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(1)

ドイ ツ刑 法 にお け るLeichtfertigkeitの要件※

山 雅 夫

目 次

は じめに

Ⅱ Leichtfertigkeitを要件 とする犯罪類型

一般的概念 としてのLeichtfertigkeit

Ⅳ 結果的加重犯 とLeichtfertigkeit

(1)結果的加重犯の成立要件 としてのLeichtfertigkeit (2)重い結果の故意的実現 とLeichtfertigkeit

V むすびにかえて

は じめに

現行西 ドイツ刑法 は,「行為の特別 な結果 に対する加重刑」 という見出 しの もとに,結果的加重犯 に・関する一般規定 を置 いている (18条 )。すなわち,そ れは,「法律 が行為の特別 な結果 に加重刑 を規定 している場合 には,正犯者 ま たは共犯者が この結果 につ いて少 な くとも過失 (wenigstensFahrlassigkeit) の責 めを負わされる場合 に限 り,それ らの者 に対 して加重刑 を科する」 と規定

して,結果的加重犯成立のための主観的要件 と して最低限 「過失」 が存在 しな ければな らないとする趣 旨を明 らかにしているのである。他方,比較的最近の 傾向として,各則 における個 々の結果的加重犯規定のなかに重 い結果の発生 に つ いて行為者 の 「軽率 (Leichtfertigkeit)1)を要求するものが散見 され るよ うになっている。たとえば,251条の強盗致死罪 は,「行為者 が強盗 (249条.

※本稿 は昭和61年度文部省科学研究費奨励研究 (A)にもとづ く研究の一部 である。

1) Leichtfertigkeitは,我 が国では一般 に 「軽率」 と訳 されているので (たとえば, 法務大臣官房司法法制調査部編 ・ドイツ刑法典 (宮沢浩一訳,昭和57年 )等),本 稿 で もそれ らに従 ってお く。なお,以下 で は,適宜,軽率」 とLeichtfertigkeit

(L と略記する)のいずれかを用 いることにする。

〔421

(2)

422 37巻 1 ・2 ・3

250条 )によって軽率 に (leichtfertig)他 人 の死 をひき起 した ときは, その刑 は無期 自由刑 または10年以上 の 自由刑 とす ると規定 している。 この ように, 西 ドイツ刑法 において は,あ る種 の結果的加重犯 の成立 につ いて,総則 で は 「 な くとも過失」 の存在 を要求 し,各則 で は 「軽率」 を要求す る といった特殊 な 状況 が生 じて い るので ある しか も,西 ドイツ刑 法 は, L.につ いその定義規 定 を置 かず,2)L.の解釈 お よび 「少 な くと も過失」 とす る18条 と L との関係 をどの ように理解 すべ きか とい う点 を, もっぱ ら判例 と学説 とに委 ねて いるの である。

そ こで, この ような状況 を踏 まえた うえで,以下 において,西 ドイツの判例 と学説 を参考 に,主 と して結 果 的加 重犯 と L.との関 わ りにつ いて考察 してい くことにする。 もっと も,西 ドイツの現行刑 法上 L.を要件 とす る犯罪類型 は, 必 ず しも結果的加重犯 だ けに限 られているわ けで はない。 したが って,考察 の 一 環 と して, L.を要件 とす る犯罪類型 を概観 し, さ らにそれ との関係 で一般 的概念 と しての L が どの よ うな もの と して理解 され て いるのか につ いて も見

てお くことにす る。

2)刑法改正作業の過程においては,過失およびLについての定義規定の制定も提案 されたが (1962年草案18条),ある概念を法律によって固定 させることは犯罪論の 将来的発展を阻害することになると同時に学説の役割を立法が肩代 りすることにな るとの理由から,それは,他の一連の定義規定とともに,刑法改正特別委員会にお いて削除された。Vgl.ZweiterSchriftlicherBerichtdesSonderausschussesfiir dieStrafrechtsreform,BT‑DrucksacheV/4095,S.7ff.さらに,J.Baumannu.a., Alternativ‑EntwurfeinesStrafgesetzbuches,A.T.,2.Auf1.,1969,S.57.内藤謙 ・ 刑法改正と犯罪論 (上)(昭和49年)62頁,同 ・西 ドイツ新刑法の成立 (昭和52年) 51頁以下。

