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首 都 大 学 東 京 2018 年度修士論文
グローバル・サプライ・チェーン・ネットワークの 設計および評価に関する研究
首都大学東京大学院 システムデザイン研究科
システムデザイン専攻 経営システムデザイン学域
17892 5 04 上 田 隼 大
指 導 教 員 開 沼 泰 隆
目次
第 1 章 序 論 ・ . . . . . . . . . . . • . . . . 1
1 . 1 は じ め に 1
1 . 2 研 究 背 景 1
1 . 3 研 究 目 的 2
1 . 4 本 論 文 の 構 成 2
第2 章 サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト ・ . . . 4
2 . 1 は じ め に . . . . . . . . . . . . . . . . • 4 2 . 2 サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ . . 4 2 . 3 サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 課 題 . . . . . . . 8 2 . 4 サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 事 例 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13 2 . . 5 ま と め . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 5
第3 章 グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ ネ ッ ト ワ ー ク ・ ・ ・ 1 6
3 . 1 は じ め に . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ ・ 16 3 . 2 グローバル・サプライ・チェーン・ネットワークの概要・・・ 16 3 . 3
生産拠点配置 l 再配置戦略の概要・・・・・・•.... .203 . 4 移 転 価 格 と 移 転 価 格 税 制 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ • • • • • • • 27 3 . 5 グローバル・サプライ・チェーンの関連研究........ 31 3 . 6 まとめ... 38
第 4 章 モ デ ル 構 築 . . . . . . . . . . . . . . . . . 39
4 . 1 はじめに・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 39
4 . 2 モデルの概要・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 39
4 . 3 定式化・・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 40
4 . 4 シミュレーションの方法・・・・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 43
4 . 5 確率分布の定義・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 44
4 . 6
まとめ•......................... .46第 5 章 シミュレーション・ . • . . • . . . . . .
• 47
5 . 1 はじめに・・ . . . . . • 47
5 . 2 シミュレーション概要・ • 47
5 . 3 シミュレーション 1. • 51 5 . 4 シミュレーション 2. • 54 5 . 5 まとめ..... . . • 73
第 6 章 結論.................... 74
謝辞....•.................... 76
参考文献....................... 77
第 1 章 序 論
1 . 1 は じ め に
か つ て の 日 本 の 製 造 業 は 国 内 市 場 を タ ー ゲ ッ ト と し て 少 品 種 大 量 生 産 を 行 っ てきた. し か し , 市 場 の 変 化 に よ っ て 今 日 で は 多 品 種 少 量 生 産 が 行 わ れ , 市 場 規 模 も 海 外 ま で 拡 大 し て い っ た . そ の 結 果 , 企 業 は リ ー ド タ イ ム , 供 給 途 絶 の 問 題 , 技 術 力 や 品 質 の 問 題 , 為 替 レ ー ト の 変 動 , 国 ご と に 異 な る 税 金 や 人 件 費 など,多くのことを考慮しなければならなくなった.そのような環境において,
企 業 と し て の 競 争 力 を 高 め て い く た め , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト と
いうマネジメント手法に注目が集まっている.なかでも現在, 日本の多くの製
造業は海外拠点を通じた生産,販売,物流に積極的に取り組んでいる.これは,
日 本 で の 需 要 や 人 口 の 減 少 , 新 興 国 で の 需 要 の 増 加 な ど に よ り , 海 外 市 場 ま で サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン を 拡 大 し た た め で あ る . こ の よ う に 国 外 ま で 広 が っ た サ プ ライ・チェーンのことをグローバル・サプライ・チェーンという.グローバル・
サプライ・チェーン・ネットワークを構築することで, 日本企業は新しいビジ
ネ ス チ ャ ン ス を 見 つ け て き た . 一 方 , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン が 複 雑 化 す る に つ れ て,多くのリスクと問題に直面している.グローバル・サプライ・チェーン・
ネ ッ ト ワ ー ク に お い て 生 産 拠 点 を 決 定 す る 際 に は , 多 く の 不 確 実 性 を 考 慮 し て サプライ・チェーンを設計する必要がある.
1 . 2 研 究 背 景
1990 年代の円高基調や安価な労働力を求めて,日本の製造業は生産拠点を中 国 な ど の 海 外 に 設 け る オ フ シ ョ ア リ ン グ と い う グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ンの設計戦略を行い,競争力のあるものづくりに取り組んできた.しかし近年,
中国やその他のアジア諸国の人件費の上昇,品質問題,為替レートの変動など,
サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン を 取 り 巻 く 環 境 が 変 化 し て い る . ま た , 消 費 者 需 要 の 多 様 化 や 技 術 流 出 対 策 な ど に よ り , 多 く の 企 業 が 生 産 拠 点 を 移 転 し て い る . 製 造 拠 点 を 再 び 日 本 に 戻 し た 企 業 も 見 受 け ら れ た . こ の よ う に , 製 造 拠 点 を 国 内 回 帰 させるリショアリングや,近隣国へ生産拠点を移転するニアショアリングは,
今日の激しい競争を生き延びるために極めて重要な戦略とみなされている.
グローバル企業にとって,移転価格の決定も非常に大きな問題の 1 つである.
同 一 グ ル ー プ 企 業 間 で の 取 引 価 格 で あ る 移 転 価 格 を 調 節 し て 税 率 の 低 い 国 に 利
益 を 集 め る こ と で , 法 人 税 を 抑 え る こ と が 可 能 と な る . ま た , 日 々 変 化 す る 為
替レートや原油価格といった不確実性を考慮して最も利益の出るグローバル・
サプライ・チェーンを構築する必要がある.
生 産 拠 点 決 定 に 関 す る 研 究 で は , コ ス ト , 品 質 , 時 間 と 柔 軟 性 , 労 働 者 の ス
キルや知識, リスク,市場等に着目し取り組んでいるものが数多くある. しか
し , オ フ シ ョ ア リ ン グ や リ シ ョ ア リ ン グ , ニ ア シ ョ ア リ ン グ と い っ た 設 計 戦 略 に 着 目 し た 数 理 モ デ ル を 用 い て , 定 最 的 に 評 価 し て い る 研 究 は ま だ 少 な い の が 現 状 で あ る . そ こ で 本 研 究 で は , 設 計 戦 略 の 要 因 と な る も の を 変 数 と し て と ら え,モデル内の変数を確率分布で表し,シミュレーションを繰り返し行うこと でグローバル・サプライ・チェーン・ネットワークの設計および評価を行う.
1 . 3 研 究 目 的
グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ ネ ッ ト ワ ー ク の 設 計 は 未 来 に 対 す る 意 思 決 定 を 行 な う た め , 不 確 実 性 を 考 慮 し た う え で 意 思 決 定 を 行 わ な け れ ば な ら な い . そ こ で 本 研 究 で は , グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ ネ ッ ト ワ ー ク の 不
確実性を考應した設計および評価方法の提案を行う.オフショアリング, リシ
ョアリング,ニアショアリングそれぞれの戦略において,為替レートの変動,
移転価格,原油価格のシナリオを用意し,不確実性を考慮したシミュレーショ ン を 通 じ て 定 董 的 に 各 設 計 戦 略 を 評 価 す る . シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ る 分 析 を 行 い , 各 条 件 が グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン 全 体 の 税 引 き 後 期 待 利 益 に 与 え る影響を評価することで,企業の生産拠点選定に対する意思決定を支援するこ とを本研究の目的とする.
1 . 4 本 論 文 の 構 成
本論文の構成を図 1 . ]に示す.本章の序論に始まり,第 2章では生産システ ムにおける原材料の調達,製造,物流,販売の部分となるサプライ・チェーン・
マ ネ ジ メ ン ト の 概 要 と そ の 課 題 , お よ び 企 業 の 事 例 に つ い て 述 べ る . 第 3 章で は,サプライ・チェーンをグローバルに拡張したグローバル・サプライ・チェ ーンの概要を紹介し,生産拠点配置/再配置についての概要と移転価格税制につ いて説明を行い,関連研究について述べる.第 4 章 で は , 本 研 究 の シ ミ ュ レ ー ションで用いるグローバル・サプライ・チェーン・モデルの概要について述べ,
モ デ ル の 定 式 化 と シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 方 法 を 述 べ る . 第 5 章 で は シ ナ リ オ を 作
成 し , 第 4 章 で 提 案 し た モ デ ル の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 う . ま た , 得 ら れ た 結
果 を ま と め , そ の 考 察 を 行 う . 第 6 章では,本研究をまとめた結論を述べる.
