• 検索結果がありません。

強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす効果に関する検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす効果に関する検討"

Copied!
15
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)64. 教 育 心 理 学 研 究 第 69 巻 第 1 号. 教育心理学研究,2021,69,64-78. 原著〔実践研究〕. 強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす効果に関する検討 阿 部 望* 岸 田 広 平** 石 川 信 一*** 本研究では,学校の実情に合わせた 2 つの強み介入を実施し,強み介入が中学生の精神的健康(生活満 足度・抑うつ症状)に及ぼす効果について検討することを目的とした。研究 や他者の強みを認識・注目させる介入)では中学. 1 の強み認識・注目介入(自己. 3 年生 128 名が対象であり,研究 2 の強み認識・注目・活用. 介入(自己や他者の強みを認識・注目させ,自己の強みを活用させる介入)では中学 3 年生 87 名が対象であった。 分析の結果,研究 1 で実施した強み認識・注目介入は,生活満足度の向上に対してのみ効果があること が示唆された。一方,研究 2 で実施した強み認識・注目・活用介入は,生活満足度の向上と抑うつ症状 の低減の両方に対して有効であることが示唆された。次に,効果的な強み介入の構成要素を探るために, 介入の構成要素と対応する既存の強み変数の変化と精神的健康の変化の関連について探索的に検討した。 その結果,強みの認識と他者の強みへの注目の変化が生活満足度の変化と正の関連を示し,強みの活用 感の変化が抑うつ症状の変化と負の関連を示した。これらの結果から,生活満足度を向上させるために は強みの認識と他者の強みへの注目が重要であり,抑うつ症状を低減させるためには強みの活用が重要 である可能性が示された。最後に本研究の課題と今後の展望について議論された。 キーワード:強み,強み介入,精神的健康,子ども. みを保有していることが精神的健康と関連するだけで. 問題と目的. なく,自分の全体的な強みを認識している感覚である. 精神症状の低減だけでなく,人の強みや幸福感1,生. 強みの認識2(高橋・森本, 2015a) や,自分が保有してい. 活の質の向上を目指すポジティブ心理学の発展に伴い. る強みを日常の中で活用している感覚である強みの活. (Seligman & Csikszentmihalyi, 2000),強み (Strengths) に関. 用感(高橋・森本, 2015b),日常的に自己や他者の強みに. する研究が数多く実施されるようになってきた。強み. 積極的に注目しようとする認知傾向である強みへの注. とは,人が活躍したり最善を尽くしたりすることを可. 目(高橋, 2016)が精神的健康と関連することも報告され. 能にさせる特性のことである(Wood et al., 2011)。これま. ている(Govindji & Linley, 2007; 高橋, 2016)。. で,Values in Action Inventor y of. Strengths(VIA-IS;. 強みに関する調査だけでなく,自身の強みを特定し. Peterson & Seligman, 2004),Clifton. Strengths Finder. たり活用・育成することを促したりすることによって人. (Buckingham & Clifton, 2001)など,個人が保有する強みを. の幸福感を促進することを目指す,強み介入(Strengths. 測定する様々な尺度が開発されてきた。例えば,VIAIS では,知恵と知識,勇気,人間性,正義,節度,超. 1. 幸福感(well-being)については,現在,様々な理論や尺度 が存在しており,どのように測定されるべきかについては一貫 した合意がほとんど得られていない(Linton et al., 2016)。その ため,先行研究においても幸福感として,happiness,生活満足 度,心理的幸福感,主観的幸福感など,様々な尺度が測定され ているが,これらは幸福感に含まれる概念であると考えられる ため,本研究では区別が必要な場合を除き,幸福感と記述する。. 2. 強みの認識,自己の強みへの注目,強みの活用感といった概 念の違いについて,阿部他(2019)では,強みの認識は強みを 知るという側面にのみ焦点化した概念であり,強みへの注目は 強みをみつけようとするといった強みを知ることに対する意欲 を含む概念であること,強みの活用感は強みを活用するといっ た行動や活用しようとするといった行動に対する意欲を含む概 念であることが指摘されている。. 越性の 6 つの美徳に分類される,文化や時代を超えて 不変的に存在する道徳的に価値がある 24 の強み(Character Strengths)が測定される(Table 1) 。調査研究では,. 24 のうち多くの強みが幸福感の高さや精神症状の低さ といった精神的健康と関連することが報告されている (大竹他, 2005; Park & Peterson, 2006) 。また,このように強. *. 同志社大学大学院心理学研究科・日本学術振興会 [email protected]. ** 同志社大学研究開発推進機構・心理学部 *** 同志社大学心理学部.

(2) 阿部・岸田・石川:強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす効果に関する検討. 65. Table 1. のみであり,その多くは大学生以上の大人を対象とし. VIA-IS の構成と各強み(大竹他, 2005 より一部抜粋). た研究である。. 領域(美徳). 知恵と知識. Character Strengths 独創性 好奇心・興味 判断 向学心 見通し. 勇気. 勇敢 勤勉 誠実性 熱意. 人間性. 愛する力・愛される力 親切 社会的知能. 正義. チームワーク 平等・公平 リーダーシップ. 節度. 寛大 謙虚 思慮深さ・慎重 自己コントロール. 超越性. 大人の研究に比べ実証的な研究は少ないものの,近 年学校で子どもを対象とした強み介入もいくつか実施さ れるようになってきた(森本他, 2015; Proctor et al., 2011)。 例えば,Proctor et al.(2011)では,中学生を対象とし, 生徒が強みを築き,新しい強みを学び,他者の強みを 認識できるようになることを目指し,Strengths Gym というプログラムが実施されている。この研究では, 介入群は統制群よりも,生活満足度やポジティブ感情. 審美心 感謝 希望・楽観性 ユーモア・遊戯心 精神性. が向上していたことが報告されている。また,小学生 を対象とした Quinlan et al.(2015)では,個人に対する 効果だけでなく集団や関係性に対する効果についても 検討されており,介入群は統制群に比べ,ポジティブ 感情,教室でのエンゲージメント,自律性,関係性が 向上し,学級風土が改善する (生徒の凝集性の増加と生徒 間の摩擦の低減)といった様々な効果が報告されている。. 本邦においても,森本他(2015)が高校生女子の自己形 成意識の向上を目的とした強み介入を行い,可能性追 求や努力主義の向上が報告されている。 このように,近年子どもを対象とした強み介入が行 われるようになってきた。しかし,幸福感に対する効 果を検討した研究はわずかに報告されているものの (Proctor et al., 2011; Quinlan et al., 2015) ,抑うつ症状に対す. Interventions) も実施されている (Ghielen et al., 2018) 。な. る学校での強み介入単独の効果については測定されて. お,強み介入は,扱う強みの種類や手続きによって,. おらず,幸福感と抑うつ症状の両者に対して大人の研. Character Strengths Inter ventions(Quinlan et al., 2012). 究と同様の効果があるのかどうかは不明である。近年,. や,Signature Character Strengths Inter ventions. 子どもの学校適応には,幸福感が高いだけでなく精神. (Schutte & Malouff, 2019)と呼ばれる場合もあるが,本研. 症状 (抑うつ症状等) が低いことが重要であることが示. 究ではこれらを区別せず,全て強み介入と呼ぶことと. 唆されており,両者を用いて子どもの精神的健康を包. する。. 括的に測定する必要性が指摘されている(Greenspoon &. 強み介入の内容は研究によって様々であるが,代表. Saklofske, 2001; Suldo & Shaffer, 2008)。これを踏まえると,. 的な強み介入として,Seligman et al.(2005)の強み介入. 幸福感と精神症状の両者を測定し,強み介入が子どもの. (Using signature strengths in a new way) がある。Seligman. 精神的健康に与える影響を検討する必要があるだろう。. et al.(2005)では,VIA-IS によって測定された強みのう. 以上のことから,本研究では学校の実情に合わせた. ち上位 5 つの強みを 1 週間毎日今まで試したことのな. 2 つの介入研究を行い,学校での強み介入が子どもの. い方法で活用する,といった手続きで介入が実施され. 精神的健康に及ぼす影響について検討することを目的. る。Seligman et al.(2005)を発端に,これまで非臨床群. とした。精神的健康は,幸福感と精神症状の両者を用. を主な対象として,数多くの強み介入が実施されてき. いて包括的に測定することとした。ただし,本研究で. た。強み介入の有効性に関するレビュー論文 (Ghielen. は回答する質問紙の増加による生徒の負担を考慮し,. et al., 2018; Quinlan et al., 2012) や. 幸福感と精神症状の指標からそれぞれ 1 つずつ選択し,. メ タ 分 析 (Schutte & & Malouff(2019)で. 測定することとした。幸福感は,先行研究 (例えば,. は,幸福感と抑うつ症状に対する小さい効果があるこ. Suldo & Shaffer, 2008) で使用頻度が高かった主観的幸福. Malouff, 2019)も発表され,Schutte. とが報告されている。ただし,この研究における子ど. 感(ポジティブ感情,ネガティブ感情,生活満足度で構成される. もを対象とした研究は 14 例中 1 例 (Proctor et al., 2011). 概念)に着目し,その中の. 1 つである生活満足度を測定.

