新産業秩序と中小企業経営
その他のタイトル Management of Midle and Small Scale Industry in Future Industrial System
著者 松原 藤由
雑誌名 關西大學經済論集
巻 14
号 5
ページ 431‑452
発行年 1964‑12‑20
URL http://hdl.handle.net/10112/15380
‑4.3 I
( 1 )
技術革新による経済発展︑換言すれば経済の高度成長は︑
一 九
化したが︑他方において︑産業の前進的再編成を推進し︑経済社会や産業経営社会を著しく変貌させるとともに︑
新しい産業秩序を形成せしめつつある︒そこで先ず経済社会変貌の基本動向を考察してみよう︒これを端的に図示
以下︑第一図について概説しよう︒経済社会変貌の基本動向の山は︑産業構造の高度化である︒ここに産業構造
の高度化とは︑産業構造の発展的変動であるが︑単なる量的発展ではなく質的発展を伴う変動である︒具体的にい
えば︑日産業構造の重心が第一次産業︵農業・林業・水産業・牧畜業︑等︶より第二次産業
スおよび電気供給業︑等︶へ︑さらに第三次産業︵配給業・運輸業・サービス業︑等︶へと移行し︑それにつれて国民所得
が増大する傾向である︒口以上の如き自然的傾向下に︑
( 1
)特に第二次産業において大企業が発展し資本の有機的
構成を高度化し独占化する傾向︑
( 2
)この独占化傾向において重化学工業︵ないし生産財工業︶が軽工業︵ないし消
費材工業︶の発展に対して相対的に比重を増大してくる傾向である︒
いま高度化の内容を︑わが国の生産構造についてみれば︑﹂昭和三六年現在で︑
新産
業秩
序と
中小
企業
経営
︵松
原︶
すれば︑次頁の第一図の如くである︒
新産業秩序と中小企業経営
論 文
︵鉱
業・
製造
業・
公共
事業
ガ
第一次産業が一四・三%︵三0年 一方において︑高度成長のヒズミや経済的矛盾を顕在
松
原
藤
由
..IL ‑・
― ‑ ‑ ‑ ・ ‑ ‑ ‑ ・ ‑ 、 ‑ ・ ‑ ‑ ‑ ・ ‑ ••• . ‑ ‑ ‑
432
行は著しい︒
第一図 経済社会変貌の基本動向
闊 西 大 學 ユ 社 済 論 集
﹄ 第 一 四 巻 第 五 号
成
形 貌
変
[ 知 業 社 産 済 新 経
~
移の
皮曲体
疸 済 憚 経 茉 放 鹿 開
.
展奈
革 発 術 済 技 経
大量生産とコスト引下げのための経営革新を行ことを意味するのである︒わが国の産業社会における生産革新の進 おいて生産性の向上を目標に︑技術的合理化︑ 度化している︒ 当時はニニ・八%)、第二次産業三八・九形(同一―10•三形)、第三
次産業は同三0年からほぽ横ばいであった︒第二次産業のなかで
は製造業の伸びが著しく︑さらに製造業のなかでは重化学工業の
伸びが目立っている︒製造業中に占める重化学工業の割合は同三
0
年の四六・ニ形から同三六年には六ニ・九飴へと上昇してい
る︒なおわが国工業における輸出の重化学工業化率は同三0
年の
四三・九%から同三六年には五ニ・六%に増大してきている︒ま
独占化も進行している︒ た高度化の進展につれて国民所得は増大しているが︑しかし他方
これを要するに︑わが国の産業構造は高
基本動向の図は︑生産革新←消費革新←流通革新︑
る︒ここに生産革新とは︑新技術を導入せる企業が︑ の進行であ
ーその経営に
経営管理の合理
化︑経営の社会的合理化を推進し︑時代の変化に対応する集中的
次に消費革新とは︑生活の近代化︑画l化︑多様化を意味する︒例えば家事労働節約的耐久消費材の利用︑食品 二0
433
以上の如き生産革新と消費革新の進行は必然的に流通革新を招来する︒
新を基盤とする大量生産として展開される︶と消費革新︵コンシューマー・プロモーションによる消費者主導的購買力の拡大と
( 2 ) d
しての大量消費として展開される︶に対応する高速度回転のマス・チャネルを通ずる大量販売であり︑それは流通にお
ける非合理性の排除︑合理性の追求とマーケティング生産性の向上を意図する流通の系列化︑多角化︑短縮化︑組
基本動向の③は︑大企業のオリゴポリー体制の進展である︒特に高度成長と貿易の自由化に当面して︑企業集中な
いしは企業結合が盛んであるが︑これは大企業の独占的地位を強化することにほかならない︒最近の傾向として注
目すぺき現象は︑財閥の再結集の意味をもつ︑
ループ︑古河グループを始め︑日産グループ︑旧・日窒グループ︑東急グループ︑藤山グループ︑その他がある︒
また融資系列のグループとして︑代表的なものは︑富士銀行グループ︑三和銀行グループ︑第一銀行グループ︑興
新産
業秩
序と
中小
企業
経営
︵松
原︶
織化︑となって著しく進行している︒ って著しく進行してきている︒ ・九光︶︑イタリア︵六0・ニ光︶︑アメリカ︵六三・八%︶︑イギリス︵六四・七%︶︑フランス︵六五・六%︶︑
る︒消費の増大︵大量消費︶と消費革新は無関係ではないo.わが国でも生活の近代化︑
いわゆるグループ化である︒三井グループ︑三菱グループ︑住友グ ここに流通革新とは︑
画一
化︑
のインスタント化や生活様式の洋風化の採用の進展等は︑消費革新の具体的なあらわれである︒
最近ではわが国経済も高度大衆消費経済の段階︵昭和三五年頃より︶にはいり︑消費革新の進行につれて︑消費主導
型経済の様相が濃い︒試みに昭和三六年における個人消費支出︵国民総需要のうちに占める比率︶を外国と比較してみ