第 1 章 序 論 I
第 2章 サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト
サプライ・チェーン・ サプライ・チェーン・
マ ネ ジ メ ン ト の 概 要 マ ネ ジ メ ン ト の 課 題 サプライ・チェーン・
マ ネ ジ メ ン ト の 事 例
第 3 章 グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン 生産拠点配置/再配置
グローバル・
の 概 要 移 転 価 格 税 制
サプライ・ の概要
チ ェ ー ン の 概 要 I 関 連 研 究
第 4章 モ デ ル 構 築
I モ デ ル の 概 要 I I 定 式 化 I
I シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 方 法 1
.
第 5 章 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
I シミュレーション I I 結 果 と 考 察 I
宮
第 6 章 結 論
図 I . I 本 論 文 の 構 成
第 2 章 サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト
2 . 1 は じ め に
サプライ・チェーン・マネジメント (SupplyChain Management; SCM) とは,企 業が注目を置くマネジメント・コンセプトの一つである.本章では,サプライ・
チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 概 要 , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト に お け る 課 題 , お よ び サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト を 実 際 に 取 り 入 れ て い る 企 業 の事例について述べる.
2 . 2 サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 概 要
近 年 , 企 業 が サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 概 念 や 戦 略 , 手 法 に 関 心 を 寄 せ る よ う に な っ た 背 景 と し て , マ ク ロ 経 済 の 動 向 , 法 制 度 の 影 響 , 技 術 の 発 展 , 消 費 者 行 動 や 組 織 間 関 係 の 変 化 , 産 業 連 関 , グ ロ ー バ ル 競 争 の 激 化 , パ フォーマンスの悪化といった様々な要因が関係している[ I ] . その中でも,特に モ ノ づ く り に お け る 市 場 の 変 化 が 大 き な 要 因 の 一 つ で あ る . こ れ ま で の 市 場 は 消 費 者 が 求 め る 製 品 の 種 類 の ニ ー ズ は 少 な く , 単 一 の 製 品 を 売 り 続 け て い た た め 市 場 の 変 化 の ス ピ ー ド は 遅 か っ た . そ の た め , 需 要 予 測 を 立 て る こ と が 比 較 的 容 易 で あ り , 作 れ ば 売 れ る と い う 状 況 で あ っ た た め , 少 品 種 大 量 生 産 に よ っ て 多 く の 利 益 を 生 み 出 す こ と が で き , 企 業 は 成 長 を 遂 げ て き た . ま た , 製 品 の 需 要 地 と な る 市 場 は 主 に 国 内 に 限 ら れ て お り , 国 内 で 作 っ た も の を 国 内 で 消 費 するということがほとんどで,海外市場まで考慮する必要もなかった.
しかし, 日 本 経 済 は 石 油 危 機 以 降 , 高 度 経 済 成 長 期 か ら 安 定 成 長 期 に 入 り 国
内消費市場の成熟化が進んでいった. 日本の経済レベルが向上したことにより
消費者の嗜好も多様化したため,国内需要の落ち込みが見られるようになり,
求 め ら れ る 製 品 の 種 類 も 多 様 化 し て き て い る . 作 れ ば 売 れ る 時 代 は 終 わ り , 消 費者のニーズにいかに早く応答できるかという即応性が求められるようになり,
製 品 ラ イ フ サ イ ク ル も 短 期 化 し て き て い る . こ れ ま で の 大 最 生 産 の や り 方 で は 市 場 の 動 き に 対 応 す る こ と は 難 し く , 顧 客 満 足 度 を 向 上 さ せ る 新 た な 対 応 策 が 求められている.
時代の変化とともに,消費者の嗜好は個人によって異なり(消費個性化),消 費者が購入するブランドや品目の数は増加し(消費多角化),使用期間の短縮化
(製品ライフサイクルの短命化)が進んだ.このようなニーズに対応し競争優
位 を 獲 得 す る た め に も , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト が 普 及 し た の で あ
る [2 ] . 飽 和 し た 市 場 で は , 需 要 全 体 が そ れ ほ ど 増 加 し な い 中 で も 需 要 が 上 下 に 振 れ る こ と を 特 徴 と し て い る . そ の よ う な 市 場 環 境 下 で 経 営 を 行 う に は , 売 上 高 の 上 下 変 動 の も と で も 収 益 を 堅 持 で き る 体 制 を 築 き 上 げ る こ と を よ り 重 視 し なければならない.
ま た , 成 熟 し た 国 内 市 場 だ け で な く 海 外 ま で 市 場 範 囲 を 拡 大 し て 顧 客 を 増 や し て い く こ と に よ り , 国 際 競 争 の 勢 い も 激 し さ を 増 し て き て い る . そ の よ う な 環 境 の 中 で , 正 確 な 需 要 予 測 を 行 う こ と で 機 会 損 失 を 避 け る よ う に 顧 客 の 需 要 を 満 た さ な け れ ば な ら な い 一 方 , 在 庫 は 極 力 持 た な い よ う に し て 過 剰 在 庫 を 避 け る 必 要 が あ る と い う 相 反 す る 難 し い 課 題 が あ る . 多 品 目 を 取 り 扱 う 大 規 模 小 売 業 が 発 注 ロ ッ ト サ イ ズ を 小 さ く し , 多 頻 度 納 品 を 要 求 す る こ と で , 消 費 財 製 造 業 は 配 送 の 即 時 化 に 対 応 す る た め に 多 め の 在 庫 を 保 有 し な け れ ば な ら な く な っ た . 買 い 手 企 業 が ジ ャ ス ト ・ イ ン ・ タ イ ム を 導 入 す る こ と で サ プ ラ イ ヤ ー は 納 入 頻 度 が 高 く な り , 運 搬 経 費 が 著 し く 増 大 す る こ と , 短 期 多 量 納 入 や 不 測 の 事 態 に よ る 労 働 時 間 の 延 長 が 生 じ る こ と , そ し て そ れ を 回 避 す る た め に 在 庫 の 著しい増加を招き,コスト上昇につながる危険がある.
こ れ ら を 解 決 す る た め に , ー 企 業 内 の 部 分 最 適 化 だ け で な く , 部 門 を 統 括 し た 全 体 , そ し て 企 業 間 全 体 で の 最 適 化 が 求 め ら れ る . つ ま り , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン に 参 加 す る 個 々 の 枠 を 超 え た 最 滴 化 を 図 る こ と が 求 め ら れ て お り , こ の 課 題 に 取 り 組 む た め に 考 え ら れ て い る の が , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト で あ る . つ ま り , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト と は , 企 業 活 動 の 中 で も 特に複数の機能や組織を横断する供給に関わる活動を管理することである.
こ の よ う な 厳 し い 環 境 下 で 競 争 優 位 を 維 持 す る た め に , 企 業 は 迅 速 か つ 正 確 に サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン に 対 す る 意 思 決 定 を 行 う 必 要 が あ る . こ こ で の 意 思 決 定 は 主 に ス ト ラ テ ジ ッ ク レ ベ ル , タ ク テ イ カ ル レ ベ ル , オ ペ レ ー シ ョ ナ ル レ ベ ル の 3 つ に 分 類 す る こ と が で き る . ス ト ラ テ ジ ッ ク レ ベ ル と は , 企 業 に 長 期 に わ たって継続的に影響する意思決定の領域である.具体的には,倉庫や工場の数,
場 所 , 処 理 能 力 , ロ ジ ス テ ィ ク ス ・ ネ ッ ト ワ ー ク 全 体 の フ ロ ー に 関 す る 意 思 決
定 な ど で あ る . タ ク テ イ カ ル レ ベ ル と は , 一 般 に 四 半 期 か ら 年 に 一 度 更 新 す る
意 思 決 定 の 領 域 で あ る . 具 体 的 に は , 購 買 計 画 , 生 産 決 定 , 在 庫 政 策 , 顧 客 へ
の 訪 問 頻 度 を 含 む 輸 送 戦 略 な ど が 該 当 す る . オ ペ レ ー シ ョ ナ ル レ ベ ル と は , ス
ケジューリング, リ ー ド タ イ ム 見 積 , 配 送 計 画 , 積 み 荷 計 画 な ど の 日 常 的 な 意
思決定の領域である [ 3 ] .
a
図
2 . 1 SCM
が 注 目 さ れ る 背 景※
[ l ]
を 基 に 作 成リ ー ド タ イ ム は サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン に お い て 生 み 出 さ れ , 規 定 さ れ る . リー ドタイムが経営 に 及 ぼ す 影 嬰 は 大 き く , 業 績 基 盤 を 左 右 す る. 競争 が 激 し く な る ほ ど リ ー ド タ イ ム に お け る 優 位 性 が 経 営 に 大 き な 差 異 を 生 み 出 す こ と と な る.