(3) 66. 教 育 心 理 学 研 究 第 69 巻 第 1 号. することとした。生活満足度を選択した理由は,認知. サルタイプの介入は,リスクの高い対象者を抽出する. 的側面である生活満足度の方が感情的側面であるポジ. ことによって生じるラベリングの問題を回避すること. ティブ感情とネガティブ感情よりも評定者の現在の気. ができる点や,介入の後に抑うつ症状等が強まる子ど. 分による影響をうけにくく,安定した要素であること. もを見逃す危険性が少ない点などの利点が挙げられて. が指摘されていたためである (Suldo et al., 2014)。実際. いる (佐藤他, 2009)。さらに,強み介入は幸福感や他の. に,2 週間の期間をあけた生活満足度の再検査信頼性. 望ましい成果を促進することを目的として,非臨床群. は,r=.74 であり(Huebner, 1991),抑うつ症状(r=.73). の人々を対象に数多く実施されてきた介入であること. と同程度の時間的安定性をもつことが報告されている. を踏まえ(Quinlan et al., 2012),本研究では中学校でクラ. (村田他, 1996)。精神症状は,先行研究 (例えば,Suldo &. スの全ての生徒を対象とし,強み介入の効果を検討す. Shaffer, 2008)では抑うつ症状,不安,攻撃行動等が測定. ることとした。. されていたが,強み介入では抑うつ症状のみを対象と. 研 究 1. した研究が多く(例えば,Seligman et al., 2005),強み介入 のメタ分析で有効性が示されているのは抑うつ症状の. 目的. みであったことから(Schutte & Malouff, 2019),抑うつ症. 研究 1 では,強み介入が中学生の精神的健康(生活満. 状を指標として選択した。. 足度・抑うつ症状)に与える影響について検討することを. また,本研究では効果的な強み介入の構成要素を探. 目的とした。ただし,対象となる中学校から,まず自. るために,構成要素と精神的健康の関連についても探. 分や他者の強みに気づくことを中心とした授業を行い. 索的に検討を行うこととした。Linkins et al.(2015)で. たいとの要望があったため,研究 1 では強みの活用の. は,学校で実施される強みに基づく教育プログラムに. 要素は含めなかった。. 必要不可欠な構成要素として,①強みに関する知識を. 先行研究では,強みの認識よりも活用の重要性が指. 伸ばす,②他者の強みを認識し,考える,③自分自身. 摘されている(Govindji & Linley, 2007; Seligman et al., 2005)。. の強みについて認識し,考える,④強みを練習し,適. 例えば Seligman et al.(2005)では,上位の強みを特定. 用するといった要素が指摘されている。これを踏まえ. する群(強みの認識のみに介入する群)では,介入直後まで. ると,子どもの強み介入には,強みについて学ぶこと. の短期的効果しか示されない一方で,上位 5 つの強み. に加えて,自身の強みを知り(強みの認識),自己や他者. を 1 週間毎日今まで試したことのない方法で活用する. の強みを考え(強みへの注目),活用する(強みの活用感3). 群 (強みの認識と活用の両方に介入する群) では,幸福感と. 過程が含まれていると考えられる。したがって,これ. 抑うつ症状に対する 6 ヶ月続く効果が示されたことが. らの指摘されている構成要素と対応すると考えられる. 報告されている。一方で,調査研究ではあるものの,. 既存の強みに関する変数(強みの認識,強みの活用感,強み. 強みの活用感よりも強みへの注目が効果的である可能. への注目)を測定し,介入による強みに関する変数の変化. 性も示されている。高橋(2016)の調査研究では,強み. 量と精神的健康の変化量の関連を検討することとした。. の活用感と強みへの注目のそれぞれの影響を統制する. また,本研究ではクラス単位で中学生に対して強み. と,生活満足度に対する正の影響と抑うつ症状に対す. 介入を行うこととした。中学生を対象とした理由は,. る負の影響が示されたのは強みへの注目のみであるこ. 小学生から中学生にかけて自己の強みへの注目や自己. とが報告されている。これらの研究を踏まえると,介. 肯定感が低下することが示されていることから(阿部他,. 入に強みを活用する要素を含んでいなくとも,強みの. 2019; 久芳他, 2007),自身の強みに目を向け,自分を肯定. 認識だけでなく強みへの注目を含むことで,精神的健. 的にみることができなくなる時期である中学生に対し. 康に対して効果がある可能性があると考えられる。. て介入を行うことは意義があると考えたためである。. 上記の理由により,研究 1 では自己の強みを活用す. また,クラス単位ですべての人を対象とするユニバー. るという要素を含まない強み介入(以下,強み認識・注目 介入とする)を実施し,中学生の精神的健康に与える影. 3. 強みの活用感は,強みを日常の中で活用しているという主観 的感覚であり,強みの活用という行動そのものを扱った概念で はない。したがって,強みの活用感は強みの活用という構成要 素と完全に対応するわけではないが,両者ともに強みの活用に ついて扱っている点を踏まえると,ある程度類似した概念を測 定できる変数であると考えられる。. 響について検討することとした。強み認識・注目介入 は,Linkins et al.(2015)を参考に,強みについて学び, 自己や他者の強みを考え(強みへの注目),自身の強みを 知る (強みの認識) という要素で構成することとした。 本研究では,強みの中でも強み介入の中で扱われるこ.

