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看護教員の教育実践能力を鍛える公開講座の成果

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(1)

The Bulletin of Saitama Prefectural University

要旨

【目的】平成12年より看護教員を対象とし、教育実践事例を用いた専門職公開講座を行ってきた。継続参加した看護教 員の教育実践能力の変化を探る。

【方法】継続して参加した看護教員の発表文献8件から、研究目的、対象、結果を質的に比較検討し、教育実践能力の 変化を明らかにする。

【結果】文献の対象、結果から変化が3期に分けられた。Ⅰ期は、学生の教育事例の検討からの学びを抽出し構造化し た。Ⅱ期は、カンファレンス事例を対象とし、学生を学習目標に向かわせる指導の全過程と、教員の役割を抽出し構造 化した。Ⅲ期は新人看護教員の事例検討を対象とし、新人と経験教員の視点の違いと対処の違いを明らかにし、新人教 員の視点や指導の特徴を明らかにした。

【考察】教育事例を継続して検討することで、参加者は一場面の対象認識と指導過程の認識から、多重な教育対象の認 識と指導過程全体の状況を認識できるようになり、教育実践能力が拡大した。

キーワード:教師教育、看護教師、教育実践能力、教育事例検討、リフレクション

Key words:case study, teacher development, teacher learning, support for teachers, teacher training course

1.緒 言

厚生労働省は、看護の質を高める方法として教育の質 を高めることを挙げ、平成22年に今後の看護教員のあり 方に関する検討会報告書を出した1)。ここでは、看護教 員に求められる教育実践能力として教育実践能力、コミ ュニケーション能力、看護実践能力、マネージメント能 力、研究能力の5つの能力を示した。しかしながら、こ のような看護教員の能力を継続的に指導、研修する場が ほとんどないのが実情である。看護教員は、それぞれの 教育現場において教育実践をどのように振り返っていい かもわからず、悩みつつ日々の教育に追われている。特 に看護新人教員は、臨床で看護師と異なった役割の獲得 に戸惑い、困難を感じていた。このような新人看護教員

の悩みを教育実践能力に変える場が必要であると考え、

平成12年から看護教員の実践能力を鍛える専門職公開 講座を開催し、13年間継続してきた。参加者は、専門職 公開講座で検討された過程を研究対象として研究に取り 組み、事例検討からの学びを抽出し、その成果を公表し たものがいくつかある。そこで、教育事例を継続して検 討してきたことで、参加者の教育実践能力の変化を明ら かにすることを目的に研究に取り組んだ。この研究結果 を踏まえ、看護教員の教育実践能力と教育実践能力を高 める事例検討の意義について述べる。

2.方 法

1)専門職公開講座「看護教員の実践能力を鍛える専門 職公開講座」(以下専門職公開講座とする)の概要を説明

■ 研究報告 ■

埼玉県立大学

Saitama Prefectural University 原稿受付日:2013年10月15日

看護教員の教育実践能力を鍛える公開講座の成果

─教育事例の検討を継続して得られる教育実践能力─

徳本 弘子

Outcome of the Teacher Training Course Reinforcing Nursing Teacher Competence

―Teaching Skills Developed through Continuous Case Studies―

Hiroko Tokumoto

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する。この専門職公開講座は、A県の看護教員養成講習 会修了者のフォローアップ及び県内看護教員の問題解決 の場を提供することを通して、看護教員の教育実践能力 を高めることを目的とし平成12年より開催した。参加者 は、教育事例の持参を条件に公募した。開催は、2カ月 に1回の開催であった。A県の教員養成講習会が平成17 年で終了した。そのため平成18年度より、当初より参加 してきた教員および参加を希望する教員を対象に、月1 回のペースで行ってきた。平成24年度よりA県の看護教 員養成講習会が再開し、講習修了生が出たことから、平 成25年度は平常の専門職公開講座に加え、新人教員を対 象にした専門職公開講座を開催した。

専門職公開講座の<目標>は以下のように設定した。

(1)自己の教育実践を客観視し、言語化することがで きる。(2)教育実践の対象である学生像を描くことがで きる。(3)学生の学習目標を描くことができる。(4)学 生の個別にあった教育計画ができる。(5)学生の学習評 価ができるとした。