近 年 は 特 に , 情 報 処 理 及 び 情 報 ネ ッ ト ワ ー ク 技 術 が 飛 躍 的 に 高 ま り , そ れ ら を 利 用 で き る よ う に な っ て き た.モ ノ の 流 れ が 起 き る 場 合 , そ の 背 後 に は 必 ず 情 報 の 流 れ が あ る . 顧 客 か ら の 注 文 情 報 , 生 産 指 示 情 報 , 出 荷 情 報 な ど で モ ノ の 動 き が 始 ま る . こ れ ら の 情 報 の 流 れ と モ ノ の 動 き を う ま く 処 理 し , 管 理 す る こ と で市 場 の 動 向 を つ か み な が ら 生 産 計 画 を 回 すこ と に つ な げ る こ と が で き る . 情 報 技 術 が サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン に お け る 様 々 な 活 動 , さ ら に は プ ロ セ ス の 変 革 を 可 能 に し てい る こ と も , サプライ・ チ ェ ー ン に 対 す る 一 層 の 注 目 を 集 め てい る 要 因 の一 つ であ る . サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・マ ネ ジメ ン ト の 定 義 につい て
さらに詳しく紹介する.
中 野 は , サ プ ラ イ ・ チェー ン ・マ ネ ジ メ ン トとは, 「サプライ・ チ ェ ー ン に お け る 複 数 の 部 門 や 企 業 が , 主 に 調 達 , 生 産 , 販 売 , 物 流 に 関 す る 業 務 の 中 で
も , 特 に モ ノ と 情 報 の ス ト ッ ク と フ ローに 関 す る オ ペ レ ー シ ョ ン 活 動 を 対 象 に, 戦 略 , 構造,プ ロ セ ス と い う三つ の マ ネ ジ メ ン ト 要 素 を 適 合 さ せ る こ と で , パ フ ォ ー マ ン ス の ト レー ド ・ オ フ を 克 服 し , オ ペ レーシ ョ ン の 競 争 俊 位 を 実 現 す る,戦 略 的 か つ 組 織 的 な マ ネ ジ メ ン ト 」 で あ る と し て い る[
1 ] .
森田は,「サプライ ・ チ ェ ー ン と は , 企 業 が 製 品 や サ ー ビ ス を 顧 客 に 供 給 す る た め に 必 要 な 様 々 な 活 動 が 繋 が っ て い る 状 態 を 指 す こ と で あ り , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト は そ の チ ェ ー ン ・ シ ス テ ム を 設 計 し , 作 り 上 げ , シ ス テ ム の 稼 動 を 計 画 し , 稼 動 状 況 を 管 理 す る こ と 」 で あ る と し て い る [ 4 ] .
また高桑は,「サプライ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト は , 資 源 供 給 か ら 生 産 , 流 通 , 販 売 に 至 る モ ノ ま た は サ ー ビ ス の 供 給 連 鎖 を ネ ッ ト ワ ー ク で 結 び , 販 売 情 報 , 重 要 情 報 な ど を 部 門 間 ま た は 企 業 間 で リ ア ル タ イ ム に 共 有 す る こ と に よ っ て,経営業務全般のスヒ° ー ド 及 び 効 率 を 高 め な が ら 顧 客 満 足 を 実 現 す る 経 営 コ ン セ プ ト で あ る . サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 目 標 は , キ ャ ッ シ ュ フ ロー ・ マ ネ ジ メ ン ト を 実 現 す る と と も に ,最 新 の 情 報 技 術 及 び 制 約 理 論 , サ プ ライ ・ チ ェ ー ン 計 画 な ど の 管 理 技 術 に 基 づ き , 市 場 の 変 化 に 対 し て サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン 全 体 を 俊 敏 に 対 応 さ せ , ダ イ ナ ミ ッ ク な 環 境 の 下 で 部 門 間 や 企 業 間 に お け る 業 務 の 全 体 効 率 化 を 図 る こ と 」 で あ る と し て い る [ 5 ] .
以 上 の こ と か ら , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト と は 「 調 達 か ら 販 売 ま で の 流 れ を サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン と し て 統 合 し , モ ノ の 流 れ と 情 報 の 流 れ を 共 有 管 理 す る こ と で , 費 用 削 減 や 顧 客 満 足 度 の 向 上 を 図 る と と も に , 市 場 変 化 に 対 応 し た 生 産 の 全 体 最 適 化 を 行 う 取 り 組 み 」 と い え る . 図 2 . 2にサプライ ・ チェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト で 考 盛 す る チ ェ ー ン の 構 造 と 枝 分 か れ の 例 に つ い て 示 す .
じ
メーカー部 品 4、
部品
L → l
メーカー 1
』
r
物 流'
I 部品
い 叶
メーカー?
製品 メーカー
物 流 ヤ ン タ ー?
部 品 メーーカー3
図 2 . 2 サ プ ライ・チ ェー ン ・ マ ネ ジ メントの概要図
※
[ 6 ] を基 に 加 筆 , 修 正
小売 I
小売
2
小売3
2 . 3 サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 課 題
サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト を 運 用 す る に あ た り , い か に し て サ プ ラ イ・チェーン全体の連携を取り,全体最適化を図るかが焦点となる.そこで,
サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト を 行 う ね ら い ご と の パ フ ォ ー マ ン ス 指 標 と サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト を 困 難 に し て い る 要 因 , 代 表 的 な 課 題 に つ いて紹介する [ 1 ] [ 6 ] .
需 要 予 測 が 容 易 な 場 合 , す な わ ち 市 場 の 不 確 実 性 が 低 い 場 合 に は 効 率 性 重 視 の サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン が 採 用 さ れ , 需 要 予 測 が 困 難 な 場 合 , す な わ ち 市 場 の 不 確実性が高い場合には応答性重視のサプライ・チェーンが採用される.
効 率 性 重 視 の サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン で は , 業 務 の 効 率 化 と 資 産 の 効 率 化 を 図 る こ と が サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の ね ら い と な る . ま ず , 業 務 の 効 率 化 に つ い て は , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト で は 特 に , 生 産 , 物 流 に 関 す る 業 務 の 生 産 性 を 高 め て コ ス ト を 減 ら す こ と が 求 め ら れ る . 次 に , 資 産 の 効 率 化 に つ い て は , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト で は 無 駄 な 在 庫 を 持 た な い こ と が 指 向 さ れ る . 過 剰 在 庫 は 不 良 資 産 を 生 み か ね な い か ら で あ る . そ の た めには安全在庫を必要以上に保有しないようにしなければならない.
応答性重視のサプライ・チェーンでは, リードタイムの短縮と顧客サービス
水準の向上がねらいとなる. リードタイムの短縮では,具体的には受注から納
品 ま で の ト ー タ ル ・ リ ー ド タ イ ム を 短 く す る こ と が 求 め ら れ る . 顧 客 サ ー ビ ス
水 準 の 向 上 に つ い て は , 納 期 遵 守 率 や 注 文 充 足 率 , 配 送 信 頼 性 と い っ た 指 標 に
よ っ て ロ ジ ス テ ィ ク ス の 側 面 か ら の 顧 客 サ ー ビ ス の 向 上 を 図 る こ と を 求 め ら れ
る .
ビ
オ ペ レ ー シ ョ ン のパ フ ォ ー マ ン ス 指 標
(
企 業 パ フ ォ ー マ ン ス の 指 標l
リ ー ド タ イ ム の 短 縮
・受 注 か ら 納 品 ま で の リー ド タ イ ム
売 上 店
・納 期 遵 守 率
・注 文 充 足 率
・配 送 信 頼 性
・売 上 祁 製 造 原 価 率
・売 上 邸 物 流 挫 率
・キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー
・経営賓本営業利益率
• 原材料在庫回転日数
・仕 掛 品 在 庫 回 転 日 数
・完 成 品 在 庫 回 転 日 数
・流 通 在 庫 回 転 日 数
図
2 . 3
サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン に お け る パ フ ォ ー マ ン ス 指 標 の 体 系※
[ 1 ]
を 基 に 作 成サプライ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト を 困 難 に し て い る 要 因 と し て 複 雑 性 が 考
えられる.今日,サプライ・チェーンはサプライヤー,メーカー,卸売,小売,
ロ ジ ス テ ィ ク ス 事 業 者 な ど 多 く の プ レ イ ヤ ー が 参 加 し て グ ロ ー バ ル に 網 目 の よ う に 広 が っ て い る こ と , そ の プ ロ セ ス は ま す ま す 長 く な る と と も に 不 安 定 に な っている こ と な ど に よ っ て サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン が ま す ま す 複 雑 化 し て 管 理 が 難 し く な っ て い る.以 下 に サ プ ラ イ ・チ ェ ー ン ・マ ネ ジ メ ン ト を 困 難 に し て い る 要因を挙げる.