なお,1962年草案18条は,次の通 りである。

18条 (過失および軽率)

( 過失で行為する者とは,事情および人的関係によって義務づけられ且つそれに ついて可能な注意を怠 り,それ故に自己が法定構成要件を実現することを認識 し ない者をいう。

自己が法定構成要件を実現することがありうると考えるにもかかわらず,義務 に違反 し且つ非難すべき態様で,それが実現 しないことを信頼 して行為する者も また,過失で行為する者である。

③ 軽率に行為する者とは,重大な過失により (grobfahrlassig)行為する者を いう。

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ドイツ刑法 におけるLeichtfertigkeitの要件 423

Leichtfertjgkeitを要件 とする犯罪類型

現行西 ドイツ刑法申 し.を構成要件要素 とする条文 は多岐 にわたるが,おお よそ次の6類型 に大別することができる。

結果的加重犯の類型 として,児童 に対する性的濫用罪 における死の軽率 な惹 起 (1764項 ),強姦罪 における死の軽率 な惹起 (177 3項 ),性的強要罪 に おける死 の軽率 な惹起 (178 3項 ),恐喝的な人身奪取罪 における死の軽率な 惹起 (239 a2項 ),人質罪 における死 の軽率 な惹起 (239 b2項 ),強盗 罪 における死の軽率な惹起 (251条 ),航空交通 に対する攻撃罪 における死の軽 率 な惹起 (316C2項 ),がある。

量刑事 由 と しての 「特 に重 い場合 (besondersschwereFalle)」 を条文上 例示する (Regelbeispiel)類型 と して,堕胎罪 における妊婦の死の危険 もし

くは重大 な健康障害の危険の軽率な惹起 (2182 2号 ),核エネルギーによ る爆発招来罪 における死 の軽率 な惹起 (310条 b3項 ),爆発物 の爆発招来罪 における死の軽率な惹起 (3113項 ),放射線の濫用罪における死の軽率な惹 (311 a3項 ),塀庇 ある核技術施設の建設罪 における死の軽率 な惹起 (311 e3項 ),重 い環境危胎罪 における死 もしくは重傷害の軽率 な惹起 (3304 2号),がある。

故意的ない しは知情的実現 を原則 とする犯罪の処罰範囲 を拡張する類型 とし て,国家機密漏示罪における職務上知 りえた国家機密の軽率な漏示 (972項 ) 安全 を危胎化 す る模写罪 にお ける危 険の軽率 な惹起 (109g4項 ),計画 さ れた犯罪の不通告罪 における軽率 な不通告 (1383項 ),補助金詐欺罪 におけ

るある種 の欺岡行為の軽率な実行 (2643項 ),破産罪 における破産行為 にも とづ く債務超過 もしくは支払不能状態の軽率 な惹起 (283 4 2号 )および ある種の破産行為の過失的実行 にもとづ く債務超過 も しくは支払不能状態の

少 な くとも」軽率 な惹起 (5項 2号 ),無実 の者 に対する執行罪 における 執行の軽率な実行 (345 2項 ),がある。

国家的法益 に対する犯罪の客体等 に L.を要件 とする犯罪 を列挙 する類型 と

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424 37 1・2・3

して,犯罪 を内容 とする脅迫 により公の平穏 を阻害する罪 における脅迫手段 と しての239 a,239b (126 1 4号 ),251条 (5号 ),310b3項, 311条3項,311条 a3項,316C2項 (6号 ),計画 された犯罪の不通告罪 における通告対象 としての239a,239条 b (138 1 7号 ),251条 (8 号 ),310b3項,3113,311条a3項,316C (9号 ),がある。

総則規定でL.を要件 とす るものと して,̀没収規定 においてある種の事態 に

少 な くとも」軽率 に寄与 した客体 に対象 を拡張 するもの (74 a1号 ),お よび没収の補償規定の除外例 としてある種 の事態 に 「少な くとも」軽率 に寄与 した第 3者 を規定するもの (74f21号 ),がある。

さ らに,刑 法 典 以 外 の刑 罰 法規 にお け る典 型 的 な類 型 と して,軍 刑 法 (Wehrstrafgesetz)における命令 に対す る軽率 な不服従 (21条 ),麻酔剤法 (Betaubungsmittelgesetz)における麻薬 の無免許譲渡 にもとづ く死 の軽率 な惹起 (30 1 3号 ),を挙 げることができる。

