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青年期における「らしさ」演出のための技術情報志向について②

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(1)

茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)41号(1992)107−124      107

青年期における「らしさ」演出のための技術情報志向について② 雑誌に見る現代青年の性役割

安達喜美子*・飯岡和代**・蛯原浩司*㌔小田尚美躰・小林克宏纏 近藤芳江**・柴田純江**・田中さおり**・玉城文子紳

長谷川克巳**・塙克子**・藤咲恵榊・三次多喜子**

(1991年9.月13日受理)

Adolescents Orientation to Technical Information to Perform Like Someone(2):Modern Adolescents Gender Role in Magazines

Kimiko ADAc田*, Kazuyo IloKA**, Koli EBIHARA**, Naomi ODA**,

Katsuhiro KoBAYAsHI**,Yoshie KoNDoH**, Sumie SHBATA**,

Saori TANAKA**, Ayako TAMAK1**, Katumi HAsEGAwA**,

Katsuko HANAwA**, Megumi FuJlsAKu**, and Takiko MITsuG夏**.

(Received September 13,1991)

1 は じ め に

近年,書籍よりも雑誌の販売部数が優位にあることから「雑高書低」といわれており(桂ほか 1991),とりわけ,若者向けのマンガや週刊誌,ファッション誌が毎年数多く創刊され,まさに雑 誌時代である。この雑誌の隆盛は,単に手軽な読物で,低定価,そして読み捨てても惜しくないと

いう消費者感覚にマッチしているということだけではなく,これらの雑誌が多くの若者達を魅了す      ,

髑シの何らかの理由があるのではないかと考える。

安達ら(1988)は,その演出法によって,男性に選ばれるために,美しく魅力的な女になるため の女性達の服・髪型・生き方・思想についての情報が女性雑誌によって提供されており,そうした 個人的なことがらが,雑誌によってコントロールされているということ,そして,青年達は,時間 をかけて内面的な資質の充実を図るよりも,手軽に装える外見にとらわれていることを指摘してい る。さらに,諸橋(1990)も,雑誌は「女性らしさ」についてのマニュアルを提供し,読者である 女性がそのように志向しようとするということが述べられ,このことは,女性文化に限らず,男性 文化をも含めた現代の潮流であるということについても展望されている。

また,かつての性役割ステレオタイプは,男性は「知性と行動」,女性は「美と従順」であった

*茨城大学発達心理学研究室(〒310 水戸市文京2丁目1番地).

**?髑蜉w教育学部教育心理学選修.

(2)

(柏木1974)。しかし,今日では,男性にも「やさしさや外見を飾ること」が,一方,女性にも

「包容力や行動力」が求められるようになってきた。このことから現代青年の性役割習得にも変化 が現れてきていると思われる。

加えて現代は,結婚適齢期の男女比は2.2:1となっており(原・藤原1990,中野・稲増1991),

まさに男あまりの観がある時代でもある。そのような状況を反映してか,男性が女性に選ばれるた めに四苦八苦する状況が見られる。いかにして,女性の関心を獲得し,つなぎとめていくか,そし て,そのためには,どのような条件を整える必要があるのかが青年期男子の関心事となってきてい る。それを反映して,最近では,女性向けのファッション情報誌ばカこりでなく,男性向けの情報誌 の多彩さに目を見張るものがある。これらの情報誌は,安達らがすでに指摘しているように,本来 の意味での内面充実は短期間で達成するには困難であるため,それを補うための装いや演出法,つ

まり外見の装いや行動のしかたに関する情報提供が中心になっていると考えられる。

数多く出版されている雑誌が描き出そうとしている男性像,女性像は,かつての性役割ステレオ タイプに見られる像とは異なり,新たな像になっていくのではないか。「やさしい」男性,「行動 力」のある女性が求められるようになってきていると感じられるものがある。

ところで,雑誌の中の「〜らしく」見せるための演出情報は,本来,その人の人格的資質や力量 として問われるべきことがらを,それらの有無に関係なく,よいイメージを作り出すための技術に 関するものであるといえる。そして,これらの情報が,内面的資質や能力,力量にあまり自信のな い若者達の不安をかきたて,より一層,これらの情報による「それらしい」イメージ作りや演出法 の習得へと動機づけていると考えられる(安達ほか1988)。

こうした現象の背景には,第一に教育が受験技術の修得に変質してしまった時代の申し子として,

いかに行動するかを教えてくれる情報に依存する今日の若者像があるのではないか。そのため,こ ういった若者達は,行動の指針が自分の内部になく,いつも傍らにあるマニュアルによっていると 思われる。第二に,青年をとりまく人々,とりわけ,大人達の資質的な貧しさを意味しているので はないか。つまり,青年達の身近に彼らの社会化のエージェントたり得る人物や同一視の対象にな り得る人物がいなくなっているのではないか。第三には,情報化社会,大衆社会の状況がますます 進行していることがあげられる。メディアを通して与えられる情報が社会的意味をもち,同時に,

誰もが「他の人と同じよう」でありたいとする願望をもっている中で,拠って立つ所のものをもた ない不安定な青年達においてその傾向は強くなっている。

以上のことが,青年達に情報あるいは,それが作り出しているイメージに依存しやすい心理を生 み出している要因であろう。そして,それが,装い方や飾り方,あるいは諸々の演出法を教えてく れる,言い換えれば,演出技術の情報を提供してくれるファッション情報誌への注目という結果を 生んでいるものと考えられる。