( l )
需 要 の 不 確 実 性 ( 不 安 定 性 ) が ま す ま す 増 大 し て い る こ と最 近,製 品 ラ イ フ サ イ ク ル が 短 く な っ て い る こ と,消 喪 者 の 趣 向 が 大 き く 変 化 し て い る こ と や 製品 の バラ エ テ ィ が 急 増 し てい る こ と な ど か ら , 需 要 の 変 動 が 激 し く , 市 場 の 動 向 を 予 測 す る こ と が ま す ま す 困 難 に な っ て い る た め , サ プ
,
ライ・チェーンに不確実性が大きなプレッシャーを与えている.
( 2 ) 輸 送 リ ー ド タ イ ム の 不 確 実 性 が ま す ま す 増 大 し て い る こ と
グ ロ ー バ ル 化 の 進 展 に 伴 い , サ プ ラ イ ヤ ー か ら メ ー カ ー ヘ , メ ー カ ー か ら 顧 客 へ の , 部 品 , 資 材 , 製 品 の リ ー ド タ イ ム が 長 く な る こ と に よ っ て 輸 送 リ ー ド タ イ ム の 不 確 実 性 が 増 し , 輸 送 貨 物 が ど こ に あ る か わ か ら な く な る と と も に 発 荷 主 , 着 荷 主 と も 到 着 時 間 の 予 想 が つ か な く な っ て い る こ と か ら , モ ノ に つ い て予定通り利用可能性が保証されなくなっている.
( 3 ) チ ャ ネ ル 間 の 多 段 階 の 意 思 決 定 に よ っ て 情 報 の 劣 化 , ブ ル ウ ィ ッ プ 効 果 が 出ること
サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン の 下 流 か ら 上 流 に 向 か う ま で の 間 に 多 段 階 の 意 思 決 定 に よ っ て 需 要 情 報 が ど ん ど ん 劣 化 し て い く 危 険 性 が あ る . す な わ ち , 多 段 階 で の 需 要 予 測 に 関 す る 意 思 決 定 や , タ イ ム ラ グ を 伴 う 結 果 , 情 報 が 各 段 階 で 増 幅 さ れる危険性がある.
( 4 ) チ ャ ネ ル 間 の 活 動 や 行 動 ギ ャ ッ プ に よ っ て , 各 企 業 の 論 理 ( 目 標 ) が 存 在 していること
各 チ ェ ー ン に は 各 企 業 の 論 理 が 厳 然 と し て 存 在 す る , こ の 論 理 , す な わ ち 自 社 の 利 益 を 優 先 し た 判 断 が サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン に 悪 影 聰 を 与 え る . 表 2 . 1 に各 企業の論理例について示す,
( 5 )チャネル間の能カギャップによってボトルネックが発生すること
チャネルの範囲が拡大すればするほどチャネル間の能カギャップによって,
ボ ト ル ネ ッ ク , つ ま り , チ ャ ネ ル 間 の 「 モ ノ の 動 き 」 の 需 要 ( 必 要 ) と 供 給
(能力)の不一致やそれぞれのプロセスの処理スピードの不一致, さらには,
そ れ ぞ れ の プ ロ セ ス の キ ャ パ シ テ ィ ( 処 理 能 力 ) の 不 一 致 が ま す ま す 発 生 す る .
( 6 ) サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン の エ ン ド ユ ー ザ ー の 側 に 近 づ け ば 近 づ く ほ ど , 進 化 の 速度が加速すること
サ プ ラ イ ヤ ー , メ ー カ ー , 流 通 へ と 顧 客 に 近 づ け ば 近 づ く ほ ど , そ の 属 し て
いる業界や会社は進化の速度が加速する.
こ れ ら の 要 因 に よ っ て , 次 の よ う に 実 行 上 多 く の サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジメントの課題が指摘されている.
( a ) サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン 全 体 の 視 点 で 設 定 さ れ た 評 価 指 標 が な い こ と ( b ) 顧 客 満 足 度 の 定 義 が 不 十 分 で あ る こ と と そ の 判 定 基 準 が な い こ と
( c ) 生 産 , 納 入 状 況 デ ー タ の 顧 客 サ イ ド ヘ の 提 供 が 不 十 分 で 不 正 確 で あ る こ と ( d ) 顧 客 の 需 要 情 報 に 基 づ く 供 給 サ イ ド ヘ の 調 達 予 測 デ ー タ の 提 供 が 不 十 分 で
不正確であること
( e ) 情 報 シ ス テ ム が 各 サ イ ト ( 場 所 ) 間 で 連 動 し て い な い こ と に よ り 情 報 共 有 が不十分であること
( t ) 計 画 通 り 納 入 さ れ る こ と を 前 提 と し , 不 確 実 性 の 影 響 を 無 視 す る こ と に よ っ て 計 画 と 実 態 が 乖 離 す る こ と
( g ) サプライ・チェーンの基本原理の一つ, リードタイムの削減を考慮せず過 大在庫を保有すること
( h ) 社 内 顧 客 を 社 外 顧 客 と 差 別 し て 扱 う こ と ( i ) 各 チ ャ ネ ル 間 の 協 調 が 不 十 分 で あ る こ と
0 ) 輸 送 方 法 , 輸 送 計 画 の 分 析 が 不 十 分 で あ る こ と ( k ) 在 庫 維 持 費 の 算 定 が 不 正 確 で あ る こ と
( I ) 全 体 最 適 よ り 各 チ ャ ネ ル で 部 分 最 適 を 優 先 し た 自 立 経 営 を 行 わ せ て い る こ と
(m) 顧 客 の 視 点 に 立 っ た 製 品 設 計 が 不 十 分 で あ る こ と ( n ) 顧 客 の 視 点 に 立 っ た 製 造 工 程 設 計 が 不 十 分 で あ る こ と
( o ) サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン の 視 点 , す な わ ち , 外 部 組 織 と の 統 合 が 不 十 分 で あ る こと
こ う し た サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 課 題 へ の 対 応 と し て , 以 下 の ようなことが挙げられる.
(ア)サプライ・チェーンを通して,製品や工程を設計すること
製 品 設 計 に つ い て , 機 能 性 や 成 果 だ け で な く , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン を 通 し て 起こってくるコストやサービス問題を含めて評価する必要がある.
(イ)サプライ・チェーンを通して,データベースを統合すること
サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン の 効 率 的 な オ ペ レ ー シ ョ ン コ ン ト ロ ー ル は , 各 企 業 か ら の
主要なデータが中央集中化されるよう協調が必要である.
(ウ)サプライ・チェーンで統制と計画支援システムを統合すること
あ る 企 業 の 生 産 計 画 と 在 庫 統 制 の 意 思 決 定 は , ほ か の 企 業 の 意 思 決 定 に 影 響 す る . 多 く の 企 業 で の 意 思 決 定 は , 独 立 し て 決 定 さ れ る べ き で は な い . シ ス テ
ムアプローチがとられるべきである.
(エ)組織のインセンテイプを再設計すること
た い て い の 企 業 は , 領 域 , グ ル ー プ あ る い は , サ イ ト ( 場 所 ) に 焦 点 を 当 て た イ ン セ ン テ イ プ シ ス テ ム を 持 っ て い る . こ れ ら は , 企 業 間 の 協 同 を 妨 げ る 傾 向 が あ る . 全 組 織 に 及 ぶ 硬 化 性 と 効 率 性 を 共 同 し て 達 成 す る た め , 異 な っ た 領 域 や グ ル ー プ を 再 設 計 し , そ し て 新 し い イ ン セ ン テ ィ プ シ ス テ ム を 展 開 す べ き である.
(オ)サプライ・チェーンにおける業績評価を設定すること
新 し い イ ン セ ン テ イ プ と 組 織 上 の 再 設 計 は , 新 し い 業 績 評 価 基 準 と 同 一 歩 調 を と る べ き で あ る . こ の 業 績 評 価 基 準 は , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン の 視 点 を 取 り 入 れ る 必 要 が あ る . す べ て の 統 一 体 が 自 身 の 評 価 基 準 に 責 任 を 持 つ 代 わ り に , す べ て の 統 一 体 は サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン の 評 価 基 準 に 対 し て 当 事 者 意 識 を 持 つ 必 要
がある.