(4) 阿部・岸田・石川:強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす効果に関する検討. との多い,感謝,親切といった 24 個の強みから構成さ れる Character Strengths に焦点をあて,これらの強み. 67. た。対象者に対して,学校行事の前後を避け,介入前 (Pre) ,介入後(Post),および介入. 1 ヶ月後(Follow-up). の認識や注目を高めることを意図した介入を行うこと. の計 3 回の質問紙調査を実施した。. とした。また,強みの認識,強みの活用感,自己と他. プログラム実施までの経緯 教師より,3 年生は進. 者の強みへの注目といった強みに関する変数を測定し,. 路選択の時期であるため生徒の自己肯定感や自己理解. 介入による強みに関する変数の変化と精神的健康の変. を高めさせたいとの要望があり,強み介入プログラム. 化の関連について検討することとした。仮説は以下の. の提案を行った。ただし,対象となる中学校から,ま. 通りである。なお,介入により生じた強みに関する変. ず自分や他者の強みに気づくことを中心とした授業を. 数と精神的健康の変数の変化の関連については,探索. 行いたいとの要望があったため,強みの活用の要素は. 的に検討することとした。. 含めなかった。教師の報告によると,3 年生は真面目. 仮説 1 調査研究では,大人と同様に中学生におい. な生徒が多く比較的落ち着いた学年であった。プログ. ても強みに関する変数と精神的健康が有意に関連する. ラムを行うにあたって,学年主任や担任教師とともに. ことが示されている(阿部他, 2019; Duan et al., 2017)。その. プログラム内容について 3 回の打ち合わせを行った。. ため,大人を対象とした先行研究(Seligman et al., 2005). 実施手続きとプログラム内容 本プログラムは,週. と同様に中学生を対象とした本研究の介入においても,. 1 回,合計 2 回の授業で構成され,2017 年 10 月下旬に. 精神的健康 (生活満足度・抑うつ症状) に対する介入直後. クラス単位で実施された。中学校の時間割の都合によ. までの有意な変化のみが示され,介入 1 ヶ月後 には有. り,1 回目の授業は 50 分,2 回目の授業は 45 分であっ. 意な変化が示されない。また,介入直後までの生活満. た。授業は,各クラスの担任教師または学年主任が授. 足度と抑うつ症状に対する小さい効果量が示されるが,. 業の流れや留意点などが記載された指導案に沿って行. その効果量は 1 ヶ月後にはみられなくなる。. い,1,2 名の大学院生がサポートを行った。プログラ. 仮説 2 介入により,強みの認識,自己と他者の強. ムは先行研究(Linkins et al., 2015)を参考に作成された。. 4. みへの注目が介入 1 ヶ月後まで有意に増加する一方で,. なお,24 個の強み(Table 1)の理解を深めるために,2. 強みの活用感は変化しない。子どもを対象とした介入. 回の授業では,強みのブックレットを用いて,具体的. 研究 (Quinlan et al., 2015) において強みの認識と注目は. な項目やイラストとともに 24 個の強みを 6 人の人物が. 測定されていないものの,強みに関する変数である強. 持つ強みとして紹介した。24 個の強みは,中学生には. みの活用感に対する小さい効果が示されていることか. 表現が難しいと考えられる強みも含まれていたため,. ら,本研究においても強みの認識と自己と他者の強み. 審美心の強みは見る目があるの強み,精神性の強みは. への注目に対しては介入直後から 1 ヶ月後まで続く小. 目的意識の強みに変更する等,中学生でも理解できる. さい効果量が示される。. ような平易な表現に言い換えて用いた。ただし,各強. 方法. みの表現は変更したものの,各強みの説明は本来の強. 対象者 京都府の中学校 の 3 年生 4 クラス 128 名. みの意味に近づくように説明文を作成した(例えば,見. (男子 63 名,女子 64 名,性別不明 1 名)が介入の対象であっ. る目があるの強みは,素晴らしい物や人に気づく強みであること. 5. 4. Seligman et al.(2005)では,介入前,介入後,介入 1 週間後, 介入 1 ヶ月後,介入 3 ヶ月後,介入 6 ヶ月後の 6 時点で効果測 定が行われていたが,本研究では測定回数の増加による生徒の 負担を考慮し 3 時点の測定にとどめた。また,調査時期につい ては実施可能な時期を教師と協議し,介入前,介入後,介入 1 ヶ月後に測定することとした。. 5. 対象となった中学校では,介入を実施するよりも前の時期に 学級委員の活動で班の中の 1 人を決めて良いところを探す活動 が 1 度行われていたが,普段は本研究と類似したような活動は 行われていなかった。また吉武(2010)の縦断調査では,楽観 性や学年,性別を統制すると,学校行事や友人等に関連するポ ジティブイベントは生活満足度に対してわずかな影響(β=.08) しか与えないことが報告されていることから,本研究の効果指 標に対する学校の普段の教育活動の影響は小さいものであると 考えられる。. の説明を加えた)。全. 2 回のプログラムの詳細を Table 2. に示した。 測定尺度 以下の尺度を用いた。 1.フェイスシート:学年,組,年齢,性別に加え, 3 回の調査を対応させる 4 桁の暗証番号の記入を求め た。 2.生活満足度:日本語版 Student's Life Satisfaction Scale(SLSS; 吉武, 2010):本尺度は,小学 3 年生から高校 3 年生までの児童生徒の生活満足度を測定する尺度で あり,得点が高いほど生活満足度が高いことを示して いる。本尺度は,学校での強み介入の先行研究(Proctor et al., 2011; Quinlan et al., 2015)で使用された尺度と同様の. 尺度の日本語版であり,吉武(2010)により,日本語版.

(5) 68. 教 育 心 理 学 研 究 第 69 巻 第 1 号. Table 2 研究 1 の介入内容 セッション. 内容. 各内容と対応する要素. 〈第 1 回〉 ・約束の確認とめあての確認。 友だちの強み ・ブックレットを用いて,24 個の強みについて学ぶ。 をみつけよう ・グループ(4 名程度)になり担任の先生の強みとその強みを選んだ理由(強みを使ってい た場面等の具体例)を考え,発表する。 ・2 人組になり,ペアになったクラスメイトについて,強みとその強みを選んだ理由(強み を使っていた場面等の具体例)を付箋に書き,相手に手渡し,伝える。 ・授業のまとめとホームワークの確認。 ホームワーク. 1 週間周りの人(友達や家族等)を観察し,誰が,どんな強みを,どんな場面で使っていた のか,について記述する。. 〈第 2 回〉 ・約束の確認とめあての確認。 自分の強みを ・ブックレットを用いて 24 個の強みについて復習する。 みつけよう ・グループ(4 名程度)になり,強みをみつけ合う。自分以外のメンバーについて,強みと その強みを選んだ理由(強みを活用していた場面の具体例)を付箋に書き,相手に手渡し, 伝える。 ・クラスメイトに指摘された強みを確認した後,24 個の強みの中から自分によくあてはまる と思う強みを考えさせる。 ・授業のまとめとホームワークの確認。 ホームワーク. 1 週間自分を観察し,どのような強みをどのような場面で使ったのかを記入する。. ・他者の強みへの注目 ・他者の強みへの注目 ・強みの認識 ・他者の強みへの注目. ・他者の強みへの注目 ・強みの認識 ・自己の強みへの注目 ・強みの認識 ・自己の強みへの注目 ・強みの認識. 尺度の信頼性と妥当性が確認されている。 「自分の生活. の 5 件法で回答を求めた。尺度の得点可能範囲は 8―. に満足しています」などの 7 項目 1 因子構造であり,. 40 点である。本研究における信頼性は,Pre 時点で. それぞれ,「1. ぜんぜん思わない」から「6. とてもそ. α=.89,Post 時点で α=.90,Follow-up 時点で α=.89. う思う」までの 6 件法で回答を求めた。尺度の得点可. であった。. 能範囲は 7―42 点である。本研究における信頼性は, Pre 時点で α=.69,Post 時点で α=.73,Follow-up 時. 竹, 2017) :本尺度は,児童の強みの活用感を測定する尺. 点で α=.72 であった。. 度であり,得点が高いほど強みの活用感が高いことを. 3.抑うつ症状:自己記入式抑うつ評価尺度(DSRS-C). 示している。小國・大竹(2017)により尺度の信頼性と. 5.強みの活用感:児童用強み活用感尺度 (小國・大. 短縮版 (並川他, 2011):本尺度は児童生徒の抑うつ症状. 妥当性が確認されている。「自分の良いところ (長所). を測定する尺度である DSRS-C(村田他, 1996)の 9 項目. をいつも活かそうとしている」などの 14 項目で構成さ. 短縮版であり,得点が高いほど抑うつ症状が高いこと. れ,それぞれ, 「1. 全くあてはまらない」から「5. と. を示している。短縮版 9 項目は専門家による信頼性と. てもよくあてはまる」の 5 件法で回答を求めた。尺度. 内容的妥当性が確認されている。 「泣きたいような気が する」などの 9 項目で構成され,それぞれ,「0. そん. の得点可能範囲は 14―70 点である。本研究における信 頼 性 は,Pre 時 点 で α=.96,Post 時 点 で α=.97,. なことはない」, 「1. ときどきそうだ」, 「2. いつもそう. Follow-up 時点で α=.98 であった。. だ」の 3 件法で回答を求めた。尺度の得点可能範囲は,. 6.強みへの注目:子ども用強み注目尺度 (阿部他,. 0―18 点である。本研究における信頼性は,Pre 時点で. 2019) :本尺度は,児童生徒の強みへの注目を測定する. α=.68,Post 時点で α=.78,Follow-up 時点で α=.79. 尺度であり,得点が高いほど強みへの注目が高いこと. であった。. を示している。阿部他(2019)により尺度の信頼性と妥. 4.強みの認識:児童用強み認識尺度 (小國・大竹,. 当性が確認されている。自己の強みへの注目と他者の. 2017) :本尺度は,児童の強みの認識を測定する尺度で. 強みへの注目の 2 因子構造で 15 項目から構成される。. あり,得点が高いほど強みの認識が高いことを示して. 自己の強みへの注目は「まず自分の良いところ(長所). いる。小國・大竹(2017)により尺度の信頼性と妥当性. をみつけようとする」などの 7 項目,他者の強みへの. が確認されている。「自分の良いところ (長所) をよく. 注目は「まず友達や身近な人の良いところ(長所)をみ. 知っている」などの 8 項目で構成され,それぞれ, 「1. 全くあてはまらない」から「5. とてもよくあてはまる」. つけようとする」などの 8 項目で構成され,それぞれ, 「1. 全くあてはまらない」から「5. とてもよくあては.

