Title
Hepatocyte Growth Factor Gene Therapy Slows Down the
Progression of Diabetic Nephropathy in db/db Mice( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
加川, 友代
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1410号
Issue Date
2006-05-17
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/23129
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 加 川 友 代(徳島県) 博 士(医学) 乙第 1410 号 平成18 年 5 月17 日 学位規則第4条第2項該当
Hepatocyte Growth Factor Gene Therapy Slows Down the Progression Of Diabetic Nephropathyin db/(仏Mice
(主査)教授 藤 原 久 義 (副査)教授 石 塚 達 夫 教授 中 島 茂 論文内容の要旨 糖尿病性腎症は近年増加の一途をたどり,新規透析導入患者の第一位を占め,また透析導入後も予後不良であ り,最も問題とされる腎臓病のうちの1つである。最終的には腎硬化病変に進行するが,最も顕著な病理学的変 化の一つは,メサンギウム基質の増加によるメサンギウム領域の拡大であり,これは少なくとも部分的には
transforming growth factor-β(TGF-β)の過剰発現に関連している。それに加え,尿細管上皮及び糸球体細 胞のアポトーシスが腎硬化病変形成に関与している。
一方,肝細胞成長因子(Hepatocyte growth factor,HGF)は肝細胞のみならず様々な細胞,特に上皮細胞
と内皮細胞において強力な血管新生作用と増殖促進作用を示す。さらに最近では,PI3K/Akt経路の活性化によ る抗アポトーシス作用やTGF-β阻害によるHGFの抗線維化作用も注目されている。慢性糸球体腎炎や下部尿路 閉塞に伴う腎硬化症モデルに対する有効性は報告されているが,若干の研究の他には,糖尿病性腎症へのHGF の効果ははとんど検討されていない。 本研究では,糖尿病自然発症マウスdb/dbに対し,HGF遺伝子を導入したアデノウイルスを用いて,HGF遺 伝子治療の糖尿病性腎症,とりわけ糸球体硬化に対する有効性を検討した。 [対象と方法] 糖尿病性腎症発症モデルとしてC57BL/KsJ-db/db(db/db)マウス(メス,12週齢)を,非糖尿病コントロー ルとしてC57BL/KsJ-db/+m(db/+m)マウスを対象とした。HGF遺伝子は,アデノウイルスをベクターとして Ad.CAG-HGF(1Ⅹ109pfu/mouse)を大腿筋に筋注(n=8),コントロールとしてAd.CAG-LacZ(n=8)を用い, 12週間後に評価した。定期的に24時間蓄尿と,採血を行い,腎機能(尿量,尿中アルブミン,血清アルブミン, クレアチニン,BUN,クレアチニン・クリアランス(Ccr)),糖代謝(血糖値,HbAIc),HGF血中濃度を評価 した。また24週齢で組織学的検討(HE,PAS,Sirius Red),免疫組織学的検討(Flk-1,PCNA,TUNEL),電 子顕微鏡,ウエスタンプロット法(TGF-β1)を行った。また別にHGF群,LacZ群(各n=15)を作成し12週齢 から25週間観察し長期生命予後を検討した。 [結果] 1)アデノウイルスをベクターとするHGF遺伝子の大腿筋筋注はHGFの血中濃度を上昇させたが,LacZ群では 上昇は認めなかった。2)血糖値とHbAIc値はLacZ群と差を認めず,HGF遺伝子治療はマウスの糖代謝に影響 を及ぼさなかった。3)LacZ群では尿量ならびに尿中アルブミンの減少傾向がみられたが,HGF治療群では両 者共に不変であった。しかし血中アルブミンは両群間で変わらず,クレアチニンクリアランス(Ccr)で表され る腎機能はHGF治療群で有意に良好であった。4)HGF遺伝子治療はdb/dbマウスの腎糸球体面積の減少を抑制 した。これは糸球体細胞数増加(特に内皮細胞)ならびに糸球体硬化減少によると考えられた。5)HGF遺伝子 治療はdb/dbマウス腎糸球体ならびに尿細管の線維化ならびに腎におけるTGF-β1の発現を抑制した。6)HGF 遺伝子治療はdb/dbマウス腎糸球体ならびに尿細管細胞の増殖に影響を与えなかったが,アポトーシスを減少さ せた。7)HGF遺伝子治療はdb/dbマウスの腎糸球体基底膜の厚さに影響を与えなかった。8)HGF遺伝子治療 はdb/dbマウスの長期生命予後を改善した。
