粟島地域住民の精神的健康の関連要因に関する研究
著者 志水 幸, 早川 明, 島谷 綾郁, 山下 匡将, 宮本 雅央, 小関 久恵, 嘉村 藍, 村山 くみ, 大月 和彦
雑誌名 北海道医療大学看護福祉学部紀要
号 15
ページ 21‑30
発行年 2008‑12
URL http://id.nii.ac.jp/1145/00006263/
<論文>
粟島地域住民の精神的健康の関連要因に関する研究
志 水 幸*1,早 川 明*2,島 谷 綾 郁*2,山 下 匡 将*3,
宮 本 雅 央*4,小 関 久 恵*5,嘉 村 藍*6,村 山 く み*7,大 月 和 彦*8
抄 録:本研究では、粟島地域住民の健康寿命の保持に資するべく、実態調査に基づき、精神 的健康度に影響する様々な要因の実態を把握し、精神的健康度との関連性について検討した。
その結果、以下の諸点が明らかとなった。
1)Fisherの直接確率法を用いて精神的健康度を「問題あり」「問題なし」と2群分けをし、各 指標の項目ごとに比較した結果、社会関連性指標、主観的健康感、ソーシャル・サポート、生 活満足度尺度等の多数の項目において有意な差が認められた。
2)精神的健康度を目的変数、単変量解析で有意差が認められた変数を説明変数とした重回帰 分析の結果、壮年期においては「年をとって、前よりも役に立たなくなったと思いますか」「去 年と同じように元気だと思いますか」の2項目が選択された(R2=.719、p=.000)。高齢期に おいては「あなたは現在健康であると思いますか」「請求書の支払いができますか」「元気付けて くれる人」「今の生活に、不 幸 せ な こ と が ど れ く ら い あ る 」 の 4 項 目 が 選 択 さ れ た 。(R2
=.389、p=.000)
以上の結果から、粟島地域住民の精神的健康度には、これらの項目との関連性が明らかとな った。したがって、精神的健康を考えていく上で、身体的健康からの健康増進施策を講ずるば かりではなく、社会的な活動の保持、近隣住民との助け合い、現実の生活や自己を肯定的に捉 える態度が必要である。また、他の交絡因子との詳細な検討を行う必要が示唆された。
キーワード:精神的健康度、GHQ−28、主観的健康感、社会関連性、ソーシャル・サポート、
LSI−K
緒 言
高齢者が健康で豊かに生活するためには、身体的健康 ばかりではなく、精神的健康の維持・促進をとおして健 康寿命の伸長を図ることが重要である。
予てより、われわれは、島嶼地域高齢者のライフスタ イルと健康に関する研究を積み重ねてきた1)2)3)4)5)。これ らの研究では、主観的健康感の関連要因として、社会関
連性やIADLの維持、ソーシャル・サポートの状況等が 抽出され、縦断的検討を通じて主観的健康感と社会的及 び精神的要因との関連性を明らかにしてきた。しかしな がら、健康寿命の関連要因の一つとしての「精神的健 康」に着目した研究は、今後の課題としたところであ る。WHOの定義によれば、「精神保健(mental health)
とは、生物学的(biological)、医学的(medical)、教育 的(educational)及び社会的(social)な側面から精神健 康を促進して、よりよい人間関係を作ることである」と されている。
精神的健康に着目した研究では、精神的健康が主観的 幸福感の関連要因として報告されており、家族関係、対 人関係等の社会関係やADLにも関連があることが明ら かになっている6)。精神的健康の測定には、うつ傾向を 測定する尺度やストレス反応尺度等、様々なものが存在 する。本研究で はGHQ−28(General Health Question- naire:精神的健 康 調 査 票 ) を 用 い て い る 。GHQ−28
*1:医療福祉政策学講座
*2:大学院看護福祉学研究科
*3:名古屋学院大学
*4:秋田看護福祉大学
*5:東北公益文化大学
*6:仙台白百合女子大学
*7:松本短期大学
*8:文教大学
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は、単に精神的健康をうつ傾向から測定するのではな く、身体的症状、不安と不眠、社会的活動障害、うつ状 態の4因子にもとづき、総合的に測定する尺度である。
わが国でも、中川、大坊によって標準化の手続きが行わ れて以来、単身赴任者、知的障害関連施設職員、主婦、
