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しかし、繁殖結果に最も関連している要因は前年の繁殖結果であった

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

やままさひろ 学 位 の 種 類 博士(学術)

学 位 記 番 号 乙第 3 号

学位授与年月日 平成 27 年 3 月 19 日

学位授与の根拠 岩手県立大学学位規則第3条第4項

学 位 論 文 題 目 東北日本におけるクマタカの繁殖と分布に影響する要因 論 文 審 査 委 員 主査 金子与止男

副査 松田裕之 由井正敏 審査結果の要旨

本論文は、生息個体数が 2,000羽程度と推測される絶滅危惧種である鳥類のクマタカの繁 殖と分布に影響する要因を明らかにし、生息地の評価を適正に行う手法を検討したものであ る。

繁殖に影響する要因に関しては(第Ⅲ章)、1990年から2008年に山形県の35つがいのク マタカから得られた414例のデータを用い、クマタカの繁殖成功率に対するブナの種子生産 の豊凶や前年の繁殖結果、林相、気象などの影響を解析している。その結果、食物量の指標 とした前年のブナの結実状況が良い場合に繁殖成功率が有意に高いことが明らかになった。

しかし、繁殖結果に最も関連している要因は前年の繁殖結果であった。つまり、前年に繁殖 しなかった場合、当年の繁殖結果が良好であった。天然林が占める割合が高い本調査地では、

ブナの結実状況が悪い場合には繁殖結果に対し天然林面積が負に、人工林面積が正に作用す る傾向を示した。繁殖結果に影響する要因は前年のブナの結実状況によって異なっており、

これはクマタカが採食環境と主な食物とする種の両方かまたはどちらかをブナの豊凶に応じ て変化させていることを示唆していた。

繁殖結果に寄与する要因が、ブナの豊凶で異なっているのではないかという仮説には独創 性がみられ、その結果には生態学上の寄与が認められる。我が国においては森林生態系にお ける種間相互作用に関する実証的な研究は極めて少なく貴重な成果であり、国外においても 近年注目されている分野であることから、今後の発展も見込まれる。

分布に影響している要因に関しては(第Ⅳ章)、青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島の6 県の全域を対象に、生息区と山地から選定した対照区の環境を比較することにより分析して いる。解析の結果、クマタカの分布には「急傾斜地の面積割合」、「地上開度の平均値」など の地形的要因が強く作用しているほか、「草地面積」、「景観の多様度」が比較的強く作用して いることがわかった。多雪地と少雪地を比較すると、多雪地では地形的要因の影響が強く反 映されている一方、少雪地では植生的要因の影響が比較的強いことが示された。

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このように、先行研究では取り上げられてこなかった積雪量に着目して解析を行っており、

保全生態学及び景観生態学上の寄与が見られる。さらに、クマタカの生息地保護及び野生動 物の生息地評価に関する提言も行っており、環境政策面での寄与も認められる。

上記の結果から、天然林地帯に生息するクマタカにとっては、行動圏の中に人工林などの 他の環境が存在することは必ずしも負の要因とは限らないが、東北地方の森林地帯という大 きなスケールでクマタカの分布をみると、景観のモザイク化はつがいの定着に負の影響を及 ぼすことが示された。

本研究の成果として、クマタカの生息地を評価する場合にはそのスケールによって注目す べき点が異なること、そして、これまであまり注意が払われていなかった時間的変数や地域 特性の重要性が明確に示されたことがあげられる。

論文では、内外の先行研究を幅広く渉猟し、適切に検討・吟味するとともに、調査方法、

結果、考察については合理的かつ客観的に論述している。引用等も適切になされており、学 術論文としての体系を有している。

以上のように、学界に対する学術上の寄与、テーマ設定の独創性、資料・先行研究の取り 扱いの斬新さ、論旨の独創性、論文構成の体系性、論述・表現の適切さといった諸点で優れ ており、今後の発展も期待されることから、候補者は博士号授与に値するものと判定した。

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