安達らが指摘しているように,今日の青年達には,社会化に役立つ同一視の対象となる人物が欠 如していることに加え,青年らしい「ふるまい」のモデルとなる同年配の人間関係の希薄さも見ら れる。そして,性役割の過渡期の中で,青年達は自らの行動の基準としての性役割を見い出せない でいる。したがって,青年達はそれらを補うために,雑誌の情報に依存し,その中の「らしく装わ れた」モデルを同一視し,そのようにふるまうことで,心理的な安定を保っていると考えられる。

青年をとりまく「意味ある他者」として,とりわけ,雑誌の中のモデルが大きな比重をもっている

(3)

安達他:青年期における「らしさ」演出のための技術情報志向        109

といえる。それゆえ,その中の言葉は青年達にとって意味をもち,「あんなふうに,こんなふうに」

ふるまうことで,自分を作り出していると考えられる。

以上のことを考慮したうえで,我々は,若者達の間で多く読まれているファッション雑誌を取り 上げ,そこに盛り込まれる記事をそのタイトルと内容から詳細に分析することで,演出させようと している男性像,女性像を探り,そこから,今日の青年達に期待されている性役割を探り出すこと をねらいとする。

2 研 究 目 的

ファッション雑誌の特集記事のタイトル及び内容から,それらの雑誌が描いている男性像及び女 性像を捉え,現代の性役割の様相を明らかにする。

3 仮    説

1)雑誌は,青年達が社会化するための情報を提供するという役割を果たしており,とくに近年,

選ばれる側にまわった男性に対して,「いかにふるまうか」のふるまい情報が男性誌に多く見ら れ,女性誌は女性をより美しく見せるための装い技術情報が多いであろう。

2)ファッション情報の内容は,女性誌,男性誌とも外見をいかに「〜らしく」見せるかという装 い技術情報のほうが,単に流行の製品などを提示するカタログ情報よりも多いだろう。

3)雑誌において今日求められている女性像は,これまでの古典的な性役割ステレオタイプに見ら れる従順で家庭を守る消極的なタイプから,行動的で包容力のある積極的なタイプへと移り変わ っているだろう。また,男性像もたくましく,力強いというステレオタイプなものからやさしさ とカッコよさをもったものへと変わってきているであろう。

4)仮説3のような変化の結果,男性と女性の性役割が接近し,その境界が薄れて来ているだろう。

4 方    法

調査資料:調査開始の1990年5月から10月に発行された月刊及び隔週雑誌のうち,男性誌,女性誌 各5誌を調査資料に選んだ。

男性誌… MEN S NON−NO, MENS CLUB, Checkmate, popeye,

Hot−Dog PRESS

女性誌… JJ, non−no, ViVi, Can Cam, SAY

手続き:青年期の男性・女性に大きな影響を与えているものと考えられるファッションをはじめ,

様々な情報が掲載されている雑誌に注目し,その中でも16才から22才ぐらいの読者層が中心となり,

(4)

かつ発行部数が多い各5誌を選び,収集した。分析の対象となった情報誌は表1の通りである。

表1 各雑誌の発行部数,対象年齢,名前の由来,分析の対象にした冊数

雑誌名  溌行部    対象年令        名前の由来  1創刊 分析冊数

MEN S 50万 15〜25才 性誌のnon−noの男性版。  1昭61 7冊

iNON−NOi , i

MENS  } 35万      1 20才(学生中心) 降前の通り。 昭40i 6冊

・ CLUBI i     l       l

Check皿ate 不明     不明 「千エス」の王手のこと。   i昭59 4冊 popeye 65万     不明 漫画の「ポパイ」からとった。 昭52 11冊 Hot−Dog

@PRESS

60万i18才前後(高、大学生)

@ 1

昭54  9冊

@ 1 JJ      68万    20才前後

@     i アルファベットを使った名前が

@   いいと思ったから。

昭53  3冊

@ i(10−12月号)

on−no@  l150万    コ6〜22才

P   ;  i

アイヌ語の 白い花 という意味。昭46i 11冊

@       1 1(5/20−10/20)

ViVi   i 55万・    20才 に無し。音感がよかったから。1 昭聾塑量)

Can Ca皿  i70〜80万 戟@  li    i

18〜23才

       Can:「I can」で、可能、トライ。 昭57

i大学生中心、OL1,2年生)1Ca皿;「キャンパス」の意味。  l      l       ・1で詞能にしていってしま列

i 行動派のお嬢さんのこと。 i

ISAY 161万 社会人1、2年生 弛語の「言う」の意味。「あなたが Mう雑誌」

昭58116冊(瑚号)

5 結     果

(1)集計の方針

①まず,本研究は雑誌がねらう男性像及び女性像を捕らえ,現代の性役割の様相を明らかにする ために,あらゆる情報の中から特に外見的な情報と内面的な情報とを取り上げ㌧各雑誌の目次から

(a)ファッション情報(b)ふるまい情報(c)その他の情報に分類した。さらにファッション情報は

「〜らしく」見せるための装い技術情報とその他のカタログ情報に分類した。なお,分類法とその 代表的なキーワードは以下の通りである。

(a)ファッション情報

・装い技術情報…  「〜らしく」見せるための演出的情報 例)〈男性誌〉「カッコよく見せる」

「さわやかに見せる」

「男らしく見せる」etc…

〈女性誌〉「大人っぼく見せる」

「元気に見せる」

「ミニでさっそうと演出」etc…

(5)