(力)サプライ・チェーンの見方を拡大すること
企 業 は , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン に 影 響 し , あ る い は , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン に よ って影響される利害関係者の必要を理解する必要がある.このような理解は,
よりよいターゲットとオペレーション上の効率性となって表れる.
小 売 業
卸 売 業
メ ー カ ー
サ プ ラ イ ヤ ー
ロ ジ ス テ ィ ク ス 事 業 者
表 2 . l サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン 上 の 企 業 の 論 理
※ [ 6 ] を 基 に 作 成
論 理 内 容 例 問 題 点
返 品 の 発 生
販 売 増 多 め の 販 売 見 込 み 例 外 的 販 促 費 の 発 生 廃 棄 コ ス ト の 発 生 生 産 や 供 給 へ の 変 動 の 在 庫 低 減 納 入 リ ー ド タ イ ム が 短 い
増 幅 に よ り ロ ス の 発 生 安 定 生 産 生 産 リ ー ド タ イ ム が 長 い 高 い 在 庫 レ ベ ル の 発 生 ( 流 品 質 確 保 計 画 変 更 を 最 小 限 に す る 通, ロジスティクス拠点)
高 い 在 廊 レ ベ ル の 発 生 安 定 供 給 供 給 リ ー ド タ イ ム が 長 い
(メーカー, ロ ジ ス テ ィ ク 品 質 確 保 計 画 変 更 を 最 小 限 に す る
ス拠点)
ロ ジ ス テ ィ ク ス ト ラ ッ ク が 満 載 に 高 い 在 庫 レ ベ ル の 発 生
効 率 化 な る ま で 待 っ (流通)
2 . 4 サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 事 例
サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 成 功 事 例 と し て , 以 下 に 事 例 を 挙 げ , そのビジネスについて紹介をする[!].
ア . 富 士 通 ノ ー ト パ ソ コ ン の サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン
富 士 通 株 式 会 社 は , 設 計 と 生 産 の 綿 密 な 連 携 に よ る 開 発 ス ピ ー ド と 品 質 の 向
上 , ト ラ プ ル ヘ の 素 早 い 対 応 , 納 品 ス ピ ー ド の 向 上 を 目 標 と し て , 日 本 国内に
子 会 社 の 生 産 拠 点 を 構 え て い る . 富 士 通 の ノ ー ト パ ソ コ ン は 一 般 向 け と 法 人 向
け に 分 か れ て お り , 一 般 向 け は 年 複 数 回 の モ デ ル チ ェ ン ジ で 一 回 当 た り 1 0 0 機
種 が 市 場 投 入 さ れ , 法 人 向 け は 1 機 種 で 選 択 で き る パ タ ー ン が 約 2 万 通 り 存 在
す る . 営 業 担 当 者 が 量 販 店 か ら プ ロ モ ー シ ョ ン 計 画 や 受 注 見 込 み 状 況 を 入 手 し
たり, SCM 部 門 と ほ か の 営 業 , マ ー ケ テ ィ ン グ , 購 買 , 開 発 と い っ た 部 門 と の
生 産 計 画 会 議 を 開 催 し た り , サ プ ラ イ ヤ ー に 予 測 の 情 報 を 提 供 す る と い っ た 連
携 に よ っ て さ ま ざ ま な 部 門 , 販 売 会 社 , 製 造 会 社 , さ ら に は 顧 客 , サ プ ラ イ ヤ
ー , 物 流 業 者 を 含 め た サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン の メ ン バ ー が 一 般 向 け で は 平 均 2 日 ,
法 人 向 け で は 最 短
4日 と い う , 受 注 か ら 納 品 ま で の リ ー ド タ イ ム を 実 現 す る た
め の サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ プ ロ セ ス を 形 成 す る こ と が で き て い る .
ィ .
ZARAの サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン
ZARA
は年間
30万
SKU (I万 ア イ テ ム
X5 6色
X5 7サ イ ズ ) の 商 品 に つ い て 全 く 新 し い デ ザ イ ン な ら
4 5週 間 以 内 , 既 存 商 品 の 修 正 な ら
2週 間 以 内 に 店 舗 に 納 入 で き る . 従 来 の 業 界 モ デ ル で は , デ ザ イ ン に
6カ 月 , 製 造 に
3カ 月かかるといわれており,
ZARAの 圧 倒 的 な 速 さ が わ か る . 一 般 的 に
1万アイ テム,
30万
SKUと い う 数 に な る と 販 売 量 を 予 測 す る の が 相 当 難 し く , 過 剰 在 庫を抱えたり,欠品が発生したりする可能性が高くなる.しかし
ZARAの場合,
店 頭 在 庫 は あ ま り 持 た ず , 顧 客 が 自 分 と 同 じ 服 を 着 て い る 人 と 出 く わ さ な い よ う に と い う 配 慮 と , 今 が 買 う チ ャ ン ス だ と い う 雰 囲 気 を 作 り 出 す と い う 在 庫 が 少 な い た め に 特 定 商 品 が 品 切 れ す る 可 能 性 が 高 く な る こ と を 逆 に 積 極 的 に 活 用 し て い る . こ の よ う に 需 要 を う ま く 喚 起 し つ つ , 店 頭 在 庫 を 低 い 水 準 で 維 持 す るために,
ZARAは 本 社 集 中 型 で 在 庫 コ ン ト ロ ー ル を 行 っ て い る . 新 商 品 の 初 回 投 入 抵 を 決 め る の は 本 社 の マ ー ケ タ ー で , 店 舗 は 追 加 発 注 で き る が 本 社 か ら 届いたリストに掲載された商品分だけ, し か も 本 社 が 決 め た 数 量 以 上 は 発 注 で
きないようになっている. 日頃の情報交換を通じて要望を出す機会はあるが,
ど の 商 品 を ど の 店 舗 で ど れ ぐ ら い 売 る か に つ い て の 意 思 決 定 は 本 社 側 で 一 括 管 理 す る こ と で コ ン ト ロ ー ル す る こ と が で き て い る .
ウ . ダ イ キ ン 工 業 の サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン
住 宅 用 エ ア コ ン の 需 要 の 変 化 に 影 響 を 及 ぼ す の は 気 温 の 変 化 だ け で は な く ,
変 動 に 対 応 す る こ と は 極 め て 難 し い . 例 え ば , 競 合 他 社 の 商 品 が 店 頭 で 品 切 れ
に な る と 自 社 製 品 の 需 要 が 増 え る . 暑 さ を し の ぐ た め な ら 機 種 に 違 い は あ っ て
も ブ ラ ン ド に こ だ わ ら な い 消 典 者 が 多 い た め で あ る . 加 え て , 生 産 能 力 と 需 要
の ピ ー ク と の 差 に 対 応 す る た め に 数 か 月 前 か ら 先 行 的 に 生 産 を 始 め る が , そ の
時 期 が 早 い ほ ど 精 度 の 高 い 予 測 を 行 う こ と は 難 し く な る . ダ イ キ ン 工 業 で は ,
各 販 売 会 社 か ら 空 調 営 業 本 部 の 企 画 部 門 を 経 由 し て 提 示 さ れ る 月 次 の 機 種 グ ル
ー プ 別 の 販 売 計 画 , 過 去 同 時 期 や 直 近 の 販 売 実 績 , 物 流 拠 点 の 在 庫 量 を 基 に ,
SCM部 が 機 種 別 の 受 払 計 画 を 立 案 す る . 大 手 の 家 電 量 販 店 か ら
POSデ ー タ や
在 庫 デ ー タ を 入 手 し て お り , 販 売 計 画 の 立 案 , 受 払 計 画 の 立 案 に そ れ ら の デ ー
タが活用されている. 3 日サイクルで計画を策定し, 5 カ 月 先 ま で ロ ー リ ン グ さ
せ る . こ の 受 払 計 画 を 基 に , 生 産 管 理 部 門 は ラ イ ン 負 荷 の 過 不 足 や 人 員 配 置 が
可 能 か ど う か , 調 達 部 門 は 特 に 納 期 が 長 い モ ー タ ー な ど の 部 品 が 調 達 で き る か
を確認する.月 1回 こ れ ら の 部 門 が 集 ま っ て 製 版 の 供 給 調 整 会 議 を 開 き , 生 産
計画を確定させる. プランド・ロイヤリティを形成しにくい住宅用エアコンの 製 品 特 性 上 , ダ イ キ ン で は 顧 客 か ら の 受 注 に 対 す る 欠 品 を 避 け る こ と を 大 前 提 と し て い る . そ の た め , 需 要 の 変 動 に 対 応 す る う え で 必 要 な 在 庫 を 原 材 料 , 仕 掛 品 , 完 成 品 の 各 段 階 で 保 有 し て い る . 一 方 で , 各 段 階 の 在 庫 を で き る だ け 減 らし,かつよりコスト効率の高い生産・物流を実現する取り組みを続けている.
