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Academic year: 2021

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(1)

認知症への対応

Ⅰ.はじめに

認知症の原因疾患と治療可能性

その他 頭部外傷 薬物中毒 感染 クロ イッ ツフ ェル ドヤ コブ AIDS 梅毒 脳血管障害 脳梗塞 脳出血 動脈硬化 変性疾患 アルツハイマー病 レビー小体病 前頭側頭型 認知症

(2)

治療可能な認知症

• 頭蓋内病変:腫瘍、血腫、正常圧水頭症、感 染症(脳炎、髄膜炎など) • 脳の機能低下を引き起こす身体疾患:低酸 素、低血糖、甲状腺機能障害、腎不全、肝不 全、ビタミン欠乏、膠原病、薬剤中毒、脱水、 低栄養・・・ • うつ病性仮性認知症

早期診断の重要性

• 治療可能な病気を見逃さない – 内分泌障害、脳腫瘍、うつ病・・・ – 薬の誤った使い方 • 早期であれば、 – 患者自身が自分の病気を理解できる – 自分の将来を自分で準備できる→成年後見制度、 地域福祉権利擁護事業、その他 – 医療、福祉機関との信頼関係が作れる

認知症診断

• 精神医学的問診 • 身体的スクリーニング • 神経心理学的検査 • 画像検査 – 形態画像:CT、MRI – 機能画像:SPECT、PET • 決め手は? 熟練した専門医の勘!

(3)

診断後の認知症医療

• 認知症以外に持病がないとき – 専門病院に継続通院 • 予後不良が予測されるとき、家族の負担が大きいとき – かかりつけ医に通院、必要な時専門病院 • 進行していて身体マネジメントが主 • 家族や本人に積極的な治療意欲がないとき • 認知症以外に重篤な身体合併症があるとき – かかりつけ医を中心にして、身体合併症の専門 病院、認知症専門病院を結ぶ

診断後の介護保険サービス

• 「要支援」=介護予防サービ – (介護予防)介護サービス – 介護予防事業 • 「要介護」=介護サービス – 在宅介護 – 施設介護 – 地域密着型サービス

社会的支援

• 地域生活支援事業(障害者自立支援法) • 自立支援医療制度(障害者自立支援法) • 精神障害者保健福祉手帳(精神保健福祉法) • 障害基礎年金・障害厚生年金(各年金保険法) • 日常生活自立支援事業(社会福祉法) • 成年後見制度(民法・任意後見法) • 生活保護制度(生活保護法)

(4)

診断後の支援

家族 患者 その他の 社会保障 私的ネットワーク 医療 介護 地域の ボランティア 地域のインフォーマル・ネットワーク

和光病院の外来治療プログラム

• 診断、薬物療法、カウンセリング:医師、CP、 PSW、外来看護師 • 認知リハビリテーション:CP • 家族支援:PSW、CP – 家族教室 – 家族の集い • 社会啓発 – 公開講座 – 認定看護師の社会活動

Ⅱ.認知症の生物学的治療

(5)

認知症の薬物療法

• 中核症状に対して – アルツハイマー病:アリセプトで進行を10ヶ月ほ ど遅らせることができる – 脳血管性認知症:梗塞、出血を予防することに よって進行を防ぐ • 周辺症状に対して – 抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠導入薬 など – 専門家によるモニターが重要

アルツハイマー病のメカニズム

1,異常なタンパクが生まれる 2,異常なタンパクが増殖する 3,神経細胞の活動低下 4,神経細胞死 アル ツ ハ イ マ ー 病

アルツハイマー病の治療の

ストラテジー

1,異常なタンパク合成を阻害 2,異常なタンパクの増殖を 防ぐ=分解する 3,細胞活性を高める アルツハイマー病

(6)

Ⅲ.認知症の社会心理学的治療

(1)中核症状に対する

認知リハビリテーション

リハビリテーションの実例

• 失われた機能を代償するリハビリ – 認知症があると、自分で代償法を習得しにくい – 治療的環境を作る(ハードウェア) – 治療的ケアをする(ソフトウェア) • 失われつつある機能をできるだけ保持する – 失敗しても傷つかない人間関係を作る – 柔らかいコミュニケーションを続ける →正確な診断とアセスメント+人間の理解

メモリー・トレーニングプログラム

(和光病院版)

• 患者と主介護者を対象とした1時間プログラ ムを、費用と時間を節約した簡易版に • 毎週(隔週)30分 – 患者、家族に、障害の理解を促す – 患者に、記憶強化プログラムを行う – 電子カルテを通じて、メモトレの経過と主治医の 診療との連携を深める (東京学芸大学・松田修)

(7)

認知リハビリ施行群の経過

(松田修) 【治療内容】 【抗認知症薬のみ】 【抗認知症薬+認知リハビリテーション】 (15ヶ月) (46ヶ月) 測定時期(ヶ月) (セッション回数) 抗認知症薬開始 認知リハビリテーション開始 (56歳) (57歳)

註) 言語性記憶 = 日本版Wechsler Memory Scale Revisedの言語性記憶指標. MMSE = Mini-Mental State Examinationの合計得点.