事例検討で使用する理論枠組みは、薄井2) のナイチン ゲール看護論(科学的看護論)を基に看護の原基形態、

臨地実習指導モデルを使用した。理由は、薄井はナイチ ンゲール看護理論の実践への適用として1981年より事 例検討会(看護科学研究会 現看護科学研究学会)を30 年以上定期的に開催してきた。その研究会では看護教育 の問題解決をはかることを目的に、臨地実習指導モデル を使い、看護学教育の要となる指導過程を分析し、看護 教育の問題を解決してきた実績3) がある。また、この事 例検討に指導者として関わっている和住4) が、事例検討 参加者を研究対象とした研究を行い、事例検討を重ねる ことで、参加した看護師、看護教員の対象認識、状況認 識が拡大していることを明らかにしている。また、筆者 もこの研究会の事例検討のテュータとして事例検討に参 加し、事例検討の成果5) を研究してきた。その成果を踏 まえ、看護理論、臨地実習指導の理論枠組みを踏まえた 事例検討を行うことで、看護教員の実践能力が鍛えられ ると考えた。したがって、事例検討の方法は、参加者に 教育実践をプロセスレコードに起こした事例を作成する ことを課した。次に事例提示時、提出理由を述べ、事例 の説明を課した。その後、参加者が臨地実習指導モデル にそって事例の事実関係から学生・患者の状況が描け、

指導過程がたどれるよう質問を投げかける。提示者はそ れに応え事実を提示する。その後全員で事例の患者、学 生の対象特性を描き、問題の本質を追求し、解決策を探 る。事例検討の終わりには、事例を検討したことで、ど のような学びがあったか、教訓(学びの抽象化)を導き

出し、参加者で共有した。

2)研究対象:専門職公開講座の参加者が、事例検討の 過程を研究的に分析した結果を公表した文献8件を研究 対象とした。

3)分析方法:佐藤6) は新人教員と熟達教員の比較研究

から、教育実践は教員の教育対象の認識と、その場の状 況認識をつなげて即興的に問題解決にあたる過程である としている。教員の対象認識、状況認識は、経験によっ て高まり、そのことによって複雑な状況を読み取れ、即 興的に対応できるようになるとしている。したがって、

教育事例の対象をどのように捉え、状況をどのように捉 えているかは、その時の教育実践能力の表れであると考 えた。そこで文献8件の研究目的、対象、結果に着目し、

それぞれ何を研究対象としているか、何を結果としたか を記述から抽出する。この結果から参加者の研究当時の 対象認識、状況認識を質的に比較検討し、その変化を見 た。

4)倫理的配慮

上記の研究発表論文の使用については研究者の了解を 得て行った。

5)用語の定義

看護教員の実践能力とは、教育対象である学生、看護 の対象である患者をより実像に近い状態に把握する対象 認識能力と、刻々変化する実践場面の状況を把握する状 況認識能力、対象と状況を把握して状況にそった学習支 援を構築し・指導する力、教育実践を自己評価する力と した。

3.結 果

分析した文献8件の研究の年代とタイトル、研究対象 を比較検討し分類した結果、研究対象がⅢ期をへて変化 していた。これを表1に示した。第Ⅰ期平成16年「看護 教員の事例検討の学びの過程」では、事例検討を重ねた ことで教育実践に向かう認識の変化を明らかにすること を目的に、研究が行われた。方法は、参加者が事例検討 の学びを事例ごとに抽出し、KJ法を用いて分類した、さ らにそれらの学びがどのような過程でおきているかを構 造化した。これを図1に示した。参加者の学びは<言語 化しディスカッションする>ことで、他者からの質問で

<実践を問う>ことで実践を振り返った。教育実践を問 い直すことを通して、問題を抱えている悩みや、対処で きない自己の教育実践についての<悩みの共有>をしな ら、自己の<学生の見つめ方の傾向に気づく><自己の 指導方法の傾向に気づく>といった自己の教育のとらえ

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方、考え方に気づき、さらに自己の実践に対して<今ま で行ってきたことの意味がわかる>場となっていた。さ らに教育対象である学生について<学生の本音を探る>

といった過程を通して<学生の見方が変る><学生の個 別性のとらえ方が分かる><目標の共有、今後の関わり 方が分かる>といった教育場面の学生の認識方法と、問 題解決方向へ導く思考過程を抽出した。また、平成18年 の「臨地実習における教員の役割」では指導困難な場面 の事例検討を研究対象に、臨地実習教員の役割を抽出し た。また平成20年「臨地実習における教員役割の検証」

では、臨地実習の教員の役割を適用し実習を行った結果、

学生の変化が見られた。そこで実習中の学生が変化した 場面を取り上げ、指導の意味を探る事例検討を行った。

この検討過程を研究対象として臨地実習の学生の変化の 意味を探った。方法は検討の過程を記述しプロセスレコ ードに起こし、教員の関わりの意図と表現、学生の反応 とその意味を明らかにした。参加者は、事例の学生と教 員の相互作用を丁寧に読み解き、学生の変化の意味を捉 えた。結果、学生の変化は関わった教員の教育的関わり によることを明らかにした。その中で、学生の対象特性、