Ⅱ 一般的概念 としての Leichtfertigkeit

以上の犯罪頬型の概観か らも明 らかなように,現行西 ドイツ刑法 は,それぞ れ異 なった性格 や内容 を持つ犯罪類型 においてL という同一の要件 を規定 し ている。そこで,まず最初 に,L.が一般的概念 と してどの ように理解 されて いるのかを明 らかにしてお く必要がある。

1 一般的な形で言 うな らば,L.を過失 の一種 として理解 し, しか もその 重 い態様 のものとして把握する点で,判例 と学説の双方 において広 い一致が見 られる。判例 においては,たとえば,軽率 になされた謹告 (旧164 5項 )の 事案 に対 して 「Lは通常の過失 (gew6hnlicheFahrlassigkeit)ではな しに, 重大 な過失 (grobeF.)と同置 され る」 とす るライヒ裁判所 の判例3)をは じ めとして,それぞれの表現 に若干の相違 は見 られるものの,4)L を重 い態様の 過失 と理解する点 につ いては異論がない。また,学説 においても,判例 と同様

3)RGSt.71,34(37).

(5)

ドイツ刑法におけるLeichtfertigkeitの要件 425

に, L.をgrobeF.と す る立 場 ,5)gesteigerteF・とす る立 場 ,6)高 め られ た形 式 な い しは程 度 の過 失 とす る立 場 ,7)注 意 義 務 違 反 の程 度 の高 い もの とす る立 場 ,8)な ど表 現 の仕 方 で は い くつ か の立 場 に わ か れ て い るが, そ の 内容 を重 大

4) grobeF.とするものとして,RGSt.71,174;BGHSt.14,240;BGHbeiDallin‑

gerMDR 1956,396 (いずれ も,旧164 5項の事案),BGHSt.20,315 (旧軍 刑法21条,47条の事案),BayObLGNJW 1959,734(旧軍刑法21条,43条の事案)

hoheGradvonF.とするものとして,BGHNJW 1985,690 (麻酔剤法301 3号 の事 案 ).ingrobem MaJ3efahrlassigverschuldetとす る もの と して, BGHbeiDallingerMDR 1975,543(251条 の事案 ).gesteigerteForm derF. す る もの と して, OLGHamburgNStZ1984,218 (264 3項 の事 案 ).starker GradvonF.とするものと して,OLGK61nMDR 1977,66;OLGHamm NStZ 1983,459 (いずれも,3452項の事案 )

5) EIKohlraush/R・Lange,Strafgesetzbuch,43・Aufl, 1961, § 138 Ⅷ ; Strafgesetzbuch.Leipziger革ommentar,10.Auf1.,1978‑ (以下,LKと略記),

§109g(F・Chr・Schroeder)Rdn112.;§218(B・Jahnke)Rdn・63;§264(K・

Tiedemann)Rdn.102;§345(II.H.Jescheck)Rdn.7;A.Sch6nke/II.Schr6der, Strafgesetzbuch.Kommentar,22.Auf1.,1985(以 下, S/Sと略 記), §15(P.

Cramer)Rdn.103,203;§218(A.Eser)Rdn.44;§311(P.Cramer)Rdn.16;E.

Dreher/H.TrOndle,StrafgesetzbuchundNebengesetze,42.Auf1.,1985(以下, D/Tと略記 ),§109gRdn.4;E.Dreher,NiederschriftentiberdieSitzungender GroL3enStrafrechtskommission,Bd.12,1960,S.105;W.Gallas,ebenda,S.137

;甲・Lohmeyer,WasistHleichtfertig"i.S・des§402RAbgO?NJW 1960,S・

1799;W.Hassemer,Rechtsprechungsiibersicht,JuS1975,S.815.

6) S/S251(A.Eser)Rdn.6;B.Sch血emann,RaubundErpressung(2.Teil), JA1980,S.396.

7) gesteigerteForm derF.とす る もの と して,SystematischerKommentarzum Strafgesetzbuch (以 下,SKと略記),Bd.2,B.T.,3.Auf1.,1982‑,§264(E.

Samson)Rdn.91;A.Miiller‑ Emmert/B.Maier,DasErsteGesetzzurBekamp‑

fungderWirtschaftskriminalitat,NJW 1976,S.1661.gesteigerterGradvonF.