(6) 阿部・岸田・石川:強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす効果に関する検討. 69. Table 3 研究 1 の各変数の平均,標準誤差と分析の結果 介入前 Pre. 介入後 Post. 25.92 27.07 生活満足度 (0.53) (0.54) 5.35 5.40 抑うつ症状 (0.29) (0.29) 27.06 27.16 強みの認識 (0.56) (0.57) 44.57 46.93 強みの活用感 (1.02) (1.03) 21.78 23.51 自己の強みへの注目 (0.51) (0.52) 27.22 28.58 他者の強みへの注目 (0.54) (0.55). 1 ヶ月後 Follow-up 26.82 (0.53) 5.12 (0.29) 28.12 (0.57) 46.45 (1.03) 22.67 (0.52) 28.62 (0.55). 時期の効果 F値. d値 Post. Follow-up. 4.23* 0.26 0.18 Pre<Post*,Pre<Follow-up† [ 0.02, 0.51][-0.07, 0.43] 0.80 0.02 -0.08 [-0.23, 0.27][-0.33, 0.17] † 0.02 0.18 2.57 [-0.23, 0.26][-0.06, 0.43] 3.24* 0.22 0.17 Pre<Post† [-0.03, 0.46][-0.07, 0.42] 6.42** 0.33 0.16 Pre<Post** [ 0.08, 0.58][-0.09, 0.41] 4.63* 0.23 0.25 Pre<Post*,Pre<Follow-up* [-0.02, 0.48][ 0.01, 0.50]. 注) ( )は標準誤差,[ ]は d 値の 95%信頼区間を示した。 † p<.10 *p<.05 **p<.01. まる」の 5 件法で回答を求めた。尺度の得点可能範囲. く,効果量の結果を踏まえて結果の解釈を行った。偏. は,自己の強みへの注目が 7―35 点,他者の強みへの. 相関係数は,有意でかつ弱い相関以上(絶対値.20 以上). 注目が 8―40 点である。本研究における自己の強みへ の注目の信頼性は,Pre 時点で α=.90,Post 時点で. の値について結果の解釈を行った。. α=.94,Follow-up 時点で α=.93 であった。また,他者 の強みへの注目の信頼性は,Pre 時点で α=.89,Post. それぞれの効果指標を従属変数とし,介入効果の検. 時点で α=.92,Follow-up 時点で α=.93 であった。. モデルによる分析結果を Table 3 に示した。. 倫理的配慮 本研究は,第一著者が所属する大学の. 精神的健康に関する指標 まず,精神的健康に関す. 学部内の倫理審査の承認(申請番号 KH49)を得た上で実. る変数 (生活満足度・抑うつ症状) のうち,生活満足度の. 施された。本研究の実施に際して,データは統計的に. 得点を従属変数とした分析を行ったところ,時期の効. 処理され研究目的以外には使用しないことを説明し,. 果(F[2, 239]=4.23,p<.05)が有意であり,介入前より. 学校長の許可を得た。児童生徒には,(a)名前や回答. も介入後の得点が有意に高く (p<.05),介入前よりも. が外にもれることはないこと, (b)成績に関わること. 介入 1 ヶ月後の得点が有意に高い傾向(p<.10)にある. はないこと,(c)正しい解答や間違った解答はないこ. ことが示された。一方,抑うつ症状の得点を従属変数. と, (d)調査の回答は自由であること,を担任教師が 口頭,紙面で説明を行い,質問紙への回答をもって研. 結果 討を行った。分析対象は,128 名であった。混合効果. とした分析では,有意な時期の効果は示されなかった (F[2, 243] =0.80,ns) 。. 究協力の同意とみなした。. 強みに関する指標 強みに関する変数のうち,強み. 分析方法 介入効果の分析,変化量の偏相関(それぞ. の認識の得点を従属変数とした分析を行ったところ,. れの強み変数の変化量を統制)の分析には,R. version 3.6.0. 時期の効果(F[2, 245]=2.57,p<.10)は有意傾向だった. および SPSS Statistics 25 を使用した。介入効果の分析. ものの,時点間に有意な差は示されなかった。一方,. には混合効果モデルを用い,固定効果として,時期の. 強みの活用感の得点を従属変数とした分析では,時期. 効果(介入前・介入後・介入 1 ヶ月後)を,変量効果として 対象者の効果をモデルに加えた6。有意差が認められた 際は Bonferroni の多重比較を行った。効果量の算出は, G*Power 3 を使用し,各時点の変数の平均値,標準偏 差,時点間の相関係数に基づき d 値を算出した (詳細 は,Faul et al., 2007)。効果量は,d=0.20. を小さい,d=. 0.50 を中程度,d=0.80 を大きいと判断した (Cohen, 1988)。なお,本研究では,有意差検定の結果だけでな. 6. 研究 1 と研究 2 の各変数について,級内相関係数とデザイン エフェクトを算出した結果,研究 1 の介入後の生活満足度での み,清水(2014)でマルチレベル分析が推奨される基準値(級 内相関係数は.05,デザインエフェクトは 2)をわずかに上回る 値が示された(級内相関係数は.05(95% CI[-.08, .19]),デザ インエフェクトは 2.67)。しかし,変量効果に対象者とクラス の効果を加えて分析を行っても,介入効果に関する結果は変わ らなかったため,本研究では対象者の効果のみを変量効果とし て加えたモデルの分析結果を記載した。.

(7) 70. 教 育 心 理 学 研 究 第 69 巻 第 1 号. の効果(F[2, 243]=3.24,p<.05)が有意であり,介入前. い値だった (第 1 回:98.38%,第 2 回:100%)。また,強. よりも介入後の得点が有意に高い傾向にあることが. みについて理解できたと答えた生徒の割合も 100%に. 示された (p<.10)。また,自己の強みへの注目の得点. 近い値だった (第 1 回:99.19%,第 2 回:100%)。次に,. を従属変数とした分析を行ったところ,時期の効果. ホームワークの実施率と実施数について検討を行った. (F [2, 245] =6.42,p<.01) が有意であり,介入前よりも. 結果,ホームワークの実施率 (ホームワークを提出した者. 介入後の得点が有意に高いことが示された (p<.01)。. の割合) は,第. 最後に,他者の強みへの注目の得点を従属変数とした. た。ホームワークの実施数は,第 1 回 (周りの人の強み. 1 回は 92.19%,第 2 回は 92.97%だっ. 分析を行った結果,時期の効果(F[2, 241]=4.63,p<.05). をみつける)の記述数の平均は. が有意であり,介入前よりも介入後,介入 1 ヶ月後の. であり,第 2 回(自分の強みをみつける)の記述数の平均. 3.15 個(標準偏差は 1.98). 得点が有意に高いことが示された(p<.05)。. は 2.37 個(標準偏差は 1.55)だった。. 介入の効果量 これらの変数の介入前から介入後,. 考察. 介入前から 1 ヶ月後にかけての介入の効果量を算出し. 研究 1 の結果から,強み認識・注目介入は,生活満. た。その結果,介入前から介入後にかけての生活満足. 足度の向上に対して有効である可能性が示された。し. 度,強みの活用感,自己の強みへの注目,他者の強み. かし,介入 1 ヶ月後にかけての変化は有意傾向であり,. への注目に対する小さい効果量が示され,介入前から. 効果量も小さい効果量の基準を下回る値であることか. 介入 1 ヶ月後にかけての他者の強みへの注目に対する. ら,研究 1 の介入効果は介入直後までの短期的効果で. 小さい効果量が示された。. ある可能性が示された。この結果は,仮説 1 と概ね一. 変化量の偏相関係数 次に,介入前から介入後,介. 致していた。一方,抑うつ症状については仮説に反し. 入前から介入 1 ヶ月後にかけての各変数の変化量の関. て,すべての時点において介入効果が示されなかった。. 連を検討した。各強み変数の間には中程度から高い相. 大人を対象とした Seligman et al.(2005)では,上位の. 関が示されていたことから,各変数の得点の変化量を. 強みを特定する群であっても短期的には抑うつ症状の. 算出した後,それぞれの強み変数の変化量を統制し,. 減少が示されていた。しかし,Seligman et al.(2005)で. 各強み変数の変化量と生活満足度,抑うつ症状の変化. は Happiness Exercises と題された研究に自発的に参加. 量との偏相関係数を算出した (単相関の結果については. した者が対象者であったのに対して,本研究では全生. Appendix 1 に示した)。なお,欠損があるデータについて. 徒が対象者であった。そのため,先行研究と本研究で. は変化量が算出できないため,欠損値があった対象者. は対象者のモチベーションや抑うつ症状の程度に違い. のデータは分析ごとに除外した。そのため,分析対象. があったと考えられ,そのような対象者の違いが本研. 者の範囲は 114 名―122 名であった。分析の結果,他. 究の結果に影響した可能性がある。. の 3 つの強み変数を統制してもなお,介入前から介入. 次に,仮説 2 については一部仮説が支持され,他者. 後にかけての強みの認識の変化と生活満足度の変化が. の強みへの注目のみ介入 1 ヶ月後まで続く有意な増加. 有意な正の偏相関(r=.27,p<.01)を示し,強みの活用. と小さい効果量が示された。一方,自己の強みへの注. 感の変化と抑うつ症状の変化は有意な負の偏相関を示. 目は介入後までの有意な増加にとどまり,強みの認識. した(r=-.22,p<.05)。一方,強みの認識の変化と抑う. はどちらの時点においても有意な増加が示されなかっ. つ症状の変化の間には有意な正の偏相関が示された. た。このことから,本研究の介入は,他者の強みをみ. (r=20,p<.05)。次に,介入前から介入. 1 ヶ月後にかけ. つけようとする傾向(他者の強みへの注目)を増加させる. ての変化量の偏相関を算出したところ,強みの認識. ことができたものの,自身の強みが何かを十分認識さ. (r=.16,p<.10),他者の強みへの注目(r=.17,p<.10). せるには手続きが不十分であった可能性があるといえ. は生活満足度の変化と有意傾向の正の偏相関を示した。. る。また,有意傾向であるため慎重を要するものの,. なお,その他の変数の間には有意な偏相関は示されな. 仮説に反し,介入直後までの強みの活用感の向上に対. かった。. する有意傾向の増加と小さい効果量が示された。これ. 生徒の授業評価とホームワーク 次に,生徒の授業. は本介入では,強みを見つける際に強みとその具体例. 評価とホームワークの結果について検討を行った。そ. (親切の強みであれば,友人に消しゴムを貸してあげた等)を記. の結果,第 1 回,第 2 回ともに授業が楽しかったと答. 述させる手続きを含んでいたため,活用させる手続き. えた生徒(「はい」,「まあまあ」,「いいえ」のうち,「はい」か. を含んでいなかったにもかかわらず,活用感に対する. 「まあまあ」のどちらかに回答した生徒)の割合は. 100%に近. 小さい効果が示されたと考えられる。.

