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現代会計システムの論理統合

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経営 と経済 87巻 第1 20076

現代会計システムの論理統合

Abstract

Thepurposeofthispaperistointegratevariouscontemporaryac countingsystemslogicallyandbuildageneralform oftheaccounting system.Itistheaccountingsystem thatappliesrealoptionvalueasa valuationbasisandearnlngpowerunitasameasurementunit,uses marketrelateddiscountrateasadiscountrateofvaluationbasisand weightedaveragecostofcapitalasadiscountrateofmeasurementunit, andconsiderschangesofthecapitalstructure.Thisgeneralformofcon‑

temporaryaccountingsystem iscalledasthecontemporaryfairvalue accountingwhichcanevaluateproperlyboththecorporateperfor mancesandthecorporatevalues.

Keywords:presentvalueaccounting,APVaccounting,EVAaccount ing,CFROIaccounting,realoptionaccounting,contemporaryfairvalue accounting

じ め に

現代会計において,資産,プロジ ェク トない し企業の評価基準 として現在 価値 を採用する現在価値会計が重要 となって きている。 これは,将来のキ ャ

ッシ ュ ・フローを予測 し,貨幣の時間的価値 を考慮する とい う現代会計シス テムに共通 した ものを有 しているゆえに,企業価値評価 および現代ファイナ ンス会計の出発点であ り,現代会計システムの基礎 としての役割を担 ってい

(2)

2 経 営 と 経 済

る。

しかし,この現在価値会計はい くつかの問題点を有 している。すなわち, この会計システムでは,資本 コス トが現実的ではな く,業績評価機能が欠如 してお り,その評価方法は弾力的ではない。現在価値の動 きが企業業績の動 きと必ず しも一致 しておらず,現在価値会計は企業業績の動 きを把握できな い。さらに, この会計システムでは,資産やプロジ ェク トが弾力的に評価 さ れず,その結果,過小評価 される可能性がある。

そこで,現在価値会計のかかる欠点を超克 し,かつ利点を継承するもの と して提唱されたのが,APV (調整現在価値)会計,EVA (経済付加価値) 会計,CFROI(キ ャッシ ュ ・フロー投資利益率)会計および リアル ・オプ シ ョン会計であった。

APV会計は,現在価値会計 と基本的に同じであるが,企業価値を,loo 株式で資金調達 された場合の事業価値 と,有利子負債による調達から得 られ た節税効果による価値 という,2つの価値 に分けて捉える会計である。 これ によって,現実的な資本コス トの算定を可能 とす る。EVA会計は,現金主 義会計をベース としなが ら発生主義会計を適宜適用 した会計であ り,収益 と 費用の対応を重視する会計である。そ して, これによって,現在価値会計で はできなかった,個別期間の業績評価を可能 とする。

CFROI会計は,割引率をモデルの予測プロセスに組.み込んで利用 し,内 部収益率 (IRR,internalrateofreturn)の思考を適用する会計であ り, こ れによって,将来を直接的に予想 した適合的な資本 コス トを算 出できること となる。 リアル ・オプシ ョン会計は,動的で不確実な企業環境 に適応するモ デルを組み込んだ会計であ り, これによって,適正な投資意思決定 と企業価 値評価を可能 とする。

この ように,APV会計,EVA会計,CFROI会計および リアル ・オプシ ョン会計は,現在価値会計の利点を継承 しなが ら問題点を超克 しているとい う点で,非常 に重要な会計システムであると考え られる。 しかし,これ らの

(3)

現代会計システムの論理統合 3

会計システムを個 々に詳細に検討 してみる と,それ らは必ず しも完全な もの ではな く,それぞれ解決 しえていない何 らかの問題点を依然 として有 してい

る。

現代会計システムがその会計 日的たる企業業績評価お よび企業価値評価 を 適切に遂行す るためには,これ らの問題点を超克 し, より完全な会計システ ムを論理的に構築 してい く必要 があ る。そ こで,APV会計 ,EVA会計 , CFROI会計 お よび リアル ・オプシ ョン会計を基礎 として,それ らの問題点 を超克 し,利点を継承 して統合 し,そして現代会計システムの一般形態を論 理的に構築す ることが,本稿の 目的である。

この 目的を達成するために,本稿は次の ことを論 じる。

(1) まず,会計システムを一般的に論 じるために,測定単位および評価基 準 とい う会計の測定要素を説明し, これ らに基づいて会計システムの諸 類型を導 き出す。

(2) 次に,現代会計システムの一般形態 を構築するために,評価基準,刺 定単位,割引率および資本構成に関 して検討 し,それぞれの最適な一般 形態を論理的に導 き出す。現代会計システムの一般形態は これ らを組 み 込むことによって形成 され ることになる。

(3) これによって形成 された会計システムを現代公正価値会計 と命名 し, その方法を論 じる。そ こでは,現代公正価値会計 における企業価値評価 を説明し,公正価値貸借対照表の作成方法お よび公正価値利益の算定方 法 について述べる。

(4) さらに, この現代公正価値会計を完全に理解するために,これを具体 的な数値例によって計算す る。そこでは,まず公正価値貸借対照表を作 成 し,次 に公正価値利益の計算を行 う。