ると、わが国も近年かなり増大してきていることがわかるのである。すなわち日本(五0•一彩)、
であ
生産革新︵技術革 多様化が最近にな 西ドイツ︵五六
'・‑・・‑‑・‑・・・‑‑‑‑ー・ー..一・・・‑・・一—ー・一ー・--‑‑‑‑‑‑・‑一 ・一・・‑‑‑‑‑‑‑
#3/J
進むとすれば︑九四・五%の完全自由化が実現されることになる︒ 闘西大學﹃親済論集﹄第一四巻第五号
なお大企業のオリゴポリー体制の一環として重化学工業部門の花形として形成されている企業の有機的連繋また
は企業の集合的連繋としてのコンビナートがある︒既存のものとしては自動車のコンビナート︵豊田地区︶︑電解
電炉と化学のコンビナート︵高岡地区︶︑ガスと化学のコンビナート︵新潟頸城地区︶︑鉄鋼と化学のコンビナート
︵戸畑地区︶︑その他がある︒さらに外国企業と結合する大企業も存在する︒また中小企業の生産力と資本を利用
する下請系列化も高度成長下に推進されてきている︒以上の事象は最近における大企業のオリゴボリー体制の進展
であると理解することができる︒
基本動向の④は︑開放経済体制への移行である︒︵貿易の完全自由化︑八条国移行︑OECD加盟︶わが国は西
欧諸国に遅れたとはいえ︑昭和三五年六月の﹁貿易・為替自由化計画大綱﹂を基本にして︑昭和三五年四月の四一
彩の低自由化率を︑同三六年四月に六二劣︑同三七年四月に七0形︑同
10
月に八八彩︑同三八年四月に八九形︑
へと自由化を促進し︑八条国移行と
OECD
加盟を契機として今年予定通りの自由化措置が同八月に九ニ・一彩︑
なお今年四月の
OECD
︵経済協力開発機構︶加盟により︑わが国も先進工業国として
OECD
の目
的で
ある
︑
切最高の経済成長の達成︵経済成長︶︑回低開発国援助の促進︵開発援助︶︑り世界貿易の拡大に寄与︵貿易の自
( 8 )
由化︶することになった︒すなわちわが国は
OECD
加盟国との間の経済政策の調整︑貿易の自由化︑資本移動
︵直接投資︶の自由化︑経常的貿易外取引︵海上運賃︑技術導入︑海外渡航費︶の自由化︑等を通じて︑世界の自
由先進国の一翼を担わねばならなくなったのである︒このような意味でのわが国の開放経済体制が海外市場の拡大 業銀行グループゞ等であろう︒
勾35
新産業秩序と中小企業経営︵松原︶ ところで賃金格差は最近における若年労働力の一部不足に基づく初任給の引上げなどにより︑従前の拡大傾向から縮小傾向に転じたといわれているが︑しかしその開きは依然として大きい︒それどころか高度成長のもとにおける中小企業それ自体は大企業と比べた相対的比重において年々低下の傾向にあり︑わが国における中小企業の地位
( 4 )
と存在理由が変化しているのである︒もとよりその原因は産業構造の高度化に対応する中小企業の近代化︑合理化
の遅れであろう︒最近の中小企業の倒産は︑大企業の圧迫と︑加えるに中小企業の濫立による共倒れ競争および概
して資本調達力の乏しい中小企業の無理な規模拡張の結果であり︑自然淘汰に追い込まれている姿であると考えら 応
はい
えよ
う︒
︵貿易自由化の積極的側面︶となるであろう反面︑外国製品の流入による国内市場の混乱︵貿易自由化の消極的側面︶を
招来する恐れが多分にある︒大企業はもとより中小企業に対する貿易自由化の影響は︑これを軽視してはならない
であろう︒それはともかくとしても開放経済体制への移行は経済社会を変貌せしめることはいうまでもない︒
基本動向の固は︑二重構造の解消ないし是正の進行である︒ここに二重構造とは︑わが国産業構造の一側面とし
ての大企業と中小企業との並立状態なかんづく﹁規模別格差の著しい構造的存在﹂を意味する︒従って二重構造の
諸指標としては︑切規模別賃金格差︑回規模別労働生産性格差︑り規模別資本装備率格差︑日規模別資本利益率格
差︑等があげられるが︑以上の諸指標によって示される規模別格差には︑純粋に規模の大小からくる企業間格差と
業種別特殊性からくる産業別格差とが存在することはいうまでもない︒しかし規模別格差の中心問題は何といって
も中小企業における資本装備率格差に基因する労働生産性格差であり︑そのもとで中小企業の存立を可能にしてい
る賃金格差すなわち低賃金である︒それ故に二重構造の解消ないし是正とは賃金格差の解消ないし是正であるとl \
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436
ここに経営革新とは︑
市場の開発︑回新製品の開発︑ ているのである︒
州経営の多角化︑日経営効率の水準引上げ︑紺経営の体質改善﹂︑等を進めてい
れよ
う︒
闘西大學﹃経潰論集﹄第一四巻第五号
しかし二重構造の解消ないし是正は社会的にも経済的にも今後の中小企業の基本問題の一っである︒それだけに
重要な問題であるが︑しかしわが国の産業構造は二重構造ではなく実は多重跛行構造なのである︒この理由は後述
する
が︑
ここでは︑わが国の大企業相互間にも︑また中小企業相互間にも規模別格差が大きく存在するのであるか
ら︑大企業と中小企業の二重構造ではなく︑産業構造の実態は多重跛行構造であるというに留めておこう︒従って
この多重跛行構造の解消ないし是正なくしては︑いわゆる二重構造の解消ないし是正は不可能である︒今日進行し
( 5 )
ているのは金融引締下の倒産という名の自然淘汰と中小企業の停滞傾向であるが︑二重構造の解消ないし是正への
