学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2015 年 1 月 28 日(水)
報告番号:乙 第 2082 号 氏名: 橋 本 俊 彦
論文審査
担当者 主査 教授 勝村 俊仁 印
副査 教授 吉田 謙一 印
副査 教授 山本 謙吾 印 主論文の題目:
Impulsive force in the head during performance of typical ukemi techniques following different judo throws
(模範的な受身動作における頭部の衝撃力)
著 者: Toshihiko Hashimoto, Takanori Ishii, Naoyuki Okada, Masahiro Itoh 掲載誌:Journal of Sports Sciences (2014)
論文要旨:
【背景と目的】スポーツ外傷は、環境、身体、心理などの要因が複合的に身体に作用して生じる衝撃に より発生する。本研究は、柔道における外傷発生頻度が高い大外刈と、比較的低い大内刈の技の開始か ら受け身完了までのタイミングパターンを定量化し、受けにおける頭部の運動学的情報を得ることを目 的とした。【方法】8 名の男子柔道日本代表候補選手を対象とし、大外刈と大内刈それぞれの模範的な受 け身5試技について運動学的解析を行った。同期させた3台の高速度デジタルカメラで 25 の身体測定点 を撮影した。取りから受けの方向を Y 軸、鉛直方向を Z 軸、Y 軸に直交する水平軸を X 軸とする静止座 標系を定義し、Frame-DIAS を用いて測定点の二次元座標値を求めた。次にコントロールポイントの座標 値から DLT 法により各測定点の三次元座標値を算出した。得られた三次元座標値は Wells and Winter 法 により4次の Butterworth digital filter を用いて平滑化し、最適遮断周波数を 6~12 Hz に決定した。
取りが技をかけ始めた時点から受けの動作が静止した時点の分析区間を 100%として、受けの頭部の鉛 直速度、impulse、impulsive force を算出した。【結果】頭部の最下点付近での impulsive force は、
大外刈 204.82±19.95 kg・m・s-2、大内刈 118.46±63.62 kg・m・s-2で、両群間に有意差はなかった(z
=-1.75、p=0.08)が、r=0.78 と effect size は大であった。【考察と結論】受けの頭部の鉛直方向速度 は技の経過に伴い徐々に減速した。その要因としては、畳と接する身体面の増加、時間経過などで、上 肢が畳に衝く動作が最も関与していた。頭部最下点付近における頭部の impulsive force は、大内刈よ りも大外刈で大きい傾向がみられ、模範的な受け身において、大外刈は大内刈よりも受けの頭部への衝 撃が大きい技であることが示唆された。
審査過程:
1. 大外刈と大内刈の頭部への衝撃の相違に関する質問に対し、両下肢の動く方向の差により生じるも のと推察されるとの説明がなされた。
2. 頭部への衝撃力に対する下肢などの動きの影響に関する質問に対し、適切な説明がなされた。
3. 衝撃力の大きさや、急速な反対方向への動きなど外傷の発生に関与すると考えられる要因について 適切な説明がなされた。
4. 柔道以外の競技やトップアスリート以外で想定される結果や研究課題について説明がなされた。
価値判定:
本研究は、柔道の受け身における外傷の受傷機転を検討したもので、武道やコンタクトスポーツにお ける安全対策に寄与するところ大であり、学位論文としての価値を認める。