学生の学習状況をとらえ、実習目標に向けて状況にそっ

た個別指導することで、学生が変化する学習過程、指導 過程を説明した。つまり第Ⅰ期は、実習という複雑に問 題が絡み合う授業形態において、事例検討を通して学生 表1 教育事例検討の成果としての研究と研究対象の分類

図1 事例検討からの学び

説明:専門公開講座に参加した看護教員は事例検討を重ねることで得られた学びをKJ法で分類し、それぞれの関連を説明した。

(4)

を把握する視点を獲得し、臨地実習という状況の中で教 育目標に到達させる授業展開の過程がとらえられ、行為 の意味がとられた段階であった。

第Ⅱ期は、平成17年頃より、カンファレンスがうまく 運営できないことが共通の課題として取り上げられ、カ ンファレンス事例が議論された。参加者は、カンファレ ンスが一回性で振り返りが困難であることや、指導の評 価基準が不明確なことから、カンファレンスの指導、評

価基準を明確にすることを目的に、カンファレンス成功 事例の再分析を行った。この研究では「カンファレンス とは、グループダイナミックスを活用し、グループでの 学びを共有し、学生の思考を深めたり広めたりしながら 対象の理解を深め看護の方向性を見いだしていくための 方法」と定義した。また、方向性が見出されたカンファ レンス事例は、カンファレンスを成功に導く指導過程が 抽出できるのではないかと仮説をたて、方向性が見出さ

図2 臨地実習カンファレンスの指導過程における教員の役割の構造化

(5)

れたカンファレンスの指導過程を分析した。方法は、カ ンファレンス事例検討の議論を再構成し、カンファレン スの事例検討からの学びをカードに記述し、それらをKJ 法で分類し、学習目標を到達させるカンファレンス指導 過程の構造を抽出した。さらに、その過程での教員の役 割はどのような役割であるのかを問いかけ、指導過程に おける教員の役割をカードに記述し、KJ法で分類し、カ ンファレンスの教員の役割を抽出した。さらに、役割が 抽出された場面の状況を重ねて教員の役割がいつどのよ うに発揮されたら効果的なカンファレンスが指導できる のかを議論し、指導場面と役割を構造した。この結果を 臨地実習カンファレンスの指導過程における教員の役割 の構造化として図2に示した。参加者は、これをカンフ ァレンス指導の評価指標とした。

第Ⅱ期の研究は、カンファレンス事例の検討を重ねる ことで、カンファレンス成功例には一定の法則があるこ とに気づき、カンファレンス成功事例から実践に潜む法 則性を取り出し、自らの実践の評価指標とした研究であ った。つまり第Ⅱ期は参加者の対象認識が学生個人の学 習過程から、臨地実習における学生集団の学習過程へと 変化していた。また状況の認識は、学生の指導場面とい った1場面の認識から、看護師、臨床指導者といった臨 地実習の学習に影響を与える様々な状況を過程的捉え、

目標に向けてその場その場の指導を意識的に展開する認 識に変化していた。

第Ⅲ期は、新人の困難場面の事例検討を重ねることで、

新人教員の学生、看護、教育に対する視点に共通した特 徴があるのではないかとの視点から、新人看護教員の事 例検討を対象に、新人看護教員の学生、看護、教育の視 点を明らかにすることを目的に取り組んだ。方法は、事 例検討場面を再構成し、その検討過程から提示された事 実に対する新人と経験教員の視点と思考、行動をそれぞ れ抽出した。比較することで違いが見えてきた、新人教 員の思考と行動を抽出しカードに記述し、KJ法で分類し た。この結果、新人教員の思考と行動の特徴として【看 護師としての判断で行動する】【学生の言動に注目するが 学習のプロセスには思い至らない】【指導のタイミングを 逃す】が抽出された。この【指導のタイミングを逃す】

は「学生が学ぶ内容を、教員から説明してしまう」 導した事を理解したか確認できていない からネーミン グされた。このように、新人教員は看護師としての視点 で判断し、今すぐすべきこと、学生に気づいて欲しいこ とを伝えるといった指導を行う。しかし、伝えたことが 学生にどのように理解されているか確認していない。 のため指導のタイミングを逃すという特徴があることを