政策的意図は経済社会変貌の基本動向の一っであることに相違はない︒
上述の如き経済社会変貌の進行プロセスに︑戦後のビッグ・ビジネスが経済を先導してゆくという支配原理と︑
競争の効率化︑すなわち有効競争の秩序が新産業秩序として形成されつつあるのである︒この点については後述す
さて経済社会の変貌は相互予定的同時存在の関係にある産業経営社会を変貌せしめていることはいうまでもな る ︒
い︒産業経営社会の変貌は技術革新による生産性の向上が必然的に経営革新にまで高揚されることによっておこっ
くことであるが︑それに加うるに︑ 基本的には生産革新︵技術的合理化︑管理の合理化︑社会的合理化︶と﹁切新
その変革に対する人間の新しい考え方︑すなわち新しい経営理念の確立を意味
するのである︒従って経営革新によって動態的な生産者と静態的な生産者とが生じ前者が競争における勝者となる
ニ四
437
経営者が多いのである︒
新 螂 ー 革 ー 一 の 醗 鰭
( 6 )
族会社は八五彩を占めている︑といわれているからである︒そして所有経営者は中小企業に多く︑大企業では被傭
しかし今日の中小企業は同族会社から組織された企業に脱皮し近代化︑合理化を推進しなければならないことを
考えれば︑実力のある専門経営者の増加は大企業はもとより中小企業においても望ましい傾向のあらわれと考える
新産
業秩
序と
中小
企業
経営
︵松
原︶
第二図 産業経営社会変貌の基本動向
..企業間競争の激化
(1)所有経営者の減少→被傭経営者の増加
→新経営者の登場
(2)経営目標の変遷(利潤追求→生産性の向上
→顧客の創造)
(3)近代的経営管理技術の発展
(4)近代的経営管理組織の展開
(5)経営の社会的費任の自党と実践
企業発展のヒズミ
貌
細 頒 ー営—ぷ――畔経 蝉
二五
もとより﹁被傭経営者﹂の増加は﹁所有経営者﹂の消滅を意味 者が急速に増加している︒ 以下第二図について概説しよう︒産業経営社会変貌の基本動向の山は︑所有経営者の減少←被傭経営者の増加←新経営者の登場である︒周知の如く資本と経営の分離および株式分散傾向が顕著となってから︑特に戦後においては専門経営者としての被傭経営
するのではない︒何故ならば︑わが国の約四0万の会社のうち同 社会変貌の基本動向を図示すれば概ね第二図の如くである︒ であろうし︑また経営革新によって各種業界に成長産業と衰退産業
が生
じ︑
そこで︐一方において︑企業間競争︵新製品開発競争︑設
備投資競争︑販売競争︑研究競争︑など︶が激化し︑他方において︑
企業発展のヒズミとして成長︑衰退︑没落がおこって産業経営社
会を変貌せしめ新経営秩序の形成を促進するのである︒産業経営
•一•一•一‑・・‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑
— '
、一一— a •. ‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑'‑‑' ‑‑‑‑‑→ • 一人・ー・•一・ー・一.. . ‑‑・‑‑→ ・・‑・・・‑―‑‑・鼻38
いう﹁人間関係﹂の考え方を経営管理の領域に導入し︑ 誦西大學.ュ親清論集﹄第一四巻第五号
また従業員の勤労意欲を左右するものは﹁情感﹂であると ことができる︒たとえ投資能力がなくとも自己啓発によって明日を創造する専門経営者こそ︑これからの新経営者である︒以上の如き意味での新経営者の登場は戦後において特に著しい︒
基本動向の②は︑経営目標の変遷である︒企業が﹁資本の所有単位﹂である限り利潤を追求するのは当然である
が︑従って企業の経営も利潤の追求を否定するものではない︒しかし経営は生産経済の﹁技術単位﹂であるから利
潤追求の前提として生産性の向上を追求するものである︒利潤追求から生産性向上へ︑しかし今日では︑生産性の
向上が唯一の経営目標であるのではなく︑
創造することが経営目標なのである︒ それとともに製品の開発と市場の拡大という二つの活動によって顧客を
それ故に経営にとって重要なことは︑︵イ︶新製品の開発と旧商品の改良︑
︵口︶プロダクション・コストとマーケティング・コストの引き下げ︑︵ハ︶市場活動︑特にコンシューマー・プロ
モーション︑等であり︑今日この傾向は著しい︒すなわち経営目標は変遷しているのである︒
基本動向の③は︑近代的経営管理技術の発展である︒経営管理技術の発展は︑もとより戦後における特有の現象
ではないが︑わが国の経営における計数的管理と人間的管理の諸技術は著しく発展している︒〜今日では︑かっての
科学的管理法︑換言すればテーラー・システムやフォード・システムは︑
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へと発展して計数的管理の諸技術を形成し︑
古い温情主義に変る人間関係の高揚
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ということが新しい人間的管理の中心をなすにいたっている︒
もとよりこのような経営管理技術の発展は︑戦後における技術革新の中心であるオートメーション︵デトロイド方
式・フィードバック方式・コンビューター方式︶の展開と密接な関係があることはいうまでもない︒最近のわが国にお
二六
439
二七
一般の消費者に対する責任︑競争する ける近代的経営管理技術の発展は著しい︒