大学生、高校生、一般都市住民等、さまざまな対象の精 神的健康の鑑別・評価にGHQ−28が用いられてきてい る7)。
そこで、本研究では、生活様式が比較的画一化されて いる離島住民を対象に、精神的健康の関連要因につい て、ライフスタイルや社会とのつながりに着目しつつ検 討することを目的とした。
! 研究方法
1.調査対象
新潟県岩船郡に属する粟島浦村(孤立小型離島)に居 住する40歳以上の住民222名を対象とした。粟島浦村に 居住する40歳以上の住民222名のうち、160名(回収率 72.1%)より回答を得た。
2.調査方法
調査は、粟島浦村役場より住宅地図の提供を受け、
2007年8月29日から9月2日の5日間で実施した。原則 として配票留置法による調査を行ったが、回答者の事情 により記入することが困難であった場合や、調査対象者 の希望があった場合にのみ、訪問面接調査を行った。
3.調査内容
質問項目は、1)基本属性等に関する6項目、2)地 域との関わりに関する10項目、3)地域の福祉に関する 11項目、4)民生委員に関する2項目、5)福祉のまち づくりに関する2項目、6)介護サービス等に関する4 項目、7)社会関連性指標(以下、ISI(1))に関する18項 目8)、8)健康生活習慣(以下、HPI(2))に関する10項 目9)、9)健康状態(主観的健康感に関する1項目含 む)に関する8項目10)、10)ソーシャル・サポート(以 下、SS(3))に関する16項目11)、11)精神的健康(GHQ−
28(4))に関する28項目12)、12) 楽 観 性(5)に 関 す る12項 目13)、13)生活満足度尺度K(以下、LSI−K(6))に関する 9項目14)、14)老研式活動能力指標(以下、ADL(7))に 関する9項目15)(13項目)の計145項目を設定した。
4.分析方法
回収した質問紙票をもとに表計算ソフト(Microsoft
Excel)を用いてデータセットを作成し、統 計 ソ フ ト
(SPSS12.0J for Windows)によって集計・解析を行っ
た。単変量解析として、目的変数を精神的健康度(2群 分け)、説明変数をその他の関連する要因として分割表 を作成し、Fisherの直接確率法を用いて関連の有意性を 検討した。また、単変量解析の結果により有意な関連が 確認された項目を説明変数として、重回帰分析(ステッ プワイズ法)による多変量解析を行った。
5.倫理的配慮
倫理的配慮として、1)研究協力をいつでも辞退する ことができること、2)辞退した場合でも対象者が不利 益を被ることはないこと、3)調査で得た情報は研究目 的以外には使用せず、統計的処理を施し個人情報の保護 を徹底することをアンケートの際に対象者に説明し、同 意が得られた者から回答を得た。
" 結 果
1.基本属性の分布状況
表1に基本属性と精神的健康度の分布状況を示した。
性 別 に つ い て は 、 高 齢 期 で 女 性 の 割 合 が 高 く45名
(67.2%)、男性は22名(32.8%)、壮年期でほぼ同数 で、女性36名(48.0%)、男性39名(52.0%)であ っ た。壮年期・高齢者の年齢では、壮年期では平均年齢
(Mean±SE)は53.3±6.5、高齢期では平均年齢(Mean
±SE)は73.4±6.3であった。同居者 の 有 無 に つ い て は、壮年期・高齢期ともに極めて高い同居率を示し、壮 年期では75名(100%)、高齢期では57名(85.1%)とな っていた。職業については、壮年期の就業率が90.7%と 高くなっており、高齢期の就業率は34.3%であった。精 神 的 健 康 度 の 分 布 に つ い て は 、 壮 年 期 の 平 均 得 点
(Mean±SE)は6.5±6.3、高齢期の平均得点(Mean±
SE)は7.2±5.2であり、また、精神的健康について壮
年期では63名(84.0%)、高齢期では51名(76.1%)の 回答者が「問題なし」と感じていた。壮年期と比較し、
高齢期では精神的健康度の平均得点が増加する傾向にあ った。
2.精神的健康度と各指標との関連(Fisherの直接確率 法)
表2に精神的健康度とISIとの関連を示した。壮年期 では「生活は規則的ですか」の項目において有意な差が 認められた。高齢期では「自分は社会に何か役に立つこ とができると思いますか」の項目において有意な差が認 められた。