明らかにした。この過程は事例検討を10年以上続けた教 員、継続的に参加してきた教員の視点からの質問で浮き 彫りになった新人教員の特徴であった。さらに、取り出 した新人教員の特徴は、果たして一般の新人教員の特徴 といえるか、を文献検討し、本結果と比較検討した。佐 藤の教員の教育実践能力の研究結果7)では、新人教員の 特徴は、状況のとらえ方が断片的で、学習者の発言をそ れまでの学習の展開と関連づけることができない、対象 のとらえ方が現象的、単一的で、複雑な状況が読み取れ ないとしていた。この結果と本研究の結果とを比較し、

研究で抽出した新人看護教員の特徴は、新人教員の特徴 と重なることを述べていた。また、新人教員の困難は、

新人であるがゆえの状況認識、対象認識が指導を困難に している要因であることを記述していた。つまり、第Ⅲ 期は新人の臨地実習の指導過程を研究対象とし、新人教 員の指導場面から、その事例の教員、学生、患者、状況 を認識し、授業としての学習目標に到達させるためにど のような指導か必要かが描けるように変化していた。

以上のことから、事例検討を継続することで参加者の 教育実践能力は、第Ⅰ期は、実習という複雑に問題が絡 み合う授業形態において、事例検討を通して学生を把握 する視点を獲得し、臨地実習という状況の中で教育目標 に到達させる授業展開の過程がとらえられ、行為の意味 が捉えられた段階であった。第Ⅱ期は参加者の対象認識 が学生個人の学習過程から、臨地実習における学生集団 の学習過程を対象にし、臨地実習での看護師、臨床指導 者といった臨地実習の学習に影響を与える様々な状況を 捉える認識へと変化していた。第Ⅲ期は新人の臨地実習 の指導過程を研究対象とし、新人教員の指導場面から、

その事例の教員、学生、患者の対象特性と、状況を認識 し、授業として学習目標を到達させるためにどのような 指導が必要か描けるように変化していた。

4.考 察

上記の結果から教育実践の事例を継続して検討するこ とで、参加者は看護教員として対象認識、状況認識が鍛 えられ、教育実践能力が高まったといえる。この結果を ふまえ、看護教員の教育実践能力、教育実践能力を高め る教育実践事例の検討について考察する。

1)看護教員の教育実践能力

厚生労働省の示した看護教員に求める教育実践能力は、

看護実践能力の上に、教育課程構築展開能力、授業設計・

実施展開能力、学生の指導評価能力である8) とし、この

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能力は、一定の教育の後に個人的、組織的に構築される ものであるとしている。石田9) は、大学教育においては、

新人教員が臨地実習指導に困難を抱えていること、それ がストレスになっていることをあげ、教育実践能力を支 援する職場でのFDを推奨している。しかし、看護教員の 教育実践能力、職能形成過程の研究は少なく、看護教員 の何をどのように支援すれば教育実践能力が形成される かは明らかにされていない。また、教育現場の新人教員 の支援制度が明確にされていないことから実践場面の指 導は職場に任され、組織的、系統的に支援を受けるのが 難しい状況にある。一方、義務教育の教職においては、

新任研修が組織的、制度的に取り組まれており、教職の 教育実践能力、教育力量形成研究も数多くなされてい

10-12。教員の教育力量の研究において、佐藤13) は、

熟練教員は実践の刻々変化する状況に対応した即興的な 思考を駆使していること、問題解決を多元的な思考を総 合していること、問題状況に主体的に感性的に熟考的に かかわっていること、問題解決を文脈的に即して思考し ていることを挙げている。一方、新任教師の特徴として、

状況のとらえ方が断片的で、学習者の発言をそれまでの 学習の展開と関連づけることができない、対象のとらえ 方が現象的、単一的で、複雑な状況が読み取れないとし ている。この研究結果に照らして本研究の第Ⅰ期から第

Ⅲ期の結果を比較すると、第Ⅰ期の初期の学びが「学生 を把握する視点を獲得し、臨地実習という状況の中で教 育目標に到達させる授業展開の過程が捉えられ、行為の 意味が捉えられる」段階であったことは、当時の参加者 は、教育実践場面を断片的に捉え、学生の学習状況が把 握できていない状況であったことがわかる。また第Ⅲ期 の新人教員の【看護師としての判断で行動する】【学生の 言動に注目するが学習のプロセスには思い至らない】【指 導のタイミングを逃す】は、まさに新人であるがゆえの 視点と思考、それによって引き起こされる教育実践現場 での新人の指導の困難性を示しているといえる。また第

Ⅱ期の研究結果は、専門職公開講座を5年継続した以降 の研究である。この研究は、実習場面の学生集団を学習 目標へ到達させる指導方法や役割について実践に潜む法 則性を取り出し、実践の評価指標とした。まさに、問題 解決を多元的な思考を総合して把握しているといえ、問 題解決を文脈に即して思考しているといえる。つまり、