基本動向の山は︑経営における管理の機構としての経営管理組織の展開である︒いうまでもなく経営管理組織の
展開は︑経営管理技術の発展と相互に不可分の関係を有するものである︒何故ならば経営管理技術の発展は︑むし
ろ各種の経営管理組織の展開のうちに︑とりわけ組織化過程のうちに認められるからである︒経営管理組織の展開
としては︑直線式組織
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)
から職能式組織
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)その他︑直線式職能組職︑
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)︑直線参与式組織
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)︑委員会組織
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)︑事業部門組織
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)︑等がある︒
右に示した諸組織の展開傾向は概ね次の如くである︒テイラー・システムの時代には命令系統を重視した直線式
組織が一般的であったが︑大規模経営の発展につれてテイラーやエマーソンが提唱した職能組織が採用されるにい
たり
︑
フォードシステムの時代に特に普及した︒さらに世界恐慌後は直線参与組織を採用するにいたっている︒戦
後におけるわが国の大企業は殆んどこの直線参与式組織を採用しているが︑しかし最近では︑経営の多角化と大規
模化から︑究極において︑独立採算制の実現を意図するために︑事業部門組織を採用する企業があらわれている︒
( 7 )
もとよりこの事業部門組織は従来の機能部門組織とは異なる編成原理にもとづく経営管理組織の形態である︒
基本動向の固は︑経営者の社会的貢任の自覚と実践ということである︒ここに経営者の社会的責任の自覚とは︑
具体的には企業の従業員に対する責任︑企業の存立する地域社会への責任︑
同業者に対する責任︑の自覚を意味する︒このような内容での経営者の社会的責任は︑もとより資本主義経済の体
( 8 )
制的変動に対する経営者の現実的認識︑特に最近の経済社会の変貌を認識すること︑企業を取り巻く環境の変化を
新産業秩序と中小企業経営︵松原︶
~·---—ー、• 一—-‑‑‑‑‑・‑―‑‑‑‑・‑‑‑‑‑‑‑‑‑ ―‑ ---—---‑‑‑‑‑‑‑---—-一_℃‑一‑‑‑‑‑‑‑‑
440
闊西大學ユ紐清論集﹄第一四巻第五号
認識すること︑経営者の根本的機能を認識すること︑から自覚的に形成されてきたものであろう︒しかし経営者の
社会的責任の自覚と実践は﹁企業エゴイズム﹂の完全否定ができないことから一部の進歩的経営者の提唱と実践に
終止しているが︑経営者の社会的責任の自覚は︑今日の産業経営社会における経営者精神ないし経営者の倫理とし
て位置づけられるべきものであり︑産業経営社会変貌の基本動向の︱つであるといえよう︒
上述の如き産業経営社会変貌の進行プロセスに︑戦後の民主化と科学化を基盤とする﹁経営近代化の秩序﹂が新
経営秩序として形成されつつあることはいうまでもない︒この点については後述する︒
ところで新産業秩序との関連における中小企業経営の問題︵在るぺき経営原則︶を考察せんとする場合には︑
産業構造の高度化と中小企業構造の高度化の︑それぞれの問題点を理解しておくことが前提として必要であろう︒
そこで先ず産業構造高度化の問題点を図示すれば概ね次頁の第三図の如くになる︒
以下︑第三図について概説しよう︒わが国における産業構造の高度化には︑先ず第一次産業の近代化と軽工業の
質的強化が前提となる︒このことは第一次産業が産業革命的洗礼を完全に受けていないし︑戦後の農地改革も失敗
であるし︑軽工業の質的強化は世界貿易構成の変化と︑わが国との先進国間貿易のことを考えれば明白であろう︒従
ってこの前提の上に重化学工業化を進めることが︑今日の正しい意味での産業構造の高度化であらねばならない︒
そしてこの軽工業の質的強化と重化学工業化という使命を鷹接担っているのが︑わが国特有の過剰人口と二重構
造︵
明治
の初
期的
人口
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工業
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代的
諸工業と固有工業ないし小工業という二重構造︑それが今日では多重跛行構造化しているのである︶の上に成立している大企
業と中小企業であることはいうまでもない︒しかるに今日︑大企業はオリゴポリー体制を強化し中小企業は下請系 ニ八
先ず
441
第三図 産
業 構 造
の 高 度 化
新産
業秩
序と
中小
企業
経営
︵松
原︶
第一次産業の近代化 オリゴポリ一体制
工業
内部
構造
の高
度化
経 営 能 力 労働 力︵ 技能
︶ 技 術 水 瑯 海 外 術 要
'
企 業 規 模 決 定 要 因 重 化 学 工 業 化 軽 工 業 の 質 的 強 化
産業棉i立政策の確立 財政・金拙政策の裏付け 湿傭政策のlftJl!i 技術・経・;む教nの充実
貿易政策の,(,fr.