(5) 最後 に, これまで本稿で述べて きた要点を整理するとい う方法で,覗 代会計システムの論理統合および現代会計システムの一般形態 に関す る 結論を確認する。

(4)

4 経 営 と 経 済

会計の測定要素

現代会計システムを論理的に統合 し,その一般形態を構築す るための準備 として,会計システムを一般的に論 じることか ら始めることにする そのた めには,会計の測定要素か ら述べる必要がある。一般に,会計システムの測 定要素には,測定単位 と評価基準 とがあ り, これ らを組み合わせることによ

って会計システムが構成 されることになる。そ こで,これ らを説明すること か ら始め ることにしよう。

1 測定単位

測定単位 とは,資産 を測定す るための基準単位 であ り,それは貨幣単位 (わが国の場合,1円)で表 され る。資産は この貨幣単位の量 とその資産 と の関係づけによって測定 されることになる。 この ように,測定単位は資産の 測定 に際 して貨幣単位量 と結合される基準単位であるが, この基準単位であ る貨幣単位は必ず しも1つではな く,次の ように大 きく4つに分けることが で きる。

(1) 名 目貨幣単位 (2) 一般購買力単位 (3) 個別購買力単位 (4) 貨幣収益力単位

名 目貨幣単位 は,一般物価の変動,個別物価の変動,ない しは貨幣収益力 の変化を考慮 しない測定単位であ り,その時 々の基準単位 を修正 しない もの である。一般購買力単位は,一般物価の変動 を考慮 した測定単位であ り,一 般物価指数の変動 に応 じて基準単位 を修正 してい くものである。 この一般購 買力単位 は,資産 を測定する場合 に,各測定値 を同一の一般物価水準に統一

し,一般物価水準に関 して比較可能にするために用い られ る。

個別購買力単位は,個別物価の変動を考慮 した測定単位であ り,個別物価

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現代会計システムの論理統合 5

指数の変動 に合わせて基準単位 を修正 してい くものである。 この個別購買力 単位は,資産の各測定値 を同一の個別物価水準で統一 し,個別物価水準に関 して比較可能 にす ることを 目的 として用い られる。貨幣収益力単位は,企業 の収益力ない し貨幣収益力を考慮 した測定単位であ り,貨幣収益力の変化 に 応 じて測定単位を修正 してい くものである。 この貨幣収益力単位は,資産の 各測定値を同一の貨幣収益力水準で統一 し,貨幣収益力水準に関 して比較可 能にす るために用い られ る。

2 評価基準

評価基準 とは,測定単位 によって関係づけ られる資産の基準 となる測定値 の ことであ り,測定単位たる基準単位を1とした場合の貨幣単位量の ことで ある。 この評価基準は,その資産を取引す る, もしくは取引 した仮定の相違 によって次の4つに大別することがで きる。

(1) 取得原価 (2) 購入時価 (3) 売却時価 (4) 現在価値

取得原価は,あ る資産 を購入するために,過去 に支払 われた貨幣単位量で ある。購入時価は,ある資産 をいま購入する とするな らば,支払わなければ な らない貨幣単位量である。売却時価は,ある資産をいま売却する とす るな らば,受け取 るであろう貨幣単位量である。現在価値 は,ある資産 を将来売 却する とする と,受け取 るであろう貨幣単位量をある割引率で現在 に割 り引

いた ものである。

3 会計システムの諸芙頁型

各会計システムは,これ らの評価基準たる取得原価,購入時価,売却時価, および現在価値,測定単位たる名 目貨幣単位,一般購買力単位,個別購買

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6 経 営 と 経 済 力単位,お よび貨幣収益力単位 を組み合わせ ることによって,類型的に導 き 出され ることになる。いま, これを行 った結果 を‑表 にま とめ,各会計シス テムに名称 を付す と,表 1の ようにな る。

1 会計 システムの諸類型

評 価 基 準

測 定 単 位

取得原価 購入時価 売却時価 現在価値

名 目 貨 幣 取得原価 購入時価 売却時価 現在価値

一般購買力 実質取得 実質購入 実質売却 実質現在

原価会計 時価 会計 時価会計 価値会計

個別購買力 実体取得 実体購入 実体売却 実体現在

原価会計 時価 会計 時価会計 価値会計

貨幣収益力 成果取得 成果購入 成果売却 成果現在

そ して,これ らの各会計システムにおいて算定 され る利益 に名称 を付 す と, 2の ようにな る。

2 利益の諸類型

評 価 基 準

測 定 単 位

取得原価 購 入時価 売却時価 現在価値

名 目 貨 幣 経 済 的

可能利益

一般購買力 実質実現 実質経済

実現利益 経営利益 可能利益 的 利 益

個別購買力 実体実現 実体経済

実現利益 経営利益 可能利益 的 利 益

貨幣収益力 成果実現 成果経済

実現利益 経営利益 可能利益 的 利 益

(7)

現代会計システムの論理統合 7

現代会計システムの構築

前節 において,現代会計システムの一般形態を構築す るための準備 として, 会計の測定要素たる測定単位お よび評価基準 を明 らかに し,会計システムの 諸類型 を導 出した。本節では, これを基礎 として,現代会計システムの一般 形態 を論理的に構築することとする。その場合に考察すべ きものは,前節で 明 らかにした評価基準および測定単位であ り,さらに割引率お よび資本構成 である。そ して, これ らの最適な一般形態 を導 き出す ことが本節の課題であ る。それがで きたな らば,現代会計システムの一般形態は これ らを組み込む ことによって形成 されることになるか らである。