佐藤14) の教員の能力に関する研究結果は、看護教員の職 能成長においても同様であると推測できる。一方、看護 専門職者の職能の発達過程についてはベナー15) の研究 がある。この研究は、看護職の経験を蓄積し中堅の域に 達したとしても、新たな分野においては一人前のレベル

へ後退するとしている。したがって、看護の臨床経験を 重ねた後、教員として教育の場で指導する場合、教員と しての新たな能力形成が必要であることを意味する。ま た、教員の教育実践能力の形成においても看護職と同様 に形成過程が存在することが推測できる。とするならば、

新人教員が教育実践能力を形成するための支援が必要で ある。この新人の教育実践能力形成の方法としての事例 検討について考察する。

2)看護教員の教育実践能力形成を支援する事例検討 専門職者の能力形成は経験年数を経れば構築されるも のではなく、実践をリフレクションすることを通して構 築されると言われている16。和住17) は、長年の事例検討 参加者の看護専門職者の能力、認識を探る研究から、看 護専門職(看護教員を含めている)の能力形成について

「能力の発展は異なる形成過程を経た異質な像との交流 の中で起こっており、自己の対象認識の傾向をつかみ、

異なる傾向をもつ看護職者間の相互研鑽を繰り返すこと によって促進できると思われる 」とし専門職の能力形成 における事例検討の意義を述べている。ではこの事例検 討の場でどのようなリフレクションが行われれば専門職 の能力形成が図れるのであろうか。佐藤18) は、専門職者 の専門的な成長は、実践的な問題解決過程で形成される

「省察」「熟考」にあるとしている。佐藤はこれをリフレ クションとしている。また、この「省察」と「熟考」の 関係について次のように述べている。専門職のリフレク ションは、内的条件(自分の勝手な考え、素朴概念)の 省察と外的条件(科学的見方、科学概念)の熟考の相互 作用の経験から意味を引き出していく思考プロセスであ るとしている。また、秋田19) は、佐藤の研究を挙げ、新 人の教育実践能力を高める方法として、教育事例の活用 を勧めている。事例を熟練教員と検討することは、実践 場面の熟練教員の読み取り、視点の違いを体験すること になるとしている。このことは、新人教員が教育実践能 力を養うためには、具体的な教育場面、事例を活用した 具体的な状況の認識を熟練者の支援を受けて行う必要が あることを意味している。

以上のことから、新人教員にとって事例検討は、まさ に状況の読み取り、学生の認識が自己流であったことや、

実践時規範としている教育、指導の概念が素朴概念であ ることを自覚し、他者の発言から自己の傾向を知る機会 であると同時に他者の視点を知る、外的条件で実践を振 り返ることで、多元的に読み取る経験の場となる。した がって新人の教育実践能力を育むためには、新人が教育 実践事例を作成し、それを経験教員と検討を重ねること

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が必要であるといえる。また教員の研修として事例検討 を用いることは、自己の教育実践を他者の視点から「熟 考」する機会となり、実践からの学びを組織化すること ができる。同時に自己の実践の評価をする機会ともなり、

自己評価の能力を高めると考える。また、看護教員のあ り方検討会で述べる「学生等の体験や臨床実践の状況を 教材化して学生等に説明するなどの教育実践能力」20) は、

教育実践を事例に起こし、自己の実践を客観的に振り返 り、他者の視点を借りて具体的な改善方法を導き出す過 程から教訓を引き出す(学びの抽象化)ことを繰り返す ことで高められることが推測できる。 以上のことから新 人看護教員が教育実践能力を身に着け、看護教員として 成長して行くためには、経験教員から支援を受けた事例 検討によるリフレクションが効果的であるといえる。リ フレクションの支援を受けることで、一人では難しい教 育実践を客観視し、自身の教育指導を意識化・自覚化す ることで、能力形成の一助となり問題解決能力を鍛える、

つまり看護教員の教育実践能力を鍛えることにつながる と考える。

5.結 論

専門職公開講座で事例を基に教育実践を検討したこと は、教員が自己の実践を客観視することを促し、事例検 討の過程で他者の視点の違いから、教員自身の教育指導 を意識化・自覚化することになった。また、事例検討を 継続することで、教育実践の対象認識、状況認識が拡大 した。そのことにより、問題解決の方向が描け、事例検 討での学びを現場で適用しその成果を客観視することを 繰り返すことで継続的に事例検討に参加した看護教員の 教育実践能力が高まったといえる。したがって教員の教 育実践能力を鍛える方法として事例検討は有効であると いえる。

6.引用文献

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7)

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参照

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