後進国1111発の推辿 水乎1(り国際分父の促進 各国の経済協力の増進
産 業 構 造 の 高 度 化
下胡系列化、陪怨分化、
部品生歴、専門化
第三次産業の繁栄
二九
そこで産業構造高度化の問題点として︑供給側要 も需要側にもある︒ 大きい︶︒もとより産業構造高度化の限界は供給側に は必掟である︵輸出成長率の高い国ほど工鉱業成長率は 増大しなければ産業構造高度化の停帯が生ずること すればわが国工業における輸出の重化学工業化率が 要の限界を考える時︑輸出の増大がなければ︑換言 とながら︑主として国内需要である︒従って国内需 重化学工業化を支えているのは︑海外需要もさるこ 対して需要側要因は国内需要と海外需要︑すなわち
( 9 )
輸出の如何である︒ところがわが国における昨今の 準︑労働力︵技能︶︑経営能力の如何である︒これに いうまでもなく供給側要因は︑設備投資︑技術水 けても後者の企業規模決定の要因は何であろうか︒ セスにおける軽工業の質的強化と重化学工業化︑わ のような関係における大企業と中小企業の進行プロ 列化し階層分化を余儀なくされているのである︒こ
-~-—• ‑‑ ‑‑
---~--、---~---—-—-一—-~--'----~~~--ー-—----442
闊西大學q
社清論集﹄第一四巻第五号
因からみて特に配慮すべきことは︑産業構造政策の確立︑財政・金融政策の裏付け︑麗用政策の推進︑教育︑わけ
ても技術および経営教育の充実︑等であり︑需要側要因からみて︑特に配慮すべきことは︑貿易政策の確立︑後進
国開発の推進︑水平的国際分業︵先進国工業間︶の促進︑各国の経済協力の増進︑等である︒.
さて周知の如く︑わが国の軽工業ないし消費材工業には中小企業が多く存在しているが︑しかし重化学工業︑す
なわち金属工業︑機械工業︑化学工業にも中小企業がかなり多く存在しているのである︒
が︑大企業と中小企業は一面において強い補完関係にあり︑他面において激しい相剋関係にある存在である︒従っ
て産業構造の高度化過程において大企業と中小企業は﹁補完と相剋﹂を繰り返しながら工業内部構造を高度化しつ
ここに工業内部構造の高度化とは軽工業の質的強化と重化学工業化︑わけても高度加工諸工業の確立を意味する
のである︒高度加工諸工業とは︑い附加価値率が高く︑回連関効果︑
大きい︑パ関連諸工業の技術水準引上げ効果の明らかな工業のことである︒
これを要するに第一次産業の近代化︑第二次産業における工業内部構造の高度化︑第三次産業の繁栄が現実にお
けるわが国の産業構造の高度化であるが︑産業構造高度化過程における大企業のオリ︒コポリー体制の進展は資本の
有機的構成を高度化するとともに︵これに反して自己資本充実率は低下して企業の体質を不健全にしている面があ
る︶独占化傾向を顕著ならしめている︒従って当然のことではあるが大企業と比べた中小企業の相対的比重は低下
の傾向にある︒それ故にわが国の産業構造の高度化には︑二重構造の解消ないし是正という問題が︑単なる賃金格
差の問題としてではなく︑中小企業の死活︑すなわち成長と没落に関連する問題としてつきまとっているのである つ産業の前進的再編成を進めているのである︒
すなわち関連諸工業に対する市場造出力の しかも一般論ではある
゜
443
第四図 中 小 企 業 構 造 の 高 度 化
新産業秩序と中小企業経営︵松原︶
産業構造の高度化
大企業のオリゴボリー体制 中
小 企 業 構 造 の 高 度 化
工業内部構造の高度化
るにいたっている︒そして中小企業存立の不合理的 において一部若年労働力の不足という問題を提起す 可能ならしめていた過剰労働人口は︑高度成長過程 件として解消への過程にあり︑また低賃金の存在を の条件であった低賃金は︑今日では不合理的存立条 ながら存立している︒しかるに中小企業存立の唯 小企業それ自体の檻立共倒れの危険性を絶えずもち け︑或は隷属化しながら︑また他方においては︑中 度
化過
程に
︑
一方においては︑大企業の圧迫をう 業は産業構造の高度化および工業内部工業構造の高 以下︑第四図について概説しよう︒最近の中小企 う︒この問題点を図示すれば第四図の如くである︒ 度化および工業内部構造の高度化との関連における 構造の高度化を必要とする︒それ故に産業構造の高 ところで二重構造の解消ないし是正には中小企業 と考えられるのである︒中小企業構造高度化の問題点を特に考察してみよ
― ‑ ‑ 一 ‑ ‑ 、 ̲ ̲ ̲ ̲ ̲ ̲ ̲ ̲ , ̲ ̲ ̲ ̲ ̲ ヽ ‑ ‑ ‑‑ ‑ ‑ " ‑‑ --—-—---
ー~ヽ‑ , ・ ---~----•-ー・一--- ---―-、---—- , .. ..444
次に経営の意欲は︑ あ
る︒
闘西大學3
社清論集﹄第一四巻第五号
条件︑具体的にいえば低賃金︑長時間労働︑低い福利厚生施設︑多い労働災害︑等の中小企業における︑いわば多
元的労働問題の解決は︑労働の社会的地位の変化と向上から必然的に解決すべきことが要請されている︒けれども