安達他:青年期における「らしさ」演出のための技術情報志向         111

・カタログ情報… 流行等に関するファッション情報 例)〈男性誌〉「この夏のおすすめ」

「超人気ブランド」

「トレンド」et◎∵

例) 〈女性誌〉 「この夏流行る〜」

「上品な定番アイテム」

「秋の厳選11着」etc3・・

(b)ふるまい情報

相手に好まれるための態度や行動を志向させるような,内面に関わる情報

例)〈男性誌〉「マナー」「好感が持てる〜」「頼りがいのある」「精神的ハンサム」

〈女性誌〉「アプローチ法」「淑女になるための〜」「東京でもてる女」

(c)その他の情報

上記のa,bのいずれにも分類できない,趣味や対談などの情報

次に,今日求められている男性像・女性像を探求するために,(a)ファション情報(装い技術情 報・カタログ情報)(b)ふるまい情報の記事の中で用いられた形容句の上位を抜き出した。②具体 的な男性像・女性像を捉えるために男性誌・女性誌それぞれにおいて,各カテゴリーごとに記事 のタイトル及び内容から形容句を抜き出した。

(2)結果の考察

①各雑誌の特徴

各雑誌の情報構成は図1に示されているが,雑誌の特徴をさらに明確に捉えるために,各雑誌が 取り上げている記事を比較してみると,その特徴は以下のようにまとめられる。

《MEN S CLUB》

今後流行となるファッションや,イギリス,アメリカ,フランス(パリ)のファッションなど,

主にファッション情報を取り上げている雑誌である。また,ブレザー・スーッ等の人気ブランドの 研究が目立つ。その他F1リポートが毎月取り上げられている。

この雑誌は,いかに「カッコよく」,いかに「個性的」に着こなすかといった「着こなし術」を 目指したものといえる。

《MEN S NON−NO》

恋愛などに関わる情報はなく,ファッションが中心である。「個性的」な着こなし方をアドバイ

、スし,夏のカジュアル,秋冬のトラッド,あるいは「ブランド」について検討している。そして今 季の「トレンド」 (例・茶色)について研究している。そこでは,「おしゃれ」や「男の〜」 (女 性誌と区別して)が強調されている。

《Checkmate》

ファッションに関する情報が中心であるが,「人気の」,「今年風」,「最新」といった観点か

(6)

ら流行についての情報が提供されている。そしてカジュアル志向として「アメカジ」,「キレカジ」,

「ブラカジ」,「浪カジ」などが紹介され,流行りものが提案されている。またカタログ情報も多 く, 「〜大集合」,「〜図鑑」という表現が多く使われている。

《P・peye》

小物などのグッズやファッションについての情報より,ふるまいについての内容が主である。ふ るまいに関しては,女性を意識したものであり,それをマニュアル化して紹介している。同時に

「個性的」,「僕たちなり」,「自分好み」を目指すことが強調されている。また,恋愛や性に関 わる内容もあり,女性に好まれる行動や態度などの情報が中心になっている。

《H・t−D・gPRESS》

ファッションとふるまいについての内容が中心であり,それに加えて恋愛のノウハウや性に関わ る記事が多い。ファッションに関しては,買い方・着方についてのアドバイスを載せ,今季の「ト レンド」ファッションやブランドでいかに「個性的」に装うかが中心に扱われている。またふるま いに関しては,「好感が持てる」,あるいは「モテる」ための態度や行動についてのマニュアルを 紹介し,同時に「個性」を求める傾向がある。いずれにしても女性が望む「カッコよさ」,「モテ

る」男性とはどういう男性かという観点から,外見や行動面からの演出法を提供している。

《JJ》

ファッションが中心の情報誌である。他誌がカジュアルファッションを主流としている中で,本 誌は「お嬢さんスタイル」を基本としており,このスタイルにカジュアルや派手なファッションを 多少取り入れている傾向がある。またトラッド(ナチュラルトラッド)スタイルも多く掲載されて いる。これは浅野ゆう子をイメージキャラクターとして,彼女のトラッドスタイルが一つの手本と なっている。またパリやN.Y.など,外国の女の子のファッションを紹介し,取り入れていること も多い。ファッション記事のほかにはメークや化粧品の情報などがある。

《non−no》

ファッションが中心の情報誌である。他誌に比べ,「ロマンチック」なイメージや「元気」なイ メージを取り入れたファッションが多い。一つの特集の中に「スポーティな」ファッション,「上 品」なファッションなど,多様なスタイルが網羅されている。また,「この色ならこんなふうに着 る」,「この服ならこんなふうに見える」などのタイプ別に分けた「着こなしのテクニック」を紹 介することが多い。流行のものを多く紹介するところは他誌と同じだが,好ましい女性の髪形や体 型などの男性側の意見特集,恋愛に関するものが毎号掲載されている。

全体的に見ると,他誌に比べて対象年齢が低いこともあり,大人っぽさを打ち出したファッショ ンは少ない。

《ViVi》

ファッションが中心の情報誌である。まず流行であるカジュアルファッションを主とし,その代

(7)

安達他:青年期における「らしさ」演出のための技術情報志向        113

表ともいえるジーンズやミニボトムの着こなしの情報がふんだんに盛り込まれている。本来はフォ 一マルなオフィス服や,「セクシー」な服などにもカジュアルさを取り入れる傾向が見られる。季 節ごとには,流行の服や小物のリストアップがなされている(「この夏買いたい服」,「欲しい服 100」など)。