とす るもの と して,LK,§138(E.W.Hanack)Rdn.63;§316C(K.Ruth)Rdn.

33;S/S,§138(P.Cramer)Rdn.25;§176(T.Lenckner)Rdn.16.gesteigerter GradderF.とするものとして,SK,Bd.2138(H.J Rudolphi)Rdn.24;S/S,

§239a(A.Eser)Rdn.31.erhOhterGradvonF.とするもの と して,LK,§311 (H.Wolff)Rdn.ll;D/T,§15Rdn.20・,II.MullerDietz,Anmerkung,NStZ 1983,S.460.hoherGradvonF.とす る もの と して,LK,§251(G.Herdegen) Rdn.8.

8) inbesondererWeisegesteigerteSorgfaltspflichtswidrigkeitとす るものと して, SK,Bd.297(H.J.Rudolphi)Rdn.9.gesteigertesMaJ3anS.とするものとし て,SK,Bd.2,§251(E.Samson)Rdn.9.besondersg一oもe,offensichtlicheVer 1etzungelementarerSorgfaltspflichtenとす る もの と して, R.Maurach/K.H.

G6ssel/H.Zipf,Strafrecht,A.T.,Tb.2,6.Auflリ1984,S.71f.

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426 商 学 究 第 37巻 1・2・3

な過 失 と して理 解 す る点 で は完 全 に一 致 して い るの で あ る。9)

ま た, この よ う な判 例 , 学 説 に お い て は, しば しばL を民 法 上 の 重 過 失 (grobeF.) に相 応 す る もの で あ る と指 摘 す る点 が特 徴 的 な もの で あ る。 こ の よ うな傾 向 は, た と え ば, 「L.は ・‑‑民 法 上 の 重 過 失 に相 応 す る よ うな も

の と して理 解 され るべ きで あ る」10)とす る表 現 に明 白 に示 され て い る。しか し,

L と民 法 上 の重 過 失 と の 同置 は,具 体 的 な事 案 の判 断 に まで及 ん で い る もの で な い こ と に注 意 しな けれ ば な らな い。 す な わ ち,民 法 上 の重 過 失 が義 務 の客 観 的 側 面 に重 き を置 い て判 断 され る もの で あ る11)こ と を考 慮 した た め か ,刑 法 上 の L の認 定 につ い て は, そ の判 断基 準 お よび基 盤 と して, 行 為 者 の主 観 的 認識 と能 力 お よび行 為 者 が実 際 に置 か れ て い た具 体 的状 況 が重 視 され な けれ ば な らな い, と され て い るの で あ る。12)13)した が っ て , 刑 法 上 の概 念 と して Lは, その 内容 を言 い表 わ す た め に民 法 上 の grobeF.と い う表 現 を便 宣 上 借 用 して い る だ けで あ っ て,概 念 そ れ 自体 が民 法 上 の重 過 失 に置 き換 え られ て

い るわ け で はな い の で あ る。

と こ ろ で, L.を重 大 な過 失 な い しは重 い態 様 の過 失 とす る だ け で は単 に表

9) Vgl、J.Tenckhoff,Die leichtfertige Herbeifuhrung qualifizierterTatfolgen, ZStW Bd.88[1976],S.898.

10) OLGHa車burgNStZ1984,218(219)・さらに,LK,§264Rdn・102;SK,Bd・2,

§251Ran.9;§264Rdn.91;S/S,§15Rdn.203;D/T,§15Rdn.20;R.

Maurach/A.H.G6ssel/H.Zipf,a.a̲0.,S.72;W.Hassemer,a.a.0.,S.815;A.

Miiller‑ Emmert/B.Maier,a.a.0.,S.1661usw.

ll)たとえば,BGHZ17,191(199),簡便かつ容易 にな しうる思慮 を怠った場合や, すべての人が知 っているべ く要求 されていることに注意 を払わなかった場合」に重 過失 を肯定 している。同旨,RGZ141,129;163,106;BGHZ10,14;10.69. 12)たとえば,L.grobfahrlassigesHandelnと定義 する1962年草案 は客観的注意義

務違反 と主観 的非難可能性 の双方 を重視す る形 で L.をwesentlichgesteigerteF.