表3に精神的健康度とHPIとの関連を示した。壮年 期、高齢期ともに「栄養のバランス」の項目において有 意な差が認められた。高齢期のみでは「自覚的ストレス
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量」の項目において有意な差が認められた。
表4に精神的健康度と現在の健康状態との関連を示し た。「あなたは現在健康であると思いますか」で、壮年 期、高齢期ともに、肯定的な回答をした群において有意 な差が認められた。
表5に精神的健康度とSSとの関連を示した。壮年期
では「病気で2〜3日寝込んだ場合の看病」「元気付けて くれる人」「お金を貸してくれる人」「用事を頼める人」な どの項目の、サポート提供者がいる群において有意な差 が認められた。高齢期では「用事を頼める人」の項目 の、サポート提供者がいる群において有意な差が認めら れた。
壮年期 高齢期
GHQ28傾向2群わけ p値 GHQ28傾向2群わけ p値 問題なし群 問題あり 問題なし群 問題あり 家族との会話 62( 98.4) 11( 91.7) 55( 98.2) 16( 94.1)
家族以外との会話 59( 95.2) 11( 91.7) 56(100.0) 15( 88.2)
訪問機会 60( 95.2) 11( 91.7) 54( 98.2) 14( 87.5)
活動への参加 26( 43.3) 7( 63.6) 23( 41.1) 7( 43.8)
テレビの視聴 61( 96.8) 11( 91.7) 56(100.0) 17(100.0) − 新聞購読 59( 93.7) 9( 75.0) 36( 64.3) 11( 64.7)
本・雑誌の講読 51( 81.0) 8( 72.7) 35( 62.5) 6( 37.5)
役割の有無 57( 90.5) 11( 91.7) 47( 83.9) 13( 76.5)
相談者の有無 58( 92.1) 9( 75.0) 55( 98.2) 15( 88.2)
緊急時の手助け 60( 95.2) 10( 83.3) 55( 98.2) 16( 94.1)
近所づきあい 60( 96.8) 11(100.0) 55( 98.2) 16( 94.1)
趣味の有無 58( 92.1) 9( 75.0) 44( 78.6) 13( 81.3)
便利な道具の利用 62(100.0) 12(100.0) − 48( 85.7) 15( 88.2)
健康への配慮 63(100.0) 12(100.0) − 55( 98.2) 17(100.0)
規則正しい生活 63(100.0) 10( 83.3) .024 53( 94.6) 15( 88.2)
生活の工夫 63(100.0) 11( 91.7) 55( 98.2) 16( 94.1)
積極性 63(100.0) 11( 91.7) 54( 96.4) 13( 81.3)
社会への貢献 62( 98.4) 11( 91.7) 46( 83.6) 8( 47.1) .008 P:Fisherの直接確率法による値
−:データの偏りにより計算不能
項目 カテゴリー 壮年期群(%) 高齢期群(%)
性別
(壮年期群N=75/高齢期群N=67)
男性 39( 52.0) 22( 32.8)
女性 36( 48.0) 45( 67.2)
年齢
(壮年期群N=75/高齢期群N=67)
Mean±SE 53.3±6.5 73.4±6.3
min 40 65
max 64 90
同居者の有無
(壮年期群N=75/高齢期群N=67)
同居者あり 75(100.0) 57( 85.1)
独居 0( 0.0) 10( 14.9)
職業の有無
(壮年期群N=75/高齢期群N=67)
有職者 68( 90.7) 23( 34.3)
無職者 7( 9.3) 44( 65.7)
精神的健康度総得点
(壮年期群N=75/高齢期群N=67)
Mean±SE 6.5±6.3 7.2±5.2
min 0 0
max 26 21
精神的健康度
(壮年期群N=75/高齢期群N=67)
問題なし群 63( 84.0) 51( 76.1)
問題あり群 12( 16.0) 16( 23.9)
表1 基本属性および精神的健康度の分布状況
N(%)
表2 ISIと精神的健康との関連
N(%)