図3.リハ開始後の量的指標の得点変化 46 (8) (24) (64) (88) (136) (160) (184) 16 22 34 40 認知リハ前 2 6 -80 -60 -40 -20 0 20 40 -8 -6 -4 -2 0 2 4 言語性記憶 MMSE 認 知 リ ハ 開 始 前 の 成 績 と の 差 言語性記憶 MMSE

(1)記憶障害を補う外的補助

• 問題:買い物に行くたび同じ物を買ってくる • 対策:買ってはいけない物、のメモを買い物 かごの 買ってくる物 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 買ってはいけない物:納豆 (2) 記憶障害・実行機能障害を補う外的補助 問題:電話に出るが、メモができない 対応:伝言を受ける側が必要な情報を得られるメモ ( )さんから (太郎さん・花子さん)に 電話がありました。

(8)

3)時間の見当識障害を補う外的補助

• 問題:1日中、何回も「今日は何日、今日は何 するの?」ときかれて疲れる • 対応:同じ日めくりカレンダーを家のあちこち に貼って使う

日めくりカレンダー

(松田修) 平成

14 2

年 月

13日

水曜日

~本日の予定~ 1.( )時 2.( )時 3.( )時

4)しまい忘れに対応する外的補助

• 問題:外出から戻ると、携帯電話、財布、時計、 乗車パス等をあちこちにしまう。外出の時、 持っていくものが見つからないで大騒ぎ • 対策:玄関の必ず見る場所にしまう場所を決 める(その人の個人的な生活状況によって異 なる)

(9)

メモリーバッグ

(松田修)

Ⅳ.認知症の社会心理学的治療

(2)

認知症患者に対する 心理的ケア

認知症への心理療法

• 目的:認知症が引き起こす不安や焦燥を和ら げ、傷ついた自我の再生を促す • 方法:回想法、音楽療法、芸術療法、書、朗 読等 – 失われた自己表現の能力を引き出す – 豊かなコミュニケーションを再生する – 自己表現→自己への認識が変わる

(10)

認知症の人との

コミュニケーションを深めるために(1)

• 患者の気持ちになってみよう – 中核症状を主観的に体験してみよ – 「私は忘れない!」は、病識のない証拠ではない • 患者の立場で周囲を見回してみよう – 介護する側に支障がなければ、患者にも支障が ないわけではない • そうしてみれば、安易な「受容」や「共感」など できるはずはない

認知症の人との

コミュニケーションを深めるために(2)

• 言葉だけが手段ではない – 障害の種類、程度によって様々なコミュニケー ション手段 – 会話ができなくなっても、歌や、決まり文句は出て くる – 非言語的コミュニケーション:音楽、美術、身体運 動、マッサージ・・・日常介護まで • 認知症独特の記憶の構造を活用する – 例:回想法 回想法の導入:男性→名刺→会話のきっかけ

(11)

手の感触、腕の運動、太鼓の音で気持ちを表現する

心理療法の基礎

• コミュニケーションは双方向 – 患者の思いと治療者の思いが重なり合ってコミュ ニケーションができる – 患者の表現より、自分の表現をしっかり見つめる • 短期間に成果を求めない – 人の気持ちはそう簡単に変わらない • 短時間の「セラピー」から日常的なケアへ – 治療的な生活環境を作れば「療法」は要らない

Ⅴ.生活の援助

(12)

援助の前提

• 「できることをしてあげたためにできなくなる」 心配より、失敗して傷つくことを避ける • アルツハイマー病患者の多くは、自分の失敗 の原因を自分でモニターし、修正することが 難しい→周囲の人がその役割を担う

家事等、日常の生活行動の援助

• 一つ一つの作業はできてもそれを結びつける マネジメントができなくなる(実行機能障害) – さりげなく、マネジメントを代行する=大脳皮質 (主として前頭葉の機能)を援助者が代行する • 作業記憶はかなり進行しても保たれる – 不安、緊張を避け、無意識な流れを妨げない援 助(意識するとできなくなる)=機能不全を起こし ている大脳皮質にじゃまをさせない

みそ汁を作ろう

豆腐とネギのみそ汁を作ろう 鍋で出汁をとる 火を止めて出汁を濾す 再び火に掛け豆腐を入れる 味噌を溶く ネギを入れる 冷蔵庫から豆腐を取り出す

(13)

一緒にみそ汁を作ろう!

