早急に対策を講 じないと数年の内にダム 本体やゲートなどの安全 性や機能に支障が生じる おそれがあるもの。

C

現状では支障は生じてい ないが、このまま放置す ると将来、ダム本体や ゲート等の安全性や機能 および日常管理業務に直 接または間接的に影響を 及ぼすと思われるもの。

図-1 評価別の劣化事象発生頻度

表-2 解析条件

項 目 設定値

堤 高 100m

設計震度 0.12(強震帯)

対象水位 堤体上流面クラック:常時満水位 NWL90.0m 堤体下流面クラック:空 虚

考慮しない

下流水位 地表面に一致(WL0m)

堆 砂 考慮しない

キーワード ダム,劣化,クラック,安定解析,点検

連絡先 〒305-8516 茨城県つくば市南原

1-6

(独)土木研究所 水工研究グループ

TEL 029-879-6781

評価C

0 20 40 60 80 100 120 140

漏水 排水異常 開き・ず 離石灰) 遊離石灰 鉄筋露出 摩耗 剥離 計器測値異常 変形

劣化事象

頻度

上流面 下流面 監査廊

洪水吐き ピア 評価B

0 4 8 12 16 20 24

漏水・湧水 排水異常 開き・ず クラ 遊離石灰 鉄筋露出 摩耗・洗掘 剥離・剥落 計器 変形・はら出し

劣化事象

頻度

上流面 下流面 監査廊

洪水吐き ピア 評価A

0 2 4 6 8

漏水 排水異常 開き (遊離石灰) 遊離石灰 鉄筋露出 摩耗 剥離 計器測値異常 変形出し

劣化事象

頻度

上流面 下流面 監査廊

洪水吐き ピア

漏水

クラック 漏水

漏水 クラック

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑345‑

Ⅵ‑173

(2)

(3)クラック条件の設定

クラックの配置条件は“堤体上流面”と“堤体下流面”

とし,高さ方向では着岩付近(コンクリートと基礎岩盤の 境界ではない),着岩から20m,40m,60m,80mの5ケース,

クラック深さは

0m

から最大で堤敷幅の

1/2

の範囲で設定 した(図-2では堤体上流面のクラックを表示した). クラック面のコンクリートのせん断強度は,土木研究所 で実施した予め亀裂面を設けたコンクリート供試体(20cm

×20cm×20cm)による一面せん断試験結果1)の最小値と 最大値を参考に,

0.10MPa,1.13MPa

(摩擦抵抗係数は

1.0

) の

2

ケースを設定した.未亀裂部分のコンクリートのせん 断強度は既往ダムの事例より

2.45MPa(同 1.0)とした.

また,堤敷きの揚圧力は図-3に示すとおり作用させた.

図-2 クラックの配置モデル(クラック深は一例)

図-3 揚圧力の作用モデル

(4)解析結果と考察

図-4 にクラック深さと滑動安全率の関係を示す.同図 より,以下に示す傾向が認められた.

・滑動安全率は,同一クラック深では,クラックの発生 標高が高いほど大きく,低いほど小さいことから,ク ラックの発生標高が低標高ほど,堤体の安定性に与え る影響は大きい.

・クラック発生標高が低いほど,クラック面におけるコ ンクリートのせん断強度低下による滑動安全率への 影響は小さい.

・本解析モデル及び解析条件において,クラック標高が 着岩付近(0m)のケースでは,クラック深が約

15m

に 達すると,滑動安全率が

4

程度まで低下する.

なお,図-

4

では省略したが,着岩から 80m(クラック 上流面)のケースの滑動安全率は 20~40 程度の大きな値で あり,上述した傾向に沿った値であった.また,下流面ク ラックの計算結果は水位条件が空虚時であるから揚圧力が 作用しないため,50 以上の大きな値であった.

図-4 クラック深さと滑動安全率の関係

図-5 にクラック深さと転倒安全率の関係を示す.同図 より,以下に示す傾向が認められた.

・同一クラック深では,クラックの発生標高が高いほど 転倒安全率は大きく,低いほど転倒安全率は小さくな ることから,クラックの発生標高が低標高ほど,堤体 の安定性に与える影響は大きい.

・本解析モデル及び解析条件において,クラック標高が 着岩付近(0m)のケースでは,クラック深が約

25m

に 達すると,転倒安全率が

1

程度まで低下する.