と表現 している し(E 1962,Begriindung,S.132),注 3)‑10)に引用 した判例, 学説 も,おおむね,判断基準 としての主観的側面が重視 されるべきであることを明 示 している。

13)実際,BGⅡSt.20,315は,練兵場 に向けての実弾射撃訓練 を指導 していた被告人 が安全規則を遵守 しなかったために死傷者が出たという事案 に対 して,実務経験の 乏 しさといった行為者の主観的事情等 を理由として (S.‑324,327),L.の非難 を否 定 している。 さらに,ヘ ロイ ンの譲渡 にもとづ く死 について L.が否定 された事案

として,BGHNJW1985,690.

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ドイツ刑法 におけるLeichtfertigkeitの要件 427

現 を言 い換 えてい るだ けで あ り,その内容が明 らか にされているとは言 い難 い。14)そ こで,次 にその内容 の解明が図′られ なければな らないわけであるが, この点 につ いて論 じた論稿 はそれほど多 くないのが現状 であ り,ふたつの方向 で この点への言及 がなされているにす ぎない。

2 L.概念 を明 らかに しようとす るひとつ の方向 は,結果 に対 する認識 の 有無 との関係 で L.をと らえ ようとす るもので ある。端的 に言 えば,それ は, L.を認識 ある過失 と同視 す る ことに よって,心理的側面で故意 に隣接 す るも

のと してL.を理解 しようとする立場 である。

この方 向 は,たとえば,租税刑法上 の L.を 「故意 と隣接 す る過失」 と定義 づ けたうえで,結果 に対 す る認識の有無 を基準 と して L.の存否 を判断 してい る連邦通常裁判所 の判例15)に兄 い出 され る また, この判例 を支持 す るロー マ イヤー16)や, 「認識 な き過失 に L.を認 める ことは, 自分 で発生 させ た危険 を認識 しない愚か者 を,危険 を認識 しなが らそれが現実化 しないだろうと思 っ ているような皮相 的 な者 と同程 度 ない しはそれ以上 に重 く非難 す ることにな り」不合理 であるとす るアル ツ,17)他人 を侵害 す る危 険性 を知 りなが ら石 を屋 根 か ら投 げ落 す ような場合 に L.が肯定 され るとす るマ イヴァル ト18),316 C2項等 との関係 で 「心理的 なシ ョックにもとづ く心臓病患者の死の事例 に

おいては,主観的領域 にお ける L.が特 に意味 を持 って くる。 この ような事例 では,行為者が被害者 の心臓病 を知 っていたか否かによって区別がなされるべ きである」 とするキュ ッパ ー19)にも,若干 なが ら同様 の傾向が うかがわれる。

他方, この立場 に対 して は,認識 の有無 に よって過失 を区別 す ることと L.

概念 とは直接 には関係がないとする立場か ら,多 くの批判が加 え られている。

14)Vgl.LK,§16(F.Chr.Schroeder)Rdn.211.

15) BGⅡDStZ(B)1959,499.

16) H.Lohmeyer,a.a.0.,S.1799.

17) G.Arzt,Leichtfertigkeitundrecklessness,GedachtnisschriftftirH.Schr6der, 1978,S.128.

18) M.Maiwald,DerBegriffderLeichtfertigkeitalsMerkmalerfolgsqualifizierter Delikte,GA 1974,S.268f.

19) G.Kiipper,Der "unmittelbare" Zusammenhang zwischen Grunddeliktund schwererFolgebeim erfolgsqualifiziertenDelikt,1982,S.32.

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428 37 1・2・3

すなわ ち, それ らは,認識 ある過失 とL.とを同視 す る ことは概 念 の混 同であ る,20)L を予 見 可 能性 との関係 だ けで理 解 す る ことは結 果 の回避 可 能性 を無 視 す る ことにな る,21)現行法 が認識 ある過失 と認識 な き過 失 との間 に当罰性 の 差異 を認 めてお らずその評価 を解釈 に委 ね ている ことか らすれ ば,認識 なき過 失 の場 合 に L・が肯 定 され る こと もあ りうるはず で ある,22)認識 ある過 失 が必 ず しも常 に認識 なき過 失 よ りも不法 内容 や責任 内容 において大 きいとい うわ け で はないか ら,重 い態様 の過 失 と しての L をただ ちに認識 あ る過失 と同視 す るわ けに はいか ない,23)な ど とす る もので ある。 た しか に, これ らの指摘 を待 つ まで もな く,結果発生 につ いて遠 くにある予見 困難 な危 険性 を も認識 してい る注意深 い行 為者 と,結果発生 につ いて近 くにあ る予見容易 な危 険性 にす ら思 い をいた さない不注意 な行為者 とを比べ る ことか らだ けで も明 らか な よ うに, 重 い態様 の過失 と してのL.をただ ちに認識 あ る過 失 と同視 す る ことに は問題 が ある, と言 え よう。 さ らに, この点 につ いて は,刑法 の改正作業 の過 程 にお ける議論 のなか で,結 果的加重 犯 の L.につ いて両者 を同視 す る ことが明示的 に否定 されてい た事実 が想起 されて よいで あろ う。24)