1 評価基準

既述のように,資産の評価基準 として取得原価,購入時価,売却時価お よ び現在価値があるが,近年,資産の評価基準の一般概念 として 「公正価値」

が提唱され,定着 しつつある。 しか し,その具体的な内容を見てみ ると,そ れは購入時価,売却時価および現在価値の混合概念であ り, 1つの思考の も

とに統一 された概念ではない。そ こで,公正価値概念を論理的に統合 された 純粋な概念 として説 明する必要がある。

一般 に,公正価値 には2つの定義がある.第 1の定義では,公正価値 は資 産の交換 とい う概念 を具体化 した ものであ り,資産の交換条件 を表 した もの である。 したがって,それ らの条件が変われば,公正価値 も変わることにな 公正価値 は,次 の状 況 の も とで資産 が取 引 され る ときの金額 であ る

(SmithandParr[2000]pp.155156)

(1) 取引の当事者 は,貨幣で資産を交換する目的で集 まる。評価 は貨幣に よって行われる。

(2) 取引は,購入 したい と考 える者 と販売 したい と考 える者 との間でなさ れ,両者は交換する意思を もっている。

(8)

8 経 営 と 経 済

(3)取引は強制 されるものではない。両者 とも,相手 もしくは状況によっ て取引を強制 されるものではない。

(4) 両者 とも関連する事実についてすべて熟知 している。両者 とも,取引 されるものの内容,資産の状態,歴史,可能な利用方法,負債な どにつ いて十分な知識 を有 している。

(5) 両者は平等であ り,取引は両者 にとって公平 に行われる。

公正価値の第 2の定義は,公正価値 は,保有す ることによって将来得 るこ とので きる経済的便益の現在価値 に等 しい というものである。 これは,近年 公正価値概念 に とって きわめて重要な もの となってお り,実際の評価の過程 で も,有用な指針 となっている。

公正価値 に関するこれ ら2つの定義は,米国財務会計基準審議会 (FASB)

の考 えに も合致 しているように思われ る。FASBでは,資産 (または負債) の公正価値は,独立 した当事者間による競売 または清算 による処分以外の現 在 の取引 において,資産 (または負債)の購入 (または負担) または売却 (または弁済)を行 う場合のその価額 (FASB[2000]glossaryofterms)

と定義 されている。 これは市場価格を意味 してお り,具体的には購入時価 お よび売却時価 にはかな らない。

ただ, これは,資産 もし くは負債 に対する価格 を市場で入手することがで きる場合 に限 られる。この場合には,現在価値 による測定 を行 う必要がな く, 市場 における現在価値 に対する評価が,その ような価格の中にすでに織 り込 まれているか らである。すなわち, この場合 には,購入時価お よび売却時価 の市場価格 と現在価値が一致す るので,現在価値で評価する必要がないので ある。

しか し,客観的な価格を入手することがで きない場合 には,価格をい くら に見積 もるかを決め るうえで,現在価値による測定が利用可能な最適方法で あ る (FASB[2000]par.68)。 この場合には,市場価格 を利用することは で きず,現在価値 が唯一の利用可能な評価基準 となるか らである。すなわち,

(9)

現代会計システムの論理統合 9 この場合,現在価値が唯一の公正価値 となるのである。

この ように見て くると,公正価値 ひいては評価基準の一般概念が現在価値 であ り,購入時価 および売却時価は特殊概念であることが明 らか となる。資 産 もし くは負債の市場価格が存在する場合 にも存在 しない場合にも,現在価 値が評価基準 として共通 に適用 され るか らである。市場価格が存在 しない場 合は もちろんの こと,市場価格が存在する場合には,購入時価 もし くは売却 時価 に現在価値が内在 しているのである。

この ように,評価基準の一般概念は公正価値であ り,その具体的な基準は 現在価値であるといえるのであるが,残念なが ら,この現在価値はある問題 点を有 している。それは,現在価値 では資産が本来備 えている可能性を捕捉 することが難 し く,柔軟 かつ弾力的で,よ り現実の経営状況に即 した評価基 準ではない とい うことである。

現在価値は,現実に投資意思決定 および企業価値評価の領域において 「 引キ ャッシ ュ ・フロー」 (DCF)として使用 されているが, この評価方法で は,資産や投資機会が本来備 えている可能性を捕捉す ることは難 しい。 とい うのは,この方法では,最初の意思決定時点において投資を行 うか行わない かの択一的な決定が行われ,プロジ ェク トが進行 してい く過程で不確実性の ある側面が確実 となった時点で経営者が投資の方 向を変更す るとい う,経営 上の柔軟性を考慮 しないか らである。