なお,図-5 では省略したが,下流面クラックの計算結 果は滑動安全率と同様の理由より,13 以上の値であった.

図-5 クラック深さと転倒安全率の関係

4.まとめ

本論文では,はじめに既設ダムの劣化事象を整理し,そ の内ダム堤体に発生したクラックが,ダムの安定性に及ぼ す影響について解析的検討を行った.水平クラックはその 発生位置が低いほど堤体の安定性に与える影響が大きく,

またクラックの発生位置が低いとクラック面のせん断強度 の低下による安定性への影響が小さいことがわかった.

本論文の安定解析手法は,「河川管理施設等構造令」に準 じた静的解析によった.今後は非線形動的解析手法を用い て,大規模地震発生時のクラック進展に関する検討を行う 予定である.

謝 辞

本研究に際し,各地方整備局等及び道府県のダム管理所には,

総合点検資料を提供していただきました。ここに謝意を表します.

参考文献

1) 岩下友也,倉橋宏,佐々木晋,山口嘉一,佐々木隆:コンクリ ートダムの亀裂分離ブロックにおける地震時挙動の個別要素 解析,土木学会地震工学論文報告集 vol.29,2007 年 8 月 他 クラック部 未亀裂部

計算断面 クラック部に作

用する揚圧力が 上昇する可能性 があるから,

揚圧力係数 1.0

未亀裂部はコンクリ ート内であるから,

揚圧力係数 1/3

堤体下流水深 0 水深 h

貯水位 90.0m ダム高

100m

1:

0. 8

計算断面

計算断面

計算断面

計算断面 クラック

発生範囲

着岩から 60m

着岩から 40m

着岩から 20m 着岩付近(0m) 着岩から 80m

計算断面

堤敷長の 1/2

上流側クラック

0.000 2.000 4.000 6.000 8.000 10.000 12.000 14.000 16.000

0 5 10 15 20 25 30 35 40

上流側クラック深さ(m)

滑動安全率Fs

滑動安全率(着岩から60m)0.10MPa 滑動安全率(着岩から40m)0.10MPa 滑動安全率(着岩から20m)0.10MPa 滑動安全率(着岩付近0m)0.10MPa 滑動安全率(着岩から60m)1.13MPa 滑動安全率(着岩から40m)1.13MPa 滑動安全率(着岩から20m)1.13MPa 滑動安全率(着岩付近0m)1.13MPa 堤敷長の1/2(60m)

同(40m)

同(20m) 同(0m)

上流側クラック

0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 3.000 3.500 4.000

0 5 10 15 20 25 30 35 40

上流側クラック深さ(m)

転倒安全率

転倒安全率(着岩から80m)

転倒安全率(着岩から60m)

転倒安全率(着岩から40m)

転倒安全率(着岩から20m)

転倒安全率(着岩付近0m)

堤敷長の1/2(80m)

同(40m) 同(20m)

同(0m) 同(60m)

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑346‑

Ⅵ‑173

参照

関連したドキュメント

施工前の軌道状態を表‑1 に示す。軌間については、 後述のレール小返り等によって動的にはさらに大き なものであったと推定され、走行安全性確保の面で も重大な問題を持っていた。 表‑1 高低

B 案においては、表-1 に示す作業について同一間合での施工を 要するため、施工当日の工程調整が重要な管理項目となる。当日

保守間合を確保するため着発変更を実施し、約 4 時間の 間合において施工した。また、軌道狂い進み量なども考 慮し、作業箇所の選定を行った。特に今回は、富山構内

国土交通省 国土技術政策総合研究所 正会員 笛田 俊治,宮武 一郎,坂本 俊英 社団法人日本建設機械化協会 施工技術総合研究所 正会員 藤島

2000 年代後半から始まったサブサハラ・アフリカ諸国の経済成長は、金融危機の影響を受けな がらも、すでに 10

20年を経て当時の流行を振り返ると、合理的選択ア プローチの方は、後述するように数理モデルという形

2013 年 9 月 30 日(月)から 10 月 5 日(土)の 1 週間に中 央図書館、戸山図書館、理工学図書館、所沢図書館にて 実施した LW では、9

(4) 今後、無症状の児童生徒に対する安全安心 PCR 検査は実施いたしません。府内在住者で