(8) 阿部・岸田・石川:強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす効果に関する検討. 71. 次に,強みに関する変数と精神的健康の変数の変化. 仮説 1 先行研究 (Seligman et al., 2005) と同様に,精. について偏相関係数を算出した結果,.20 以上の大き. 神的健康 (生活満足度・抑うつ症状) に対する直後のみな. さで介入前から介入後にかけて強みの認識の変化と生. らず介入 1 ヶ月後まで続く効果が示される。また,介. 活満足度の変化が弱い正の関連を示した。また,本研. 入直後から 1 ヶ月後まで続く生活満足度と抑うつ症状. 究は強みの活用感を高めることを意図した研究ではな. に対する小さい効果量が示される。. かったものの,介入前から介入後にかけての強みの活. 仮説 2 介入により,介入直後から 1 ヶ月後まで続. 用感の変化と抑うつ症状の変化が弱い負の関連を示し. く全ての強みに関する変数(強みの認識,強みの活用感,自. た。これらの結果から,弱い関連ではあるものの,強. 己と他者の強みへの注目)の増加が示される。また,全て. みの認識は生活満足度の向上に対して,強みの活用は. の強みに関する変数の介入直後から 1 ヶ月後まで続く. 抑うつ症状の低減に対して有効である可能性が示され. 小さい効果量が示される。. た。一方で,介入前から介入後にかけての強みの認識. 方法. と抑うつ症状の間には弱い正の関連が示されていた。. 対象者 京都府の研究 1 と同一の中学校に在籍する. この関連について散布図を確認したところ,強みの認. 3 年生 3 クラス 87 名(男子 43 名,女子 44 名)が介入の対. 識が下がり抑うつ症状が下がった者の割合がやや多. 象であった (ただし,介入の実施年度は研究 1 と異なってい. かった。これを踏まえると,介入で他者から様々な強. た) 。対象者に対して,学校行事の前後を避け,介入前. みのフィードバックを受けたことにより,元々これが. (Pre) ,介入後(Post),および介入. 1 ヶ月後(Follow-up). 自身の強みだと高い確信を持っていた生徒の確信が揺. の計 3 回の質問紙調査を実施した。. らぎ強みの認識は下がったけれども,様々な強みを. プログラム実施までの経緯 教師より,生徒の自己. 持っている可能性を知り抑うつが低下した,といった. 肯定感を高め,自分に自信を持たせたいとの要望が. 生徒もいた可能性があると考えられる。最後に,生徒. あったため,強みの認識,注目,活用の要素を含む強. の授業評価の結果から,強み認識・注目介入が生徒に. み介入プログラムの提案を行った。教師の報告による. とって楽しく,理解されやすい介入であることが示さ. と,3 年生は真面目で落ち着いた学年であった。プロ. れた。. グラムを行うにあたって,学年主任や担任教師ととも. 以上の結果から,強み認識・注目介入によって強み. にプログラム内容について 3 回の打ち合わせを行った。. に関する認知を高めることは生活満足度の向上には有. 実施手続きとプログラム内容 本プログラムは,月. 効である可能性が示された。しかし,抑うつ症状に対. 1 回(約 50 分),合計 2 回の授業で構成され,2018 年 10. する効果は示されなかったことから,抑うつ症状を低. 月末と 12 月上旬にクラス単位で実施された。中学校の. 減させるためには十分でない可能性がある。変化量の. 時間割の都合により,1 回目の授業は 50 分,2 回目の. 偏相関の結果から,強みの活用を高めることが抑うつ. 授業は 45 分であった。授業は,各クラスの担任教師が. 症状の低減に有効である可能性が示されたことから,. 指導案に沿って行い,1,2 名の大学院生がサポートを. 今後は強みの認識・注目だけでなく,活用を含めた介. 行った。授業内容は研究 1 と同様の自己や他者の強み. 入の効果について検討する必要がある。. をみつける手続きに加えて,自身の強みを測定する. 研 究 2 目的. チェックシートの実施や強みの活用に関する手続きを 第 2 回の授業で新たに追加した。強みチェックシート (品性の強み質問紙 CST24; 島井他, 2018) は,24. 個の強みの. 研究 2 では,自己の強みを活用する要素を含む介入. それぞれの項目についてどのくらい自分にあてはまる. (以下,強み認識・注目・活用介入とする)を実施し,中学生. か 7 件法で回答させる尺度である。本研究ではチェッ. の精神的健康に与える影響について検討することを目. クシートの結果を第 2 回の授業で自身の強みを選ぶ際. 的とした。研究 1 で強みの認識を十分に増加させるこ. の参考にしてもらうために,第 2 回の授業実施前に回. とができなかったことを踏まえ,研究 2 では,新たに. 答してもらった。全 2 回のプログラムの詳細は Table. 自身の強みを測定するチェックシートを実施する手続. 4 に示した。. きを追加することとした。仮説は以下の通りである。. 測定尺度 研究 1 と同様の尺度を用いた。なお,生 活満足度の信頼性は,Pre 時点で α=.79,Post 時点で. なお,研究 1 と同様に,介入により生じた強みに関す る変数と精神的健康の変数の変化の関連については,. α=.81,Follow-up 時点で α=.85 であり,抑うつ症状. 探索的に検討することとした。. の信頼性は,Pre 時点で α=.78,Post 時点で α=.75,.