ヘアメイクの記事では「男のコの好きな〜,キライな〜」というタイトルに見られるように,男 性の目を意識した記事が多く,男性が望む女性像への接近を目標に掲げている。

ファッション以外ではダイエットに関する情報が毎号掲載され,スリムな体型への関心を強く示 す記事が見られる。

《Cah Cam》

ファッションが中心のファッション誌である。ViViと同様,ジーンズなどのカジュアルファッシ ヨンを取り入れた記事が多い。季節にあったファッションを紹介し,流行に敏感なおしゃれな女性 像を描き出す。ファッションに限らず,ヘアメイクなどにも「男のコが選んだ〜」,「男のコにほ められる〜」,「男のコに注目される〜」など男性の目を意識した記事が多く,自己の演出方法を 男性の基準で決定付けるようすがうかがえる。そのほか,恋愛情報も毎号掲載されている。

《SAY》

本誌に寄せられた体験談を中心に構成されており,主に恋愛や結婚に関する話題を取り上げてい る。そこで提供されている情報は,男性の行動のしかたや考え方,恋愛のテクニック等だが,その ほか,財テクやビジネスマナーに関することなど,多岐にわたった内容である。

その他の記事の割合は少ないが,ファッション記事であれば女っぽく,セクシーな着こなしや,

流行のファッションなどを扱う。また,対象読者を社会人とするせいか,他誌にはさほど見られな いインテリアに関する記事が,毎号一つは特集されている。

②雑誌における情報構成について

各雑誌がどのような情報を提供しているかを調べた。手続きで述べた情報分類の中から「その他」

を除いた割合を示したのが図1である。

図1を見るとボ各雑誌が提供している内容は雑誌によって偏りがあり,大別して,ファッション 情報誌とふるまい情報誌に分けられた。すなわち,男性誌では MEN S NON−NO MEN SCLUB

Checkmate ,女性誌では JJ non−no ViVi Can Cam は,カタログ情報,装い技術情報の割 合が多かったので,「ファッション情報」誌 popeye Hot』og PRESS SAY は,ふるまい情報 の割合が多かったので,「ふるまい情報」誌といえるようである。

調査した男性誌・女性誌をカテゴリー別に分類し,ページ数を示したのが表2である。またそれ をもとにそれぞれのカテゴリーの割合を示したのが図2である。図2を見ると,男性誌・女性誌と もに「カタロ列青報」が多く,とくに女性誌に多いのがわかる。また,「装い技術情報」は男性誌・

女性誌でその量(ページ数)はあまり変わらないが,「ふるまい情報」は男性誌のほうが多いのが

わかる。

これらから,雑誌は全体として「カタログ情報」を主に提供し,男性誌ではそれに加えて行動の

(8)

(単位 %)

0     10    20    30    40     50    60    70    80    90 100

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霧髪 z       z 團カタログ情報゙装い技術情報福モるまい情報

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図1 各雑誌における記事の内容の割合

(9)

安達他:青年期における「らしさ」演出のための技術情報志向         ll5

表2 調査した男性誌・女性誌の各情報の占めるページ数(広告・その他を含まない)

カテゴリー

カタログ情報 装い技術情報 ふるまい情報 計(頁)

情報誌

男 性 誌 1225 625 364.5 2241.5

女 性 誌 1724 618 182 2524

2949 1270 546.5 4765.5

(単位:%)

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女性誌

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図2 調査した男性誌・女性誌の情報カテゴリー別の割合(広告・その他を含まない)

マニュアル的な「ふるまい情報」も多く提供しているといえる。

「カタログ1青報」とは,いわば「単なるファッション情報」である。このような「単なるファッ ション情報」が男性誌・女性誌共に多いのは,青年達が美しく装い,カッコよく見せることへの志 向を強めていることを示している。

すでに安達他が指摘しているように,青年期は,自己発見の時期であり,それは同時に自己に最 も適した個性表現の手段や形式を見出す時期でもある。あえていえば,「自分に最もよく合った服」

を探す時期でもある。それゆえ,彼らにとって,「自分に合った服」の発見とその着用は,個性の 発見とその表現という意味をもつので,ファッションへの関心もまた強いのであろう。

さらに,男性誌と女性誌に掲載されている情報,つまり,カタログ1青報・装い技術情報・ふるま い情報に関して,各々を比較することで,両誌の同質性や異質性が現れ,どんな情報が重視されて いるのかを理解できると考えられる。

まず,カタログ情報に関する男性誌と女性誌の総ページ数と割合を表3にまとめた。これをもと にCR検定を行ったところ, CR=−9.69(P<.01)で,女性誌において有意に多かった。これは 男性より女性のほうが相変わらず外見を重視していること表していると思われる。美しく装うこと が女1生の性役割として存在せしめられていると共に,女性自身がそれを受容していることを示して いると言えるのではないか。

次に,装い技術情報に関する男性誌と女性誌の総ページ数と割合を示したのが表4である。これ をもとにCR検定を行ったところ, CRニ3.59(P<.01)で,男性誌において有意に多かった。こ のことは,女性だけでなく,男性もファッションに気を使い,外見を重視することが求められてい

(10)

ることを表している。近年の,男性にとって結婚難時代といわれる中で,いかにしたら女性に選ば れるかの意識を喚起させられていることを示している。多大な努力を払い,長時間かけて行わなけ れば成就できない「内面充実」よりも,むしろ手軽に,外見をいかに「〜らしく」見せるかという 技術情報に頼っている青年達の存在を物語るものであろう。