豆腐のみそ汁を作ろう 鍋で出汁をとる 再び火に掛け豆腐を入れる 冷蔵庫から豆腐を取り出す 何作ってるんだっけ? 冷や奴だったかな?? 豆腐のみそ汁 みそ汁の具 おいしそうな みそ汁ができたね! ???

Ⅵ.基本的

ADLの援助

ADLの介助

• なぜできないかを考える – 記憶、見当識など、中核症状の評価 – 目の前の現象を自分の言葉で記述 – 障害が起こる理由を考える • 本人は現在の行動パターンを維持したまま中 核障害をクリアできる方法を探す • 本人を傷つけない援助の仕方を考える • 病気の正確な評価、診断+その人の理解

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日常生活動作の援助

• 「失禁に対してどう対応すればいいですか?」 という質問には答えようがない – 「失禁」という言葉には手がかりが乏しい • 「昨日の夜中、お手洗いに行こうとして玄関で 排尿してしまった。昼間は、間違えないの に・・・・」という記述なら対応のヒントがある – 観察したことを、日常的な言葉で表現すると豊か な情報が得られる

失禁(日常生活動作の援助)

• トイレの場所が分からない – 見当識障害 → 見当識を補う仕組み • トイレを汚す、服を汚す – 動作が拙劣 → 状況を観察・原因に応じた対応 • 間に合わない – 尿意のコントロールができない → リハビリパン ツ、習慣に合わせた誘導 • 尿意、便意がない – おむつの対応が必要

排泄に関するその他の問題行動

(日常生活動作の援助)

• 頻回な尿意 – 失禁(=ボケた)への恐怖 → トイレマップ、パッ トの使用 • 汚れた下着を隠す – 失敗を隠したい、自分で始末したい → 失敗さ せない工夫、恥をかかせない対応 • 弄便・便食 – 排せつ介助をする、おむつ交換を適切にする

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Ⅶ.

BPSDへの対応

BPSDへの対応(1)

• 理由のない行動はない! – 「Aさんが、特別な理由もなくBさんを殴りました」 • 行動の理由を読み切れるものではない – 「Cさんが興奮するのはお嫁さんの対応が原因」 • 好きにさせておくのが良い介護ではない! – 「Dさん、今日も一日病棟内徘徊でした」 • 常に最善の対応を狙ってはいけない – 「Eさんには、もっとふさわしい施設がある」

BPSDへの対応(2)

• 身体機能、精神機能の評価 – 原因の想定、対応の選定、いずれにも不可欠 • 観察・記述 – 分からないなら黙ってそばにいて観察する – 「徘徊」、「暴力」などの専門用語ではなく、具体的 に、自分の言葉で情況を描写する • 対応の優先順位をチェックする – 眼前の危険評価→危険回避→本質的解決

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BPSDを引き起こす原因

• 患者の不安 – 私はだれ? ここはどこ? 今はいつ? • 脳の器質的損傷 – 「性的逸脱行動」:前頭葉障害による抑制低下、側頭葉障 害による性欲亢進 • 素質 – 妄想的になりやすい、落ち込みやすい、神経質 • 心因・環境因 – 家族、治療者、介護者も「環境」 – 医療、介護などによる機能制限、物理的制限など

精神症状の例:妄想への対応

財布をしまい忘れた 記憶障害 財布がなくなった 素質因 心理・環境因 その他 事実 中核症状 ゆがんだ外界認知 ものとられ妄想 嫁の家族が怪しい 被害妄想 嫁が盗んだ

行動障害への対応:例 徘徊

• 「帰宅が遅れて夜になり、家に帰ろうとして道 に迷った」→地理的見当識障害を補う • 「夕方になると、両親が心配しているから家に 帰るといって遠い郷里に歩いて帰ろうとする」 →意識の混濁を治療 • 「買い物に行き、レジで支払い中にいなくなっ た」→目を離さない • 「目的なく歩き続ける」→・・・・

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Ⅷ.終わりに

援助するプロが考えるべきこと

• 正確な知識と高い技術を維持する • 関連領域のサービスについて知識を持つ • 現実の対応は柔軟に – 自分の価値観で要援護者を評価しない – リスク管理をする、優先順位をつける • 介護保険、医療保険を守るのは自分の責任 – 保険者(国、自治体)、被保険者(国民・市民)、医 療機関、介護機関それぞれ応分の責任

参照

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