(9) 72. 教 育 心 理 学 研 究 第 69 巻 第 1 号. Table 4 研究 2 の介入内容 セッション. 内容. 各内容と対応する要素. 〈第 1 回〉 ・約束の確認とめあての確認。 友だちの強み ・ブックレットを用いて,24 個の強みについて学ぶ。 をみつけよう ・グループ(4 名程度)になり担任の先生の強みとその強みを選んだ理由(強みを使ってい た場面等の具体例)を考え,発表する。 ・上述したグループで強みをみつけ合う。自分以外のメンバーについて,強みとその強みを 選んだ理由(強みを使っていた場面等の具体例)を付箋に書き,相手に手渡し,伝える。 ・授業のまとめとホームワークの確認。 ホームワーク. 1 週間周りの人(友達や家族等)を観察し,誰が,どんな強みを,どんな場面で使っていた のか,について記述する。. 〈第 2 回〉 ・約束の確認とめあての確認。 自分の強みを ・ブックレットを用いて 24 個の強みについて復習する。 みつけ,伸ば ・授業前に実施した強みチェックシートの結果を参考にしながら,自身の強みについて 3 つ そう 考える。 ・自分で考えた強みと前回クラスメイトに指摘された強みの中から,これからもっと伸ばし ていきたいと思う強みを 3 つ選ぶ。 ・強み下敷き(表面:強みの説明,裏面:強みの活用例)を配布し,3 つの強みとそれらの 強みを活用する方法を 1 週間分考えホームワークシートに記入する。 ・授業のまとめとホームワークの確認。 ホームワーク. 授業中に記入した強みの活用方法を 1 週間実践する。その日使いたい強みとその活用方法を 選び,実際に活用できたら,いつ使ったかと使った感想を記入する。. ・他者の強みへの注目 ・他者の強みへの注目 ・強みの認識 ・他者の強みへの注目. ・強みの認識 ・自己の強みへの注目. ・強みの活用. Table 5 研究 2 の各変数の平均,標準誤差と分析の結果 介入前 介入後 Pre Post 25.51 26.83 生活満足度 (0.65)(0.66) 5.99 5.31 抑うつ症状 (0.34)(0.35) 22.65 25.39 強みの認識 (0.71)(0.73) 39.10 41.22 強みの活用感 (1.32)(1.34) 18.38 20.23 自己の強みへの注目 (0.60)(0.61) 25.66 26.20 他者の強みへの注目 (0.64)(0.65). 1 ヶ月後 Follow-up. 時期の効果 F値. 26.86 (0.66) 5.34 (0.35) 25.03 (0.72) 42.44 (1.33) 20.70 (0.61) 26.33 (0.65). 3.94* Pre<Post†,Pre<Follow-up* 3.53* Pre>Post†,Pre>Follow-up† 10.70** Pre<Post**,Pre<Follow-up** 3.50* Pre<Follow-up* 10.97** Pre<Post**,Pre<Follow-up** 0.88. d値 Post. Follow-up. 0.27 0.26 [-0.03, 0.57][-0.04, 0.56] -0.26 -0.25 [-0.56, 0.04][-0.55, 0.05] 0.50 0.39 [ 0.20, 0.80][ 0.09, 0.69] 0.21 0.27 [-0.09, 0.51][-0.02, 0.57] 0.41 0.43 [ 0.11, 0.71][ 0.13, 0.73] 0.11 0.13 [-0.18, 0.41][-0.16, 0.43]. 注) ( )は標準誤差,[ ]は d 値の 95%信頼区間を示した。 † p<.10 *p<.05 **p<.01. Follow-up 時点で α=.72 であった。また,強みの認識. 学内倫理審査の承認(申請番号 18054)を得た上で実施さ. の信頼性は,Pre 時点で α=.90,Post 時点で α=.89, Follow-up 時点で α=.91 であり,強みの活用感の信頼. れた。その他の倫理的配慮については,研究 1 と同様. 性は,Pre 時点で α=.97,Post 時点で α=.97,Followup 時点で α=.97 であった。自己の強みへの注目の信. 分析方法 分析方法は研究 1 と同様であった。. 頼 性 は,Pre 時 点 で α=.89,Post 時 点 で α=.91, Follow-up 時点で α=.88 であり,他者の強みへの注目. それぞれの効果指標を従属変数とし,介入効果の検. の信頼性は,Pre 時点で α=.87,Post 時点で α=.87, Follow-up 時点で α=.86 であった。. Table 5 に示した。. 倫理的配慮 本研究は,第一著者が所属する大学の. る変数 (生活満足度・抑うつ症状) のうち,生活満足度の. であった。 結果 討を行った。分析対象は 87 名であった。分析の結果を 精神的健康に関する指標 まず,精神的健康に関す.

(10) 阿部・岸田・石川:強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす効果に関する検討. 73. 得点を従属変数とした分析を行ったところ,時期の効. が楽しかったと答えた生徒(「はい」,「まあまあ」のどちら. 果(F[2, 158]=3.94,p<.05)が有意であり,介入前より. かに回答した生徒)の割合は全体の. も介入後の得点が有意傾向で高く (p<.10),介入前よ. 回:96.43%,第 2 回:96.20%)。また,強みについて理解. 95%以上だった(第 1. りも介入 1 ヶ月後の得点が有意に高いことが示された. できたと答えた生徒の割合についても 95%以上だった. (p<.05) 。また,抑うつ症状の得点を従属変数とした分. (第 1 回:96.20%,第 2 回:100%) 。次に,ホームワークの. 析を行ったところ,時期の効果(F[2, 161]=3.53,p<.05). 実施率と実施数について検討を行った結果,ホーム. が有意であり,介入前よりも介入後,介入 1 ヶ月後の. ワークの実施率(ホームワークを提出した者の割合)は,第. 得点が有意に低い傾向にあることが示された(p<.10)。. 1 回は 87.36%,第 2 回は 70.11%だった。ただし,第. 強みに関する指標 強みに関する変数のうち,強み. 2 回については自宅へのホームワークシートの持ち帰. の認識の得点を従属変数とした分析を行ったところ,. りを許可したクラスで提出率が下がっているため,. 時期の効果(F[2, 160]=10.70,p<.01)が有意であり,介. ホームワークシート未提出の者がホームワークを実施. 入前よりも介入後,介入 1 ヶ月後の得点が有意に高い. していなかったのかどうかについては不明である。次. ことが示された (p<.01)。また,強みの活用感の得. に,ホームワークの実施数について検討した結果,第. 点を従属変数とした分析を行った結果,時期の効果. 1 回 (周りの人の強みをみつける) の記述数の平均は 3.49. (F [2, 160] =3.50,p<.05) が有意であり,介入前よりも. 個(標準偏差は 2.11)であり,第 2 回(自分の強みを活用す. 介入 1 ヶ月後の得点が有意に高いことが示された(p<. る) の記述数の平均は. .05)。次に,自己の強みへの注目の得点を従属変数と. た。. し た 分 析 を 行 っ た と こ ろ,時 期 の 効 果 (F[2, 160]=. 考察. 10.97,p<.01)が有意であり,介入前よりも介入後,介. 研究 2 の結果から,有意傾向が含まれるため解釈に. ヶ月後の得点が有意に高いことが示された (p<. は慎重を要するものの,介入 1 ヶ月後まで続く生活満. .01)。最後に,他者の強みへの注目の得点を従属変数. 足度の増加と抑うつ症状の低減が示され,強みを活用. とした分析を行った結果,有意な時期の効果は示され. させる手続きを含む強み介入が,小さい効果量で中学. なかった(F[2, 157]=0.88,ns)。. 生の精神的健康の向上に有効である可能性が示された。. 介入の効果量 研究 1 と同様に,これらの変数の介. 介入 1 ヶ月後まで介入効果が持続し,小さい効果量が. 入前から介入後,介入前から 1 ヶ月後にかけての介入. 得られるという本研究結果は,仮説 1 を支持していた。. の効果量を算出した。その結果,介入前から介入後,. 次に,仮説 2 に関しては,概ね仮説が支持され,強. 介入 1 ヶ月後にかけての生活満足度,抑うつ症状に対. みの活用感の介入前から 1 ヶ月後にかけての増加と,. する小さい効果量,強みの認識,強みの活用感,自己. 強みの認識,自己の強みへの注目の介入 1 ヶ月後まで. の強みへの注目に対する小から中程度の効果量が示さ. 続く有意な増加,そして,これらの変数の全ての時点. れた。. において小から中程度の効果量が示された。一方,他. 変化量の偏相関係数 次に,研究 1 と同様に,介入. 者の強みへの注目については,仮説に反して有意な変. 前から介入後,介入前から介入 1 ヶ月後にかけての各. 化が示されず,効果量も基準を下回っていた。これは,. 変数の変化量の偏相関係数を算出した (単相関の結果に. 研究 2 の介入でプログラム内容を一部変更したためで. ついては Appendix 2 に示した)。分析対象者の範囲は. 72. あると考えられる。研究 1 の介入では他者の強みをみ. 名―79 名であった。分析の結果,他の 3 つの強み変数. つけるペアワークとグループワーク,ホームワークが. を統制してもなお,介入前から介入後にかけての他者. 実施されていたが,研究 2 の介入では,強みの活用に. の強みへの注目の変化は生活満足度の変化と有意な偏. 関するワークを増やす都合上,他者の強みをみつける. 相関を示した(r=.27,p<.05)。次に,介入前から介入. ペアワークを実施することができなかった。そのため,. 1 ヶ月後にかけての変化量の偏相関を算出したところ,. 他者の強みへの注目を十分に高めることができなかっ. 強みの活用感は抑うつ症状の変化と有意な負の偏相関. た可能性がある。. を示した(r=-.28,p<.05)。なお,その他の変数の間に. 次に,強みに関する変数と精神的健康の変数の変化. は有意な偏相関は示されなかった。. について偏相関係数を算出した結果,介入前から介入. 生徒の授業評価とホームワーク 次に,研究 1 と同. 後,介入前から介入 1 ヶ月後のそれぞれで両者の間. 様に,生徒の授業評価とホームワークの結果について. に.20 以上の有意な関連が示された。まず,介入前か. 検討を行った。その結果,第 1 回,第 2 回ともに授業. ら介入後にかけて,他者の強みへの注目の変化と生活. 入1. 3.90 個 (標準偏差は 1.56) であっ.