もっと も,認識 ある過失 と L.とを同視 す る立場 の人 々 も, それ を一貫 す る つ も りはない よ うである。 と言 うの は, ローマ イヤーの主張 は租税刑法 の分野 に意識的 に限定 しての もの で ある し,25)ァル ツ らも,別 の箇所 で は,認識 なき

20) BGIIDStZ(ら)1959,351,認識 ある過失 のみがL.概念 を充足 するかの ように 理解 され る解釈 は正 しくない。 L は,特 に程度の高 い過失 を意味す る」 と して, 両者 を明確 に区別 している。同旨,BGHbeiDallingerMDR 1973,728.マ ウラッ ハ も,同様 に,BGHDStZ(B)1959,499が両者 を同視す ることを批判 している。

Vgl.R.Maurach,ProblemedeserfolgsqualifiziertenDeliktsbeiMenschenraub, GeiselnahmeundLuftpiraterie,FestschriftfiirE.Heinitz,1972,S.416f.

21) J.Tenckhoff,a.a.0.,S.906;LK,§251Rdn.9.

22) I.J.'Hirsch,ZurProblematikdeserfolgsqualifiziertenI)elikts,GA1972,S.73;

R.MallraCh,a.a.0.,S.416f.;J.Tenckhoff,a.a.0.,S.900;D/T,§15Rdn.20.

23)J.Tenckhoff,a.a.0.,S.goof.

24) vgl.K.Lackner,Niederschriften,Bd.5.1958,S.53;ders.,Bd̲6,1958,S.146 f.;ders.,Bd.12,S.137;E.Dreher,Bd.6,S.147;ders.,Bd.12,S.105,136;Ⅱ.

Welzel,Bd.12,S.136;W.Gallas,Bd.12,S.137.

25) I.Lohmeyer,a.a.0.,S.1798.

(9)

ドイツ刑法におけるLeichtfertigkeitの要件 429

過 失 につ いて L.が想定 され うる ことを多 か れ少 なかれ認 めて い るか らで あ る026)したが って,結 果 に対 す る認識 の有無 との関係 で言 うな らば,L は, 実 際 には認識 ある過失 と重 な り合 う ことが多 いとは言 えようが,27)論理 的 には 認識 ある過失 と認識 な き過失 の双方 につ いて考 える ことのできるものなのであ

る。28)

3 も うひとつ の方 向 は, L.と故意 とを規範的 な側面 で同視 す る (同一 に 取 り扱 う)ことがで きるのではないか とする立場 であ り,ハルの立法論 に明確

に示 されている。

ハ ルは,回避可能 な禁止 の錯誤 に対 す る故意説 と責任説 との帰結 をいずれ も 虚構 に支 え られた ものであると批判 したうえで,妥当 な帰結 をもた らす もの と して,過夷的 な行態に対 して故意犯 と同一 の刑罰 を適用 すべ きカテ ゴ リー を提 唱 し, それ を L と名づ けている。29)す なわ ち,彼 によれば,L は,本質 的 には過失犯 に属 す る̲ものであ りなが ら,規 範的 な側面で故意犯 と同一 に取 り 扱 われ るべ き 「行状 の落度 (MangelanHaltung)と して理解 されて いるの で ある030)この ような故意 と同一 の非難 に値 す る過失 を認 めることの根拠 は,

①故意 と過失 の区別 は根本的な もので もなければ本来的な もので もな く,将来 的 にはな くしてい くことのできるものである,②故意 と過失 の差 は質的 なもの で はな く,単 に量 的 なものにす ぎない,③刑法体系上確実 なの は偶然 と故意 と が両極 にあるということだけであ り,その間 は故意 (黒色 ),認識 なき過失 (

26)M.Maiwald,a.A.0.,S.259,260f.;G.Arzt,a.a.0.,S.127ff.