産業構造の高度化および工業内部構造高度化の過程において中小企業は︑それに対応する近代化と合理化の遅れを
多分にもっているのが今日の現状であるといって過言ではない︒そこで端的にいえば︑今日の中小企業は国民経済
における中小企業の存立条件と地位の変化に当面しながら︑しかも設備投資の生産力化の進展から必然的におこり
うる過当競争︑過剰生産の危険性が多分にある産業社会のなかで存立しているのである︒
ところで中小企業は︑もとより一般論としてであるが︑本質的な欠点をもっている︒それは低賃金と労使関係の
(10) 後進性と過小規模の三つである︒この本質的な欠点とともに中小企業経営失敗の外部的原因と内部的原因が︑相重
なり中小企業の現実的な窮乏と倒産を拍車しているのが今日の姿態である︒
さて既に述べた如く︑過当競争と過剰生産の危険性のある産業社会のなかで本質的な欠点と経営失敗の外部的︑
内部的諸原因をもつ中小企業が成長ないし繁栄してゆくためには︑如何なる条件が必要であろうか︒最少の必要条
件として考えられることは経営の知識︑経営の意欲︑経営の機会を企業の経営者が掌握して前向きの態勢をとるこ
(11)
とで
ある
︒
いうまでもなく経営は物の開発︵技術︶と人の開発︵管理︶である︒そのための経営の知識は︑ドラッカー
(P
.F
.
Dr
uc
ke
r)
のいう如く﹁経営の知識は力であり︑力は責任である︒﹂今日の経営には経験だけでなく知識が必要で
一般に︑富をうること︑独立自営すること︑会社を発展させること︑新しいものを創造する
ヽ '
44.5
新産業秩序と中小企業経営︵松原︶ 合化と商工組合化︑等︶により︑或は協業化︵団地造成による集団化︑共同出資会社の設立︑企業の合同合併︑ こと︑などの目的活動から生ずるものであるといわれているが︑経営の意欲が旺盛でなければ企業は繁栄しない︒さらに経営の機会とは︑経営の環境を機敏につかむこと︑換言すれば社会的︑政治的︑経済的環境を早く理解することであり︑既に当初において述べた経済社会や産業経営社会の変貌を知ることも経営の機会をつかむことにほか
かくして経営の知識︑経営の意欲︑経営の機会の三つが経営者に掌握され︑活用されるところに明日への現実的
な経営戦略が生れるのである︒従って経営の知識と経営の意欲と経営の機会は中小企業繁栄の必要条件であり︑ま
たは成長の根本的要因であるといっても過言ではない︒
以上の論述に大過なしとすれば︑それでは産業構造の高度化および工業内部構造の高度化過程において︑大企業
のオリゴポリー体制が進展し︑他方︑中小企業の合併︑業種転換︑専門化および階層分化と倒産が進行するなかで︑
中小企業が成長ないし繁栄の要因を充足し︑それを活用してゆくためには如何なる態勢を採ることが肝要であろう
か︒これには中小企業の﹁中規模化﹂ないし﹁中堅企業化﹂により組織された企業に脱皮し︑近代的経営管理の採
用と経営の社会的責任を自覚して︑近代化や合理化の遅れを取り戻す前向きの経営努力をする態勢を採ること以外
には道がない筈である︒このような前向きの経営努力によって実現するのが︑ほかならぬ経営革新である︒経営革
新は何も大企業にのみ特有な現象ではなく︑今日では中小企業といえども経営革新を行うことが必要とされている
のである︒もとより中小企業はそれ自体の努力のみでは︑近代化や合理化の促進が︑従って経営革新を行うことが
容易でない企業の典型である︒しかし中小企業の経営革新が時代的︑必然的要請であるからには︑組織化︵協同組 な
らな
い︒
• ···•- ‑ ‑ ‑ ― ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ‑‑ ‑ ― . ・ ‑ ・ ・ ・
— · · · - · · · - · ‑‑・・・ ー・一・・・・‑・・・‑・・● `―一—・― 會11116
従って産業構造の高度化との関連における中小企業構造高度化の問題点は︑中小企業が経営革新により︑以上の
如き課題を解決して二重構造︑すなわち多重跛行構造の解消ないし是正を如何に実現してゆくかということにある
と考えられるのである︒もとより中小企業における昨今の労働生産性の向上なき賃上げや︑下請系列化によって推
進されている階層分化や︑金融引締の影密もあることは勿論であるが︑経営の知識︑経営の意欲︑経営の機会を掌
握しえざるための倒産は︑端的にいえば競争社会における自然淘汰であって中小企業構造の高度化による二重構造
の解消ないし是正への接近であるとは認めがたい︒
いうまでもなく中小企業構造の高度化のみでは中小企業の多重跛行構造の解消は不可能であるとしても︑その是
正を積極的に促進するものであることは間違いない︒ここにおいて本小論の結論にはいろう︒
最近までの技術革新を主たる要因とする高度成長は経済社会と産業経営社会をともに変貌せしめているが︑その
変貌の進行プロセスに新産業秩序︵ビッグ・ビジネスが経済を先導してゆくという支配原理と有効競争の秩序︶と .