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表6に精神的健康度とLSI−Kとの関連を示した。壮年 期では「去年と同じように元気」「今の生活に、不幸せな ことがどれくらいある」「小さなことを気にするようにな った」「他の人に比べて恵まれていた」「前よりも役に立た なくなった」「物事をいつも深刻に考える」などの項目の 肯定的回答群において有意な差が認められた。高齢期で は「今の生活に、不幸せなことがどれくらいある」「人生 をふりかえってみて、満足」の項目の肯定的回答群にお いて有意な差が認められた。
表7に精神的健康度とADLとの関連を示した。壮年 期では有意な関連は見られなかったが、高齢期では「請 求書の支払いができますか」の項目の、できる群におい て有意な差が認められた。
3.精神的健康度と各指標との関連(ロジスティックモ デル)
表8に単変量解析で有意差が認められた変数を説明変 数、精神的健康度を目的変数として、各指標においてロ ジスティックモデルを構築し分析を行った結果を示し た。
精神的健康度を目的変数、単変量解析で有意差が認め られた各項目を説明変数として重回帰分析(ステップワ イズ法)を行った結果、壮年期においては「年をとっ
て、前よりも役に立たなくなったと思いますか」「去年と 同じように元気だと思いますか」の2項目が選択された
(R2=.719、p=.000)。高齢期においては「あなたは現 在健康であると思いますか」「請求書の支払いができます か」「元気付けてくれる人」「今の生活に、不幸せなことが どれくらいある」の4項目が選択された。(R2=.389、p
=.000)
! 考 察
精神的健康度に関連する要因については、多くの先行 研究によって検討されてきた。しかし、わが国では、学 生や企業の従業員を対象とする研究が殆どであり、僅か に高齢期や壮年期を対象としたもの散見さられる程度で ある。さらに、壮年期から高齢期へと幅広い年齢階層を 網羅した研究は見当たらない。Atchley(1989)は、社 会的地位・役割の喪失を経験する高齢期へ向かうとき、
それ以前に形成してきた行動パターンや生活、パーソナ リティの継続性を維持しつつ移行することが望ましい適 応の様式であるとしている16)。このような観点に立つと き、精神的健康度の関連要因を検討するあたり、壮年期 以上のすべての地域住民を対象とする意義は大きいと考
壮年期 高齢期
GHQ28傾向2群わけ p値 GHQ28傾向2群わけ p値 問題なし群 問題あり 問題なし群 問題あり 適正な運動 14(23.0) 1( 9.1) 22( 41.5) 4( 25.0)
適量な飲酒 40(63.5) 5(41.7) 47( 83.9) 16( 94.1)
禁煙 42(66.7) 6(50.0) 49( 89.1) 17(100)
適正な睡眠時間 25(39.7) 2(16.7) 34( 60.7) 8( 50.0)
適正な栄養のバランス 57(90.5) 7(58.3) .012 53( 94.6) 13( 76.5) .047 朝食の摂取 60(95.2) 10(83.3) 56(100) 17(100) − 適正な労働時間 29(46.8) 4(33.3) 38( 67.9) 10( 62.5)
ストレス 18(28.6) 2(16.7) 37( 66.1) 5( 29.4) .011 P:Fisherの直接確率法による値
壮年期 高齢期
GHQ28傾向2群わけ p値 GHQ28傾向2群わけ p値 問題なし群 問題あり 問題なし群 問題あり
主観的健康感 健康群 42( 66.7) 3( 25.0) .010 39( 70.9) 3( 17.6) .000 2ヶ月以内通院 非通院群 44( 69.8) 9( 75.0) 28( 50.0) 6( 35.3)
健診受診行動 受診群 62( 98.4) 12(100.0) 56(100.0) 16( 94.1)
2ヶ月以内歯科受診 受診群 8( 12.7) 1( 8.3) 9( 16.7) 2( 12.5)
1年以内入院 入院なし 62( 98.4) 11( 91.7) 50( 89.3) 17( 88.2)
P:Fisherの直接確率法による値
表3 HPIと精神的健康との関連
N(%)
表4 現在の健康状態と精神的健康度との関連
N(%)
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えられる。