-83-[考察] 一般に,糖尿病性腎症は多尿,アルブミン尿を呈する過剰濾過期から腎硬化期に進行する。腎硬化期では GFR低下に伴い尿量は減少し,アルブミン尿も減少する。HGF遺伝子治療は,抗線維化作用及び抗アポトーシ ス作用によりこの進展過程を抑制すると考えられる。 糖尿病腎症発症db/dbマウスは非糖尿病db/+mマウスよりはるかに多い尿量とCcrを示したことは,実験開始 時よりdb/dbマウスが既に糖尿病性腎症の糸球体過剰濾過期であったことが示唆される。今回の研究では対照群 では,観察期間中に腎硬化期への進行,尿量とCcrの漸減が認められたが,HGF遺伝子治療がこの進行を著しく 抑制したことを明らかにした。HGF遺伝子治療は対照群で認められた顕著な糸球体硬化と糸球体及び尿細管の 線維化を有意に抑制した。また,糸球体細胞数も有意に多く,HGF遺伝子治療がdb/dbマウスの糖尿病性腎症 の機能的及び病理学的側面で病変進行速度を減速させたのは明らかであり,より重要なことは生存率を改善した ことである。 血糖値とHbAIc値がHGF治療に関係なかったことは糖尿病性腎症へのHGFの有効性が糖代謝と無関係である ことを示した。糸球体細胞数(特に内皮細胞数)はHGF遺伝子療法db/dbマウスでかなり多く,Flk-1及び TUNEL分析による免疫組織学的検討では,HGF遺伝子療法によりdb/dbマウスの糸球体内皮細胞及び尿細管上 皮細胞のアポトーシスを抑制,すなわちHGFの抗アポトーシス作用を明らかにした。内皮細胞が糸球体濾過に 関係するため,糸球体内皮1細胞数が保たれることは糸球体濾過の機能的な維持に大いに貢献したと思われた。 また,糸球体基底膜の厚さは糸球体透過性の重要な調整部位であるが,今回の研究では微細形態上の変化は確認 できなかった。 従来の報告では腎尿細管問質へのHGFの抗線維化作用が報告されているが,本研究ではdb/dbマウスの糸球 体のみならず腎尿細管問質においても線維化抑制を認めた。さらに,毛細血管内皮細胞と同様に尿細管上皮細胞 においてもアポトーシスを減少させた。したがって,HGF遺伝子治療は,糖尿病性腎症の糸球体及び腎尿細管 問質領域の両者に有益な作用を示した。また糸球体硬化指数を抑制し,糸球体の緑維化領域拡大を抑制した。し たがって,HGF治療はメサンギウム基質沈着と線維化の抑制及び糸球体細胞構造,特に内皮細胞,の維持を介 して糸球体の萎縮を抑制した。本研究ではHGF療法を行ったdb/dbマウスの腎臓ではウエスタンプロット法に よるとTGF-βの発現が有意に減少していた。TGFTβは,潜在的に膠原線維を産生する筋線維芽細胞へのメサン ギウム細胞の形質変換を加速するので,HGFの抗TGF-β作用は,糖尿病性腎症の糸球体硬化の防止に重要であ ると思われた。 糖尿病性腎症患者に対する確実な治療法はなく,高血糖に対して厳格なコントロールを行っても病気の進行を 必ず遅らせるわけではなく,多くの患者が腎不全で慢性透析を行わなければならない。HGF治療を行うことに より透析導入を遅らせる可能性があり,それは糖尿病性腎症を臨床的及び病理学的に進行を予防する,または少 なくとも減速させる有望な手段の一つであることが示唆された。 [結論] 本研究は,HGF遺伝子治療が糖尿病性腎症の新しい治療手段となる可能性を示唆する。 論文審査の結果の要旨 申請者 加川友代は,糖尿病性腎症モデルdb/dbマウスを対象としてHGF遺伝子治療を行い糖尿病性腎症の 進行を抑制することを明らかにした。この実験結果は,現在効果的な治療法のない糖尿病性腎症の病態の解明な らびに治療の進歩に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] HepatocyteGrowthFactorGeneTherapySlowsDowntheProgressionofDiabeticNephropathyind研b Mice Nephron PhysiologylO2,92-102(2006).