エ.花王のサプライ・チェーン
花王株式会社は, 日用品,化粧品などを製造・販売している製造業である.
花王は 1997 年度から 2007 年 度 に か け て 在 庫 と 欠 品 の パ フ ォ ー マ ン ス の ト レ ー ド ・ オ フ を 克 服 し て き た . そ の 主 な 要 因 と し て , 出 荷 予 測 シ ス テ ム の 導 入 に よ る 計 画 プ ロ セ ス の 変 革 を 挙 げ る こ と が で き る . 以 前 は , 販 売 部 門 に よ る 月 次 の 販 売 計 画 に 基 づ い て 月 次 会 議 の 場 で 需 給 調 整 を 行 い , 必 要 に 応 じ て 販 売 計 画 値 を 修 正 し て い た . 生 産 , 物 流 と い っ た 供 給 部 門 は 修 正 さ れ た 販 売 計 画 値 を 基 に
自部門の計画を立案することになるが, 日々のオペレーションの計画を立てる
必要があるため,月次から日次への展開は独自の予測に基づいて行っていた.
1997 年 以 降 は , 月 次 会 議 の よ う な 場 で の 需 給 調 整 は 行 わ ず , 生 産 部 門 は ロ ジ ス テ ィ ク ス 部 門 内 の 供 給 グ ル ー プ に よ る 日 次 の 出 荷 予 測 に 基 づ い て 生 産 計 画 を 立 案するようになっている.出荷予測システムは徐々に対象商品を広げていき,
1999 年に季節品全品, 2000 年に通常品全品, 2001 年に申請品全品, 2002 年に 製 品 改 良 時 の 旧 製 品 全 品 に つ い て 運 用 が 開 始 さ れ , 在 庫 と 欠 品 が 両 方 と も 大 幅 に 減 少 し た . こ の こ と か ら , 花 王 は 出 荷 予 測 シ ス テ ム を 導 入 す る こ と で ア セ ッ ト ・ フ ロ ン テ ィ ア を 拡 張 し , 計 画 プ ロ セ ス を 見 直 し て 対 象 商 品 を 広 げ て い く こ と で , オ ペ レ ー シ ョ ン ・ フ ロ ン テ ィ ア を 徐 々 に 移 行 さ せ , そ の 運 用 を 徹 底 さ せ ることで在庫と欠品のパフォーマンスの水準を高めてきたと解釈できる.
2 . 5 ま と め
近 年 , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト を 取 り 入 れ て い る 企 業 は 増 加 し て き て お り , 企 業 経 営 に お い て サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 役 割 は ま す ます大きくなっていくと考えられ,今後さらなる発展が期待されている.
本 章 で は , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト に つ い て の 概 要 を は じ め , サ
プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 課 題 や サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト
の 活 用 事 例 に つ い て ま と め た . 次 章 で は , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン を 世 界 規 模 に ま
で拡張したグローバル・サプライ・チェーンについて述べる.
第 3 章 グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ ネ ッ ト ワ ー ク
3 . 1 は じ め に
第 3 章 で は , サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト の 規 模 を グ ロ ー バ ル に 拡 張 し た グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ ネ ッ ト ワ ー ク に つ い て 述 べ , 製 造 拠 点 配置/再配置戦略の概要として生産拠点を海外移転するオフショアリング,生産 拠 点 を 国 内 回 帰 さ せ る リ シ ョ ア リ ン グ , 生 産 拠 点 を 近 隣 国 へ 移 転 さ せ る ニ ア シ ョアリングについて解説する.また,グローバル・サプライ・チェーン・ネッ
トワークに関する関連研究について述べる.
3 . 2 グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ ネ ッ ト ワ ー ク の 概 要
グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン と は 国 家 間 に ま た が る サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン の こ と を 指 す . 企 業 の グ ロ ー バ ル 化 が 進 ん だ こ と に よ り , 従 来 よ り も は る か に 巨 大 な 市 場 が 開 け た . そ の た め , 企 業 が 扱 う 生 産 ・ 管 理 ・ 物 流 ・ 販 売 の 規 模 は 非 常 に 大 き な も の と な っ た . 具 体 的 に は , よ り 安 価 な 原 材 料 や 人 件 毀 を 活 用 で き る よ う に な り , 製 造 拠 点 候 補 地 に 関 し て も , 以 前 よ り 選 択 肢 が 増 加 し た . こ れ ら に よ っ て 製 造 費 用 を 減 少 さ せ る こ と が 可 能 に な っ た . ま た , 潜 在 的 な 市 場 の 拡 大 に よ っ て 売 上 と 利 益 を 増 や す こ と も 可 能 と な っ た [ 3 ] .一方で,サプラ イ ・ チ ェ ー ン が 世 界 規 模 に な る こ と で 政 治 的 , 文 化 的 , 経 済 的 要 因 が 多 様 に な
り,それらの環境要因の不確実性,複雑性,不均一性も高まった.グローバ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン は 国 内 で 完 結 す る サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン と 比 べ て , あ ら
ゆる面で複雑になったことは明らかである.
日 本 の 製 造 業 は 日 本 経 済 の 成 長 と 共 に 円 高 の 影 響 を 受 け , 安 価 な 人 件 費 や 生 産コストを求めてアジア地域に生産拠点を移転する動き(オフショアリング;
o f f s h o r i n g ) が 進 ん で き た . 最 近 で は ア ジ ア 圏 の 国 々 の 経 済 成 長 は 著 し く , 安 価 な 労 働 力 だ け で な く , そ れ ら の 国 で の 購 買 意 欲 も 高 ま っ て き た こ と か ら 販 売 マ ー ケ ッ ト と し て も 期 待 さ れ , 企 業 が 進 出 す る 例 も 一 般 的 に な り つ つ あ る . ま た 上 記 の こ と 以 外 に も , 主 要 な 販 売 マ ー ケ ッ ト の 需 要 に 柔 軟 に 対 応 す る た め に 国 外 に 販 売 拠 点 や デ ポ を 設 置 す る こ と , 法 人 税 な ど の 税 負 担 の 低 い 国 で の 経 営 活 動 を 目 的 と し た 海 外 進 出 な ど , 企 業 に お け る 海 外 進 出 の 目 的 と そ の 形 態 は 多 種多様なものになってきている.
こ の よ う な 経 済 環 境 や 市 場 の 変 化 に よ っ て , 従 来 の サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン に グ
ロ ー バ ル な 視 点 と 規 模 を 取 り 入 れ て 実 施 さ れ る グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー
ン・ネットワークの考え方に注目が集まっている.
久保 ( 7 ] は,グローバル・サプライ・チェーンが国内で展開されるサプライ・
チェーンと異なる点を以下のように挙げている.
1 ) 輸送時間並びにリードタイムが長く,需要,為替など不確実性が大きい.
2 ) テロ,ストライキ,火事,洪水,大雪,ハリケーンなどの災害・事故のリス クを考慮する必要がある.
3 ) 関 税 , 関 税 控 除 , 国 産 化 率 な ど を 考 慮 し て 製 品 の 調 達 や 生 産 を 考 え る 必 要 がある.
4 ) 国 ご と に 法 人 税 率 が 異 な る た め , 移 転 価 格 を 調 節 し て 利 益 の 配 分 を 合 法 的 に行う必要がある.
また阿保ら [ 8 ] は,グローバル・サプライ・チェーン・マネジメントに関して 考慮すべき事項として,以下のことを挙げている.