つま り,確率が支配す る世界 において,現在価値の ような決定論的モデル を使 うと,特定のプロジ ェク トの価値がはなはだ しく過小評価 されて しまう 恐れがあるのである。決定論的な現在価値モデルでは,特定のプロジ ェク ト の価値 を変 えるような経営条件の変動 な どは起 こり得 ない とい うことにな る。 しかし,実際の経営環境は きわめて流動的であ り,条件の変化 に応 じて 経営者が適切な変更を加 えることができる柔軟性は,それ 自体が価値 を もつ のである (Mum [2002]pp.57‑58:邦訳90‑91頁)0

そ して,この ような現在価値 の もつ問題点を超克するもの として登場 した

(10)

10 経 営 と 経 済

のが,「リアル ・オプシ ョン価値」である。 これは,経営者が戦略的かつ柔 軟なオプシ ョンを作 り出し,行使 し,放棄す る権利 をもってお り,その こと が,資産ない しプロジ ェク トに付加価値 をもた らす 1つの要因 となっている

ことを考慮に入れた ものである。

この リアル ・オプシ ョン価値は現在価値 を出発点 とし,資産 を弾力的に評 価するためにボラテ ィリテ ィを計算要素に入れる。ボラテ ィリテ ィが大 きい

ほ ど資産価値の変動 は大 き く,逆 にボラティリテ ィが小 さいほ ど資産価値の 変動は小 さ くなる。 さらに,ボラティリティがゼ ロの場合,資産価値の変動 もゼ ロ となる。 このボラテ ィリテ ィがゼロの状態,すなわち資産価値の変動 がゼ ロの状態が現在価値 にはかな らない。 したがって,現在価値はボラテ ィ

リテ ィを考慮 しない リアル ・オプシ ョン価値 である とい うことができる。

この ように見て くる と,現在価値 は リアル ・オプシ ョン価値 の特殊形態で あ り,資産評価 に関 して, リアル ・オプシ ョン価値 が一般形態であることが 明 らか となる。 したがって,公正価値 の一般概念は,現在価値 に代わって, これを発展 させた ところの リアル ・オプシ ョン価値であるとい うことがで き るのである。

2 測定単位

次に測定単位であるが,測定単位の一般形態を解 明しようとする場合,秦 考 となるのがEVA(経済付加価値)会計である。EVAは株主 を重視するこ

とによる株主価値創造 および企業価値創造の尺度である1)

このEVAは税引後営業利益 (NOPAT)か ら資本費用 を控除 した もので あ る。換言すれば,EVAは,企業が事業 を行 うために調達 した資本を営業 活動 を通 じて運用 し,その結果 として得 られたNOPATが資本の調達 コス トである資本費用を どの程度上回っているかを算定するものである。 これに よって得 られるEVA値 がプラスな らば,企業は事業活動 によって企業価値 を創造 した ことにな り,逆 にEVA値 がマイナスな らば,企業価値 を破壊 し

(11)

現代会計システムの論理統合 ll た ことになるのである。

かかるEVA会計 におけ る測定単位は,貨幣収益力単位であ るとい うこと がで きる。 とい うのは,EVA会計 において重要な計算要素である資本 コス トは,資本に価値 を付加す るために企業が最低限稼得 しなければな らない収 益率であ り,企業の収益力ない し貨幣収益力を考慮 した ものにはかな らない か らである。 この企業収益力を考慮 した測定単位がまさに貨幣収益力単位で あ り,資本 コス トは実は貨幣収益力単位であ るのである。

さらに, これが明確 に表れるのが,EVA会計 においてNOPATか ら控除 され る資本費 用 で あ る。 この資 本 費 用 は貨 幣 収益 力単位 で測定 され ,

NOPATか ら控除されるとい うことは, この分だけ企業 内に留保 されるとい うことであ り,成果資本維持機能を果たしているということにはかな らない。

この意味で も,EVA会計 におけ る測定単位 は貨幣収益力単位 である とい う ことがで きるのであ る。

かかる測定単位 を有するEVAの基本的思考は株主を重視 した経営を行 う ことであ り,その基本的 目的は株主価値 を創造す ることである。そ して既述 の ように,その背後 には,株主価値 を創造することによって,すべての利害 関係者のニーズを充た し,企業価値 を創造する という考 えが存在す る。 この ように見 る と,貨幣収益力単位 は他の測定単位を統合 し,代表 し得 るもので あ り, ここに,測定単位の一般形態が貨幣収益力単位であるということがで

きるのである。

3 割引率

この ように,評価基準の一般形態 は現在価値 を発展 させた ところの リア ル ・オプシ ョン価値 であ り,測定単位の一般形態は貨幣収益力単位であるこ とを導 き出したが, これ らを具体的に算出す る場合, どの ような割引率を適 用するかが問題 とな る。 リアル ・オプシ ョン価値 および貨幣収益力単位を用 いて会計を行 う際に,両者は ともに会計数値 をある割引率で割 り引 くとい う

(12)