以下、分析結果について概観する。精神的健康度に有 意な差が認められた項目は、ISI(壮年期:1項目、高 齢期:1項目)2項目、HPI(壮年期:1項目、高齢 期:2項目)3項目 、 主 観 的 健 康 感 ( 壮 年 期 ・ 高 齢 期)、SS(壮年期:サポート受領4項目、サポート提供 1項目、高齢期:サポート受領1項目)6項目、LSI−K
(壮年期:6項目、高齢期:2項目)8項目の合計20項
目であった。
ISIについては、壮年期では「生活は規則的ですか」
の項目で、高齢期では「自分は社会に何か役に立つこと ができると思いますか」の項目で有意な差が認められ た。壮年期では、生活の主体性に関する領域において、
高齢期では社会への関心に関する領域において有意差が 認められた。安梅によれば、社会への関心は、高齢にな るにつれて顕著に低下することが示唆されている17)。し
壮年期 高齢期
GHQ28傾向2群わけ p値 GHQ28傾向2群わけ p値 問題なし群 問題あり 問題なし群 問題あり サポートの受領
心配事を聞いてくれる人 54( 85.7) 8( 66.7) 49( 90.7) 15( 88.2)
病気で2〜3日寝込んだ場合の看病してくれる人 58( 92.1) 6( 50.0) .001 50( 89.3) 14( 82.4)
気を配ってくれる人 55( 87.3) 8( 66.7) 53( 94.6) 15( 88.2)
元気付けてくれる人 57( 90.5) 8( 66.7) .048 53( 94.6) 17(100)
お金を貸してくれる人 40( 63.5) 3( 25.0) .023 29( 52.7) 6( 35.3)
くつろいだ気分にしてくれる人 46( 73.0) 6( 50.0) 45( 81.8) 14( 82.4)
用事を頼める人 54( 85.7) 7( 58.3) .041 50( 90.9) 12( 70.6) .049 長期間寝込んだ場合の看病してくれる人 55( 87.3) 8( 66.7) 49( 87.5) 15( 88.2)
サポートの提供
心配事を聞く 55( 87.3) 10( 83.3) 45( 84.9) 15( 93.8)
病気で2〜3日寝込んだ場合の看病する 55( 87.3) 7( 58.3) .029 39( 76.5) 10( 62.5)
気を配る 59( 93.7) 9( 75.0) 51( 98.1) 14( 87.5)
元気付けている 53( 84.1) 7( 58.3) 46( 88.5) 14( 82.4)
お金を貸す 35( 55.6) 4( 33.3) 21( 41.2) 4( 25.0)
くつろいだ気分にする 45( 71.4) 6( 50.0) 39( 78.0) 12( 75.0)
用事を頼まれる 53( 84.1) 7( 58.7) 38( 74.5) 11( 68.8)
長期間寝込んだ場合の看病する 53( 84.1) 7( 58.3) 41( 77.4) 12( 75.0)
P:Fisherの直接確率法による値
壮年期 高齢期
GHQ28傾向2群わけ p値 GHQ28傾向2群わけ p値 問題なし群 問題あり 問題なし群 問題あり 生活満足度尺度K
去年と同じように元気 48( 76.2) 3( 27.3) .003 35( 62.5) 10( 58.8)
今の生活に、不幸せなことがどれくらいある 22( 35.5) 0( .0) .027 28( 51.9) 3( 17.6) .023 小さなことを気にするようになった 48( 76.2) 2( 18.2) .000 43( 76.8) 10( 58.8)
他の人に比べて恵まれていた 40( 64.5) 2( 18.2) .007 35( 62.5) 9( 52.9)
前よりも役に立たなくなった 58( 92.1) 3( 27.3) .000 21( 37.5) 5( 29.4)
人生をふりかえってみて、満足 15( 23.8) 2( 18.2) 25( 44.6) 2( 11.8) .020 生きることは大変厳しい 12( 19.4) 1( 9.1) 14( 25.0) 1( 5.9)
物事をいつも深刻に考える 33( 54.1) 1( 9.1) .007 19( 33.9) 10( 58.8)
求めていたことのほとんどを実現できた 9( 14.5) 0( .0) 23( 41.8) 5( 29.4)
P:Fisherの直接確率法による値
表5 SS(サポートの受領・サポートの提供)と精神的健康との関連
N(%)
表6 LSI-Kと精神的健康との関連
N(%)