(11) 74. 教 育 心 理 学 研 究 第 69 巻 第 1 号. 満足度の変化の間に弱い正の関連が示された。この結. ないため,生活満足度に対してどちらの要素をプログ. 果から,弱い関連ではあるものの,介入前から介入後. ラムに含むことが重要であるかについては今後も検討. にかけて他者の強みへの注目が高まった人ほど,生活. する必要があるだろう。また,関連がみられた時点は. 満足度が向上した可能性があると考えられる。次に,. 異なるものの,研究 1 と研究 2 で一貫して強みの活用. 介入前から介入 1 ヶ月後にかけて,強みの活用感の変. 感の変化が抑うつ症状の変化と関連することが示され. 化と抑うつ症状の変化の間に弱い負の関連が示された。. た。これを踏まえると,抑うつ症状の低減を目指す場. この結果から,強みの活用を介入後も続けるなどして,. 合は,強みの活用が重要な要素である可能性があると. 介入前から介入 1 ヶ月後にかけて強みの活用感が増加. 考えられる。. した人(あるいは介入前から介入後にかけて活用感が増加し,介. 次に,本研究の実践的意義と学術的意義について述. 入 1 ヶ月後まで高い状態を維持できた人) ほど抑うつ症状が. べる。冒頭でも述べたように,中学生は自己の強みへ. 低下した可能性があると考えられる。最後に,生徒の. の注目や自己肯定感が低下する時期であることが報告. 授業評価の結果から,強みの活用を加えた介入であっ. されている(阿部他, 2019; 久芳他, 2007)。本研究では,学. ても生徒は楽しく参加し,強みについてよく理解して. 校での強み介入がこのような時期にある中学生の精神. いたことが示された。. 的健康に対して有効である可能性を示した。本研究に. 以上の結果から,強み認識・注目・活用介入により. よって,中学生の精神的健康を向上させるにあたって,. 強みに関する認知を高めることは中学生の生活満足度. 強み介入という新たな選択肢を学校現場に提示したこ. の向上や抑うつ症状の低減に有効である可能性が示さ. とは実践的な意義があると考えられる。また,これま. れた。. での研究では,子どもの幸福感に対する強み介入単独. 総合考察. の効果を検討した研究はいくつかあるものの(Proctor et al., 2011; Quinlan et al., 2015),大人の研究のように幸福感. 本研究では,学校の実情に合わせた 2 つの介入を実. と抑うつ症状の両者に対する効果を検討した研究は行. 施し,強み介入が中学生の精神的健康 (生活満足度・抑. われていなかった。精神的健康には幸福感の高さと精. うつ症状)に与える影響について検討した。その結果,. 神症状の低さの両者が重要であることを踏まえると. 研究 1 で実施した強み認識・注目介入は,生活満足度. (Suldo & Shaffer, 2008) ,本研究によって,強み介入が中. の向上には効果がある可能性があるものの,抑うつ症. 学生の生活満足度と抑うつ症状の両者に対して効果が. 状を低減させるには不十分である可能性が示された。. ある可能性を示したことは学術的にも意義があると考. 一方,研究 2 で実施した強み認識・注目・活用介入は,. えられる。. 生活満足度と抑うつ症状の両方に対して有効である可. 最後に,本研究の課題と今後の展望について述べる。. 能性が示され,強み認識・注目介入よりも介入効果の. 第一に,研究間で介入間隔が異なる点が挙げられる。. 持続期間が長いことが示された。大人を対象とした. 本研究では,介入実施校である中学校の都合上,研究. al.(2005)では,強みを特定する群では介入. 1 では週 1 回,研究 2 では月 1 回のペースで全 2 回の. 直後までの短期的な効果しか見られず,強みを新しい. 介入が実施された。そのため,介入要素だけでなく介. 方法で活用させる群でのみ 6 ヶ月続く幸福感の向上と. 入間隔が異なる点が結果に影響している可能性も否定. 抑うつ症状の低減が示されている。本研究の知見も先. できない。例えば,本研究の各変数の変化量の偏相関. 行研究と同様に,精神的健康に対する長期的な介入効. は研究間であまり一貫していないが,これには介入間. 果を得るためには,強みを活用するという手続きを含. 隔の違いが影響しているのかもしれない。したがって,. むことが重要である可能性を示している。. 今後は介入間隔を揃えて介入効果を検討する必要があ. また,本研究では,効果的な強み介入の構成要素を. るだろう。. 探るために,介入の構成要素と対応するような既存の. 第二に,本研究では統制群が設定されておらず,強. 強みに関する変数を測定し,それらの変数の変化と精. みに関する変数や生活満足度,抑うつ症状の変化が介. 神的健康の変化について探索的に検討した。その結果,. 入効果によるものであると断定できない点が挙げられ. Seligman et. 弱い関連ではあったものの,研究 1 では強みの認識が. る。ただし,このような限界はあるものの,古屋他. 生活満足度と関連し,研究 2 では他者の強みへの注目. (2009) では,本研究における介入前と介入後の測定時. が生活満足度と関連することが示された。ただし,研. 点の間の時期である 11 月を境にして高校受験の焦りや. 究間で一貫した.20 以上の変数間の関連は示されてい. 不安,しんどさを感じる生徒が急激に増加することが.

(12) 阿部・岸田・石川:強み介入が中学生の精神的健康に及ぼす効果に関する検討. 報告されていることから,本研究における効果指標の. 75. 引用文献. 測定時期は一般的には精神的健康状態が悪化していく 時期であったことが推測される。そのため,本研究で. 阿部 望・岸田広平・石川信一(2019). 子ども用強み. 生徒の精神的健康が向上し,さらに,介入における強. 注目尺度の作成と信頼性・妥当性の検討 パーソナ. み変数の変化と精神的健康の変化が有意な関連を示し. リティ研究, 28 (1), 42-53. https://doi.org/10.2132/. たという結果は,本研究の強み介入が精神的健康の向 上に寄与した可能性を示す結果であるといえるだろう。 しかし,本研究は統制群がないことに加えて,実践的. personality.28.1.6 Buckingham, M., & Clifton, D. O.(2001). Now, discover your strengths. The Free press.. 研究という性質上,介入以外の様々な要因によって精. Cohen, J.(1988). Statistical power analysis for the behav-. 神的健康が変化した可能性を否定できない。したがっ. ioral sciences(2nd ed.) . Lawrence Erlbaum Associ-. て,今後は統制群を用いて,生徒の精神的健康に対す る強み介入の効果についてより詳細な検討を行う必要. ates. Duan, W., Li, J., & Mu, W.(2017) . Psychometric char-. がある。. acteristics of strengths knowledge scale and strengths. 第三に,サンプルサイズが小さい点が挙げられる。. use scale among adolescents. Journal of Psychoedu-. 本来,本研究の要因計画で十分な検定力(0.80)に基づ. cational Assessment, 36 (7), 756-760. https://doi.. き小さい効果量(f=0.10)を得るためには,160 名以上. org/10.1177/0734282917705593. の人数が必要であった。しかし,本研究では実施上の 制約から十分な人数を確保することができなかったた. Faul, F., Erdfelder, E., Lang, A. G., & Buchner, A. . G*Power 3: A flexible statistical power analy(2007). め,検定力が不足していた可能性がある。したがって,. sis program for the social, behavioral, and biomedical. 今後は十分な人数を対象として介入を実施し,強み介. sciences. Behavior Research Methods, 39(2) , 175-. 入の効果検証を行う必要がある。. 191. https://doi.org/10.3758/BF03193146. 第四に,本研究では介入 1 ヶ月後までの効果しか検. 古屋 健・中澤達彦・音山若穂(2009). 中学生の受験. 討されておらず,長期的な効果について検討できてい. ストレス評価ツールの開発 群馬大学教育実践研究,. ない点が挙げられる。これまでの大人を対象とした強. 26, 129-138.. みを活用させる介入研究の多くで,幸福感に対しての. Ghielen, S. T. S., van Woerkom, M., & Meyers, M. C.. 6 ヶ月続く長期的な効果が追試されている一方で,抑. . Promoting positive outcomes through (2018). うつ症状に対しては結果が一貫しておらず,1 ヶ月後. strengths inter ventions: A literature review. The. までの介入効果しか示されなかったといった研究. Journal of Positive Psychology,  13(6) , 573-585.. (Proyer et al., 2014) も報告されている。したがって,本. 研究で示された介入効果が長期的に持続するのかにつ. https://doi.org/10.1080/17439760.2017.1365164 Gillham, J., Adams-Deutsch, Z., Werner, J., Reivich, K.,. いては更なる検討を行う必要がある。. Coulter-Heindl, V., Linkins, M., Winder, B., Peterson,. 以上のような限界はあるものの,本研究では全 2 回. C., Park, N., Abenavoli, R., Contero, A., & Seligman,. の短期的介入であっても,強みの認識,自己や他者の. M. E. P.(2011) . Character strengths predict subjec-. 強みへの注目,強みの活用といった構成要素を含む強. tive well-being during adolescence. The Journal of. み介入が子どもの精神的健康の向上に有効である可能. Positive Psychology, 6 (1), 31-44. https://doi.org/10.1. 性が示された。先行研究では,強み介入で扱った強み. 080/17439760.2010.536773. のうち,希望,向学心,勤勉,慎重といった強みが学. Govindji, R., & Linley, P. A.(2007) . Strengths use, self-. 業自己効力感と正の関連を示すことや (Weber & Ruch,. concordance and well-being: Implications for. 2012),親切や寛大といった他者志向の強みがソーシャ. strengths coaching and coaching psychologists. . ルサポートを部分的に媒介し抑うつ症状の低さと関連. International Coaching Psychology Review, 2 , 143(2). すること (Gillham et al., 2011) 等が報告されている。し. 153.. たがって,今後は学業や対人関係に関する変数が精神. Greenspoon, P. J., & Saklofske, D. H.(2001) . Toward. 的健康に対する強み介入の効果を媒介する可能性や,. an integration of subjective well-being and. 上述したような限界点を踏まえ,強み介入の有効性に. psychopathology. Social Indicators Research, 54,. 関する更なる検討を行っていくことが望まれる。. 81-108. https://doi.org/10.1023/A:1007219227883.