︐
o 理の合理化︑企業規模の適正化︑労使関係の適正化︑闘西大學凸社清論集し第一四巻第五号
等︶によって経営革新を行うことが必要でぁる︒或はまた中小企業対策による経営革新への積極的な誘導と︑それ︐
に対応する経営態度を採ることが必要であろう︒
これを要するに中小企業の経営革新は組織化と協業化と中小企業対策の相互に密接な関係と影響のもとに進展さ
れるべきものである︒このような意味での中小企業の経営革新を基盤にしてこそ︑いわゆる中小企業構造の高度化
が実現するのである︒なお中小企業構造の高度化には少なくとも︑中小企業の業種別近代化︑技術の向上︑経営管
等の課題が解決されなければならないことはいうまでもな
一 四
441
新産業秩序と中小企業経営︵松原︶ 規模過小論と相関関係はあるが︑それは本質的に異なるものである︒後者は近代的経営としての
五
新経営秩序︵民主化と科学化を基盤とする経営近代化の秩序︶の形成が行われている︒この新産業秩序と新経営秩
序は相互予定的同時存在の関係である︒それ故に両者を綜合統一して新産業経営秩序と仮称しておこう︒しからば
新産業経営秩序が形成される現実的な論理過程は如何︑
体制︑産業構造︑産業秩序の︑
もとよりこの三つの用語︑の明確なしかもより現実的な区別は困難である︒しかし私見では︑産業体制を資本主
義経済に固有なる産業の全体的な組織ないし在り方であると考え︑したがって産業体制は︑
︵産業として成立している各部門の生産力構造︶と他方において産業構造との内的関連のもとに形成されるところ
の産業部門間の思想的な現存秩序︑すなわち産業秩序を包括する産業の全体的な組織ないし在り方であると規定す
るの
であ
る︒
一方において産業構造 義語として使用されているからである︒ この課題に答えるためには︑先ず最近の流行語である産業
それぞれの意味内容を明らかにしておこう︒何故ならば︑これらの用語は殆んど同
それでは新産業秩序の主要な問題とは何か︒第一は︑新しい産業主義の推進という問題であり︑第二は︑産業社
会における競争の秩序、端的にいえば、競争の過当性の問題である。•ここに新しい産業主義とは、ビッグ。ビジネ
スが経済を先導していくという考え方であり︑戦後の先進国における産業活動の活発さは︑この新しい産業主義が
十分に発揮されている結果であるという原理である︒この新しい産業主義は︑既述の如く︑大企業のオリゴポリー
体制の進展となって具体化されているが︑なお今後の産業構造の問題点の一っである﹁規模過小性論﹂︵国際競争力
との関係における大企業の規模過小性論︶の理論的根拠となっている︒もとより大企業の規模過小論は中小企業の
﹁組織された企
448
であるといって過百ではない︒
闘西大學占紅清論集﹄第一四巻第五号
業﹂に脱皮するための﹁中規模化﹂の問題であり︑また中小企業の組織化および協業化の理論的根拠となるもので
第二の産業社会における競争の過当性とは︑競争秩序の混乱している状態を意味するのである︒もとより経済の
行するものである︒ここに﹁独占的競争﹂が成立するが︑わが国の独占禁止法は︑独占行為を否定して公正な責任
産業社会の特殊性から︑
しく展開され︑これに中小企業の濫立共倒れ競争が巻き込まれて﹁過当競争﹂ のある競争︑すなわち﹁規制された競争﹂の実現を望んでいる︒しかるに独占禁止法の骨抜き下に大'企業のオリゴポリー体制は進展し︑公正な責任のある競争を否定する独占の復活と発展が顕著となってきている︒しかしわが国
オリゴポリー体制の進展下においても新しい企業の参入が活発に行われて独占的競争が激
という競争秩序の混乱を招き︵貿易
秩序
の混
乱を
も招
いて
いる
︶︑
ところで産業構造の問題の︱つである規模の過小性︵大企業と中小企業の過小性︶と︑産業秩序の問題の一っで
ある競争の過当性との間には︑悪循環的な相互関係があることはいうまでもない︒換言すれば﹁規模の過小性が競
互加速関係が見出され︑ ﹁平行的競争﹂から﹁蛋食的競争﹂に︑さらには﹁破滅的競争﹂へと進
ここに全体としての産業秩序の混乱を露出しているのが︑最近のわが国産業社会の現状
争の過当性を招き︑競争の過当性が規模の過小性を規定するというように︑両者の間には相互依存関係︑進んで相