12 経 営 と 経 済

手続を踏むか らである。

これに関 して,これまで,大別 して2つの割引率が提唱されて きた。 1 は フ ァイナン ス理論 において一般 に用 い られて い る加重平均資本 コス ト

(WACC)であ り,他の1つはCFROI(キ ャッシ ュ ・フロー投資利益率) 会計において提唱された市場関連割引率であ る。

加重平均資本 コス トは,負債 コス トと株主資本 コス トの加重平均 コス トで あ り,次の式 によって求め られ る。

WACC‑(1‑i)bxD/TC+yxE/TC

ここで,各記号はそれぞれ次の ことを表 している。

t‑実効税率,b‑負債の利子率,y‑株主資本 コス ト,D‑負債, E‑株主資本,TC‑投下資本

(=

そ して,株主資本 コス トは次式の資本資産評価モデル (CAPM)によっ て求め られ,それぞれの記号は次の ことを表 している。

yrf+P(rm‑rf) (2)

rf‑無 リスクの収益率,rm‑株式市場全体の リスク (株式市場全体の期 待収益率), β‑株式市場全体 に対す る個別株式の リスク (市場全体 に 対す る個別企業の株価のボラテ ィリティ)

ここで,(rm‑rf)は株式市場 の リスク ・プレミアムであ り, これを rpで 表 す と,株主資本 コス トは次の ようになる。

y=rf+βrp

他方,市場関連割引率は,市場割引率に企業独 自の リスク格差 を加味 して 決定 され る割引率である。そ して,この企業の リスク格差は,財務 レバ レッ ジおよび企業規模 か らなる。

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現代会計システムの論理統合 13 市場割引率は,全企業の負債 および資本の市場価値総計 と全企業の予想キ ャッシ ュ ・フロー総計か ら導 き出される。具体的には,次式を満たす割引率 として決定 される (Madden[1999]p.89)0

全企業の負債 ・資本市場価値総計 ‑予想キ ャッシ ュ ・フロー総計 1+市場割引率

この市場割引率に企業独 自の リスク格差を加味 して,市場関連割引率が決 定 されるが,その場合,財務 レバ レッジおよび企業規模 とリスク格差 との関 係は,一般に次の ようにい うことがで きる。

(1) 財務 レバ レッジが高 くなるほど, リスク格差は大 き くなる。

(2)企業規模が小 さ くなるほ ど, リスク格差は大 きくなる。

したがって,財務 レバ レッジが高 く企業規模が小さい場合,市場関連割引 率は市場割引率 よりも高 く設定 されることにな り,財務 レバ レッジが低 く企 業規模が大 きい場合,市場関連割引率は市場割引率 よりも低 く設定 されるこ

とになる。

以上が加重平均資本 コス トおよび市場関連割引率の概要であ るが, これ ら を詳細 に比較する と,次の ような関係があることに気付 く。それは,加重平 均資本 コス トの算定式 における株式市場全体の期待収益率 (㍍)が市場関連 割引率における市場割引率 に該当するとい うことである。

その理 由は次の ようである。すなわち,市場関連割引率における市場割引 率は(4)式か ら明 らかなように負債 コス トと株主資本 コス トとの一種の加重平 均資本 コス トと解す ることがで き,両者の間で負債 コス トが等 しく,またβ

を 1とす るな らば,株主資本 コス トにおけ る ㍍ が市場関連割引率 におけ る 市場割引率に等 しい と解す ることがで きるか らである。

この ように考 えるな らば,加重平均資本 コス トと市場関連割引率 との相違 は,一万では βを考慮するのに対 して,他方では財務 レバ レッジおよび企業 規模を考慮することの相違 であるとい うことになる。 しかしなが ら, この相 違 は非常に大 きいことに注意 しなければな らない。 とい うのは, βと財務 レ

(14)

14 経 営 と 経 済

バ レッジおよび企業規模は割引率の算出に関 してまさに反対の方向に機能す るか らである。

上述 したように, βは株式市場全体 に対する個別企業の株価のボラティリ テ ィであ り,各 々の株式市場における上場株式の平均的な価格変動 と,個別 企業の株式の価格変動 を比較 し,数値化 した ものである。換言すれば, βは 株式市場全体の平均価格変動 を基準 とした場合,個別企業の株式の価格変動 が平均価格変動 をどれほ ど上回っているか,あるいは下回っているかを示す 数値である。

企業の業績 が良好で安定 している場合, この βは高 くなる傾 向があ り, し たがって加重平均資本 コス トは高 くなる。 しかし, この同じ状況で市場関連 割引率を適用する場合, この割引率は低 くなるはずである。企業の業績が良 好で安定 しているとい うことは,財務 レバ レッジおよび企業規模 によるリス

クが低い と解することがで きるか らである。

逆 に,企業の業績 が悪 くて不安定な場合, βお よび加重平均資本 コス トは 低 くなるが,市場関連割引率は リスクの上昇 に応 じて高 くなる。したがって, 加重平均資本 コス トと市場関連割引率は性質的にまった く相反する割引率な のである。

この加重平均資本 コス トと市場関連割引率を企業価値評価 に適用すると, 興味ある事実が判明する。一般 に,企業価値 は次の ように算定 される。

企業価値 + ・・..‑tfl 器 (5) ここで,FCFiは第t期のフ リー ・キ ャッシ ュ ・フローの予測額であ り,k

は資本 コス トすなわち割引率である。

この(5)式による と,企業の業績が良好で安定 している場合,加重平均資本 コス トを適用すれば,分母の割引率が大 き くなるので,企業価値は小 さ くな る。 これに対 して,市場関連割引率を適用すれば,分母の割引率が小 さ くな るので,企業価値 は大 きくなる。逆に,企業の業績 が悪 くて不安定な場合,