(13) 76. 教 育 心 理 学 研 究 第 69 巻 第 1 号. Huebner, E. S.(1991). Initial development of the student's life satisfaction scale. School Psychology International, 12(3) , 231-240. https://doi.org/10.1177/ 0143034391123010. Peterson, C., & Seligman, M. E.(2004) . Character strengths and virtues: A handbook and classification. Oxford University Press. Proctor, C., Tsukayama, E., Wood, A. M., Maltby, J.,. 久芳美惠子・齊藤真沙美・小林正幸(2007). 小,中,. Eades, J. F., & Linley, P. A.(2011) . Strengths gym:. 高校生の自己肯定感に関する研究 東京女子体育大. The impact of a character strengths-based interven-. 学紀要, 42, 51-60.. tion on the life satisfaction and well-being of adoles-. Linkins, M., Niemiec, R. M., Gillham, J., & Mayerson,. cents. The Journal of Positive Psychology, 6(5), 377-. D.(2015). Through the lens of strength: A frame-. 388. https://doi.org/10.1080/17439760.2011.594079. work for educating the heart. The Journal of Positive. Proyer, R. T., Gander, F., Wellenzohn, S., & Ruch, W.. Psychology, 10(1), 64-68. https://doi.org/10.1080/17. . Positive psychology inter ventions in people (2014). 439760.2014.888581. aged 50-79 years: Long-term effects of placebo-con-. Linton, M. J., Dieppe, P., & Medina-Lara, A.(2016).. trolled online interventions on well-being and depres-. Review of 99 self-report measures for assessing well-. sion. Aging & Mental Health, 18(8) , 997-1005.. being in adults: Exploring dimensions of well-being. https://doi.org/10.1080/13607863.2014.899978. and developments over time. British Medical Journal. Quinlan, D., Swain, N., & Vella-Brodrick, D. A.(2012) .. Open, 6(7). https://doi.org/10.1136/bmjopen-2015-. Character strengths interventions: Building on what. 010641. we know for improved outcomes. Journal of Happi-. 森本哲介・高橋 誠・並木恵祐(2015). 自己形成支援 プログラムの有用性 教育心理学研究, 63(2), 181191. https://doi.org/10.5926/jjep.63.181. ness Studies, 13, 1145-1163. https://doi.org/10.1007/ s10902-011-9311-5 Quinlan, D. M., Swain, N., Cameron, C., & Vella-. . 村田豊久・清水亜紀・森 陽次郎・大島祥子(1996). Brodrick, D. A.(2015) . How 'other people matter' in. 学校における子どものうつ病―Birlson の小児期うつ. a classroom-based strengths intervention: Exploring. 病スケールからの検討 最新精神医学, 1, 131-138.. interpersonal strategies and classroom outcomes. . 並川 努・谷 伊織・脇田貴文・熊谷龍一・中根 愛・ 野口裕之・辻井正次(2011). Birleson 自己記入式抑. The Journal of Positive Psychology, 10(1) , 77-89. https://doi.org/10.1080/17439760.2014.920407. うつ評価尺度(DSRS-C)短縮版の作成 精神医学,. 佐藤 寛・今城知子・戸ヶ崎泰子・石川信一・佐藤容. 53 (5), 489-496. https://doi.org/10.11477/mf.140510. . 児童の抑うつ症状に対する学 子・佐藤正二(2009). 1871. 級規模の認知行動療法プログラムの有効性 教育心. 小國龍治・大竹恵子(2017). 児童用強み認識尺度と児 童用強み活用感尺度の作成及び, 信頼性と妥当性の 検討 パーソナリティ研究, 26(1), 89-91. https:// doi.org/10.2132/personality.26.1.8 大竹恵子・島井哲志・池見 陽・宇津木成介・ピーター. , 111-123. https://doi.org/10.5926/ 理学研究, 57(1) jjep.57.111 Schutte, N. S., & Malouff, J. M.(2019) . The impact of signature character strengths interventions: A metaanalysis. Journal of Happiness Studies, 20, 1179-. ソン,クリストファー・セリグマン,マーティン E.. 1196. https://doi.org/10.1007/s10902-018-9990-2. P.(2005). 日本版生き方の原則調査票(VIA-IS: Val-. Seligman, M. E., & Csikszentmihalyi, M.(2000) . Posi-. ues in Action Inventor y of Strengths)作成の試み . tive psychology: An introduction. American Psy-. 心理学研究, 76(5), 461-467. https://doi.org/10.4992/. chologist, 55(1) , 5-14. https://doi.org/10.1037/0003-. jjpsy.76.461. 066X.55.1.5. Park, N., & Peterson, C.(2006) . Moral competence and. Seligman, M. E., Steen, T. A., Park, N., & Peterson, C.. character strengths among adolescents: The develop-. . Positive psychology progress: Empirical vali(2005). ment and validation of the Values in Action Inventory. dation of interventions. American Psychologist, 60(5),. of Strengths for Youth. Journal of Adolescence, 29(6),. 410-421. https://doi.org/10.1037/0003-066X.60.5.410. 891-909. https://doi.org/10.1016/j.adolescence.2006.. 島井哲志・竹橋洋毅・宇惠 弘・津田恭充・堀田千絵. 04.011. . ポジティブ教育の基礎研究(1) (2018) ―品性の強.

参照

関連したドキュメント

Analogs of this theorem were proved by Roitberg for nonregular elliptic boundary- value problems and for general elliptic systems of differential equations, the mod- ified scale of

“Breuil-M´ezard conjecture and modularity lifting for potentially semistable deformations after

Then it follows immediately from a suitable version of “Hensel’s Lemma” [cf., e.g., the argument of [4], Lemma 2.1] that S may be obtained, as the notation suggests, as the m A

The proof uses a set up of Seiberg Witten theory that replaces generic metrics by the construction of a localised Euler class of an infinite dimensional bundle with a Fredholm

Correspondingly, the limiting sequence of metric spaces has a surpris- ingly simple description as a collection of random real trees (given below) in which certain pairs of

[Mag3] , Painlev´ e-type differential equations for the recurrence coefficients of semi- classical orthogonal polynomials, J. Zaslavsky , Asymptotic expansions of ratios of

p≤x a 2 p log p/p k−1 which is proved in Section 4 using Shimura’s split of the Rankin–Selberg L -function into the ordinary Riemann zeta-function and the sym- metric square

しかし,物質報酬群と言語報酬群に分けてみると,言語報酬群については,言語報酬を与