27)この点の指摘として,BT‑Drucks.ⅤⅠ/2722,S.2;P.Bockelmahn,Verkehrsstraf rechtlicheAufsatzeundVortrage,1967,S.217;G.Arzt,a.a.0.,S.128;LK

16Rdn.210.

28)テンコフは,認識ある過失の態様におけるL を 「無思慮 (Leichtsinn)」 とし, 認識なき過失の態様におけるL.を 「無関心 (Gleichgiiltigkeit)」としている J.

Tenckhoff,a.a.0.,S.902.また,ア)i,ツは,L.をふたつの段階に分け,下位の L をアメリカ法上の重大な認識なき過失 (criminalnegligen?e)に対応させ,上 位の L.を重大な認識ある過失 (recklessness)に対応させている。G.Arzt,a.a. 0.,S.142.

29)Vgl.K.A.Hall,UberdieLeichtfertigkeit.EinVorschlagedelegeferenda,Fest schriftfurEd.Mezger,1954,S.229ff.,234ff.

30)K.A.Hall,a.a.0.,S.248.

(10)

43() 学 \\討 37巻 1 ・2 ・3

色 ),偶 然 (白色 )にか けて様 々な色調 が漠 然 と多義 的 に存在 して い る, とい うハ ル独 特 の認 識 に求 め られ て い る。31)そ して,故 意 と同一 非 難 に値 す る L.

の実例 と して,行政取締法規 ない しは特別刑 法 に同様 の傾 向が兄 い出 され る こ とや旧164 5項 ,現行138 3項 を指摘 し,32)さ らに この ような L.を導入 す る ことの効用 と して,①姫物性 の軽率 な不認識 を処罰 す る ことに よって,姫物 罪 における推定 的 な証 明規定 が不要 になる,(参名誉穀損罪 に不法要素 と しての L.を導入 す ることで正 当化事 由の扱 いが簡便 にな る,③故意 の無 謀運転 等 (旧 315 a)と過失 の無謀運転等 (旧316条 )との間 に従来存在 して いた処罰 の間 隙 が L.を導入 す る ことで解 消 され る,33)ことを挙 げて い るので あ る。 この よ

うに して,ハ ル は,実 際上 の妥 当 な運用 を 目 ざす との立場 か ら,法律 が故意 的実行 と過失 的実行 の いずれ をも処罰 してい る場合 には,軽率 な実行 を特 に故 意 的実行 と同 じく処罰 す ることがで きる。その際,刑罰 は,未遂 の処罰 に関す る規定 に よって減軽 す ることがで きる」 との規定 の採用 を提案 しているのであ 。34)

ハ ルの見解 は急進 的 な立法論 で もあ り,故意 と過失 との関係 の理解 が特異 な ものである ことな どか ら, それ に対 す る賛同者 を兄 い出 しえて はいない。それ ばか りで な く,彼 の見解 に対 しては,従来 の刑法体系 を崩壊 させ る ことにな り は しないか とい う懸念 や,35)メツガ一 に依拠 して 「行状 の落度」 を強調 す る こ とが行状 責任 を認 め る ことにつ なが るの で は零 いか との疑 問36)が投 げか け ら れ ているので ある。

4 以上見 て きた よ うに, L.概念 を明 らか にす る方 向 と して は,心 理 的側

31) Vgl.K.A.Hall,a.a.0.,S.240f.

32)ausgesprocheneL.と名づけている。K A・Hall,a・a0,S・241f,244f 33)versteckteL.と名づけている。′K.A.註all,a.a.0,,S.242ff.

34)K.A.Hall,a.a.0.,S.245f.さらに,禁止の錯誤について,59 b2項として, 為者が彼に期待される良心の緊張をすれば自己の行為の不法性を当然知ることがで きたにもかかわらず,軽率にそれを認識 しなかった場合には,故意的実行の故をもっ て処罰することができる。その際,刑罰は,未遂の処罰に関する規定によって減軽 することができる」 との規定を提案 している。K.A.Hall,a.a.0.,S.246.

35)Vgl.M.Maiwald,a.a.0.,S.261.

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