野入 千絵 審査結果の要旨
論文審査の結果の要旨
野入千絵氏(総合医療センター腎・高血圧内科・専攻生)の学位審査委員会は、平成27年4 月27日に毛呂山キャンパス本部棟アドミッションセンターにて開催された。審査委員の他に指 導に当たった長谷川元教授がオブザーバーとして出席した。初めに申請書類により資格条件の確 認が行われ、学位申請者として適確と判断された。申請論文のタイトルは”Clinical significance of fractional magnesium excretion (FEMg) as a predictor of interstitial nephropathy and its correlation with conventional parameters”であり、 Clinical and Experimental Nephrology に原著論文として採択された。申請者が筆頭著者、埼玉 医科大学総合医療センター腎・高血圧内科の医師が共著者、同長谷川元教授がコレスポンディン グオーサーである。申請者は2001年6月より当該科にて助教および専攻生として断続的に研 究に従事している。
尿細管間質障害(TIN)では明確な尿所見を欠くため、診断や病勢評価がしばしば困難である。そ こで本研究は TIN の組織学的障害度と相関することが示されている尿中マグネシウム排泄率 (FEMg)の臨床的意義を、一般的に用いられている TIN の臨床的パラメーターである NAG との 比較を通して明らかにするために行われた。94名の主として腎生検にて組織学的に診断された 慢性腎臓病(CKD)患者を対象に、後方視的解析が行われた。なお、本研究は総合医療センターの 倫理委員会にて承認されていることが論文中に明記されている。
主たる結論は、
1)高NAG 群(TIN 重症群)では FEMg が有意に高値を示し、単回帰分析および重回帰分析に てNAG 値の予測因子として FEMg のみが有意であった。
2)NAG と同様に FEMg についても、eGFR との逆相関が認められた。ただし、eGFR>30mL/ 分の症例に限定するとこの逆相関は消失するものの、NAG と FEMg の間には相関が認められた。 3)原疾患別にこの関係を検討したところ、糸球体腎炎群ではNAG と FEMg に相関は認められ ず、NAG の上昇は FEMg と乖離していた。一方、尿細管間質性腎炎群では NAG と FEMg に相 関を示した。
4)NAG と FEMg を合わせて評価することで、糸球体腎炎群と尿細管間質性腎炎群を区別でき る可能性が示唆された。
5)TIN の際に FEMg が増加する機序は不明だが、虚血や酸化ストレスの増大がマグネシウム輸 送に影響を与えている可能性がある。
6)FEMg の判定基準としては、低 NAG 群の FEMg の 95%信頼区間の上限が 6.4%であること、 および先行論文の結果から、FEMg>6.0%を判定基準として想定している。
口頭発表の後に以下の討論が行われた。主たる質疑応答と指摘は、
野入 千絵 審査結果の要旨 2)TIN とは具体的にどのようなものを想定しているのか?その進展メカニズムは?
3)NAG および FEMg と TIN の関連性はどこまで実証されているのか?それぞれと関連する TIN の組織学的特徴は何か?今回の対象症例の腎生検組織との関連は検討したのか?FEMg と腎 機能予後との相関は?
4)NAG と FEMg を同時に測定することの具体的な臨床的メリットは?
5)eGFR>30mL/分の症例に限定した解析において、NAG と FEMg の間の係数は R=0.372 であ り、相関は認められないとするべきではないか?