また,ふるまい情報に関する男性誌と女性誌の総 表3 カタログ情報量に関する男性誌と女性誌  ページ数と割合を表5に示した。これをもとにCR

との比較         ( )内% 検定を行った結果,CR=9.48(P<.01)で,男性 カタログ情報 誌において有意に多かった。つまり,男性誌のほう 男 性 誌 1225 (54.65)頁 がふるまい記事が多いということになる。いかにし

女  性  誌 1724 (68.30) たら女性に好まれ,モテるかという女性の注意獲得 のための情報が強調され,女性の目を意識した内容

2949

が多大に盛り込まれている。この種の情報が女性誌 CR;−9.69**

@        よりも男性誌に有意に多く見られることは,今日で は男性において,女性から選択されることが重要に 表4 男性誌と女性誌の技術情報量に関する比  なってきており,そのためにいかに「ふるまう」か

較       ()内% という情報が必要とされていると考えられる。

技術情 報 以上のことから,男性にも外見を装うことが求め

男  性  誌 652 (29.09)頁 られ,同時に装い技術・ふるまい情報が女性に比べ

女  性  誌 618 (34.49) て割合も多いことから,従来,女性が男性に選ばれ

1270 るために装い,ふるまうための情報であったものが,

今日では男性においてより重要になってきていると CR=3.59**

いえる。

ファッション情報のなかでも,流行に関するカタ 表5 男性誌と女性誌のふるまい情報量に関す  ログ晴報と,「〜らしく」見せるための装い技術情

る比較      ( )内%

報を比較し,男性誌と女性誌のファッション情報の ふるまい情報 傾向とその背景について考えてみる。男性誌のカタ

男  性  誌 364.5(16.26)頁 ログ情報と装い技術情報の総ページ数と割合を示し

女  性  誌 182 ( 7.21)頁 たのが表6で,女性誌のそれを表7に示してある。

546.5 これらをもとにCR検定を行った。その結果,男性

CR=9.48** 誌・女性誌共にカタログ情報のほうが装い技術情報 よりも有意に多く,仮説2は検証されなかった。し かしこのことは,現代青年の期待するものが,どう 表6 男性誌のカタログ情報と装い技術情報量

@ の比較         ()内% 見せるかという直接的演出情報よりも,いかに多く の「流行」や「ブランド」についての知識を得,そ

カ タ ロ グ 1225 (65。26)頁

れを身につけるかにあることの反映であろう。彼ら

装い技術 652 (34.75) は,「ブランド物」の知識や,時代の先端をいく「流 1877 (100.00) 行物」を身につけることで自己の市場性を高めよう CR=13.2258** としているとも考えられる。情報提供側からすれば,

(11)

安達他:青年期における「らしさ」演出のための技術情報志向         117

表7女性誌のカタログ情報と装い技術情報量  記事そのものがスポンサーのコマーシャルの機能を の比較      ( )内% 有しているため,いまや格好の消費者として期待さ

カ タ ロ グ 1724 (73.61)頁 れている若者達に膨大な量の「流行」や「ブランド」

装い技術 618 (26.39) に関する情報を提供することは,商業的にも大きな

2342 (100.00) 意味をもつ(富田1988)のであろう。いずれにして CR;22.854** も,今日の男性・女1生とも,カタログ情報があれば,

自分を見事に装うという目的を達成でき,自己像に 見合った服を選択することが可能になると考えられ

表8 男性誌の装い技術情報とふるまい情報量       る。

の比較       ( )内%

次に,相手に好まれるための装い情報のなかでも,

装い技術 652 (64.14)頁 外見を「〜らしく」見せる演出のための技術情報と,

ふ る ま い 364.5(35.86) そのような態度・行動を志向させるふるまい情報と

1016.5(100.00) を比較し,外見のみを装わせようとしているのか,

CR=9.01746** 内面があるかのように装わせようとしているのかを 考えてみる。男性誌の技術情報とふるまい情報の総 ページ数と割合を表8に,女性誌のそれらを表9に 表9 女性誌の装い技術情報とふるまい情報量

の比較       ( )内% 示した。これらをもとにCR検定を行った。その結 果,男性誌・女性誌共に技術情報がふるまい情報に

装い技術 618(77.25)頁

比べて,有意に多かった。このことは,好まれるた

ふ る ま い 182(22.75)

めの装い情報は,ごく表面的な装い情報であること

800(100。00) を示している。男性の行動のマニュアル化がいわれ

CR=15.4149** ているが,この結果から,選ばれるためには,女性 同様,男性も外見をどう装うかということが関心事

       となっていると言える。態度・行動などの少し負担表10男性誌のファッション情報とふるまい情

報量の比較         ( )内% の大きい装いよりも,外見的な装いのほうが,手軽 ファッション 1877 (83.74)頁 であり,効果が直接的であることが一つの要因とし

ふ る ま い 364.5(16.26) て考えられる。

さらに,男性誌・女性誌は,外見的魅力を充実さ

2241.5(100.00)

せようとしているのか,それともそれらしい行動を CR=6.75** 見せることで内面的魅力を暗示しようとしているの かを考えてみる。ここでは,流行などに関するカタ 表11女性誌のファッション情報とふるまい情  ログ情報と,「〜らしく」見せるための技術情報を

報量の比較        ( )内% まとめてファッション情報とした。男性誌のファッ ファッション 2342 (92.79)頁 ション情報とふるまい情報の総ページ数と割合を表