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かしながら、本研究では、高齢期にのみ社会への関心の 領域で有意差が認められた。このことから、社会への関 心と精神的健康との間に、何らかの関連があることが確 認された。また、高齢になるにつれて、ISI得点が減少 する傾向にあるため、得点を維持できるような豊かな社 会関係の繋がりの重要性が示唆された。
SSについては、壮年期では「病気で2〜3日寝込ん だ場合の看病」「元気付けてくれる人」「お金を貸してくれ
る人」「用事を頼める人」の項目の、サポート提供者がい る群において有意な差が認められた。高齢期では「用事 を頼める人」の項目の、サポート提供者がいる群におい て有意な差が認められた。SSが精神的健康の維持に有 効 で あ る こ と は 、 多 く の 研 究 で 明 ら か に さ れ て い る18)19)。福岡は、SSの自らの 受領 と他者への 提 供 とのバランスの重要性に着目している20)。本研究で は、SSにおける壮年期のサポート の 受 領 に お い
壮年期 高齢期
GHQ28傾向2群わけ p値 GHQ28傾向2群わけ p値 問題なし群 問題あり 問題なし群 問題あり バス、電車などでの外出 − − 48( 85.7) 12( 70.6)
日用品の買い物 − − 56(100.0) 16( 94.1)
食事の準備 − − 52( 92.9) 15( 88.2)
請求書の支払い − − 51( 92.7) 11( 64.7) .009 預貯金の出し入れ − − 49( 87.5) 14( 82.4)
年金などの書類の記入 − − 49( 87.5) 17(100.0)
健康情報に関心を持つ − − 52( 92.9) 14( 82.4)
病人を見舞う − − 54( 96.4) 16( 94.1)
若い人に話しかける − − 52( 92.9) 15( 88.2)
−:データの偏りにより計算不能
<壮年期>
非標準化係 数B
標準化係
数β t値 p モデルの R2
調整済み R2
モデルの p値 生活満足度尺度
年をとって、前よりも役にたたなくなった
と思いますか −.643 .137 −4.700 .000 .848 .719 .000 去年と同じように元気だと思いますか −.333 .130 −2.558 .000
従属変数:GHQ−28(2群分け)
1)変数投入の有意水準を5%とした。
<高年期>
非標準化係 数B
標準化係
数β t値 p モデルの R2
調整済み R2
モデルの p値 現在の健康状態
.624 .389 .000 主観的健康感 .360 .095 3.810 .000
老研式活動能力
請求書の支払い −.385 .133 −2.892 .005 ソーシャル・サポート
元気づけてくれる人 .527 .217 2.427 .018 生活満足度尺度
今の生活に、不幸なことがどれくらいある
と思いますか −.214 .093 −2.315 .024 従属変数:GHQ−28(2群分け)
1)変数投入の有意水準を5%とした。
表7 ADLと精神的健康との関連
N(%)
表8 重回帰分析ステップワイズ法1)
GHQ−28を従属変数とした重回帰分析の結果
北海道医療大学看護福祉学部紀要 No.15 2008年
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て、手段的サポートの2項目、情緒的サポートの2項目 の合計4項目で、またサポートの 提供 では情緒的サ ポートの1項目において有意な差が認められた。高齢期 のサポートの 受領 においては、手段的サポートの1 項目のみに有意な差が認められた。このことは、離島と いう特殊な環境に起因していると推測される。一般に、
孤立小型離島における生活では、近隣住民の助け合いは 常態化しており、自らがサポート提供者であるとの意識 が希薄化していることが示唆された。