(15)

現代会計システムの論理統合 1iIl

加重平均資本 コス トを適用する と企業価値が大 き くなるのに対 して,市場関 連割引率を適用する と企業価値 は小さ くなる。

常識的に考 えると,企業の業績が良好で安定 している場合,企業価値は大 き くな り,企業の業績が悪 くて不安定な場合,企業価値 は小さ くなるはずで ある。 したがって,企業価値評価 に関 して,市場関連割引率を適用する方が 論理的である とい うことになる。逆 にいえば,企業価値評価 に加重平均資本 コス トを使用することはで きず,ここに加重平均資本 コス トの問題点が存す るのである。

これ らの ことか ら,企業価値評価ないし資産評価に関する限 り,市場関連 割引率を適用すべ きであ り,加重平均資本 コス トを適用すべ きではない と結 論づけることがで きる。すなわち,評価基準の割引率 として市場関連割引率 を使用すべ きであるのである。

それでは,測定単位 としての貨幣収益力単位 として,加重平均資本 コス ト と市場関連割引率の どち らを適用すべ きであろうか。この問題 を考 える場合, 鍵 となるのは,測定単位が会計システムにおいて果たす役割ないし機能であ

り,さ らには貨幣収益力単位の導 出源泉 となったEVA (経済付加価値)会 計の会計思考である。

測定単位は会計システムにおいて一般に次の ように機能す る (上野 [2005] 296頁)。

(1)測定単位は全体利益を決定する機能を有 している。

(2) 測定単位は資本の規定機能 と資本維持機能 を有 している。

会計システムにおいて,適用 される測定単位 と評価基準によって期間利益 はそれぞれ異なるけれ ども,全体利益は適用 された評価基準 に関わ りな く, 各 々の測定単位の もとで一定 となる。 これは,全体利益は測定単位 によって 決定 され,全体利益の算定 と測定単位 との間で同質性があることを意味 して いる。言い換 えれば,全体利益計算か ら,適用 された測定単位が推論で きる のである。 この ことから,測定単位は全体利益を決定する機能を有 してい る

(16)

経 営 と 経 済 ということがで きる。

さらに,各測定単位は全体利益 を決定するけれ ども,その全体利益の額は 適用 される測定単位 によって異なる。 これは,名 目貨幣単位 に基づ く全体利 益 と他の各測定単位 に基づ く全体利益 との差額が企業内に留保 されているこ

とを意味 してお り,その分だけ資本が修正 されていることを意味 している。

このようにして修正 された資本が維持すべ き資本 とな り,それぞれの資本が 維持 される。 これは,測定単位が資本 を規定 しているか らにはかな らず, こ れによって資本維持の遂行を可能 にしているか らにはかな らない。 この意採 で,測定単位は資本の規定機能 と資本維持機能を有 しているとい うことにな る。

測定単位が会計システムにおいて果たす これ らの機能は,上記の企業価値 評価ない し資産評価の問題ではな く,企業業績評価 ない し利益計算の問題 で ある。すなわち,測定単位は企業業績評価 に関係す るとい うことがで きる。

そ して,この測定単位の一般形態 として貨幣収益力単位が導 き出され,そ の背景には,EVA会計の会計思考があった。既述の ように,EVAは株主 を 重視することによる株主価値創造 および企業価値創造の尺度である。株主が 企業 に投資するのは,企業が彼 らの期待する収益率を上回る利益を稼得す る ことを予測するか らである。株主的観点か らすれば,彼 らの期待収益率を超 える利益のみが真の利益であ り,それを下回る利益は利益ではない というこ

とにな る。 この株主の期待収益率は 「株主資本 コス ト」 と呼ばれる。

しか し,投下資本 に対する資本 コス トとい う観点か らすると,株主資本 コ ス トのみが資本 コス トではない。債権者 も企業に投資するか らである。そ し て,債権者が企業に投資するのは,やは り,企業が彼 らの期待する利子率 を 上 回る利益を稼得す ることを予測するか らである。 この債権者の投資は企業 の側か ら見れば負債 になるので, この利子率は 「負債 コス ト」 と呼ばれる。

企業全体の資本 コス トはこれ らの株主資本 コス トと負債 コス トを加重平均 した ものであ り, これは企業の機会費用 としての性格を有することになる。

(17)

現代会計システムの論理統合 17

それは株主や債権者の投資家が相対的な リスクを もつ株式や債券のポー トフ ォリオに資金 を投入することで期待で きる収益率であ り,企業が投下 された すべての資本 に対 して最低限稼得 しなければな らない収益率である。

これは加重平均資本 コス トにはかな らない。そ して, この加重平均資本 コ ス トは株主お よび債権者の要求を充たすハー ドル ・コス トの役割を有 し,企 業業績評価ないし利益計算 において利益算出の基準 となる資本維持機舵, と

りわけ成果資本維持機能を果た しているのである。換言すれば,企業価値評 価ない し利益計算 に関 して,測定単位 として適用すべ き割引率は,市場関連 割引率のような一般的な市場を基礎 とする割引率ではな く,株主お よび債権 者 の個別的な要求 を充たす加重平均資本 コス トでなければな らないのであ