ふ る ま い 182 (7.21) 10に,女性誌のそれを表11に示した。これらをもと

2524 (100.00) にCR検定を行ったところ,男性誌・女性誌共に有 意にファッション情報が多かった。仮説1について CR=8.56**

@       女性誌においては支持されたが,男性誌において1ご

(12)

支持されなかった。この結果は,男性も女性も,内面的な魅力をみがくことより,外見的な魅力を 作り出すことが重視されていることを示している。以前は,女性は男性に選ばれるために外見を魅 力的に装うということがいわれていた。それが今日では,我々の予想以上に,男性も女性に選ばれ るために外見を装うようになってきたといえる。男性に「知性と行動」が求められたステレオタイ プな性役割が変化し,現代男性は,「知性・行動」よりも「外見の装い(美しさ・カッコよさ)」

が求められているということであろう。しかし,女性のほうがその傾向はまだ強いようである。女 性に「美と従順」が求められたステレオタイプな性役割が変化し,男女平等が一般化し,女性にも 行動力が求められてきているとはいっても,依然として,ステレオタイプな性役割は根強く生きて

いる。

男性も女性も外見的美しさ重視であるということは,男性も女性も他人の質を外見に求め,表面 的で無難な人間関係にとどまっているといえる。したがってこのことは,そのような男女が結婚を し,相手の本当の姿を知ったときに幻滅して,今流行の「成田離婚」につながる要因の一つとなっ ているのではないだろうか。

③異性の目を意識した記事について

技術情報,ふるまい情報では,いかに異性に美しく,カッコよく見せるか,どう魅力的に見せる かの記事が多く見られた。

男性誌についていえば,「優柔不断ではだめ,常に彼女をリードする気概で。」(popeye,8/15,

No.321),「このカッコよさは見逃せない。あと1か月,クリスマス特別企画,このテでライバル を出し抜け!」 (popeye,11/7,No.326),「恋人どうしで楽しむ聖夜なんだから気取ってちゃはじ まらない。」(popeye,12/5,No.328)などの異性の目を気にした記事は,女性をリードし,カッコ よくふるまうにはどうすれば良いか,女性に対してどのように対応したら良いかなどの「ふるまい 方」について解説していた。このような異性に注目されるよう演出するための情報は,かつては,

女性のために与えられることが多く,女性が男性の好みに合わせて行くといった風潮にあったが,

「男あまり」といわれる今日,男性が女性の好みに合わせていかなればならない状況にあるのでは ないだろうか。

一方,女性誌についてみてみると,男性誌にみられるようなふるまいのマニュアル的な記事はな く,「信じて幸せになったわたし,不幸になってしまったわたし,男のなにをどう信じたらいいの かしら?」(SAY,9月号)のような男性とのかかわりに関する体験談が主で,男性の関心を獲得す ることが青年期の女性の大きな関心事であることを示している。

このように青年達は,これらの記事を情報源あるいはマニュアルとして「どうすれば異性の関心 を獲得することができるか」,「どうすればうまく,失敗なく恋愛ができるか」,「どのように異 性と付き合っていくか」といった技術を学んでいるようである。本来,恋愛や人付き合いは内面を 充実させることによって可能となり,発展していくのであるが,現代の青年達には,それを手軽に 雑誌などから技術として学ぼうとする傾向が出てきている。そしてさらに,そのようなマニュアル がなければ行動できなくなり,一層マニュアルへの依存を強めてきているように思われる。

また,男性誌では『座談会,女の子から見た勘違いマナーいろいろ「私たちホントはこうして欲 しいの」』 (popeye,8/15,No.321)∫本音アンケート女の子200人に聞きました一女の子はこんな

(13)

安達他:青年期における「らしさ」演出のための技術情報志向        119

旅が好きなんだってサ」(popeye,10/17,No.325),女性誌では『男の本音,告白,「好きになって もすぐあきてしまう女性,会うたびに離れられなくなる女性」』(SAY,11月号〉,「結論!男の好 きなヘア,イヤな髪型」 (ViVi,7月号),「男の子が選んだ水着&小物」 (Can Cam,8月号),

『男の子にほめられる「タイトミニ」スタイルの条件』(Can Cam,9月号)というような異性の意 見を取り入れて構成された記事が目についた。つまり,具体的に女性に受け入れられるための条件 提示である。雑誌に占めるそのような記事の割合は少ないが記事の内容は,実際に異性に聞いた アンケートをもとにしたもので,異性の生の意見が反映されていた。このような記事が取り上げら れているということは,「異性(他者)の好み(考え)に合わせよう」という意識の現れであり,

確固たる個性の形成(内面の充実)がなく,物事の判断の基準を他者におく,未熟で不安定な青年 の心理を表しているのではないだろうか。

④情報から描き出される男性像・女性像および性役割について

これらの情報誌がどのような男性像・女性像を作り出そうとしているのか,どのような性役割を 意図しているのかを見るために,男性や女性をどう表現しようとしたかという観点から分析を試み

る。

そこで,男性や女1生を描くために用いられた形容句を収集して,記事の内容別に上位を示したの が表12〜14である。表14では,文献をもとに,従来の性役割と新しく出てきた性役割を表す形容句 を分け,その頻度を比較した。

表12 カタログ情報記事の中の形容句         表13 装い技術情報記事の中の形容句

()内頻度 ()内頻度

男 性 誌 女 性 誌 男 性 誌 女 性 誌

1位 最新   (5) 1位 カジュアル(39) 1位 カッコよく(4) 1位 カジュアル(14)