LSI−Kについては、壮年期では「去年と同じように元 気」「今の生活に、不幸せなことがどれくらいある」「小さ なことを気にするようになった」「他の人に比べて恵まれ ていた」「前よりも役に立たなくなった」「物事をいつも深 刻に考える」の項目で、肯定的回答群において有意な差 が認められた。高齢期では「今の生活に、不幸せなこと がどれくらいある」「人生をふりかえってみて、満足」の 項目の肯定的回答群において有意な差が認められた。わ れわれの先行研究では、主観的健康感を関連要因とし て、LSI−Kの「去年と同じように元気」「今の生活に、不 幸せなことがどれくらいある」「前よりも役に立たなくな った」「物事をいつも深刻に考える」の項目が検出されて いる2)。また、他の先行研究でも、主観的健康感と「生 活満足度」の精神的 な 要 因 と の 関 連 が 示 唆 さ れ て い る21)。したがって、本研究で検出されたLSI−Kの項目 は、主体の精神的側面のあり方を規定する要因であるこ とが示唆された。
重回帰分析の結果、モデルとして選択された変数は、
壮年期においてはLSI−Kの「年をとって、前よりも役に 立たなくなったと思いますか」「去年と同じように元気だ と 思 い ま す か 」 の 2 項 目 で あ っ た (R2= .719、p
=.000)。高齢期においては現在の健康状態の「あなた は現在健康であ る と 思 い ま す か 」 の 1 項 目 、ADLの
「請求書の支払いができますか」の1項目、SSの 「元気 付けてくれる人」の1項目、LSI−Kの「今の生活に、不 幸せなことがどれくらいある」の1項目の4項目であっ た(R2=.389、p=.000)。
精神的健康と関連が認められた項目を概観すると、粟 島地域住民の精神的健康は、社会との関わりや近隣住民 との助け合い、自己肯定的な態度によって規定されてい ることが示唆された。このことから、粟島地域住民の健 康寿命の保持には、社会と関わる姿勢や、それを側面か ら支えるSS、現実の生活を肯定的に捉える自己肯定的 な態度に対する配慮が必要である。
結 語
本研究では、粟島地域住民の健康寿命の保持に資する べく、精神的健康度とライフスタイル要因との関連性に
ついて検討してきた。その結果は、以下のように約言さ れる。
精神的健康は、ISI、主観的健康感、SS、LSI−K等の 多数の項目との関連が認められた。このことから、精神 的健康を規定する要因は、住民のライフスタイルと多岐 にわたって関連していることが明らかになった。したが って、健康増進施策を講ずる際には、身体的健康に着目 するばかりではなく、精神的健康を規定する社会的活動 の保持や近隣住民との助け合いの促進、現実の生活や自 己を肯定的に捉える態度の醸成を図るためのネットワー ク形成に配慮すべきことが示唆された。
最後に、本研究の限界について述べたい。重回帰分析 において選択された壮年期と高齢期のR2値の差は、分析 に使用した例数の不足に起因していると考えられる。こ の課題について、より精緻な検討を実施すべく例数の拡 充、他地域との比較が必要であろう。
注
(1)ISIは、人間関係や環境とのかかわりの状況につ いて把握する18項目から構成される指標である。「生活 の主体性」「社会への関心」「他者とのかかわり」「身近な 社会参加」「生活の安心感」の領域から構成されてい る。選択肢1から選択肢3の回答を1点とし、選択肢 4の回答を0点とした合計をISI得点としている。詳 細については、安梅勅江(2000)『エイジングのケア科 学』川島書店.を参照されたい。
(2)HPIは、健康的な生活習慣の実践状況を把握する 8項目から構成される指標である。詳細については、
星旦二・森本兼嚢(1991)「生活習慣と身体的健康度」
森本兼嚢編『ライフスタイルと健康―健康理論と実証 研究―』医学書院、66−71.を参照されたい。なお本 稿ではHPI得点の採点方法を一部変更して引用してい る。具体的には、「朝食」では「毎日食べる」、「睡眠 時間」では「6−8時間」、「栄養のバランス」では
「考えている」、「喫煙」では「やめた/吸わない」、
「運動」では「週2回以上」、「飲酒」では「時々飲む
/飲まない」、「拘束時間」では「8時間以下」、「自覚 的ストレス」では「少ない」の回答を1点とし、それ 以外を0点とした合計をHPI得点としている。
(3)SSに関しては高齢者向けの指標であるが、本研 究では壮年期からのライフスタイルを検討するため、
継続的なライフスタイルの把握の必要性を考慮し、便 宜上すべて同様の指標を使用し比較検討を行った。ソ ーシャル・サポートは、8項目から構成される対人関 係の援助機能を把握する指標である。「手段的サポー ト」「情緒的サポート」などの下位尺度で構成され、質
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