I . 顧 客 と 資 材 や 諸 パ ー ツ 等 の 供 給 業 者 の 立 地 点 I I . 候 補 立 地 点 に お け る 従 業 員 の 確 保 状 況
I I I .諸材料調達のパイプラインの長さ(距離と時間)
I V .各 種 の 輸 送 モ ー ド の 輸 送 時 間 と 輸 送 費
V . 税 制 上 の 優 遇 制 度 が あ る 地 域 と そ の 優 遇 水 準
V I .相 殺 取 引 制 度 と ロ ー カ ル ・ コ ン テ ン ツ ( そ の 国 で 製 品 に 組 み 込 む 部 品 の 一 定%を購入しなければならないという法律)
V I I . 輸 出 に 対 す る 規 制 , 関 税 率 , 払 い 戻 し 制 度
vm. 製造工場は何個所必要で,それらをどこに立地させ,何を製造し,その
能 力 は い く ら に 設 定 す る か
I X .垂 直 的 統 合 を ど の 程 度 ま で 進 め る べ き か
X . ある製品を 1 工場で製造するのか, 2 工場,あるいは 3 工場か
X I .税 制 上 の 優 遇 は , ど れ く ら い の 輸 送 費 や 関 税 の 割 高 と 釣 り 合 う も の で あ る か
そ し て , グ ロ ー バ ル ・ ネ ッ ト ワ ー ク を 構 築 す る 上 で 意 思 決 定 が 求 め ら れ て い
る諸事項として,以下のようなことが挙げられている.
]
.
流通センターは何箇所必要か.どこに立地するのか.また,その能力,輸送
方 法
2 . 注 文 種 類 別 に , ま た 製 品 種 類 別 に , ど の 流 通 セ ン タ ー が ど の 地 域 の 顧 客 に 供 給 す る の か
3.
新 製 品 の う ち で , ど の 設 計 が 総 費 用 対 製 造 と 流 通 の 総 合 時 間 と の バ ラ ン ス という面で最も優れているか
4 . 売 上 高 の 予 測 値 が 変 わ っ た な ら ば , 原 価 並 び に 工 場 の 選 定 と 材 料 部 品 の 供 給 業 者 の 選 定 に い か に 影 響 を 及 ぼ す か
5 . 世 界 的 に 納 入 業 者 を 選 定 す る と き , も し そ の 数 を 少 な く し よ う と 考 え た な ら ば , 残 さ な け れ ば な ら な い の は 何 社 か
6 . 各 工 場 に 対 し て , 部 品 の 各 ク ラ ス ご と に ど の 供 給 者 に 納 入 さ せ る べ き か 7 . 補 修 部 品 や 取 り 換 え 部 品 の た め の ネ ッ ト ワ ー ク に つ い て , 工 場 と ベ ン ダ ー
と顧客との間の輸送において, どの設計が最適か
8.
リ ペ ア セ ン タ ー は 何 箇 所 必 要 か . ま た ど の 製 品 を リ ペ ア セ ン タ ー に 割 り 当 て る の か
9 . 総裁取引とローカル・コンテンツに関して,特定の国でどの製品を製造し,
ま た は 購 入 し た な ら ば 総 裁 取 引 条 件 を 満 足 す る か
1 0 . 特 定 国 で そ の 製 品 を 購 入 す る こ と は , 費 用 的 に ま た は 時 間 的 に ど れ く ら い マ イ ナ ス と な る か
グ ロ ー バ ル ・ サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ ネ ッ ト ワ ー ク を 構 築 し て い く 上 で は , 以 上のような事項を考慮して決定を行っていかなければならない.グローバル・
サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン は 国 家 の 国 境 を 越 え て 構 築 さ れ る こ と に よ り , 国 内 で の サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン ・ マ ネ ジ メ ン ト に 比 べ て 政 治 的 , 文 化 的 , 経 済 的 な 差 が 大 き く,より複雑で不確実な環境下での運営が求められることとなる.グローバル・
サプライ・チェーンのビジネスプロセスは大きく 7 つに分類され,以下のよう
な課題と目的が挙げられる [ 9 ] .
① 戦 略
企 業 戦 略 を 支 え る サ プ ラ イ ・ チ ェ ー ン 戦 略
規 模 と 範 囲 の 経 済 に よ る 現 在 の 活 動 の 効 率 的 達 成 現 在 の 活 動 に と も な う リ ス ク の 管 理
環 境 変 化 に 対 す る イ ノ ベ ー シ ョ ン と 遮 応 の 学 習 能 力 の 開 発
現 地 適 応 と グ ロ ー バ ル 効 率 の バ ラ ン ス
② リスクマネジメント
環 境 調 査 と 経 営 の 柔 軟 性
ー マ ク ロ 経 済 環 境 ( 賃 金 , 利 子 率 , 為 替 レ ー ト ) の 変 化 の 監 視 と 順 応 政 府 の 政 策 ( 租 税 , 関 税 , 法 的 要 件 , 技 術 基 準 , 現 地 調 達 率 ) の 変 化 の 監 視 と 順 応
業 界 構 造 や 法 的 要 件 が 異 な る グ ロ ー バ ル な 競 争 者 の 行 動 に 対 す る 識 別 と準備
多 様 な 国 や 文 化 の も と で の 資 源 能 力 の 識 別 , 準 備 , 管 理
③ ナ レ ッ ジ ・ マ ネ ジ メ ン ト
国や文化を超えてのイノベーション,学習,適合に備えた組織プロセス の開発
所 有 技 術 の 保 護
④ リレーションシップ・マネジメント
戦 略 的 目 標 の 達 成 と リ ス ク 管 理 の で き る 企 業 に さ せ る 関 係 の 構 築 顧 客 や サ プ ラ イ ヤ ー と の 関 係 で 文 化 的 意 味 の 理 解 ( 例 え ば 顧 客 の 要 求 の 違い,認識や対応行動の違い)
多 様 な 国 で の リ ス ク 管 理 と 同 時 に 戦 略 的 目 標 を 達 成 し , 法 的 要 件 を 満 た す た め の 関 係 の 構 築
地 理 的 , 社 会 的 , 文 化 的 不 均 整 の 理 解 と 管 理 交 渉 上 の 文 化 的 意 味 の 理 解
⑤ 財 務 管 理
財 務 会 計 シ ス テ ム と 同 種 の コ ス ト デ ー タ の 違 い の 理 解
リ ス ク の 最 小 化 と 利 益 の 最 適 化 の た め の 売 上 と 所 有 権 交 換 の 条 件 の 管 理
租 税 と 関 税 の 最 小 化 の た め の 移 転 価 格 の 最 適 化
見 返 り 貿 易 と 外 国 為 替 の 管 理 の た め の シ ス テ ム と プ ロ セ ス の 開 発
⑥ 組 織 能 力
新しいスキルの要求(言語,習慣,為替レート,外国市場の機械,外国 のロジスティクス)
伝統的なビジネス慣行から生じる考え方の違いの理解と管理(例えば,
インフレーション期の在庫について)
モ テ イ ベ ー シ ョ ン ヘ の 文 化 的 意 味 の 理 解 , 適 切 な 報 酬 と 評 価 シ ス テ ム
⑦ 情 報 管 理 と 技 術
グ ロ ー バ ル ベ ー ス で 互 換 性 の あ る 情 報 技 術 の 開 発 オ ペ レ ー テ ィ ン グ ・ シ ス テ ム の 標 準 化
グローバル変数を考應し, ' what i f ' シナリオ分析を可能にし,意思決定 を 高 め る 意 思 決 定 の サ ポ ー ト ツ ー ル の 開 発
サプライ・チェーン戦略と運営のためのグローバル・データのアクセス と利用を可能にする情報システムの開発
国 境 を 越 え た 活 動 に と も な う 文 書 フ ロ ー の 管 理 デ ー タ の 互 換 性 と 情 報 シ ス テ ム
3 . 3 生 産 拠 点 配 置 / 再 配 置 戦 略 の 概 要
生 産 拠 点 を 海 外 に 移 転 す る オ フ シ ョ ア リ ン グ に つ い て 述 べ た が , 近 年 , 円 高 が 緩 和 さ れ る と と も に , ア ジ ア 諸 国 で の 人 件 費 を 中 心 と し た 生 産 コ ス ト の 上 昇 や , リ ス ク ヘ の 対 応 , 技 術 流 出 の 防 止 , 高 品 質 製 品 の 需 要 増 加 や 納 期 遵 守 な ど の 目 的 の 達 成 の た め 海 外 に 移 し た 生 産 拠 点 を 再 び 日 本 国 内 に 回 帰 さ せ る 動 き
(リショアリング; r e s h o r i n g ) や , 国 内 に お け る 拠 点 再 編 , 既 存 施 設 の 増 強 な ど , 様 々 な 形 で 国 内 投 賓 が 活 発 化 し て い る . 海 外 の 先 進 国 に お い て も 各 国 政 府 が 産 業 活 性 化 や 雇 用 増 加 を 目 指 し 製 造 業 の 国 内 誘 致 を 進 め る 動 き も 存 在 し て い る . ま た , 中 国 の 急 速 な 経 済 発 展 に よ っ て 生 産 コ ス ト が 上 昇 し た た め , オ フ シ ョ ア リ ン グ を 行 っ て い た 企 業 が 近 隣 の 労 働 力 の 安 い ア ジ ア 諸 国 に 生 産 拠 点 を 移 転する動き(ニアショアリング; n e a r s h o r i n g ) も今日の過酷な競争で生き残る ための戦略として注目を集めている.