2位 人気の  (4) 2位個性的に (18) 2位 人気の  (3) 2位元気な  (13)

3位 トレンド (3) 3位 かわいい (11) 2位 トレンド (3) 3位 かわいい (11)

4位 カッコよく(2) 4位 トラッド (10) 4位究極の  (2) 3位上品な  (11)

4位個性派の (2) 4位 スポーティ(10) 4位 〜流(東京・ 5位 トラッド (9)

6位元気な  (9) 大阪) (2) 6位健康的に (8)

6位大人っぽい(9)

まず,カタログ情報から抜き出した形容句を見ると (表12),男性誌の場合, 「最新」 「人気」

「トレンド」が上位を占めており,流行を追ったファッション情報が多い。流行のファッションで 装うことが青年男子の関心の対象になっている。流行そのものを身につけるおしゃれさが現代の 若者に大事な条件とされているといえよう。

だが流行にのるということは周囲の人と同じ格好をするということであり,他人と違った自分 らしさ,個性を主張する現代青年の意識と行動のずれが感じられる。時代の先端としての流行を多 くの人々が同じように取り入れることで没個性的になっており,自分らしさが失われてしまう。そ のため,情報提供側もわざわざ「個性的」と銘打ったファッションを提供する。しかし,情報の受

(14)

け手である青年達がそれをすべて取り入れてしまうと「個性的」という特徴は消えてしまう。

同様に装い技術情報から抜き出された形容句を見ても,先に述べたものとほぼ同様の結果が見ら

表14 ふるまい情報記事の中の形容句

()内頻度

男   性   誌 女   性   誌

従来のもの 最近のもの 従来のもの 最近のもの

男らしい    (4) さわやか    (4) やさしい    (1) 甘える     (3)

ハンサム    (2) やさしい    (3) いたわる    (1) かけひき上手  (3)

頼りがいのある (2) 清潔感     (1) 思いやり    (1) ナチュラル   (3)

ワイルド    (2) 少年のような  (1) 素直      (1) じらす     (2)

安心感     (1) 単純      (1) しっかり者   (1) セクシー    (2)

存在感     (1) エッチな    (1) がまん強い   (1) 人に流されない (2)

知的ハンサム  (1) セクシー    (1) 大人っぽい   (1) 聞き上手    (1)

おおらか    (1) ヵッコよく   (1) ひかえめ    (1) ほめる     (1)

無邪気     (1) おっとり    (1) 男心をくすぐる (1)

地味な     (1) 大胆      (1)

かわいらしい  (1) 積極的な   (1)

健康的     (1)

明るい     (1)

さわやか    (1)

包容力のある  (1)

※表14は,抜き出した形容句が同数(1つ)のものが多かったため,全部掲載した。

れる。「カッコよく」や「人気の」,「トレンド」など,流行にのった装いで,カッコ良く見せる ことが雑誌が意図しているものである。そういったねらいのもとにカタログ情報でも流行物を中心 としたファッションが提供されいる。読者は雑誌に掲載されている数々のファッションから自分で 選択しているように見えるが実は情報に規定された「カッコよさ」や「トレンド」によって操作

されているといえる。

以上は,ファッション情報から述べられている男性像であるがふるまい情報から抜き出された 形容句を見るとどうだろうか。ふるまい情報からは,数多くの形容句が挙げられたがそれらは二 つに大別できる。一つは,以前からいわれ続けているステレオタイプな男性像ともいえる形容句

(間宮1979),そしてもう一つは,今日特有の男性像を表す形容句である。従来の男性像は形容句 からも分かるように「男らしく,知的で,頼りがいのある」というものであった。しかし,今日で はそういった特性に加え,「さわやかで,やさしく,清潔感があり,無邪気で,少年のような」男 性像が描かれている。また,「エッチで,セクシーな」要素も求められている。従来の「汗くさい 男らしさ」は今では嫌われる傾向にあり,「清潔さ」が必須条件となりつつある。このようなこと

(15)

安達他:青年期における「らしさ」演出のための技術情報志向         121

が,男性のエステ通いや脱毛処理といったことにまで発展している。これらは従来,女性の行動と して扱われてきたものだが,今の時代に求められる男性像の中心となりつつあるということ,つま り,男性の性役割の新たな特徴になりつつあるということであろうか。

次に女性誌についてみると,女性誌のほうも,カタログ情報から抜き出した形容句と装い技術情 報から抜き出した形容句がほぼ同様のものであった。女性誌の場合,流行形態が具体的に表されて いて,「カジュアル」とか「かわいい」,「元気」,「トラッド」などがその代表である。「カジ ユアル」や「元気」,「スポーティ」というのは明るさや爽やかさを強調し,それはナチュラルに つながっている。一昔前の「お嬢様」ブームに代表される女らしさや上品さといった要素が,ひか えめでおとなしい受け身的であるステレオタイプな女性の性役割であるのに対し,「カジュアル」

や「元気」というのは明るさや爽やかさ,積極性が感じられる。カジュアルファッションの代表的 なものがミニスカートであるが,ミニスカートを履くことは女性の自己主張の表現であるともいわ れており,以前に比べて女性が積極的に自己を表現するようになったことがうかがえる。

一方,「トラッド」や「大人っぽい」といった形容句もあり,落ち着いた印象を与えるファッシ ヨンも打ち出されている。また,「かわいい」という形容句は,ステレオタイプな女性役割として 最もポピュラーな言葉だが,やはりこれも根強く残っているといえる。