2)0

4 資本構成

これによって,評価基準 として適用すべ き割引率は市場関連割引率であ り, 測定単位 として適用すべ き割引率は加重平均資本 コス トである とい う結論 を 得たが,これ らの割引率を適用する場合,解決すべ きもう 1つの問題が残 さ れている。それは資本構成問題である。

これは主 として企業価値評価 に関する問題であ り, したがって市場関連割 引率に関係す る問題である。既述の ように,市場関連割引率は負債 コス トと 株主資本コス トとの一種の加重平均資本 コス トであるが, これを企業価値評 価 に適用する場合,通常,企業の資本構成が予測期間を通 じて変化 しない と い う大前提がおかれ る。ある既存の資本構成の下で企業全体についての市場 関連割引率を計算するためには,資本構成が変化 しない ことが必要であるか

らである。

しか し,現実におけるように,企業の資本構成が変化する と,市場関連割 引率が変化 し,企業価値 に影響 を及ぼす ことになる。一般 に,株主資本 コス トが負債 コス トよりも大 きくなるにしたがって,市場関連割引率は実際 よ り

(18)

18 経 営 と 経 済

も小 さい値 とな り,企業の価値が過大評価 されることになる。その原因は, 市場関連割引率の適用に際 して,通常,企業の資本構成が長期的に変化 しな い という非現実的な仮定を基礎 においていることにある。

従来の会計 に内在 していたかかる問題点を超克 し,かつ利点を継承するも の として提唱 されたのが,APV (調整現在価値)会計であ る。既述 の よう に,APV会計 は,企業価値 を 1つの資本 コス トに よる現在価値計算 で把握 す るのではな く,すべて株主資本で資金調達 した とした場合,すなわち レバ レッジを行わない場合の現在価値 (基本ケースの現在価値) と資金調達 に関 するすべての副次的効果の現在価値 とに分けて把握する。これを式で示せば, 次の ようになる。

APV‑基本ケースの現在価値+資金調達に関する副次的効果の現在価値 (6) この副次的効果の代表が支払利息の節税効果である。企業の支払利息は税 務上,損金算入で きる。 したがって,負債 によって資金調達を行 うと,企業 は節税効果を得 ることがで き, これが企業価値 を増加させることになる。

I

APV会計は, この事実 に着 目して,企業価値 に税金 が与 える影響 を切 り 出すのである APV会計では,まず資本構成上,有利子負債 がまった くな い と仮定 した上で,負債がない場合の資本 コス トを用いて企業価値 を算定す る。次いで,必要資金を一部負債で調達 した場合の節税効果を勘案する。

これによって,APV会計は企業の資本構成の変化に対応 し,資本構成 が 時の経過 において変化する場合,企業価値 をそれに応 じて評価するりである。

ここにAPV会計の特質お よび利点があ り,現代会計システムの構築 に際 し て,資本構成の変化 を考慮 したAPV会計の思考 を導入す る必要があ るので あ る。

以上の結果 として,いまや,本節の 目的である現代会計システムの一般形 態 を構築 しうる段階 に至 った。それは,評価基準,測定単位,割引率および 資本構成 に関するこれまでの結論 を会計システムに組み込む ことによって可

(19)

現代会計システムの論理統合 19 能 となる。

そ して, これを行 うと,現代会計システムの一般形態は次の ようになる。

すなわち,それは,評価基準 として リアル ・オプシ ョン価値 を適用 し,測定 単位 として貨幣収益力単位を適用す る会計システムであ り,さらに,評価基 準の割引率 として市場関連割引率を使用 し,測定単位の割引率 として加重平 均資本 コス トを使用 し,かつ資本構成の変化 を考慮する会計システムである。

Ⅳ 現代公正価値会計

これによって,現代会計システムの一般形態が明 らか となった。いま, こ の会計システムを 「現代公正価値会計」 と命名す ることにしよう。本節にお いて, この現代公正価値会計の内容をさらに詳細 に説 明することにする。具 体的には, この会計における企業価値評価の方法 を明 らかに し,公正価値貸 借対照表の作成方法および公正価値利益の算定方法を解 明す る。

1 企業価値評価

現代公正価値会計 において企業価値評価 を行 う場合,まずAPV会計の会 計思考 を用いて行 うことになる。それは,資本構成の変化を考慮す るためで ある。APV会計では,企業価値評価は次の6つのステ ップで行われる。

(1) 企業のフ リー ・キ ャッシ ュ ・フローを予測する。

(2) レバ レッジを行わない株主資本 コス トを算定す る。

(3) このレバ レッジを行わない株主資本 コス トを用いて,企業のフ リー ・ キ ャッシ ュ ・フロー とその継続価値 を割 り引 く。

(4) 支払利息の節税効果 とその継続価値 を予測 し, これ らの値をある資本 コス トで割 り引 く3)0

(5) フ リー ・キ ャッシ ュ ・フローの現在価値 と支払利息の節税効果の現在 価値を加算 して事業価値 を算定する。

(20)

20 経 営 と 経 済

(6) 上 で算定 した ものに,非事業用資産の価値 を加算 して,企業価値 とす る。

APV会計の第 1のステ ップは,企業 のフ リー ・キ ャッシ ュ ・フローを予 測することであ る。 これは現在価値会計の場合 と同様 に行 われ,次のステ ッ プで行 うことになる (Copeland,KollerandMurrin[2000]p.233:邦訳273 蛋)