独 立 行 政 法 人 日 本 貿 易 振 興 機 構 ( ジ ェ ト ロ ) が 製 造 業 を 含 む 全 産 業 を 対 象 に
行った「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」結果を見ると, 日
本,中国, ASEANの 3カ国・地域間の海外拠点の移管パターンに関して,日本
か ら 中 国 へ の 移 管 が 減 少 し て い る 一 方 で , 中 国 か ら 日 本 へ の 移 管 , す な わ ち 国
内回帰が増加している.特に, 2016 年度には,日本から中国への進出と,中国
か ら の 日 本 へ の 国 内 回 帰 が 逆 転 す る な ど , 企 業 の 国 内 外 の 事 業 展 開 に 変 化 が 見 られる.さらには,中国から ASEAN への拠点移転が進む一方で, ASEANから 中国への移転は低水準となっている.また,経済産業省が 2016 年 に 行 っ た ア ン ケート調査においても,海外生産を行っている製造業の企業のうち, 1 1 . 8 %が過 去 1 年 間 で 国 内 生 産 に 戻 し て い る . こ の 数 値 は , 過 去 2 年 の 調 査 と ほ ぼ 同 じ で あ り , 国 内 回 帰 の 動 き が 一 定 程 度 継 続 し て 見 ら れ る . 移 管 元 は 特 に 中 国 ・ 香 港 か ら の 割 合 が 高 く な っ て お り 生 産 の 国 内 回 帰 は 幅 広 く 我 が 国 製 造 業 に 影 響 を 与 えていると考えられる.[ 1 0 ] .
ま た 海 外 各 国 に は , 製 造 業 の 高 度 化 の た め の ナ シ ョ ナ ル ・ イ ニ シ ア チ プ を 策
定 し , 国 内 回 帰 を 図 る 企 業 に 対 し て 政 府 が 積 極 的 な 支 援 策 を 打 ち 出 し て い る 国
も存在する. 国 内 回 帰 支 援 を 特 に 明 確 に 打 ち 出 し て い る 政 策 の 例 と し て は , イ
ギリスの「 Reshore UK 」,フランスの「 L ' a i de i t l a r e i n d u s t r i a l i s a t i o n 」「コルベ
ー ル 2 . 0 」,韓国の「 U タ ー ン 企 業 支 援 法 制 」 が 挙 げ ら れ る . 国 ご と に 政 策 の 内
容 は 若 干 異 な る が , い ず れ の 政 策 も 国 内 回 帰 を 検 討 す る 企 業 に 対 し て , 政 府 が
税 制 上 , 金 融 上 の 支 援 や 情 報 提 供 , コ ン サ ル テ ィ ン グ サ ー ビ ス を 提 供 す る も の
で あ る . ま た , 国 内 回 帰 や 国 内 投 資 を 明 確 に 打 ち 出 し て い る わ け で は な い も の
の , 米 国 各 州 に お い て も 税 制 優 遇 , 金 融 支 援 な ど 積 極 的 な 企 業 誘 致 政 策 が 採 ら
れている [ I I ] .
国
イ ギ リ ス
フ ラ ン ス
ド イ ツ
表 3 . 1 各 国 政 府 の 国 内 回 帰 振 興 策 ( そ の 1 )
※[ 1 1 ] を 基 に 作 成
支 援 策 ・ 産 業 政 策 概要
製 造 業 の 国 内 回 帰 を 支 援 す る 政 策 プ ロ ジ ェ ク ト
国 内 回 帰 を 検 討 す る 企 業 に 対 し , 情 報 提 供 ・ コ ン サ ル テ Reshore UK
ィ ン グ サ ー ビ ス を 実 施 す る ほ か , 中 小 企 業 に は 財 政 支 援 も提供する
国 内 回 婦 を 目 指 す 企 業 の 事 業 計 画 の 優 劣 を 競 う 政 府 主 催 の 企 業 コ ン テ ス ト
~MSC!
勝 者 の 企 業 は , 政 府 の 資 金 援 助 や 従 業 員 へ の 技 能 講 習 を 受 け る こ と が で き る
中 小 企 業 の 国 内 回 帰 を 促 す た め の 無 利 子 融 資 制 度 L'aide
a
la政 府 系 機 関 か ら , ー 事 業 に つ き 最 大 200万 ユ ー ロ が 融 資 reindustrial isation
される
国 内 回 帰 を 検 討 す る 企 業 に 向 け た 情 報 提 供 サ ー ビ ス コ ル ペ ー ル 2.0 事 業 の 実 現 可 能 性 や 政 府 支 援 策 な ど に 関 す る 情 報 提 供 を
オ ン ラ イ ン 上 で 行 う
次枇代料/報技術の瑯入により製造業の革新を目指す産業 戦 略
インダストリ 4.0 生 産 工 程 を 高 度 に デ ジ タ ル 化 ・ 自 動 化 ・ ネ ッ ト ワ ー ク 化 し た ス マ ー ト 工 場 瑯 入 モ デ ル の 開 発 と 普 及 を 推 進 す る 取 り 組 み を , 産 学 官 が 一 体 と な っ て 行 う
中 小 企 業 へ の イ ン ダ ス ト リ 4.0導 入 支 援 策
中小企業 4.0 総 額 2,800万ユーロの予算を充て, 2018年 ま で に 中 小 企 業 に 情 報 や ア ド バ イ ス を 提 供 す る 施 設 を 国 内 5か 所 に 設 置する
成 長 分 野 の 育 成 に 向 け 企 業 の イ ノ ベ ー シ ョ ン を 支 援 す る 戦 略
新 ハ イ テ ク 戦 略
現 在 , ス マ ー ト シ テ ィ , 自 動 迎 転 な ど で 研 究 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト が 進 行
国
米 国
中 国
韓 国
表
3.2各 国 政 府 の 国 内 回 帰 振 興 策 ( そ の
2)※ [ 1 1 ] を 基 に 作 成
支 援 策 ・ 産 業 政 策 概 要
「製造コミュニテイ」 産 業 の 核 と な る 「 製 造 コ ミ ュ ニ テ ィ 」 を 国 内 各 地 に 整 備
支 援 策 す る 取 り 組 み
中 小 企 業 に お け る イ ノ ベ ー シ ョ ン や 競 争 力 強 化 を 支 援 す る 取 組
中 小 企 業 向 け
連 邦 政 府 や 研 究 機 関 が 保 有 す る イ ノ ベ ー シ ョ ン 資 産 ・ 技 イ ノ ペ ー シ ョ ン 支 援 策
術 の 開 放 な ど の 中 小 企 業 支 援 策 を , 連 邦 政 府 が 主 体 と な っ て 実 施
州 政 府 に よ る 企 業 誘 致 ・ 各 州 政 府 が , 進 出 企 業 に 対 す る 税 制 優 遇 , 金 融 政 策 , 規
策 制 緩 和 , 誘 致 セ ミ ナ ー な ど を 実 施
中 国 製 造 業 の 国 際 競 争 力 強 化 に 向 け た 産 業 戦 略 2025年 ま で に 総 額400億 元 を 投 じ て , 新 興 企 業 向 け 私 中 国 製 造 2025
募 市 場 の 整 備 や 次 世 代 情 報 技 術 の 導 入 を 推 進 し な が ら , 10の 戦 略 分 野 を 重 点 的 に 育 成 す る
韓 国 製 造 業 の 国 際 競 争 力 強 化 に 向 け た 産 業 戦 略
製 造 革 新 3.0 24兆ウォンを投じて, 2017年 ま で に 1万 社 の ス マ ー ト 工 場 を 設 置 す る 計 画 を 推 進
中 小 ・ 中 堅 輸 出 企 業 の 育 成 に 向 け た 産 業 復 興 策
輸 出 競 争 力 強 化 策 官 民 で 総 額 100兆 ウ ォ ン を 投 じ , 貿 易 金 融 の 整 備 や 輸 出 企 業 の 育 成 な ど を 実 施
韓 国 企 業 の 国 内 回 帰 を 支 援 す る た め の 法 制
Uタ ー ン 企 業 支 援 法 制 ・ 法 人 税 の 減 免 , 土 地 ・ 設 備 投 資 へ の 助 成 な ど , 企 業 へ の 多 角 的 支 援 策 を 整 備 し て い る