( 1 2 )
これが産業秩序の特殊日本的な性格を形成しているといってよい︒﹂
そこで大企業のオリゴポリー体制の進展に端的にあらわれている新産業主義︑すなわちビッグ・ビジネスが経済 来︑産業社会における競争というものは︑ 自動的調節作用が著しく失われた昨今︑競争秩序としては︑古典的な意味での﹁自由競争﹂などありえない︒本
ある
︒
六
449
凶 を先導してゆくという支配原理と︑独占禁止法が規定する公正な責任のある競争という理想的原理と︑過当競争の展開という現実の産業秩序の混乱との︑相関関係において︑今日︑産業体制上の課題として提起ないし意識されている主要な問題は︑
もとよりこれらの諸問題が政策的に如何に解決されてゆくかは︑現実の産業構造や産業秩序に多大の影孵を与え
は︑経済社会変貌の進行︒フロセスに形成されつつあるビッグ・ビジネスの支配原理および有効競争の秩序と産業経
営社会変貌の進行プロセスに形成されつつある民主化と科学化を基盤とする経営近代化の秩序を前提として︑
政策的解決が促進されるであろうが︑
ろう︒それ故に中小企業構造の高度化による二重構造︑すなわち多重跛行構造の解消は︑仮りに不可能であるとし
ても
︑
ここで一応︑第一次産業部門に関するものを除外して考えれば︑次の三つであろう︒日産業の
この解決過程に綜合統一としての新産業経営秩序の形成が速度を早めるであ
その是正は︑上述の如き意味での新産業経営秩序の形成のなかで推進されるのであるといえよう︒もとよ
り︑これからの中小企業経営に関する経営原則の考察も︑
て現実的に可能となる︒それでは︑これからの中小企業経営は如何に在るべきか︑経営者の立場に論点を集中し︑
これを紙数の制約から︑極めて要約的に列挙すれば次の如くである︒
現実の事態の進展方向をよく認識し︑
新産業秩序と中小企業経営︵松原︶
ることはいうまでもない︒ここに産業秩序の問題を考察する立場から︑端的に結論するならば︑ 問題︑国中小工業の組織化の充実と協業化の促進問題である︒ 国際競争力の強化と独占禁止法の改正問題︑
七
口産業界の自主調整と官庁統制ないしは官民協力方式による調整の
これらの諸問題
その
このような新産業経営秩序の形成を理解することによっ
それに対する方針を考えて実践することが必要である︒すなわち
山中小企業の国民経済的地位と存在理由の変化を自覚すること︒②政府の中小企業対策の展開に注意し︑
こ
450
する道理はない︒中小企業の繁栄ないし成長は︑
中小企業が一刻も早く非近代性を捨てて組織された企業に脱皮
闊西大學ニ枇清論集
L
第一四巻第五号
れを利用すること︒③今日の経営も大切であるが︑むしろ明日の経営について思索すること︒④現状維持的タ
イプや模倣的タイプを捨て︑常にリーダーシップをもつように努力し︑近代的経営管理技術を可能的範囲にお
いて採用するよう心掛けること︒固経営の機会を開発するよう常に努力すること︒佃将来の経営には危険が感
じられるが︑不安な気持を捨てること︑等が必要である︒
企業経営者の自己啓発によって組織された企業に脱皮することが必要である︒すなわち
( 1 3 )
田中小企業の誤れる﹁経営者病﹂を自ら克服すること︒図近代化や合理化に一層の積極的努力を続けること︒
③独創性と専門化を開発し︑また他面︑組織化および協業化体制を確立すること︒山労使協調ないし労使共同
経営にふみきること︒固労働条件︑
経営の知識︑経営の意欲︑経営の機会を綜合的に活用して創造する経営者となること︑等が必要である︒ 環境の積極的改善と労働節約的経営方式を導入するよう考えること︒⑥
もとより以上に列挙したことは︑机上の理想論であるかも知れない︒しかし技術革新を主たる要因とする高度成
長によって激しく変貌している産業経済社会のなかで︑中小企業という著しく非近代的︑生業的な零細企業が繁栄
し︑近代化と合理化の遅れをとりもどしつつ大企業のオリゴボリー体制の断層に活路を求めて新産業経営秩序︵ピ
ッグ・ピジネスの支配と有効競争の秩序と経営近代化の秩序︶のなかに国民経済的存立条件の基盤を確立すること
なくしては不可能である︒もしそうでなければ古い中小企業の窮乏問題を絶えず新しい形において永遠に繰り返す
だけである︒
(B)
一 八