さらに,ふるまい情報から抜き出した形容句を見ると,男性誌同様従来のステレオタイプな女 性像を表す形容句と,今日の女性像を表す形容句とに分けられる。ステレオタイプな女性役割は

「やさしくて,素直で,かわいらしく,従順な」であり,家庭を守るタイプの控えめな女性であっ た。しかし,今日はもちろんそういった要素も少なからず求められているが,「甘え上手」,「か けひき上手」,「じらす」といった女性側からのアプローチテクニックが必要となってきているこ とを示す言葉が見られている。これらは,かつての女性が選ばれる時代においては,男性に求めら れたテクニックである。このことは女性が積極的に働きかけをし,男性を選ぶ時代となっているこ との表現なのだといえそうである。また,女性には従来男性役割の一つであった「包容力」も求め られてきている。男性側が本来の「たくましい」男性像を放棄し,中性的な「少年」となって包容 力のある女性に身をゆだねる。男性側が女性に母親性を求めているということなのだろうか。それ とも女性側が自らの母親性に訴えるような子供っぽい男性を求めているということなのだろうか。

以上のように,本研究において明らかにされた現代の男性像・女性像は,従来の性役割の特徴と はかなり異なったものになっている。本研究で取り上げられた男性誌・女性誌の各5冊は,十代後 半から二十代前半の若者に,比較的よく読まれているものばかりである。この時期,つまり,青年 期は,種々の社会的役割を自己の中に取り入れていく時期でもある(山本1978)。したがって,雑 誌から受け取る情報は,そのまま彼らの性役割獲得りための情報にも,十分なり得ると考えられる。

以下では,今までの考察をふまえ,現代の青年の性役割について考えていく。

従来の,いわゆるステレオタイプな性役割では,女性をリードしていくため,強いては社会を動 かしていくために必要な性役割がそれぞれ独立しており,一組のカップルが誕生することによって,

初めて完全なシステムになるという「相互補完的関係」が成り立っていた(東・小倉1984)のであ

る。

しかし,1960年代以降,社会的状況の変化によって,「男は仕事,女は家庭」という性役割に変 化が生じ始めた。女性の社会的進出が珍しくなくなってきた今日,男性は以前のように社会的地位

(16)

と経済力だけでは,女性の関心を得ることが困難になってきており,それに加えて,「男あまり」

現象の中で,女性が望む様々な要素を取り入れざるを得なくなった。それゆえ,女性に求められて いた要素が,男性にも多分に要求され始めたのである。このことは,「男は選ぶもの,女は選ばれ るもの」といった昔ながらのステレオタイプ的な男女の関係が崩壊しつつあることを示していると 考えられる。表14の形容句からもわかるように,「さわやか」,「清潔感」,「やさしい」,「無 邪気」に代表される「美と従順」というステレオタイプな女性役割に加えて「知性と行動」を意味 する「かけひき上手」,「人に流されない」,「積極的な」,「包容力のある」などのステレオタ

イブな男性役割が,女性に求められてきているのである(福富1985)。

しかしながら,これは,性役割の逆転ということを意味するものではない。あくまでも,従来の 女性役割に加えた「知性と行動」なのである。つまり,性役割の同質化,両性の中性化によって,

以前は「相互補完的関係」にあった男女関係よりも, 「両性具有の共存的関係」が好まれるように なってきたといえるであろう。

また,上述したことに加え,自立できず,女性に依存して,自分を包み込んでもらい,リードし てもらおうとする男性の自我の未熟さという現状もあるのではないだろうか。さらに,女性には依 然として,「可愛らしさ,セクシーさ」が求められ,若さや美しさを希求することが強調されてお り,性的魅力によってその存在が評価されるという女性のあり方には根強いものがある。いずれに せよ,現代の性役割の特徴には,ほとんど表面的な部分のみが強調され,内面的な充実を異性に求 めようとはしていない。それゆえ,現代の青年達の自我同一性の放棄が懸念される。

ところで,こうした性役割のボーダレス現象は若者だけではなく,結婚後の家族における性役割 分業にも変化をもたらしている。共働きが増え,男性も家事に参加する開放型結婚(オープン・マ

リッジ)の出現によって,家庭内でも固定的な性別分業が廃止されつつあり,役割が柔軟化する傾 向がある。

こうした社会的状況の中で,本研究で明らかになったような性役割が生まれてきたのかもしれな い。しかし,社会は今後も変化していく様相を見せている。文化によって性役割が異なるというこ とを考えると,これからも性役割の変化(同質化)は続きそうである。この点から,今日の性役割 は,従来のステレオタイプ的な性役割から,新しい性役割への移行の第一段階といえるのではない だろうか。

6 お わ り に

装い,おしゃれといえば,以前は女性の象徴であり,装うための情報を得られる雑誌は主に女性 を対象としたものであった。ところが最近は,そういったファッションを中心とした情報が盛り込 まれた雑誌は女性ばかりでなく,男性を対象とするものも数多く登場してきた。これは何を反映し ているのだろうか。本研究はこのような疑問から,現代青年に求められている男性像や女性像,ひ いては現代の性役割の様相を明らかにすることを目的として進められたわけであるが,この意図は ほぼ達成されたように思う。

従来の性役割に加えて,今日志向されている性役割は,女性には「積極的,行動的,包容力のあ

参照

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