(1) どれだけの期間について, どれほ ど詳細 に将来予測 をたてるのかを決 定す る。

(2) 将来の業績 について,戦略 レベルで見通 しをたて る。 この場合,業界 の特徴 と企業の競争優位 ・競争劣位の双方 を考慮す る。

(3) 戦略 レベルの見通 しを,損益計算書,貸借対照表 ,フ リー ・キ ャッシ ュ ・フロー,主要指標等の財務予測 に具体化す る。

(4) 上 の(2)と(3)で作成 したケースに加 え,異なったシナ リオに基づ く予測 をたてる。

(5) 全体 として予測 に矛盾 はないか,戦略 レベルの見通 しと適合す るかを チ ェックす る。

特 に,投下資本利益率 (ROIC),売上 高 お よび利益成長率の予測結 果 に注意す る。

第 2のステ ップは, レバ レッジを行 わない株主資本 コス トを算定す るこ と である。 これは,次の ような考 えで行 われ,市場関連割引率 となる。

APV会計ではまず,有利子負債 がない と仮定 した事業価値 (Vu),節税 効果等の財務活動 か ら生み出され る価値 (Vlxa),有利子負債 (D)お よび株 主資本 (E)の関係は,次の ようにな る。 この場合,Dお よびEは公正価値 であ る。

Vu+Vtxa‑D+E (7)

企業が事業 に用 いる資産 お よび事業 に直接使用 していない金融資産 を含む

(21)

現代会計システムの論理統合 21

すべての資産 リスクは,それ らの資産 に投下するために調達 した資金の提供 者に とっての リスク と等 しい。そのため,均衡状態では,事業資産 に投下 し た資金のコス ト (紘 :レバ レッジを行わない株主資本 コス ト) と,節税効果 等の財務活動 に投下 した資金 の コス ト (rixa)を加重平均 した ものは,有利 子負債 コス ト (rd)と株主資本 コス ト (re)の加重平均 に等 しい。すなわち, 次の ようである。

ru rtxa‑DTTErdD{ Ere (8) この(8)式の左辺の値は直接把握することができず,右辺の値だけが,有利 子負債 と株主資本 に関する変数であるため,直接予測可能である。変数が多 いにもかかわ らず式が1つしかないため,さらに何 らかの仮定をおいて レバ レッジを行わない株主資本 コス ト (㍍)を解 く必要があ る。 この場合,注 3 で述べたように,節税効果実現の リスク (rfxa) と事業資産の リスク (ru)が 等 しい とい う前提 をおけば,(8)式 は次の ように非常 に単純 になる (Roller, GoedhartandWessels[2005]:邦訳 上142‑143頁)0

ruDTfTErdD+ Ere (9) これによって,変数は有利子負債 と株主資本に関連するものだけ とな り, レバ レッジを行わない株主資本 コス トを直接予測することがで きる。そ して, この株主資本 コス トは市場関連割引率であると解することがで きる。既述の ように,市場関連割引率は負債 コス トと株主資本 コス トとの一種の加重平均 資本 コス トと解す ることがで き,企業価値評価の測定基準に関する割引率 と

して市場関連割引率が適 しているか らである。

3のステ ップは,この レバ レッジを行わない株主資本 コス トを用いて, 企業のフ リー ・キ ャッシ ュ ・フロー とその継続価値 を割 り引 くことである。

この場合,継続価値は次の式で計算 される。

ru g

(22)

22 経 営 と 経 済 ここで,各記号は次の こと表 している。

NOPATT.1‑予測期間以降の 1年 目における標準化 された税引後営業 利益 (NOPAT)

g‑NOPATの永続的な期待成長率

ROJC‑新規投資 に対 して期待 される投下資本利益率

‑NOPAT/投下資本

‑レバ レッジを行わない株主資本 コス ト (市場関連割引率)

4のステ ップは,支払利息の節税効果 とその継続価値 を予測 し, これ ら の値 をレバ レッジを行わない株主資本 コス ト,すなわち市場関連割引率で割

り引 くことであ る。 この場合,支払利息の節税効果は次の式で算定 される。

支払利息の節税効果‑ixtx

ここで,iは支払利息であ り,txは実効税率である。

そ して,節税効果の継続価値は次の式で算定 され る。

継続価値‑吐適

ru‑ g

ここで,各記号は次のこと表 している。

iT.1‑予測期間以降の 1年 目における標準化 された支払利息 tx‑実効税率

‑レバ レッジを行わない株主資本 コス ト (市場関連割引率) g‑支払利息の永続的な期待成長率

5のステップは,第3および第4のステ ップで算定 したフ リー ・キ ャッ シ ュ ・フローの現在価値 と支払利息の節税効果の現在価値 を加算 して事業価 値 を算定することである。そ して,第 6の最終ステ ップは,この ようにして 算定 した事業価値 に,非事業用資産の価値 を加算 して,企業価値 とすること であ り,これによってAPV会計 における企業価値 が算定 されることになる。

現代公正価値会計 において企業価値評価を行 う場合,次 に行 うべ きことは,

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